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天祥地瑞
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第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
01 逆艪
〔1501〕
02 歌垣
〔1502〕
03 蜜議
〔1503〕
04 陰使
〔1504〕
05 有升
〔1505〕
第2篇 厄気悋々
06 雲隠
〔1506〕
07 焚付
〔1507〕
08 暗傷
〔1508〕
09 暗内
〔1509〕
10 変金
〔1510〕
11 黒白
〔1511〕
12 狐穴
〔1512〕
第3篇 地底の歓声
13 案知
〔1513〕
14 舗照
〔1514〕
15 和歌意
〔1515〕
16 開窟
〔1516〕
17 倉明
〔1517〕
第4篇 六根猩々
18 手苦番
〔1518〕
19 猩々舟
〔1519〕
20 海竜王
〔1520〕
21 客々舟
〔1521〕
22 五葉松
〔1522〕
23 鳩首
〔1523〕
24 隆光
〔1524〕
25 歓呼
〔1525〕
余白歌
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(B)
(N)
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第一八章
手苦番
(
てくばん
)
〔一五一八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第4篇 六根猩々
よみ(新仮名遣い):
ろっこんしょうじょう
章:
第18章 手苦番
よみ(新仮名遣い):
てくばん
通し章番号:
1518
口述日:
1923(大正12)年04月02日(旧02月17日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉国別一行はバーチルの館に帰って行った。テクは一行の先に立って行進歌に述懐を歌う。一行が戻ってみると、バーチル帰還の村を挙げての祝宴はまだ続いており、人々がそこかしこに酔って転がっている。
奥の間ではバーチルとサーベル姫が、玉国別一行の無事を神前に祈っていた。二人は玉国別たちが無事に帰ってきたことを喜んだ。
テクは滑稽な歌交じりに経緯を語り、一同に笑いを振りまくが、バーチルにたしなめられて祝酒の準備をしに駆けて行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5918
愛善世界社版:
241頁
八幡書店版:
第10輯 570頁
修補版:
校定版:
255頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
002
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
の
危難
(
きなん
)
をば
003
思
(
おも
)
ひもよらぬ
神柱
(
かむばしら
)
004
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
救
(
すく
)
はれて
005
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
を
抜
(
ぬ
)
け
出
(
いだ
)
し
006
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
相別
(
あひわか
)
れ
007
アヅモス
山
(
さん
)
の
南麓
(
なんろく
)
に
008
甍
(
いらか
)
も
高
(
たか
)
く
立並
(
たちなら
)
ぶ
009
スマの
里庄
(
りしやう
)
のバーチルが
010
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
011
バラモン
教
(
けう
)
のスパイをば
012
勤
(
つと
)
めゐたりし
大酒豪
(
だいしゆがう
)
013
テクは
一行
(
いつかう
)
の
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
014
足
(
あし
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ
乍
(
なが
)
ら
015
羽
(
は
)
ばたきテクテク
歌
(
うた
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
016
『テルモン
山
(
ざん
)
の
山颪
(
やまおろし
)
017
キヨの
湖水
(
こすい
)
の
面
(
おもて
)
をば
018
ゆたかになでて
通
(
とほ
)
り
行
(
ゆ
)
く
019
其
(
その
)
鼻先
(
はなさき
)
はアヅモスの
020
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
のバーチルが
021
館
(
やかた
)
に
当
(
あた
)
りガヤガヤと
022
物騒
(
ものさわ
)
がしき
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
023
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
024
呑
(
の
)
めよ
唄
(
うた
)
への
大騒
(
おほさわ
)
ぎ
025
テクは
忽
(
たちま
)
ちバーチルの
026
家
(
いへ
)
の
奴
(
やつこ
)
となりすまし
027
祝
(
いは
)
ひを
兼
(
かね
)
て
里人
(
さとびと
)
に
028
酒
(
さけ
)
をすすむる
折
(
をり
)
もあれ
029
バラモン
教
(
けう
)
の
関守
(
せきもり
)
と
030
古
(
ふる
)
く
仕
(
つか
)
へしチルテルが
031
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
032
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
捉
(
とら
)
へむと
033
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
打
(
う
)
ちシトシトと
034
表門
(
おもてもん
)
へと
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
035
コリヤ
叶
(
かな
)
はぬと
此
(
この
)
テクが
036
孫呉
(
そんご
)
が
秘書
(
ひしよ
)
をまき
拡
(
ひろ
)
げ
037
長柄
(
ながえ
)
の
杓
(
しやく
)
に
甘酒
(
うまざけ
)
を
038
汲
(
く
)
むより
早
(
はや
)
く
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
039
プンと
嚊
(
か
)
がせば
麻酔剤
(
ますゐざい
)
040
吸収
(
きふしう
)
したる
其
(
その
)
如
(
ごと
)
く
041
始
(
はじ
)
めの
権幕
(
けんまく
)
どこへやら
042
ヒラリと
駒
(
こま
)
を
飛
(
とび
)
おりて
043
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
り
044
口汚
(
くちぎたな
)
くもガブガブと
045
鯨飲
(
げいいん
)
馬食
(
ばしよく
)
の
為体
(
ていたらく
)
046
何程
(
なにほど
)
威張
(
ゐば
)
つたキャプテンも
047
酒
(
さけ
)
にかけたらもろいもの
048
ソロソロ
酔
(
よひ
)
がまはり
出
(
だ
)
し
049
館
(
やかた
)
の
離室
(
はなれ
)
に
隠
(
かく
)
したる
050
初稚姫
(
はつわかひめ
)
のナイスをば
051
誘
(
いざな
)
ひ
来
(
きた
)
れ
成功
(
せいこう
)
すりや
052
リューチナントにしてやろと
053
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
にてチヨロまかす
054
元
(
もと
)
より
嘘
(
うそ
)
とは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
055
之
(
これ
)
も
一興
(
いつきよう
)
と
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
056
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
で
057
軍人
(
ぐんじん
)
気取
(
きど
)
りで「あります」を
058
連発
(
れんぱつ
)
したる
可笑
(
をか
)
しさよ
059
初稚姫
(
はつわかひめ
)
と
思
(
おも
)
ひしは
060
誠
(
まこと
)
の
人
(
ひと
)
にあらずして
061
しまひの
果
(
はて
)
にや
尻尾
(
しつぽ
)
出
(
だ
)
し
062
小牛
(
こうし
)
のやうな
白狐
(
びやつこ
)
と
変
(
な
)
り
063
這
(
は
)
い
出
(
い
)
だしたる
怖
(
おそ
)
ろしさ
064
怪事
(
くわいじ
)
百出
(
ひやくしゆつ
)
とめどなく
065
遂
(
つひ
)
には
一同
(
いちどう
)
穴倉
(
あなぐら
)
に
066
突
(
つき
)
倒
(
たふ
)
されて
吐息
(
といき
)
つく
067
折
(
をり
)
しも
真
(
まこと
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
068
猛犬
(
まうけん
)
スマート
引
(
ひき
)
連
(
つ
)
れて
069
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
070
チルテル
其
(
その
)
外
(
ほか
)
一同
(
いちどう
)
を
071
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
ひし
有難
(
ありがた
)
さ
072
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
073
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
忽
(
たちまち
)
に
074
旭
(
あさひ
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
きて
075
まだ
明
(
あ
)
けやらぬ
夜
(
よ
)
の
道
(
みち
)
も
076
何
(
なん
)
とはなしに
気分
(
きぶん
)
よく
077
バーチル
館
(
やかた
)
へ
指
(
さ
)
して
行
(
ゆ
)
く
078
こんな
騒
(
さわ
)
ぎのありしとは
079
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らぬスマの
里
(
さと
)
080
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る
老若
(
らうにやく
)
は
081
七日
(
なぬか
)
七夜
(
ななよ
)
の
酒宴
(
さかもり
)
に
082
胴腰
(
どうこし
)
据
(
す
)
ゑてガブガブと
083
泣
(
な
)
いたり
笑
(
わら
)
うたり
怒
(
おこ
)
つたり
084
牛飲
(
ぎういん
)
馬食
(
ばしよく
)
の
大酒宴
(
だいしゆえん
)
085
喉
(
のど
)
を
鳴
(
な
)
らしてゐるだらう
086
サア
是
(
これ
)
からは
是
(
これ
)
からは
087
此
(
この
)
テクさまも
久
(
ひさ
)
しぶりに
088
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
般若湯
(
はんにやたう
)
089
グイグイグイとひつかけて
090
一
(
ひと
)
つ
げん
をば
直
(
なほ
)
しませう
091
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
092
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
093
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
たち
094
向方
(
むかふ
)
に
見
(
み
)
える
森蔭
(
もりかげ
)
は
095
夜目
(
よめ
)
には
確
(
しつか
)
り
分
(
わか
)
らねど
096
正
(
ただ
)
しくバーチル
神館
(
かむやかた
)
097
モウ
一息
(
ひといき
)
だ
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
に
098
鞭
(
むち
)
打
(
う
)
ち
進
(
すす
)
み
帰
(
かへ
)
りませう
099
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
る
共
(
とも
)
曇
(
くも
)
るとも
100
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
共
(
とも
)
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
101
お
酒
(
さけ
)
の
味
(
あぢ
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
102
万劫
(
まんごふ
)
未代
(
まつだい
)
変
(
かは
)
らない
103
酒
(
さけ
)
程
(
ほど
)
笑顔
(
ゑがほ
)
のよいものが
104
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
にあるものか
105
笑
(
わら
)
ふも
泣
(
な
)
くも
面白
(
おもしろ
)
い
106
怒
(
おこ
)
り
狂
(
くる
)
ふも
一興
(
いつきよう
)
だ
107
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
にてした
事
(
こと
)
は
108
決
(
けつ
)
して
世人
(
よびと
)
は
咎
(
とが
)
めない
109
よい
要口
(
えうこう
)
が
出来
(
でき
)
たもの
110
あゝ
燗酒
(
かんざけ
)
ぢや
燗酒
(
かんざけ
)
ぢや
111
冷酒
(
れいしゆ
)
鯛汁
(
たひじふ
)
は
甘
(
うま
)
くない』
112
などと
下
(
くだ
)
らぬ
歌
(
うた
)
歌
(
うた
)
ひ
113
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
むで
表門
(
おもてもん
)
を
114
潜
(
くぐ
)
れば
数多
(
あまた
)
の
老若
(
らうにやく
)
が
115
夜昼
(
よるひる
)
かまはず
赤裸
(
まつぱだか
)
116
黒
(
くろ
)
い
体
(
からだ
)
を
曝
(
さらし
)
つつ
117
鯖
(
さば
)
の
鮨
(
すし
)
をばつけたよに
118
肚
(
はら
)
一杯
(
いつぱい
)
に
膨
(
ふく
)
らして
119
ゴロリゴロリと
高鼾
(
たかいびき
)
120
寝言
(
ねごと
)
の
声
(
こゑ
)
や
屁
(
へ
)
の
響
(
ひびき
)
121
人形箱
(
にんぎやうばこ
)
をぶちあけた
122
大乱雑
(
だいらんざつ
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
123
眺
(
なが
)
めてテクは
吹
(
ふ
)
き
出
(
いだ
)
し
124
アハヽヽハツハ アハヽヽヽ
125
面白
(
おもしろ
)
うなつてお
出
(
いで
)
たと
126
大玄関
(
おほげんくわん
)
を
一跨
(
ひとまた
)
げ
127
ドスンドスンと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
128
勢
(
いきほひ
)
込
(
こ
)
んで
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
129
アキス、
130
カールの
両人
(
りやうにん
)
は
一行
(
いつかう
)
が
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
進
(
すす
)
まむとする
途中
(
とちう
)
、
131
畳廊下
(
たたみらうか
)
でベツタリ
出会
(
でつくは
)
した。
132
テクは
見
(
み
)
るより、
133
テク『サア、
134
番頭
(
ばんとう
)
さまのお
帰
(
かへ
)
りだ。
135
早
(
はや
)
く
酒
(
さけ
)
を
一斗
(
いつと
)
許
(
ばか
)
り
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い。
136
何
(
なに
)
をグヅグヅしてゐるのだ。
137
新番頭
(
しんばんとう
)
さまの
天晴
(
あつぱれ
)
功名
(
こうみやう
)
手柄話
(
てがらばなし
)
、
138
汝
(
きさま
)
も
奥
(
おく
)
へ
来
(
き
)
てトツクリ
聞
(
き
)
くがよからうぞ』
139
アキス『ヘン、
140
馬鹿
(
ばか
)
にすない。
141
番頭
(
ばんとう
)
だなぞと、
142
勝手
(
かつて
)
に
定
(
き
)
めやがつて、
143
番犬
(
ばんけん
)
のバンタ
奴
(
め
)
、
144
汝
(
きさま
)
等
(
たち
)
が
当家
(
たうけ
)
の
番頭
(
ばんとう
)
にならうものなら、
145
それこそ
大変
(
たいへん
)
な
番狂
(
ばんぐる
)
はせだ』
146
テク『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
147
俺
(
おれ
)
は
主人公
(
しゆじんこう
)
からチヤンと
委任
(
ゐにん
)
をうけてるのだ。
148
バーチル
家
(
け
)
の
家政
(
かせい
)
一切
(
いつさい
)
は
皆
(
みな
)
此
(
この
)
テクさまの
御
(
ご
)
支配
(
しはい
)
だぞ』
149
玉国
(
たまくに
)
『コラコラ、
150
こんな
所
(
とこ
)
で
喧嘩
(
けんくわ
)
をしても
約
(
つま
)
らぬぢやないか』
151
テク『ハイ、
152
心得
(
こころえ
)
ました。
153
アキスの
奴
(
やつ
)
、
154
バンタだの
番犬
(
ばんけん
)
だのと、
155
余
(
あま
)
り
失敬
(
しつけい
)
なことをいふものですから、
156
チツと
癪
(
しやく
)
に
障
(
さは
)
つたのですよ。
157
サア、
158
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
159
今度
(
こんど
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
主人公
(
しゆじんこう
)
に
報告
(
はうこく
)
致
(
いた
)
しませう』
160
と
故意
(
わざ
)
とに
大手
(
おほて
)
を
振
(
ふ
)
り、
161
大股
(
おほまた
)
にドスン ドスンと
四股
(
しこ
)
をふみ
乍
(
なが
)
ら
主人
(
しゆじん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
162
バーチル、
163
サーベル
姫
(
ひめ
)
は
164
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
神前
(
しんぜん
)
に
向
(
むか
)
つて
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
の
無事
(
ぶじ
)
安全
(
あんぜん
)
を
祈願
(
きぐわん
)
してゐる
最中
(
さいちう
)
であつた。
165
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
も
拍手
(
かしはで
)
を
拍
(
う
)
ち
166
神前
(
しんぜん
)
に
無事
(
ぶじ
)
凱旋
(
がいせん
)
せしことを
感謝
(
かんしや
)
し
了
(
をは
)
つて
席
(
せき
)
に
着
(
つ
)
いた。
167
夫婦
(
ふうふ
)
は
拝礼
(
はいれい
)
を
了
(
をは
)
り、
168
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
の
無事
(
ぶじ
)
な
顔
(
かほ
)
をみて
打
(
うち
)
喜
(
よろこ
)
び、
169
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
170
バーチル『あ、
171
先生
(
せんせい
)
172
能
(
よ
)
うまア
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
173
御
(
お
)
案
(
あん
)
じ
申
(
まをし
)
て
居
(
を
)
りました』
174
サーベル『あ、
175
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
176
三千彦
(
みちひこ
)
様
(
さま
)
、
177
伊太彦
(
いたひこ
)
様
(
さま
)
、
178
何
(
ど
)
うしてゐられました。
179
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
と
大変
(
たいへん
)
な
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
しまして、
180
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
にしがみついて
泣
(
な
)
いてお
願
(
ねがひ
)
をして
居
(
を
)
りました。
181
マアお
目出
(
めで
)
たう
厶
(
ござ
)
います』
182
玉国
(
たまくに
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う。
183
いろいろと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
試
(
ため
)
しに
会
(
あ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
184
やアもう、
185
エライ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけ
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬ。
186
マア
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
一人
(
ひとり
)
の
怪我
(
けが
)
もなく
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
りましたからお
喜
(
よろこ
)
び
下
(
くだ
)
さい』
187
夫婦
(
ふうふ
)
は
一度
(
いちど
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
188
喜
(
よろこ
)
びの
余
(
あま
)
り
嬉涙
(
うれしなみだ
)
にかきくれてゐる。
189
テク『(のり)モウシ モウシ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
190
一応
(
いちおう
)
お
聞
(
き
)
きなされませ
191
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
を
救
(
すく
)
はむと
192
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
193
真純
(
ますみ
)
の
彦
(
ひこ
)
に
従
(
したが
)
ひて
194
先
(
さき
)
の
番頭
(
ばんとう
)
のアンチーを
195
案内
(
あんない
)
させてスタスタと
196
裏道
(
うらみち
)
指
(
さ
)
して
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
197
空
(
そら
)
には
日輪
(
にちりん
)
カンカンと
198
輝
(
かがや
)
き
玉
(
たま
)
ひ
頭上
(
てつぺ
)
から
199
火熱
(
くわねつ
)
を
浴
(
あ
)
びせる
苦
(
くる
)
しさに
200
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
立
(
たち
)
寄
(
よ
)
つて
201
玉国別
(
たまくにわけ
)
や
真純彦
(
ますみひこ
)
202
アンチー
三人
(
みたり
)
を
休
(
やす
)
ませつ
203
此
(
この
)
テク
奴
(
やつこ
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
204
チルテル
館
(
やかた
)
の
裏門
(
うらもん
)
へ
205
進
(
すす
)
むで
見
(
み
)
ればピツタリと
206
戸締
(
とじま
)
り
厳
(
きび
)
しくありければ
207
肝玉
(
きもだま
)
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
し
表門
(
おもてもん
)
208
廻
(
まは
)
つて
見
(
み
)
れば
人
(
ひと
)
もなし
209
事務室
(
じむしつ
)
いかにと
眺
(
なが
)
むれば
210
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
一匹
(
いつぴき
)
居
(
を
)
らばこそ
211
天井
(
てんじやう
)
に
鼠
(
ねずみ
)
がチウチウと
212
恋
(
こひ
)
を
争
(
あらそ
)
ひ
狂
(
くる
)
ふ
声
(
こゑ
)
213
此奴
(
こいつ
)
ア
不思議
(
ふしぎ
)
と
裏口
(
うらぐち
)
に
214
立出
(
たちい
)
でみれば
離屋
(
はなれ
)
の
座敷
(
ざしき
)
215
初稚姫
(
はつわかひめ
)
と
云
(
い
)
ふナイス
216
白
(
しろ
)
い
面
(
つら
)
してニコニコと
217
二人
(
ふたり
)
の
裸
(
はだか
)
を
前
(
まへ
)
におき
218
何
(
なに
)
か
命令
(
めいれい
)
下
(
くだ
)
し
居
(
ゐ
)
る
219
コリヤ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
220
仔細
(
しさい
)
あらむとかけよれば
221
豈計
(
あにはか
)
らむやチルテルと
222
ヘールの
二人
(
ふたり
)
が
角力取
(
すまふと
)
り
223
勝
(
か
)
つたお
方
(
かた
)
の
女房
(
にようばう
)
に
224
ならうとお
化
(
ばけ
)
が
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
225
いふた
嘘
(
うそ
)
をば
真
(
ま
)
に
受
(
う
)
けて
226
此
(
この
)
テク
奴
(
やつこ
)
も
釣
(
つ
)
り
込
(
こ
)
まれ
227
ドスンドスンと
四股
(
しこ
)
ふみならし
228
汗
(
あせ
)
をタラタラ
絞
(
しぼ
)
りつつ
229
俄
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
る
力士
(
すまふとり
)
230
難
(
なん
)
なく
二人
(
ふたり
)
を
投
(
なげ
)
付
(
つ
)
けて
231
地底
(
ちてい
)
の
洞
(
ほら
)
へと
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
むだ
232
初稚姫
(
はつわかひめ
)
はテク
奴
(
やつこ
)
の
233
お
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
らしくれぬかと
234
優
(
やさ
)
しい
顔
(
かほ
)
してつめかける
235
コリヤ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
236
男
(
をとこ
)
と
生
(
うま
)
れた
上
(
うへ
)
からは
237
一
(
ひと
)
つ
握手
(
あくしゆ
)
しキッスをば
238
やつてみようと
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
ばし
239
グツとつかめばこはいかに
240
細
(
ほそ
)
い
腕
(
かひな
)
は
毛
(
け
)
だらけだ
241
忽
(
たちま
)
ち
白狐
(
びやつこ
)
となり
変
(
かは
)
り
242
眼
(
まなこ
)
を
怒
(
いか
)
らし
睨
(
にら
)
みたる
243
其
(
その
)
権幕
(
けんまく
)
の
恐
(
おそ
)
ろしさ
244
あとをも
見
(
み
)
ずに
245
エツサツサ エツサツサ
246
スタコラヨイヤサと
駆
(
か
)
け
出
(
いだ
)
し
247
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
待
(
ま
)
ち
玉
(
たま
)
ふ
248
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
をば
暗
(
くら
)
がりで
249
当途
(
あてど
)
もなしに
走
(
はし
)
り
入
(
い
)
る
250
暗
(
くら
)
さは
暗
(
くら
)
し
真純彦
(
ますみひこ
)
251
胸
(
むね
)
に
頭
(
かしら
)
をうちつけて
252
アツと
倒
(
たふ
)
れた
苦
(
くる
)
しさよ
253
まだまだ
先
(
さき
)
は
長
(
なが
)
けれど
254
お
酒
(
さけ
)
を
一杯
(
いつぱい
)
貰
(
もら
)
はねば
255
どうやら
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れさうだ
256
コレコレもうしアンチーさま
257
早
(
はや
)
くお
酒
(
さけ
)
をついでくれ
258
之
(
これ
)
より
先
(
さき
)
はいはれない
259
玉国別
(
たまくにわけ
)
や
皆
(
みな
)
さまの
260
一生
(
いつしやう
)
の
恥
(
はぢ
)
になりまする
261
言
(
い
)
はぬが
仏
(
ほとけ
)
神心
(
かみごころ
)
262
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
263
之
(
これ
)
にて
中止
(
ちうし
)
仕
(
つかまつ
)
る
264
アハヽヽアツハ、アハヽヽヽ』
265
一同
(
いちどう
)
『ウツフヽヽヽ』
266
バーチル『オイ テク、
267
芝居
(
しばゐ
)
がかりで、
268
種々
(
いろいろ
)
と
報告
(
はうこく
)
してくれたが、
269
どうも
真相
(
しんさう
)
が
分
(
わか
)
りにくい。
270
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
皆
(
みな
)
さまが
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さつたのだから、
271
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
はない。
272
サア
彼方
(
あちら
)
へ
行
(
い
)
つて、
273
充分
(
じうぶん
)
酒
(
さけ
)
でもあがつて
下
(
くだ
)
さい。
274
そして、
275
アキス、
276
カール
等
(
など
)
を、
277
決
(
けつ
)
して
揶揄
(
からか
)
つてはなりませぬぞ』
278
テク『ハイ、
279
畏
(
かしこ
)
まりました。
280
然
(
しか
)
らば
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
様
(
さま
)
、
281
玉国別
(
たまくにわけ
)
一統
(
いつとう
)
様
(
さま
)
、
282
一寸
(
ちよつと
)
暫時
(
しばらく
)
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
ります。
283
左様
(
さやう
)
ならば』
284
といふより
早
(
はや
)
く
酒
(
さけ
)
の
場
(
ば
)
さして
駆
(
か
)
けて
行
(
ゆ
)
く。
285
(
大正一二・四・二
旧二・一七
於皆生温泉浜屋
松村真澄
録)
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【18 手苦番|第59巻(戌の巻)|霊界物語/rm5918】
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