霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一四章 舗照(ほてる)〔一五一四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第3篇 地底の歓声 よみ(新仮名遣い):ちていのかんせい
章:第14章 舗照 よみ(新仮名遣い):ほてる 通し章番号:1514
口述日:1923(大正12)年04月02日(旧02月17日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三千彦と伊太彦はデビス姫とともにチルテルの館を抜け出そうと、庭先を木蔭に隠れながら進んで行った。すると足元の落とし穴にかかり、滑り落ちてしまった。三人は怪我もなく地底の一間に安着した。そこには思いもよらぬ広い洞があり、燐光がきらめいていた。
辺りには燐鉱があってその光が洞窟内を照らしている。三人が出口を探していると、伊太彦は広い岩室があるのを見つけた。筵が敷き詰めてあったので、三人はそこで休んだ。
地上が明るくなると、どこからともなく光がさしてきて、燐鉱は弱まった。伊太彦は岩室の入り口に宿屋の番頭を気取って頬杖ついて横たわっている。そこへヘールが落ちてきた。
落とし穴の底で声をかけられたヘールは驚いたが、伊太彦は近頃ここで岩窟ホテルを開業したのだとからかう。ヘールは面白がって部屋に入って行く。
次にチルテルが落ち込んできた。チルテルは、ここは自分の館内の落とし穴だと伊太彦にくってかかるが、伊太彦は番頭ぶった滑稽を並べ立て、煙に巻いてしまう。チルテルもいぶかりながら部屋に入って行く。
部屋に入ってきたヘールが、三千彦とデビス姫をホテルの従業員扱いするので、二人はいぶかっている。チルテルがやってきたのを見たヘールは、テクに相撲で負けたことをからかう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-05-06 16:03:34 OBC :rm5914
愛善世界社版:186頁 八幡書店版:第10輯 551頁 修補版: 校定版:197頁 普及版: 初版: ページ備考:
001(かみ)(をしへ)三千彦(みちひこ)第8章#141の後のエピソード
002デビスの(ひめ)(すく)()
003伊太彦(いたひこ)(つかさ)諸共(もろとも)
004チルテル(やかた)庭前(にはさき)
005木蔭(こかげ)()をば(かく)しつつ
006意気(いき)揚々(やうやう)(かへ)()
007(たちま)足元(あしもと)バツサリと
008(おも)()けなき底脱(そこぬ)けの
009(すべ)()ちたる陥穽(おとしあな)
010三人(みたり)(なん)怪我(けが)もなく
011地底(ちてい)一間(ひとま)安着(あんちやく)
012四辺(あたり)()れば摩訶(まか)不思議(ふしぎ)
013(おも)ひもよらぬ(ひろ)(ほら)
014(ひかり)きらめく燐光(りんくわう)
015常磐(ときは)堅磐(かきは)(いは)(あな)
016黒白(あやめ)(わか)(やみ)()
017光明(くわうみやう)世界(せかい)(のぼ)りたる
018心地(ここち)(なが)悠々(いういう)
019三人(みたり)()をばつなぎつつ
020蒲鉾(かまぼこ)なりの大道(だいだう)
021(すす)むが(ごと)くスタスタと
022(あし)(まか)せて(さぐ)()く。
023伊太(いた)(なん)だかバツサリと地底(ちてい)()ちた(やう)()がしたと(おも)へば024四辺(あたり)はキラキラと(ひか)(かがや)光明(くわうみやう)世界(せかい)だ。025(さて)(さて)不思議(ふしぎ)(こと)があるものだな。026三千彦(みちひこ)さま、027吾々(われわれ)(ゆめ)でも()てゐるのぢやありますまいかな』
028三千(みち)『いや(けつ)して(ゆめ)ではありませぬ。029(てき)術中(じゆつちう)(おちい)陥穽(おとしあな)()()むだのですよ。030(すべ)(この)(へん)地中(ちちう)洞穴(ほらあな)沢山(たくさん)ある(ところ)です。031(この)暗夜(あんや)にキラキラ(ひか)るのは全部(ぜんぶ)燐鉱(りんくわう)です。032(しか)(なが)らここは(むかし)033立派(りつぱ)人間(にんげん)住居(すまゐ)して()(ところ)(ちが)ひありませぬ。034何処(どこ)此処辺(ここら)休息(きうそく)(いた)しませう』
035伊太(いた)比較(ひかく)(てき)スベスベしたよく()れた岩窟(いはや)ですな。036これ(くらゐ)だと何処(どこ)(さが)したら、037沢山(たくさん)座敷(ざしき)がとつてあるに(ちが)(ござ)いませぬわ。038(ひと)念入(ねんい)りに(さが)して()て、039座敷(ざしき)でもあればまア貴方(あなた)()夫婦(ふうふ)新所帯(しんしよたい)をなさいませ。040(わたし)はまア臨時(りんじ)番頭(ばんとう)となつて御用(ごよう)(いた)しませう。041ねえ奥様(おくさま)042結構(けつこう)でせう』
043デビス『ホヽヽヽヽ、044伊太彦(いたひこ)(さま)仰有(おつしや)(こと)045ようまアそんな気楽(きらく)(こと)()つて()られますな。046ここは(てき)屋敷(やしき)047何時(なんどき)煙攻(けむりぜ)めに()はされるやら、048徳利攻(とつくりぜめ)にされるやら(わか)りもせぬのに049本当(ほんたう)貴方(あなた)楽天(らくてん)主義(しゆぎ)ですな』
050伊太(いた)陥穽(おとしあな)からバツサリと地底(ちてい)落転(らくてん)主義(しゆぎ)です。051まアまア(よろ)しいわい。052刹那心(せつなしん)(たのし)みませう。053(あと)には玉国別(たまくにわけ)先生(せんせい)もあり真純彦(ますみひこ)(のこ)つて()りますから、054屹度(きつと)(たづ)()して(わたし)(たち)(すく)つて()れるに(ちが)ひありませぬ。055マア取越(とりこし)苦労(くらう)をせずに(この)瞬間(しゆんかん)(たのし)みませう。056(くや)んで()(とこ)で、057どうにもならぬぢやありませぬか。058(しばら)馬鹿(ばか)になつて()れば(なに)(くる)しい(こと)はありませぬわ。059()(なか)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)になる(くらゐ)幸福(かうふく)はありませぬからな。060(かみ)(さま)始終(しじう)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)になれと仰有(おつしや)りますが061本当(ほんたう)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)(ぐらひ)気楽(きらく)なものは(ござ)いませぬわい、062アツハヽヽヽ』
063三千(みち)『もう()加減(かげん)(あと)引返(ひつかへ)しませう。064何程(いくら)()つても際限(さいげん)がありませぬわ。065これからベルヂスタン、066アフガニスタンの(はう)()くと、067()んな岩窟(いはや)沢山(たくさん)あると()(こと)です。068(しこ)岩窟(いはや)()つて随分(ずいぶん)有名(いうめい)なものもあるからな』
069伊太(いた)()(かく)も、070一度(いちど)念入(ねんい)りに(さが)して()ませう』
071(また)(もと)引返(ひつかへ)其処辺(そこら)(ぢう)(さが)して()ると072自分(じぶん)()()むだ(あな)(よこ)(すこ)(へつこ)んだ(ところ)がある、073伊太彦(いたひこ)はグツと()して()ると(ひろ)岩窟(いはや)があつて、074燐鉱(りんくわう)がキラキラと四辺(あたり)(ひか)つて()る。
075伊太(いた)『ヤ、076有難(ありがた)い、077ここで(しば)らく籠城(ろうじやう)ときめやう。078これ()設備(せつび)出来(でき)()ると食糧(しよくりやう)(みづ)何処(どこ)かにあるだらう』
079(さき)()つて(すす)()る。
080 (さん)(にん)はドシドシ(おく)(すす)むで()ると、081(あし)にガシガシと(さは)るものがある。082よくよく()れば芭蕉(ばせう)()()んだ(むしろ)()きつめてある。
083伊太(いた)『や、084此奴(こいつ)意外(いぐわい)珍座敷(ちんざしき)だ。085まアここで(さん)(にん)(ゆつく)りと雑魚寝(ざこね)(いた)しませう。086(しか)()邪魔(じやま)になれば(しばら)(ひか)へて()ませう』
087デビス(ひめ)(おも)ひきや(しこ)岩窟(いはや)(おと)されて
088(たたみ)(うへ)()ぬる(うれ)しさ。
089菅畳(すがだたみ)いやさや()きて三人(みたり)()
090()夢心地(ゆめごこち)してぞ(うれ)しき』
091伊太彦(いたひこ)(また)しても()(こと)(ばか)仰有(おつしや)るな
092(この)伊太彦(いたひこ)はセリバシーぞや』
093デビス(ひめ)(わらは)とて(かみ)御業(みわざ)()(まで)
094(おな)(おも)ひのセリバシーなり』
095伊太彦(いたひこ)千早(ちはや)()神代(かみよ)()かぬ(いも)()
096セリバシーとは(あや)しかりけり』
097三千彦(みちひこ)(こころ)なき(ひと)三千彦(みちひこ)デビス(ひめ)
098(なか)(あや)しく(おも)ふなるらむ』
099伊太彦(いたひこ)人前(ひとまへ)(かざ)ることなく詳細(まつぶさ)
100()げさせ(たま)鴛鴦(をし)(した)しみ』
101デビス(ひめ)(ただ)()れば夫婦(めをと)(むつ)びせしものと
102(おも)ふなるらむ()人々(ひとびと)は。
103さり(なが)(こころ)健気(けなげ)三千彦(みちひこ)
104(あや)しき(ゆめ)(むす)(たま)はず』
105三千彦(みちひこ)伊太彦(いたひこ)やデビスの(ひめ)村肝(むらきも)
106ゆめ(こころ)をな(いた)(たま)ひそ』
107伊太彦(いたひこ)伊太彦(いたひこ)(こころ)(きみ)(した)しみを
108(かみ)御前(みまへ)(いの)(くら)しつ。
109村肝(むらきも)(こころ)(くば)らせ(たま)ふなく
110妹背(いもせ)(みち)(まも)らせ(たま)へ。
111(いも)()(なか)(へだ)つる伊太彦(いたひこ)
112人目(ひとめ)(かき)思召(おぼしめ)すらむ。
113板垣(いたがき)(くぐ)りて()づる門戸(もんこ)あり
114(ひま)()(こま)(ためし)()らずや。
115()(くに)(そこ)(くに)(まで)()ちしかと
116(おも)ひし(こと)(ゆめ)となりぬる。
117(なん)となく(うら)(いさ)ましくなりにけり
118岩窟(いはや)(なか)にあるを(わす)れて。
119栲褥(たくぶすま)いやさや()きて三人(みたり)()
120()()くるをば()ちつつ(いね)む』
121デビス(ひめ)『いざさらば伊太彦(いたひこ)(つかさ)三千彦(みちひこ)
122(こころ)(さだ)めて(ねむり)()かむ』
123三千彦(みちひこ)村肝(むらきも)(こころ)にかかる(くも)もなし
124(はな)(つき)との(きみ)とありせば』
125伊太彦(いたひこ)(はな)(ひめ)伊太彦(いたひこ)(つかさ)三千彦(みちひこ)
126つきの姿(すがた)となりにけるかな』
127三千彦(みちひこ)伊太彦(いたひこ)やデビスの(ひめ)真心(まごころ)
128(かみ)(よみ)して(すく)(たま)はむ。
129何事(なにごと)(かみ)のまにまに(したが)ひて
130(あま)岩戸(いはと)()くを()たなむ』
131 かく(たがひ)三十一(みそひと)文字(もじ)()(かは)(なが)132(その)()他愛(たあい)もなく(ねむ)らひにけり。
133 地上(ちじやう)世界(せかい)(やうや)(あか)るくなつたと()えて134四辺(あたり)燐鉱(りんくわう)次第(しだい)々々(しだい)(うす)らぎ、135(あたら)しき(ひかり)何処(どこ)ともなく()して()た。136伊太彦(いたひこ)入口(いりぐち)()宿屋(やどや)番頭然(ばんとうぜん)として一人(ひとり)頬杖(ほほづえ)をついて(よこた)はつて()る。137そこへバサリと()ちて()一人(ひとり)(をとこ)がある。138よくよく()ればユゥンケルのヘールなりける。
139伊太(いた)『や、140()らつしやい』
141 ユゥンケルは(この)(こゑ)(おどろ)いて、
142ヘール『や、143あ、144貴方(あなた)何人(なにびと)(ござ)いますか、145何時(いつ)()此処(ここ)にお()しになつたのですか』
146伊太(いた)『つい近頃(ちかごろ)旅館(りよくわん)開業(かいげふ)(いた)しまして147まだ設備(せつび)充分(じうぶん)出来(でき)()りませぬが、148何卒(どうぞ)(あし)(あら)つて(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。149そして上等(じやうとう)一泊(いつぱく)()(ゑん)150(ただ)昼飯(ちうはん)()きに(いた)しましてで(ござ)います。151昼飯(ちうはん)ともに(しち)(ゑん)(ござ)います。152その(かは)茶代(ちやだい)廃止(はいし)広告(くわうこく)をして()きましたから比較(ひかく)(てき)(やす)いものです。153(しか)茶代(ちやだい)としては(いただ)きませぬが、154土産(みやげ)としてならば(ひやく)(ゑん)でも(せん)(ゑん)でも(すこ)しも辞退(じたい)(いた)しませぬ』
155ヘール『アハヽヽヽ、156(はら)さへヘール(やう)(こと)がなければ辛抱(しんばう)(いた)します。157何分(なにぶん)(この)(ごろ)貧乏神(びんばふがみ)見舞(みまは)れて()りますから、158あまり(たか)宿賃(やどちん)()せませぬ。159どうか二等(にとう)(ぐらゐ)(とこ)でお(ねがひ)(いた)します』
160伊太(いた)開業(かいげふ)匆々(さうさう)設備(せつび)出来(でき)()りませぬから、161チツとは辛抱(しんばう)して(いただ)かねばなりませぬ。162そして()つて(いただ)くものは(なに)もありませぬが、163(おに)(わらび)か、164捻餅(ひねりもち)か、165鼻抓(はなつまみ)団子(だんご)ならば無尽蔵(むじんざう)仕込(しこ)んであるから166(うで)のつづく(まで)()つて(もら)はうと(まま)(ござ)いますわ』
167ヘール『いや、168もう結構(けつこう)です。169()めてさへ(いただ)けばそれで(よろ)しい』
170伊太(いた)『それならお(のぞ)みに(まか)せませう。171(しか)宿賃(やどちん)前金(ぜんきん)(ござ)いますから172(その)(つも)りで(ねが)ひます。173茶代(ちやだい)()りませぬがチツと小便(せうべん)(くさ)(ござ)いますが、174大変(たいへん)(あたた)かくつて丁度(ちやうど)()(ごろ)(ござ)いますよ』
175ヘール『折角(せつかく)()めて(いただ)かうと(おも)ひましたが176小便茶(せうべんちや)()まされちや(たま)りませぬから、177此方(こつち)から小便(せうべん)(いた)します。178(おほ)きに有難(ありがた)う。179(また)(つぎ)宿屋(やどや)()厄介(やくかい)になります』
180伊太(いた)(この)岩窟(がんくつ)ホテルは何処(どこ)へおいでになつても181(みな)(この)伊太屋(いたや)屋敷(やしき)(ござ)います。182伊太屋(いたや)主人(しゆじん)承諾(しようだく)なくては、183どこの(はし)くれにも()(こと)出来(でき)ませぬ。184千日前(せんにちまへ)夜店(よみせ)でさへも地代(ぢだい)をとられるのですから、185そんな(こと)をして()つては商売(しやうばい)()()きませぬからな』
186ヘール『アツハヽヽヽ、187それなら極上等(ごくじやうとう)でお(ねが)(いた)しませう』
188伊太(いた)『いや毎度(まいど)()贔屓(ひいき)有難(ありがた)(ござ)います。189さア何卒(どうぞ)(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。190デビス(ひめ)()仲居(なかゐ)()り、191三千彦(みちひこ)といふ幇間(たいこもち)()りますから、192()退屈(たいくつ)なれば(なん)なりと(おほ)せつけ(くだ)さいませ。193それが岩窟(がんくつ)ホテルの特色(とくしよく)です。194ウツフヽヽヽ』
195ヘール『それなら()厄介(やくかい)になりませう』
196(おく)()()ばたきし(なが)(すす)()る。
197伊太(いた)『アツハヽヽヽ、198宿屋(やどや)ごつこも面白(おもしろ)いものだ。199(しか)(なが)一晩(ひとばん)()(ゑん)では、200どうも算盤(そろばん)()はぬやうだ。201(あさ)から(ばん)まで(たか)炭火(すみ)()いて炬燵(こたつ)(こしら)へてやらねばならず、202一室(ひとま)(ひと)つづつ火鉢(ひばち)には()()やさぬやうにせねばならず、203不心得(ふこころえ)のお(きやく)になると折角(せつかく)畳替(たたみが)へした(たたみ)煙草(たばこ)()(おと)して(こが)すなり、204蒲団(ふとん)(かた)いの、205(やわらか)いの、206(うす)いの、207(あつ)いの、208(おも)たいの、209(みづ)金気(かなけ)があるの、210なんのと叱言(こごと)(ばか)()かされて……一寸(ちよつと)()(ゑん)()ふと、2101(たか)(やう)だが211懐勘定(ふところかんぢやう)して()ると(あんま)り、212ぼろいものぢやないわい。213アタ邪魔(じやま)(くさ)い、214(いち)()一里半(いちりはん)もある警察(けいさつ)宿帳(やどちやう)()つて()かねばならず、215(なつ)()はまだ()いが216(ふゆ)(ゆき)一丈(いちぢやう)(つも)つた(あひだ)217何程(いくら)(もら)つてもやりきれないわ。218開業(かいげふ)匆々(さうさう)一人(ひとり)のお(きやく)はあつたが219(これ)では如何(どう)(つま)らない。220(さん)(にん)家内(かない)一人(ひとり)(ぐらゐ)(きやく)()めたつて、221そのかすりで如何(どう)して世帯(しよたい)()てるものか。222電燈料(でんとうれう)(はら)はねばならず、223戸数割(こすうわり)相当(さうたう)()けられるなり、224おまけに家賃(やちん)地代(ぢだい)225町内(ちやうない)交際(つきあい)226よう物入(ものい)りのする(こと)だ。227(たれ)大金持(おほがねもち)のお(きやく)さまが(とま)つて228(かね)十千万(とちまん)(りやう)雪隠(せつちん)(なか)(おと)しておいて()れると()いけれどな。229何程(なにほど)山吹色(やまぶきいろ)だと()つても、230雪隠(せつちん)()いとる(やつ)では(くそ)(やく)にも()たず、231あゝ仕方(しかた)()いな、232せめて今晩(こんばん)(きやく)(じふ)(にん)(ぐらゐ)()めたいものだな』
233 ()一人(ひとり)(きよう)がつてゐる(ところ)234(うへ)(はう)からズルズルズル ドスンとさくなだりに()()むで()一人(ひとり)大男(おほをとこ)がある。
235伊太(いた)『もしもし、236貴方(あなた)はテルモン(まゐり)(ござ)いますか。237これから(さき)一寸(ちよつと)宿(やど)(ござ)いませぬから238拙者(せつしや)(たく)(とま)つて()つて(くだ)さいませ。239キヨの湖水(こすい)には海賊船(かいぞくせん)横行(わうかう)(いた)して()ります。240海上(かいじやう)(ぞく)()ぎとられるよりも241弊館(へいくわん)でお(とま)(くだ)さつて(はぎ)とられなさつた(はう)安全(あんぜん)(ござ)いませう』
242チルテル『お(まへ)はどこの(やつ)だ。243ここは(おれ)屋敷内(やしきない)岩窟(がんくつ)だが、244(たれ)(ことわ)つて、245こんな(ところ)()るのだ』
246伊太(いた)借地権(しやくちけん)(すで)登記済(とうきずみ)となり247(この)(いへ)賃貸借(ちんたいしやく)(はふ)によつて、248(いつ)(げつ)四十九(しじふく)(ゑん)始終(しじう)()えぬ)の家賃(やちん)(はら)つて()ます以上(いじやう)は、249矢張(やつぱ)伊太屋(いたや)財産(ざいさん)同様(どうやう)(ござ)います。250サア何卒(どうぞ)(とま)(くだ)さい。251千客(せんきやく)万来(ばんらい)開業(かいげふ)匆々(そうそう)目出度(めでた)(こと)だ。252()姓名(せいめい)(なん)(まを)します。253一寸(ちよつと)宿帳(やどちやう)(しる)して(いただ)きたいものです』
254チルテル『エー、255(まへ)(ひと)馬鹿(ばか)にするのか。256(ただし)(はう)けて()るのか。257ここはホテルでも(なん)でもない、258キヨの関所(せきしよ)庭前(にはさき)陥穽(おとしあな)だ。259つまり(おれ)領分内(りやうぶんない)だ。260グヅグヅ(まを)すと承知(しようち)せぬぞ』
261伊太(いた)成程(なるほど)262貴方(あなた)大家(おほや)(さま)(ござ)いましたか。263これはこれは失礼(しつれい)(いた)しました。264(しか)当家(たうけ)(とま)つて(もら)へば265矢張(やつぱ)宿賃(やどちん)(もら)はねばなりませぬ。266阿呆(あはう)(くに)267野留間(ぬるま)(ぐん)頓馬村(とんまむら)大字(おほあざ)腰抜(こしぬけ)小字(こあざ)失恋(しつれん)268(だい)苦百(くひやく)苦集(くじふ)()番地(ばんち)始終(しじう)()269(きつね)(だま)されゑ(もん)270雅名(がめい)落胆(らくたん)()いて()きました。271マア(これ)形式(けいしき)さへ(とほ)ればいいのですからな』
272チルテル『エー、273合点(がてん)のゆかぬ(こと)だわい。274初稚姫(はつわかひめ)のナイス、275テクの(やつ)()()いて、276今頃(いまごろ)にや(よろこ)んで其処辺(そこら)をブラついて()やがるだらう。277此処(ここ)()()んで()ると()いがな、278エー怪体(けつたい)(こと)だわい』
279伊太(いた)(なに)()もあれ、280(おく)賓客室(ひんきやくしつ)(ござ)います。281そこには下女(げぢよ)下男(げなん)()りますから世話(せわ)をさせませう。282初稚姫(はつわかひめ)よりもズツと(すぐ)れたナイスが開業(かいげふ)同時(どうじ)(かか)()むでありますから、283まアそんな(むつかし)(かほ)せずにお(とま)(くだ)さいませ』
284チルテル『(なに)()もあれ、285どんな(をんな)()るか、286(ひと)調(しら)べてやらう』
287()(なが)らスタスタと(おく)()(すす)()る。288ヘールは(おく)()(すす)むだ。289自分(じぶん)伊太彦(いたひこ)揶揄(からか)はれ、290何時(いつ)()にかお(きやく)さま気取(きど)りになり、291横柄(わうへい)(つら)をして(おく)()(とほ)つて()れば、292三千彦(みちひこ)293デビス(ひめ)二人(ふたり)一間(いつけん)(ほど)距離(きより)(へだ)ててキチンと(すわ)つて()る。
294ヘール『おい、295(きやく)さまだ お(きやく)さまだ。296こら、297少女(おちよぼ)298(はや)(ちや)()さないか。299料理人(いたば)昼日中(ひるひなか)(なに)密談(みつだん)をやつてるのだ。300そんな(こと)商売(しやうばい)繁昌(はんぜう)するか。301もう、302これつきりで(とま)つてやらぬぞ』
303三千彦(みちひこ)『お、304(まへ)さま赤裸体(まつぱだか)何処(どこ)から()たのですか』
305ヘール『何処(どこ)からも(なに)もあつたものかい。306其処(そこ)から()たのだ。307(いま)此処(ここ)番頭(ばんとう)掛合(かけあ)つて最上等(さいじやうとう)(とま)(こと)にしたのだ。308さア(はや)(ちや)()むだり()むだり』
309三千彦(みちひこ)(いぶ)かしや(しこ)岩窟(いはや)(たちま)ちに
310(うづ)のホテルとなりにけらしな』
311デビス(ひめ)何国(なにくに)(たび)のお(かた)()らねども
312宿(やど)にはあらじ宿(やど)(つま)ぞや』
313ヘール『(われ)こそはリュウチナントのヘールぞや
314(あは)れみ(たま)(うづ)のよき(ひと)
315初稚(はつわか)(ひめ)(あらそ)角力(すまふ)とり
316(まけ)岩窟(いはや)()()みし(われ)
317デビス(ひめ)(なれ)(また)これの岩窟(いはや)()ちしかと
318(おも)へばいとど(あは)れなりけり。
319(この)(うへ)最早(もはや)ナイスに(あは)れとも
320あはれないとも(わか)らざりけり』
321 かかる(ところ)(また)真裸体(まつぱだか)のチルテルが322(つら)(ふく)らし(なが)らノソリノソリとやつて()た。
323ヘール『アツハヽヽヽ、324おい、325チルテルさま、326(きみ)矢張(やつぱ)(こひ)敗者(はいしや)だな。327や、328賛成(さんせい)々々(さんせい)329(これ)(やうや)溜飲(りういん)(さが)つた。330ウツフヽヽヽ』
331大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki