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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
01 感謝組
〔1657〕
02 古峽の山
〔1658〕
03 岩侠
〔1659〕
04 不聞銃
〔1660〕
05 独許貧
〔1661〕
06 噴火口
〔1662〕
07 反鱗
〔1663〕
第2篇 地異転変
08 異心泥信
〔1664〕
09 劇流
〔1665〕
10 赤酒の声
〔1666〕
11 大笑裡
〔1667〕
12 天恵
〔1668〕
第3篇 虎熊惨状
13 隔世談
〔1669〕
14 山川動乱
〔1670〕
15 饅頭塚
〔1671〕
16 泥足坊
〔1672〕
17 山颪
〔1673〕
第4篇 神仙魔境
18 白骨堂
〔1674〕
19 谿の途
〔1675〕
20 熊鷹
〔1676〕
21 仙聖郷
〔1677〕
22 均霑
〔1678〕
23 義侠
〔1679〕
第5篇 讃歌応山
24 危母玉
〔1680〕
25 道歌
〔1681〕
26 七福神
〔1682〕
余白歌
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第一一章
大笑裡
(
だいせうり
)
〔一六六七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第2篇 地異転変
よみ(新仮名遣い):
ちいてんぺん
章:
第11章 大笑裡
よみ(新仮名遣い):
だいしょうり
通し章番号:
1667
口述日:
1923(大正12)年07月16日(旧06月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-06-13 15:43:08
OBC :
rm6511
愛善世界社版:
125頁
八幡書店版:
第11輯 655頁
修補版:
校定版:
130頁
普及版:
59頁
初版:
ページ備考:
001
ヤク、
002
エールの
両人
(
りやうにん
)
は、
003
バット、
004
カークス、
005
ベース
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を、
006
デビス
姫
(
ひめ
)
を
幽閉
(
いうへい
)
してある
牢獄
(
らうごく
)
に
打
(
う
)
ち
込
(
こ
)
み、
007
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
008
デビス
姫
(
ひめ
)
、
009
ブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
をそつと
牢獄
(
らうごく
)
の
外
(
そと
)
に
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
し、
010
暗夜
(
あんや
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
人目
(
ひとめ
)
にかからぬ
堅牢
(
けんらう
)
な
一室
(
いつしつ
)
に、
011
茶
(
ちや
)
やパンを
与
(
あた
)
へて
休
(
やす
)
ませて
置
(
お
)
き、
012
セールの
居間
(
ゐま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
013
ヤク『もし
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
、
014
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
通
(
どほ
)
り、
015
ブラヷーダと
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
を、
016
デビスの
牢獄
(
らうごく
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んで
置
(
お
)
きました。
017
さうして
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
身動
(
みうご
)
きが
出来
(
でき
)
ない
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
、
018
がんじ
搦
(
がらみ
)
に
縛
(
しば
)
つて
置
(
お
)
きましたから、
019
もはや
安心
(
あんしん
)
で
厶
(
ござ
)
います』
020
セール『ヤア、
021
ヤク、
022
エールの
両人
(
りやうにん
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた。
023
そんなら
是
(
これ
)
から、
024
俺
(
おれ
)
も
見
(
み
)
に
往
(
ゆ
)
かうかなア』
025
ヤク『アノ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
026
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
が
仰有
(
おつしや
)
るのには、
027
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
と
其
(
その
)
他
(
ほか
)
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
上役
(
うはやく
)
許
(
ばか
)
り
立
(
た
)
ち
会
(
あ
)
つて
貰
(
もら
)
ひたいとの
事
(
こと
)
です。
028
そして
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
えると
嫌
(
いや
)
ですから、
029
燈火
(
ともしび
)
をつけないで、
030
見聞
(
けんぶん
)
いや、
031
聴聞
(
ちやうもん
)
して
欲
(
ほ
)
しいとの
事
(
こと
)
です』
032
エール『サア
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
033
早
(
はや
)
くお
越
(
こし
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
034
セール『ヨシヨシ、
035
そんなら
小頭
(
こがしら
)
許
(
ばか
)
り
列席
(
れつせき
)
さしたらよからう。
036
牢獄
(
らうごく
)
の
外
(
そと
)
で
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
く
事
(
こと
)
にせう』
037
と
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
小頭
(
こがしら
)
を
従
(
したが
)
へ、
038
エール、
039
ヤクも
共
(
とも
)
に
牢獄
(
らうごく
)
の
外
(
そと
)
に
八
(
はち
)
人
(
にん
)
づらつ
と
並
(
なら
)
んで、
040
中
(
なか
)
の
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
041
カークスは、
042
デビス
姫
(
ひめ
)
の
声色
(
こわいろ
)
をつかつて、
043
カークス『ヤア
其
(
その
)
方
(
はう
)
は、
044
恨
(
うら
)
み
重
(
かさ
)
なる、
045
憎
(
にく
)
さも
憎
(
にく
)
き
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
であらうがな。
046
天命
(
てんめい
)
逃
(
のが
)
れず
此
(
この
)
牢獄
(
らうごく
)
に
連
(
つ
)
れ
込
(
こ
)
まれ、
047
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
に
仇
(
あだ
)
を
打
(
う
)
たれるとは、
048
さてもさても
不便
(
ふびん
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
049
これも
前世
(
ぜんせ
)
の
因縁
(
いんねん
)
と
諦
(
あきら
)
めたがよからうぞや』
050
バットは
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つて、
051
バット『アハヽヽヽ。
052
猪口才
(
ちよこざい
)
千万
(
せんばん
)
な
身
(
み
)
の
程
(
ほど
)
知
(
し
)
らず
奴
(
め
)
が、
053
俺
(
おれ
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
054
何程
(
なにほど
)
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いましめ
)
たればとて、
055
これ
程
(
ほど
)
のひよろひよろ
縄
(
なは
)
、
056
打
(
う
)
ち
切
(
き
)
るに
何
(
なん
)
の
手間暇
(
てまひま
)
がかからうぞ。
057
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
して、
058
後悔
(
こうくわい
)
するな。
059
吾
(
われ
)
こそはバラモン
軍
(
ぐん
)
に
於
(
おい
)
て、
060
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
の
仇名
(
あだな
)
を
取
(
と
)
つた
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
中将
(
ちうじやう
)
だ。
061
三千
(
さんぜん
)
人
(
にん
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
三寸
(
さんずん
)
の
舌端
(
ぜつたん
)
を
以
(
もつ
)
て
指揮
(
しき
)
し
来
(
きた
)
つた
某
(
それがし
)
、
062
今
(
いま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
比丘
(
びく
)
となり、
063
一蓑
(
いつさ
)
一笠
(
いちりつ
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
となりたればとて、
064
昔
(
むかし
)
取
(
と
)
つたる
杵柄
(
きねつか
)
の、
065
未
(
いま
)
だに
残
(
のこ
)
る
腕
(
うで
)
の
冴
(
さ
)
え、
066
見事
(
みごと
)
指一本
(
ゆびいつぽん
)
でも
触
(
さえ
)
るなら、
067
サア、
068
触
(
さえ
)
て
見
(
み
)
よ』
069
カークス『ホヽヽヽヽ。
070
此
(
この
)
期
(
ご
)
に
及
(
およ
)
んで、
071
何
(
なん
)
の
繰言
(
くりごと
)
、
072
もはや
叶
(
かな
)
はぬ……
日頃
(
ひごろ
)
のデビスが
恨
(
うら
)
み、
073
サア
一刀
(
ひとかたな
)
浴
(
あ
)
びて
見
(
み
)
よ。
074
これブラヷーダさま、
075
お
前
(
まへ
)
も
夫
(
をつと
)
の
仇
(
あだ
)
ぢやないか。
076
サア
妾
(
わたし
)
と
両方
(
りやうはう
)
から
両方
(
りやうはう
)
の
耳
(
みみ
)
を、
077
滅多切
(
めつたぎり
)
に
斬
(
き
)
り
落
(
おと
)
しませう』
078
ベースはブラヷーダの
仮声
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
ひ、
079
ベース『
姉上
(
あねうへ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
おほ
)
せ
迄
(
まで
)
もなく、
080
此
(
この
)
恨
(
うらみ
)
を
晴
(
は
)
らさで
置
(
お
)
きませうか。
081
磐石
(
ばんじやく
)
をもつて
卵
(
たまご
)
をわるが
如
(
ごと
)
き
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
082
これも
全
(
まつた
)
くセール
親分
(
おやぶん
)
さまの
御
(
ご
)
同情
(
どうじやう
)
の
致
(
いた
)
す
所
(
ところ
)
、
083
サア
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
084
たとへ
汝
(
なんぢ
)
は
三軍
(
さんぐん
)
を
指揮
(
しき
)
した
勇将
(
ゆうしやう
)
たりとも、
085
も
早
(
はや
)
かうなつては
身動
(
みうご
)
きもなるまい。
086
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
腕
(
うで
)
に
満身
(
まんしん
)
の
恨
(
うらみ
)
を
込
(
こ
)
めたこの
刃
(
やいば
)
、
087
覚悟
(
かくご
)
をせよ。
088
サア
姉上
(
あねうへ
)
様
(
さま
)
、
089
一
(
ひい
)
、
090
二
(
ふう
)
、
091
三
(
みつ
)
でやりませう。
092
貴女
(
あなた
)
は
左
(
ひだり
)
の
耳
(
みみ
)
、
093
私
(
わたし
)
は
右
(
みぎ
)
の
耳
(
みみ
)
を……ホヽヽヽまあ
心地
(
ここち
)
よき
事
(
こと
)
だなア、
094
一
(
ひい
)
、
095
二
(
ふう
)
、
096
三
(
み
)
つ』
097
バット『エヽヽ
痛
(
いた
)
いわい。
098
耳
(
みみ
)
がチヽ
千切
(
ちぎ
)
れるぢやないか。
099
血
(
ち
)
が
出
(
で
)
るぢやないか。
100
ウン、
101
アヽ
い
痛
(
いた
)
いとは
申
(
まを
)
さぬ。
102
俺
(
おれ
)
も
男
(
をとこ
)
だ、
103
ウヽヽヽウン』
104
カークス『
痛
(
いた
)
いであらう。
105
痛
(
いた
)
いやうに
斬
(
き
)
つたのだ。
106
血
(
ち
)
が
出
(
で
)
るのはあたりまへぢや。
107
ても
扨
(
さ
)
ても
気持
(
きもち
)
のよい
事
(
こと
)
だなア』
108
ベース『これや
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
109
此
(
この
)
ブラヷーダが
恨
(
うらみ
)
の
刃
(
やいば
)
、
110
些
(
ちつ
)
とは
痛
(
いた
)
からう。
111
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたであらうのう』
112
バット『いや
早
(
はや
)
誠
(
まこと
)
にもつて
痛
(
いた
)
く
厶
(
ござ
)
らぬ
事
(
こと
)
はないわい。
113
エヘヽヽヽ』
114
カークス『はて
頑固
(
しぶと
)
い、
115
此
(
これ
)
でもか。
116
いやこれでもか。
117
(
男
(
をとこ
)
の
声
(
こゑ
)
)こーれでもかー』
118
と
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
地声
(
ぢごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
119
外
(
そと
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たセールは
驚
(
おどろ
)
いて、
120
セール『オイ、
121
デビス
姫
(
ひめ
)
、
122
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
太
(
ふと
)
い
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
すのだ。
123
まるで
男
(
をとこ
)
だないか』
124
カークス『
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
りませぬが、
125
あんな
声
(
こゑ
)
が
出
(
で
)
たのですよ。
126
私
(
わたし
)
はいつも
神懸
(
かむがかり
)
を
致
(
いた
)
しますから、
127
大方
(
おほかた
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
憑
(
うつ
)
つて
手伝
(
てつだ
)
ふてくれたので
厶
(
ござ
)
いませう…(
男声
(
をとこごゑ
)
)デビス
姫
(
ひめ
)
は
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
憑
(
うつ
)
つて
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
128
セール
129
決
(
けつ
)
して
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
はならぬぞよ』
130
セール『ハイ、
131
決
(
けつ
)
して
疑
(
うたが
)
ひませぬ』
132
ベース『これや
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
とやら、
133
夫
(
をつと
)
の
仇
(
あだ
)
サア
胸
(
むね
)
をついてやらう。
134
些
(
ちつ
)
とは
痛
(
いた
)
うても
辛棒
(
しんぼう
)
せよ。
135
明日
(
あす
)
の
朝
(
あさ
)
迄
(
まで
)
嬲
(
なぶり
)
殺
(
ごろ
)
し……てもさても
愉快
(
ゆくわい
)
の
事
(
こと
)
だわい。
136
オホヽヽヽ。
137
あまりをかしうて、
138
シシ
芝居
(
しばゐ
)
が
出来
(
でき
)
ぬワイのう』
139
バット『オイ、
140
ベース。
141
ではないブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
、
142
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すと
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
も
何
(
なん
)
だか
張
(
は
)
り
合
(
あひ
)
が
無
(
な
)
いわい。
143
サア
早
(
はや
)
く
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
にしたがよからう』
144
ベース『
汝
(
なんぢ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
待
(
ま
)
つ
迄
(
まで
)
もなく
腹
(
はら
)
をえぐつてやらう』
145
バット『アイタヽヽヽター、
146
暫
(
しばら
)
く
暫
(
しばら
)
くシシ
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さりませう』
147
カークス『
此
(
この
)
期
(
ご
)
に
及
(
およ
)
んで
何
(
なん
)
の
躊躇
(
ちうちよ
)
、
148
血迷
(
ちまよ
)
ふたか、
149
ヤ、
150
おくれたか……バット……いやいや、
151
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
……』
152
バット『アイヤ、
153
血迷
(
ちまよ
)
ひもせぬ、
154
後
(
おく
)
れもせぬ。
155
某事
(
それがしこと
)
はビクトリ
山
(
さん
)
の
麓
(
ふもと
)
に
於
(
おい
)
て、
156
治国別
(
はるくにわけ
)
が
部下
(
ぶか
)
の
者共
(
ものども
)
に
駆
(
かけ
)
難
(
なや
)
まされ、
157
此
(
この
)
恨
(
うらみ
)
を
報
(
むく
)
いむと、
158
テルモン
山
(
ざん
)
の
麓
(
ふもと
)
に
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
、
159
是
(
これ
)
なるデビス
姫
(
ひめ
)
、
160
ブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
に
出会
(
であ
)
ひ、
161
仇
(
かたき
)
の
端
(
はし
)
とつけ
覗
(
ねら
)
ふ
中
(
うち
)
、
162
ブラヷーダの
夫
(
をつと
)
伊太彦
(
いたひこ
)
なるもの、
163
横合
(
よこあい
)
より
槍
(
やり
)
の
キツ
先
(
さき
)
を
扱
(
しご
)
きながら
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る、
164
シヤー
猪口才
(
ちよこざい
)
なと
渡
(
わた
)
り
戦
(
たたか
)
ふ。
165
上段
(
じやうだん
)
下段
(
げだん
)
某
(
それがし
)
が
力
(
ちから
)
に
敵
(
てき
)
しかね、
166
伊太彦
(
いたひこ
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
斃
(
くたば
)
り、
167
手下
(
てした
)
のもの
共
(
ども
)
ちりぢりバット
花
(
はな
)
を
嵐
(
あらし
)
のさそひし
如
(
ごと
)
く、
168
逃
(
に
)
げ
往
(
ゆ
)
く
可笑
(
をか
)
しさ、
169
ハヽヽヽ。
170
もうかうなる
上
(
うへ
)
は
破
(
やぶ
)
れかぶれ、
171
どうなりと
勝手
(
かつて
)
に
致
(
いた
)
せ、
172
たとへ
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
死
(
し
)
するとも、
173
魂魄
(
こんぱく
)
此
(
この
)
土
(
ど
)
に
留
(
とど
)
まり、
174
汝
(
なんぢ
)
の
素首
(
そつくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
かむ。
175
ヒウドロドロドロ』
176
カークス『(
男
(
をとこ
)
の
声
(
こゑ
)
)オイ、
177
そんないやらしい
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れない、
178
芝居
(
しばゐ
)
が
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
179
(
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
)モシモシセール
様
(
さま
)
、
180
妾
(
わたし
)
には
大天狗
(
だいてんぐ
)
がうつつて
居
(
を
)
りますから、
181
時々
(
ときどき
)
ど
拍子
(
びやうし
)
の
抜
(
ぬ
)
けた
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
します。
182
何卒
(
どうぞ
)
了見
(
れうけん
)
して(
雷声
(
らいせい
)
)
下
(
くだ
)
さいませ』
183
と
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
くに
後
(
あと
)
の
一語
(
いちご
)
を
出
(
だ
)
す。
184
セールは
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
信
(
しん
)
じ
切
(
き
)
つて
居
(
ゐ
)
るので、
185
黙言
(
だま
)
つて
二人
(
ふたり
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
186
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
小頭
(
こがしら
)
は
合点
(
がつてん
)
が
往
(
い
)
かず、
187
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちぬと
思
(
おも
)
ひながら、
188
頭
(
かしら
)
が
黙言
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
るので、
189
不審
(
ふしん
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれながら、
190
息
(
いき
)
をこらして
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
191
ベース『
姉
(
ねえ
)
さま、
192
もう
是
(
これ
)
位
(
くらゐ
)
で
一思
(
ひとおも
)
ひにやつてやりませうか』
193
カークス『さう
致
(
いた
)
しませう。
194
これや
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
195
艮
(
とどめ
)
を
刺
(
さ
)
してやらう。
196
喉
(
のど
)
はどこだ』
197
と
云
(
い
)
ひながら、
198
暗
(
くら
)
がりで
喉
(
のど
)
のあたりを
探
(
さぐ
)
つた。
199
バットはこそばゆくなつて
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らずフヽヽヽヽと
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
した。
200
カークス『おのれ
頑固
(
しぶと
)
い……デビス
姫
(
ひめ
)
の
腕
(
うで
)
の
冴
(
さ
)
え、
201
食
(
く
)
つて
見
(
み
)
よー』
202
『キヤアツ』と
云
(
い
)
つた
切
(
き
)
りバタバタバタと
音
(
おと
)
をさせ、
203
一言
(
いちごん
)
も
発
(
はつ
)
しなくなつた。
204
カークス『ホヽヽヽホー、
205
日頃
(
ひごろ
)
の
恨
(
うらみ
)
、
206
妹
(
いもうと
)
が
夫
(
をつと
)
の
仇
(
あだ
)
、
207
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたか
南無
(
なむ
)
頓生
(
とんしやう
)
菩提
(
ぼだい
)
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
ー』
208
ベース『
夫
(
をつと
)
の
仇
(
あだ
)
、
209
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つたであらうなア。
210
南無
(
なむ
)
バラモン
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
、
211
有難
(
ありがた
)
く
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
を
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します』
212
バット『ヤア
恨
(
うら
)
めしやなア。
213
此
(
この
)
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
思
(
おも
)
はぬ
不覚
(
ふかく
)
を
取
(
と
)
り、
214
小盗人
(
こぬすと
)
に
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いましめ
)
られ、
215
身動
(
みうご
)
きならぬやうにせられ、
216
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
に
酷
(
さいな
)
まれ、
217
今
(
いま
)
は
世
(
よ
)
になき
亡骸
(
なきがら
)
の、
218
恨
(
うらみ
)
は
募
(
つの
)
る
虎熊
(
とらくま
)
の
山
(
やま
)
、
219
汝
(
なんぢ
)
許
(
ばか
)
りならず、
220
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
の
大盗人
(
おほぬすびと
)
、
221
セールを
初
(
はじ
)
め
其
(
その
)
他
(
た
)
の
奴原
(
やつばら
)
、
222
生首
(
なまくび
)
引
(
ひ
)
きぬき、
223
仇
(
あだ
)
を
討
(
う
)
たいでおかうか、
224
残念
(
ざんねん
)
やな、
225
ク、
226
口惜
(
くちをし
)
やな』
227
セールは
首筋元
(
くびすぢもと
)
からゾクゾクと
寒気
(
さむけ
)
がしだし、
228
真蒼
(
まつさを
)
の
顔
(
かほ
)
をし、
229
暗
(
くら
)
がりに
慄
(
ふる
)
ひながら、
230
セール『コヽヽコラ
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
とやら、
231
諦
(
あきら
)
めたがよからうぞ。
232
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
233
もうかうなつては
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
縁
(
えん
)
がないのだから
覚悟
(
かくご
)
をして
神妙
(
しんめう
)
に
成仏
(
じやうぶつ
)
せい。
234
南無
(
なむ
)
頓生
(
とんしやう
)
菩提
(
ぼだい
)
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
…』
235
カークス『もしセール
様
(
さま
)
、
236
おかげをもつて
本望
(
ほんまう
)
を
遂
(
と
)
げました。
237
どうぞ
昼
(
ひる
)
よりも
明
(
あか
)
く
灯
(
あかり
)
をつけて
下
(
くだ
)
さいませ』
238
セールは
慄
(
ふる
)
ひながら、
239
セール『アヽ
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
。
240
オイ
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
241
灯
(
あかり
)
の
用意
(
ようい
)
だ』
242
『ハイ』と
答
(
こた
)
へてヤク、
243
エールの
両人
(
りやうにん
)
は
蝋燭
(
らふそく
)
を
点
(
てん
)
じて
来
(
き
)
た。
244
セール
外
(
ほか
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
小頭
(
こがしら
)
はびつくり
腰
(
ごし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし
地
(
ち
)
べたに
平太
(
へた
)
つて
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
245
蝋燭
(
らふそく
)
の
火
(
ひ
)
は
幾
(
いく
)
つともなく
点
(
てん
)
ぜられた。
246
よくよく
見
(
み
)
れば、
247
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
248
デビス
姫
(
ひめ
)
、
249
ブラヷーダはニコニコしながらセールの
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
250
牢獄
(
らうごく
)
の
中
(
なか
)
から、
251
カークスは
相変
(
あひかは
)
らず、
252
デビス
姫
(
ひめ
)
の
声色
(
こわいろ
)
にて、
253
カークス『どうぞ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
254
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ。
255
本望
(
ほんまう
)
を
遂
(
と
)
げまして
厶
(
ござ
)
います』
256
ベース『もし
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
257
早
(
はや
)
く
此
(
こ
)
の
戸
(
と
)
をあけて
下
(
くだ
)
さい。
258
幽霊
(
いうれい
)
が
恐
(
おそ
)
ろしう
厶
(
ござ
)
います』
259
外
(
そと
)
のデビス
姫
(
ひめ
)
は
初
(
はじ
)
めて
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
260
デビス『もしセール
様
(
さま
)
、
261
私
(
わたし
)
は
本当
(
ほんたう
)
のデビス
姫
(
ひめ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
262
牢獄
(
らうごく
)
に
居
(
ゐ
)
るのは
私
(
わたし
)
の
替玉
(
かへだま
)
、
263
秘密
(
ひみつ
)
をカークスと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
264
セール『ナヽ
何
(
なん
)
と、
265
お
前
(
まへ
)
は
又
(
また
)
どうして
出
(
で
)
たのか』
266
デビス『ホヽヽヽ
貴方
(
あなた
)
もいい
頓馬
(
とんま
)
ですねえ』
267
ブラヷーダ『もしセールさま、
268
私
(
わたし
)
はブラヷーダで
厶
(
ござ
)
います。
269
永
(
なが
)
らく
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
に
預
(
あづ
)
かりましたネエ』
270
セール『
何
(
なに
)
、
271
お
前
(
まへ
)
はいつの
間
(
ま
)
に
出
(
で
)
たのだ』
272
ブラヷーダ『ハイ、
273
斯
(
か
)
うなつたら
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げますが、
274
ヤク、
275
エール
様
(
さま
)
のお
取計
(
とりはか
)
らひによつて、
276
私
(
わたし
)
は
無事
(
ぶじ
)
に
安全
(
あんぜん
)
地帯
(
ちたい
)
にのがれ、
277
ベースさまを
替玉
(
かへだま
)
に
使
(
つか
)
つたので
厶
(
ござ
)
いますわ。
278
ホヽヽヽ』
279
治道
(
ちだう
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
280
牢獄
(
らうごく
)
の
中
(
なか
)
にて
殺
(
ころ
)
されたりと
見
(
みえ
)
しは
汝
(
なんぢ
)
が
乾児
(
こぶん
)
たりしバットであるぞよ。
281
オイ、
282
バット、
283
もうよい。
284
ヤア、
285
エール、
286
戸口
(
とぐち
)
を
明
(
あ
)
けてやれ』
287
ハイと
答
(
こた
)
へてエールは
忽
(
たちま
)
ち
戸口
(
とぐち
)
をパツと
開
(
ひら
)
いた。
288
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はニコニコしながら
入口
(
いりぐち
)
の
窓
(
まど
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た。
289
セールを
初
(
はじ
)
め
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
小頭
(
こがしら
)
は
早
(
はや
)
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし、
290
口
(
くち
)
をポカンと
明
(
あ
)
けて、
291
真蒼
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をしてゐる。
292
かかる
所
(
ところ
)
へ
暗
(
やみ
)
を
通
(
とほ
)
して
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
、
293
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
294
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立分
(
たてわ
)
ける
295
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
作
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
296
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
297
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
298
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞直
(
ききなほ
)
せ
299
曲
(
まが
)
の
過
(
あやま
)
ち
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
300
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
301
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
かく
)
るとも
302
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
303
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
304
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
305
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
が
306
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
囚
(
とら
)
はれし
307
デビスの
姫
(
ひめ
)
やブラヷーダ
308
二人
(
ふたり
)
の
珍
(
うづ
)
の
御使
(
みつかひ
)
を
309
救
(
すく
)
はむためにハールをば
310
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
ててスタスタと
311
登
(
のぼ
)
りて
茲
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれぬ
312
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
313
定
(
さだ
)
めて
無事
(
ぶじ
)
におはすらむ
314
これの
岩窟
(
いはや
)
の
頭分
(
かしらぶん
)
315
セールは
今
(
いま
)
や
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
る
316
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
出迎
(
でむか
)
へて
317
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
318
心
(
こころ
)
を
直
(
なほ
)
し
霊
(
たま
)
清
(
きよ
)
め
319
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
帰
(
かへ
)
れかし
320
吾
(
われ
)
に
夜光
(
やくわう
)
の
御玉
(
みたま
)
あり
321
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
守
(
まも
)
りつつ
322
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
征伐
(
せいばつ
)
に
323
早
(
はや
)
くも
向
(
むか
)
はせたまひけり
324
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
325
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
326
と
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
場
(
ば
)
にやつて
来
(
く
)
る。
327
三度
(
さんど
)
吃驚
(
びつくり
)
のセールは、
328
地上
(
ちじやう
)
に
頭
(
あたま
)
をくつつけ
涙
(
なみだ
)
をたらして
慄
(
ふる
)
ひ
居
(
ゐ
)
る。
329
是
(
これ
)
よりセールを
初
(
はじ
)
め、
330
其
(
その
)
他
(
た
)
の
盗人
(
ぬすびと
)
共
(
ども
)
は
何
(
いづ
)
れも
悪事
(
あくじ
)
の
恐
(
おそ
)
るべきを
悟
(
さと
)
り、
331
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
悔
(
くひ
)
改
(
あらた
)
め、
332
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
し、
333
向後
(
こうご
)
は
決
(
けつ
)
して
悪事
(
あくじ
)
をなさざる
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
ひ、
334
打
(
う
)
ち
揃
(
そろ
)
ひ
三五
(
あななひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御名
(
みな
)
を
唱
(
とな
)
へ、
335
改悛
(
かいしゆん
)
の
意
(
い
)
を
表
(
あら
)
はした。
336
茲
(
ここ
)
に
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
及
(
およ
)
び
伊太彦
(
いたひこ
)
は
337
又
(
また
)
もやブラヷーダ、
338
デビス
姫
(
ひめ
)
と
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
ち、
339
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひにエルサレムを
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
とした。
340
セールは
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
火
(
ひ
)
を
放
(
はな
)
ち、
341
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
と
共
(
とも
)
に
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で、
342
各自
(
めいめい
)
に
自
(
おの
)
が
郷里
(
きやうり
)
に
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
となつた。
343
ハールは
伊太彦
(
いたひこ
)
に
許
(
ゆる
)
されて、
344
エルサレム
迄
(
まで
)
従
(
したが
)
ひ
往
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
345
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
346
(
大正一二・七・一六
旧六・三
於祥雲閣
加藤明子
録)
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