霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第三章 山出女(やまだしをんな)〔一七二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第1篇 名花移植 よみ(新仮名遣い):めいかいしょく
章:第3章 山出女 よみ(新仮名遣い):やまだしおんな 通し章番号:1727
口述日:1925(大正14)年01月28日(旧01月5日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
馬鹿論:普通一般の定規で律することの出来ない馬鹿者にこそ、無限の妙味がある。小利口な人間の方が、日々目先の利を争い、自らの身を削り、かえって苦しんでいる。大才大智の者ほど、普段はその才を出さず「馬鹿者」と思われていても、いざというときに本能をあらわし、世間を驚かすものである。
さて、ハンナとタンヤはアリナが追跡していることも知らず、シャカンナの隠れ家にやってきた。シャカンナはすぐにハンナとタンヤの意図を見抜いて啖呵を切るが、多勢に無勢、タンヤとハンナに気絶させられてしまう。スバール姫も抵抗するが、ねじ伏せられてしまう。
後からやってきたアリナはスバールの悲鳴を聞いて走り来、二人の山賊を川へ放り投げてしまう。
アリナは、二人に都へ出ることを申し出る。シャカンナは辞退し、しばらく山にとどまることになるが、スバール姫はアリナに伴われて都へ上っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-06-09 21:20:09 OBC :rm6803
愛善世界社版:44頁 八幡書店版:第12輯 166頁 修補版: 校定版:44頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎著作集 > 第二巻「変革と平和」 > 第三部 『霊界物語』の思想 > 衡平運動
001 世人(せじん)相棒(あひぼう)にも使(つか)はれず、002何事(なにごと)にも茫然(ばうぜん)として無関心(むくわんしん)馬鹿者(ばかもの)(ぐらゐ)003()(なか)幸福(かうふく)にして(かつ)(つよ)いものはない。004そこに馬鹿者(ばかもの)無限(むげん)妙味(めうみ)存在(そんざい)するのである。005馬鹿(ばか)(ほとん)人間(にんげん)不可抗力(ふかかうりよく)(そな)へた(もの)称号(しようがう)である。006(もと)よりせせこましい、007齷齪(あくそく)たる普通(ふつう)一般(いつぱん)規矩(きく)定木(ぢやうぎ)(もつ)(りつ)することの出来(でき)ない(こま)(もの)である。008古往(こわう)今来(こんらい)(やう)東西(とうざい)()はず、009如何(いか)なる医学(いがく)博士(はかせ)耆婆(きば)扁鵲(へんじやく)も、010サツパリ(さぢ)()げて、011……アーア馬鹿(ばか)につける(くすり)がない……と歎息(たんそく)し、012豊臣(とよとみ)太閤(たいかふ)も、013馬鹿(ばか)(やみ)()(ほど)(おそ)ろしいものはないと()つて、014恐怖心(きようふしん)(おそ)はれ、015(なに)(ほど)厳格(げんかく)なる規則(きそく)(もと)におかれるも、016彼奴(あいつ)馬鹿(ばか)だから」との一言(いちごん)無限(むげん)責任(せきにん)免除(めんぢよ)され、017いよいよ(ねん)のいつた阿呆(あはう)になると、018白痴(はくち)瘋癲(ふうてん)称号(しやうがう)(いただ)いて、019犯罪(はんざい)法律(はふりつ)制裁(せいさい)(くは)へられず、020(さら)馬鹿(ばか)(かさ)なつて、021馬鹿(ばか)々々(ばか)しい(やつ)」と(わら)はれた(とき)022人間(にんげん)万事(ばんじ)一切(いつさい)欠点(けつてん)公々然(こうこうぜん)(ゆる)され、023(かへつ)愛嬌者(あいけうもの)()(はや)される。024(また)馬鹿(ばか)金看板(きんかんばん)(かか)げて、025浮世(うきよ)(なか)をヤミクモに(おし)(わた)(とき)は、026(むか)(ところ)(ほと)んど敵影(てきえい)なく、027毫末(がうまつ)心配(しんぱい)もいらぬ。028()(なか)人間(にんげん)から小才子(こざいし)()ばれ、029小悧巧(こりかう)(とな)へられてゐる(やつ)()は、030(いづ)れも平常(へいぜい)031()(やう)な、032突張(つつぱ)(どころ)のない、033毀誉(きよ)褒貶(ほうへん)(ちまた)(とび)まはり、034餓鬼(がき)(しよく)(あらそ)(ごと)き、035ホンの()(まへ)成敗(せいばい)や、036利害(りがい)(つか)()ひ、037昼夜(ちうや)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)(つづ)けて一生(いつしやう)(をは)(もの)(おほ)い。038(しか)るに悠々(いういう)閑々(かんかん)として、039(この)面白(おもしろ)人間(にんげん)(かく)場所(ばしよ)は、040馬鹿者(ばかもの)名称(めいしよう)たる(こと)()らず、041ワザとに(あせ)()らして(わが)一身(いつしん)小刀(こがたな)細工(ざいく)(けづ)()り、042あゝ(いた)(くるし)いと日夜(にちや)悲鳴(ひめい)をあげて(もだ)えてゐる(あは)れな()(なか)だ。043(すべ)人間(にんげん)平常(ふだん)から智慧(ちゑ)()めておいて、044一朝(いつてう)(こと)ある場合(ばあひ)()()はさむと、045大才(だいさい)大智(だいち)(もの)は、046平常(へいぜい)(みだ)りに小智(せうち)小才(せうさい)月賦(げつぷ)(てき)小出(こだ)しをせず、047(よう)のない(とき)(みな)馬鹿(ばか)二字(にじ)にかくれて、048のんのこ、049シヤあつくシヤあと、050馬耳(ばじ)水蛙(すいあ)晏如(あんじよ)としてをさまつてゐるものだ。051「あゝ此奴(こいつ)(おどろ)いた。052彼奴(あいつ)(あんま)馬鹿(ばか)出来(でき)ないぞ」と、053俗物(ぞくぶつ)(ども)一語(いちご)()はせるのは、054()(まつた)馬鹿(ばか)()(もと)(ひさ)しく本能(ほんのう)(かく)してゐた(やつ)(あら)はれる(とき)だ。055馬鹿(ばか)(つよ)(やつ)056本当(ほんたう)馬鹿(ばか)(えら)(やつ)057(この)(ごろ)馬鹿(ばか)にやり()した。058馬鹿(ばか)威勢(ゐせい)()いぢやないか。059馬鹿(ばか)落着(おちつ)いてゐやがる。060馬鹿(ばか)によく()れる。061馬鹿(ばか)美味(おい)しい。062馬鹿(ばか)奇麗(きれい)だ。063馬鹿(ばか)にならない」などいふ言葉(ことば)(いづ)れも平常(ふだん)小悧巧(こりかう)(やつ)大才子(だいさいし)(ため)鼻毛(はなげ)をぬかれた(とき)驚歎(きやうたん)言葉(ことば)である。064(あんま)馬鹿気(ばかげ)彼奴(あいつ)にや相手(あひて)になれない」などいふ言葉(ことば)は、065大智者(だいちしや)(もつと)(ふか)馬鹿(ばか)(おく)潜伏(せんぷく)してゐる(とき)だ。
066 ハンナ、067タンヤの両人(りやうにん)(また)馬鹿者(ばかもの)(せん)()れない代物(しろもの)であつた。068(しか)(なが)(この)二人(ふたり)(くち)には哲学(てつがく)(さへづ)り、069恋愛論(れんあいろん)をまくし()て、070たまには政治論(せいぢろん)喋々(てふてふ)するが、071(いづ)れも天性(てんせい)智慧(ちゑ)から()たのではなく、072縁日(えんにち)夜立店(よだちみせ)(ほこり)まびれになつて、0721(さら)されてゐる古本(ふるほん)073二銭(にせん)三銭(さんせん)値切(ねぎ)(たふ)して()つて()()みあさつた()知恵(ぢゑ)なのだから、074(しん)徹底(てつてい)した馬鹿者(ばかもの)である。075馬鹿(ばか)()(かく)れて、076(うま)()(わた)ることは()らず、077自分(じぶん)馬鹿(ばか)から、078自分(じぶん)(ほど)智者(ちしや)はない、079学者(がくしや)はない、080現代(げんだい)新人物(しんじんぶつ)(おれ)だ、081泥坊(どろばう)の、082仮令(たとへ)仲間(なかま)(いへど)も、083(けつ)して自分(じぶん)(こころ)(まが)つてはゐない。084そして(たれ)にも(ぬす)まれてはゐない。085(うま)れつき、086自分(じぶん)才子(さいし)だ、087智者(ちしや)だ。088仮令(たとへ)如何(いか)なる人物(じんぶつ)(いへど)も、089自分(じぶん)智嚢(ちのう)(しぼ)()して、090千変(せんぺん)万化(ばんくわ)手術(しゆじゆつ)(つく)立向(たちむか)つたならば、091一切(いつさい)万事(ばんじ)易々(いい)として成就(じやうじゆ)するものだ」と自惚(うぬぼ)れてゐる。092時々(ときどき)(つよ)くなつてみたり、093(よわ)くなつてみたり、094進退(しんたい)動作(どうさ)(つね)ならざるを()て、095自分(じぶん)処世(しよせい)(じやう)兵法(へいはふ)をよく心得(こころえ)策士(さくし)だ。096軍師(ぐんし)だ」と自惚(うぬぼ)れ、097失敗(しつぱい)をしても「()れは(なに)かの都合(つがふ)だ。098惟神(かむながら)(てき)(かみ)()うさせたのだ。099キツと(わる)(あと)()い。100()(あと)(わる)いものだ。101失敗(しつぱい)成功(せいこう)(はは)だ。102賢人(けんじん)智者(ちしや)凡人(ぼんじん)(した)ばたらきをなし、103愚者(ぐしや)天下(てんか)をとる(もの)だ。104さうだから自分(じぶん)仮令(たとへ)賢者(けんじや)でも愚者(ぐしや)(よそほ)つてをらねばならぬのだ。105どんな愚者(ぐしや)々々(ぐしや)した(こと)でも、106馬鹿(ばか)()(もと)には、107(なが)(がは)(けつ)(あら)つた(ごと)解決(かいけつ)がつくものだ……」などと自分(じぶん)馬鹿(ばか)(たな)()げ、108(みづか)馬鹿(ばか)(よそほ)うて()(うま)(わた)つてゐるやうな心持(こころもち)でゐる(やつ)だからたまらない。109此奴(こいつ)こそ本当(ほんたう)(はし)にも(ぼう)にもかからない、110捨場所(すてばしよ)のない(ほん)馬鹿者(ばかもの)である。
111 ハンナ、112タンヤの二人(ふたり)は、113左守(さもり)(せがれ)アリナが追跡(つゐせき)してゐる(こと)(ゆめ)にも()らず、114()れた足許(あしもと)にて坂路(さかみち)をトントンと(とり)()(ごと)(のぼ)りつめ、115(やうや)くにして谷川(たにがは)(づた)ひに浅倉谷(あさくらだに)のシャカンナが隠家(かくれが)()いた、116シャカンナはスバール(ひめ)(とも)(すこ)(おそ)(なが)らも朝飯(あさめし)()つてゐた。
117ハンナ『ヘー、118親方(おやかた)119御免(ごめん)なさいませ。120(ひさ)しうお()にかかりませぬ。121(じつ)(ところ)玄真坊(げんしんばう)女房(にようばう)ダリヤ(ひめ)()(まぎ)れて遁走(とんそう)(せつ)122吾々(われわれ)(ども)()命令(めいれい)()り、123(その)所在(ありか)(たづ)ねて山野(さんや)()けめぐりましたが、124たうとう(いち)()らず()()らず、125やむを()ずして、126タニグク(やま)岩窟(がんくつ)(かへ)つて()れば、127こはそもいかに、128豈計(あにはか)らむや、129(おとうと)(はか)らむや、130建物(たてもの)焼払(やきはら)はれ、131親分(おやぶん)(さま)(はじ)(ひめ)(さま)のお姿(すがた)()えず、132もし(にはか)火事(くわじ)焼死(やけじに)でも(あそ)ばしたのではなからうか、133もしそんな(こと)であつたら、134(ほね)でも(ひろ)つて、135鄭重(ていちよう)()(とむら)ひをしてあげねばなりますまいと、136一生(いつしやう)懸命(けんめい)(はひ)()きをやつて()ましたが、137(ほね)らしいものは(なに)(ござ)いませぬ。138(ただ)(しし)(たぬき)(ほね)(のこ)つてゐる(ばか)り。139あゝ(これ)親分(おやぶん)(さま)火事(くわじ)(おどろ)(あそ)ばしてどつかへ(いち)()()をお(のが)(あそ)ばした(こと)だと(おも)ひ、140十日(とをか)(ばか)りも()まず()はずで、141チコナンと()つて()りました(ところ)142(かぜ)便(たよ)りさへ(なし)(つぶて)音沙汰(おとさた)なく、143()むを()ず、144吾々(われわれ)解散(かいさん)()かけました。145(しか)(なが)肝腎(かんじん)(とき)になつて、146親分(おやぶん)(さま)(この)山奥(やまおく)()て、147()()るといふ(こと)は、148いかにも乾児(こぶん)吾々(われわれ)として、149(じやう)(おい)(しの)びないと、150タンヤと二人(ふたり)(たがひ)(いだ)()つて()きました。151本当(ほんたう)親分(おやぶん)乾児(こぶん)情合(じやうあひ)といふものは(また)格別(かくべつ)のもので(ござ)います、152アンアンアン』
153シャ『ワツハヽヽヽ、154(きさま)()小難(こむつか)しい厄介(やつかい)(おやぢ)がをらなくなつて、155さぞ睾丸(きんたま)皺伸(しわの)ばしをやつただらう。156(おれ)厄介者(やくかいもの)取払(とりはら)はれ、157身軽(みがる)になつて、158(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)(うづ)(とほ)した腫物(はれもの)(にはか)跡形(あとかた)もなく()つたやうな気分(きぶん)になつたのだ。159モウ(おれ)(この)(とほ)世捨人(よすてびと)となつた以上(いじやう)は、160(ふたた)泥坊稼(どろばうかせぎ)はやりたくない。161(きさま)()加減(かげん)に、162(あし)(あら)つて正業(せいげふ)()いたが()からう』
163 ハンナは(あたま)をかき(なが)ら、
164ハ『エー、165親分(おやぶん)とも(おぼ)えぬお言葉(ことば)166それ(ほど)(わたし)信用(しんよう)(ござ)いませぬかな。167(わたし)真心(まごころ)より親方(おやかた)(あい)して()ります。168のうタンヤ、169(まへ)いつも(おれ)言葉(ことば)()いてゐるだらう。170()何十回(なんじつぺん)となく、171親方(おやかた)()()ばなかつた(こと)はなからう』
172タ『ウン、173そらさうだ、174(まへ)のいふ(とほ)り、175(おれ)()(とほ)りだ。176(なん)()つても(こころ)正直(しやうぢき)なものだから、177メツタに親分(おやぶん)(まへ)で、178(うそ)()はうとも(おも)はず、179()はれもせぬワ。180なア親方(おやかた)181どうぞハンナや(わたし)(こころ)(しん)じて(くだ)さい』
182シャ『ウン、183(まへ)(こころ)(そこ)(まで)(きよ)()か、184(ぜん)(あく)かよく(しん)じてゐる。185(まへ)(おれ)には(よう)がない(はず)だ。186スバール(ひめ)(よう)があるのだらうがな。187それについては(この)シャカンナは大変(たいへん)邪魔者(じやまもの)だらう。188()迷惑(めいわく)(さつ)()るよ、189アツハヽヽヽ』
190ハ『そら親方(おやかた)191()無理(むり)ぢや(ござ)いませぬか。192(ひめ)(さま)はまだ少女(せうぢよ)(おん)()(うへ)193(こひ)でもなければ色情(いろ)でもない。194(また)(ひめ)(さま)吾々(われわれ)がお(ちひ)さい(とき)からお(そだ)(まを)したもの、195イヤお世話(せわ)をさして(いただ)いたお(かた)ですから、196(べつ)(ふか)御恩(ごおん)(ござ)いませぬが、197親分(おやぶん)さまには(なが)らく()世話(せわ)になつて()ますから、198親分(おやぶん)御恩(ごおん)(けつ)して(わす)れませぬ。199嬢様(ぢやうさま)(なん)御恩(ごおん)もありませぬ。200(いは)んや恋愛(れんあい)などの(こころ)毛頭(まうとう)()つて()りませぬから、201どうぞ()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
202シャ『親分(おやぶん)には()世話(せわ)になつたと(くち)には()つてるが、203(こころ)(なか)では、204(なが)らく親分(おやぶん)世話(せわ)をしてやつた。205親分(おやぶん)(ほか)へも()ず、206乾児(こぶん)(ばつか)(はたら)かして、207乾児(こぶん)(あぶら)(ねぶ)つて、208親分(おやぶん)()つてたのだ。209つまり「自分(じぶん)親分(おやぶん)(すく)(ぬし)だ。210保護者(ほごしや)だ。211親分(おやぶん)(れい)()はすのが当然(あたりまへ)だ」(ぐらゐ)(こころ)()てるだらうがな』
212ハ『成程(なるほど)流石(さすが)親方(おやかた)だ。213よく吾々(われわれ)(こころ)(そこ)(まで)透見(とうけん)して(くだ)さいました。214天下(てんか)(いち)(にん)知己(ちき)()たりといふべしだ。215のうタンヤ、216(この)親分(おやぶん)にして(この)乾児(こぶん)ありだ。217(なん)(おそ)ろしい()()親分(おやぶん)ぢやないか』
218タ『そらさうだ(とも)219(なん)()つても二百(にひやく)(にん)泥坊(どろばう)(あご)使(つか)ひ、220そして自分(じぶん)()んだひんだ(かす)221沢山(たくさん)乾児(こぶん)嬢様(ぢやうさま)々々(ぢやうさま)()はして威張(ゐば)らして(ござ)つたのだもの、222随分(ずいぶん)(すご)(うで)だよ。223なア親分(おやぶん)224(わたし)観察(くわんさつ)(ちが)ひますまい』
225シャ『タンヤの観察(くわんさつ)もハンナの評察(ひやうさつ)も、226(おれ)推察(すゐさつ)もピツタリ()つてゐるやうだ。227(しか)(なが)(おれ)(むすめ)(きさま)(たち)(うば)つて(かへ)相談(さうだん)をやつて()たのだらう。228(とし)()いたりと(いへど)229(おれ)(うで)にも(ほね)もあれば(ちから)もある。230(きさま)()のやうな、231青二才(あをにさい)(てこ)にはチツと()ひかねるぞ。232(ひめ)()しければ、233(うで)づくで()つて(かへ)つたが()からう』
234ハ『ヤア、235此奴(こいつ)面白(おもしろ)い。236(なに)(ほど)(つよ)いと()つても、237タカが老耄(おいぼれ)一人(ひとり)238(この)邪魔者(じやまもの)さへ(はら)へば、239あとは此方(こつち)(もの)だ。240(いま)(まで)大親分(おほおやぶん)()()(おそ)れて、241(なん)だか敵対心(てきたいしん)臆病風(おくびやうかぜ)()かしよつたが、242もう()うなれば五文(ごもん)五文(ごもん)だ。243こちらは二人(ふたり)一銭(いつせん)だ。244オイ一銭(いつせん)五厘(ごりん)との(ちから)(くら)べだ。245勝敗(しようはい)(すう)(すで)()まつてゐる。246(ただ)一銭(いつせん)打亡(うちほろ)ぼされるよりも五厘(ごりん)五常(ごじやう)(みち)(わきま)へて、247スツパリと(むすめ)此方(こつち)(わた)せ。248拙劣(へた)にバタつくと(おやぢ)(ため)にならないぞ』
249 スバールは食事(しよくじ)()()め、250二人(ふたり)(かほ)微笑(びせう)(うか)(なが)(うち)(なが)め、251大胆(だいたん)不敵(ふてき)態度(たいど)でおさまり(かへ)つてゐる。
252シャ『()はしておけば、253旧主人(きうしゆじん)(むか)つて雑言(ざふごん)無礼(ぶれい)254容赦(ようしや)(いた)さぬ、255(この)鉄拳(てつけん)(くら)へ』
256(くび)()べよと(ばか)り、257ハンナの横面(よこづら)をなぐりつけむとする一刹那(いつせつな)258ハンナは()をすくめてシャカンナの(あし)(すく)つた。259シャカンナは(せま)(には)にドツと(たふ)れ、260(には)(いし)後頭部(こうとうぶ)(ぶつ)つけ()(とほ)くなつて(しま)つた。261二人(ふたり)手早(てばや)くシャカンナを荒縄(あらなは)(もつ)手足(てあし)(しば)り、262谷川(たにがは)(もち)(はこ)んで水葬(すいさう)せむとする。263(これ)()るよりスバール(ひめ)(ちち)大事(だいじ)と、264死物狂(しにものぐるひ)になり、265(まさかり)(もつ)二人(ふたり)背後(うしろ)よりウンと(ばか)(なぐ)りつけた。266二人(ふたり)目早(めばや)(たい)をかはし、267(をど)りかかつて、268(まさかり)(うば)ひとり、269スバール(ひめ)大地(だいち)にグツと(ねぢ)()せ、270手足(てあし)(くく)つて(うご)かせず。271スバール(ひめ)悲鳴(ひめい)()げて、272(こゑ)(かぎ)りに()(さけ)ぶ。273(この)(とき)一町(いつちやう)(ばか)手前(てまへ)(まで)274(はやし)(くぐ)つて(すす)んで()たアリナは、275(むすめ)悲鳴(ひめい)()き、276(わが)()(わす)れて、277(はし)(きた)()れば(この)(てい)である。278……ヤア此奴(こいつ)今朝(けさ)()曲者(くせもの)279()らしめくれむ……と、280(もの)をもいはず、281襟髪(えりがみ)(つか)んで浅倉山(あさくらやま)溪流(けいりう)へ、282二人(ふたり)(とも)ザンブと(ばか)()()んで(しま)ひ、283両人(りやうにん)縄目(なはめ)()いた。284スバール(ひめ)紅葉(もみぢ)のやうな(やさ)しき()()はして、285救命(きうめい)大恩(だいおん)感謝(かんしや)した。286(ちち)のシャカンナは精神(せいしん)朦朧(もうろう)として(ほとん)人事(じんじ)不省(ふせい)(てい)である。287アリナとスバール(ひめ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かみ)祈願(きぐわん)(たてまつ)り、288(みづ)面部(めんぶ)()きかけなどして、289(やうや)くの(こと)で、290シャカンナの精神(せいしん)状態(じやうたい)明瞭(めいれう)になつて()た。
291シャ『あゝ(むすめ)292其方(そなた)無事(ぶじ)であつたか。293まあ結構(けつこう)々々(けつこう)294(これ)(まつた)(てん)のお(たす)けだ』
295ス『お(とう)(さま)296(わたし)(しば)られてゐましたの。297(あやふ)(ところ)へ、298あとの月太子(つきたいし)(さま)のお(とも)をしてお(いで)になつたアリナ(さま)(あら)はれて、299(わたし)貴方(あなた)(たす)けて(くだ)さつたのですよ。300サアお(れい)(まを)して(くだ)さい』
301 シャカンナはスバール(ひめ)(こゑ)()をさまして、302よくよく()れば、303アリナは(うやうや)しげに大地(だいち)にしやがむでゐる。
304シャ『あゝ其方(そなた)はアリナさま、305よくマア(たす)けて(くだ)さいました。306貴方(あなた)吾々(われわれ)父娘(おやこ)再生(さいせい)恩人(おんじん)です。307サア、308どうぞうちへお這入(はい)(くだ)さいませ』
309ア『(あやふ)(ところ)(ござ)いましたが、310()づお()がついて(なに)より頂上(ちようじやう)(ござ)います。311左様(さやう)なれば312(やす)まして(いただ)きませう』
313とシャカンナを(たす)(おこ)し、314スバール(ひめ)(とも)老人(らうじん)()()いて屋内(をくない)(すす)()つた。
315シャ『アリナさま、316どうも有難(ありがた)(ござ)います。317そして太子(たいし)(さま)はお(かは)りは(ござ)いませぬか』
318ア『ハイ、319有難(ありがた)(ござ)います。320()()()壮健(さうけん)(はう)(ござ)います。321()いては太子(たいし)(さま)のお使(つかひ)(まゐ)つた(もの)(ござ)いますから、322どうぞ使(つかひ)(おもむき)を、323()(やす)まりましたらゆつくりと()いて(くだ)さいませ』
324シャ『イヤもう気分(きぶん)()くなりました。325太子(たいし)(さま)のお使(つかひ)とあらば半時(はんとき)猶予(いうよ)もなりますまい、326どうか(その)(むね)(つた)へて(くだ)さい。327()(かな)(こと)なら、328吾々(われわれ)父娘(おやこ)(ちから)のあらむ(かぎ)()奉公(ほうこう)(いた)しますから』
329ア『ヤ、330早速(さつそく)()承引(しよういん)有難(ありがた)(ござ)います。331かいつまんで(まを)しますれば、332太子(たいし)(さま)(はじ)めて貴方(あなた)父娘(おやこ)にお()(あそ)ばし、333(とし)()いたりと(いへど)気骨(きこつ)稜々(りやうりやう)たるシャカンナ(さま)()(こころ)ゆき、334()いでは()(まれ)なる美貌(びばう)のスバール(さま)335王妃(わうひ)としてお召抱(めしかか)えになつても(はづ)かしからぬ(もの)思召(おぼしめ)し、336今日(こんにち)(ところ)(すこ)時機(じき)(はや)(やう)(ござ)いますが、337それだと()つて、338太子(たいし)(さま)には非常(ひじやう)()恋慕(れんぼ)339()(たて)もたまらぬ(いきほひ)340(いち)()(はや)くスバール(さま)のお(かほ)()たいとの()思召(おぼしめし)341侍臣(じしん)吾々(われわれ)(その)()苦衷(くちう)(さつ)(たてまつ)り、342ジツと()てゐられぬ(やう)になり、343人目(ひとめ)(しの)んで(この)(やかた)をお(たづ)(まを)したので(ござ)います』
344シャ『何事(なにごと)(おほせ)かと(おも)へば、345スバール(ひめ)()所望(しよまう)との(おん)(こと)346(むすめ)異存(いぞん)さへなくば()命令(めいれい)(したが)ひませう。347(しか)(なが)(いま)(わたくし)(みやこ)()時機(じき)では(ござ)いませぬ。348(なん)()つても時勢(じせい)(おく)れの(ふる)ぼけた(あたま)349政治(せいぢ)(しよう)(あた)るのは(かへつ)太子(たいし)(さま)()心配(しんぱい)をかける(やう)なもので(ござ)いますから、350(その)()(ばか)りは()(ことわ)(まを)()(ござ)います。351(さいは)(この)山奥(やまおく)(ひそ)んで不幸(ふかう)(かさ)(なが)ら、352(やま)()(えだ)(くび)()らず、353(かは)(そこ)()()げず、354鉄砲腹(てつぱうばら)(いた)さず、355()(かく)無事(ぶじ)息災(そくさい)今日(こんにち)(まで)()(なが)らへて()ました経験(けいけん)(ござ)いますれば、356どうか(わたくし)(こと)はお(こころ)にかけさせられない(やう)(ねが)(いた)します。357(やく)()たない(わたくし)のやうな(もの)(みやこ)(のぼ)つた(ところ)で、358太子(たいし)(さま)()厄介(やくかい)359人間(にんげん)一疋(いつぴき)(はな)()ひの飼殺(かひごろ)しも同然(どうぜん)360今日(こんにち)社会(しやくわい)接触(せつしよく)のうすい吾々(われわれ)が、361繁雑(はんざつ)()(なか)に、362どうして()つて政治(せいぢ)出来(でき)ませう。363(かたち)ばかりの茅屋(あばらや)(ふる)く、364(せま)く、365(むさくる)しう(ござ)いまするが、366(むすめ)()した(あと)独身者(どくしんもの)自炊(じすゐ)には(あま)(せま)さを(かん)じませぬ。367どうぞ(この)()(ばか)りは(ひら)()(ことわ)りを(まをし)ます』
368ア『あゝ(じつ)(ところ)は、369まだ父王(ちちわう)(さま)のお(ゆる)しもなく、370太子(たいし)(さま)()一人(ひとり)()(かんが)へで(ござ)いますから、371(おな)(こと)なら、372モウ一二(いちに)(ねん)貴方(あなた)此処(ここ)()つて、373時節(じせつ)()つて(いただ)(はう)が、374双方(さうはう)都合(つがふ)()いでせう。375そして嬢様(ぢやうさま)(わたし)がソツとお(とも)(いた)し、376(ちや)宗匠(そうしやう)タルチンの(やかた)にお(かくま)(まを)し、377(おん)()()安泰(あんたい)保護(ほご)(いた)しますれば、378どうか()心配(しんぱい)なく、379嬢様(ぢやうさま)(わたくし)にお(あづ)(くだ)さいませぬか』
380シャ『オイ、381スバール、382(まへ)最前(さいぜん)からのお(はなし)()いたであらう。383アリナさまに(ともな)はれて(みやこ)(のぼ)()はないか』
384ス『ハイ、385(とう)さまを(この)山奥(やまおく)(ただ)一人(ひとり)(のこ)して(わたし)(まゐ)(わけ)には()きますまい。386なる(こと)なら、387(とう)さまと()一緒(いつしよ)にお(とも)(ねが)ひたいもので(ござ)います』
388シャ『ハヽヽヽ、389(ちち)(たい)する孝養(かうやう)と、390(をつと)(たい)する恋愛(れんあい)とは別問題(べつもんだい)だとお(まへ)()つたでないか。391恋愛(れんあい)神聖論(しんせいろん)()本尊(ほんぞん)たるスバール(ぢやう)さま、392(けつ)して、393(ちち)遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)はいらぬ。394(いち)()(はや)(あい)(たてまつ)太子(たいし)(さま)御前(ごぜん)()るが()からう。395(しか)(かなら)太子(たいし)(さま)にお()にかかつても気儘(きまま)()しては()けませぬぞ』
396ス『ハイお(とう)さま、397有難(ありがた)(ござ)います。398左様(さやう)なれば(みやこ)(のぼ)ります。399どうか()気嫌(きげん)()うお(くら)(くだ)さいませ。400そして(いち)()(はや)くお(とう)さまをお(むか)へに(まゐ)ります。401そしてお(とう)さまのお(かほ)(はや)()るのを(たのし)みに(わたし)(くら)して()りますよ』
402(うれ)しくもあり(かな)しくもあり、403(おや)()んだ()新婿(にひむこ)(もら)うた(やう)(こころ)()たされてゐた。404(この)翌日(よくじつ)からは浅倉谷(あさくらだに)名花(めいくわ)たるスバールの姿(すがた)()えなくなりぬ。
405大正一四・一・五 新一・二八 於月光閣 松村真澄録)
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki