霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 火救団(くわきうだん)〔一四〇三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第4篇 関所の玉石 よみ(新仮名遣い):せきしょのぎょくせき
章:第17章 火救団 よみ(新仮名遣い):かきゅうだん 通し章番号:1403
口述日:1923(大正12)年02月23日(旧01月8日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
次に八衢の関所にやってきた女は、スミエルだった。守衛との問答の中で、スミエルは自分が婿養子の縁談を断っていたのは、番頭のシーナに恋着していたことを明かす。
スミエルは夫婦の理想こそが重要で、双方に人格が平等な関係でなければ真の結婚とは言えないと結婚論を披露した。赤の守衛は、また恋愛至上主義者がやってきたと言いながらも、スミエルの論が最も優れていると評した。
そこへスガールがやってきた。守衛は二人に対して、二人の肉体は暗い落とし穴に放り込まれているが、まだ生死簿には寿命が残っているからには神様が何とかして現界に帰してくれるだろう、と言い渡した。
そこへ道治別とシーナが宣伝歌を歌いながらやってきた。道晴別とシーナも、守衛からまだ寿命が残っていることを知らされた。赤の守衛は四人に対して、何れ立派な宣伝使の精霊がやってきて、四人を現界に連れて行ってくれるだろうと述べた。
すると東の方から呼ばわる声が聞こえてきた。一道の光明が低空を轟かして進み来たり、四人の前に緩やかに落ちた。火団はたちまち四柱の神人と化した。
道晴別がよくよく見れば、師匠の治国別、松彦、竜彦、万公の一行であった。道晴別はうれし涙にくれながら、四人に呼びかけてお礼を述べた。
いつとはなしに四方から普遍的な光明が差してきた。この光明に照らされて、八人の姿は煙のように消えてしまった。八衢の関所も、赤と白の守衛の姿も見えなくなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5417
愛善世界社版:211頁 八幡書店版:第9輯 697頁 修補版: 校定版:214頁 普及版:99頁 初版: ページ備考:
001 八衢(やちまた)関所(せきしよ)にトボトボとやつて()一人(ひとり)(をんな)がある。002守衛(しゆゑい)(をんな)(むか)ひ、
003(あか)『ここは八衢(やちまた)関所(せきしよ)だ、004一寸(ちよつと)調(しら)べる(こと)があるから()つて(もら)()い』
005 (をんな)はハツと(おどろ)いて叮嚀(ていねい)辞儀(じぎ)をし(なが)ら、
006(をんな)『ハイ、007(なに)御用(ごよう)(ござ)りますか』
008(あか)『お(まへ)何処(どこ)(をんな)だ。009姓名(せいめい)()かして(もら)はう』
010(をんな)『ハイ、011(わたし)はフサの(くに)012玉木村(たまきむら)のテームスの(むすめ)スミエルと(まを)します』
013 守衛(しゆゑい)は『フサの(くに) フサの(くに)』と()(なが)(よこ)(なが)帳面(ちやうめん)念入(ねんい)りにめくつて、
014(あか)『お(まへ)()未婚者(みこんしや)だなア』
015スミエル『ハイ、016左様(さやう)(ござ)ります。017どうも(えん)遠縁(とほえん)(ござ)りまして(こま)つて()ります』
018(あか)(いま)(まで)幾度(いくど)ともなく縁談(えんだん)(まを)()みがあつたぢやないか。019何故(なぜ)両親(りやうしん)言葉(ことば)()いて(はや)養子(やうし)(むか)へなかつたか』
020スミエル『随分(ずいぶん)立派(りつぱ)養子(やうし)(まを)()んで(くだ)さいましたけれど、021御存(ごぞん)じの(とほ)りお多福(たふく)(ござ)りますれば、022(しん)から(わたくし)(あい)して養子(やうし)()(ひと)はありませぬ。023(みんな)(ちち)財産(ざいさん)相続(さうぞく)するのが目的(もくてき)養子(やうし)(まを)()みがあるのですから、024そんな犠牲(ぎせい)にせられちや(たま)りませぬからな。025(すで)養子(やうし)とならば主人(しゆじん)です。026両親(りやうしん)()(くろ)(うち)()(かく)027両親(りやうしん)国替(くにがへ)でも(いた)しましたら、028そろそろ(かぶ)つて()(ねこ)(かは)()本性(ほんしやう)(あら)はし、029(うつく)しき(をんな)(てかけ)()いたり、030(あるひ)本妻(ほんさい)をおつ()()し、031(てかけ)本妻(ほんさい)にする悪性(あくしやう)(をとこ)(おほ)()(なか)ですから、032うつかり養子(やうし)(もら)(わけ)にも(まゐ)りませぬ』
033(あか)『お(まへ)実際(じつさい)(ところ)034番頭(ばんとう)のシーナに恋着(れんちやく)してゐるのだらう。035それだから左様(さやう)(こと)(まを)して、036立派(りつぱ)養子(やうし)があつても(みな)()ねつけてゐるのだらうがな』
037スミエル『お(さつ)しの(とほ)り、038(うち)()いた番頭(ばんとう)(ござ)りますけれど、039ラブに上下(じやうげ)区別(くべつ)(ござ)りませぬ。040(また)番頭(ばんとう)養子(やうし)にして()けば、041世間(せけん)(をつと)(やう)威張(ゐば)らなくて何程(なにほど)()いか()れませぬから、042(いへ)()めにも自分(じぶん)()めにも大変(たいへん)好都合(かうつがふ)(ぞん)じまして、043両親(りやうしん)如何(どう)(かんが)へてるか()りませぬが、044(わたくし)はそれに()めて()ります。045何程(なにほど)番頭(ばんとう)()つても人格(じんかく)(かは)りはありませぬ。046(すべ)(をとこ)(をんな)相互(あひたがひ)個人(こじん)としての人格(じんかく)基礎(きそ)として結合(けつがふ)すべきものだと(おも)ひます。047一方(いつぱう)から一方(いつぱう)奴隷扱(どれいあつか)ひするのでもなく物品視(ぶつぴんし)するのでもなく、048(また)(かみ)(ごと)尊崇(そんすう)するのでもない。049双方(さうはう)(とも)平等(べうどう)人格(じんかく)人格(じんかく)との結合(けつがふ)でなければ(しん)恋愛(れんあい)でもなく、050結婚(けつこん)でもありませぬ。051今日(こんにち)(ごと)男尊(だんそん)女卑(ぢよひ)(てき)結婚(けつこん)(じつ)不合理(ふがふり)(きは)まるもので、052(その)性的(せいてき)関係(くわんけい)()いても(ほとん)主人(しゆじん)奴僕(どぼく)(ごと)く、053顧客(こきやく)商品(しやうひん)との(ごと)く、054(あるひ)牝馬(ひんば)種馬(たねうま)との(ごと)く、055個人(こじん)として(すで)一度(ひとたび)()()めた人間(にんげん)から()れば(はなは)だしく非人間(ひにんげん)(てき)非論理(ひろんり)(てき)性的(せいてき)関係(くわんけい)だと()はねばなりますまい。056(をつと)女房(にようばう)(たい)して可愛(かあい)がるとか、057面倒(めんだう)()てやるとか、058(やさし)くするとか(など)言葉(ことば)(たい)して、059(つま)(はう)から旦那(だんな)(さま)のお()()るとか、060可愛(かあい)がられるとか()言葉(ことば)存立(そんりつ)()(ごと)夫婦(ふうふ)関係(くわんけい)は、061そこに仮令(たとへ)如何(いか)なる愛情(あいじやう)存在(そんざい)して()らうとも、062(けつ)して真正(しんせい)結婚(けつこん)ではありませぬ。063()(ぬし)愛犬(あいけん)(たい)する愛情(あいじやう)064(あるひ)資本家(しほんか)賃金(ちんぎん)報酬(ほうしう)(たい)する温情(をんじやう)主義(しゆぎ)(しよう)するものと(なん)()(こと)なるものなきもので、065(しん)(ひと)(ひと)との道徳(だうとく)(てき)関係(くわんけい)ではありませぬ。066女性(ぢよせい)(むか)つて只々(ただただ)温良(をんりやう)貞淑(ていしゆく)をのみ強要(きやうえう)せむとする(ごと)(をつと)は、067所謂(いはゆる)奴隷(どれい)道徳(だうとく)異性(いせい)()ゆるものであります。068(わたくし)(たち)社会(しやくわい)因襲(いんしふ)(てき)069かかる悪弊(あくへい)絶対(ぜつたい)(てき)排除(はいじよ)したいもので(ござ)います。070今日(こんにち)(おほ)くの婦人(ふじん)(あひだ)()びるとか、071(あま)へるとか、072じやれるとか、073()(いぬ)や、074()(ねこ)共通(きようつう)(てき)性情(せいじやう)をさへ具有(ぐいう)せしむるに(いた)つた(かな)しむべき事実(じじつ)()るに(いた)つたのは、075畢竟(つまり)(いま)(まで)人間(にんげん)(すこ)しも恋愛(れんあい)結婚(けつこん)(たい)する理解力(りかいりよく)がなかつたからで(ござ)います。076(わたし)第一(だいいち)077主人(しゆじん)だとか番頭(ばんとう)だとかの(くだ)らぬ障壁(しやうへき)取除(とりのぞ)き、078神聖(しんせい)なる恋愛(れんあい)()()いもので(ござ)います。079それ(ゆゑ)何程(なにほど)立派(りつぱ)(をとこ)でも智者(ちしや)学者(がくしや)でも、080(この)(かん)道理(だうり)(わか)らない頑固(ぐわんこ)(ひと)には、081一身(いつしん)(まか)せる(こと)出来(でき)ませぬ。082恋愛(れんあい)至上(しじやう)思想(しさう)があつて(はじ)めて一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)的確(てきかく)なる精神(せいしん)(てき)083道理(だうり)(てき)084合理(がふり)(てき)基礎(きそ)(あた)ふる(こと)出来(でき)るものでせう。085それ以外(いぐわい)一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)(ろん)偽善説(ぎぜんせつ)にあらざれば、086(すなは)(たん)なる便宜(べんぎ)(てき)087因襲(いんしふ)(てき)088実利(じつり)(てき)()都合主義(つがふしゆぎ)か、089形式(けいしき)主義(しゆぎ)たるものに()ぎないでせう。090理想(りさう)()はない夫婦(ふうふ)は、091何時(いつ)相互(さうご)(あひだ)必然(ひつぜん)(てき)紛擾(ふんぜう)(おこ)し、092モルモン(しう)(やう)一夫(いつぷ)多妻(たさい)主義(しゆぎ)()むを()()らなければならない(やう)になります。093(また)(をんな)(はう)では()むを()ずラマ(けう)(やう)に、094表面(へうめん)()(かく)095裏面(りめん)一妻(いつさい)多夫(たふ)主義(しゆぎ)(こころ)ならずも(おこな)はねばならぬ(やう)破目(はめ)になりますから、096(この)結婚(けつこん)問題(もんだい)のみは、097何程(なにほど)両親(りやうしん)言葉(ことば)だと()つても承諾(しようだく)する(こと)出来(でき)ませぬ。098それ(ゆゑ)番頭(ばんとう)のシーナさまも(わたし)(こま)()てて()るのですよ。099頑迷(ぐわんめい)不霊(ふれい)(おや)()つた(むすめ)(ぐらゐ)不幸(ふかう)(もの)(ござ)いませぬ』
100(あか)『またしても恋愛(れんあい)神聖論(しんせいろん)(しや)がやつて()て、101吾々(われわれ)頭脳(づなう)一種(いつしゆ)異様(いやう)反響(はんきやう)(あた)へよつた。102(しか)(なが)(この)(をんな)()(こと)も、103今日(こんにち)人間(にんげん)としては(もつとも)(すぐ)れた(かんが)へだ』
104 ()()(ところ)(すこ)しく(とし)(わか)い、105非常(ひじやう)美人(びじん)がトボトボとやつて()た。106スミエルは(この)(をんな)()るより(うれ)しさうに、
107スミエル『やア其方(そなた)(いもうと)スガールぢやないか』
108スガール『ハイ、109(ねえ)さまで(ござ)いましたか。110いい(ところ)でお()にかかりました。111猪倉山(ゐのくらやま)岩窟(がんくつ)()()まれ(くら)陥穽(おとしあな)(おと)されたかと(おも)へば、112こんな(ところ)(ぬけ)()てゐました。113(ねえ)さまもヤツパリ(わたし)(やう)()()つたのでせうね』
114スミエル『これ(いもうと)115ここは現界(げんかい)ではなく、116どうやら霊界(れいかい)(やう)塩梅(あんばい)ですよ。117姉妹(おとどい)二人(ふたり)(ふか)(あな)()()まれ、118(いのち)(うしな)つて霊魂(れいこん)がここへ()てゐるのでせうよ』
119スガール『そんな(こと)(ござ)いますまい。120これ()気分(きぶん)(しつか)りしてゐますもの。121(ゆめ)でもなければ()んだのでもありませぬ。122そんな(こと)()つて(くだ)さるな。123(わたし)(こころ)(さび)しう(ござ)いますわ』
124(あか)『スガールとやら、125其方(そなた)スミエルの(いもうと)()えるが、126ここは霊界(れいかい)八衢(やちまた)だから()だお(まへ)(たち)()(ところ)ではない。127(これ)から現界(げんかい)(かへ)つて(しばら)(はたら)かねばなりますまいぞ。128(しか)(なが)両人(りやうにん)身体(からだ)は、129(ふか)(くら)陥穽(おとしあな)()()まれてゐるのだから、130容易(ようい)(すく)()(こと)出来(でき)まい。131(しか)不思議(ふしぎ)(こと)には生死簿(せいしぼ)には(せい)としてあるから、132(かみ)(さま)(なん)とかして現界(げんかい)(かへ)して(くだ)さるだらう』
133スガール『左様(さやう)(ござ)いますか。134さうするとヤツパリ此処(ここ)霊界(れいかい)(ござ)いましたかな。135鬼春別(おにはるわけ)136久米彦(くめひこ)()ふゼネラルの部下(ぶか)(とら)へられ、137(ふか)(あな)()()まれたと(おも)へばヤツパリその(とき)(わたし)(たち)姉妹(しまい)現界(げんかい)()つて()たのですかな』
138 かかる(ところ)道晴別(みちはるわけ)139シーナの二人(ふたり)道々(みちみち)何事(なにごと)(はな)し、140(また)(かす)かな(こゑ)宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、141此方(こなた)(むか)つて(すす)んで()る。142その姿(すがた)道端(みちばた)()()(すか)して、143(ほのか)(あら)はれて()た。
144道晴別(みちはるわけ)(かみ)(おもて)(あら)はれて
145(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
146(この)()(かみ)のゐます(くに)
147()人草(ひとぐさ)()()べて
148(たふと)(かみ)御恵(みめぐ)みに
149()れたる(もの)はあらざらめ
150斎苑(いそ)(やかた)立出(たちい)でて
151魔神(まがみ)(たけ)(つき)(くに)
152大雲山(だいうんざん)(わだか)まる
153醜神(しこがみ)(たち)言向(ことむ)けて
154(この)()(ちり)(はら)はむと
155治国別(はるくにわけ)(したが)ひて
156(すす)(きた)れる(をり)もあれ
157(ほこら)(もり)(のこ)されて
158(みづ)御舎(みあらか)(つか)へつつ
159その神業(しんげふ)相果(あひは)てて
160(また)もや(すす)宣伝使(せんでんし)
161浮木(うきき)(もり)(あと)にして
162シメジ(たうげ)山麓(さんろく)
163()かかる(をり)しも曲津見(まがつみ)
164猪倉山(ゐのくらやま)陣取(ぢんど)りて
165四辺(あたり)(ひと)(なや)ませつ
166玉木(たまき)(むら)のテームスが
167(むすめ)二人(ふたり)掠奪(りやくだつ)
168(かへ)りし(こと)()くよりも
169見捨(みす)()ねたる義侠心(ぎけふしん)
170軍服姿(ぐんぷくすがた)()(やつ)
171シーナと(とも)曲神(まがかみ)
172(あつ)まる岩窟(いはや)()(むか)
173悪神(あくがみ)(たち)計略(けいりやく)
174(くら)(あな)へと()()まれ
175気絶(きぜつ)したりと(おも)ひきや
176何時(いつ)とはなしに漂渺(へうべう)
177(かぎ)りも()らぬ大野原(おほのはら)
178()らず()らずに辿(たど)りける
179(おも)ふにここは霊界(れいかい)
180八衢(やちまた)街道(かいだう)にあらざるか
181四辺(しへん)空気(くうき)はなんとなく
182(うつつ)()とは(かは)りけり
183ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
184御霊(みたま)(さち)はひましまして
185現界(うつしよ)幽界(かくりよ)(へだ)てなく
186(つみ)(けが)れし吾々(われわれ)
187身魂(みたま)(すく)天国(てんごく)
188(のぼ)らせ(たま)惟神(かむながら)
189国治立(くにはるたち)大御神(おほみかみ)
190豊国姫(とよくにひめ)大御神(おほみかみ)
191(みづ)御霊(みたま)大前(おほまへ)
192(つつし)(うやま)()(まつ)
193ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
194御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
195 二人(ふたり)(やうや)関所(せきしよ)門前(もんぜん)()いた。196よくよく()れば(すく)()さうとしてゐた、197スミエル、198スガールが、199(あか)200(しろ)守衛(しゆゑい)(とも)(なん)だか(はなし)をしてゐるので道晴別(みちはるわけ)不思議(ふしぎ)(さう)に、
201道晴(みちはる)拙者(せつしや)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)道晴別(みちはるわけ)(まを)します。202ここにゐられるのは玉木村(たまきむら)のテームス殿(どの)番頭(ばんとう)シーナさまで(ござ)ります。203二人(ふたり)()婦人(ふじん)はスミエル、204スガール(さま)ぢや(ござ)りませぬか』
205(あか)左様(さやう)(ござ)る。206只今(ただいま)ここへ精霊(せいれい)となつてお入来(いで)になりましたから、207(いま)(かへ)りを(すす)めて()(ところ)です』
208道晴(みちはる)『あ、209それは()厄介(やくかい)(ござ)いました。210(わたくし)(ほのか)(こころ)(うか)びますのは、211(この)()両人(りやうにん)(たす)()さうと(おも)ひ、212猪倉山(ゐのくらやま)岩窟(がんくつ)奇計(きけい)(もつ)(しの)()り、213失敗(しつぱい)(いた)し、214(てき)(さと)られ暗黒(あんこく)なる(ふか)(あな)()()まれたと(おも)へば、215斯様(かやう)(ところ)両人(りやうにん)()()りました。216さうすれば、217吾々(われわれ)もヤツパリ現界(げんかい)(もの)ではありませぬかな』
218(あか)『いや()心配(しんぱい)()りませぬ。219まだ貴方(あなた)(がた)()(にん)(とも)ここに()られる(かた)ぢやありませぬ。220(なん)()かの手続(てつづ)きを(もつ)現界(げんかい)(かへ)られるでせう。221(とき)にシーナとやら、222ここにスミエルさまが()()られるから()挨拶(あいさつ)をなさらぬか』
223シーナ『ハイ、224(なん)とも(はづ)かしくて言葉(ことば)()ませぬ』
225俯向(うつむ)く。
226(あか)『シーナさま、227随分(ずいぶん)スミエルさまは貴方(あなた)(たい)し、228大々(だいだい)(てき)気焔(きえん)()いてゐられましたよ。229一度(いちど)現界(げんかい)(かへ)つて何卒(どうぞ)親密(しんみつ)社会(しやくわい)奉仕(ほうし)なり、230神霊(しんれい)奉仕(ほうし)をお(はげ)みなさい』
231シーナ『一旦(いつたん)肉体(にくたい)をとられた(わたくし)232如何(どう)して現界(げんかい)(かへ)(こと)出来(でき)ませうかな』
233(あか)『ここへ()なくてならぬものは、234何程(なにほど)(いや)だと()つても()なくてはなりませぬ。235(また)現界(げんかい)命数(めいすう)のある(ひと)何程(なにほど)()たいと()つても()(こと)出来(でき)ませぬ。236(いづ)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)精霊(せいれい)()て、237貴方(あなた)(がた)現界(げんかい)()れて()つて(くだ)さるでせう』
238 ()(にん)意外(いぐわい)(かん)()たれて、239二人(ふたり)守衛(しゆゑい)(かほ)()つめてゐた。240そこへ(ひがし)(はう)から、241『オーイ オーイ』と三四(さんよ)(にん)(こゑ)(きこ)えて()た。242()(にん)はハツと(こゑ)する(はう)()(てん)ずれば、243一道(いちだう)光明(くわうみやう)低空(ていくう)(とどろ)かしてゴウゴウゴウと(すす)(きた)り、244()(にん)(まへ)(ゆる)やかに()ちて()た。245火団(くわだん)(たちま)四柱(よはしら)神人(しんじん)(くわ)した。246道晴別(みちはるわけ)は『はて不思議(ふしぎ)』と、247よくよく(かほ)()かし()れば、248()(した)うてゐた治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)である。249道晴別(みちはるわけ)(うれ)(なみだ)にくれ(なが)ら、
250道晴(みちはる)『ああ先生(せんせい)(さま)251松彦(まつひこ)252竜彦(たつひこ)253万公殿(まんこうどの)254よう()(くだ)さいました』
255(なみだ)(そで)(ぬぐ)(うれ)()きに()く。256何時(いつ)とはなしに四方(しはう)から普遍(ふへん)(てき)光明(くわうみやう)がさして()た。257(この)光明(くわうみやう)()らされて(はち)(にん)姿(すがた)(けぶり)(ごと)くに()えて(しま)つた。258(したが)つて八衢(やちまた)関所(せきしよ)(あか)(しろ)守衛(しゆゑい)姿(すがた)()えなくなつた。
259大正一二・二・二三 旧一・八 於竜宮館 北村隆光録)
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