霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第59巻(戌の巻)
序
総説歌
第1篇 毀誉の雲翳
01 逆艪
〔1501〕
02 歌垣
〔1502〕
03 蜜議
〔1503〕
04 陰使
〔1504〕
05 有升
〔1505〕
第2篇 厄気悋々
06 雲隠
〔1506〕
07 焚付
〔1507〕
08 暗傷
〔1508〕
09 暗内
〔1509〕
10 変金
〔1510〕
11 黒白
〔1511〕
12 狐穴
〔1512〕
第3篇 地底の歓声
13 案知
〔1513〕
14 舗照
〔1514〕
15 和歌意
〔1515〕
16 開窟
〔1516〕
17 倉明
〔1517〕
第4篇 六根猩々
18 手苦番
〔1518〕
19 猩々舟
〔1519〕
20 海竜王
〔1520〕
21 客々舟
〔1521〕
22 五葉松
〔1522〕
23 鳩首
〔1523〕
24 隆光
〔1524〕
25 歓呼
〔1525〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第59巻
> 第3篇 地底の歓声 > 第14章 舗照
<<< 案知
(B)
(N)
和歌意 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一四章
舗照
(
ほてる
)
〔一五一四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻
篇:
第3篇 地底の歓声
よみ(新仮名遣い):
ちていのかんせい
章:
第14章 舗照
よみ(新仮名遣い):
ほてる
通し章番号:
1514
口述日:
1923(大正12)年04月02日(旧02月17日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年7月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
三千彦と伊太彦はデビス姫とともにチルテルの館を抜け出そうと、庭先を木蔭に隠れながら進んで行った。すると足元の落とし穴にかかり、滑り落ちてしまった。三人は怪我もなく地底の一間に安着した。そこには思いもよらぬ広い洞があり、燐光がきらめいていた。
辺りには燐鉱があってその光が洞窟内を照らしている。三人が出口を探していると、伊太彦は広い岩室があるのを見つけた。筵が敷き詰めてあったので、三人はそこで休んだ。
地上が明るくなると、どこからともなく光がさしてきて、燐鉱は弱まった。伊太彦は岩室の入り口に宿屋の番頭を気取って頬杖ついて横たわっている。そこへヘールが落ちてきた。
落とし穴の底で声をかけられたヘールは驚いたが、伊太彦は近頃ここで岩窟ホテルを開業したのだとからかう。ヘールは面白がって部屋に入って行く。
次にチルテルが落ち込んできた。チルテルは、ここは自分の館内の落とし穴だと伊太彦にくってかかるが、伊太彦は番頭ぶった滑稽を並べ立て、煙に巻いてしまう。チルテルもいぶかりながら部屋に入って行く。
部屋に入ってきたヘールが、三千彦とデビス姫をホテルの従業員扱いするので、二人はいぶかっている。チルテルがやってきたのを見たヘールは、テクに相撲で負けたことをからかう。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-05-06 16:03:34
OBC :
rm5914
愛善世界社版:
186頁
八幡書店版:
第10輯 551頁
修補版:
校定版:
197頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
三千彦
(
みちひこ
)
は
[
※
第8章#141の後のエピソード
]
002
デビスの
姫
(
ひめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し
003
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
004
チルテル
館
(
やかた
)
の
庭前
(
にはさき
)
を
005
木蔭
(
こかげ
)
に
身
(
み
)
をば
隠
(
かく
)
しつつ
006
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
007
忽
(
たちま
)
ち
足元
(
あしもと
)
バツサリと
008
思
(
おも
)
ひ
掛
(
が
)
けなき
底脱
(
そこぬ
)
けの
009
滑
(
すべ
)
り
落
(
お
)
ちたる
陥穽
(
おとしあな
)
010
三人
(
みたり
)
は
何
(
なん
)
の
怪我
(
けが
)
もなく
011
地底
(
ちてい
)
の
一間
(
ひとま
)
に
安着
(
あんちやく
)
し
012
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば
摩訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
013
思
(
おも
)
ひもよらぬ
広
(
ひろ
)
い
洞
(
ほら
)
014
光
(
ひかり
)
きらめく
燐光
(
りんくわう
)
の
015
常磐
(
ときは
)
堅磐
(
かきは
)
の
岩
(
いは
)
の
穴
(
あな
)
016
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
に
017
光明
(
くわうみやう
)
世界
(
せかい
)
に
登
(
のぼ
)
りたる
018
心地
(
ここち
)
し
乍
(
なが
)
ら
悠々
(
いういう
)
と
019
三人
(
みたり
)
は
手
(
て
)
をばつなぎつつ
020
蒲鉾
(
かまぼこ
)
なりの
大道
(
だいだう
)
を
021
進
(
すす
)
むが
如
(
ごと
)
くスタスタと
022
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて
探
(
さぐ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
023
伊太
(
いた
)
『
何
(
なん
)
だかバツサリと
地底
(
ちてい
)
へ
落
(
お
)
ちた
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がしたと
思
(
おも
)
へば
024
四辺
(
あたり
)
はキラキラと
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
光明
(
くわうみやう
)
世界
(
せかい
)
だ。
025
扨
(
さて
)
も
扨
(
さて
)
も
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるものだな。
026
三千彦
(
みちひこ
)
さま、
027
吾々
(
われわれ
)
は
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
てゐるのぢやありますまいかな』
028
三千
(
みち
)
『いや
決
(
けつ
)
して
夢
(
ゆめ
)
ではありませぬ。
029
敵
(
てき
)
の
術中
(
じゆつちう
)
に
陥
(
おちい
)
り
陥穽
(
おとしあな
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
むだのですよ。
030
凡
(
すべ
)
て
此
(
この
)
辺
(
へん
)
は
地中
(
ちちう
)
の
洞穴
(
ほらあな
)
が
沢山
(
たくさん
)
ある
所
(
ところ
)
です。
031
此
(
この
)
暗夜
(
あんや
)
にキラキラ
光
(
ひか
)
るのは
全部
(
ぜんぶ
)
燐鉱
(
りんくわう
)
です。
032
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らここは
昔
(
むかし
)
033
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
の
住居
(
すまゐ
)
して
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
に
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
034
何処
(
どこ
)
か
此処辺
(
ここら
)
で
休息
(
きうそく
)
致
(
いた
)
しませう』
035
伊太
(
いた
)
『
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
スベスベしたよく
慣
(
な
)
れた
岩窟
(
いはや
)
ですな。
036
これ
位
(
くらゐ
)
だと
何処
(
どこ
)
か
探
(
さが
)
したら、
037
沢山
(
たくさん
)
な
座敷
(
ざしき
)
がとつてあるに
違
(
ちが
)
ひ
厶
(
ござ
)
いませぬわ。
038
一
(
ひと
)
つ
念入
(
ねんい
)
りに
探
(
さが
)
して
見
(
み
)
て、
039
座敷
(
ざしき
)
でもあればまア
貴方
(
あなた
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
新所帯
(
しんしよたい
)
をなさいませ。
040
私
(
わたし
)
はまア
臨時
(
りんじ
)
番頭
(
ばんとう
)
となつて
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
しませう。
041
ねえ
奥様
(
おくさま
)
、
042
結構
(
けつこう
)
でせう』
043
デビス『ホヽヽヽヽ、
044
伊太彦
(
いたひこ
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
、
045
ようまアそんな
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
られますな。
046
ここは
敵
(
てき
)
の
屋敷
(
やしき
)
、
047
何時
(
なんどき
)
煙攻
(
けむりぜ
)
めに
会
(
あ
)
はされるやら、
048
徳利攻
(
とつくりぜめ
)
にされるやら
分
(
わか
)
りもせぬのに
049
本当
(
ほんたう
)
に
貴方
(
あなた
)
は
楽天
(
らくてん
)
主義
(
しゆぎ
)
ですな』
050
伊太
(
いた
)
『
陥穽
(
おとしあな
)
からバツサリと
地底
(
ちてい
)
へ
落転
(
らくてん
)
主義
(
しゆぎ
)
です。
051
まアまア
宜
(
よろ
)
しいわい。
052
刹那心
(
せつなしん
)
を
楽
(
たのし
)
みませう。
053
後
(
あと
)
には
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
先生
(
せんせい
)
もあり
真純彦
(
ますみひこ
)
も
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
りますから、
054
屹度
(
きつと
)
尋
(
たづ
)
ね
出
(
だ
)
して
私
(
わたし
)
等
(
たち
)
を
救
(
すく
)
つて
呉
(
く
)
れるに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
055
マア
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
をせずに
此
(
この
)
瞬間
(
しゆんかん
)
を
楽
(
たのし
)
みませう。
056
悔
(
くや
)
んで
見
(
み
)
た
所
(
とこ
)
で、
057
どうにもならぬぢやありませぬか。
058
暫
(
しばら
)
く
馬鹿
(
ばか
)
になつて
居
(
を
)
れば
何
(
なに
)
も
苦
(
くる
)
しい
事
(
こと
)
はありませぬわ。
059
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
馬鹿
(
ばか
)
と
狂人
(
きちがひ
)
になる
位
(
くらゐ
)
幸福
(
かうふく
)
はありませぬからな。
060
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
始終
(
しじう
)
馬鹿
(
ばか
)
と
狂人
(
きちがひ
)
になれと
仰有
(
おつしや
)
りますが
061
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
と
狂人
(
きちがひ
)
位
(
ぐらひ
)
気楽
(
きらく
)
なものは
厶
(
ござ
)
いませぬわい、
062
アツハヽヽヽ』
063
三千
(
みち
)
『もう
宜
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
後
(
あと
)
へ
引返
(
ひつかへ
)
しませう。
064
何程
(
いくら
)
行
(
い
)
つても
際限
(
さいげん
)
がありませぬわ。
065
これからベルヂスタン、
066
アフガニスタンの
方
(
はう
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、
067
斯
(
こ
)
んな
岩窟
(
いはや
)
は
沢山
(
たくさん
)
あると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
です。
068
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
と
云
(
い
)
つて
随分
(
ずいぶん
)
有名
(
いうめい
)
なものもあるからな』
069
伊太
(
いた
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
070
も
一度
(
いちど
)
念入
(
ねんい
)
りに
探
(
さが
)
して
見
(
み
)
ませう』
071
と
又
(
また
)
元
(
もと
)
へ
引返
(
ひつかへ
)
し
其処辺
(
そこら
)
中
(
ぢう
)
を
探
(
さが
)
して
見
(
み
)
ると
072
自分
(
じぶん
)
の
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
むだ
穴
(
あな
)
の
横
(
よこ
)
に
少
(
すこ
)
し
凹
(
へつこ
)
んだ
処
(
ところ
)
がある、
073
伊太彦
(
いたひこ
)
はグツと
押
(
お
)
して
見
(
み
)
ると
広
(
ひろ
)
い
岩窟
(
いはや
)
があつて、
074
燐鉱
(
りんくわう
)
がキラキラと
四辺
(
あたり
)
に
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
075
伊太
(
いた
)
『ヤ、
076
有難
(
ありがた
)
い、
077
ここで
暫
(
しば
)
らく
籠城
(
ろうじやう
)
ときめやう。
078
これ
丈
(
だ
)
け
設備
(
せつび
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
ると
食糧
(
しよくりやう
)
も
水
(
みづ
)
も
何処
(
どこ
)
かにあるだらう』
079
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
080
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はドシドシ
奥
(
おく
)
へ
進
(
すす
)
むで
見
(
み
)
ると、
081
足
(
あし
)
にガシガシと
触
(
さは
)
るものがある。
082
よくよく
見
(
み
)
れば
芭蕉
(
ばせう
)
の
葉
(
は
)
で
編
(
あ
)
んだ
莚
(
むしろ
)
が
敷
(
し
)
きつめてある。
083
伊太
(
いた
)
『や、
084
此奴
(
こいつ
)
ア
意外
(
いぐわい
)
な
珍座敷
(
ちんざしき
)
だ。
085
まアここで
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
悠
(
ゆつく
)
りと
雑魚寝
(
ざこね
)
を
致
(
いた
)
しませう。
086
然
(
しか
)
し
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
になれば
暫
(
しばら
)
く
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
ませう』
087
デビス
姫
(
ひめ
)
『
思
(
おも
)
ひきや
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
落
(
おと
)
されて
088
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
に
寝
(
い
)
ぬる
嬉
(
うれ
)
しさ。
089
菅畳
(
すがだたみ
)
いやさや
敷
(
し
)
きて
三人
(
みたり
)
連
(
づ
)
れ
090
寝
(
ね
)
る
夢心地
(
ゆめごこち
)
してぞ
嬉
(
うれ
)
しき』
091
伊太彦
(
いたひこ
)
『
又
(
また
)
しても
寝
(
ね
)
る
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り
仰有
(
おつしや
)
るな
092
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
はセリバシーぞや』
093
デビス
姫
(
ひめ
)
『
妾
(
わらは
)
とて
神
(
かみ
)
の
御業
(
みわざ
)
の
済
(
す
)
む
迄
(
まで
)
は
094
同
(
おな
)
じ
思
(
おも
)
ひのセリバシーなり』
095
伊太彦
(
いたひこ
)
『
千早
(
ちはや
)
振
(
ふ
)
る
神代
(
かみよ
)
も
聞
(
き
)
かぬ
妹
(
いも
)
と
背
(
せ
)
が
096
セリバシーとは
怪
(
あや
)
しかりけり』
097
三千彦
(
みちひこ
)
『
心
(
こころ
)
なき
人
(
ひと
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
デビス
姫
(
ひめ
)
の
098
仲
(
なか
)
を
怪
(
あや
)
しく
思
(
おも
)
ふなるらむ』
099
伊太彦
(
いたひこ
)
『
人前
(
ひとまへ
)
を
飾
(
かざ
)
ることなく
詳細
(
まつぶさ
)
に
100
告
(
つ
)
げさせ
玉
(
たま
)
へ
鴛鴦
(
をし
)
の
親
(
した
)
しみ』
101
デビス
姫
(
ひめ
)
『
只
(
ただ
)
見
(
み
)
れば
夫婦
(
めをと
)
の
睦
(
むつ
)
びせしものと
102
思
(
おも
)
ふなるらむ
世
(
よ
)
の
人々
(
ひとびと
)
は。
103
さり
乍
(
なが
)
ら
心
(
こころ
)
健気
(
けなげ
)
な
三千彦
(
みちひこ
)
は
104
怪
(
あや
)
しき
夢
(
ゆめ
)
を
結
(
むす
)
び
玉
(
たま
)
はず』
105
三千彦
(
みちひこ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
やデビスの
姫
(
ひめ
)
よ
村肝
(
むらきも
)
の
106
ゆめ
心
(
こころ
)
をな
傷
(
いた
)
め
玉
(
たま
)
ひそ』
107
伊太彦
(
いたひこ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
の
心
(
こころ
)
は
君
(
きみ
)
が
親
(
した
)
しみを
108
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
祈
(
いの
)
り
暮
(
くら
)
しつ。
109
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
配
(
くば
)
らせ
玉
(
たま
)
ふなく
110
妹背
(
いもせ
)
の
道
(
みち
)
を
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ。
111
妹
(
いも
)
と
背
(
せ
)
の
仲
(
なか
)
を
隔
(
へだ
)
つる
伊太彦
(
いたひこ
)
は
112
人目
(
ひとめ
)
の
垣
(
かき
)
と
思召
(
おぼしめ
)
すらむ。
113
板垣
(
いたがき
)
を
潜
(
くぐ
)
りて
出
(
い
)
づる
門戸
(
もんこ
)
あり
114
隙
(
ひま
)
行
(
ゆ
)
く
駒
(
こま
)
の
例
(
ためし
)
知
(
し
)
らずや。
115
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
や
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
迄
(
まで
)
落
(
お
)
ちしかと
116
思
(
おも
)
ひし
事
(
こと
)
も
夢
(
ゆめ
)
となりぬる。
117
何
(
なん
)
となく
心
(
うら
)
勇
(
いさ
)
ましくなりにけり
118
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
にあるを
忘
(
わす
)
れて。
119
栲褥
(
たくぶすま
)
いやさや
敷
(
し
)
きて
三人
(
みたり
)
連
(
づ
)
れ
120
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるをば
待
(
ま
)
ちつつ
寝
(
いね
)
む』
121
デビス
姫
(
ひめ
)
『いざさらば
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
三千彦
(
みちひこ
)
よ
122
心
(
こころ
)
定
(
さだ
)
めて
寝
(
ねむり
)
に
就
(
つ
)
かむ』
123
三千彦
(
みちひこ
)
『
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
にかかる
雲
(
くも
)
もなし
124
花
(
はな
)
と
月
(
つき
)
との
君
(
きみ
)
とありせば』
125
伊太彦
(
いたひこ
)
『
花
(
はな
)
は
姫
(
ひめ
)
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
に
126
つきの
姿
(
すがた
)
となりにけるかな』
127
三千彦
(
みちひこ
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
やデビスの
姫
(
ひめ
)
の
真心
(
まごころ
)
を
128
神
(
かみ
)
は
嘉
(
よみ
)
して
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
はむ。
129
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
のまにまに
従
(
したが
)
ひて
130
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
の
開
(
あ
)
くを
待
(
ま
)
たなむ』
131
かく
互
(
たがひ
)
に
三十一
(
みそひと
)
文字
(
もじ
)
を
詠
(
よ
)
み
交
(
かは
)
し
乍
(
なが
)
ら
132
其
(
その
)
夜
(
よ
)
は
他愛
(
たあい
)
もなく
眠
(
ねむ
)
らひにけり。
133
地上
(
ちじやう
)
の
世界
(
せかい
)
は
漸
(
やうや
)
く
明
(
あか
)
るくなつたと
見
(
み
)
えて
134
四辺
(
あたり
)
の
燐鉱
(
りんくわう
)
は
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
薄
(
うす
)
らぎ、
135
新
(
あたら
)
しき
光
(
ひかり
)
が
何処
(
どこ
)
ともなく
刺
(
さ
)
して
来
(
き
)
た。
136
伊太彦
(
いたひこ
)
は
入口
(
いりぐち
)
の
間
(
ま
)
に
宿屋
(
やどや
)
の
番頭然
(
ばんとうぜん
)
として
一人
(
ひとり
)
頬杖
(
ほほづえ
)
をついて
横
(
よこた
)
はつて
居
(
ゐ
)
る。
137
そこへバサリと
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
がある。
138
よくよく
見
(
み
)
ればユゥンケルのヘールなりける。
139
伊太
(
いた
)
『や、
140
入
(
い
)
らつしやい』
141
ユゥンケルは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて、
142
ヘール『や、
143
あ、
144
貴方
(
あなた
)
は
何人
(
なにびと
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
145
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
此処
(
ここ
)
にお
越
(
こ
)
しになつたのですか』
146
伊太
(
いた
)
『つい
近頃
(
ちかごろ
)
旅館
(
りよくわん
)
開業
(
かいげふ
)
を
致
(
いた
)
しまして
147
まだ
設備
(
せつび
)
も
充分
(
じうぶん
)
に
出来
(
でき
)
て
居
(
を
)
りませぬが、
148
何卒
(
どうぞ
)
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
つて
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
149
そして
上等
(
じやうとう
)
が
一泊
(
いつぱく
)
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
、
150
但
(
ただ
)
し
昼飯
(
ちうはん
)
を
抜
(
ぬ
)
きに
致
(
いた
)
しましてで
厶
(
ござ
)
います。
151
昼飯
(
ちうはん
)
ともに
七
(
しち
)
円
(
ゑん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
152
その
代
(
かは
)
り
茶代
(
ちやだい
)
廃止
(
はいし
)
の
広告
(
くわうこく
)
をして
置
(
お
)
きましたから
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
安
(
やす
)
いものです。
153
然
(
しか
)
し
茶代
(
ちやだい
)
としては
頂
(
いただ
)
きませぬが、
154
お
土産
(
みやげ
)
としてならば
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
でも
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
でも
少
(
すこ
)
しも
辞退
(
じたい
)
は
致
(
いた
)
しませぬ』
155
ヘール『アハヽヽヽ、
156
腹
(
はら
)
さへヘール
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
がなければ
辛抱
(
しんばう
)
致
(
いた
)
します。
157
何分
(
なにぶん
)
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
貧乏神
(
びんばふがみ
)
に
見舞
(
みまは
)
れて
居
(
を
)
りますから、
158
あまり
高
(
たか
)
い
宿賃
(
やどちん
)
は
出
(
だ
)
せませぬ。
159
どうか
二等
(
にとう
)
位
(
ぐらゐ
)
の
所
(
とこ
)
でお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
160
伊太
(
いた
)
『
開業
(
かいげふ
)
匆々
(
さうさう
)
で
設備
(
せつび
)
も
出来
(
でき
)
て
居
(
を
)
りませぬから、
161
チツとは
辛抱
(
しんばう
)
して
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ。
162
そして
食
(
く
)
つて
頂
(
いただ
)
くものは
何
(
なに
)
もありませぬが、
163
鬼
(
おに
)
の
蕨
(
わらび
)
か、
164
捻餅
(
ひねりもち
)
か、
165
鼻抓
(
はなつまみ
)
団子
(
だんご
)
ならば
無尽蔵
(
むじんざう
)
に
仕込
(
しこ
)
んであるから
166
腕
(
うで
)
のつづく
迄
(
まで
)
食
(
く
)
つて
貰
(
もら
)
はうと
儘
(
まま
)
で
厶
(
ござ
)
いますわ』
167
ヘール『いや、
168
もう
結構
(
けつこう
)
です。
169
泊
(
と
)
めてさへ
頂
(
いただ
)
けばそれで
宜
(
よろ
)
しい』
170
伊太
(
いた
)
『それならお
望
(
のぞ
)
みに
任
(
まか
)
せませう。
171
然
(
しか
)
し
宿賃
(
やどちん
)
は
前金
(
ぜんきん
)
で
厶
(
ござ
)
いますから
172
其
(
その
)
お
積
(
つも
)
りで
願
(
ねが
)
ひます。
173
お
茶代
(
ちやだい
)
は
要
(
い
)
りませぬがチツと
小便
(
せうべん
)
臭
(
くさ
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
174
大変
(
たいへん
)
暖
(
あたた
)
かくつて
丁度
(
ちやうど
)
飲
(
の
)
み
頃
(
ごろ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ』
175
ヘール『
折角
(
せつかく
)
泊
(
と
)
めて
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
ひましたが
176
小便茶
(
せうべんちや
)
を
飲
(
の
)
まされちや
堪
(
たま
)
りませぬから、
177
此方
(
こつち
)
から
小便
(
せうべん
)
致
(
いた
)
します。
178
大
(
おほ
)
きに
有難
(
ありがた
)
う。
179
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
の
宿屋
(
やどや
)
で
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になります』
180
伊太
(
いた
)
『
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
ホテルは
何処
(
どこ
)
へおいでになつても
181
皆
(
みな
)
此
(
この
)
伊太屋
(
いたや
)
の
屋敷
(
やしき
)
で
厶
(
ござ
)
います。
182
伊太屋
(
いたや
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
承諾
(
しようだく
)
なくては、
183
どこの
端
(
はし
)
くれにも
置
(
お
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
184
千日前
(
せんにちまへ
)
の
夜店
(
よみせ
)
でさへも
地代
(
ぢだい
)
をとられるのですから、
185
そんな
事
(
こと
)
をして
居
(
を
)
つては
商売
(
しやうばい
)
が
立
(
た
)
ち
行
(
ゆ
)
きませぬからな』
186
ヘール『アツハヽヽヽ、
187
それなら
極上等
(
ごくじやうとう
)
でお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しませう』
188
伊太
(
いた
)
『いや
毎度
(
まいど
)
御
(
ご
)
贔屓
(
ひいき
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
189
さア
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
190
デビス
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
仲居
(
なかゐ
)
も
居
(
を
)
り、
191
三千彦
(
みちひこ
)
といふ
幇間
(
たいこもち
)
も
居
(
を
)
りますから、
192
御
(
ご
)
退屈
(
たいくつ
)
なれば
何
(
なん
)
なりと
仰
(
おほ
)
せつけ
下
(
くだ
)
さいませ。
193
それが
岩窟
(
がんくつ
)
ホテルの
特色
(
とくしよく
)
です。
194
ウツフヽヽヽ』
195
ヘール『それなら
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になりませう』
196
と
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
羽
(
は
)
ばたきし
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
197
伊太
(
いた
)
『アツハヽヽヽ、
198
宿屋
(
やどや
)
ごつこも
面白
(
おもしろ
)
いものだ。
199
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
一晩
(
ひとばん
)
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
では、
200
どうも
算盤
(
そろばん
)
が
合
(
あ
)
はぬやうだ。
201
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
高
(
たか
)
い
炭火
(
すみ
)
を
焚
(
た
)
いて
炬燵
(
こたつ
)
も
拵
(
こしら
)
へてやらねばならず、
202
一室
(
ひとま
)
に
一
(
ひと
)
つづつ
火鉢
(
ひばち
)
には
火
(
ひ
)
を
絶
(
た
)
やさぬやうにせねばならず、
203
不心得
(
ふこころえ
)
のお
客
(
きやく
)
になると
折角
(
せつかく
)
畳替
(
たたみが
)
へした
畳
(
たたみ
)
に
煙草
(
たばこ
)
の
火
(
ひ
)
を
落
(
おと
)
して
焦
(
こが
)
すなり、
204
蒲団
(
ふとん
)
が
硬
(
かた
)
いの、
205
軟
(
やわらか
)
いの、
206
薄
(
うす
)
いの、
207
厚
(
あつ
)
いの、
208
重
(
おも
)
たいの、
209
水
(
みづ
)
に
金気
(
かなけ
)
があるの、
210
なんのと
叱言
(
こごと
)
許
(
ばか
)
り
聞
(
き
)
かされて……
一寸
(
ちよつと
)
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
と
云
(
い
)
ふと、
2101
高
(
たか
)
い
様
(
やう
)
だが
211
懐勘定
(
ふところかんぢやう
)
して
見
(
み
)
ると
余
(
あんま
)
り、
212
ぼろいものぢやないわい。
213
アタ
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
い、
214
一
(
いち
)
里
(
り
)
も
一里半
(
いちりはん
)
もある
警察
(
けいさつ
)
に
宿帳
(
やどちやう
)
を
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
かねばならず、
215
夏
(
なつ
)
の
日
(
ひ
)
はまだ
宜
(
い
)
いが
216
冬
(
ふゆ
)
の
雪
(
ゆき
)
が
一丈
(
いちぢやう
)
も
積
(
つも
)
つた
間
(
あひだ
)
は
217
何程
(
いくら
)
貰
(
もら
)
つてもやりきれないわ。
218
開業
(
かいげふ
)
匆々
(
さうさう
)
一人
(
ひとり
)
のお
客
(
きやく
)
はあつたが
219
之
(
これ
)
では
如何
(
どう
)
も
詮
(
つま
)
らない。
220
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
家内
(
かない
)
が
一人
(
ひとり
)
位
(
ぐらゐ
)
お
客
(
きやく
)
を
泊
(
と
)
めたつて、
221
そのかすりで
如何
(
どう
)
して
世帯
(
しよたい
)
が
持
(
も
)
てるものか。
222
電燈料
(
でんとうれう
)
も
払
(
はら
)
はねばならず、
223
戸数割
(
こすうわり
)
も
相当
(
さうたう
)
に
課
(
か
)
けられるなり、
224
おまけに
家賃
(
やちん
)
に
地代
(
ぢだい
)
、
225
町内
(
ちやうない
)
の
交際
(
つきあい
)
、
226
よう
物入
(
ものい
)
りのする
事
(
こと
)
だ。
227
誰
(
たれ
)
か
大金持
(
おほがねもち
)
のお
客
(
きやく
)
さまが
泊
(
とま
)
つて
228
金
(
かね
)
の
十千万
(
とちまん
)
両
(
りやう
)
も
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
へ
落
(
おと
)
しておいて
呉
(
く
)
れると
宜
(
い
)
いけれどな。
229
何程
(
なにほど
)
山吹色
(
やまぶきいろ
)
だと
云
(
い
)
つても、
230
雪隠
(
せつちん
)
に
浮
(
う
)
いとる
奴
(
やつ
)
では
糞
(
くそ
)
の
役
(
やく
)
にも
立
(
た
)
たず、
231
あゝ
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いな、
232
せめて
今晩
(
こんばん
)
は
客
(
きやく
)
の
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
位
(
ぐらゐ
)
は
泊
(
と
)
めたいものだな』
233
斯
(
か
)
く
一人
(
ひとり
)
興
(
きよう
)
がつてゐる
所
(
ところ
)
へ
234
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
からズルズルズル ドスンとさくなだりに
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
むで
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
大男
(
おほをとこ
)
がある。
235
伊太
(
いた
)
『もしもし、
236
貴方
(
あなた
)
はテルモン
詣
(
まゐり
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
237
これから
先
(
さき
)
は
一寸
(
ちよつと
)
宿
(
やど
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬから
238
拙者
(
せつしや
)
の
宅
(
たく
)
へ
泊
(
とま
)
つて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
239
キヨの
湖水
(
こすい
)
には
海賊船
(
かいぞくせん
)
が
横行
(
わうかう
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
240
海上
(
かいじやう
)
で
賊
(
ぞく
)
に
剥
(
は
)
ぎとられるよりも
241
弊館
(
へいくわん
)
でお
泊
(
とま
)
り
下
(
くだ
)
さつて
剥
(
はぎ
)
とられなさつた
方
(
はう
)
が
安全
(
あんぜん
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
242
チルテル『お
前
(
まへ
)
はどこの
奴
(
やつ
)
だ。
243
ここは
俺
(
おれ
)
の
屋敷内
(
やしきない
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
だが、
244
誰
(
たれ
)
に
断
(
ことわ
)
つて、
245
こんな
所
(
ところ
)
に
居
(
ゐ
)
るのだ』
246
伊太
(
いた
)
『
借地権
(
しやくちけん
)
は
已
(
すで
)
に
登記済
(
とうきずみ
)
となり
247
此
(
この
)
家
(
いへ
)
は
賃貸借
(
ちんたいしやく
)
法
(
はふ
)
によつて、
248
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
四十九
(
しじふく
)
円
(
ゑん
)
(
始終
(
しじう
)
食
(
く
)
えぬ)の
家賃
(
やちん
)
を
払
(
はら
)
つて
居
(
ゐ
)
ます
以上
(
いじやう
)
は、
249
矢張
(
やつぱ
)
り
伊太屋
(
いたや
)
の
財産
(
ざいさん
)
も
同様
(
どうやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
250
サア
何卒
(
どうぞ
)
お
泊
(
とま
)
り
下
(
くだ
)
さい。
251
千客
(
せんきやく
)
万来
(
ばんらい
)
開業
(
かいげふ
)
匆々
(
そうそう
)
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
だ。
252
御
(
ご
)
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
します。
253
一寸
(
ちよつと
)
宿帳
(
やどちやう
)
に
記
(
しる
)
して
頂
(
いただ
)
きたいものです』
254
チルテル『エー、
255
お
前
(
まへ
)
は
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのか。
256
但
(
ただし
)
は
呆
(
はう
)
けて
居
(
ゐ
)
るのか。
257
ここはホテルでも
何
(
なん
)
でもない、
258
キヨの
関所
(
せきしよ
)
の
庭前
(
にはさき
)
の
陥穽
(
おとしあな
)
だ。
259
つまり
俺
(
おれ
)
の
領分内
(
りやうぶんない
)
だ。
260
グヅグヅ
申
(
まを
)
すと
承知
(
しようち
)
せぬぞ』
261
伊太
(
いた
)
『
成程
(
なるほど
)
、
262
貴方
(
あなた
)
が
大家
(
おほや
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか。
263
これはこれは
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
しました。
264
然
(
しか
)
し
当家
(
たうけ
)
に
泊
(
とま
)
つて
貰
(
もら
)
へば
265
矢張
(
やつぱ
)
り
宿賃
(
やどちん
)
を
貰
(
もら
)
はねばなりませぬ。
266
阿呆
(
あはう
)
の
国
(
くに
)
、
267
野留間
(
ぬるま
)
郡
(
ぐん
)
頓馬村
(
とんまむら
)
大字
(
おほあざ
)
腰抜
(
こしぬけ
)
小字
(
こあざ
)
失恋
(
しつれん
)
、
268
第
(
だい
)
苦百
(
くひやく
)
苦集
(
くじふ
)
苦
(
く
)
番地
(
ばんち
)
の
始終
(
しじう
)
苦
(
く
)
、
269
狐
(
きつね
)
騙
(
だま
)
されゑ
門
(
もん
)
、
270
雅名
(
がめい
)
は
落胆
(
らくたん
)
と
書
(
か
)
いて
置
(
お
)
きました。
271
マア
之
(
これ
)
で
形式
(
けいしき
)
さへ
通
(
とほ
)
ればいいのですからな』
272
チルテル『エー、
273
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
事
(
こと
)
だわい。
274
初稚姫
(
はつわかひめ
)
のナイス、
275
テクの
奴
(
やつ
)
と
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて、
276
今頃
(
いまごろ
)
にや
喜
(
よろこ
)
んで
其処辺
(
そこら
)
をブラついて
居
(
ゐ
)
やがるだらう。
277
此処
(
ここ
)
へ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んで
来
(
く
)
ると
宜
(
い
)
いがな、
278
エー
怪体
(
けつたい
)
な
事
(
こと
)
だわい』
279
伊太
(
いた
)
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
280
奥
(
おく
)
に
賓客室
(
ひんきやくしつ
)
が
厶
(
ござ
)
います。
281
そこには
下女
(
げぢよ
)
も
下男
(
げなん
)
も
居
(
を
)
りますから
世話
(
せわ
)
をさせませう。
282
初稚姫
(
はつわかひめ
)
よりもズツと
勝
(
すぐ
)
れたナイスが
開業
(
かいげふ
)
と
同時
(
どうじ
)
に
抱
(
かか
)
へ
込
(
こ
)
むでありますから、
283
まアそんな
難
(
むつかし
)
い
顔
(
かほ
)
せずにお
泊
(
とま
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
284
チルテル『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
285
どんな
女
(
をんな
)
が
居
(
を
)
るか、
286
一
(
ひと
)
つ
調
(
しら
)
べてやらう』
287
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らスタスタと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
288
ヘールは
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
むだ。
289
自分
(
じぶん
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
に
揶揄
(
からか
)
はれ、
290
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にかお
客
(
きやく
)
さま
気取
(
きど
)
りになり、
291
横柄
(
わうへい
)
な
面
(
つら
)
をして
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
通
(
とほ
)
つて
見
(
み
)
れば、
292
三千彦
(
みちひこ
)
、
293
デビス
姫
(
ひめ
)
の
二人
(
ふたり
)
が
一間
(
いつけん
)
程
(
ほど
)
距離
(
きより
)
を
隔
(
へだ
)
ててキチンと
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
294
ヘール『おい、
295
お
客
(
きやく
)
さまだ お
客
(
きやく
)
さまだ。
296
こら、
297
少女
(
おちよぼ
)
、
298
早
(
はや
)
く
茶
(
ちや
)
を
出
(
だ
)
さないか。
299
料理人
(
いたば
)
と
昼日中
(
ひるひなか
)
何
(
なに
)
密談
(
みつだん
)
をやつてるのだ。
300
そんな
事
(
こと
)
で
商売
(
しやうばい
)
が
繁昌
(
はんぜう
)
するか。
301
もう、
302
これつきりで
泊
(
とま
)
つてやらぬぞ』
303
三千彦
(
みちひこ
)
『お、
304
お
前
(
まへ
)
さま
赤裸体
(
まつぱだか
)
で
何処
(
どこ
)
から
来
(
き
)
たのですか』
305
ヘール『
何処
(
どこ
)
からも
何
(
なに
)
もあつたものかい。
306
其処
(
そこ
)
から
来
(
き
)
たのだ。
307
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
の
番頭
(
ばんとう
)
に
掛合
(
かけあ
)
つて
最上等
(
さいじやうとう
)
で
泊
(
とま
)
る
事
(
こと
)
にしたのだ。
308
さア
早
(
はや
)
く
茶
(
ちや
)
を
汲
(
く
)
むだり
汲
(
く
)
むだり』
309
三千彦
(
みちひこ
)
『
訝
(
いぶ
)
かしや
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
310
珍
(
うづ
)
のホテルとなりにけらしな』
311
デビス
姫
(
ひめ
)
『
何国
(
なにくに
)
の
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
らねども
312
宿
(
やど
)
にはあらじ
宿
(
やど
)
の
妻
(
つま
)
ぞや』
313
ヘール『
吾
(
われ
)
こそはリュウチナントのヘールぞや
314
憐
(
あは
)
れみ
玉
(
たま
)
へ
珍
(
うづ
)
のよき
人
(
ひと
)
。
315
初稚
(
はつわか
)
の
姫
(
ひめ
)
を
争
(
あらそ
)
ひ
角力
(
すまふ
)
とり
316
負
(
まけ
)
て
岩窟
(
いはや
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
みし
吾
(
われ
)
』
317
デビス
姫
(
ひめ
)
『
汝
(
なれ
)
も
亦
(
また
)
これの
岩窟
(
いはや
)
に
落
(
お
)
ちしかと
318
思
(
おも
)
へばいとど
憐
(
あは
)
れなりけり。
319
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
最早
(
もはや
)
ナイスに
憐
(
あは
)
れとも
320
あはれないとも
分
(
わか
)
らざりけり』
321
かかる
所
(
ところ
)
へ
又
(
また
)
も
真裸体
(
まつぱだか
)
のチルテルが
322
面
(
つら
)
膨
(
ふく
)
らし
乍
(
なが
)
らノソリノソリとやつて
来
(
き
)
た。
323
ヘール『アツハヽヽヽ、
324
おい、
325
チルテルさま、
326
君
(
きみ
)
も
矢張
(
やつぱ
)
り
恋
(
こひ
)
の
敗者
(
はいしや
)
だな。
327
や、
328
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
、
329
之
(
これ
)
で
漸
(
やうや
)
く
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さが
)
つた。
330
ウツフヽヽヽ』
331
(
大正一二・四・二
旧二・一七
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 案知
(B)
(N)
和歌意 >>>
霊界物語
>
第59巻
> 第3篇 地底の歓声 > 第14章 舗照
Tweet
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【14 舗照|第59巻(戌の巻)|霊界物語/rm5914】
合言葉「みろく」を入力して下さい→