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第三章 蜜議(みつぎ)〔一五〇三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第1篇 毀誉の雲翳 よみ(新仮名遣い):きよのうんえい
章:第3章 蜜議 よみ(新仮名遣い):みつぎ 通し章番号:1503
口述日:1923(大正12)年04月01日(旧02月16日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三五教の宣伝使・初稚姫は、玉国別一行の危難を守ろうと、猛犬スマートを引き連れてキヨの湖を渡り、バラモン軍関守のチルテルの館に立ち寄っていた。そこの離れ家に落ち着き、一弦琴を弾じながら使命を果たそうと潜んでいた。
チルテルは初稚姫の美貌にうつつを抜かし、姫を屋敷の中に留め置いて、妻ある身でありながら恋の野望を遂げようと企んでいた。
チルテルの妻チルナ姫は、部下のカンナとヘールに初稚姫を口説かせて、夫の初稚姫に対する興味を失せさせようとした。初稚姫はやってきたカンナとヘールを自室に招き入れ、手ずから茶菓を供じて話を聞いている。
二人は美人の前でいいところを見せようと、それぞれ初稚姫の美しさを褒めたたえる即興の歌を歌って見せた。三人は互いに歌をもって心を探り合いつつ、夏の長い日を知らぬ間に暮らしてしまった。
チルナ姫は二人の成功を案じ煩いつつ、足音を忍ばせて窓の外に立ち寄り、息を潜めて中の様子を聞き入っている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5903
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第10輯 499頁 修補版: 校定版:44頁 普及版: 初版: ページ備考:
001三五教(あななひけう)生神(いきがみ)
002(その)()(たか)宣伝使(せんでんし)
003初稚姫(はつわかひめ)神司(かむつかさ)
004玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)
005危難(きなん)(すく)(まも)らむと
006猛犬(まうけん)スマート引連(ひきつ)れて
007キヨの(みづうみ)()(わた)
008バラモン(ぐん)関守(せきもり)
009チルテル(やかた)()ちよりて
010いと(うるは)しき(はな)()
011一絃琴(いちげんきん)(だん)じつつ
012(かみ)()さしの神業(かむわざ)
013(こころ)(つく)()(くだ)
014(つか)(たま)ふぞ(かしこ)けれ
015これの関所(せきしよ)(あづ)かりし
016チルテル(つかさ)初稚姫(はつわかひめ)
017(うづ)容姿(ようし)(たま)()かれ
018(つま)ある()をも(かへりみ)
019家敷(やしき)(うち)(とど)()
020(とき)(うかが)(この)(ひめ)
021(わが)()(した)(とき)()
022(こひ)野望(やばう)(たつ)せむと
023一絃琴(いちげんきん)(あた)へおき
024(しづか)一室(ひとま)(かく)しけり
025初稚姫(はつわかひめ)宣伝使(せんでんし)
026チルテル(つかさ)()ふがまま
027(はな)れの一間(ひとま)()(こも)
028(こころ)(ひそか)神言(かみごと)
029(とな)()げつつコードをば
030(だん)じて(うさ)(なぐさ)めつ
031(とき)(いた)るを()(たま)
032チルナの(ひめ)(わが)(つま)
033(こころ)(そこ)をはかり()
034悋気(りんき)(ほのほ)()やしつつ
035カンナ、ヘールの両人(りやうにん)
036(ひそ)かに(ちか)()びつけて
037(こころ)(たけ)()(あか)
038二人(ふたり)(をとこ)謀計(はかりごと)
039(さづ)けて(ひめ)(やかた)より
040放逐(はうちく)せむと(たく)らみつ
041(こころ)(くば)るぞいぢらしき
042カンナ、ヘールの両人(りやうにん)
043(こひ)(やつこ)となり()てて
044(ひめ)(やかた)(そば)(ちか)
045(すす)みて(あや)しき(うた)(うた)
046(をど)りつ()ひつ恋衣(こひぎぬ)
047青葉(あをば)(かぜ)(ひるがへ)
048(ここ)先途(せんど)()(くる)
049初稚姫(はつわかひめ)(まど)()
050サツと(ひら)きて(には)(おも)
051(なが)(たま)へば(いぶ)かしや
052チュウリック姿(すがた)両人(りやうにん)
053(こひ)(くる)うた(やぶ)(うた)
054面白(おもしろ)可笑(をか)しく(うた)ひつつ
055(かほ)(あか)らめて(なが)()
056初稚姫(はつわかひめ)(こゑ)をかけ
057二人(ふたり)(をとこ)()()れて
058()づから茶菓(さくわ)()(いだ)
059いと(ねもごろ)にあしらへば
060(あん)相違(さうゐ)両人(りやうにん)
061(めじり)をさげて(よだれ)()
062願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)(とき)()ぬと
063(むね)(とどろ)かす可笑(をか)しさよ
064初稚姫(はつわかひめ)神司(かむつかさ)
065(こころ)(たま)もピカピカと
066(かがや)(たま)へば両人(りやうにん)
067()()(すべ)荒男(あらをとこ)
068ビリビリ(からだ)(ふる)はせて
069他人(たにん)(いへ)から()つて()
070(ちん)(ねこ)かと()ふやうな
071塩梅(あんばい)(しき)(かしこ)まり
072(かほ)(あか)らめ(ひか)()る。
073初稚(はつわか)貴方(あなた)のチュウリックを(うかが)ひますれば074リュウチナントさまにユゥンケル(さま)のやうで(ござ)いますが、075(なん)凛々(りり)しい、076(をとこ)らしいお姿(すがた)(ござ)いますなア。077男子(だんし)はどうしても軍人(ぐんじん)(かぎ)ります。078(はな)()もある武士(もののふ)は、079文学(ぶんがく)にも通達(つうだつ)して()るもので(ござ)いますが、080唯今(ただいま)(うけたま)はれば、081貴方(あなた)(がた)文武(ぶんぶ)両道(りやうだう)達人(たつじん)082(まこと)感心(かんしん)(いた)しました』
083カンナ『ヘエ、084滅相(めつさう)な。085さうお()めを(いただ)きましては(おそ)()ります。086(わたし)一介(いつかい)武弁(ぶべん)087文学(ぶんがく)趣味(しゆみ)一向(いつかう)()ちませぬ。088無味(むみ)乾燥(かんさう)代物(しろもの)(ござ)いますよ』
089初稚(はつわか)『イヤどうしてどうして、090あれだけのお(うた)即席(そくせき)にお()めになるのは、091余程(よほど)文学(ぶんがく)素養(そやう)がなくては出来(でき)(わざ)ぢや(ござ)いませぬ。092貴方(あなた)(いま)軍人(ぐんじん)になつていらつしやいますが、093文科(ぶんくわ)大学(だいがく)でも優等(いうとう)卒業(そつげふ)なさつたお(かた)(ござ)いませうねえ』
094カンナ『イヤ(おそ)()ります。095(じつ)赤門出(あかもんで)(ござ)いますが、096(かげ)銀時計(ぎんどけい)頂戴(ちやうだい)(いた)しま……せなんだ。097アハヽヽヽ』
098ヘール『拙者(せつしや)こそ、099文科(ぶんくわ)大学(だいがく)出身(しゆつしん)のチヤキチヤキで(ござ)います。100随分(ずいぶん)(わたくし)経歴(けいれき)波瀾(はらん)重畳(ちようでう)101(じつ)惨澹(さんたん)たる歴史(れきし)()むで()ります。102到底(たうてい)カンナ(くん)(ごと)きは(そば)へも()れないでせう』
103初稚(はつわか)『どうか(ひと)貴方(あなた)面白(おもしろ)来歴(らいれき)や、104(また)今後(こんご)()方針(はうしん)(とつく)()かして(いただ)()いもので(ござ)いますな』
105 ヘールは(ここ)ぞと()はぬ(ばか)り、106一歩(ひとあし)二歩(ふたあし)蹂寄(にじりよ)り、107自分(じぶん)文科(ぶんくわ)大学(だいがく)出身(しゆつしん)だと(この)ナイスの(まへ)()つたのだから、108(ここ)でこそ文学者(ぶんがくしや)()りを発揮(はつき)し、109流暢(りうちよう)()によりて自分(じぶん)来歴(らいれき)()べ、110(ひめ)(こころ)感動(かんどう)させ、111自分(じぶん)文才(ぶんさい)敬慕(けいぼ)せしむるが第一(だいいち)上手段(じやうしゆだん)心得(こころえ)112()白黒(しろくろ)させ(なが)(うた)(もつ)()来歴(らいれき)()(はじ)めた。
113ヘール『太陽(たいやう)天地(てんち)開闢(かいびやく)(むかし)より
114東天(とうてん)(かす)めて(のぼ)
115日々(ひび)西天(せいてん)()
116()西天(せいてん)(ぼつ)して
117(たちま)暗黒(あんこく)(やみ)(きた)
118(つき)(たちま)西天(せいてん)姿(すがた)(あら)はし
119照々(せうせう)として(てん)(ちう)
120(つき)()(からす)()いて(また)太陽(たいやう)東天(とうてん)(あら)はる
121満天(まんてん)星光(せいくわう)(いち)()(かげ)(かく)
122銀河(ぎんが)東西(とうざい)(あら)はれ(あるひ)南北(なんぼく)(なが)
123(てん)蒼々(さうさう)として際限(さいげん)なく
124()浩々(こうこう)として窮極(きうきよく)する(ところ)なし
125(われ)天地(てんち)精気(せいき)()けて
126満目(まんもく)湘々(しやうしやう)たる世界(せかい)(せい)()
127嗚呼(ああ)(ひと)万物(ばんぶつ)霊長(れいちやう)天地(てんち)(はな)
128(たちま)(ちやう)じて(ひと)となり
129ハルナの(みやこ)(きふ)()ひて(のぼ)
130文明(ぶんめい)開化(かいくわ)空気(くうき)呼吸(こきふ)
131文科(ぶんくわ)大学(だいがく)(もん)出入(しゆつにふ)
132優秀(いうしう)(ほまれ)(にな)ふて郷関(きやうくわん)(にしき)(かざ)
133(とき)しもあれバラモン(ぐん)大元帥(だいげんすゐ)
134大黒主(おほくろぬし)(かみ)神意(しんい)によつて
135人生(じんせい)最勝(さいしよう)最貴(さいき)軍人(ぐんじん)となり
136(あした)(つき)()(ゆふべ)(ほし)(いただ)きて軍務(ぐんむ)鞅掌(おうしやう)
137(あるひ)河海(かかい)(わた)浩然(こうぜん)()(やしな)ふて神軍(しんぐん)(したが)
138長駆(ちやうく)千里(せんり)イヅミの(くに)
139(やうや)くつきしキヨの(みなと)
140()(なか)下級(かきふ)武官(ぶくわん)(はし)
141前途(ぜんと)洋々(やうやう)として(きは)まりなく
142登竜(とうりう)(のぞ)みあり
143(われ)(いま)(ここ)(ひつ)(とど)めて生霊(せいれい)愛護(あいご)
144窈窕(ようてう)嬋妍(せんけん)たる美人(びじん)(てん)より(くだ)つて(この)(やかた)()
145(いづく)んぞ()らむ意中(いちう)(ひと)
146(わが)眼前(がんぜん)顕現(けんげん)
147人間(にんげん)万事(ばんじ)塞翁(さいおう)(うま)
148小官(せうくわん)(あに)(かろ)んずべけむや
149(ねが)はくは(わが)肚裡(とり)(つつ)める
150雄図(ゆうと)看取(かんしゆ)したまひて
151鴛鴦(ゑんあう)(ちぎり)(むす)ばせたまはむ(こと)
152バラモン神明(しんめい)(まへ)拝跪(はいき)して
153帰命(きめう)頂礼(ちやうらい)祈願(きぐわん)(たてまつ)る』
154初稚(はつわか)『オホヽヽヽ。155(さすが)文科(ぶんくわ)大学(だいがく)出身(しゆつしん)(だけ)あつて、156どこともなしに余韻(よゐん)嫋々(じやうじやう)たる詩歌(しか)(ござ)います。157(わらは)文学(ぶんがく)大変(たいへん)()きで(ござ)います。158本当(ほんたう)春陽(しゆんやう)()(ただよ)ひますなア』
159ヘール『エヘヽヽヽ。160イヤもうお(はづ)かしう(ござ)います。161イヤ、162カンナ(くん)163リュウチナント殿(どの)164(きみ)(ひと)脳髄(なうずゐ)(そこ)をたたいて、165(ここ)(ひと)(ひめ)(さま)()清聴(せいちやう)(わづら)はしたらどうだ』
166カンナ『(ひめ)(さま)167これから(わたくし)が、168(すこ)(ばか)詩吟(しぎん)をやります。169何卒(どうぞ)審判(しんぱん)貴女(あなた)にお(ねが)(いた)します』
170初稚(はつわか)『ハイ、171左様(さやう)ならば、172(わたくし)臨時(りんじ)審判長(しんぱんちやう)となつて(うかが)ひませう。173(さだ)めて優秀(いうしう)詩歌(しか)()かれる(こと)だと、174(いま)から期待(きたい)して()ります』
175カンナ『(しか)らば御免(ごめん)(かうむ)つて一首(いつしゆ)(ぎん)じて()ませう。176オイ、177ヘールさま、178(しつか)()いて()れたまへ』
179カンナ『()()(くも)(あめ)()
180(つき)()()()(ひか)
181大空(おほぞら)(わた)()(かげ)
182(つき)姿(すがた)(いま)此処(ここ)
183()れます(ひめ)(くら)ぶれば
184比例(たとへ)にならぬ心地(ここち)する
185(この)(ひめ)(さま)顔色(かんばせ)
186()()(かみ)(おん)姿(すがた)
187(こころ)(そこ)瑞御霊(みづみたま)
188三五(さんご)(つき)()(わた)
189()(かしら)()ればキラキラと
190(ほし)(ごと)くに宝玉(はうぎよく)
191(かがや)(わた)(あざや)かさ
192(ひと)天地(てんち)御霊物(みたまもの)
193宇宙(うちう)縮図(しゆくづ)()きつれど
194(いま)(まで)名実(めいじつ)相叶(あひかな)
195縮図(しゆくづ)(なが)めた(こと)はない
196初稚姫(はつわかひめ)(おん)姿(すがた)
197天津(あまつ)御国(みくに)天人(てんにん)
198(ただ)しは竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)
199(からだ)一面(いちめん)ピカピカと
200内部(ないぶ)外部(ぐわいぶ)(へだ)てなく
201(かがや)きたまふ水晶玉(すゐしやうだま)
202金銀(きんぎん)瑪瑙(めなう)玻璃(はり)珊瑚(さんご)
203瑠璃(るり)(いろ)なす(おん)(つむり)
204硨磲(しやこ)(かふがひ)かざしつつ
205イヅミの(くに)(あら)はれて
206これの(やかた)(くだ)りまし
207衆生(しゆじやう)済度(さいど)(おん)(ちか)
208三十三(さんじふさん)(さう)(そな)はりし
209観音(くわんおん)勢至(せいし)妙音(めうおん)菩薩(ぼさつ)
210(いま)()(あた)()(をが)
211(こころ)(やみ)もスクスクと
212()(わた)りたる(たふと)さよ
213恋路(こひぢ)(まよ)ふヘールさま
214得意(とくい)文学(ぶんがく)(ひね)()
215(しち)(むつかし)(うた)をよみ
216アツと()はせて(ひめ)(さま)
217御心(みこころ)(うご)かし(たてまつ)
218(のぞ)みを()げむと(いら)てども
219如何(いか)(うご)かむ千引岩(ちびきいは)
220()せども()けども吾々(われわれ)
221(よわ)(ちから)(およ)ぶべき
222あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
223(かみ)御霊(みたま)(さち)はいて
224もしも(えにし)のあるなれば
225これのナイスと永久(とこしへ)
226鴛鴦(をし)(ちぎり)(むす)ばせて
227(かみ)(おん)(ため)()(ため)
228(まこと)(をしへ)四方(よも)(くに)
229(ひら)かせ(たま)自在天(じざいてん)
230大国彦(おほくにひこ)(おん)(まへ)
231リュウチナントと(つか)へたる
232カンナの(つかさ)村肝(むらきも)
233(こころ)(きよ)めて()ぎまつる
234あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
235御霊(みたま)(さち)はへましませよ
236此処(ここ)()()ふバラモンの
237キヨの関守(せきもり)神司(かむつかさ)
238いや永久(とこしへ)(しづ)まりて
239三五教(あななひけう)やウラル(けう)
240(その)(ほか)(もも)醜道(しこみち)
241()()(つた)人々(ひとびと)
242(こころ)(くも)らす曲神(まがかみ)
243(とら)へて(こら)大聖場(だいせいぢやう)
244(それ)(つかさ)()けられし
245チルテル大尉(たいゐ)副官(ふくくわん)
246(つか)へまつりし(この)カンナ
247一日(ひとひ)(はや)(わが)(おも)
248()げさせ(たま)へと()ぎまつる。
249朝日子(あさひこ)()(さか)えます(ひめ)姿(すがた)
250天津(あまつ)乙女(をとめ)(まさ)りぬるかな。
251如何(いか)にして(こころ)(たけ)(かた)らむと
252(おも)へどひとり口籠(くちごも)るかも』
253ヘール『何事(なにごと)(かみ)のまにまに(すす)むべし
254(この)(みち)のみは詮術(せんすべ)もなければ』
255初稚(はつわか)(なさ)けある武士(もののふ)(たち)物申(ものまう)
256(わが)()()にも(たの)しかりけり。
257(ねが)はくば(かみ)(おん)(ため)()(ため)
258(こころ)あはせて(つか)へむとぞ(おも)ふ』
259カンナ『(なん)となくまだもの()らぬ心地(ここち)すれ
260(ひめ)御心(みこころ)(はか)りかぬれば』
261ヘール『恋衣(こひごろも)()むと(おも)はば現身(うつそみ)
262(あか)(あら)ひて(きよ)くなれなれ。
263村肝(むらきも)(こころ)(かみ)(みが)きなば
264天津(あまつ)乙女(をとめ)如何(いか)(きら)はむ』
265初稚姫(はつわかひめ)陸奥(みちのく)蓬ケ原(よもぎがはら)をかきわけて
266(しほ)れぬ(はな)手折(たを)りませ(きみ)
267カンナ『手折(たを)らむと(おも)(こころ)(せつ)なさを
268()()りたまへ(うづ)淑人(よきひと)
269 かく(たがひ)(うた)をもつて(こころ)(さぐ)()ひつつ、270(なつ)(なが)()()らぬ()(くら)してしまつた。271チルナ(ひめ)二人(ふたり)成功(せいこう)(あん)(わづら)ひつつ、272足音(あしおと)(しの)ばせ(まど)(そと)()ちよつて、273(いき)(ひそ)めて()()たり。
274大正一二・四・一 旧二・一六 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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