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第71巻(戌の巻)
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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
01 感謝組
〔1657〕
02 古峽の山
〔1658〕
03 岩侠
〔1659〕
04 不聞銃
〔1660〕
05 独許貧
〔1661〕
06 噴火口
〔1662〕
07 反鱗
〔1663〕
第2篇 地異転変
08 異心泥信
〔1664〕
09 劇流
〔1665〕
10 赤酒の声
〔1666〕
11 大笑裡
〔1667〕
12 天恵
〔1668〕
第3篇 虎熊惨状
13 隔世談
〔1669〕
14 山川動乱
〔1670〕
15 饅頭塚
〔1671〕
16 泥足坊
〔1672〕
17 山颪
〔1673〕
第4篇 神仙魔境
18 白骨堂
〔1674〕
19 谿の途
〔1675〕
20 熊鷹
〔1676〕
21 仙聖郷
〔1677〕
22 均霑
〔1678〕
23 義侠
〔1679〕
第5篇 讃歌応山
24 危母玉
〔1680〕
25 道歌
〔1681〕
26 七福神
〔1682〕
余白歌
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第二二章
均霑
(
きんてん
)
〔一六七八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第4篇 神仙魔境
よみ(新仮名遣い):
しんせんまきょう
章:
第22章 均霑
よみ(新仮名遣い):
きんてん
通し章番号:
1678
口述日:
1923(大正12)年07月17日(旧06月4日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6522
愛善世界社版:
243頁
八幡書店版:
第11輯 697頁
修補版:
校定版:
255頁
普及版:
110頁
初版:
ページ備考:
001
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
俄
(
にはか
)
の
爆発
(
ばくはつ
)
に、
002
仙聖山
(
せんせいざん
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
003
此
(
この
)
郷土
(
きやうど
)
の
山川
(
さんせん
)
草木
(
さうもく
)
は
激烈
(
げきれつ
)
に
震動
(
しんどう
)
し、
004
三千彦
(
みちひこ
)
を
除
(
のぞ
)
く
外
(
ほか
)
、
005
何
(
いづ
)
れも
顔色
(
がんしよく
)
蒼白
(
まつさを
)
となり、
006
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
いてゐた。
007
熔岩
(
ようがん
)
は
七八
(
しちはち
)
里
(
り
)
隔
(
へだ
)
てた
此
(
この
)
地点
(
ちてん
)
まで
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
降
(
ふ
)
りくるその
凄
(
すさま
)
じさ。
008
されど
此
(
この
)
大
(
おほ
)
きな
家
(
いへ
)
にも
拘
(
かか
)
はらず、
009
只
(
ただ
)
の
一個
(
いつこ
)
も
当
(
あた
)
らなかつたのは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
と、
010
何
(
いづ
)
れも
感謝
(
かんしや
)
の
念
(
ねん
)
を
催
(
もよほ
)
すのであつた。
011
流石
(
さすが
)
の
猛悪
(
まうあく
)
なるテーラも、
012
キングレスも、
013
部下
(
ぶか
)
の
小盗人
(
こぬすびと
)
も、
014
俄
(
にはか
)
に
怖
(
おぢ
)
けつき、
015
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
016
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
し
初
(
はじ
)
めた。
017
その
声
(
こゑ
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
、
018
裏山
(
うらやま
)
の
谷々
(
たにだに
)
の
木精
(
こだま
)
を
響
(
ひび
)
かした。
019
スマナー
姫
(
ひめ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
020
恐
(
おそ
)
ろしい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いましたな。
021
あの
様
(
やう
)
な……
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
巨大
(
きよだい
)
な
熔岩
(
ようがん
)
が
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
くに
降
(
ふ
)
つて
参
(
まゐ
)
りましたが、
022
お
神徳
(
かげ
)
によりまして、
023
吾
(
わが
)
家
(
や
)
には
只
(
ただ
)
の
一
(
ひと
)
つも
当
(
あた
)
らず、
024
又
(
また
)
あの
地響
(
ぢひびき
)
で
家
(
いへ
)
も
倒
(
たふ
)
れず、
025
皆
(
みな
)
さまも
無事
(
ぶじ
)
に
命
(
いのち
)
を
拾
(
ひろ
)
はれしは、
026
全
(
まつた
)
く
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
で
厶
(
ござ
)
いませう』
027
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
窓
(
まど
)
を
開
(
ひら
)
いて、
028
村落
(
そんらく
)
の
家々
(
いへいへ
)
を
眺
(
なが
)
めて
見
(
み
)
た。
029
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
黒煙
(
こくえん
)
天
(
てん
)
に
漲
(
みなぎ
)
つて
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
らぬ
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
となつて
居
(
ゐ
)
た。
030
実際
(
じつさい
)
今日
(
けふ
)
は
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
くより
何処
(
どこ
)
ともなく
薄暗
(
うすくら
)
く、
031
何
(
いづ
)
れも
夜分
(
やぶん
)
と
思
(
おも
)
つてゐたがその
実
(
じつ
)
、
032
まだ
昼
(
ひる
)
の
最中
(
もなか
)
であつたのである。
033
別
(
べつ
)
に
村
(
むら
)
の
家々
(
いへいへ
)
にも
火災
(
くわさい
)
も
起
(
おこ
)
らず、
034
阿鼻
(
あび
)
叫喚
(
けうくわん
)
の
声
(
こゑ
)
もなきに
安心
(
あんしん
)
の
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でおろし、
035
スマナー『
皆
(
みな
)
さま、
036
私
(
わたし
)
の
家
(
いへ
)
は
村中
(
むらぢう
)
一度
(
いちど
)
に
見下
(
みお
)
ろせる
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
037
村方
(
むらがた
)
はあの
騒動
(
さうだう
)
に
火災
(
くわさい
)
も
起
(
おこ
)
らず、
038
叫
(
さけ
)
びの
声
(
こゑ
)
も
聞
(
きこ
)
えませぬから、
039
一軒
(
いつけん
)
も
残
(
のこ
)
らず
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
いたのでせう。
040
サア
之
(
これ
)
から
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
感謝
(
かんしや
)
の
祭
(
まつり
)
を
致
(
いた
)
しまして、
041
皆
(
みな
)
さまに
直会
(
なほらひ
)
を
頂
(
いただ
)
いて
貰
(
もら
)
ひませう』
042
三千
(
みち
)
『いや、
043
それは
結構
(
けつこう
)
です。
044
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
大爆発
(
だいばくはつ
)
、
045
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
降
(
ふ
)
り
来
(
きた
)
る
熔岩
(
ようがん
)
が、
046
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
家
(
いへ
)
に
一箇
(
いつこ
)
も
当
(
あた
)
らず、
047
村中
(
むらぢう
)
安全
(
あんぜん
)
と
云
(
い
)
ふのは
全
(
まつた
)
く
不思議
(
ふしぎ
)
です。
048
此
(
こ
)
れも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
でせう。
049
サア
青年隊
(
せいねんたい
)
の
方々
(
かたがた
)
、
050
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
らお
祭
(
まつり
)
の
用意
(
ようい
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
051
タークは
三千彦
(
みちひこ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
052
青年隊
(
せいねんたい
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
053
いろいろ
供物
(
くもつ
)
の
用意
(
ようい
)
をなし、
054
祭典
(
さいてん
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
りかかつた。
055
漸
(
やうや
)
く
祭典
(
さいてん
)
の
用意
(
ようい
)
は
出来
(
でき
)
た。
056
ここに
三千彦
(
みちひこ
)
、
057
スマナー
姫
(
ひめ
)
は
新
(
あたら
)
しき
祭服
(
さいふく
)
をつけ、
058
恭
(
うやうや
)
しく
神前
(
しんぜん
)
に
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
059
祭典
(
さいてん
)
も
無事
(
ぶじ
)
に
終了
(
しうれう
)
した。
060
それより
村中
(
むらぢう
)
の
老若
(
ろうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
き
家
(
いへ
)
に
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
061
キングレスの
部下
(
ぶか
)
も
斎場
(
さいぢやう
)
に
列
(
れつ
)
し、
062
直会
(
なほらひ
)
を
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
063
スマナー
姫
(
ひめ
)
は
嬉
(
うれ
)
しげに
宴席
(
えんせき
)
の
中央
(
ちうあう
)
に
立
(
た
)
つて、
064
自
(
みづ
)
から
歌
(
うた
)
ひ
自
(
みづか
)
ら
舞
(
ま
)
ふ。
065
スマナー
姫
(
ひめ
)
『
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
秘密郷
(
ひみつきやう
)
066
北
(
きた
)
に
仙聖山
(
せんせいざん
)
を
控
(
ひか
)
へ
067
東
(
ひがし
)
に
虎熊
(
とらくま
)
の
山
(
やま
)
聳
(
そび
)
え
立
(
た
)
ち
068
白
(
しろ
)
青
(
あを
)
黄色
(
きいろ
)
紫
(
むらさき
)
の
069
花
(
はな
)
は
芳香
(
はうかう
)
薫
(
くん
)
じつつ
070
胡蝶
(
こてふ
)
は
高
(
たか
)
く
舞
(
ま
)
ひ
遊
(
あそ
)
び
071
迦陵
(
かりよう
)
嚬伽
(
びんが
)
は
涼
(
すず
)
しき
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
ちて
072
神世
(
かみよ
)
を
謡
(
うた
)
ふ
073
実
(
げ
)
にも
尊
(
たふと
)
き
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
の
074
青人草
(
あをひとぐさ
)
の
喜
(
よろこ
)
びは
075
外
(
ほか
)
の
国
(
くに
)
には
例
(
ためし
)
なき
076
中国一
(
ちうごくいち
)
の
瑞祥
(
ずゐしやう
)
ぞ
077
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
の
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
て
078
一度
(
いちど
)
は
荒
(
すさ
)
び
狂
(
くる
)
ひしが
079
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御使人
(
みつかひびと
)
080
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
があれまして
081
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
初
(
はじ
)
め
此
(
この
)
里
(
さと
)
の
082
醜
(
しこ
)
の
災
(
わざはひ
)
除
(
のぞ
)
かせ
玉
(
たま
)
ひ
083
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
く
古
(
いにしへ
)
の
084
神代
(
かみよ
)
に
帰
(
かへ
)
りし
嬉
(
うれ
)
しさよ
085
仙聖山
(
せんせいざん
)
の
峰
(
みね
)
高
(
たか
)
く
086
五色
(
ごしき
)
の
雲
(
くも
)
の
被衣
(
かづき
)
して
087
雲
(
くも
)
をば
起
(
おこ
)
し
雨
(
あめ
)
降
(
ふ
)
らし
088
五日
(
いつか
)
の
風
(
かぜ
)
や
十日
(
じふじつ
)
の
089
雨
(
あめ
)
も
時
(
とき
)
をば
違
(
たが
)
へずに
090
降
(
ふ
)
りしく
厚
(
あつ
)
き
御恵
(
みめぐみ
)
は
091
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
の
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ひし
092
吾
(
わが
)
住
(
す
)
む
郷
(
さと
)
の
喜
(
よろこ
)
びぞ
093
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
め
里人
(
さとびと
)
よ
094
踊
(
をど
)
れよ
踊
(
をど
)
れ
皆
(
みな
)
の
人
(
ひと
)
095
今日
(
けふ
)
の
生日
(
いくひ
)
の
喜
(
よろこ
)
びは
096
外
(
ほか
)
へはやらじ
幾千代
(
いくちよ
)
も
097
つづかせませと
大前
(
おほまへ
)
に
098
祈
(
いの
)
る
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
真心
(
まごころ
)
を
099
神
(
かみ
)
は
必
(
かなら
)
ずみそなはし
100
清
(
きよ
)
く
諾
(
うべ
)
なひ
玉
(
たま
)
ふべし
101
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
102
実
(
げ
)
にも
嬉
(
うれ
)
しき
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
の
103
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
踏
(
ふ
)
みしめて
104
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
守
(
も
)
るならば
105
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
枉
(
まが
)
の
恐
(
おそ
)
れなし
106
妾
(
わらは
)
も
尊
(
たふと
)
き
足乳根
(
たらちね
)
の
107
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
や
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
に
108
悲
(
かな
)
しき
別
(
わか
)
れをなせしより
109
心
(
こころ
)
は
曇
(
くも
)
り
胸
(
むね
)
痛
(
いた
)
み
110
身
(
み
)
も
世
(
よ
)
もあらぬ
思
(
おも
)
ひにて
111
一度
(
いちど
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
らむかと
112
狭
(
せま
)
き
女
(
をんな
)
の
心
(
こころ
)
より
113
思
(
おも
)
ひ
定
(
さだ
)
めて
仙聖
(
せんせい
)
の
114
山
(
やま
)
に
立
(
た
)
ちたる
白骨堂
(
はくこつだう
)
115
それの
御前
(
みまへ
)
に
平伏
(
ひれふ
)
して
116
今
(
いま
)
や
果
(
は
)
てむとする
時
(
とき
)
しもあれや
117
名
(
な
)
さへ
目出度
(
めでた
)
き
三千彦
(
みちひこ
)
の
118
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みに
119
果敢
(
はか
)
なき
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
はれて
120
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
り
窺
(
うかが
)
へば
121
早
(
はや
)
くも
魔
(
ま
)
の
手
(
て
)
は
内外
(
うちそと
)
に
122
拡
(
ひろ
)
げられたる
恐
(
おそ
)
ろしさ
123
闇
(
やみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
裏口
(
うらぐち
)
に
124
立
(
た
)
ちて
様子
(
やうす
)
を
覗
(
うかが
)
へば
125
従兄
(
いとこ
)
と
名乗
(
なの
)
るテーラさま
126
捕手
(
とりて
)
と
名乗
(
なの
)
る
人々
(
ひとびと
)
が
127
青年隊
(
せいねんたい
)
のタークさま
128
インターさまと
何事
(
なにごと
)
か
129
争論
(
あげつらひ
)
つつ
妾
(
わらは
)
が
命
(
いのち
)
130
死
(
し
)
せしとや
思
(
おも
)
ひ
玉
(
たま
)
ひけむ
131
百千万
(
ひやくせんまん
)
の
心
(
こころ
)
配
(
くば
)
り
132
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
にほだされて
133
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
134
奥
(
おく
)
の
襖
(
ふすま
)
を
引
(
ひき
)
開
(
あ
)
けて
135
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
立
(
たち
)
出
(
い
)
で
言霊
(
ことたま
)
を
136
かすかに
宣
(
の
)
れば
人々
(
ひとびと
)
の
137
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
は
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
り
138
清
(
きよ
)
く
尊
(
たふと
)
き
惟神
(
かむながら
)
139
珍
(
うづ
)
の
身魂
(
みたま
)
に
帰
(
かへ
)
りたる
140
その
喜
(
よろこ
)
びや
如何
(
いか
)
許
(
ばか
)
り
141
感謝
(
かんしや
)
の
言葉
(
ことば
)
もなきまでに
142
妾
(
わらは
)
は
喜
(
よろこ
)
び
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
りぬ
143
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
144
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
何処
(
どこ
)
までも
145
頂
(
いただ
)
きまして
直会
(
なほらひ
)
の
146
此
(
この
)
酒宴
(
さかもり
)
を
快
(
こころ
)
よく
147
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
されと
宣
(
の
)
り
奉
(
まつ
)
る
148
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
149
月
(
つき
)
落
(
お
)
ち
星
(
ほし
)
は
失
(
う
)
するとも
150
虎熊山
(
とらくまやま
)
は
割
(
わ
)
るるとも
151
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
152
いかで
恐
(
おそ
)
れむ
今
(
いま
)
目
(
ま
)
の
辺
(
あた
)
り
153
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
蒙
(
かうむ
)
りて
154
笑
(
ゑ
)
み
栄
(
さか
)
えたる
嬉
(
うれ
)
しさよ
155
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
156
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
慎
(
つつし
)
みて
157
畏
(
かしこ
)
み
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る』
158
三千彦
(
みちひこ
)
『
諸々
(
もろもろ
)
の
罪
(
つみ
)
や
穢
(
けがれ
)
を
払
(
はら
)
はむと
159
爆発
(
ばくはつ
)
しけむ
虎熊
(
とらくま
)
の
山
(
やま
)
。
160
虎熊
(
とらくま
)
の
峰
(
みね
)
に
潜
(
ひそ
)
みし
枉神
(
まがかみ
)
も
161
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
く
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せにけむ。
162
仙聖
(
せんせい
)
の
清
(
きよ
)
けき
郷
(
さと
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
163
思
(
おも
)
ひがけなき
事
(
こと
)
のみぞ
聞
(
き
)
く。
164
スマナーの
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
真心
(
まごころ
)
を
165
愛
(
めで
)
玉
(
たま
)
ひなむ
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
は。
166
インターやタークの
君
(
きみ
)
の
真心
(
まごころ
)
に
167
バータラの
家
(
いへ
)
は
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
かなむ』
168
ターク『
思
(
おも
)
ひきや
魔神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
る
此
(
この
)
郷
(
さと
)
に
169
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
来
(
きた
)
りますとは。
170
傾
(
かたむ
)
きし
家
(
いへ
)
の
柱
(
はしら
)
を
立直
(
たてなほ
)
す
171
君
(
きみ
)
は
誠
(
まこと
)
の
三千彦
(
みちひこ
)
司
(
つかさ
)
よ』
172
インター『
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
は
晴
(
は
)
れにけり
173
バータラの
家
(
いへ
)
の
雲
(
くも
)
を
払
(
はら
)
ひて。
174
昼
(
ひる
)
さへも
暗
(
くら
)
くなりぬる
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
175
明
(
あ
)
かさむ
為
(
ため
)
か
爆発
(
ばくはつ
)
の
声
(
こゑ
)
。
176
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
に
潜
(
ひそ
)
む
枉津
(
まがつ
)
も
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せぬ
177
かの
爆発
(
ばくはつ
)
の
強
(
つよ
)
き
響
(
ひびき
)
に。
178
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
も
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
も
戦
(
をのの
)
きて
179
鎮
(
しづ
)
まりにけむ
爆発
(
ばくはつ
)
の
声
(
こゑ
)
に』
180
三千彦
(
みちひこ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
皇神
(
すめかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
ぞ
181
仰
(
あふ
)
ぎ
敬
(
ゐやま
)
へ
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
達
(
たち
)
。
182
産土
(
うぶすな
)
の
山
(
やま
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
いで
)
し
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
183
御
(
おん
)
身
(
み
)
如何
(
いか
)
にと
思
(
おも
)
ひ
煩
(
わづら
)
ふ。
184
さり
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
は
神人
(
しんじん
)
よ
185
いと
平
(
たひ
)
らけく
安
(
やす
)
くましまさむ』
186
スマナーは
三千彦
(
みちひこ
)
に
盃
(
さかづき
)
をさし
乍
(
なが
)
ら、
187
スマナー『もし
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
188
妾
(
わたし
)
の
今後
(
こんご
)
の
身
(
み
)
の
振
(
ふ
)
り
方
(
かた
)
に
就
(
つ
)
いては、
189
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
したら
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
いませうか。
190
何卒
(
どうぞ
)
お
示
(
しめ
)
しを
願
(
ねが
)
ひたう
厶
(
ござ
)
います』
191
三千
(
みち
)
『
私
(
わたし
)
が
斯
(
か
)
うなさいませ……とお
指図
(
さしづ
)
は
致
(
いた
)
しませぬが、
192
貴女
(
あなた
)
のお
心
(
こころ
)
にお
感
(
かん
)
じなされた
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
以
(
もつ
)
ておやりなされたら
如何
(
どう
)
でせう』
193
スマナー『はい、
194
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
195
左様
(
さやう
)
ならば
貴方
(
あなた
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
命
(
いのち
)
のない
処
(
ところ
)
を
救
(
すく
)
はれ、
196
又
(
また
)
こうして
沢山
(
たくさん
)
の
方
(
かた
)
も
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
へ
立
(
たち
)
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さつたので
厶
(
ござ
)
いますから、
197
妾
(
わたし
)
はこれに
越
(
こ
)
した
喜
(
よろこ
)
びは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
198
山林
(
さんりん
)
も
田畑
(
たはた
)
も
宝
(
たから
)
も
何
(
なに
)
も
要
(
い
)
りませぬ。
199
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
家
(
いへ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
やウラルの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
をお
祀
(
まつ
)
り
致
(
いた
)
し、
200
祖先
(
そせん
)
や、
201
夫
(
をつと
)
の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
ひ、
202
比丘尼
(
びくに
)
となつて、
203
一生
(
いつしやう
)
を
送
(
おく
)
りたう
厶
(
ござ
)
いますが、
204
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませうな』
205
三千
(
みち
)
『
成程
(
なるほど
)
、
206
それは
誠
(
まこと
)
に
殊勝
(
しゆしよう
)
なお
考
(
かんが
)
へです。
207
三千彦
(
みちひこ
)
、
208
双手
(
そうしゆ
)
を
挙
(
あ
)
げて
賛成
(
さんせい
)
致
(
いた
)
します』
209
スマナー『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
210
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます。
211
就
(
つ
)
きましては
妾
(
わたし
)
の
家
(
いへ
)
は
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
の……
此
(
この
)
界隈
(
かいわい
)
での
富豪
(
ふがう
)
で
厶
(
ござ
)
いまするが、
212
もはや
比丘尼
(
びくに
)
となつて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
仕
(
つか
)
へする
以上
(
いじやう
)
は、
213
財産
(
ざいさん
)
なんか、
214
必要
(
ひつえう
)
は
認
(
みと
)
めませぬ。
215
何卒
(
どうぞ
)
バータラ
家
(
け
)
の
財産
(
ざいさん
)
全部
(
ぜんぶ
)
を、
216
社会
(
しやくわい
)
公共
(
こうきよう
)
の
為
(
ため
)
に
捧
(
ささ
)
げ
度
(
た
)
いと
存
(
ぞん
)
じますが、
217
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませうか』
218
三千
(
みち
)
『それは
至極
(
しごく
)
結構
(
けつこう
)
です。
219
定
(
さだ
)
めて
村人
(
むらびと
)
もお
喜
(
よろこ
)
びになるでせう』
220
スマナー『
全財産
(
ぜんざいさん
)
を
四
(
よつ
)
つに
分
(
わ
)
け、
221
その
一部
(
いちぶ
)
をエルサレムの
宮
(
みや
)
に
献
(
けん
)
じ、
222
一部
(
いちぶ
)
を
神館
(
かむやかた
)
の
維持費
(
ゐぢひ
)
に
当
(
あ
)
て、
223
残
(
のこ
)
りの
二部
(
にぶ
)
を
村人
(
むらびと
)
に
寄贈
(
きぞう
)
致
(
いた
)
しましたら
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませうかな』
224
三千
(
みち
)
『それは
至極
(
しごく
)
よいお
考
(
かんが
)
へです。
225
さうなさいませ。
226
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
ここに
改心
(
かいしん
)
をせられたキングレス、
227
外
(
ほか
)
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
方々
(
かたがた
)
は、
228
いま
泥棒
(
どろばう
)
をお
廃
(
や
)
めになつた
処
(
ところ
)
で、
229
百姓
(
ひやくしやう
)
するにも
田畑
(
たはた
)
はなし、
230
商売
(
しやうばい
)
をするにも
資本
(
しほん
)
もないと
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
ですから、
231
此
(
この
)
方々
(
かたがた
)
にも
少
(
すこ
)
しなりと
山林
(
さんりん
)
なり
田畑
(
たはた
)
なりお
与
(
あた
)
へになり、
232
農業
(
のうげふ
)
をおさせになつたら
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませうか』
233
スマナー『はい、
234
どうも
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
235
キングレス
様
(
さま
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
方々
(
かたがた
)
が
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
さへ
下
(
くだ
)
されば
236
此
(
この
)
村
(
むら
)
に
居
(
を
)
つて
貰
(
もら
)
つて
正業
(
せいげふ
)
に
就
(
つ
)
いて
貰
(
もら
)
ひませう』
237
三千
(
みち
)
『キングレス
様
(
さま
)
、
238
其
(
その
)
他
(
た
)
の
方々
(
かたがた
)
、
239
今
(
いま
)
スマナー
様
(
さま
)
が
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
に
相当
(
さうたう
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
分配
(
ぶんぱい
)
したいと
仰有
(
おつしや
)
るがどうで
厶
(
ござ
)
いませう。
240
改心
(
かいしん
)
なさつた
以上
(
いじやう
)
は、
241
此
(
この
)
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
に
於
(
おい
)
て
農業
(
のうげふ
)
を
営
(
いとな
)
み、
242
安全
(
あんぜん
)
なる
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
られたら
宜
(
よ
)
からうと
思
(
おも
)
ひますが、
243
貴方
(
あなた
)
のお
考
(
かんが
)
へは
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
244
キングレスは
落涙
(
らくるい
)
し
乍
(
なが
)
ら
両手
(
りやうて
)
をつき、
245
キング『ハイ、
246
重々
(
ぢうぢう
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
された
上
(
うへ
)
、
247
夢
(
ゆめ
)
だにも
見
(
み
)
る
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
ないやうな
御
(
おん
)
恵
(
めぐ
)
み、
248
あまりの
事
(
こと
)
で、
249
勿体
(
もつたい
)
なうて
返
(
かへ
)
す
言葉
(
ことば
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
250
何分
(
なにぶん
)
にも
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
251
三千
(
みち
)
『あ、
252
それは
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
。
253
これ、
254
スマナー
様
(
さま
)
、
255
これで
財産
(
ざいさん
)
の
処分
(
しよぶん
)
が
略
(
ほぼ
)
落着
(
らくちやく
)
しました。
256
貴女
(
あなた
)
もこれから
重荷
(
おもに
)
が
下
(
お
)
りたやうなものだから、
257
此
(
この
)
家
(
いへ
)
を
修繕
(
しうぜん
)
して
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御舎
(
みあらか
)
となして
258
里人
(
さとびと
)
を
善
(
ぜん
)
に
導
(
みちび
)
き
善根
(
ぜんこん
)
をお
積
(
つ
)
みなさいませ。
259
私
(
わたくし
)
も
貴女
(
あなた
)
に
会
(
あ
)
つて
思
(
おも
)
はぬ
御用
(
ごよう
)
をさして
頂
(
いただ
)
きました。
260
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
261
と
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
つて
合掌
(
がつしやう
)
し
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にくれてゐる。
262
三千
(
みち
)
『
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
醜
(
しこ
)
の
枉津
(
まがつ
)
はなけれども
263
只
(
ただ
)
心
(
こころ
)
より
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
づるかな。
264
身
(
み
)
の
内
(
うち
)
に
枉
(
まが
)
さへなくば
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
も
265
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
も
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
かは。
266
誠
(
まこと
)
ほど
世
(
よ
)
に
恐
(
おそ
)
るべき
物
(
もの
)
はなし
267
鬼
(
おに
)
も
大蛇
(
をろち
)
も
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せて
行
(
ゆ
)
く。
268
バラモンの
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
振
(
ふり
)
捨
(
す
)
てて
269
今日
(
けふ
)
は
誠
(
まこと
)
の
三千彦
(
みちひこ
)
となる』
270
スマナー
姫
(
ひめ
)
『
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
き
折節
(
をりふし
)
に
271
待
(
ま
)
てよとかかる
玉
(
たま
)
の
御
(
おん
)
声
(
こゑ
)
。
272
三千彦
(
みちひこ
)
の
君
(
きみ
)
の
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
まさずば
273
吾
(
われ
)
は
霊界
(
あのよ
)
の
人
(
ひと
)
なりしならむ。
274
テーラの
醜
(
しこ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
怖
(
お
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ
275
死
(
し
)
なむとせしぞ
愚
(
おろか
)
なりけり。
276
さり
乍
(
なが
)
らテーラの
君
(
きみ
)
のあらばこそ
277
此
(
この
)
喜
(
よろこ
)
びの
来
(
きた
)
りしならむ。
278
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
悪
(
あし
)
きものとて
無
(
な
)
かるべし
279
只
(
ただ
)
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
暗
(
くら
)
き
故
(
ゆゑ
)
なり。
280
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
に
雲
(
くも
)
なくば
281
月日
(
つきひ
)
も
清
(
きよ
)
く
身
(
み
)
を
照
(
て
)
らすらむ』
282
ターク『
仙聖
(
せんせい
)
の
郷
(
さと
)
も
今日
(
けふ
)
より
古
(
いにしへ
)
の
283
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
園
(
その
)
となるらむ。
284
三千彦
(
みちひこ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みに
285
吾
(
わが
)
里人
(
さとびと
)
は
甦
(
よみがへ
)
りつつ。
286
スマナーの
比丘尼
(
びくに
)
の
君
(
きみ
)
によく
仕
(
つか
)
へ
287
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
道
(
みち
)
を
守
(
まも
)
らむ』
288
インター『
吾
(
われ
)
とても
比丘尼
(
びくに
)
の
君
(
きみ
)
の
真心
(
まごころ
)
の
289
雨
(
あめ
)
にぬれつつ
忍
(
しの
)
び
音
(
ね
)
に
泣
(
な
)
きぬ。
290
嬉
(
うれ
)
しさの
涙
(
なみだ
)
は
胸
(
むね
)
に
充
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れ
291
身
(
み
)
も
浮
(
う
)
く
許
(
ばか
)
り
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
つかな』
292
キングレス『
枉事
(
まがこと
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
したる
293
吾
(
われ
)
にも
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
み
賜
(
たま
)
ひぬ。
294
虎熊
(
とらくま
)
の
山
(
やま
)
に
悪事
(
あくじ
)
を
企
(
たく
)
らみつ
295
今
(
いま
)
もありせば
亡
(
ほろ
)
びしならむ。
296
此
(
この
)
郷
(
さと
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
爆発
(
ばくはつ
)
の
297
なやみ
逃
(
のが
)
れし
事
(
こと
)
の
嬉
(
うれ
)
しき』
298
テーラはノソリノソリと
足
(
あし
)
を
痛
(
いた
)
めて
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
這
(
は
)
ひ
来
(
きた
)
り、
299
庭
(
には
)
の
土間
(
どま
)
に
犬突這
(
いぬつくばひ
)
となつて、
300
テーラ『
枉神
(
まがかみ
)
の
醜
(
しこ
)
の
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
したる
301
吾
(
われ
)
今
(
いま
)
よりは
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めなむ。
302
百人
(
ももびと
)
よ
吾
(
わが
)
罪科
(
つみとが
)
を
赦
(
ゆる
)
せかし
303
村
(
むら
)
の
僕
(
しもべ
)
となりて
仕
(
つか
)
へむ』
304
愈
(
いよいよ
)
ここにバータラ
家
(
け
)
の
遺産
(
ゐさん
)
は、
305
スマナーの
意志
(
いし
)
に
従
(
したが
)
ひそれぞれ
分配
(
ぶんぱい
)
されて、
306
上下
(
じやうげ
)
貧富
(
ひんぷ
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
307
郷民
(
きやうみん
)
は
互
(
たがひ
)
に
業
(
げふ
)
を
楽
(
たの
)
しみ
近隣
(
きんりん
)
相和
(
あひわ
)
し、
308
和気
(
わき
)
靄々
(
あいあい
)
として
世
(
よ
)
を
送
(
おく
)
る
事
(
こと
)
となつた。
309
三千彦
(
みちひこ
)
は
宣伝
(
せんでん
)
の
旅
(
たび
)
が
急
(
せ
)
くので、
310
永
(
なが
)
く
留
(
とど
)
まる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
い
)
かず、
311
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
逗留
(
とうりう
)
して
里人
(
さとびと
)
に
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へ、
312
タークを
館
(
やかた
)
の
留守居
(
るすゐ
)
と
頼
(
たの
)
み
置
(
お
)
き、
313
スマナーはエルサレムへ
参拝
(
さんぱい
)
せむと、
314
三千彦
(
みちひこ
)
の
許
(
ゆる
)
しなければ、
315
見
(
み
)
え
隠
(
かく
)
れに
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ふて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
316
(
大正一二・七・一七
旧六・四
於祥雲閣
北村隆光
録)
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