霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第四章 理妻(りさい)〔一三九〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第1篇 神授の継嗣 よみ(新仮名遣い):しんじゅのけいし
章:第4章 理妻 よみ(新仮名遣い):りさい 通し章番号:1390
口述日:1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
刹帝利ビクトリヤ王と現王妃のヒルナ姫は、アールの帰城に狂喜した。王は、悪神にたぶらかされて王子たちを殺そうと図ったことを懺悔し、涙と共に謝した。
アールは父王の様子を意外に思ったが、悪神のために道を誤ったことを悟り、少しも親を怨む心はなかった。そして山中の暮らしや、妹が訪ねてきて一緒に暮らすことになった経緯などを物語り、うれし涙にかきくれた。
治国別の館には数多の家来が遣わされ、残り五人の兄妹を城内に迎え取った。治国別一行も祝宴に招待され、神恩を感謝した。
ビクトリヤ王は年老いて余命がいくばくもないことを悟っており、アールに王家を継がさせた。そして兄妹五人にはビクの国を六つに分け、それぞれ領分を守らせることとした。アールはヒルナ姫に実の母親のように仕えた。
さて、長兄のアールに妃を迎える必要が迫ってきた。しかしアールは、幾たびも候補者に首を振るのみであった。アールは境遇の変化によって心身に変調を来たし、貴族生活が厭になってたまらなくなってきた。
アールは立派な服を脱ぎ棄てて、たびたび城内を抜け出して田舎をうろつくようになってしまった。そしてたびたびの左守と右守の諌めもまったく聞き入れなかった。刹帝利は困り果てて治国別に相談すると、治国別は、しばらくはアールの好きなようにさせるように、と答えた。
あるときアールが平民の服を着て城を抜け出し、ビクトル山のふもとのパイン林の木蔭に独りで休んでいた。そこへ熊手を持ち籠を背負って枯れ松葉を掻きにきた女がやってきた。女はハンナという二十ばかりの首陀の娘で、とても器量が悪かった。
アールは身分を隠してハンナと話すうち、その心根と言動に感心し、この女こそ自分の妃にするべき者だと考えた。そして、ハンナに自分は実はビクトリヤ王の長子であると明かした。
恐れ入るハンナに対し、アールはどうしても自分の妻になってくれと頼み込み、ハンナを連れて城に帰ってきた。左守はアールの話を聞いて驚き、アールを諌めるが、アールは父王や左守こそ頑迷で国家の行く末をわかっていない、と反論するありさまであった。
アールは、治国別宣伝使の裁定を仰ぐように左守に申し入れた。左守も、このまま刹帝利に報告しても反対されることは目に見えているので、アールとハンナは城内に忍んでもらって、治国別の館に急いで出かけて行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-03-31 17:41:55 OBC :rm5404
愛善世界社版:47頁 八幡書店版:第9輯 636頁 修補版: 校定版:46頁 普及版:21頁 初版: ページ備考:
001 刹帝利(せつていり)ビクトリヤ(わう)(はじ)め、002アーチ・ダツチエスのヒルナ(ひめ)はアールの(かへ)つて()たのに狂喜(きやうき)し、003いろいろと(やさ)しき言葉(ことば)をかけ、004(その)無事(ぶじ)(しゆく)し、005(かつ)刹帝利(せつていり)はアールの()(かた)(にぎ)り、006自分(じぶん)悪神(あくがみ)(たぶら)かされ、007最愛(さいあい)子供(こども)(のこ)らず殺害(さつがい)せむとした(こと)不明(ふめい)(なみだ)(とも)(しや)した。008アールは意外(いぐわい)(ちち)(こころ)(やはら)ぎし(こと)や、009(また)()れを(にく)(たま)ひしは悪神(あくがみ)(ため)(そそのか)されたる(こと)(さと)り、010(すこ)しも(おや)(うら)(こころ)なく、011(ひさ)(ぶり)面会(めんくわい)(よろこ)び、012(ちち)高恩(かうおん)(しや)し、013(かつ)山中(さんちう)生活(せいくわつ)(くる)しかつた(こと)や、014(いもうと)一年前(いちねんまへ)(たづ)ねて()(こと)015(その)(ほか)(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(むか)へに()てくれた経緯(いきさつ)などを(こま)かに物語(ものがた)り、016(うれ)(なみだ)にかきくれた。017左守(さもり)右守(うもり)(はじ)内事司(ないじつかさ)のタルマンも()んだ(もの)(かへ)つて()たやうに(よろこ)んで、018早速(さつそく)神殿(しんでん)拝礼(はいれい)をなし、019直会(なほらひ)神酒(みき)(いただ)いて王家(わうけ)万歳(ばんざい)(いの)つた。020それから治国別(はるくにわけ)(やかた)数多(あまた)家来(けらい)(つか)はし、021()(にん)兄妹(きやうだい)城内(じやうない)(むか)()り、022(かつ)治国別(はるくにわけ)一同(いちどう)招待(せうたい)し、023祝宴(しゆくえん)(ひら)き、024神恩(しんおん)感謝(かんしや)した。025ヒルナ(ひめ)はアールに(くら)ぶれば、026(おや)()(ほど)(とし)(ちが)うてゐた。027され(ども)アールはヒルナ(ひめ)(しん)(はは)(ごと)くに尊敬(そんけい)し、028ヒルナ(ひめ)(また)アール兄妹(きやうだい)(わが)()(ごと)くに(いた)はり、029(かげ)になり(ひなた)になり、030親切(しんせつ)(つく)した。031刹帝利(せつていり)(とし)()余命(よめい)幾何(いくばく)もなきを(さと)り、032アールをして(いへ)()がしめ、033弟妹(きやうだい)()(にん)にはビクの(くに)(むつ)つに()け、034(おのおの)(その)領分(りやうぶん)(さだ)め、035アールの王家(わうけ)藩塀(はんぺい)となつて国家(こくか)(まも)らしめた。036イースにはプリンスを(さづ)け、037ウエルスにはキングスを(さづ)け、038エリナンにはカウントを(さづ)け、039オークスにはヴイコントを(さづ)け、040ダイヤ(ひめ)にはバアロンを(あた)へ、041(くに)四方(しはう)領地(りやうち)(わか)つて、042(なが)らく国家(こくか)(まも)らしむる(こと)とした。
043 ()第一(だいいち)(あに)のアールに(きさき)(むか)へる必要(ひつえう)(せま)つて()た。044左守(さもり)右守(うもり)四方(しはう)奔走(ほんそう)して適当(てきたう)配偶(はいぐう)(もと)めたが、045どうしてもアールの()()(をんな)がない。046幾度(いくたび)候補者(こうほしや)(さだ)めてアールに()せたけれ(ども)047アールは(くび)左右(さいう)()つて(これ)拒絶(きよぜつ)するのみであつた。048(しか)して(にはか)にアールは境遇(きやうぐう)変化(へんくわ)食料(しよくれう)変化(へんくわ)とに()つて、049身体(しんたい)変調(へんてう)(きた)し、050顕要(けんえう)(もと)身分(みぶん)になつたものの、051ヤハリ窮屈(きうくつ)貴族(きぞく)生活(せいくわつ)(いや)になつてたまらず、052こんな(こと)なら(かへ)つて()るぢやなかつたに、053兄妹(きやうだい)(ろく)(にん)(むつ)まじう山住居(やまずまゐ)をして勝手(かつて)気儘(きまま)(れふ)をして、054簡易(かんい)生活(せいくわつ)(いとな)みたいものだ……と煩悶(はんもん)(つづ)けて()た。055(つひ)には精神(せいしん)(すこ)(ばか)異状(いじやう)(きた)したと()えて、056(すき)ある(ごと)城内(じやうない)()()で、057(ただ)一人(ひとり)田舎(いなか)をうろつくのを(もつ)(たのし)みとしてゐた。058刹帝利(せつていり)左守(さもり)右守(うもり)何程(なにほど)(いさ)めてもチツとも聞入(ききい)れなかつた。059(つひ)には刹帝利(せつていり)(こま)()てて治国別(はるくにわけ)(をしへ)()うた。060治国別(はるくにわけ)(しばら)くアールの()きな(やう)にさしておくがよからうといふ意味(いみ)(こた)へた。061(ほか)ならぬ治国別(はるくにわけ)言葉(ことば)であるから、062刹帝利(せつていり)以下(いか)最高(さいかう)幹部(かんぶ)(れん)は、063アールの()きな(まま)にしておいた。064アールは立派(りつぱ)(ふく)()ぎすて、065ホーレージ・キヤツプを(かしら)(いただ)き、066ベリースを(かぶ)つて、067城内(じやうない)()()し、068漂然(へうぜん)としてビクトル(さん)(ふもと)のパイン(ばやし)木陰(こかげ)(ひと)(やす)んでゐる。069そして(そら)()(くも)(なが)め、070ああああと溜息(ためいき)をつき(なが)ら、071(うさぎ)でも(とほ)つたら()つてみたいものだと(かんが)へてゐると、072そこへ熊手(くまで)()ち、073(せな)(かご)()うて枯松葉(かれまつば)()きに()た、074頑丈(ぐわんぢやう)二十歳(はたち)(ばか)りの不細工(ぶさいく)(をんな)がやつて()た。075(をんな)はハンナと()首陀(しゆだ)(むすめ)であつた。076アールの姿(すがた)()て、077(たふと)王子(わうじ)とは()らず、078(その)(かたはら)(かご)をおき、079枯松葉(かれまつば)(しき)りに()(あつ)めて(かご)()()んでゐる。080アールは(そば)()つて、
081アール『コレお(まへ)はどこの(をんな)だか()らぬが、082(おれ)にも(ひと)手伝(てつだ)はしてくれないか、083(その)熊手(くまで)(ひと)つかして(もら)ひたい』
084()つた。085ハンナはアールを()て、086不思議(ふしぎ)(かほ)をし(なが)ら、
087ハンナ『ハイ、088()(まを)さぬことはありませぬが、089一寸(ちよつと)()れば貴方(あなた)はどこ(とも)なしに威厳(ゐげん)(そな)はつた()人格(じんかく)090どうも普通(ふつう)のお(かた)とは(おも)へませぬが、091なぜ斯様(かやう)(ところ)にお一人(ひとり)(いで)になつて()りますか』
092アール『イヤ、093(おれ)はそんな(たふと)(もの)でない。094子供(こども)(とき)から手癖(てくせ)(わる)うて、095(おや)()かせ、096近所(きんじよ)迷惑(めいわく)をかけ、097(いへ)()()され、098()(ところ)がないので、099(この)パインの(えだ)(くび)でも()つて()なうかと(おも)ひ、100此処(ここ)(まで)やつて()たのだ。101(しか)(なが)らお(まへ)松葉掻(まつばか)きをしてるのを()て、102(けなり)くてたまらず、103それ(ゆゑ)手伝(てつだ)はしてくれないかと(たの)んだのだ』
104 ハンナは……何処(どこ)ともなしに気品(きひん)(たか)(をとこ)だなア……と(おも)(なが)ら、105……(この)(ひと)()(こと)(はた)して本当(ほんたう)ならば(まこと)()(どく)なものだ、106(なん)とかして(たす)けてやる工夫(くふう)はあるまいか……と、107同情心(どうじやうしん)にくれ(なが)ら、108熊手(くまで)をそこに(なげ)すて、109アールの(そば)によつて、
110ハンナ『モシ、111どこのお(かた)()りませぬが、112貴方(あなた)()(ほど)までに()決心(けつしん)をなさつたのならば、113どうです首吊(くびつ)りをやめて、114(わたし)一緒(いつしよ)(くら)()はありませぬか、115(わたし)(いや)しい首陀(しゆだ)(むすめ)(ござ)いますが、116(あに)(あと)をとつてをりますから、117(おや)(あと)()()でもなし、118(この)(やう)不細工(ぶさいく)(をんな)でも嫁入口(よめいりぐち)沢山(たくさん)()つて()ますが、119どうも(わたし)()()はないので(みんな)(ことわ)つて()ります』
120アール『お(まへ)はそれ(ほど)沢山(たくさん)嫁入(よめいり)申込(まをしこみ)があるのに何故(なぜ)121(おれ)のやうな極道(ごくだう)息子(むすこ)のすたれ(もの)夫婦(ふうふ)にならうと()ふのか、122どうも合点(がてん)のいかぬ(こと)()ふぢやないか』
123ハンナ『(わたくし)普通(ふつう)(をとこ)(いや)です。124極道(ごくだう)(あぢ)()らず、125世間(せけん)(あぢ)()らない(ばう)ちやん(ばか)りでは、126到底(たうてい)円満(ゑんまん)家庭(かてい)(つく)れませぬ。127()れよりも十分(じふぶん)()ちて(いのち)をすてる(ところ)まで決心(けつしん)した(ひと)なら、128()(なか)()いも(あま)いも()つてるに(ちが)ひありませぬ。129どうです、130()てる(いのち)(なが)らへて、131(わたし)一生(いつしやう)(くら)すお(かんが)へはありませぬか。132(わたし)(この)(とほ)(からだ)丈夫(ぢやうぶ)(ござ)いますから二人前(ふたりまへ)(はたら)きます。133仮令(たとへ)貴方(あなた)病気(びやうき)になられても(こま)りませぬ。134(をんな)(はう)から結婚(けつこん)申込(まをしこ)んで、135はしたない(やつ)とお(わら)ひでせうが、136(わたし)貴方(あなた)のやうなドン(ぞこ)()ちた(かた)と、137夫婦(ふうふ)になりたいと、138朝夕(あさゆふ)(かみ)(ねん)じて()りました。139相当(さうたう)財産(ざいさん)(おや)から()けて(もら)つて()りますから、140メツタに難儀(なんぎ)はさせませぬ』
141アール『成程(なるほど)(まへ)感心(かんしん)(をんな)だ。142(しか)随分(ずいぶん)容貌(きりやう)(わる)いのう』
143ハンナ『容貌(きりやう)(わる)うてお()()らねば仕方(しかた)がありませぬ。144(しか)(なが)貴方(あなた)もよく(かんが)へなさいませ』
145アール『イヤ、146(おれ)容貌(きりやう)(けつ)して(この)まない。147(まへ)(やう)立派(りつぱ)(こころ)()つてる(をんな)()しいのだ。148(おれ)(いま)まで沢山(たくさん)美人(びじん)(よめ)(もら)つてくれと、149(じつ)(ところ)()はれたのだが、150(なん)だか()()らぬので、151(うち)()つても面白(おもしろ)からず、152(また)(よめ)(はなし)かと、153うるさくて(たま)らず、154此処迄(ここまで)やつて()たのだ。155(しか)し、156(おや)財産(ざいさん)をスツカリ使(つか)(はた)し、157おまけに生殖器(せいしよくき)(びやう)(わづら)ひ、158体中(からだぢう)牡丹餅(ぼたもち)疥癬(ひぜん)をかいて、159(たれ)()れも(おれ)(そば)へはよりつくものはない。160それにも(かかは)らず沢山(たくさん)嫁入(よめいり)申込(まをしこみ)があるのだから(こま)つてゐるのだ。161此処(ここ)()()れば、162(また)(まへ)から結婚(けつこん)申込(まをしこ)まれ、163毎日(まいにち)日日(ひにち)結婚攻(けつこんぜ)めに()うて、164(この)(ひろ)天地(てんち)()をおく(ところ)がないのだ。165何卒(どうぞ)モウ()ふてくれな。166(わし)のやうな(もの)(をつと)()つた(ところ)(すゑ)()げられず、167(まへ)苦労(くらう)をかけねばならぬからなア』
168ハンナ『貴方(あなた)(その)(やう)業病(がふびやう)をお(わづら)ひになつてると()けば、169猶更(なほさら)見捨(みす)てる(わけ)には()きませぬ。170何卒(どうぞ)(わたし)世話(せわ)をさして(くだ)さいませ。171キツと貞節(ていせつ)(つか)へますから』
172 アールはハンナの言葉(ことば)に……(なん)とマア親切(しんせつ)(こころ)(うる)はしい(をんな)があるものだなア……と(くび)()つて(かん)()たれてゐた。173(をんな)(また)もや熊手(くまで)()にし、174枯松葉(かれまつば)(あつ)めながら、
175ハンナ『モシ貴方(あなた)176どうしても(わたし)()(こと)()けませぬか、177(わたし)貴方(あなた)美貌(びばう)恋着(れんちやく)してるのぢやありませぬ、178貴方(あなた)今後(こんご)のお()(うへ)(あん)じて(この)(とほ)熱心(ねつしん)申上(まをしあ)げるのですから、179何卒(どうぞ)ウンと()つて(くだ)さい。180貴方(あなた)何程(なにほど)極道(ごくだう)でも業病人(がふびやうにん)でも(わたくし)覚悟(かくご)(まへ)です。181(いづ)貴方(あなた)(をつと)()つと()へば、182(おや)兄弟(きやうだい)親戚(しんせき)小言(こごと)(まを)しませうが、183それも覚悟(かくご)(まへ)です』
184熱心(ねつしん)口説(くど)()てる。185アールはこれこそ自分(じぶん)女房(にようばう)にすべき(もの)だと(こころ)(けつ)(なが)ら、186(なほ)(ねん)(ため)(こころ)(ため)しみむと(たちま)(おほ)きな(くち)をあけ、187ワザと(よだれ)をたらし(なが)ら、188「ああああああ」と(おし)真似(まね)をし()した。189ハンナは(これ)()て、190(にはか)心気(しんき)興奮(こうふん)し、191(おし)になつたのかなアと、192心配(しんぱい)(なが)(おも)(やう)……どこの(ひと)かは()らぬが、193本当(ほんたう)()(どく)なお(かた)だ。194益々(ますます)自分(じぶん)()犠牲(ぎせい)にしてでも(この)(ひと)(たす)けてやらねばなるまい……と(うしろ)へまはり、195背中(せなか)()でたり、196(かみ)(いの)つたりして一刻(いつこく)(はや)病気(びやうき)全快(ぜんくわい)せむ(こと)(ねが)つた。197アールは(その)()(おび)をといて、198(まつ)(えだ)にパツとかけた。199(をんな)(おどろ)いて()きとめようとする。200アールは(こゑ)(かぎ)りに、
201アール『ヤ、202女中(ぢよちう)203(わし)(からだ)疥癬(ひぜん)かきだ。204(まへ)伝染(うつ)ると大変(たいへん)だ』
205(さけ)ぶのを、206ハンナは、
207ハンナ『イエイエ、208何程(なにほど)疥癬(ひぜん)伝染(うつ)らうが、209貴方(あなた)(いのち)瀬戸際(せとぎは)を、210どうして見逃(みのが)(こと)出来(でき)ませう』
211剛力(がうりき)(まか)せて、212グツと(こし)(あた)りを()きしめて(はな)さぬ。213アールは何程(なにほど)もがいても、214(をんな)剛力(がうりき)如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)なかつた。215アールは(はじ)めて素性(すじやう)(あか)さむと(おも)ひ、
216アール『イヤ、217(じつ)(ところ)拙者(せつしや)はビクトリヤ(わう)長子(ちやうし)アールと()(もの)だ。218何卒(どうぞ)(はな)してくれ。219(まへ)(うつく)しい(こころ)骨身(ほねみ)にこたへた。220(じつ)(ところ)疥癬(ひぜん)かきでも瘡毒(ひえ)かきでもない』
221事実(じじつ)()ぶれば、222ハンナは(おどろ)いて、223二三間(にさんげん)(ばか)飛下(とびさが)り、224()(かしら)をすりつけ(なが)ら、
225ハンナ『どこ(とも)なしに(かは)つたお(かた)(ぞん)じましたが、226左様(さやう)(たふと)いお(かた)とは()らず、227(まこと)失礼(しつれい)(いた)しました。228何卒(どうぞ)(わたし)(つみ)幾重(いくへ)にも()容赦(ようしや)(ねが)ひます。229(おそ)(おほ)くも女房(にようばう)としてくれなどと、230不都合(ふつがふ)(こと)(まを)してすみませぬ』
231(おそ)(おそ)詫入(わびい)つた。232アールは言葉(ことば)(あらた)めて、
233アール『ヤ、234其方(そなた)首陀(しゆだ)(むすめ)とは()(なが)ら、235(じつ)見上(みあ)げた婦人(ふじん)だ。236何卒(どうぞ)(わし)女房(にようばう)になつてくれまいか、237(まへ)とならば(よろこ)んで一生(いつしやう)(おく)(こと)出来(でき)るであらう』
238 (この)言葉(ことば)にハンナは()(ふる)はせ(なが)ら、
239ハンナ『(わたし)(ごと)(いや)しき(もの)が、240どうして左様(さやう)勿体(もつたい)ない(こと)出来(でき)ませう、241何卒(どうぞ)これ(ばか)りは()容赦(ようしや)(ねが)ひます』
242(しき)りに(くび)()つて(あやま)()る。243アールは千言(せんげん)万語(ばんご)(つひ)やし、244(やうや)くにしてハンナを納得(なつとく)させ、245()(たづさ)へて、246(うれ)しげにホーフスに(かへ)つて()た。
247 左守司(さもりのかみ)(これ)()(おほい)(おどろ)き、248(くち)(とが)らし()(まる)くし(なが)ら、
249左守『モシ、250貴方(あなた)(さま)何時(いつ)城内(じやうない)勝手(かつて)飛出(とびだ)(あそ)ばし、251()両親(りやうしん)(さま)大変(たいへん)()心配(しんぱい)をして(ござ)るのに、252チツともお()()きませぬか。253それに(なん)(ござ)いますか、254左様(さやう)(いや)しい(をんな)()()いて城内(じやうない)へお(かへ)(あそ)ばすとは、255()(ちが)つたのぢや(ござ)いませぬか』
256アール『ウン、257チツとは()(ちが)つてゐる。258(しか)(なが)ら、259(この)気違(きちが)ひは発狂者(はつきやうしや)ではない。260(わし)(いま)ビクトリヤ(じやう)大黒柱(だいこくばしら)(ひろ)つて()たのだ。261これでなくては(この)(くに)(をさ)まらない。262()うぢや左守(さもり)263(この)(をんな)(わし)女房(にようばう)にする(やう)264父上(ちちうへ)申上(まをしあ)げてくれ』
265左守(さもり)『それは(また)()なる(こと)(うけたま)はります。266()粋狂(すいきやう)にも(ほど)がある。267どうして父上(ちちうへ)()(ゆる)しになりませう。268サ、269(はや)くどつかへ追出(おひだ)しなさりませ』
270アール『頑固(ぐわんこ)(ちち)()ひ、271頑固(ぐわんこ)左守(さもり)()ひ、272(こま)つた(もの)だなア。273貴族(きぞく)だとか平民(へいみん)だとか(くだ)らぬ形式(けいしき)(とら)はれて、274国家(こくか)大事(だいじ)(おも)はぬお(まへ)(たち)(じつ)不忠(ふちゆう)不義(ふぎ)(もの)だ。275なぜ(わし)()(こと)()かないのか』
276左守(さもり)『ぢやと(まを)してビクトリヤ()名誉(めいよ)にも関係(くわんけい)(いた)しますし、277(また)(その)(やう)(きたな)(をんな)(きさき)になさいましては、278第一(だいいち)貴方(あなた)(さま)()権威(けんゐ)()()ち、279()いては役人(やくにん)(ども)(あなど)りを()け、280どうして国家(こくか)(をさ)まりませうか、281それ(ばか)りは何卒(どうぞ)()(かんが)(なほ)しを(ねが)ひたいものです。282(まる)きり気違(きちが)ひの沙汰(さた)ぢや(ござ)いませぬか』
283アール『ウン、284(わし)気違(きちが)ひ、285(まへ)取違(とりちが)ひだ。286(たけ)(うぐひす)287(うめ)には(すずめ)288それは木違(きちが)ひ、289鳥違(とりちが)ひといふぢやないか、290時代(じだい)趨勢(すうせい)(かんが)へ、291上下(しやうか)一致(いつち)して天下(てんか)経綸(けいりん)(おこな)はねばならぬ刹帝利(せつていり)()()(なが)ら、292(くだ)らぬ形式(けいしき)(とら)はれて、293貴族(きぞく)結婚(けつこん)唯一(ゆゐいつ)能事(のうじ)としてるやうな(こと)で、294どうして国家(こくか)(をさ)まるか。295チツと(かんが)へてみよ』
296左守(さもり)『あああ(こま)つた問題(もんだい)突発(とつぱつ)したものだ。297こんな(こと)刹帝利(せつていり)(さま)申上(まをしあ)げようものなら(なん)()つて(しか)られるか(わか)つたものでない。298()まじき(もの)宮仕(みやづかへ)なりけりだ。299どうしたらよからうかな』
300双手(もろて)()んで両眼(りやうがん)より(なみだ)()らしてゐる。
301アール『父上(ちちうへ)やお(まへ)のやうな頑固(ぐわんこ)(れん)には(おれ)精神(せいしん)(わか)るものでない。302()(かく)治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)裁断(さいだん)()(こと)にしてくれ、303治国別(はるくにわけ)(さま)のお言葉(ことば)なら、304いかに頑固(ぐわんこ)(ちち)でも()くであらう』
305左守(さもり)成程(なるほど)306(しか)らば(おほせ)(したが)ひ、307父上(ちちうへ)申上(まをしあ)げても、308(ただ)一口(ひとくち)突飛(つきと)ばされますから、309(これ)より治国別(はるくにわけ)(さま)のお(やかた)(まゐ)つて(うかが)つて(まゐ)りませう。310そして治国別(はるくにわけ)(さま)()いと仰有(おつしや)れば、311刹帝利(せつていり)(さま)掛合(かけあ)つて(いただ)きませう。312何卒(どうぞ)それまでは貴方(あなた)()居間(ゐま)にお(しの)びを(ねが)ひます、313()両人(りやうにん)(さま)
314()(なが)ら、315足早(あしばや)玄関口(げんくわんぐち)立出(たちい)で、316治国別(はるくにわけ)(やかた)(いそ)()く、317二人(ふたり)はアールの居間(ゐま)()(かく)しける。
318大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki