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第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
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第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
01 感謝組
〔1657〕
02 古峽の山
〔1658〕
03 岩侠
〔1659〕
04 不聞銃
〔1660〕
05 独許貧
〔1661〕
06 噴火口
〔1662〕
07 反鱗
〔1663〕
第2篇 地異転変
08 異心泥信
〔1664〕
09 劇流
〔1665〕
10 赤酒の声
〔1666〕
11 大笑裡
〔1667〕
12 天恵
〔1668〕
第3篇 虎熊惨状
13 隔世談
〔1669〕
14 山川動乱
〔1670〕
15 饅頭塚
〔1671〕
16 泥足坊
〔1672〕
17 山颪
〔1673〕
第4篇 神仙魔境
18 白骨堂
〔1674〕
19 谿の途
〔1675〕
20 熊鷹
〔1676〕
21 仙聖郷
〔1677〕
22 均霑
〔1678〕
23 義侠
〔1679〕
第5篇 讃歌応山
24 危母玉
〔1680〕
25 道歌
〔1681〕
26 七福神
〔1682〕
余白歌
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> 第1篇 盗風賊雨 > 第6章 噴火口
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第六章
噴火口
(
ふんくわこう
)
〔一六六二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第1篇 盗風賊雨
よみ(新仮名遣い):
とうふうぞくう
章:
第6章 噴火口
よみ(新仮名遣い):
ふんかこう
通し章番号:
1662
口述日:
1923(大正12)年07月15日(旧06月2日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6506
愛善世界社版:
73頁
八幡書店版:
第11輯 637頁
修補版:
校定版:
77頁
普及版:
37頁
初版:
ページ備考:
001
エムは
伊太彦
(
いたひこ
)
の
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち、
002
慄
(
ふる
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
003
道々
(
みちみち
)
謡
(
うた
)
ひ
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
004
エム『バラモン
教
(
けう
)
の
軍人
(
いくさびと
)
005
伍長
(
ごちやう
)
となつた
此
(
この
)
エムは
006
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
が
007
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
砦
(
とりで
)
にて
008
軍
(
いくさ
)
の
解散
(
かいさん
)
した
故
(
ゆゑ
)
に
009
是非
(
ぜひ
)
なく
茲
(
ここ
)
に
盗人
(
ぬすびと
)
と
010
なり
下
(
さが
)
りたる
身
(
み
)
の
因果
(
いんぐわ
)
011
ウントコドツコイ ハアハアハア
012
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
は
比丘
(
びく
)
となり
013
お
金
(
かね
)
を
沢山
(
どつさり
)
懐
(
ふところ
)
に
014
入
(
い
)
れてどこかに
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
015
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つた
雑兵
(
ざふひやう
)
は
016
ウントコドツコイきつい
阪
(
さか
)
017
目腐
(
めくさ
)
れ
金
(
がね
)
を
頂
(
いただ
)
いて
018
月
(
つき
)
の
都
(
みやこ
)
に
帰
(
かへ
)
ろにも
019
旅費
(
りよひ
)
にも
足
(
た
)
らぬあはれさに
020
やけをおこして
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
み
021
今
(
いま
)
は
詮
(
せん
)
なき
真裸体
(
まつぱだか
)
022
セールの
大将
(
たいしやう
)
に
従
(
したが
)
ふて
023
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
024
人
(
ひと
)
のいやがる
盗人
(
ぬすびと
)
の
025
乾児
(
こぶん
)
のはしに
加
(
くは
)
へられ
026
僅
(
わづか
)
に
命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
ちつつ
027
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いてもビツクビク
028
山
(
やま
)
が
鳴
(
な
)
つても
胸
(
むね
)
躍
(
をど
)
り
029
ドキドキドキと
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
030
恐
(
おそ
)
れ
戦
(
をのの
)
き
暮
(
くら
)
しつつ
031
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
迄
(
まで
)
も
暮
(
く
)
れて
来
(
き
)
た
032
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
033
折角
(
せつかく
)
人
(
ひと
)
と
生
(
うま
)
れ
来
(
き
)
て
034
人
(
ひと
)
の
懐
(
ふところ
)
あてにする
035
悪
(
わる
)
い
泥棒
(
どろばう
)
となり
下
(
さが
)
り
036
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
忍
(
しの
)
ぶ
苦
(
くる
)
しさよ
037
国
(
くに
)
にまします
両親
(
りやうしん
)
や
038
兄
(
あに
)
や
妹
(
いもと
)
が
聞
(
き
)
いたなら
039
嘸
(
さぞ
)
や
驚
(
おどろ
)
く
事
(
こと
)
だらう
040
胸
(
むね
)
に
勲章
(
くんしやう
)
をブラさげて
041
天晴
(
あつぱれ
)
手柄
(
てがら
)
を
現
(
あら
)
はしつ
042
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るかと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
043
家族
(
かぞく
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るだらうに
044
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
情
(
なさけ
)
ない
045
つまらぬ
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
た
046
それでも
食
(
く
)
はんが
悲
(
かな
)
しさに
047
泥棒
(
どろばう
)
の
仲間
(
なかま
)
に
加
(
くは
)
へられ
048
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
とは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
049
長
(
なが
)
い
太刀
(
だんびら
)
振
(
ふ
)
りまはし
050
人
(
ひと
)
を
脅
(
おど
)
して
金
(
かね
)
を
取
(
と
)
る
051
こんな
商売
(
しやうばい
)
をいつ
迄
(
まで
)
も
052
続
(
つづ
)
けて
居
(
を
)
つた
事
(
こと
)
ならば
053
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
054
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
055
忽
(
たちま
)
ち
冥罰
(
めいばつ
)
当
(
あた
)
るだらう
056
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
057
善
(
ぜん
)
と
真
(
しん
)
との
真道
(
まさみち
)
に
058
帰
(
かへ
)
り
度
(
た
)
いとは
思
(
おも
)
へども
059
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
きや
060
善
(
ぜん
)
をせうにも
道
(
みち
)
が
無
(
な
)
い
061
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずして
悪党
(
あくたう
)
の
062
仲間
(
なかま
)
で
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
暮
(
く
)
れて
来
(
き
)
た
063
ツクヅク
此
(
この
)
世
(
よ
)
が
嫌
(
いや
)
になり
064
罪
(
つみ
)
亡
(
ほろ
)
ぼしに
虎熊
(
とらくま
)
の
065
噴火口
(
ふんくわこう
)
にと
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げて
066
亡
(
ほろ
)
びて
了
(
しまは
)
ふと
思
(
おも
)
ふたが
067
何
(
なん
)
だか
命
(
いのち
)
が
惜
(
を
)
しくなり
068
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
にさそはれて
069
死
(
しに
)
さへならぬ
苦
(
くる
)
しさよ
070
タールの
奴
(
やつ
)
と
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
071
此
(
この
)
山口
(
やまぐち
)
に
現
(
あら
)
はれて
072
往来
(
ゆきき
)
の
人
(
ひと
)
を
掠
(
かす
)
めむと
073
話
(
はなし
)
にふける
折
(
をり
)
もあれ
074
四辺
(
あたり
)
の
木魂
(
こだま
)
をひびかせて
075
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆるホラの
声
(
こゑ
)
076
魂
(
たましひ
)
ふるひ
神
(
しん
)
は
飛
(
と
)
び
077
身体
(
しんたい
)
忽
(
たちま
)
ち
戦慄
(
せんりつ
)
し
078
密樹
(
みつじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め
079
因果
(
いんぐわ
)
を
定
(
さだ
)
むる
折
(
をり
)
もあれ
080
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
は
081
比丘
(
びく
)
の
姿
(
すがた
)
と
現
(
あら
)
はれて
082
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
弟子
(
でし
)
に
打
(
う
)
ち
向
(
むか
)
ひ
083
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
の
理
(
ことわり
)
を
084
説
(
と
)
かせたまふぞ
有難
(
ありがた
)
き
085
ここにいよいよ
村肝
(
むらきも
)
の
086
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
改
(
あらた
)
めて
087
悪
(
あく
)
をフツツリ
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り
088
これから
難行
(
なんぎやう
)
苦行
(
くぎやう
)
して
089
一
(
ひと
)
つの
仕事
(
しごと
)
に
喰
(
くら
)
ひつき
090
身
(
み
)
を
粉
(
こ
)
に
砕
(
くだ
)
き
父母
(
ちちはは
)
に
091
安心
(
あんしん
)
させむものをぞと
092
茲
(
ここ
)
迄
(
まで
)
帰
(
かへ
)
り
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
093
泥棒
(
どろばう
)
仲間
(
なかま
)
のタツ
公
(
こう
)
が
094
路傍
(
ろばう
)
の
石
(
いし
)
に
腰
(
こし
)
かけて
095
やすんで
居
(
を
)
るのに
出会
(
でつくは
)
し
096
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
が
097
教
(
をしへ
)
の
言葉
(
ことば
)
の
受売
(
うけうり
)
を
098
初
(
はじ
)
めて
居
(
を
)
つた
所
(
とこ
)
だつた
099
そこへ
伊太彦
(
いたひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
100
宣伝歌
(
せんでんか
)
をば
謡
(
うた
)
ひつつ
101
現
(
あら
)
はれまして
両人
(
りやうにん
)
に
102
眼
(
まなこ
)
をいからし
詰問
(
きつもん
)
し
103
たしなめたまふ
権幕
(
けんまく
)
に
104
恐
(
おそ
)
ろし
奴
(
やつ
)
の
集
(
あつ
)
まつた
105
泥棒
(
どろばう
)
の
岩窟
(
いはや
)
へ
案内
(
あんない
)
と
106
出
(
で
)
かけて
往
(
ゆ
)
くのは
情
(
なさけ
)
ない
107
これもやつぱり
旧悪
(
きうあく
)
の
108
報
(
むく
)
いが
来
(
き
)
たのか
悲
(
かな
)
しさよ
109
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
110
憐
(
あは
)
れみ
賜
(
たま
)
ひエム、タツの
111
二人
(
ふたり
)
の
氏子
(
うぢこ
)
が
恙
(
つつが
)
なく
112
岩窟
(
いはや
)
を
切
(
き
)
りぬけ
本国
(
ほんごく
)
へ
113
立
(
た
)
ちかへるべく
守
(
まも
)
りませ
114
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
115
アイタタ タツタ
躓
(
つまづ
)
いた
116
肝心要
(
かんじんかなめ
)
の
親指
(
おやゆび
)
の
117
爪
(
つめ
)
がおきたか
血
(
ち
)
が
滲
(
にじ
)
む
118
本当
(
ほんたう
)
に
痛
(
いた
)
い
苦
(
くる
)
しいわ
119
これこれもうし
宣伝使
(
せんでんし
)
120
私
(
わたし
)
の
指
(
ゆび
)
も
伊太
彦
(
いたひこ
)
の
121
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
よ
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
は
122
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
の
表現
(
へうげん
)
ぞ
123
あはれみたまひて
逸早
(
いちはや
)
く
124
此
(
この
)
案内
(
あんない
)
を
許
(
ゆる
)
しませ
125
何
(
なん
)
だか
先
(
さき
)
が
恐
(
おそ
)
ろしい
126
足
(
あし
)
はブルブル
慄
(
ふる
)
ひだし
127
腰
(
こし
)
はワナワナ
戦
(
をのの
)
いて
128
もはや
一歩
(
いつぽ
)
も
行
(
ゆ
)
かれない
129
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
130
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
131
伊太
(
いた
)
『アハヽヽヽ、
132
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
だなア。
133
ようそんな
事
(
こと
)
で
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
泥棒
(
どろばう
)
が
出来
(
でき
)
たものだなア、
134
まア
一服
(
いつぷく
)
せい』
135
エム『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
136
そんなら
此処
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ、
137
一服
(
いつぷく
)
致
(
いた
)
しませう』
138
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
阪道
(
さかみち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めて
居
(
を
)
る。
139
伊太彦
(
いたひこ
)
は
心
(
こころ
)
は
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
く
急
(
いそ
)
げども、
140
何分
(
なにぶん
)
道
(
みち
)
不案内
(
ふあんない
)
の
事
(
こと
)
とて、
141
此
(
この
)
両人
(
りやうにん
)
に
案内
(
あんない
)
させるより
良法
(
りやうはふ
)
はないと
感
(
かん
)
じ、
142
二人
(
ふたり
)
を
労
(
いた
)
はつて、
143
暫
(
しばら
)
く
休息
(
きうそく
)
を
許
(
ゆる
)
したのである。
144
伊太彦
(
いたひこ
)
『
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
頂
(
いただき
)
は
145
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
つて
炎
(
ほのほ
)
吐
(
は
)
きつつ。
146
火
(
ひ
)
の
神
(
かみ
)
の
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
荒
(
すさ
)
ぶなる
147
此
(
この
)
高山
(
たかやま
)
ぞ
曲津見
(
まがつみ
)
の
宿
(
やど
)
。
148
盗人
(
ぬすびと
)
の
頭
(
かしら
)
の
巣
(
すく
)
ふ
岩窟
(
いはやど
)
に
149
二人
(
ふたり
)
の
姫
(
ひめ
)
は
世
(
よ
)
を
歎
(
かこ
)
つらむ。
150
夜
(
よる
)
光
(
ひか
)
る
玉
(
たま
)
の
力
(
ちから
)
を
現
(
あら
)
はして
151
曲
(
まが
)
の
頭
(
かしら
)
を
照
(
て
)
らさむとぞ
思
(
おも
)
ふ。
152
日
(
ひ
)
は
西
(
にし
)
に
早
(
はや
)
傾
(
かたむ
)
きて
山
(
やま
)
高
(
たか
)
し
153
急
(
いそ
)
ぎて
行
(
ゆ
)
けよ
二人
(
ふたり
)
の
案内者
(
あないしや
)
』
154
エム『
心
(
こころ
)
のみ
千々
(
ちぢ
)
に
焦
(
あせ
)
れど
如何
(
いか
)
にせむ
155
足腰
(
あしこし
)
慄
(
ふる
)
ひ
儘
(
まま
)
ならぬ
身
(
み
)
は』
156
タツ『
竜神
(
りうじん
)
の
玉
(
たま
)
をいだきし
君
(
きみ
)
ならば
157
恐
(
おそ
)
れは
非
(
あら
)
じ
独
(
ひと
)
り
登
(
のぼ
)
りませ。
158
夜
(
よる
)
光
(
ひか
)
る
玉
(
たま
)
を
持
(
も
)
ちます
君
(
きみ
)
ならば
159
案内
(
あない
)
の
人
(
ひと
)
も
如何
(
いか
)
で
要
(
い
)
るべき』
160
伊太彦
(
いたひこ
)
『
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
言葉
(
ことば
)
を
構
(
かま
)
へ
危
(
あやふ
)
きを
161
のがれむとする
卑怯者
(
ひけふもの
)
ぞや。
162
疾
(
と
)
く
立
(
た
)
てよ
心
(
こころ
)
の
持方
(
もちかた
)
一
(
ひと
)
つにて
163
易
(
やす
)
く
登
(
のぼ
)
れむ
此
(
この
)
阪道
(
さかみち
)
も』
164
エム『
是非
(
ぜひ
)
もなし
司
(
つかさ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひて
165
命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
案内
(
あんない
)
やせむ』
166
タツ『のがるべき
道
(
みち
)
にあらねば
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
167
エムのしりへに
従
(
したが
)
ひゆかむ』
168
かく
謡
(
うた
)
ひながら、
169
二人
(
ふたり
)
は
屠所
(
としよ
)
に
引
(
ひ
)
かるる
羊
(
ひつじ
)
の
如
(
ごと
)
く、
170
ハアハアと
息
(
いき
)
も
苦
(
くる
)
しげに
登
(
のぼ
)
りゆく。
171
(
大正一二・七・一五
旧六・二
於祥雲閣
加藤明子
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