霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 雲隠(くもがくれ)〔一五〇六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第2篇 厄気悋々 よみ(新仮名遣い):やっきりんりん
章:第6章 雲隠 よみ(新仮名遣い):くもがくれ 通し章番号:1506
口述日:1923(大正12)年04月01日(旧02月16日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
バーチルの館では、番頭のアキスが来客を喜ばせようと力を尽くし、歌を歌って酒の座の興を添えていた。
チルテルはいつの間にか十数人の部下を引き連れて奥の間に闖入し、眠っているデビス姫に猿轡をはめて引っ抱え、館の裏門から抜け出して自分の館に帰り、倉の中に隠しておいた。
三千彦が目を覚ますと、デビス姫がいなくなっている。伊太彦は酒宴に興じながら裏門の方にブラリブラリと廻った。すると十数人の男たちが、女らしきものを担いで逃げて行くのが見えた。
伊太彦は、夜目にデビス姫がさらわれたのではないかと案じ、寝室に戻って三千彦に問いただした。三千彦は確かにデビス姫がいなくなっており、また眠っている間に姫がバラモン軍にさらわれた夢を見たと語った。
伊太彦は自分が見たことを話し、デビス姫がチルテルにさらわれたことを確信した。二人は玉国別に内緒で酒宴を抜け出してデビス姫を救出しにチルテルの館に向かった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5906
愛善世界社版:83頁 八幡書店版:第10輯 514頁 修補版: 校定版:87頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 アキスは、0011大柄杓(おほびしやく)()(かざ)(なが)群衆(ぐんしう)(なか)前後(ぜんご)左右(さいう)()(まは)り、002数多(あまた)来客(らいきやく)十二分(じふにぶん)(よろこ)ばせむと所在(あらゆる)(ちから)(つく)し、003(うた)(うた)つて(さけ)()(きよう)()へたり。
004アキス『アヅモス(さん)森林(しんりん)
005(わし)()()(たか)()
006それ(ゆゑ)スマの里人(さとびと)
007(すずめ)百舌鳥(もず)(かほ)()ない
008(こゑ)さへ()いた(こと)はない
009猩々(しやうじやう)さまもいつしかに
010(ひと)つも(のこ)らず()()つて
011(わし)(たか)との()(なか)
012さはさり(なが)今日(けふ)こそは
013百舌鳥(もず)(すずめ)みそさぎ
014千鳥(せんてう)万鳥(まんてう)やつて()
015チイチイ パーパー、パタパタと
016(さけ)()ふて()(くる)
017こんな目出度(めでた)(こと)あろか
018(みな)さま遠慮(ゑんりよ)()らないで
019(どて)()らして()みなさい
020あれあの(とほ)りバラモンの
021キヨの関所(せきしよ)のキャプテンが
022(いで)なさつて吾々(われわれ)
023一緒(いつしよ)(さけ)()について
024面白(おもしろ)さうに(うた)ひつつ
025(いさ)むで(ござ)()(かる)
026スマの(さと)にて随一(ずいいち)
027富豪(ふうがう)首陀(しゆだ)(きこ)えたる
028バーチルさまのお(やかた)
029官民(くわんみん)一致(いつち)瑞象(ずゐしやう)
030(あら)はしたるは(むかし)から
031(ためし)()らぬ出来事(できごと)
032三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
033玉国別(たまくにわけ)神司(かむつかさ)
034真純(ますみ)(ひこ)伊太彦(いたひこ)
035三千彦(みちひこ)(つかさ)デビス(ひめ)
036(おと)名高(なだか)(ひと)びとが
037これの(やかた)()でまして
038三五教(あななひけう)やバラモンの
039(へだ)てを(まつた)取除(とりのぞ)
040和気(わき)靄々(あいあい)酒宴(さかもり)
041(せき)(つら)なり(たま)ひしは
042四海(しかい)同胞(どうはう)真相(しんさう)
043(あら)はし(たま)ひし(かみ)(むね)
044皆様(みなさま)(よろこ)びなされませ
045イヅミの(くに)のスマの(さと)
046アヅモス(さん)猩々(しやうじやう)
047(いま)姿(すがた)()えねども
048御魂(みたま)(われ)()(たましひ)
049いつの()にかは(かか)りまし
050老若(らうにやく)男女(なんによ)(きら)ひなく
051一人(ひとり)(のこ)らず(さけ)()
052下戸(げこ)(やまひ)何処(どこ)へやら
053上戸(じやうご)(ばか)りに()()てて
054()くやら(わら)ふやら(おこ)るやら
055千姿(せんし)万態(ばんたい)八衢(やちまた)
056(その)有様(ありさま)委曲(まつぶさ)
057(あら)はしたるぞ面白(おもしろ)
058()めよ(さわ)げよ(をど)れよ(くる)
059()へよ(うた)へよいつ(まで)
060二十(にじつ)戸前(とまへ)(さけ)(くら)
061(ひと)つも(のこ)らず()()して
062猩々(しやうじやう)(かみ)()奉納(ほうなふ)
063猩々彦(しやうじやうひこ)猩々姫(しやうじやうひめ)
064親方(おやかた)さまに()つた(わし)
065(さけ)()まねば(つと)まらぬ
066あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
067これも(まつた)くバラモンの
068(たふと)(かみ)(おん)(めぐみ)
069(いは)へよ(いは)へよ(いさ)めよ(いさ)めよ
070バーチルさまの万歳(ばんざい)
071(みな)さまお(こゑ)(そろ)へつつ
072(とな)へて(くだ)さい(たの)みます
073万歳(ばんざい)万歳(ばんざい)万々歳(ばんばんざい)
074(つる)千歳(ちとせ)(はる)()
075(かめ)万歳(ばんざい)(なつ)(うた)
076(はる)(なつ)とは万物(ばんぶつ)
077(しげ)(さか)ゆるシーズンだ
078あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
079燗酒(かんざけ)なりと(ひや)なりと
080(おも)(おも)ひにドツサリと
081()んで()()(みな)(ひと)
082猩々(しやうじやう)(ひめ)御心(みこころ)
083(なぐさ)めまする方法(はうはふ)
084(さけ)()むより(ほか)()
085あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
086(かみ)のお神酒(みき)(いただ)きて
087(みな)さまこれから(しつか)りと
088(こころ)(あは)(ちから)をば
089(ひと)つになしてバーチルの
090里庄(りしやう)(きみ)(おや)となし
091スマの(さと)をば(たひら)けく
092いと(やす)らけく(にぎは)しく
093()みて(さか)えていつ(まで)
094天国(てんごく)浄土(じやうど)(きづ)()
095(かみ)(めぐみ)(かうむ)りて
096(ひと)(ひと)たる本分(ほんぶん)
097(つく)さにやならぬスマの(さと)
098(いは)(とき)にはよく(いは)
099(あそ)(とき)にはよく(あそ)
100()んで(くら)ふて(はたら)いて
101面白(おもしろ)可笑(をか)しく(この)()をば
102上下(うへした)(そろ)ふて(くら)しませう
103これが第一(だいいち)(かみ)(さま)
104(たい)(まつ)りて孝行(かうかう)
105サアサア()んだサア()んだ
106(をど)れよ(をど)れよ()へよ()
107何程(なにほど)(をど)()ふたとて
108金輪(こんりん)奈落(ならく)地底(ちてい)より
109(きづ)()げたるこの(ゆか)
110滅多(めつた)()ちる(こと)はない
111(つち)(かた)めたこの(には)
112金剛(こんがう)不壊(ふえ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
113(あん)じも()らぬ(のり)(ふね)
114あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
115(わたし)はこれで(やす)みます
116(みな)さま(かは)つて(うた)つてお()
117()()(ばか)りが(げい)でない
118こんな(ところ)(かく)(げい)
119天晴(あつぱれ)()して(みな)さまに
120アフンとさして(あご)()
121(へそ)宿換(やどがへ)さすがよい
122天下(てんか)御免(ごめん)のこの酒宴(うたげ)
123行儀(ぎやうぎ)(くそ)()るものか
124(みな)各自(めいめい)無礼講(ぶれいかう)
125これが(まこと)天国(てんごく)だ』
126 チルテルは何時(いつ)()にか十数(じふすう)(にん)部下(ぶか)()()(おく)()闖入(ちんにふ)し、127(さけ)()草臥(くたび)れて(ねむ)つて()るデビス(ひめ)を、1271()()たげ、128猿轡(さるぐつわ)をはめ(やかた)裏門(うらもん)よりソツと()()で、129(わが)(やかた)(かへ)(くら)(なか)へソツと()れて()いた。130三千彦(みちひこ)はフト()()まし(かたはら)()れば131デビス(ひめ)姿(すがた)()えなくなつて()る。132(しか)(なが)三千彦(みちひこ)はデビスが便所(べんじよ)へでも()つたのかと、133(あま)()にも(とめ)ず、134(また)(ねむ)つて仕舞(しま)つた。135伊太彦(いたひこ)群衆(ぐんしう)広庭(ひろには)夜露(よつゆ)()びて()いたり(わら)つたり小競合(こぜりあひ)をして()有様(ありさま)(なが)めて(きよう)がりながら、136ブラリブラリと裏門(うらもん)(はう)(まは)つて()く。
137 十数(じふすう)(にん)(をとこ)が、138夜目(よめ)(しつか)(わか)らねど、139(をんな)らしきものを(かつ)いでソツと()()すのを(なが)(なが)ら、140(しばら)(うで)()んで(かんが)()んだ。141『あれはもしや、142デビス(ひめ)では()からうかな、143(なん)とはなしによく()()るやうだ。144(しか)(なが)()つかりした(こと)()ふてドンをつかれちや大変(たいへん)だ。145()(かく)もデビス(ひめ)寝室(ねま)調(しら)べて()む』と一人(ひとり)(うなづ)(なが)146(いく)つかの()(くぐ)つていつて()ると147行燈(あんどん)のほの(ぐら)きもとに三千彦(みちひこ)(ただ)一人(ひとり)(ねむ)つて()る。148伊太彦(いたひこ)矢庭(やには)座敷(ざしき)()()り、149三千彦(みちひこ)()(おこ)しながら、
150伊太(いた)『オイオイ三千彦(みちひこ)さま、151デビス(ひめ)さまはどうしたのだ』
152三千(みち)『アー吃驚(びつくり)した。153よく睡入(ねい)つて()(ところ)()(おこ)されて154(たましひ)()(ぞこな)いをする(ところ)だつた。155大変(たいへん)(ゆめ)()()たのだよ』
156伊太(いた)『オイ(ゆめ)どころかい。157デビス(ひめ)さまはどうなつたかと(おも)ふか、158(しつか)りせぬかい』
159三千(みち)(じつ)(いま)デビスが、160バラモンの連中(れんちう)何処(どこ)かへ()れて()かれた(ゆめ)()()たのだ。161ハテ不思議(ふしぎ)(こと)があるものだ。162(ひめ)何処(どこ)()つたのだらうなア』
163伊太(いた)『お(まへ)(ゆめ)はテツキリ正夢(まさゆめ)だ。164(おれ)(ねむ)れぬままに大勢(おほぜい)酒酔(さかよ)ひを見物(けんぶつ)しながら裏門(うらもん)(まは)つて()ると、165十五六(じふごろく)(にん)荒男(あらをとこ)一人(ひとり)(をんな)(かつ)いで()げて()きよつたが、166(よる)のことで明瞭(はつき)(わか)らぬので、167()しデビス(ひめ)さまぢやないかと此処(ここ)調(しら)べに()(ところ)だ。168やや、169(これ)()うしては()られない。170(なん)とか工夫(くふう)をせなくてはならない』
171三千(みち)『オイ伊太彦(いたひこ)172(あま)(さわ)がないやうにして()れよ。173(かへつ)(てき)(ひめ)(ころ)されるやうな(こと)があつては(つま)らないから、174()(かく)(わか)(ところ)(まで)(だま)つて()るに(かぎ)るからなア。175(しか)(なが)らお(まへ)はあの(ひめ)(さら)つて()つた(やつ)(たれ)かと(おも)ふ』
176伊太(いた)(おれ)(かんが)へでは177バラモン(ぐん)のチルテルが部下(ぶか)だと(おも)ふよ。178今迄(いままで)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(さけ)(くら)つて()たが、179(にはか)(かげ)()えなくなつたので裏門(うらもん)(まは)つた(ところ)180(をんな)(かつ)いで()げよつたのだから181テツキリあれに(きま)つて()る。182(おれ)応援(おうゑん)してやるから183(いま)からチルテルの(やかた)(しの)()んで様子(やうす)(かんが)へ、184()(かへ)して()ようぢやないか』
185三千(みち)『ヤアそいつは有難(ありがた)い。186()苦労(くらう)だがお世話(せわ)にならうかなア。187(しか)玉国別(たまくにわけ)さまには(いま)少時(しばらく)内証(ないしやう)だよ』
188伊太(いた)『ウン承知(しようち)だ。189サア裏門(うらもん)からソツと偵察(ていさつ)()かう』
190寝衣(ねまき)(まま)二人(ふたり)裏門(うらもん)より()()し、191関守(せきもり)(やかた)をさして(すす)()く。
192大正一二・四・一 旧二・一六 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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