治国別は神示により、未明に松彦たちが王子・王女を連れて帰ってくることを悟り、門口を開けて湯を沸かし、座布団を並べるなどして準備して待っていた。
長年の山暮らしで髯も伸びきった王子たちに、治国別は湯を勧めた。王子たちは、三五教の宣伝使たちがビク国を救ってくれたことにお礼を述べた。王子たちは代わる代わる垢を落とし身なりを整えた。すると戻ってきたときの山男の風体とは打って変わり、みな貴公子然たる男ばかりであった。
身なりを整えたダイヤ姫は、治国別の前に手をついて再生の恩を感謝した。万公は、ダイヤ姫の美しさに心を奪われ、一同の前で姫の美貌をほめそやし、惚れてしまったと公言するありさまであった。
松彦と竜彦にたしなめられ、万公は客人の炊事の支度をすることになった。松彦と竜彦は、王子たちを無事に連れ帰ったことを王城に報告に行く役目があるので、万公一人で王子たちの世話をすることになった。
万公は、一人では手に余るのでぜひダイヤ姫に手伝いをしてほしいと頼み込んだ。治国別はまた万公に注意を与えたが、結局万公が炊事をしてダイヤ姫がその他の雑事を手伝うことになった。
松彦と竜彦は城に到着した。知らせを待っていたタルマンは、早速首尾を尋ねた。いたずら好きの竜公は、話をじらして脚色して、タルマンをやきもきさせた。
左守と右守はこの場にやってきて、タルマンの顔が土色になっているが、松彦と竜彦がニコニコと笑っているので、奉迎がうまくいったことを悟った。
一同が話していると、治別と万公に付き添われて長兄のアール王子が駕籠に乗ってやってきた。左守と右守はアールの姿を見ると、うれし涙がこみあげて一言も発せず、左右の手を取って刹帝利の居間へ案内して行った。
竜公にからかわれてやきもきしていたタルマンもようやく胸をなでおろし、アールの後を追って刹帝利の居間へ急いだ。治国別は後に残した五人が気にかかり、万公を連れてすぐに館に戻って行った。