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第69巻(申の巻)
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第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
01 逆艪
〔1501〕
02 歌垣
〔1502〕
03 蜜議
〔1503〕
04 陰使
〔1504〕
05 有升
〔1505〕
第2篇 厄気悋々
06 雲隠
〔1506〕
07 焚付
〔1507〕
08 暗傷
〔1508〕
09 暗内
〔1509〕
10 変金
〔1510〕
11 黒白
〔1511〕
12 狐穴
〔1512〕
第3篇 地底の歓声
13 案知
〔1513〕
14 舗照
〔1514〕
15 和歌意
〔1515〕
16 開窟
〔1516〕
17 倉明
〔1517〕
第4篇 六根猩々
18 手苦番
〔1518〕
19 猩々舟
〔1519〕
20 海竜王
〔1520〕
21 客々舟
〔1521〕
22 五葉松
〔1522〕
23 鳩首
〔1523〕
24 隆光
〔1524〕
25 歓呼
〔1525〕
余白歌
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第六章
雲隠
(
くもがくれ
)
〔一五〇六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第2篇 厄気悋々
よみ(新仮名遣い):
やっきりんりん
章:
第6章 雲隠
よみ(新仮名遣い):
くもがくれ
通し章番号:
1506
口述日:
1923(大正12)年04月01日(旧02月16日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
バーチルの館では、番頭のアキスが来客を喜ばせようと力を尽くし、歌を歌って酒の座の興を添えていた。
チルテルはいつの間にか十数人の部下を引き連れて奥の間に闖入し、眠っているデビス姫に猿轡をはめて引っ抱え、館の裏門から抜け出して自分の館に帰り、倉の中に隠しておいた。
三千彦が目を覚ますと、デビス姫がいなくなっている。伊太彦は酒宴に興じながら裏門の方にブラリブラリと廻った。すると十数人の男たちが、女らしきものを担いで逃げて行くのが見えた。
伊太彦は、夜目にデビス姫がさらわれたのではないかと案じ、寝室に戻って三千彦に問いただした。三千彦は確かにデビス姫がいなくなっており、また眠っている間に姫がバラモン軍にさらわれた夢を見たと語った。
伊太彦は自分が見たことを話し、デビス姫がチルテルにさらわれたことを確信した。二人は玉国別に内緒で酒宴を抜け出してデビス姫を救出しにチルテルの館に向かった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5906
愛善世界社版:
83頁
八幡書店版:
第10輯 514頁
修補版:
校定版:
87頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
アキスは、
0011
大柄杓
(
おほびしやく
)
を
振
(
ふ
)
り
翳
(
かざ
)
し
乍
(
なが
)
ら
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
駆
(
か
)
け
廻
(
まは
)
り、
002
数多
(
あまた
)
の
来客
(
らいきやく
)
を
十二分
(
じふにぶん
)
に
喜
(
よろこ
)
ばせむと
所在
(
あらゆる
)
力
(
ちから
)
を
尽
(
つく
)
し、
003
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つて
酒
(
さけ
)
の
座
(
ざ
)
の
興
(
きよう
)
を
添
(
そ
)
へたり。
004
アキス『アヅモス
山
(
さん
)
の
森林
(
しんりん
)
に
005
鷲
(
わし
)
が
巣
(
す
)
を
組
(
く
)
む
鷹
(
たか
)
が
棲
(
す
)
む
006
それ
故
(
ゆゑ
)
スマの
里人
(
さとびと
)
は
007
雀
(
すずめ
)
や
百舌鳥
(
もず
)
の
顔
(
かほ
)
見
(
み
)
ない
008
声
(
こゑ
)
さへ
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
はない
009
猩々
(
しやうじやう
)
さまもいつしかに
010
一
(
ひと
)
つも
残
(
のこ
)
らず
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つて
011
鷲
(
わし
)
と
鷹
(
たか
)
との
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ
012
さはさり
乍
(
なが
)
ら
今日
(
けふ
)
こそは
013
百舌鳥
(
もず
)
も
雀
(
すずめ
)
も
みそさぎ
も
014
千鳥
(
せんてう
)
万鳥
(
まんてう
)
やつて
来
(
き
)
て
015
チイチイ パーパー、パタパタと
016
お
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふて
舞
(
ま
)
ひ
狂
(
くる
)
ふ
017
こんな
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
あろか
018
皆
(
みな
)
さま
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らないで
019
堤
(
どて
)
を
切
(
き
)
らして
呑
(
の
)
みなさい
020
あれあの
通
(
とほ
)
りバラモンの
021
キヨの
関所
(
せきしよ
)
のキャプテンが
022
お
出
(
いで
)
なさつて
吾々
(
われわれ
)
と
023
一緒
(
いつしよ
)
に
酒
(
さけ
)
の
座
(
ざ
)
について
024
面白
(
おもしろ
)
さうに
歌
(
うた
)
ひつつ
025
勇
(
いさ
)
むで
厶
(
ござ
)
る
気
(
き
)
の
軽
(
かる
)
さ
026
スマの
里
(
さと
)
にて
随一
(
ずいいち
)
の
027
富豪
(
ふうがう
)
の
首陀
(
しゆだ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
028
バーチルさまのお
館
(
やかた
)
に
029
官民
(
くわんみん
)
一致
(
いつち
)
の
瑞象
(
ずゐしやう
)
を
030
現
(
あら
)
はしたるは
昔
(
むかし
)
から
031
例
(
ためし
)
も
知
(
し
)
らぬ
出来事
(
できごと
)
だ
032
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
033
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
034
真純
(
ますみ
)
の
彦
(
ひこ
)
や
伊太彦
(
いたひこ
)
や
035
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
デビス
姫
(
ひめ
)
036
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
人
(
ひと
)
びとが
037
これの
館
(
やかた
)
に
出
(
い
)
でまして
038
三五教
(
あななひけう
)
やバラモンの
039
隔
(
へだ
)
てを
全
(
まつた
)
く
取除
(
とりのぞ
)
き
040
和気
(
わき
)
靄々
(
あいあい
)
と
酒宴
(
さかもり
)
の
041
席
(
せき
)
に
連
(
つら
)
なり
給
(
たま
)
ひしは
042
四海
(
しかい
)
同胞
(
どうはう
)
の
真相
(
しんさう
)
を
043
現
(
あら
)
はし
給
(
たま
)
ひし
神
(
かみ
)
の
旨
(
むね
)
044
皆様
(
みなさま
)
喜
(
よろこ
)
びなされませ
045
イヅミの
国
(
くに
)
のスマの
里
(
さと
)
046
アヅモス
山
(
さん
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
047
今
(
いま
)
は
姿
(
すがた
)
も
見
(
み
)
えねども
048
御魂
(
みたま
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
魂
(
たましひ
)
に
049
いつの
間
(
ま
)
にかは
憑
(
かか
)
りまし
050
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく
051
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
052
下戸
(
げこ
)
の
病
(
やまひ
)
は
何処
(
どこ
)
へやら
053
上戸
(
じやうご
)
許
(
ばか
)
りに
成
(
な
)
り
果
(
は
)
てて
054
泣
(
な
)
くやら
笑
(
わら
)
ふやら
怒
(
おこ
)
るやら
055
千姿
(
せんし
)
万態
(
ばんたい
)
八衢
(
やちまた
)
の
056
其
(
その
)
有様
(
ありさま
)
を
委曲
(
まつぶさ
)
に
057
現
(
あら
)
はしたるぞ
面白
(
おもしろ
)
き
058
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
踊
(
をど
)
れよ
狂
(
くる
)
へ
059
舞
(
ま
)
へよ
唄
(
うた
)
へよいつ
迄
(
まで
)
も
060
二十
(
にじつ
)
戸前
(
とまへ
)
の
酒
(
さけ
)
の
倉
(
くら
)
061
一
(
ひと
)
つも
残
(
のこ
)
らず
呑
(
の
)
み
乾
(
ほ
)
して
062
猩々
(
しやうじやう
)
の
神
(
かみ
)
へ
御
(
ご
)
奉納
(
ほうなふ
)
063
猩々彦
(
しやうじやうひこ
)
や
猩々姫
(
しやうじやうひめ
)
064
親方
(
おやかた
)
さまに
持
(
も
)
つた
私
(
わし
)
065
お
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
まねば
努
(
つと
)
まらぬ
066
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
067
これも
全
(
まつた
)
くバラモンの
068
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
恵
(
めぐみ
)
069
祝
(
いは
)
へよ
祝
(
いは
)
へよ
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
めよ
070
バーチルさまの
万歳
(
ばんざい
)
を
071
皆
(
みな
)
さまお
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へつつ
072
称
(
とな
)
へて
下
(
くだ
)
さい
頼
(
たの
)
みます
073
万歳
(
ばんざい
)
、
万歳
(
ばんざい
)
、
万々歳
(
ばんばんざい
)
074
鶴
(
つる
)
は
千歳
(
ちとせ
)
の
春
(
はる
)
を
舞
(
ま
)
ひ
075
亀
(
かめ
)
万歳
(
ばんざい
)
の
夏
(
なつ
)
謳
(
うた
)
ふ
076
春
(
はる
)
と
夏
(
なつ
)
とは
万物
(
ばんぶつ
)
の
077
茂
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
ゆるシーズンだ
078
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
079
燗酒
(
かんざけ
)
なりと
冷
(
ひや
)
なりと
080
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひにドツサリと
081
飲
(
の
)
んで
巻
(
ま
)
け
巻
(
ま
)
け
皆
(
みな
)
の
人
(
ひと
)
082
猩々
(
しやうじやう
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
083
慰
(
なぐさ
)
めまする
方法
(
はうはふ
)
は
084
お
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
むより
外
(
ほか
)
は
無
(
な
)
い
085
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
086
神
(
かみ
)
のお
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
きて
087
皆
(
みな
)
さまこれから
確
(
しつか
)
りと
088
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せ
力
(
ちから
)
をば
089
一
(
ひと
)
つになしてバーチルの
090
里庄
(
りしやう
)
の
君
(
きみ
)
を
親
(
おや
)
となし
091
スマの
里
(
さと
)
をば
平
(
たひら
)
けく
092
いと
安
(
やす
)
らけく
賑
(
にぎは
)
しく
093
富
(
と
)
みて
栄
(
さか
)
えていつ
迄
(
まで
)
も
094
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げ
095
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
蒙
(
かうむ
)
りて
096
人
(
ひと
)
の
人
(
ひと
)
たる
本分
(
ほんぶん
)
を
097
尽
(
つく
)
さにやならぬスマの
里
(
さと
)
098
祝
(
いは
)
ふ
時
(
とき
)
にはよく
祝
(
いは
)
ひ
099
遊
(
あそ
)
ぶ
時
(
とき
)
にはよく
遊
(
あそ
)
び
100
呑
(
の
)
んで
食
(
くら
)
ふて
働
(
はたら
)
いて
101
面白
(
おもしろ
)
可笑
(
をか
)
しく
此
(
この
)
世
(
よ
)
をば
102
上下
(
うへした
)
揃
(
そろ
)
ふて
暮
(
くら
)
しませう
103
これが
第一
(
だいいち
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
104
対
(
たい
)
し
奉
(
まつ
)
りて
孝行
(
かうかう
)
だ
105
サアサア
飲
(
の
)
んだサア
飲
(
の
)
んだ
106
踊
(
をど
)
れよ
踊
(
をど
)
れよ
舞
(
ま
)
へよ
舞
(
ま
)
へ
107
何程
(
なにほど
)
踊
(
をど
)
り
舞
(
ま
)
ふたとて
108
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
の
地底
(
ちてい
)
より
109
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げたるこの
床
(
ゆか
)
は
110
滅多
(
めつた
)
に
落
(
お
)
ちる
事
(
こと
)
はない
111
土
(
つち
)
で
固
(
かた
)
めたこの
庭
(
には
)
は
112
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
113
案
(
あん
)
じも
入
(
い
)
らぬ
法
(
のり
)
の
船
(
ふね
)
114
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
115
私
(
わたし
)
はこれで
休
(
やす
)
みます
116
皆
(
みな
)
さま
代
(
かは
)
つて
歌
(
うた
)
つてお
呉
(
く
)
れ
117
飲
(
の
)
み
食
(
く
)
ふ
許
(
ばか
)
りが
芸
(
げい
)
でない
118
こんな
所
(
ところ
)
で
隠
(
かく
)
し
芸
(
げい
)
を
119
天晴
(
あつぱれ
)
出
(
だ
)
して
皆
(
みな
)
さまに
120
アフンとさして
腮
(
あご
)
を
解
(
と
)
き
121
お
臍
(
へそ
)
の
宿換
(
やどがへ
)
さすがよい
122
天下
(
てんか
)
御免
(
ごめん
)
のこの
酒宴
(
うたげ
)
123
行儀
(
ぎやうぎ
)
も
糞
(
くそ
)
も
要
(
い
)
るものか
124
皆
(
みな
)
各自
(
めいめい
)
に
無礼講
(
ぶれいかう
)
125
これが
誠
(
まこと
)
の
天国
(
てんごく
)
だ』
126
チルテルは
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引
(
ひ
)
き
率
(
つ
)
れ
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
闖入
(
ちんにふ
)
し、
127
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
み
草臥
(
くたび
)
れて
睡
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
るデビス
姫
(
ひめ
)
を、
1271
引
(
ひ
)
つ
担
(
か
)
たげ、
128
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめ
館
(
やかた
)
の
裏門
(
うらもん
)
よりソツと
抜
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
で、
129
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
へ
帰
(
かへ
)
り
倉
(
くら
)
の
中
(
なか
)
へソツと
入
(
い
)
れて
置
(
お
)
いた。
130
三千彦
(
みちひこ
)
はフト
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし
傍
(
かたはら
)
を
見
(
み
)
れば
131
デビス
姫
(
ひめ
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつて
居
(
ゐ
)
る。
132
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
三千彦
(
みちひこ
)
はデビスが
便所
(
べんじよ
)
へでも
行
(
い
)
つたのかと、
133
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
にも
留
(
とめ
)
ず、
134
又
(
また
)
眠
(
ねむ
)
つて
仕舞
(
しま
)
つた。
135
伊太彦
(
いたひこ
)
は
群衆
(
ぐんしう
)
の
広庭
(
ひろには
)
で
夜露
(
よつゆ
)
を
浴
(
あ
)
びて
泣
(
な
)
いたり
笑
(
わら
)
つたり
小競合
(
こぜりあひ
)
をして
居
(
ゐ
)
る
有様
(
ありさま
)
を
眺
(
なが
)
めて
興
(
きよう
)
がりながら、
136
ブラリ
ブラリと
裏門
(
うらもん
)
の
方
(
はう
)
へ
廻
(
まは
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
137
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
が、
138
夜目
(
よめ
)
に
確
(
しつか
)
り
分
(
わか
)
らねど、
139
女
(
をんな
)
らしきものを
担
(
かつ
)
いでソツと
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すのを
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
ら、
140
暫
(
しばら
)
く
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
んで
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んだ。
141
『あれはもしや、
142
デビス
姫
(
ひめ
)
では
無
(
な
)
からうかな、
143
何
(
なん
)
とはなしによく
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るやうだ。
144
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
迂
(
う
)
つかりした
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふて
ドン
をつかれちや
大変
(
たいへん
)
だ。
145
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
もデビス
姫
(
ひめ
)
の
寝室
(
ねま
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
む』と
一人
(
ひとり
)
諾
(
うなづ
)
き
乍
(
なが
)
ら
146
幾
(
いく
)
つかの
間
(
ま
)
を
潜
(
くぐ
)
つていつて
見
(
み
)
ると
147
行燈
(
あんどん
)
のほの
暗
(
ぐら
)
きもとに
三千彦
(
みちひこ
)
が
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
睡
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
148
伊太彦
(
いたひこ
)
は
矢庭
(
やには
)
に
座敷
(
ざしき
)
に
駆
(
か
)
け
入
(
い
)
り、
149
三千彦
(
みちひこ
)
を
揺
(
ゆ
)
り
起
(
おこ
)
しながら、
150
伊太
(
いた
)
『オイオイ
三千彦
(
みちひこ
)
さま、
151
デビス
姫
(
ひめ
)
さまはどうしたのだ』
152
三千
(
みち
)
『アー
吃驚
(
びつくり
)
した。
153
よく
睡入
(
ねい
)
つて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
を
揺
(
ゆ
)
り
起
(
おこ
)
されて
154
魂
(
たましひ
)
の
入
(
い
)
り
損
(
ぞこな
)
いをする
所
(
ところ
)
だつた。
155
大変
(
たいへん
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのだよ』
156
伊太
(
いた
)
『オイ
夢
(
ゆめ
)
どころかい。
157
デビス
姫
(
ひめ
)
さまはどうなつたかと
思
(
おも
)
ふか、
158
確
(
しつか
)
りせぬかい』
159
三千
(
みち
)
『
実
(
じつ
)
は
今
(
いま
)
デビスが、
160
バラモンの
連中
(
れんちう
)
に
何処
(
どこ
)
かへ
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かれた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのだ。
161
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるものだ。
162
姫
(
ひめ
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたのだらうなア』
163
伊太
(
いた
)
『お
前
(
まへ
)
の
夢
(
ゆめ
)
はテツキリ
正夢
(
まさゆめ
)
だ。
164
俺
(
おれ
)
は
睡
(
ねむ
)
れぬままに
大勢
(
おほぜい
)
の
酒酔
(
さかよ
)
ひを
見物
(
けんぶつ
)
しながら
裏門
(
うらもん
)
へ
廻
(
まは
)
つて
見
(
み
)
ると、
165
十五六
(
じふごろく
)
人
(
にん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
が
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
担
(
かつ
)
いで
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
きよつたが、
166
夜
(
よる
)
のことで
明瞭
(
はつき
)
り
分
(
わか
)
らぬので、
167
若
(
も
)
しデビス
姫
(
ひめ
)
さまぢやないかと
此処
(
ここ
)
へ
調
(
しら
)
べに
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
だ。
168
やや、
169
是
(
これ
)
は
斯
(
か
)
うしては
居
(
を
)
られない。
170
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
をせなくてはならない』
171
三千
(
みち
)
『オイ
伊太彦
(
いたひこ
)
、
172
余
(
あま
)
り
騒
(
さわ
)
がないやうにして
呉
(
く
)
れよ。
173
却
(
かへつ
)
て
敵
(
てき
)
に
姫
(
ひめ
)
を
殺
(
ころ
)
されるやうな
事
(
こと
)
があつては
詮
(
つま
)
らないから、
174
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
分
(
わか
)
る
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
るに
限
(
かぎ
)
るからなア。
175
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らお
前
(
まへ
)
はあの
姫
(
ひめ
)
を
攫
(
さら
)
つて
行
(
い
)
つた
奴
(
やつ
)
は
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
ふ』
176
伊太
(
いた
)
『
俺
(
おれ
)
の
考
(
かんが
)
へでは
177
バラモン
軍
(
ぐん
)
のチルテルが
部下
(
ぶか
)
だと
思
(
おも
)
ふよ。
178
今迄
(
いままで
)
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
酒
(
さけ
)
を
飲
(
くら
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、
179
俄
(
にはか
)
に
影
(
かげ
)
が
見
(
み
)
えなくなつたので
裏門
(
うらもん
)
へ
廻
(
まは
)
つた
所
(
ところ
)
、
180
女
(
をんな
)
を
担
(
かつ
)
いで
逃
(
に
)
げよつたのだから
181
テツキリあれに
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
182
俺
(
おれ
)
が
応援
(
おうゑん
)
してやるから
183
今
(
いま
)
からチルテルの
館
(
やかた
)
へ
忍
(
しの
)
び
込
(
こ
)
んで
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へ、
184
取
(
と
)
り
返
(
かへ
)
して
来
(
こ
)
ようぢやないか』
185
三千
(
みち
)
『ヤアそいつは
有難
(
ありがた
)
い。
186
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だがお
世話
(
せわ
)
にならうかなア。
187
併
(
しか
)
し
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまには
今
(
いま
)
少時
(
しばらく
)
内証
(
ないしやう
)
だよ』
188
伊太
(
いた
)
『ウン
承知
(
しようち
)
だ。
189
サア
裏門
(
うらもん
)
からソツと
偵察
(
ていさつ
)
に
行
(
ゆ
)
かう』
190
と
寝衣
(
ねまき
)
の
儘
(
まま
)
二人
(
ふたり
)
は
裏門
(
うらもん
)
より
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
191
関守
(
せきもり
)
の
館
(
やかた
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
192
(
大正一二・四・一
旧二・一六
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
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