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第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
01 感謝組
〔1657〕
02 古峽の山
〔1658〕
03 岩侠
〔1659〕
04 不聞銃
〔1660〕
05 独許貧
〔1661〕
06 噴火口
〔1662〕
07 反鱗
〔1663〕
第2篇 地異転変
08 異心泥信
〔1664〕
09 劇流
〔1665〕
10 赤酒の声
〔1666〕
11 大笑裡
〔1667〕
12 天恵
〔1668〕
第3篇 虎熊惨状
13 隔世談
〔1669〕
14 山川動乱
〔1670〕
15 饅頭塚
〔1671〕
16 泥足坊
〔1672〕
17 山颪
〔1673〕
第4篇 神仙魔境
18 白骨堂
〔1674〕
19 谿の途
〔1675〕
20 熊鷹
〔1676〕
21 仙聖郷
〔1677〕
22 均霑
〔1678〕
23 義侠
〔1679〕
第5篇 讃歌応山
24 危母玉
〔1680〕
25 道歌
〔1681〕
26 七福神
〔1682〕
余白歌
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第二六章
七福神
(
しちふくじん
)
〔一六八二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第5篇 讃歌応山
よみ(新仮名遣い):
さんかおうさん
章:
第26章 七福神
よみ(新仮名遣い):
しちふくじん
通し章番号:
1682
口述日:
1923(大正12)年07月18日(旧06月5日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光、加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6526
愛善世界社版:
298頁
八幡書店版:
第11輯 717頁
修補版:
校定版:
311頁
普及版:
135頁
初版:
ページ備考:
001
日
(
ひ
)
の
出別
(
わけの
)
命
(
みこと
)
の
左右
(
さいう
)
には
道彦
(
みちひこ
)
、
002
安彦
(
やすひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
従
(
したが
)
ひ、
003
初稚姫
(
はつわかひめ
)
一行
(
いつかう
)
を
導
(
みちび
)
いて
数百旒
(
すうひやくりう
)
の
五色
(
ごしき
)
の
旗
(
はた
)
を
風
(
かぜ
)
に
翻
(
ひるがへ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
004
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
たるゲッセマネの
園
(
その
)
にと
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
005
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
が
竜王
(
りうわう
)
の
三個
(
さんこ
)
の
玉
(
たま
)
を
捧持
(
ほうぢ
)
して
来
(
きた
)
りし
其
(
その
)
功績
(
こうせき
)
を
賞
(
しやう
)
する
為
(
た
)
め、
006
特
(
とく
)
に
埴安彦
(
はにやすひこの
)
尊
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
により
歓迎宴
(
くわんげいえん
)
が
開
(
ひら
)
かれた。
007
ゲッセマネの
園
(
その
)
には
種々
(
しゆじゆ
)
の
作物
(
つくりもの
)
や、
008
音楽
(
おんがく
)
や
演劇
(
えんげき
)
が
盛
(
さか
)
んに
催
(
もよほ
)
されて
居
(
ゐ
)
た。
009
さうしてコウカス
山
(
さん
)
よりは、
010
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
が
数多
(
あまた
)
の
神司
(
かむつかさ
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れ、
011
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
に
早
(
はや
)
くも
聖地
(
せいち
)
に
到着
(
たうちやく
)
されて
居
(
ゐ
)
た。
012
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
013
真純彦
(
ますみひこ
)
は
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に『
聖地
(
せいち
)
は
結構
(
けつこう
)
な
所
(
ところ
)
の
恐
(
おそ
)
ろしい
所
(
ところ
)
だ』と
誡
(
いまし
)
められ、
014
筋肉
(
きんにく
)
迄
(
まで
)
緊張
(
きんちやう
)
させ
居
(
ゐ
)
たにも
拘
(
かか
)
はらず、
015
この
大袈裟
(
おほげさ
)
の
歓迎
(
くわんげい
)
に
肝
(
きも
)
をつぶし、
016
夢
(
ゆめ
)
かと
許
(
ばか
)
り
呆
(
あき
)
れてゐる。
017
只
(
ただ
)
見
(
み
)
るもの、
018
聞
(
き
)
くもの
意外
(
いぐわい
)
の
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
りで
語
(
かた
)
る
事
(
こと
)
も
知
(
し
)
らず、
019
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
後
(
うしろ
)
について
進
(
すす
)
んで
往
(
ゆ
)
く。
020
日出別
(
ひのでわけ
)
の
神
(
かみ
)
は
俄
(
にはか
)
作
(
づく
)
りの
建物
(
たてもの
)
をさし
示
(
しめ
)
し、
021
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
『サア
皆様
(
みなさま
)
、
022
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
を
慰
(
なぐさ
)
める
為
(
た
)
め、
023
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
思召
(
おぼしめし
)
によつて、
024
種々
(
いろいろ
)
の
余興
(
よきよう
)
が
催
(
もよほ
)
されて
居
(
ゐ
)
ます。
025
これから
此
(
この
)
建造物
(
けんざうぶつ
)
に
於
(
おい
)
て、
026
七福神
(
しちふくじん
)
宝
(
たから
)
の
入船
(
いりふね
)
と
云
(
い
)
ふお
芝居
(
しばゐ
)
が
初
(
はじ
)
まりますから、
027
悠悠
(
ゆつくり
)
気
(
き
)
をゆるして
御覧
(
ごらん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
028
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
しながら、
029
玉国
(
たまくに
)
『いや、
030
どうしてどうして、
031
そんな
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
032
真純彦
(
ますみひこ
)
に
持
(
も
)
たせた
此
(
この
)
宝玉
(
ほうぎよく
)
を、
033
無事
(
ぶじ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
渡
(
わた
)
しする
迄
(
まで
)
は、
034
芝居
(
しばゐ
)
所
(
どころ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ。
035
是
(
これ
)
ばかりは
平
(
ひら
)
にお
恕
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
036
うつかりして
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
で
顛覆
(
てんぷく
)
しては
大変
(
たいへん
)
ですからなア』
037
と
038
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
警戒
(
けいかい
)
し
体
(
からだ
)
を
固
(
かた
)
くして
居
(
ゐ
)
る。
039
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
040
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
御
(
ご
)
到着
(
たうちやく
)
を
祝
(
いは
)
ふために
宝
(
たから
)
の
入船
(
いりふね
)
と
云
(
い
)
ふ
神劇
(
しんげき
)
が
催
(
もよほ
)
されて
居
(
ゐ
)
るのです。
041
貴方
(
あなた
)
も
宝
(
たから
)
を
抱
(
いだ
)
いてヨルダン
河
(
がは
)
を
船
(
ふね
)
にて
渡
(
わた
)
り、
042
この
聖地
(
せいち
)
へお
這
(
はい
)
りになつたのですから、
043
宝
(
たから
)
の
入船
(
いりふね
)
の
主人公
(
しゆじんこう
)
は
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
ですよ』
044
玉国
(
たまくに
)
『ハイ。
045
真純彦
(
ますみひこ
)
、
046
お
前
(
まへ
)
はどう
考
(
かんが
)
へるか。
047
どうも
大教主
(
だいけうしゆ
)
のお
言葉
(
ことば
)
が
私
(
わし
)
には
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
解
(
かい
)
し
兼
(
か
)
ねるのだがなア』
048
真純
(
ますみ
)
『
先生
(
せんせい
)
、
049
これや
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
気
(
き
)
を
引
(
ひ
)
かれて
居
(
ゐ
)
るのかも
知
(
し
)
れませぬよ。
050
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
断
(
ことわ
)
りを
申
(
まをし
)
て、
051
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
埴安彦
(
はにやすひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
渡
(
わた
)
しして
来
(
こ
)
うではありませぬか。
052
さうでなくてはお
芝居
(
しばゐ
)
を
見
(
み
)
る
気
(
き
)
がしませぬわ』
053
初稚
(
はつわか
)
『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
054
這入
(
はい
)
つて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
055
いやいや
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
が
役者
(
やくしや
)
にならねばならぬのですよ。
056
やがて
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
057
伊太彦
(
いたひこ
)
、
058
三千彦
(
みちひこ
)
、
059
デビス
姫
(
ひめ
)
、
060
ブラヷーダさまが
見
(
み
)
えることですから、
061
七福神
(
しちふくじん
)
になつて
貰
(
もら
)
ふ
積
(
つも
)
りです。
062
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
さまは
布袋
(
ほてい
)
、
063
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまが
寿老人
(
じゆらうじん
)
、
064
真純彦
(
ますみひこ
)
さまが
毘沙門天
(
びしやもんてん
)
、
065
伊太彦
(
いたひこ
)
さまが
大黒
(
だいこく
)
さま、
066
三千彦
(
みちひこ
)
さまが
恵比寿
(
ゑびす
)
さま、
067
それから、
068
デビス
姫
(
ひめ
)
さまが
弁財天
(
べんざいてん
)
、
069
と
云
(
い
)
ふやうに、
070
各自
(
めいめい
)
にちやんとお
役
(
やく
)
が
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのです。
071
サアどうぞ
楽屋
(
がくや
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さい。
072
私
(
わたし
)
等
(
たち
)
は
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
ふのです。
073
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
に
役者
(
やくしや
)
になつて
貰
(
もら
)
ふのですから、
074
是
(
これ
)
も
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
だと
思
(
おも
)
つてお
勤
(
つと
)
め
下
(
くだ
)
さいませ』
075
玉国
(
たまくに
)
『ハテナ、
076
些
(
ちつ
)
とも
合点
(
がつてん
)
が
往
(
ゆ
)
きませぬわ。
077
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあれば
俄
(
にはか
)
俳優
(
はいいう
)
になつてもよろしいが、
078
てんで
台詞
(
せりふ
)
が
分
(
わか
)
りませぬからねえ』
079
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
『
台詞
(
せりふ
)
なんか
要
(
い
)
りませぬよ。
080
其
(
その
)
時
(
とき
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
憑
(
うつ
)
つて
口
(
くち
)
を
借
(
か
)
りて
仰有
(
おつしや
)
いますから、
081
承諾
(
しようだく
)
なさればよいのです』
082
真純
(
ますみ
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
083
イヤ
寿老人
(
じゆらうじん
)
さま、
084
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
だ、
085
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
役者
(
やくしや
)
になりませうか』
086
玉国
(
たまくに
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあれば
背
(
そむ
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまい。
087
勤
(
つと
)
めさして
頂
(
いただ
)
きませう。
088
そして
三千彦
(
みちひこ
)
、
089
伊太彦
(
いたひこ
)
はもはや
此方
(
こちら
)
へ
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
りますか。
090
どうしても
吾々
(
われわれ
)
とは
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
後
(
おく
)
れるやうに
思
(
おも
)
ひますがなア』
091
言依別
(
ことよりわけ
)
『
時間
(
じかん
)
空間
(
くうかん
)
を
超越
(
てうゑつ
)
したる
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
、
092
そんな
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
093
直
(
すぐ
)
に
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
へお
出
(
いで
)
になりますよ。
094
総
(
すべ
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御国
(
みくに
)
は
想念
(
さうねん
)
の
世界
(
せかい
)
ですから、
095
想念
(
さうねん
)
の
儘
(
まま
)
になるのです。
096
此処
(
ここ
)
が
外
(
ほか
)
の
地点
(
ちてん
)
とは
違
(
ちが
)
つて
尊
(
たふと
)
い
所以
(
ゆゑん
)
です。
097
さうでなくてはエルサレムと
云
(
い
)
つて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
集
(
あつ
)
まり
遊
(
あそ
)
ばす
道理
(
だうり
)
がありませぬから』
098
玉国
(
たまくに
)
『
左様
(
さやう
)
ならばお
受
(
う
)
け
致
(
いた
)
します』
099
真純
(
ますみ
)
『
私
(
わたし
)
も
先生
(
せんせい
)
と
同様
(
どうやう
)
お
受
(
うけ
)
を
致
(
いた
)
します』
100
と
云
(
い
)
ふや
否
(
いな
)
や、
101
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
は
忽
(
たちま
)
ち
七福神
(
しちふくじん
)
の
中
(
なか
)
の
一人
(
ひとり
)
となつて
居
(
ゐ
)
た。
102
いつの
間
(
ま
)
にやら、
103
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
、
104
三千彦
(
みちひこ
)
、
105
伊太彦
(
いたひこ
)
、
106
デビス
姫
(
ひめ
)
、
107
ブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
りて、
108
何
(
いづ
)
れも
七福神
(
しちふくじん
)
の
姿
(
すがた
)
となつて
居
(
ゐ
)
る。
109
愈
(
いよいよ
)
茲
(
ここ
)
に
七福神
(
しちふくじん
)
宝
(
たから
)
の
入船
(
いりふね
)
の
奉祝
(
ほうしゆく
)
神劇
(
しんげき
)
は
演
(
えん
)
ぜられた。
110
数多
(
あまた
)
の
神司
(
かむつかさ
)
や
信者
(
しんじや
)
は、
111
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
き
建物
(
たてもの
)
の
中
(
なか
)
に、
112
立錐
(
りつすい
)
の
余地
(
よち
)
なき
迄
(
まで
)
に
集
(
あつ
)
まつて、
113
愉快
(
ゆくわい
)
げに
観覧
(
くわんらん
)
し、
114
其
(
その
)
妙技
(
めうぎ
)
を
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
賞揚
(
しやうやう
)
した。
115
神劇
(
しんげき
)
の
次第
(
しだい
)
は
左記
(
さき
)
の
通
(
とほ
)
りであつた。
116
抑
(
そもそも
)
我
(
わが
)
日
(
ひ
)
の
下
(
もと
)
は
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
なり
117
天地
(
てんち
)
ひらけ
陰陽
(
いんやう
)
分
(
わか
)
れ
118
青人草
(
あをひとくさ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
119
万物
(
ばんぶつ
)
爰
(
ここ
)
に
発生
(
はつせい
)
して
120
天地人
(
てんちじん
)
の
三体
(
さんたい
)
備
(
そな
)
はりぬ
121
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
の
太元
(
たいげん
)
は
122
大国常立
(
おほくにとこたち
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
123
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
は
天照皇
(
あまてらすすめ
)
大御神
(
おほみかみ
)
なり
124
地津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
の
太元
(
たいげん
)
は
豊国主
(
とよくにぬし
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
125
又
(
また
)
の
御
(
おん
)
名
(
な
)
は
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
126
豊葦原
(
とよあしはら
)
の
瑞穂
(
みづほ
)
の
国
(
くに
)
産土山
(
うぶすなやま
)
の
127
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
に
宮柱
(
みやばしら
)
太敷
(
ふとしき
)
立
(
た
)
て
128
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
都
(
みやこ
)
を
奠
(
さだ
)
め
賜
(
たま
)
ひしより
129
千代
(
ちよ
)
万代
(
よろづよ
)
に
動
(
ゆる
)
ぎなく
130
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
国土
(
こくど
)
安穏
(
あんのん
)
131
五穀
(
ごこく
)
成就
(
じやうじゆ
)
万民
(
ばんみん
)
鼓腹
(
こふく
)
撃壤
(
げきじやう
)
の
楽
(
たのし
)
みを
享
(
う
)
く
132
実
(
げ
)
に
有難
(
ありがた
)
き
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
の
133
草木
(
くさき
)
も
靡
(
なび
)
く
君
(
きみ
)
が
御代
(
みよ
)
134
かくも
目出度
(
めでたき
)
国
(
くに
)
の
中
(
うち
)
に
135
四海
(
しかい
)
波風
(
なみかぜ
)
豊
(
ゆたか
)
にて
136
雲井
(
くもゐ
)
の
空
(
そら
)
に
寿
(
ほ
)
ぎ
舞
(
ま
)
ふ
鶴
(
つる
)
や
137
千年
(
ちとせ
)
の
松
(
まつ
)
の
緑
(
みどり
)
の
色
(
いろ
)
深
(
ふか
)
く
138
万歳
(
ばんざい
)
の
亀
(
かめ
)
も
楽
(
たの
)
しむ
天教
(
てんけう
)
の
山
(
やま
)
の
139
高
(
たか
)
く
澄
(
す
)
みきる
月
(
つき
)
のあたり
140
たなびく
霞
(
かすみ
)
の
中
(
なか
)
よりも
141
真帆
(
まほ
)
をば
風
(
かぜ
)
に
孕
(
はら
)
ませつ
142
浮
(
う
)
かれ
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
宝
(
たから
)
の
御船
(
みふね
)
143
七五三
(
しめ
)
の
静波
(
しづなみ
)
かきわけて
144
積
(
つ
)
み
込
(
こ
)
む
宝
(
たから
)
の
数々
(
かずかず
)
や
145
まばゆきばかりあたりを
照
(
て
)
らす
146
うるはしさ
147
丁子
(
ちやうし
)
や
分銅
(
ふんどう
)
の
玉
(
たま
)
の
袋
(
ふくろ
)
に
148
黄金
(
こがね
)
の
鍵
(
かぎ
)
もかくれ
蓑
(
みの
)
149
七宝
(
しちぽふ
)
壮厳
(
さうごん
)
の
雨
(
あめ
)
に
濡
(
ぬ
)
れし
150
小笠
(
こがさ
)
の
露
(
つゆ
)
や
玉
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
と
151
打出
(
うちで
)
の
小槌
(
こづち
)
152
七福神
(
しちふくじん
)
の
銘々
(
めいめい
)
が
153
乗合舟
(
のりあひぶね
)
の
話
(
はなし
)
こそ
面白
(
おもしろ
)
き。
154
中
(
なか
)
にも
口
(
くち
)
まめな
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
長
(
なが
)
い
天窓
(
あたま
)
を
振
(
ふ
)
り
立
(
た
)
てて、
155
福禄
(
ふくろく
)
『
天下
(
てんか
)
無双
(
むそう
)
のナイスお
弁
(
べん
)
さま、
156
イナ
弁財
(
べんざい
)
天女
(
てんによ
)
どの、
157
貴女
(
こなた
)
は
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
と
見
(
み
)
えて、
158
こんな
変痴
(
へんち
)
奇珍
(
きちん
)
な
男子
(
だんし
)
計
(
ばか
)
りの
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
へ、
159
案内
(
あんない
)
もせないのに、
160
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
同席
(
どうせき
)
の
栄
(
えい
)
を
賜
(
たま
)
はつたのかな』
161
弁天女
(
べんてんによ
)
は
面
(
おも
)
恥
(
は
)
ゆげに
莞爾
(
くわんじ
)
と
笑
(
ゑ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
162
弁天
(
べんてん
)
『ホヽヽヽ、
163
アノまあ
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
さまの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
とも
覚
(
おぼ
)
えませぬ。
164
好
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
、
165
何程
(
なにほど
)
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
だとて、
166
ナイスだとて、
167
五百
(
ごひやく
)
羅漢堂
(
らかんだう
)
を
覗
(
のぞ
)
いたやうなスタイルして
居
(
ゐ
)
らつしやる
醜男子
(
ぶをとこ
)
の
側
(
そば
)
に
来
(
こ
)
られないと
云
(
い
)
ふ
法律
(
はふりつ
)
は
発布
(
はつぷ
)
されては
居
(
を
)
りますまい。
168
五六七
(
みろく
)
の
御代
(
みよ
)
が
開
(
ひら
)
ける
魁
(
さきがけ
)
として、
169
今度
(
こんど
)
エルサレムの
宮
(
みや
)
に
於
(
おい
)
て、
170
玉照彦
(
たまてるひこの
)
命
(
みこと
)
、
171
玉照姫
(
たまてるひめの
)
命
(
みこと
)
二柱
(
ふたはしら
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
目出度
(
めでた
)
い
御
(
ご
)
婚礼
(
こんれい
)
があるので、
172
御
(
お
)
祝
(
いはひ
)
のため
貴神
(
きしん
)
等
(
ら
)
は、
173
この
宝舟
(
たからぶね
)
に
乗
(
の
)
つて
聖地
(
せいち
)
エルサレムの
竜宮城
(
りうぐうじやう
)
へ
昇
(
のぼ
)
られるのでせう。
174
何程
(
なにほど
)
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
だと
云
(
い
)
つて、
175
男子
(
をとこ
)
許
(
ばか
)
りでは
花
(
はな
)
も
実
(
み
)
もありますまい。
176
昔
(
むかし
)
から
七福神
(
しちふくじん
)
は
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るが、
177
六福神
(
ろくふくじん
)
は
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
い。
178
夫
(
そ
)
れで
妾
(
わたし
)
が
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で、
179
俄
(
にはか
)
に
貴神
(
あなた
)
等
(
たち
)
の
仲間
(
なかま
)
に
加
(
くは
)
はつたのですよ』
180
福禄
(
ふくろく
)
『コレお
弁
(
べん
)
さま、
181
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さるな。
182
この
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
一神
(
いつしん
)
あつても
下
(
した
)
から
読
(
よ
)
み
上
(
あ
)
げて
見
(
み
)
ると
十六福
(
じふろくふく
)
の
神
(
かみ
)
だよ。
183
ヘン
済
(
す
)
みませぬナア。
184
そこへ
寿老人
(
じゆらうじん
)
(
十六神
(
じふろくじん
)
)を
加
(
くは
)
へて
三十二
(
さんじふに
)
神
(
しん
)
ですよ
185
アハヽヽヽヽ。
186
それよりも
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
話
(
ばなし
)
でも
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
つた
上
(
うへ
)
、
187
都合
(
つがふ
)
によつて
加
(
くは
)
へて
上
(
あ
)
げようかい』
188
弁天
(
べんてん
)
『
三十二
(
さんじふに
)
神
(
しん
)
の
処
(
ところ
)
へ
妾
(
わたし
)
が
一神
(
いつしん
)
加
(
くは
)
はれば、
189
三十三
(
さんじふさん
)
相
(
さう
)
の
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
ですよ。
190
一神
(
いつしん
)
欠
(
か
)
けても
三十三魂
(
みづみたま
)
にはなりますまい。
191
女
(
をんな
)
は
社交
(
しやかう
)
上
(
じやう
)
の
花
(
はな
)
ですからねー。
192
妾
(
わたし
)
の
素性
(
すじやう
)
を
一通
(
ひととほ
)
り
聞
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げますから、
193
十六神
(
じふろくじん
)
さま
謹聴
(
きんちやう
)
なさいませ
194
ホヽヽヽヽ』
195
六福
(
ろくふく
)
『
謹聴
(
きんちやう
)
々々
(
きんちやう
)
ヒヤヒヤ』
196
弁天
(
べんてん
)
『
妾
(
わたし
)
は
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
の
或
(
あ
)
る
歳
(
とし
)
、
197
頃
(
ころ
)
は
弥生
(
やよひ
)
の
己
(
つちのと
)
の
巳日
(
みのひ
)
、
198
二本竹
(
にほんだけ
)
の
根節
(
ねぶし
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
199
動
(
ゆる
)
ぎ
出
(
い
)
でたる
嶋
(
しま
)
だと
云
(
い
)
ふので、
200
竹生島
(
たけのしま
)
と
称
(
とな
)
へられる、
201
裏
(
うら
)
の
国
(
くに
)
の
琵琶
(
びは
)
の
湖
(
みづうみ
)
に
浮
(
うか
)
べる
一
(
ひと
)
つの
嶋
(
しま
)
に、
202
天降
(
あまくだ
)
りました
天女
(
てんによ
)
の
中
(
なか
)
でも、
203
最
(
もつと
)
も
勝
(
すぐ
)
れたナイスの
乙女
(
をとめ
)
ですよ。
204
自分
(
じぶん
)
から
申
(
まを
)
しますと
何
(
な
)
んだか
自慢
(
じまん
)
するやうですが、
205
神徳
(
しんとく
)
があまりあらたかなと
言
(
い
)
ふので、
206
世人
(
せじん
)
より
妙音
(
めうおん
)
弁財
(
べんざい
)
天女
(
てんによ
)
と
崇
(
あが
)
められ、
207
妾
(
わらは
)
の
身体
(
からだ
)
は
引
(
ひつ
)
張
(
ぱ
)
り
凧
(
だこ
)
の
様
(
やう
)
に
日
(
ひ
)
の
下
(
もと
)
の
国
(
くに
)
の
四方
(
しはう
)
に
分霊
(
ぶんれい
)
を
祭
(
まつ
)
られて
居
(
を
)
ります。
208
先
(
ま
)
づ
東
(
ひがし
)
の
国
(
くに
)
では
江
(
え
)
の
島
(
しま
)
、
209
西
(
にし
)
の
国
(
くに
)
では
宮嶋
(
みやじま
)
に、
210
今
(
いま
)
一体
(
いつたい
)
は
勿体
(
もつたい
)
なくも
古
(
いにしへ
)
、
211
伊邪那岐
(
いざなぎの
)
尊
(
みこと
)
、
212
伊邪那美
(
いざなみの
)
尊
(
みこと
)
の
二柱
(
ふたはしら
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
天
(
あめ
)
の
浮橋
(
うきはし
)
に
渡
(
わた
)
らせたまひ、
213
大海原
(
おほうなばら
)
に
天降
(
あまくだ
)
り、
214
始
(
はじ
)
めて
開
(
ひら
)
かれたる
淤能碁呂
(
おのごろ
)
嶋
(
じま
)
、
215
その
時
(
とき
)
、
216
鶺鴒
(
せきれい
)
と
云
(
い
)
ふ
小鳥
(
ことり
)
に
夫婦
(
ふうふ
)
の
道
(
みち
)
を
教
(
をし
)
へられ、
217
天照
(
あまてらす
)
大神
(
おほかみ
)
を
生
(
う
)
み
給
(
たま
)
ふてより、
218
又
(
また
)
一名
(
いちめい
)
を
日
(
ひ
)
の
出嶋
(
でじま
)
と
名付
(
なづ
)
けられ、
219
この
国人
(
くにびと
)
に
帰依
(
きえ
)
せられ、
220
福徳
(
ふくとく
)
を
授
(
さづ
)
けしによつて、
221
美人
(
びじん
)
賢婦
(
けんぷ
)
の
標本
(
へうほん
)
として
七福神
(
しちふくじん
)
の
列
(
れつ
)
に
加
(
くは
)
はつた
事
(
こと
)
は、
222
十六
(
じふろく
)
福神
(
ふくじん
)
さまも
遠
(
とほ
)
うの
昔
(
むかし
)
に
御
(
ご
)
存知
(
ぞんぢ
)
の
筈
(
はず
)
。
223
アナタも
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
でなくて、
224
モウロク(
最
(
も
)
う
六
(
ろく
)
)
十三
(
じふさん
)
になりましたねー、
225
ホヽヽヽヽ』
226
福禄
(
ふくろく
)
『ヒドイなア』
227
六福
(
ろくふく
)
『アハヽヽ。
228
オホヽヽヽヽヽ』
229
顔色
(
かほいろ
)
の
黒
(
くろ
)
いのを
自慢
(
じまん
)
の
大黒天
(
だいこくてん
)
は、
230
槌
(
つち
)
を
持
(
も
)
つた
儘
(
まま
)
座
(
ざ
)
に
直
(
なほ
)
り、
231
大黒
(
だいこく
)
『
弁天
(
べんてん
)
ナイスの
今
(
いま
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いた
以上
(
いじやう
)
は
拙者
(
せつしや
)
も
男
(
をとこ
)
だ。
232
一
(
ひと
)
つ
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
話
(
ばなし
)
を
初
(
はじ
)
めて
見
(
み
)
よう。
233
一同
(
いちどう
)
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
ながら
御
(
お
)
聴聞
(
きき
)
なさいませ。
234
抑
(
そもそ
)
も
拙者
(
せつしや
)
は、
235
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
御子
(
みこ
)
にて、
236
八百米
(
やほよね
)
杵築
(
きづき
)
の
宮
(
みや
)
に
鎮
(
しづ
)
まりし、
237
大国主
(
おほくにぬしの
)
命
(
みこと
)
でござる。
238
生
(
うま
)
れつきの
慈悲心
(
じひしん
)
包
(
つつ
)
むに
由
(
よし
)
なく、
239
貧
(
まづ
)
しき
者
(
もの
)
を
見
(
み
)
るに
付
(
つ
)
け、
240
不便
(
ふびん
)
さ
忍
(
しの
)
び
難
(
がた
)
く、
241
一切
(
いつさい
)
の
衆生
(
しゆじやう
)
に
福徳
(
ふくとく
)
を
与
(
あた
)
へむとして
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
き、
242
チンチンチン
一
(
いち
)
に
米俵
(
たはら
)
を
踏
(
ふん
)
まへて、
243
二
(
に
)
に
賑
(
にぎ
)
はしう
治
(
をさ
)
めて、
244
三
(
さん
)
に
栄
(
さか
)
えの
基
(
もと
)
となり、
245
四
(
よつ
)
ツ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
悦
(
よろこ
)
んで、
246
五
(
いつ
)
ツいつも
機嫌
(
きげん
)
よく、
247
六
(
むつ
)
ツ
無病
(
むびやう
)
息災
(
そくさい
)
で、
248
七
(
なな
)
ツ
難事
(
なんこと
)
もないやうに、
249
八
(
やつ
)
ツ
屋敷
(
やしき
)
を
開
(
ひら
)
ひて、
250
九
(
ここの
)
ツ
花
(
はな
)
の
倉
(
くら
)
を
建
(
た
)
て、
251
十分
(
じふぶん
)
満
(
みつ
)
ればこぼるるぞ。
252
コレ
此
(
この
)
槌
(
つち
)
は
福
(
ふく
)
を
打
(
うち
)
出
(
だ
)
す
槌
(
つち
)
ぢやない、
253
お
土
(
つち
)
を
大切
(
たいせつ
)
にして
生命
(
いのち
)
の
種
(
たね
)
のお
米
(
よね
)
を
作
(
つく
)
れと
知
(
し
)
らすためぢや。
254
モ
一
(
ひと
)
つには
奢
(
おご
)
れる
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
の
天窓
(
あたま
)
をば
打
(
うち
)
砕
(
くだ
)
く
槌
(
つち
)
ぢやわい。
255
アハヽヽヽヽ』
256
福禄
(
ふくろく
)
『アハヽヽヽヽ、
257
コリヤ
御尤
(
ごもつと
)
もだ。
258
オイ
戎
(
えびす
)
、
259
コレサ
聾
(
つんぼ
)
どの、
260
エベスどの エベスどの エベスどの
261
貴神
(
こなた
)
は、
262
マア
舳
(
へさき
)
に
出
(
で
)
て
釣
(
つり
)
許
(
ばか
)
りして
厶
(
ござ
)
るは
一体
(
いつたい
)
、
263
こなたは
何
(
ど
)
う
云
(
い
)
ふ
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
ぢやい。
264
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
にも
色々
(
いろいろ
)
あつて、
265
雑巾
(
ざふきん
)
を
持
(
も
)
つて
縁板
(
えんいた
)
などをフクの
神
(
かみ
)
もあれば、
266
尻
(
しり
)
をフクの
紙
(
かみ
)
もある。
267
きつぱりと
素性
(
すじやう
)
を
明
(
あ
)
かして
呉
(
く
)
れないか』
268
戎
(
えびす
)
『
俺
(
おれ
)
かい。
269
おれはナ、
270
何事
(
なにごと
)
も
聞
(
き
)
かざる、
271
見
(
み
)
ざる、
272
言
(
い
)
はざると
云
(
い
)
つて、
273
庚申
(
かうしん
)
の
眷属
(
けんぞく
)
を
気取
(
きど
)
り、
274
三猿
(
さんゑん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
固守
(
こしゆ
)
し、
275
只
(
ただ
)
堪忍
(
かんにん
)
をのみ
守
(
まも
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
276
徳
(
とく
)
は
堪忍
(
かんにん
)
五万歳
(
ごまんざい
)
だ。
277
抑
(
そもそ
)
も
拙者
(
せつしや
)
は、
278
蛭子
(
ひるこ
)
の
命
(
みこと
)
と
云
(
い
)
つて、
279
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
寅
(
とら
)
の
一天
(
いつてん
)
に
誕生
(
たんじやう
)
した
若蛭子
(
わかえびす
)
だ。
280
商売
(
しやうばい
)
繁昌
(
はんぜう
)
を
祈
(
いの
)
るが
故
(
ゆゑ
)
に
281
欲
(
よく
)
の
深
(
ふか
)
い
連中
(
れんぢう
)
から
商売
(
あきなひ
)
の
神
(
かみ
)
と
崇
(
あが
)
められて
居
(
を
)
るのだ。
282
誠
(
まこと
)
に
目出度
(
めでた
)
う
候
(
さふら
)
ひけるだ、
283
アハヽヽヽヽ。
284
十日
(
とをか
)
戎
(
えびす
)
の
売物
(
うりもの
)
は、
285
はぜ
袋
(
ふくろ
)
に、
286
取鉢
(
とりばち
)
、
287
銭
(
ぜに
)
がます、
288
小判
(
こばん
)
に
金箱
(
かねばこ
)
、
289
立
(
たて
)
烏帽子
(
ゑぼし
)
、
290
桝
(
ます
)
に
財槌
(
さいづち
)
、
291
束熨斗
(
たばねのし
)
、
292
お
笹
(
ささ
)
をかたげて
千鳥足
(
ちどりあし
)
』
293
大黒
(
だいこく
)
『アヽコレコレ
294
さう
踊
(
をど
)
り
廻
(
まは
)
すと
船
(
ふね
)
の
上
(
うへ
)
は
危険
(
けんのん
)
だ。
295
モウ
良
(
よ
)
いモウ
良
(
よ
)
い
296
御
(
ご
)
中止
(
ちゆうし
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
297
大黒
(
だいこく
)
『エヽ
時
(
とき
)
に
寿老人
(
じゆらうじん
)
殿
(
どの
)
、
298
貴神
(
こなた
)
は
何時
(
いつ
)
も
何時
(
いつ
)
も
渋
(
しぶ
)
い
面
(
かほ
)
をして
落付
(
おちつき
)
払
(
はら
)
つて
厶
(
ござ
)
るが、
299
こんな
芽出度
(
めでた
)
い
時
(
とき
)
には、
300
チツと
笑
(
わら
)
つて
見
(
み
)
せても
可
(
い
)
いぢやないか』
301
寿老
(
じゆらう
)
『イヤ
是
(
これ
)
は
又
(
また
)
迷惑
(
めいわく
)
千万
(
せんばん
)
、
302
物価
(
ぶつか
)
謄貴
(
とうき
)
生活難
(
せいくわつなん
)
の
声
(
こゑ
)
喧
(
やかま
)
しき、
303
この
辛
(
から
)
い
時節
(
じせつ
)
に、
304
あまい
顔
(
かほ
)
をせよとは、
305
粋
(
すゐ
)
にして
且
(
か
)
つ
賢明
(
けんめい
)
なる
方々
(
かたがた
)
にも
似合
(
にあは
)
ぬお
言葉
(
ことば
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか。
306
拙者
(
せつしや
)
は
何時
(
いつ
)
も
苦
(
にが
)
い
顔
(
かほ
)
をして
倹約
(
けんやく
)
を
第一
(
だいいち
)
と
守
(
まも
)
り、
307
郵便
(
ゆうびん
)
貯金
(
ちよきん
)
を
沢山
(
たくさん
)
にして、
308
他人
(
たにん
)
に
損
(
そん
)
をかけず、
309
自分
(
じぶん
)
も
損
(
そん
)
を
致
(
いた
)
さねば、
310
心労
(
しんらう
)
なき
故
(
ゆゑ
)
、
311
長命
(
ちやうめい
)
を
仕
(
つかまつ
)
るのぢや。
312
長命
(
ちやうめい
)
に
過
(
す
)
ぎたる
宝
(
たから
)
は
厶
(
ござ
)
らぬ。
313
兎角
(
とかく
)
、
314
拙者
(
せつしや
)
の
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
を
見習
(
みなら
)
へば、
315
たとへ
福
(
ふく
)
は
授
(
さづ
)
からなくとも、
316
自然
(
しぜん
)
に
福徳
(
ふくとく
)
が
保
(
たも
)
てますぞや』
317
福禄
(
ふくろく
)
『ヘン、
318
何程
(
なにほど
)
長命
(
ちやうめい
)
したとて、
319
ソンナ
苦
(
にが
)
い
顔
(
かほ
)
をして
一生
(
いつしやう
)
送
(
おく
)
るのなら、
320
余
(
あま
)
り
福徳
(
ふくとく
)
でも
在
(
あ
)
るまい。
321
笑
(
わら
)
つて
暮
(
くら
)
すのが、
322
何
(
なに
)
より
人生
(
じんせい
)
の
幸福
(
かうふく
)
だ。
323
高利貸
(
かうりがし
)
の
親父
(
おやぢ
)
でも、
324
たまには
笑
(
わら
)
ふぢやないか。
325
ナア、
326
皆
(
みな
)
の
福神
(
ふくじん
)
連中
(
れんちう
)
さま』
327
寿老
(
じゆらう
)
『イヤ
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
る。
328
併
(
しか
)
し
自分
(
じぶん
)
は
是
(
これ
)
でも
人
(
ひと
)
の
知
(
し
)
らぬ
心
(
こころ
)
のよろこびに
充
(
み
)
ちて、
329
楽
(
たの
)
しく
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
330
サテ、
331
愚老
(
ぐらう
)
許
(
ばか
)
りお
喋舌
(
しやべり
)
いたして
皆様
(
みなさま
)
の
交際
(
つきあひ
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
332
余
(
あま
)
りの
楽
(
たの
)
しさと、
333
面白
(
おもしろ
)
さと、
334
今度
(
こんど
)
の
御
(
ご
)
婚礼
(
こんれい
)
の
目出度
(
めでた
)
さとに
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られて、
335
アハヽヽヽヽ。
336
サア
是
(
これ
)
からお
交際
(
つきあひ
)
申
(
まを
)
さう』
337
と
傍
(
かたはら
)
にあり
合
(
あ
)
ふ
妻琴
(
つまごと
)
を
引
(
ひき
)
寄
(
よ
)
せ
掻
(
か
)
きならし、
338
(
歌
(
うた
)
)『
忍
(
しの
)
ぶ
身
(
み
)
や
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
なもゆる
沢
(
さは
)
の
螢火
(
ほたるび
)
に
夜更
(
よふけ
)
渡
(
わた
)
りぬる』
339
寿老
(
じゆらう
)
『
余
(
あま
)
り
長
(
なが
)
いのは
皆様
(
みなさま
)
のさはりになる。
340
長
(
なが
)
い
者
(
もの
)
を
俗
(
ぞく
)
に
長者
(
ちやうじや
)
と
言
(
い
)
ふさうぢや。
341
ヤ、
342
是
(
これ
)
はしたり、
343
長
(
なが
)
い
者
(
もの
)
とは
福禄寿
(
げほう
)
様
(
さま
)
へ
差
(
さし
)
合
(
あひ
)
ました。
344
失礼
(
しつれい
)
々々
(
しつれい
)
』
345
布袋
(
ほてい
)
和尚
(
をしやう
)
は
吹
(
ふき
)
出
(
だ
)
して、
346
布袋
(
ほてい
)
『アハヽヽヽアハヽヽヽ、
347
オホヽヽヽ、
348
ハテ、
349
コリヤ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い ハヽヽヽヽヽ
奇妙
(
きめう
)
々々
(
きめう
)
』
350
毘沙門天
(
びしやもんてん
)
は、
351
むつとした
顔
(
かほ
)
しながら、
352
毘沙
(
びしや
)
『ヤイ、
353
そこな
土仏
(
どぶつ
)
坊主
(
ばうず
)
奴
(
め
)
。
354
何
(
なに
)
がそれ
程
(
ほど
)
可笑
(
をか
)
しいのだい。
355
袋
(
ふくろ
)
と
腹
(
はら
)
とで
乗合船
(
のりあひぶね
)
の
居所
(
ゐどころ
)
を
狭
(
せば
)
めて
居
(
ゐ
)
る
癖
(
くせ
)
に、
356
チツと
位
(
くらゐ
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
召
(
め
)
さつても
可
(
い
)
いだらう』
357
布袋
(
ほてい
)
『アヽ、
358
コレコレ
毘沙
(
びしや
)
殿
(
どの
)
。
359
さう
腹立
(
はらたて
)
まいぞや、
360
腹立
(
はらたて
)
まいぞや、
361
立腹
(
たてはら
)
まいぞや。
362
少々
(
せうせう
)
は
乗合
(
のりあひ
)
の
邪魔
(
じやま
)
にも
成
(
な
)
るだらうが、
363
ソコは
仲間
(
なかま
)
の
事
(
こと
)
だから、
364
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
してマアマア
曰
(
いは
)
く
因縁
(
いんねん
)
を
聞
(
き
)
き
玉
(
たま
)
へ。
365
夫
(
そ
)
れ
一家
(
いつか
)
一門
(
いちもん
)
附合
(
つきあひ
)
、
366
朋友
(
ほういう
)
、
367
得意先
(
とくいさき
)
、
368
丸
(
まる
)
う
無
(
な
)
くては
治
(
をさ
)
まらないと
云
(
い
)
ふ
道理
(
だうり
)
は、
369
拙者
(
せつしや
)
のこの
天窓
(
あたま
)
で
判
(
わか
)
るだらう。
370
眼
(
め
)
まで
丸
(
まる
)
い
布袋
(
ほてい
)
和尚
(
をしやう
)
だ、
371
ハヽヽヽヽ。
372
まつた
腹
(
はら
)
は
大
(
おほ
)
きくなければ、
373
心
(
こころ
)
がさもしいものだ。
374
そこで
愚僧
(
ぐそう
)
が
此
(
この
)
大
(
おほ
)
きい
腹
(
はら
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
し、
375
腹鼓
(
はらつづみ
)
を
打
(
う
)
つて
一通
(
ひととほ
)
りお
話
(
はなし
)
致
(
いた
)
すで
厶
(
ござ
)
らう。
376
「ソレ、
377
この
袋
(
ふくろ
)
といつぱ」
見
(
み
)
たる
事
(
こと
)
聞
(
き
)
きたる
事
(
こと
)
、
378
よしあし
共
(
とも
)
に
忘
(
わす
)
れぬ
様
(
やう
)
、
379
中
(
なか
)
へ
納
(
をさ
)
めて
斯
(
こ
)
の
通
(
とほ
)
り、
380
もたれて
居
(
ゐ
)
申
(
まう
)
すなり。
381
又
(
また
)
世
(
よ
)
に
子宝
(
こだから
)
と
云
(
い
)
へるが、
382
稚
(
おさな
)
き
者
(
もの
)
ほど
可愛者
(
かあいもの
)
はあり
申
(
まを
)
さぬ。
383
その
稚
(
おさな
)
き
者
(
もの
)
を
団扇
(
うちは
)
を
持
(
も
)
つて
行司
(
ぎやうじ
)
仕
(
つかまつ
)
り
居
(
を
)
り
候
(
さふらふ
)
也
(
なり
)
。
384
アヽ
宜
(
よ
)
き
楽
(
たのし
)
みかな
宜
(
よ
)
き
楽
(
たのし
)
みかな』
385
福禄
(
ふくろく
)
『イヤ
布袋
(
ほてい
)
どの、
386
尤
(
もつと
)
も
尤
(
もつと
)
も、
387
尤
(
もつと
)
も
次手
(
ついで
)
に
笑
(
わら
)
はしやるのも
尤
(
もつと
)
も
尤
(
もつと
)
も。
388
「
笑
(
わら
)
ふ
門
(
かど
)
へは
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
」サレバお
咄
(
はな
)
し
申
(
まを
)
しませう。
389
夫
(
そ
)
れ
天窓
(
あたま
)
が
長
(
なが
)
ければ
背
(
せ
)
はズント
低
(
ひく
)
う
厶
(
ござ
)
る。
390
低
(
ひく
)
うなければ
愛嬌
(
あいけう
)
を
失
(
うしな
)
ひます。
391
先
(
ま
)
づ
入口
(
いりぐち
)
を
這入
(
はい
)
るにも
長
(
なが
)
いによつて
余
(
あま
)
ります。
392
天窓
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて
這入
(
はい
)
ります。
393
それで
愛嬌
(
あいけう
)
が
厶
(
ござ
)
るだらうがの、
394
愛嬌
(
あいけう
)
ついでに
皆
(
みな
)
さま、
395
おはやし
頼
(
たの
)
みます。
396
「
越後
(
えちご
)
の
国
(
くに
)
の
角兵衛
(
かくべゑ
)
獅子
(
じし
)
、
397
国
(
くに
)
を
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
や、
398
親子
(
おやこ
)
連
(
づ
)
れ、
399
獅子
(
しし
)
をかぶりて、
400
くるりと
廻
(
まは
)
つて、
401
首
(
くび
)
をふりまする、
402
親父
(
おやぢ
)
や、
403
まじめで
笛
(
ふえ
)
を
吹
(
ふ
)
く」
404
ヨー、
405
ハヽヽヽヽ
福禄寿
(
げほう
)
さま、
406
大当
(
おほあた
)
りだ
大当
(
おほあた
)
りだ。
407
アハヽヽヽヽ』
408
六福
(
ろくふく
)
『
併
(
しか
)
し
獅子
(
しし
)
の
頭
(
あたま
)
が
少々
(
せうせう
)
高過
(
たかす
)
ぎるぢやないか。
409
ハヽヽヽヽ』
410
福禄
(
ふくろく
)
『ハテ、
411
頭
(
あたま
)
が
高
(
たか
)
うもなければ
納
(
をさ
)
まらぬ
事
(
こと
)
もある
物
(
もの
)
だ。
412
是
(
これ
)
もやつぱり
世界
(
せかい
)
の
道具
(
だうぐ
)
だからのう。
413
ハヽヽヽヽ』
414
毘沙門天
(
びしやもんてん
)
は
居
(
ゐ
)
直
(
なほ
)
りて、
415
毘沙
(
びしや
)
『ムヽヽヽヽ、
416
ハヽヽヽヽ
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し、
417
吾
(
われ
)
は
異形
(
いぎやう
)
の
姿
(
すがた
)
にて
鉾
(
ほこ
)
携
(
たづさ
)
へし
身
(
み
)
乍
(
なが
)
らも、
418
七福神
(
しちふくじん
)
の
列
(
れつ
)
に
加
(
くは
)
はる
其
(
その
)
由来
(
ゆらい
)
を
物語
(
ものがた
)
らむ。
419
そも
不身持
(
ふみもち
)
山
(
やま
)
の
皆
(
みな
)
身
(
み
)
(
南
(
みなみ
)
)に
当
(
あた
)
りて
難渋
(
なんじう
)
ケ
嶽
(
だけ
)
の
峰
(
みね
)
に
住
(
す
)
む、
420
貧乏
(
びんばふ
)
困神
(
こんじん
)
とて
悪神
(
あくがみ
)
あり、
421
彼
(
かれ
)
に
徒党
(
とたう
)
の
奴原
(
やつばら
)
を
悉
(
ことごと
)
く
誠罰
(
せいばつ
)
し
諸人
(
しよにん
)
の
患
(
わづらひ
)
を
救
(
すく
)
はむと、
422
この
日
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
に
天降
(
あまくだ
)
り、
423
日出
(
ひいづ
)
る
国
(
くに
)
信貴山
(
のぶたかやま
)
に
根城
(
ねじろ
)
を
構
(
かま
)
へ、
424
追付
(
おつつく
)
悪神
(
あくがみ
)
討
(
うち
)
亡
(
ほろ
)
ぼし、
425
困窮
(
こんきう
)
の
根
(
ね
)
をたやさむこと、
426
此
(
この
)
多聞天
(
たもんてん
)
が
方寸
(
はうすん
)
の
内
(
うち
)
にあり、
427
ハヽヽハヽヽハヽヽヽヽ、
428
悦
(
よろこ
)
ばしや
嬉
(
うれ
)
しや』
429
と
勇
(
いさ
)
める
顔色
(
がんしよく
)
、
430
威
(
ゐ
)
あつて
尊
(
たふと
)
く、
431
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
き
霊験
(
れいけん
)
なり。
432
皆
(
みな
)
一同
(
いちどう
)
にあふぎ
立
(
た
)
て、
433
中
(
なか
)
に
取分
(
とりわ
)
け
弁財天
(
べんざいてん
)
。
434
弁天
(
べんてん
)
『
何
(
いづ
)
れに、
435
おろかは
無
(
な
)
けれども、
436
多聞天
(
たもんてん
)
のおん
物語
(
ものがたり
)
、
437
勇
(
いさ
)
ましや。
438
イザヤ
発船
(
ほつせん
)
、
439
又
(
また
)
の
御
(
ご
)
げん』
440
とのたまふにぞ、
441
さらばさらばと
漕
(
こ
)
ぎよせて、
442
竜宮館
(
りうぐうやかた
)
の
水
(
みづ
)
の
面
(
も
)
に、
443
清
(
きよ
)
き
宝
(
たから
)
の
入船
(
いりふね
)
や、
444
七福神
(
しちふくじん
)
の
霊験
(
れいけん
)
も、
445
仁義
(
じんぎ
)
釈教
(
しやくけう
)
、
446
恋無常
(
こひむじやう
)
、
447
勧善
(
くわんぜん
)
懲悪
(
ちようあく
)
聞明
(
ぶんめい
)
し、
448
改過
(
かいくわ
)
を
作
(
つく
)
るその
主
(
ぬし
)
は、
449
近松
(
ちかまつ
)
ならで
松
(
まつ
)
の
元
(
もと
)
、
450
一
(
ひ
)
とふし
込
(
こめ
)
し、
451
竹本
(
たけもと
)
ならぬ
国武彦
(
くにたけひこ
)
の
御
(
おん
)
助
(
たす
)
け、
452
梅
(
うめ
)
の
香
(
か
)
床
(
ゆか
)
しき
一輪
(
いちりん
)
の、
453
花
(
はな
)
の
流
(
なが
)
れや
汲
(
く
)
み
取
(
と
)
る
綾
(
あや
)
の、
454
聖地
(
せいち
)
の
玉
(
たま
)
の
井
(
ゐ
)
に、
455
映
(
うつ
)
る
言霊
(
ことたま
)
影
(
かげ
)
きよく、
456
照
(
て
)
り
輝
(
かがや
)
きし
玉照姫
(
たまてるひめ
)
や、
457
暗
(
やみ
)
をも
照
(
て
)
らす
玉照彦
(
たまてるひこ
)
二柱
(
ふたはしら
)
、
458
九
(
く
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
の
慶
(
よろこ
)
びを、
459
筆
(
ふで
)
にうつして
末
(
すゑ
)
広
(
ひろ
)
く、
460
伝
(
つた
)
へ
栄
(
さか
)
ゆる
神祝
(
かむほ
)
ぎの、
461
尽
(
つ
)
きせぬ
神代
(
みよ
)
こそ
芽出度
(
めでた
)
けれ。
462
(
大正一二・七・一八
旧六・五
北村隆光・加藤明子
共録)
463
(昭和一〇・六・一六 王仁校正)
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