霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第54巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 神授の継嗣
01 子宝
〔1387〕
02 日出前
〔1388〕
03 懸引
〔1389〕
04 理妻
〔1390〕
05 万違
〔1391〕
06 執念
〔1392〕
第2篇 恋愛無涯
07 婚談
〔1393〕
08 祝莚
〔1394〕
09 花祝
〔1395〕
10 万亀柱
〔1396〕
第3篇 猪倉城寨
11 道晴別
〔1397〕
12 妖瞑酒
〔1398〕
13 岩情
〔1399〕
14 暗窟
〔1400〕
第4篇 関所の玉石
15 愚恋
〔1401〕
16 百円
〔1402〕
17 火救団
〔1403〕
第5篇 神光増進
18 真信
〔1404〕
19 流調
〔1405〕
20 建替
〔1406〕
21 鼻向
〔1407〕
22 凱旋
〔1408〕
附録 神文
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第54巻
> 第3篇 猪倉城寨 > 第13章 岩情
<<< 妖瞑酒
(B)
(N)
暗窟 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一三章
岩情
(
がんじやう
)
〔一三九九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻
篇:
第3篇 猪倉城寨
よみ(新仮名遣い):
いのくらじょうさい
章:
第13章 岩情
よみ(新仮名遣い):
がんじょう
通し章番号:
1399
口述日:
1923(大正12)年02月22日(旧01月7日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
猪倉山の頂上には、巨大なイノシシの形をした岩倉があり、岩には広い岩窟があった。五合目以下はすごい密林になっている。岩窟内には大きな蝙蝠がたくさん住んでいたが、きれいな水がところどころに湧いていて、また岩から甘露のような油がにじみ出し、これを嘗めていれば何とか命をつなげるという天与の場所である。
バラモン軍は調査の結果、この窟内には恐ろしい猛獣などは住んでいないことがわかったので、ここを本拠として五合目以下に兵舎を作り、谷川を境にして立てこもっていた。
鬼春別と久米彦は、葡萄酒を傾けながら懐旧談にふけっていた。話がさらってきた姉妹のことになり、醜い姉のスミエルと美人の妹のスガールを巡って、また言い争いになった。
二人はスガールを呼び出して、どちらの妻になるかを選ばせたが、スガールは非道なバラモン軍の将軍の妻となるくらいなら死んだ方がましだとはねつけた。二人は怒り、久米彦はスガールを地下の暗窟に落とし込むべく連れて行った。
途中、久米彦は脅迫まじりにスガールに迫ってきた。スガールは抵抗しても逃れられないと思い、久米彦に気があるような素振りをしてこの場を逃れようとした。久米彦はほとぼりが冷めるまで自分の部屋にスガールを匿い、鬼春別けには暗窟に放り込んで殺したことにしておくと言った。
スガールは姉と一緒においてくれるように頼んだ。久米彦は聞き入れ、スミエルを連れてくると二人とも自分の部屋に入れて鍵をかけ、どこかに行ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5413
愛善世界社版:
157頁
八幡書店版:
第9輯 676頁
修補版:
校定版:
157頁
普及版:
72頁
初版:
ページ備考:
001
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
には
巨大
(
きよだい
)
なる
猪
(
ゐのしし
)
の
形
(
かたち
)
をした
岩倉
(
いはくら
)
がある。
002
之
(
これ
)
を
以
(
もつ
)
て
猪倉
(
ゐのくら
)
の
名
(
な
)
が
出来
(
でき
)
たのである。
003
山
(
やま
)
の
五合目
(
ごがふめ
)
以上
(
いじやう
)
は
全部
(
ぜんぶ
)
岩
(
いは
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
められ、
004
五合目
(
ごがふめ
)
以下
(
いか
)
は
凄
(
すご
)
いやうな
密林
(
みつりん
)
である。
005
そして
此
(
この
)
岩
(
いは
)
には
所々
(
ところどころ
)
に
岩窟
(
がんくつ
)
の
入口
(
いりぐち
)
があつて、
006
其
(
その
)
内部
(
ないぶ
)
は
数
(
すう
)
里
(
り
)
に
渡
(
わた
)
つてゐると
噂
(
うはさ
)
され、
007
大
(
おほ
)
きな
蝙蝠
(
かうもり
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
棲
(
す
)
んでゐた。
008
此
(
この
)
窟内
(
くつない
)
には
所々
(
ところどころ
)
に
綺麗
(
きれい
)
な
水
(
みづ
)
が
湧
(
わ
)
いてゐて、
009
少
(
すこ
)
しも
水
(
みづ
)
には
不自由
(
ふじゆう
)
がない。
010
そして
所々
(
ところどころ
)
岩
(
いは
)
から
甘露
(
かんろ
)
のやうな
油
(
あぶら
)
がにじみ
出
(
だ
)
し、
011
之
(
これ
)
さへ
嘗
(
な
)
めて
居
(
を
)
れば、
012
余
(
あま
)
り
労働
(
らうどう
)
をせぬ
限
(
かぎ
)
り、
013
二
(
に
)
ケ
月
(
げつ
)
や
三
(
さん
)
ケ
月
(
げつ
)
は
体力
(
たいりよく
)
が
衰
(
おとろ
)
へないと
云
(
い
)
ふ、
014
天与
(
てんよ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
である。
015
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
016
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
部下
(
ぶか
)
の
兵卒
(
へいそつ
)
を
探険
(
たんけん
)
の
為
(
ため
)
に
窟内
(
くつない
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
ましめ、
017
調査
(
てうさ
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
018
別
(
べつ
)
に
恐
(
おそ
)
ろしい
猛獣
(
まうじう
)
も
棲
(
す
)
んでゐない
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたので、
019
愈
(
いよいよ
)
ここを
本拠
(
ほんきよ
)
と
定
(
さだ
)
め、
020
五合目
(
ごがふめ
)
以下
(
いか
)
に
俄作
(
にはかづく
)
りの
兵舎
(
へいしや
)
を
作
(
つく
)
つて、
021
谷川
(
たにがは
)
を
堺
(
さかひ
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こ
)
もつたのである。
022
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
居
(
を
)
りさへすれば、
023
いかに
治国別
(
はるくにわけ
)
が
神力
(
しんりき
)
あり
共
(
とも
)
、
024
決
(
けつ
)
しておとす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
まい、
025
大雲山
(
だいうんざん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
よりも
幾倍
(
いくばい
)
堅固
(
けんご
)
であり、
026
且
(
かつ
)
広
(
ひろ
)
いかも
知
(
し
)
れぬ。
027
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
はここを
自分
(
じぶん
)
の
千代
(
ちよ
)
の
住家
(
すみか
)
として
全力
(
ぜんりよく
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
028
岩
(
いは
)
を
切
(
き
)
り
拡
(
ひろ
)
げたり、
029
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
として、
030
三千
(
さんぜん
)
の
兵士
(
へいし
)
の
中
(
なか
)
で
孔鑿
(
こうさく
)
に
器用
(
きよう
)
なものを
選
(
えら
)
んで
昼夜
(
ちうや
)
岩窟
(
がんくつ
)
の
鑿掘
(
さくくつ
)
をやつてゐた。
031
穴
(
あな
)
の
入口
(
いりぐち
)
の
前
(
まへ
)
には
俄作
(
にはかづく
)
りの
事務所
(
じむしよ
)
があつて、
032
そこにはスパール、
033
エミシのカーネルが
固
(
かた
)
く
守
(
まも
)
つてゐた。
034
窟内
(
くつない
)
の
中央
(
ちうあう
)
とも
覚
(
おぼ
)
しき
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
居間
(
ゐま
)
には
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
035
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
がそこら
中
(
ぢう
)
で
徴収
(
ちようしう
)
して
来
(
き
)
た
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
036
懐旧談
(
くわいきうだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
037
鬼春
(
おにはる
)
『
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
、
038
かやうな
堅城
(
けんじやう
)
鉄壁
(
てつぺき
)
に
陣取
(
ぢんど
)
つた
上
(
うへ
)
は
最早
(
もはや
)
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
で
厶
(
ござ
)
るが、
039
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
千載
(
せんざい
)
の
恨事
(
こんじ
)
ともいふは、
040
ヒルナ、
041
カルナの
両人
(
りやうにん
)
を
遁
(
のが
)
した
事
(
こと
)
だ。
042
此奴
(
こいつ
)
をどうかして
奪
(
と
)
り
還
(
かへ
)
す
工夫
(
くふう
)
はなからうかな』
043
久米
(
くめ
)
『サア、
044
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
にかけさへすれば、
045
奪
(
と
)
り
還
(
かへ
)
されない
事
(
こと
)
はありますまいが、
046
あの
通
(
とほ
)
りライオンが、
047
あの
女
(
をんな
)
には
守護
(
しゆご
)
してると
見
(
み
)
えますから、
048
一寸
(
ちよつと
)
は
難
(
むつ
)
かしいでせう』
049
鬼春
(
おにはる
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
050
目
(
め
)
も
眩
(
くら
)
むやうな
美人
(
びじん
)
だから、
051
元
(
もと
)
より
一通
(
ひととほ
)
りの
者
(
もの
)
ではないと
思
(
おも
)
うてゐた。
052
大方
(
おほかた
)
あれは
何神
(
なにがみ
)
かの
化身
(
けしん
)
であつたに
違
(
ちがひ
)
ない。
053
ああ、
054
馬鹿
(
ばか
)
な
目
(
め
)
を
見
(
み
)
たものだ。
055
久米彦
(
くめひこ
)
、
056
お
前
(
まへ
)
が
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かないものだから、
057
掌中
(
しやうちう
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
られて
了
(
しま
)
つたのだよ。
058
鼻
(
はな
)
はねぢられ、
059
顔
(
かほ
)
はかきむしられ、
060
イヤもうゼネラルとしての
貫目
(
くわんめ
)
はゼロで
厶
(
ござ
)
る』
061
久米
(
くめ
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
062
あなたが
率先
(
そつせん
)
して
美人
(
びじん
)
に
魂
(
たましひ
)
をぬかれ
遊
(
あそ
)
ばすのだから、
063
拙者
(
せつしや
)
がのろけるのは、
064
言
(
い
)
はば
閣下
(
かくか
)
の
教育
(
けういく
)
に
依
(
よ
)
つたも
同然
(
どうぜん
)
、
065
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ』
066
鬼春
(
おにはる
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
申
(
まを
)
すな。
067
カルナを
始
(
はじ
)
めて
陣中
(
ぢんちう
)
に
引張
(
ひつぱ
)
つたのは、
068
貴殿
(
きでん
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか』
069
久米
(
くめ
)
『あつて
過
(
す
)
ぎた
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
びますまい、
070
それよりも
今度
(
こんど
)
ぼつたくつて
来
(
き
)
た、
071
スミエルにスガールの
両人
(
りやうにん
)
、
072
あれを
何
(
なん
)
とか
説
(
と
)
きつけて、
073
一
(
いち
)
時
(
じ
)
ヒルナ、
074
カルナの
代用品
(
だいようひん
)
にしたら
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る』
075
鬼春
(
おにはる
)
『イヤもう
女
(
をんな
)
には
懲々
(
こりごり
)
した。
076
あれは
飯焚
(
めしたき
)
をさしておけば
可
(
い
)
いのだ』
077
久米
(
くめ
)
『
然
(
しか
)
らば
両人
(
りやうにん
)
に
飯焚
(
めした
)
きをさせませう、
078
そしてあなたが
女
(
をんな
)
に
懲々
(
こりごり
)
なさつたとあれば、
079
拙者
(
せつしや
)
が
両人共
(
りやうにんとも
)
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
080
鬼春
(
おにはる
)
『イヤさうは
参
(
まゐ
)
らぬ、
081
貴殿
(
きでん
)
が
勝手
(
かつて
)
に
致
(
いた
)
す
位
(
くらゐ
)
なら
拙者
(
せつしや
)
も
勝手
(
かつて
)
に
致
(
いた
)
す』
082
久米
(
くめ
)
『
然
(
しか
)
らばあなたは
上官
(
じやうくわん
)
の
事
(
こと
)
でもありますから、
083
姉
(
あね
)
のスミエルを
御
(
ご
)
自由
(
じいう
)
になさいませ。
084
拙者
(
せつしや
)
はスガールを
預
(
あづか
)
りませう』
085
鬼春
(
おにはる
)
『スガールはカルナ
姫
(
ひめ
)
に
次
(
つ
)
いでの
美人
(
びじん
)
、
086
スミエルは
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
醜婦
(
しうふ
)
だ。
087
左様
(
さやう
)
な
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいぞ』
088
久米
(
くめ
)
『
然
(
しか
)
らば
両人
(
りやうにん
)
の
自由
(
じいう
)
に
任
(
まか
)
せ、
089
選択
(
せんたく
)
をさせたら
如何
(
どう
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
090
鬼春
(
おにはる
)
『ヤ、
091
それが
宜
(
よ
)
からう、
092
然
(
しか
)
らばスガールを
呼出
(
よびだ
)
して、
093
お
前
(
まへ
)
どちらが
好
(
す
)
きだか……と
尋
(
たづ
)
ねてみよう。
094
そしてスガールの
好
(
す
)
きだと
云
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
彼女
(
かのぢよ
)
を
自由
(
じいう
)
にするのだ、
095
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
さしても
面白
(
おもしろ
)
くない、
096
又
(
また
)
男
(
をとこ
)
らしうもないからな』
097
久米
(
くめ
)
『そら
面白
(
おもしろ
)
いでせう、
098
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
099
あなたは
軍服
(
ぐんぷく
)
を
見
(
み
)
れば
上官
(
じやうくわん
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
りますから、
100
女
(
をんな
)
といふ
者
(
もの
)
は
虚栄心
(
きよえいしん
)
の
強
(
つよ
)
いもの
故
(
ゆゑ
)
、
101
キツと
地位
(
ちゐ
)
の
高
(
たか
)
いものに
靡
(
なび
)
くは
当然
(
たうぜん
)
、
102
それでは
面白
(
おもしろ
)
くないから、
103
どちらもチューニックを
脱
(
ぬ
)
ぎ
平服
(
へいふく
)
になり、
104
階級
(
かいきふ
)
の
高下
(
かうげ
)
が
分
(
わか
)
らないやうにし、
105
選
(
えら
)
ましたら
何
(
ど
)
うでせう』
106
鬼春
(
おにはる
)
『ウン、
107
そら
面白
(
おもしろ
)
い、
108
それが
本当
(
ほんたう
)
だ。
109
サ、
110
早
(
はや
)
く
誰
(
たれ
)
かを
呼
(
よ
)
んで、
111
スガールを
此処
(
ここ
)
へ
召伴
(
めしつ
)
れ
来
(
きた
)
る
様
(
やう
)
、
112
お
命
(
めい
)
じなさい』
113
久米彦
(
くめひこ
)
はうち
諾
(
うな
)
づき、
114
此
(
この
)
居間
(
ゐま
)
を
出
(
で
)
て、
115
次
(
つぎ
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
至
(
いた
)
り、
116
リウチナントのサムといふ
男
(
をとこ
)
に、
117
スガールを
将軍
(
しやうぐん
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
引
(
ひき
)
つれ
来
(
きた
)
る
事
(
こと
)
を
厳命
(
げんめい
)
した。
118
リウチナントは『ハイ』と
答
(
こた
)
へて、
119
スガールの
押込
(
おしこ
)
んである
岩窟
(
がんくつ
)
の
一間
(
ひとま
)
に
足
(
あし
)
を
急
(
いそ
)
いだ。
120
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
軍服
(
ぐんぷく
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
121
平服
(
へいふく
)
と
着替
(
きか
)
へ、
122
顔
(
かほ
)
の
整理
(
せいり
)
などして、
123
色男
(
いろをとこ
)
の
競争
(
きやうそう
)
をやつて、
124
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
つてゐる。
125
暫
(
しばら
)
くあつてスガールは
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
中尉
(
ちうゐ
)
に
送
(
おく
)
られ、
126
将軍
(
しやうぐん
)
の
居間
(
ゐま
)
にやつて
来
(
き
)
て、
127
ビリビリ
慄
(
ふる
)
うてゐる。
128
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
相好
(
さうがう
)
を
崩
(
くづ
)
し、
129
鬼春
(
おにはる
)
『オイ、
130
スガール、
131
お
前
(
まへ
)
も
随分
(
ずいぶん
)
不便
(
ふべん
)
であらうの。
132
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
全軍
(
ぜんぐん
)
を
統率
(
とうそつ
)
する
将軍
(
しやうぐん
)
だ、
133
ここにゐる
男
(
をとこ
)
も
亦
(
また
)
同
(
おな
)
じく
将軍
(
しやうぐん
)
だ。
134
部下
(
ぶか
)
に
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
があつて、
135
其方
(
そなた
)
を
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
伴
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たさうだが
実
(
じつ
)
に
不愍
(
ふびん
)
な
者
(
もの
)
だ。
136
何
(
ど
)
うかしてお
前
(
まへ
)
を
親
(
おや
)
の
内
(
うち
)
へ
送
(
おく
)
つてやりたいと、
137
いろいろ
両人
(
りやうにん
)
が
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つてゐるのだが、
138
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
此
(
この
)
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
は、
139
三五教
(
あななひけう
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
が、
140
幾万
(
いくまん
)
とも
知
(
し
)
れず、
141
押寄
(
おしよ
)
せて
来
(
き
)
てゐるのだから、
142
険難
(
けんのん
)
で
送
(
おく
)
つてやる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
143
暫
(
しばら
)
くマア
此処
(
ここ
)
で
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
つたがよからう、
144
そして
不自由
(
ふじゆう
)
な
事
(
こと
)
があつたら、
145
どんな
事
(
こと
)
でも
聞
(
き
)
いてやるから、
146
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
言
(
い
)
うたがいいぞ』
147
スガール『ハイ、
148
思
(
おも
)
ひもよらぬ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
、
149
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
150
久米彦
(
くめひこ
)
は
鬼春別
(
おにはるわけ
)
に
女
(
をんな
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
り
相
(
さう
)
な
事
(
こと
)
計
(
ばか
)
り、
151
先
(
さき
)
に
言
(
い
)
はれて
了
(
しま
)
ひ、
152
自分
(
じぶん
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がないので、
153
何
(
ど
)
うしようかなアと
胸
(
むね
)
を
痛
(
いた
)
めつつ
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んだ。
154
どうやら
鬼春別
(
おにはるわけ
)
にスガールは
思召
(
おぼしめし
)
がありさうに
思
(
おも
)
はれるので、
155
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でならず、
156
久米
(
くめ
)
『ああ
其方
(
そなた
)
スガールといふ
玉木
(
たまき
)
の
村
(
むら
)
でも
有名
(
いうめい
)
な
美人
(
びじん
)
だ、
157
本当
(
ほんたう
)
に
悪者
(
わるもの
)
の
手
(
て
)
にかかつて、
158
かやうな
所
(
ところ
)
へ
来
(
く
)
るとは、
159
不愍
(
ふびん
)
な
者
(
もの
)
だなア、
160
俺
(
おれ
)
も
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
にくれてゐるのだ、
161
どうかして、
162
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
玉木
(
たまき
)
の
村
(
むら
)
へ
送
(
おく
)
つてやりたいのだが、
163
今
(
いま
)
将軍
(
しやうぐん
)
のいはれた
通
(
とほ
)
り、
164
敵軍
(
てきぐん
)
が
取囲
(
とりかこ
)
んでゐるから、
165
ここ
暫
(
しばら
)
くは
辛抱
(
しんばう
)
してくれねばなるまい、
166
バラモン
軍
(
ぐん
)
に
捉
(
とら
)
はれてゐなければ
三五軍
(
あななひぐん
)
に
捉
(
とら
)
はれてゐるのだ、
167
それを
思
(
おも
)
へば、
168
お
前
(
まへ
)
は
実
(
じつ
)
に
仕合
(
しあは
)
せだよ。
169
キツト
敵
(
てき
)
を
退散
(
たいさん
)
させてみる
心算
(
つもり
)
だから、
170
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
信
(
しん
)
じて、
171
楽
(
たのし
)
んで
待
(
ま
)
つてゐるが
可
(
よ
)
いワ。
172
なア、
173
スガール、
174
かう
見
(
み
)
えても、
175
随分
(
ずいぶん
)
親切
(
しんせつ
)
な
男
(
をとこ
)
だらう』
176
スガール『ハイ、
177
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
178
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によう
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さりました。
179
どうぞ
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
180
鬼春
(
おにはる
)
『オイ、
181
スガール、
182
お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
将軍
(
しやうぐん
)
さまと
私
(
わたし
)
と
何方
(
どちら
)
が
優
(
やさ
)
しい
男
(
をとこ
)
と
思
(
おも
)
ふか、
183
それが
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
きたいものだなア』
184
スガール『ハイ、
185
どちら
様
(
さま
)
も、
186
人情深
(
にんじやうぶか
)
いお
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
います。
187
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
188
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
りませぬが、
189
一口
(
ひとくち
)
でも
先
(
さき
)
へ、
190
優
(
やさ
)
しい
言葉
(
ことば
)
をおかけ
下
(
くだ
)
さつたお
方
(
かた
)
が
嬉
(
うれ
)
しう
厶
(
ござ
)
います』
191
鬼春
(
おにはる
)
『アハハハハ、
192
さうすると、
193
此
(
この
)
髭面
(
ひげづら
)
の
方
(
はう
)
が
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つたと
言
(
い
)
ふのかな』
194
スガール『ハイ、
195
別
(
べつ
)
に
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るといふ
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬが、
196
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
だと
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
を
)
ります』
197
鬼春
(
おにはる
)
『ウン、
198
親切
(
しんせつ
)
は
分
(
わか
)
つてゐるが、
199
もし
仮
(
か
)
りにお
前
(
まへ
)
が
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つとしたらば、
200
何方
(
どちら
)
を
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
つか、
201
それが
聞
(
き
)
きたいものだ』
202
スガール『どうぞ、
203
そんな
事
(
こと
)
は
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな、
204
妾
(
わらは
)
は
軍人
(
ぐんじん
)
なんか
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
つ
気
(
き
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ』
205
鬼春
(
おにはる
)
『
軍人
(
ぐんじん
)
が
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らねば
軍人
(
ぐんじん
)
をやめてもよい、
206
そしたらお
前
(
まへ
)
は
何
(
ど
)
うするか』
207
スガール『ハイ、
208
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
が
一度
(
いちど
)
に
軍人
(
ぐんじん
)
をやめて、
209
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
にお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
時
(
とき
)
には
妾
(
わらは
)
はあとのお
方
(
かた
)
に
貰
(
もら
)
つて
頂
(
いただ
)
きます。
210
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らモツトモツト、
211
綺麗
(
きれい
)
な
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
男
(
をとこ
)
も
世間
(
せけん
)
にはありませうから、
212
さうあわてるには
及
(
およ
)
びませぬ』
213
久米
(
くめ
)
『コリヤ、
214
女
(
をんな
)
、
215
お
前
(
まへ
)
は
年
(
とし
)
にも
似合
(
にあ
)
はず
大胆
(
だいたん
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
だなア、
216
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
拙者
(
せつしや
)
が
好
(
す
)
きだと
云
(
い
)
つたな、
217
エヘヘヘヘ、
218
鬼春別
(
おにはるわけ
)
さま、
219
すみませぬが、
220
御
(
お
)
約束通
(
やくそくどほり
)
拙者
(
せつしや
)
が
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しませう、
221
あなたはスミエルさまで
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
なさいませ』
222
鬼春
(
おにはる
)
『オイ、
223
スガール、
224
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてくれ、
225
俺
(
おれ
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるから』
226
スガール『ハイ、
227
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しましたら、
228
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
がお
立腹
(
りつぷく
)
遊
(
あそ
)
ばしますでせう、
229
マア
言
(
い
)
ひますまい』
230
久米
(
くめ
)
『
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてくれ、
231
決
(
けつ
)
して
喧嘩
(
けんくわ
)
はしない、
232
何程
(
なにほど
)
将軍
(
しやうぐん
)
が
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
遊
(
あそ
)
ばしてもお
前
(
まへ
)
の
意見
(
いけん
)
できまるのだから、
233
武士
(
ぶし
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
はないのだから、
234
サ、
235
ここで、
236
スツパリと
久米彦
(
くめひこ
)
さまが
好
(
す
)
きなら、
237
言
(
い
)
つたがよからうぞ』
238
スガール『バラモン
軍
(
ぐん
)
の
頭
(
かしら
)
をして
厶
(
ござ
)
るやうなお
方
(
かた
)
には、
239
死
(
し
)
んでも
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
240
あなたは
人民
(
じんみん
)
の
仇
(
かたき
)
です、
241
かやうな
所
(
ところ
)
へつれ
込
(
こ
)
まれ、
242
あなた
方
(
がた
)
の、
243
獣
(
けだもの
)
の
弄物
(
おもちや
)
になるのなら、
244
死
(
し
)
んだがマシで
厶
(
ござ
)
います、
245
再
(
ふたた
)
び
親
(
おや
)
の
内
(
うち
)
へ
帰
(
かへ
)
らうなどとそんな
未練
(
みれん
)
は
持
(
も
)
ちませぬ、
246
エエ
汚
(
けが
)
らはしい、
247
どうぞ
殺
(
ころ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
248
鬼春
(
おにはる
)
『アハハハハ
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
、
249
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る。
250
余
(
あま
)
り、
251
得意
(
とくい
)
になつて、
252
ホラも
吹
(
ふ
)
けますまい』
253
久米
(
くめ
)
『エエ
仕方
(
しかた
)
がない、
254
牢獄
(
らうごく
)
へぶち
込
(
こ
)
んでやろ、
255
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
だ。
256
そして
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
考
(
かんが
)
へ
一
(
ひと
)
つに
仍
(
よ
)
つて、
257
姉
(
あね
)
のスミエルも
如何
(
いか
)
なる
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
るか
知
(
し
)
れぬから
覚悟
(
かくご
)
をせい』
258
と
荒々
(
あらあら
)
しく
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
259
久米彦
(
くめひこ
)
はスガールの
手
(
て
)
を
無理
(
むり
)
に
引
(
ひつ
)
ぱつて、
260
長
(
なが
)
い
隧道
(
とんねる
)
を
伝
(
つた
)
うて
行
(
ゆ
)
く。
261
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
双手
(
もろて
)
をくみ、
262
首
(
くび
)
をうなだれて、
263
独言
(
ひとりごと
)
、
264
『ああ
此
(
この
)
道
(
みち
)
計
(
ばか
)
りは
如何
(
いか
)
なる
権力
(
けんりよく
)
も
強迫
(
きやうはく
)
も
駄目
(
だめ
)
だなア、
265
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
一旦
(
いつたん
)
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した
事
(
こと
)
、
266
此
(
この
)
儘
(
まま
)
ひつ
込
(
こ
)
んでは
男
(
をとこ
)
が
立
(
た
)
たぬ、
267
又
(
また
)
久米彦
(
くめひこ
)
に
占領
(
せんりやう
)
されては、
268
尚々
(
なほなほ
)
顔
(
かほ
)
が
立
(
た
)
たない、
269
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
をめぐらして、
270
スガールの
心
(
こころ
)
を
動
(
うご
)
かす
方法
(
はうはふ
)
はあるまいかなア』
271
と
小声
(
こごゑ
)
で
囁
(
ささや
)
いてゐた。
272
一方
(
いつぱう
)
久米彦
(
くめひこ
)
は
牢獄
(
らうごく
)
へ
投
(
とう
)
ずると
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
273
長
(
なが
)
い
隧道
(
とんねる
)
をくぐつて、
274
曲
(
まが
)
り
角
(
かど
)
の
暗
(
くら
)
い
所
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
、
275
久米
(
くめ
)
『オイ、
276
スガール、
277
お
前
(
まへ
)
本気
(
ほんき
)
であんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つたのか』
278
スガール『
本気
(
ほんき
)
です
共
(
とも
)
、
279
妾
(
わらは
)
は
命
(
いのち
)
は
欲
(
ほ
)
しくはないんですから、
280
命
(
いのち
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してゐるのですもの』
281
久米
(
くめ
)
『フーム、
282
さうか、
283
俺
(
おれ
)
の
為
(
ため
)
に
命
(
いのち
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふのだな、
284
ヤ、
285
心底
(
しんてい
)
がみえた、
286
感心
(
かんしん
)
々々
(
かんしん
)
、
287
俺
(
おれ
)
も
其
(
その
)
つもりで
影
(
かげ
)
から
可愛
(
かあい
)
がつてやろ』
288
スガール『エエ
気色
(
きしよく
)
の
悪
(
わる
)
い、
289
誰
(
たれ
)
があんたなんかに
命
(
いのち
)
を
差出
(
さしだ
)
す
者
(
もの
)
がありますか、
290
悪
(
あく
)
の
張本人
(
ちやうほんにん
)
、
291
馬賊
(
ばぞく
)
の
親方
(
おやかた
)
みたいな
男
(
をとこ
)
に、
292
死
(
し
)
んでも
靡
(
なび
)
きませぬワ』
293
久米
(
くめ
)
『ハハハハハ、
294
ヒルナ、
295
カルナの
奴
(
やつ
)
には
惚
(
ほ
)
れたやうな
顔
(
かほ
)
をして、
296
甘
(
うま
)
く
騙
(
だま
)
されたが、
297
此奴
(
こいつ
)
ア
又
(
また
)
あべこべだ。
298
此
(
こ
)
んな
奴
(
やつ
)
に
本当
(
ほんたう
)
のものがあるのだ、
299
ここが
一
(
ひと
)
つ
骨
(
ほね
)
の
折所
(
をりどころ
)
だ』
300
と
自惚
(
うぬぼ
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
301
スガールの
背中
(
せなか
)
を
撫
(
な
)
で、
302
猫
(
ねこ
)
なで
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
303
久米
(
くめ
)
『オイ、
304
スガール、
305
さう
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てるものぢやない、
306
お
前
(
まへ
)
が
俺
(
わし
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りにすれば
何事
(
なにごと
)
も
都合好
(
つがふよ
)
くゆくのだ。
307
キツとお
前
(
まへ
)
のお
父
(
とう
)
さまやお
母
(
かあ
)
さまに
会
(
あ
)
はしてやるから、
308
俺
(
わし
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りになるのだ、
309
可
(
い
)
いか、
310
よく
物
(
もの
)
を
考
(
かんが
)
へてみよ』
311
スガールはとても
抵抗
(
ていかう
)
した
所
(
ところ
)
で
遁
(
のが
)
れない、
312
一時
(
いつとき
)
のがれに
何
(
なん
)
とかゴマかしておかうと
俄
(
にはか
)
に
思案
(
しあん
)
を
定
(
さだ
)
め、
313
ワザと
嬉
(
うれ
)
しげに、
314
スガール『ハイ、
315
本当
(
ほんたう
)
の
私
(
わたし
)
の
精神
(
せいしん
)
はお
察
(
さつ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ、
316
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
317
あのやうに
云
(
い
)
つてみたので
厶
(
ござ
)
いますよ』
318
久米
(
くめ
)
『アハハハハ、
319
ヤツパリ
俺
(
わし
)
の
目
(
め
)
は
黒
(
くろ
)
い、
320
さうだらう。
321
ヨシ、
322
それなら
俺
(
わし
)
のここに
特別室
(
とくべつしつ
)
があるから、
323
ここへ
這入
(
はい
)
つて
居
(
を
)
れ、
324
将軍
(
しやうぐん
)
の
方
(
はう
)
へは、
325
お
前
(
まへ
)
を
牢獄
(
らうごく
)
へぶち
込
(
こ
)
んだと
甘
(
うま
)
く
云
(
い
)
つておくから……』
326
スガール『それは
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
327
どうぞ
姉
(
ねえ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
において
下
(
くだ
)
さいな、
328
別々
(
べつべつ
)
に
居
(
ゐ
)
るのも
淋
(
さび
)
しう
厶
(
ござ
)
いますから、
329
妾
(
わらは
)
を
真
(
しん
)
に
愛
(
あい
)
して
下
(
くだ
)
さるのなら、
330
恋
(
こひ
)
しい
姉
(
ねえ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
において
下
(
くだ
)
さるでせうねえ』
331
久米
(
くめ
)
『さうだ、
332
二人
(
ふたり
)
おくのはチツと
都合
(
つがふ
)
は
悪
(
わる
)
いけれど、
333
外
(
ほか
)
ならぬお
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
だから、
334
曲
(
ま
)
げて
願
(
ねがひ
)
を
叶
(
かな
)
へてやろ、
335
どうだ
嬉
(
うれ
)
しいか』
336
スガール『ハイ
嬉
(
うれ
)
しう
厶
(
ござ
)
います、
337
サ、
338
早
(
はや
)
く、
339
何卒
(
どうぞ
)
姉
(
ねえ
)
さまを
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
340
久米彦
(
くめひこ
)
は
打
(
うち
)
うなづき
乍
(
なが
)
ら、
341
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
にスガールを
忍
(
しの
)
ばせおき、
342
スミエルを
牢屋
(
ひとや
)
から
引
(
ひつ
)
ぱり
出
(
だ
)
し、
343
自分
(
じぶん
)
の
寝室
(
しんしつ
)
に
伴
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
つた。
344
スガール『あれマア
姉
(
ねえ
)
さま、
345
会
(
あ
)
ひたう
厶
(
ござ
)
いました。
346
何
(
ど
)
うしてゐらつしやいましたの』
347
スミエル『ハ、
348
暗
(
くら
)
い
暗
(
くら
)
い
所
(
ところ
)
へ
一人
(
ひとり
)
入
(
い
)
れられて、
349
モウ
死
(
し
)
なうかモウ
死
(
し
)
なうかと
覚悟
(
かくご
)
してをつた
所
(
ところ
)
へ、
350
憐
(
あはれ
)
み
深
(
ぶか
)
い
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
がお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいまして、
351
妹
(
いもうと
)
に
会
(
あ
)
はしてやらうと
仰有
(
おつしや
)
つて
此処
(
ここ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつたのよ。
352
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
353
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
354
久米
(
くめ
)
『ヨシヨシ、
355
モウ
心配
(
しんぱい
)
はいらぬ、
356
又
(
また
)
時機
(
じき
)
をみて、
357
親
(
おや
)
の
内
(
うち
)
へ
送
(
おく
)
つてやる。
358
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
さずに、
359
此処
(
ここ
)
に
隠
(
かく
)
れてゐるが
宜
(
よろ
)
しい、
360
又
(
また
)
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
見付
(
みつ
)
かると
大変
(
たいへん
)
だから、
361
私
(
わし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
軍務
(
ぐんむ
)
の
都合
(
つがふ
)
に
仍
(
よ
)
つて、
362
陣営
(
ぢんえい
)
を
巡視
(
じゆんし
)
してくるから』
363
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らピタリと
戸
(
と
)
をしめ、
364
外
(
そと
)
から
鍵
(
かぎ
)
をおろして、
365
どつかへ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
366
(
大正一二・二・二二
旧一・七
於竜宮館
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 妖瞑酒
(B)
(N)
暗窟 >>>
霊界物語
>
第54巻
> 第3篇 猪倉城寨 > 第13章 岩情
Tweet
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【13 岩情|第54巻(巳の巻)|霊界物語/rm5413】
合言葉「みろく」を入力して下さい→