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第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
01 感謝組
〔1657〕
02 古峽の山
〔1658〕
03 岩侠
〔1659〕
04 不聞銃
〔1660〕
05 独許貧
〔1661〕
06 噴火口
〔1662〕
07 反鱗
〔1663〕
第2篇 地異転変
08 異心泥信
〔1664〕
09 劇流
〔1665〕
10 赤酒の声
〔1666〕
11 大笑裡
〔1667〕
12 天恵
〔1668〕
第3篇 虎熊惨状
13 隔世談
〔1669〕
14 山川動乱
〔1670〕
15 饅頭塚
〔1671〕
16 泥足坊
〔1672〕
17 山颪
〔1673〕
第4篇 神仙魔境
18 白骨堂
〔1674〕
19 谿の途
〔1675〕
20 熊鷹
〔1676〕
21 仙聖郷
〔1677〕
22 均霑
〔1678〕
23 義侠
〔1679〕
第5篇 讃歌応山
24 危母玉
〔1680〕
25 道歌
〔1681〕
26 七福神
〔1682〕
余白歌
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> 第5篇 讃歌応山 > 第25章 道歌
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第二五章
道歌
(
だうか
)
〔一六八一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第5篇 讃歌応山
よみ(新仮名遣い):
さんかおうさん
章:
第25章 道歌
よみ(新仮名遣い):
どうか
通し章番号:
1681
口述日:
1923(大正12)年07月18日(旧06月5日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6525
愛善世界社版:
284頁
八幡書店版:
第11輯 712頁
修補版:
校定版:
297頁
普及版:
129頁
初版:
ページ備考:
001
玉国別
(
たまくにわけ
)
はサンカオ
山
(
ざん
)
の
祠
(
ほこら
)
を
立
(
たち
)
出
(
い
)
で、
002
ヨルダン
川
(
がは
)
の
北岸
(
ほくがん
)
を
下
(
くだ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
003
元気
(
げんき
)
恢復
(
くわいふく
)
し、
004
聖地
(
せいち
)
の
近
(
ちか
)
づいたに
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
005
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ
初
(
はじ
)
めた。
006
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
にヨルダンの
007
川
(
かは
)
の
辺
(
ほとり
)
に
北
(
きた
)
の
道
(
みち
)
008
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこそ
楽
(
たの
)
しけれ
009
遥
(
はるか
)
に
見
(
み
)
ゆるは
橄欖
(
かんらん
)
の
010
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
か
聖場
(
せいぢやう
)
か
011
ヨルダン
川
(
がは
)
の
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
く
012
流
(
なが
)
れの
音
(
おと
)
は
淙々
(
そうそう
)
と
013
天地
(
てんち
)
に
響
(
ひび
)
く
心地
(
ここち
)
なり
014
霊山
(
れいざん
)
会場
(
ゑぢやう
)
の
蓮華台
(
れんげだい
)
015
蓮
(
はちす
)
の
山
(
やま
)
にあれませる
016
木花姫
(
このはなひめ
)
の
御
(
おん
)
守
(
まも
)
り
017
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
018
珍
(
うづ
)
の
司
(
つかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
019
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
も
真純彦
(
ますみひこ
)
020
その
懐
(
ふところ
)
に
輝
(
かがや
)
ける
021
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
今日
(
けふ
)
の
旅
(
たび
)
022
何
(
なん
)
とはなしに
勇
(
いさ
)
ましく
023
天
(
てん
)
にも
上
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
して
024
足
(
あし
)
も
次第
(
しだい
)
にかるがると
025
流
(
なが
)
れに
沿
(
そ
)
ふて
進
(
すす
)
むなり
026
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
027
吾
(
わが
)
行先
(
ゆくさき
)
はゲッセマネ
028
月
(
つき
)
の
輝
(
かがや
)
く
花苑
(
はなぞの
)
に
029
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
艶
(
えん
)
競
(
きそ
)
ひ
030
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
吾々
(
われわれ
)
を
031
媚
(
こび
)
を
呈
(
てい
)
して
待
(
ま
)
つならむ
032
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
、
伊太彦
(
いたひこ
)
や
033
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
034
デビスの
姫
(
ひめ
)
やブラヷーダ
035
その
他
(
た
)
の
厳
(
いづ
)
の
御使
(
みつかひ
)
は
036
もはや
聖地
(
せいち
)
に
着
(
つ
)
きけるか
037
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
ぎつつ
038
只
(
ただ
)
一向
(
ひたむき
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
て
039
もしや
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
に
遅
(
おく
)
れなば
040
これ
末代
(
まつだい
)
の
恥辱
(
ちじよく
)
なり
041
とは
云
(
い
)
ふものの
神界
(
しんかい
)
の
042
仕組
(
しぐみ
)
ばかりは
吾々
(
われわれ
)
の
043
曇
(
くも
)
りし
身魂
(
みたま
)
は
分
(
わか
)
らない
044
ヨルダン
川
(
がは
)
の
川
(
かは
)
の
面
(
おも
)
045
吹
(
ふ
)
く
夏風
(
なつかぜ
)
は
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
を
046
涼
(
すず
)
しく
清
(
きよ
)
く
撫
(
な
)
でて
行
(
ゆ
)
く
047
黄金
(
こがね
)
の
峰
(
みね
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
048
橄欖
(
かんらん
)
香
(
にほ
)
ふ
聖山
(
せいざん
)
に
049
弥
(
いや
)
永久
(
とこしへ
)
に
鎮
(
しづ
)
まれる
050
野立
(
のだち
)
の
彦
(
ひこ
)
の
御
(
おん
)
化身
(
けしん
)
051
埴安彦
(
はにやすひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
052
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
の
恙
(
つつが
)
なく
053
到着
(
たうちやく
)
せしと
聞
(
き
)
きまさば
054
嘸
(
さぞ
)
や
喜
(
よろこ
)
び
給
(
たま
)
ふらむ
055
八大
(
はちだい
)
竜王
(
りうわう
)
の
所持
(
しよぢ
)
したる
056
三
(
み
)
つの
珠
(
たま
)
まで
受取
(
うけと
)
りて
057
いよいよ
神業
(
しんげふ
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
058
貴
(
うず
)
の
御玉
(
みたま
)
を
献
(
たてまつ
)
る
059
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
こそ
楽
(
たの
)
しけれ
060
案
(
あん
)
ずる
勿
(
なか
)
れ
真純彦
(
ますみひこ
)
061
もはや
聖地
(
せいち
)
も
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た
062
日出別
(
ひのでのわけ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
063
数多
(
あまた
)
の
伴人
(
ともびと
)
随
(
したが
)
へて
064
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
の
到
(
いた
)
るをば
065
喜
(
よろこ
)
び
迎
(
むか
)
へ
門外
(
もんぐわい
)
に
066
現
(
あら
)
はれ
待
(
ま
)
たせ
給
(
たま
)
ふらむ
067
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
勇
(
いさ
)
ましや
068
これも
全
(
まつた
)
く
瑞御魂
(
みづみたま
)
069
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
070
珍
(
うづ
)
の
使
(
つかひ
)
とあれませる
071
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御
(
お
)
引
(
ひき
)
立
(
たて
)
072
慎
(
つつし
)
み
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
073
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
は
近
(
ちか
)
づきぬ
074
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
め
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
て
075
貴
(
うず
)
の
聖地
(
せいち
)
に
参上
(
まゐのぼ
)
り
076
珍
(
うづ
)
の
力
(
ちから
)
をみてづから
077
埴安彦
(
はにやすひこ
)
に
授
(
さづ
)
けられ
078
再
(
ふたた
)
び
陣容
(
ぢんよう
)
立直
(
たてなほ
)
し
079
シオンの
山
(
やま
)
に
忍
(
しの
)
びたる
080
ナーガラシヤーを
言向
(
ことむ
)
けて
081
奇
(
くす
)
しき
功績
(
いさを
)
を
永久
(
とこしへ
)
に
082
立
(
た
)
てねばおかぬ
吾
(
わが
)
望
(
のぞ
)
み
083
遂
(
と
)
げさせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
084
聖地
(
せいち
)
にゐます
皇神
(
すめかみ
)
の
085
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
086
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
087
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
088
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
089
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
090
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
言霊
(
ことたま
)
の
091
御稜威
(
みいづ
)
によりて
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
092
漸
(
やうや
)
く
都
(
みやこ
)
に
近
(
ちか
)
づきぬ
093
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
皇神
(
すめかみ
)
の
094
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
御
(
おん
)
仕組
(
しぐみ
)
095
感謝
(
かんしや
)
にあまり
自
(
おのづか
)
ら
096
涙
(
なみだ
)
は
腮辺
(
しへん
)
に
漂
(
ただよ
)
ひぬ
097
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
098
感喜
(
かんき
)
あまりて
言葉
(
ことば
)
なし
099
これにて
沈黙
(
ちんもく
)
仕
(
つかまつ
)
る』
100
と
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
101
後
(
あと
)
振
(
ふり
)
向
(
む
)
いて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
れば、
102
姫
(
ひめ
)
の
容貌
(
ようぼう
)
は
崇高
(
けだかさ
)
の
上
(
うへ
)
にも
崇高
(
けだかさ
)
を
増
(
ま
)
し、
103
形容
(
けいよう
)
し
難
(
がた
)
き
喜
(
よろこ
)
びと
威厳
(
ゐげん
)
とをたたへてゐる。
104
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず、
105
ハツと
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ
道
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
身
(
み
)
を
転
(
てん
)
じ、
106
揉手
(
もみで
)
をしながら、
107
玉国
(
たまくに
)
『いや、
108
誠
(
まこと
)
に
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しました。
109
サアどうかお
先
(
さき
)
へおいで
下
(
くだ
)
さいませ』
110
初稚
(
はつわか
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
順序
(
じゆんじよ
)
で
厶
(
ござ
)
いますからな、
111
ホヽヽヽ』
112
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
113
スマートは
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
後
(
うしろ
)
より
尾
(
を
)
を
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
114
真純
(
ますみ
)
『もし
先生
(
せんせい
)
、
115
貴方
(
あなた
)
、
116
又
(
また
)
失敗
(
しつぱい
)
致
(
いた
)
しましたね。
117
今
(
いま
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
が
只
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
、
118
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
順序
(
じゆんじよ
)
だと
仰有
(
おつしや
)
つたでせう。
119
貴方
(
あなた
)
が
偉
(
えら
)
さうに
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つておいでになるものだから、
120
叱
(
しか
)
られたでせう。
121
サンカオ
山
(
ざん
)
の
麓
(
ふもと
)
でも、
122
「
神
(
かみ
)
は
順序
(
じゆんじよ
)
だ。
123
順序
(
じゆんじよ
)
を
破
(
やぶ
)
れば
秩序
(
ちつじよ
)
が
乱
(
みだ
)
れる」と
仰有
(
おつしや
)
つたのを
忘
(
わす
)
れたのですか』
124
玉国
(
たまくに
)
『いや、
125
そんな
考
(
かんが
)
へではない。
126
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げる
積
(
つも
)
りで
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つたのだ。
127
畢竟
(
つまり
)
私
(
わし
)
の
考
(
かんが
)
へは
先伴
(
さきとも
)
をお
仕
(
つか
)
へする
考
(
かんが
)
へだつたよ』
128
真純
(
ますみ
)
『
貴方
(
あなた
)
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
遊
(
あそ
)
ばす
丈
(
だ
)
けの
資格
(
しかく
)
があるのですか。
129
エルサレムの
勝手
(
かつて
)
は
分
(
わか
)
つてるのですか。
130
勝手
(
かつて
)
分
(
わか
)
らずに
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
も
出来
(
でき
)
ますまい。
131
彼方
(
あちら
)
の
方
(
はう
)
が
大抵
(
たいてい
)
エルサレムだらう
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
では、
132
案内者
(
あんないしや
)
とは
云
(
い
)
へませぬからな。
133
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
だつて
充分
(
じゆうぶん
)
究
(
きは
)
めて
置
(
お
)
かねば
宣伝使
(
せんでんし
)
となれないと
同
(
おな
)
じに、
134
道案内
(
みちあんない
)
だつてさうではありませぬか』
135
玉国
(
たまくに
)
『さう
云
(
い
)
へばさうだが、
136
肝腎
(
かんじん
)
の
聖地
(
せいち
)
に
近付
(
ちかづ
)
いたのだから、
137
慎
(
つつし
)
んで
苦情
(
くじやう
)
がましい
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
はないで
欲
(
ほ
)
しいな。
138
俺
(
わし
)
だつて
気
(
き
)
がもめるのと
嬉
(
うれ
)
しいのとで、
139
チツと
許
(
ばか
)
りは
脱線
(
だつせん
)
するかも
知
(
し
)
れないからな』
140
真純
(
ますみ
)
『
聖地
(
せいち
)
に
近
(
ちか
)
づいたから
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げるのです。
141
嬉
(
うれ
)
しいから
脱線
(
だつせん
)
するやうな
事
(
こと
)
でどうなりますか。
142
道中
(
だうちう
)
は
私
(
わたし
)
と
二人
(
ふたり
)
だから
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
ヘマやつても
恥
(
はぢ
)
にもなりませぬが、
143
エルサレムに
着
(
つ
)
けば
錚々
(
さうさう
)
たる
神司
(
かむづかさ
)
がおありですから、
144
第一
(
だいいち
)
、
145
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
に
関
(
くわん
)
しますよ。
146
ここは
厳御魂
(
いづのみたま
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
鎮座所
(
ちんざしよ
)
ですから、
147
産土山
(
うぶすなやま
)
の
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
とは、
148
余程
(
よほど
)
窮屈
(
きうくつ
)
ですよ。
149
厳
(
いづ
)
の
御魂
(
みたま
)
様
(
さま
)
から、
150
「
何
(
なん
)
と
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
も
先
(
さき
)
の
見
(
み
)
えぬ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だな。
151
あのやうな
宣伝使
(
せんでんし
)
をようも
遣
(
つか
)
はしたな」と
思召
(
おぼしめ
)
したら、
152
貴方
(
あなた
)
許
(
ばか
)
りの
恥
(
はぢ
)
ぢやありませぬ。
153
つまり
主人
(
しゆじん
)
の
名誉
(
めいよ
)
を
傷
(
きず
)
つけるやうなものです。
154
ヤレ
聖地
(
せいち
)
へ
着
(
つ
)
いたから
嬉
(
うれ
)
しいと
思
(
おも
)
つちやなりませぬ。
155
益々
(
ますます
)
緊張
(
きんちやう
)
して、
156
心得
(
こころえ
)
た
上
(
うへ
)
にも
心得
(
こころえ
)
ねばならぬでせう』
157
玉国
(
たまくに
)
『あ、
158
お
前
(
まへ
)
ならこそ、
159
面
(
おもて
)
を
犯
(
をか
)
して、
160
ようそこ
迄
(
まで
)
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れた。
161
や、
162
有難
(
ありがた
)
い。
163
沢山
(
たくさん
)
の
弟子
(
でし
)
があつても、
164
私
(
わたし
)
の
肺腑
(
はいふ
)
を
衝
(
つ
)
くやうな
意見
(
いけん
)
をして
呉
(
く
)
れる
者
(
もの
)
は
無
(
な
)
い。
165
人間
(
にんげん
)
は
何
(
なに
)
が
不幸
(
ふかう
)
だと
云
(
い
)
つても、
166
真心
(
まごころ
)
で
忠告
(
ちうこく
)
して
呉
(
く
)
れるものがないほど
不幸
(
ふかう
)
はないからのう。
167
イヤ、
1671
気
(
き
)
がついた
事
(
こと
)
があれば、
168
何卒
(
どうぞ
)
、
169
私
(
わし
)
は
怒
(
おこ
)
らないから
注意
(
ちうい
)
して
貰
(
もら
)
ひたい』
170
真純
(
ますみ
)
『
貴方
(
あなた
)
に
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げたい
事
(
こと
)
は
山
(
やま
)
程
(
ほど
)
厶
(
ござ
)
いますが、
171
もはや
聖地
(
せいち
)
も
近
(
ちか
)
づきましたから
道々
(
みちみち
)
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げても、
172
どうせ
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げきれないと
思
(
おも
)
ひまして……
又
(
また
)
お
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
同道
(
どうだう
)
ですから、
173
あまりの
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
せば
先生
(
せんせい
)
の
御
(
ご
)
人格
(
じんかく
)
に
関
(
くわん
)
しますから、
174
貴方
(
あなた
)
ユツクリお
考
(
かんが
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ。
175
又
(
また
)
「
人
(
ひと
)
から
気
(
き
)
をつけられて
気
(
き
)
づく
位
(
くらゐ
)
ではいかぬ」と、
176
厳
(
いづ
)
の
霊
(
みたま
)
のお
筆先
(
ふでさき
)
にもありますからな。
177
然
(
しか
)
し
人
(
ひと
)
の
欠点
(
けつてん
)
はよく
分
(
わか
)
りますが、
178
自分
(
じぶん
)
の
顔
(
かほ
)
の
墨
(
すみ
)
は
分
(
わか
)
らぬもので
厶
(
ござ
)
います。
179
私
(
わたし
)
の
欠点
(
けつてん
)
も
沢山
(
たくさん
)
ありませう。
180
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
貴方
(
あなた
)
の
教
(
をしへ
)
を
受
(
う
)
けた
弟子
(
でし
)
ですから、
181
欠点
(
けつてん
)
だらけでせう、
182
いや
間違
(
まちがひ
)
だらけでせう。
183
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
下
(
くだ
)
さいませ』
184
玉国
(
たまくに
)
『
私
(
わたし
)
の
教育
(
けういく
)
を
受
(
う
)
けたから
欠点
(
けつてん
)
だらけ、
185
間違
(
まちが
)
ひだらけ、
186
とはどうも
仕方
(
しかた
)
がないな。
187
イヤさうだらう。
188
お
前
(
まへ
)
に
間違
(
まちがひ
)
だらけを
教
(
をし
)
へとつたら、
189
そこは
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
許
(
ゆる
)
して
貰
(
もら
)
ふのだな』
190
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
後
(
あと
)
振
(
ふり
)
返
(
かへ
)
り、
191
初稚
(
はつわか
)
『オホヽヽヽ、
192
大変
(
たいへん
)
にお
話
(
はなし
)
がはづんで
居
(
を
)
りますな。
193
これからは
最早
(
もはや
)
聖域内
(
せいゐきない
)
になりますから、
194
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
外
(
ほか
)
は
一切
(
いつさい
)
喋
(
しやべ
)
らないやうにして
下
(
くだ
)
さい。
195
此
(
この
)
玉
(
たま
)
さへ
納
(
をさ
)
まれば、
196
何程
(
いくら
)
なりとお
喋
(
しやべ
)
りなさつて
宜
(
よろ
)
しい』
197
玉国
(
たまくに
)
『はい、
198
畏
(
かしこ
)
まりました。
199
屹度
(
きつと
)
心得
(
こころえ
)
ます』
200
初稚
(
はつわか
)
『さうして、
201
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
とも
自分
(
じぶん
)
の
欠点
(
けつてん
)
をよく
考
(
かんが
)
へて、
202
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
にお
直
(
なほ
)
し
成
(
な
)
さいませや。
203
聖地
(
せいち
)
には
立派
(
りつぱ
)
な
神司
(
かむづかさ
)
許
(
ばか
)
り
居
(
を
)
られますから、
204
何卒
(
どうぞ
)
お
恥
(
はづか
)
しくない
様
(
やう
)
にお
願
(
ねがひ
)
しますよ。
205
貴方
(
あなた
)
は
今
(
いま
)
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
へ
近
(
ちか
)
づいたとお
謡
(
うた
)
ひなさいましたが、
206
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
と
御
(
ご
)
油断
(
ゆだん
)
なされば、
207
聖地
(
せいち
)
に
於
(
おい
)
て
敗者
(
はいしや
)
となり、
208
失敗
(
しつぱい
)
の
都
(
みやこ
)
となるかも
知
(
し
)
れませぬよ。
209
何事
(
なにごと
)
も
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
が
大切
(
たいせつ
)
です。
210
最
(
もつと
)
も
注意
(
ちうい
)
を
要
(
えう
)
する
所
(
ところ
)
です。
211
誰
(
たれ
)
でも
得意
(
とくい
)
になると
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
で
転覆
(
てんぷく
)
するものですからな』
212
玉国
(
たまくに
)
『あ、
213
何
(
なん
)
と
窮屈
(
きうくつ
)
な
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますな。
214
私
(
わたし
)
は
只
(
ただ
)
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
難行
(
なんぎやう
)
苦行
(
くぎやう
)
して
漸
(
やうや
)
く
聖地
(
せいち
)
の
空
(
そら
)
を
見
(
み
)
たのですから、
215
やれやれユツクリ
一服
(
いつぷく
)
をさして
貰
(
もら
)
つて
嬉
(
うれ
)
しく
楽
(
たの
)
しく
参拝
(
さんぱい
)
をしようと
思
(
おも
)
ひましたが、
216
人間
(
にんげん
)
の
考
(
かんが
)
へは
実
(
じつ
)
に
果敢
(
はか
)
ないものですな。
217
エルサレムと
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
は
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
かと
思
(
おも
)
つてゐましたのに
意外
(
いぐわい
)
にも
窮屈
(
きうくつ
)
な
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますな』
218
初稚
(
はつわか
)
『「
結構
(
けつこう
)
な
処
(
ところ
)
の
恐
(
こは
)
い
所
(
ところ
)
だ」と
厳御魂
(
いづのみたま
)
の
神諭
(
しんゆ
)
にも
出
(
で
)
てゐるでせう。
219
油断
(
ゆだん
)
は
少
(
すこ
)
しもなりませぬよ。
220
寸善
(
すんぜん
)
尺魔
(
しやくま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですから
弥勒
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
が
完成
(
くわんせい
)
する
迄
(
まで
)
は、
221
腹帯
(
はらおび
)
をしつかりしめて
気
(
き
)
を
張弓
(
はりゆみ
)
にして
置
(
お
)
かなくては
魔神
(
まがみ
)
に
襲
(
おそ
)
はれますからな』
222
玉国
(
たまくに
)
『
聖地
(
せいち
)
でさへも
魔神
(
まがみ
)
が
居
(
を
)
りますか』
223
初稚
(
はつわか
)
『
美
(
うつく
)
しい
花
(
はな
)
には
害虫
(
がいちう
)
多
(
おほ
)
く、
224
よき
果物
(
くだもの
)
には
虫害
(
ちうがい
)
多
(
おほ
)
きが
如
(
ごと
)
く、
225
宝
(
たから
)
の
集
(
あつ
)
まる
所
(
ところ
)
には
盗人
(
ぬすびと
)
の
狙
(
ねら
)
ふ
如
(
ごと
)
く、
226
世界中
(
せかいぢう
)
の
人間
(
にんげん
)
がエルサレム エルサレムと
云
(
い
)
つて
憧憬
(
どうけい
)
してるのですから、
227
悪
(
あく
)
の
強
(
つよ
)
い
欲
(
よく
)
の
深
(
ふか
)
いものは
皆
(
みな
)
聖地
(
せいち
)
に
来
(
き
)
て、
228
何
(
なに
)
か
思惑
(
おもわく
)
を
立
(
た
)
てようとするのですよ。
229
エルサレム
程
(
ほど
)
偽善者
(
きぜんしや
)
の
集
(
あつ
)
まる
所
(
ところ
)
はないのですから、
230
よく
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
を
弁
(
わきま
)
へて、
231
御
(
お
)
交際
(
つきあひ
)
を
願
(
ねが
)
ひますよ。
232
それ
丈
(
だ
)
け
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
致
(
いた
)
しておきます。
233
又
(
また
)
真純彦
(
ますみひこ
)
様
(
さま
)
も
最前
(
さいぜん
)
から
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまの
欠点
(
けつてん
)
を
親切
(
しんせつ
)
に
注意
(
ちうい
)
されましたが、
234
貴方
(
あなた
)
には
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
以上
(
いじやう
)
の
欠点
(
けつてん
)
がありますから、
235
よく
反省
(
はんせい
)
なさいませや』
236
真純
(
ますみ
)
『
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りまして
厶
(
ござ
)
います。
237
聖地
(
せいち
)
に
到着
(
たうちやく
)
迄
(
まで
)
に
幾千
(
いくら
)
も
時間
(
じかん
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬから、
238
何
(
なん
)
だか
俄
(
にはか
)
に
心
(
こころ
)
忙
(
せは
)
しくなつて
参
(
まゐ
)
りました。
239
之
(
これ
)
から
自分
(
じぶん
)
の
欠点
(
けつてん
)
を
考
(
かんが
)
へもつて
歩
(
ある
)
きますから、
240
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
何卒
(
どうぞ
)
ユツクリ
歩
(
ある
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ。
241
さう
急
(
いそ
)
いでお
歩
(
ある
)
き
下
(
くだ
)
さると、
242
自分
(
じぶん
)
の
欠点
(
けつてん
)
を
考
(
かんが
)
へる
暇
(
ひま
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬからな』
243
初稚
(
はつわか
)
『よい
考
(
かんが
)
へは
到底
(
たうてい
)
人間
(
にんげん
)
では
出
(
で
)
ませぬよ。
244
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねが
)
ひなさいませ。
245
さうすれば
刹那
(
せつな
)
刹那
(
せつな
)
に
気
(
き
)
をつかせて
貰
(
もら
)
ひます。
246
今
(
いま
)
から
考
(
かんが
)
へたつてよい
考
(
かんが
)
へが
出
(
で
)
るはずは
厶
(
ござ
)
いませぬわ』
247
真純
(
ますみ
)
『
然
(
しか
)
らば
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
して
参
(
まゐ
)
りませう。
248
取越
(
とりこ
)
し
苦労
(
くらう
)
は
致
(
いた
)
しますまい』
249
初稚
(
はつわか
)
『ア、
250
そこへお
気
(
き
)
がついたらそれで
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
251
貴方
(
あなた
)
はいつも
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
末尾
(
まつび
)
に
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
と
仰有
(
おつしや
)
るでせう。
252
それさへお
忘
(
わす
)
れにならなければそれで
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
253
サア
急
(
いそ
)
いで
参
(
まゐ
)
りませう』
254
玉国
(
たまくに
)
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
255
真純彦
(
ますみひこ
)
を
通
(
とほ
)
し
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
を
賜
(
たま
)
はりまして、
256
玉国別
(
たまくにわけ
)
も
初
(
はじ
)
めて
落付
(
おちつ
)
きました。
257
有難
(
ありがた
)
く
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します』
258
初稚
(
はつわか
)
『
感謝
(
かんしや
)
なんかして
頂
(
いただ
)
くと
妾
(
わたし
)
困
(
こま
)
りますわ』
259
と
一層
(
いつそう
)
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
260
真純彦
(
ますみひこ
)
は
道々
(
みちみち
)
小声
(
こごゑ
)
に
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
261
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
について
行
(
ゆ
)
く。
262
真純彦
(
ますみひこ
)
『あゝ
有難
(
ありがた
)
や
有難
(
ありがた
)
や
263
待
(
ま
)
ちに
待
(
ま
)
つたるエルサレム
264
吾
(
わが
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
開展
(
かいてん
)
し
265
何
(
なん
)
とはなしに
村肝
(
むらきも
)
の
266
心
(
こころ
)
は
勇
(
いさ
)
み
身
(
み
)
は
踊
(
をど
)
り
267
足
(
あし
)
の
歩
(
あゆ
)
みも
軽々
(
かるがる
)
と
268
知
(
し
)
らずに
早
(
はや
)
くなりにけり
269
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
惟神
(
かむながら
)
270
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せと
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
271
千古
(
せんこ
)
不滅
(
ふめつ
)
の
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
272
今更
(
いまさら
)
乍
(
なが
)
ら
有難
(
ありがた
)
く
273
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
漂
(
ただよ
)
ひぬ
274
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
275
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立分
(
たてわ
)
ける
276
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
277
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
278
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
279
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
280
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
281
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
き
乍
(
なが
)
ら
282
ついうかうかと
忘
(
わす
)
れ
行
(
ゆ
)
く
283
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
ぞ
浅間
(
あさま
)
しき
284
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
や
過越
(
すぎこし
)
の
285
苦労
(
くらう
)
をやめて
刹那心
(
せつなしん
)
286
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
に
超越
(
てうゑつ
)
し
287
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
皇神
(
すめかみ
)
の
288
心
(
こころ
)
のままに
任
(
まか
)
しなば
289
いかなる
重
(
おも
)
き
神業
(
しんげふ
)
も
290
いと
平
(
たひら
)
けく
安
(
やす
)
らけく
291
奉仕
(
ほうし
)
し
得
(
う
)
べき
真諦
(
しんたい
)
を
292
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
悟
(
さと
)
りけり
293
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
294
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つともかくるとも
295
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
296
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
297
従
(
したが
)
ひ
進
(
すす
)
む
身
(
み
)
なりせば
298
如何
(
いか
)
なる
枉
(
まが
)
の
猛
(
たけ
)
びをも
299
いと
安々
(
やすやす
)
と
免
(
まぬが
)
れむ
300
次第
(
しだい
)
次第
(
しだい
)
にエルサレム
301
山
(
やま
)
の
景色
(
けしき
)
も
近
(
ちか
)
づきて
302
茂
(
しげ
)
り
合
(
あ
)
ひたる
橄欖
(
かんらん
)
の
303
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
風
(
かぜ
)
にそよぐさま
304
見
(
み
)
ゆる
許
(
ばか
)
りになりにけり
305
いよいよこれよりゲッセマネ
306
神
(
かみ
)
の
集
(
あつ
)
まる
花園
(
はなぞの
)
に
307
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
近
(
ちか
)
づきて
308
別
(
わか
)
れて
程
(
ほど
)
経
(
へ
)
し
神司
(
かむつかさ
)
309
三千彦
(
みちひこ
)
伊太彦
(
いたひこ
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
310
神
(
かみ
)
の
柱
(
はしら
)
に
会
(
あ
)
ふならむ
311
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
勇
(
いさ
)
ましや
312
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
313
御霊
(
みたま
)
幸
(
さきは
)
ひましませよ』
314
と
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
315
漸
(
やうや
)
くにしてヨルダン
川
(
がは
)
の
渡
(
わた
)
し
場
(
ば
)
に
着
(
つ
)
いた。
316
昔
(
むかし
)
はここに
黄金橋
(
わうごんけう
)
と
云
(
い
)
ふ
黄金
(
こがね
)
の
橋
(
はし
)
のかかつてゐた
処
(
ところ
)
である。
317
川
(
かは
)
の
西岸
(
せいがん
)
には
日出別
(
ひのでわけの
)
命
(
みこと
)
数多
(
あまた
)
の
神司
(
かむつかさ
)
を
従
(
したが
)
へ、
318
幾百旒
(
いくひやくりう
)
とも
知
(
し
)
れぬ
紫
(
むらさき
)
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
黄
(
き
)
浅黄
(
あさぎ
)
の
旗
(
はた
)
を
河風
(
かはかぜ
)
になびかせ、
319
初稚姫
(
はつわかひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
到着
(
たうちやく
)
を
待
(
ま
)
たせ
玉
(
たま
)
ひつつあつた。
320
日出別
(
ひのでわけの
)
命
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
によつて
新造
(
しんざう
)
の
無棚舟
(
たななしぶね
)
は、
321
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
水夫
(
かこ
)
が
櫓櫂
(
ろかい
)
を
操
(
あやつ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
322
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
漕
(
こ
)
ぎ
来
(
きた
)
る。
323
川
(
かは
)
の
向
(
むか
)
ふには、
324
ウラーウラーの
声
(
こゑ
)
山岳
(
さんがく
)
も
揺
(
ゆる
)
ぐ
許
(
ばか
)
りに
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
325
初稚姫
(
はつわかひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
迎
(
むか
)
への
舟
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
托
(
たく
)
し
悠々
(
いういう
)
として
向
(
むか
)
ふ
岸
(
ぎし
)
に
渡
(
わた
)
り、
326
川岸
(
かはぎし
)
に
着
(
つ
)
くや
日出別
(
ひのでわけの
)
命
(
みこと
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
側
(
そば
)
にツと
寄
(
よ
)
り
添
(
そ
)
ひ、
327
固
(
かた
)
き
握手
(
あくしゆ
)
を
交換
(
かうくわん
)
した。
328
次
(
つ
)
いで
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
329
真純彦
(
ますみひこ
)
に
握手
(
あくしゆ
)
を
交
(
か
)
はし、
330
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
神司
(
かむつかさ
)
や
信徒
(
まめひと
)
に
前後
(
ぜんご
)
を
守
(
まも
)
られて、
331
安
(
やす
)
の
河原
(
かはら
)
と
称
(
とな
)
へられたるゲッセマネの
園
(
その
)
へと
練
(
ね
)
り
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
332
(
大正一二・七・一八
旧六・五
於祥雲閣
北村隆光
録)
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