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第66巻(巳の巻)
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天祥地瑞
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第68巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 名花移植
01 貞操論
〔1725〕
02 恋盗詞
〔1726〕
03 山出女
〔1727〕
04 茶湯の艶
〔1728〕
第2篇 恋火狼火
05 変装太子
〔1729〕
06 信夫恋
〔1730〕
07 茶火酌
〔1731〕
08 帰鬼逸迫
〔1732〕
第3篇 民声魔声
09 衡平運動
〔1733〕
10 宗匠財
〔1734〕
11 宮山嵐
〔1735〕
12 妻狼の囁
〔1736〕
13 蛙の口
〔1737〕
第4篇 月光徹雲
14 会者浄離
〔1738〕
15 破粋者
〔1739〕
16 戦伝歌
〔1740〕
17 地の岩戸
〔1741〕
第5篇 神風駘蕩
18 救の網
〔1742〕
19 紅の川
〔1743〕
20 破滅
〔1744〕
21 祭政一致
〔1745〕
余白歌
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第七章
茶火酌
(
ちやびしやく
)
〔一七三一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第2篇 恋火狼火
よみ(新仮名遣い):
れんかろうか
章:
第7章 茶火酌
よみ(新仮名遣い):
ちゃびしゃく
通し章番号:
1731
口述日:
1925(大正14)年01月29日(旧01月6日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
茶湯の宗匠タルチンは、太子とスバールの逢引の場を提供することで、アリナからたくさんの心づけをもらっていた。
タルチンは幸運を喜び、女房の「袋」に自慢するが、袋は秘密の逢引のことが城のお偉方にばれたときの危険を心配して逆にタルチンをなじる。また、タルチンの酒癖の悪さを非難する。タルチンも女房に対して不満を並べ立てるが、袋は逆上してタルチンから一千両の金を奪い取り、家を飛び出してしまう。
そこへ城下に大火事が発生し、警鐘の音が響いてくる。タルチンは得意先の火事見舞いに回るため、太子とスバールに留守を頼み、城下に出て行く。
最初は火事の壮観さに見とれていた太子だが、火が城にまで回り始めたのを見て、自分に化けているアリナのところへ人がやってきて変装がばれるのがにわかに心配になってくる。スバールは太子の弱気をなじり、太子も気を強く持っている振りをするが、警鐘乱打の声、人々の叫びはますます強くなって来る。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6807
愛善世界社版:
98頁
八幡書店版:
第12輯 186頁
修補版:
校定版:
98頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
の
片辺
(
かたほとり
)
に
住
(
す
)
む
茶湯
(
ちやのゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
タルチンは、
002
思
(
おも
)
はぬ
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
来臨
(
らいりん
)
と
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
り、
003
茶室
(
ちやしつ
)
は
太子
(
たいし
)
とスバールの
自由歓楽場
(
じいうくわんらくぢやう
)
となし、
004
スバール
姫
(
ひめ
)
に
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
を
教
(
をし
)
へると
云
(
い
)
ふのはホンの
表向
(
おもてむき
)
、
005
実
(
じつ
)
は
両人
(
りやうにん
)
の
恋
(
こひ
)
を
完成
(
くわんせい
)
せむ
為
(
ため
)
アリナに
頼
(
たの
)
まれて
沢山
(
たくさん
)
の
心付
(
こころづけ
)
を
貰
(
もら
)
ひ、
006
ホクホクもので
天下
(
てんか
)
太平
(
たいへい
)
を
謳
(
うた
)
つてゐる。
007
彼
(
かれ
)
は
中庭
(
なかには
)
を
隔
(
へだ
)
てた
古
(
ふる
)
ぼけた
母屋
(
おもや
)
の
一室
(
いつしつ
)
に
胡坐
(
あぐら
)
をかき
乍
(
なが
)
ら、
008
大布袋
(
おほほてい
)
然
(
ぜん
)
たる
女房
(
にようばう
)
の「ふくろ」と
共
(
とも
)
に
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
かは
)
し
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
009
タルチン『オイ、
010
袋
(
ふくろ
)
、
011
人間
(
にんげん
)
の
運
(
うん
)
と
云
(
い
)
ふものは
不思議
(
ふしぎ
)
なものぢやないか。
012
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
も
親
(
おや
)
の
代
(
だい
)
から
茶湯
(
ちやのゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
として
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
の
大家
(
たいけ
)
に
御
(
ご
)
贔屓
(
ひいき
)
になり、
013
僅
(
わづか
)
に
家名
(
かめい
)
を
継
(
つ
)
いで
来
(
き
)
たが、
014
世
(
よ
)
の
不景気
(
ふけいき
)
につれ
大家
(
たいけ
)
の
盆
(
ぼん
)
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
の
下
(
くだ
)
されものも
段々
(
だんだん
)
と
少
(
すくな
)
くなり、
015
頭
(
あたま
)
は
禿山
(
はげやま
)
となり
髭
(
ひげ
)
には
霜
(
しも
)
がおき、
016
懐
(
ふところ
)
は
寒
(
さむ
)
く
財布
(
さいふ
)
は
凩
(
こがらし
)
が
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
び、
017
爐
(
ろ
)
の
炭
(
すみ
)
さへも
碌
(
ろく
)
に
買
(
か
)
へないやうになつてゐたのに、
018
あの
弁才天
(
べんざいてん
)
が
山奥
(
やまおく
)
から
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
遊
(
あそ
)
ばしてより
御
(
ご
)
霊験
(
れいけん
)
あらたかになり、
019
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くもスダルマン
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
までお
忍
(
しの
)
びでお
越
(
こ
)
しになるやうになつたのは
何
(
なん
)
たる
幸運
(
かううん
)
の
事
(
こと
)
だらう。
020
まだ
運命
(
うんめい
)
の
神
(
かみ
)
は
吾々
(
われわれ
)
をお
見捨
(
みすて
)
遊
(
あそ
)
ばさぬと
見
(
み
)
えるわい。
021
のう
袋
(
ふくろ
)
、
022
お
前
(
まへ
)
はいつも
奴甲斐性
(
どがひしやう
)
なし
奴甲斐性
(
どがひしやう
)
なしと
俺
(
わし
)
を
罵詈
(
ばり
)
嘲笑
(
てうせう
)
なし、
023
お
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さいとチヨコチヨコ
駄々
(
だだ
)
を
捏
(
こ
)
ねよつたが、
024
どうだお
暇
(
ひま
)
をやらうかの』
025
袋
(
ふくろ
)
『ヘーヘー、
026
何
(
なん
)
ですか、
027
たまたまお
金
(
かね
)
が
這入
(
はい
)
つたとて、
028
さうメートルを
上
(
あ
)
げるものぢやありませぬよ。
029
お
前
(
まへ
)
さまは
仔細
(
しさい
)
らしく
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
などと
云
(
い
)
つてすまし
込
(
こ
)
んで
厶
(
ござ
)
るが、
030
女房
(
にようばう
)
の
私
(
わたし
)
から
見
(
み
)
れば
余
(
あま
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
様
(
さま
)
ぢやありませぬよ。
031
浮世
(
うきよ
)
を
三分
(
さんぶ
)
四厘
(
よりん
)
、
032
四分
(
しぶ
)
五裂
(
ごれつ
)
、
033
五分
(
ごぶ
)
々々
(
ごぶ
)
034
五厘
(
ごりん
)
々々
(
ごりん
)
に
茶化
(
ちやくわ
)
して
通
(
とほ
)
る
鈍物
(
なまくら
)
坊主
(
ばうず
)
の
夜這星
(
よばひぼし
)
だから、
035
あまり
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いたらしい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はないがよろしい。
036
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
だつてお
忍
(
しの
)
びの
身
(
み
)
、
037
何時
(
いつ
)
化
(
ばけ
)
が
現
(
あら
)
はれて
城内
(
じやうない
)
から
呼
(
よ
)
び
戻
(
もど
)
されなさるか
知
(
し
)
れませぬよ。
038
さうしてお
歴々
(
れきれき
)
の
御
(
ご
)
家来衆
(
けらいしう
)
が
太子
(
たいし
)
の
外出
(
ぐわいしゆつ
)
を
防
(
ふせ
)
がうものなら、
039
再
(
ふたた
)
び
甘
(
あま
)
い
汁
(
しる
)
を
吸
(
す
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬぢやありませぬか』
040
タル『
何
(
なに
)
心配
(
しんぱい
)
するな、
041
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
が、
042
よしんば
家来
(
けらい
)
共
(
ども
)
に
妨
(
さまた
)
げられ、
043
お
出
(
で
)
ましになる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないにした
所
(
ところ
)
で、
044
左守
(
さもり
)
の
息子
(
むすこ
)
さまのアリナさまが
控
(
ひか
)
へて
厶
(
ござ
)
る。
045
アリナさまは
自由
(
じいう
)
の
利
(
き
)
く
身
(
み
)
だから、
046
どんな
便宜
(
べんぎ
)
でも
取計
(
とりはか
)
つて
下
(
くだ
)
さるよ』
047
袋
(
ふくろ
)
『さう
楽観
(
らくくわん
)
は
出来
(
でき
)
はすまい。
048
アリナさまだつて
外出
(
ぐわいしゆつ
)
差止
(
さしと
)
めとなられたら、
049
それこそ
取
(
とり
)
つく
島
(
しま
)
がないぢやありませぬか。
050
その
上
(
うへ
)
山奥
(
やまおく
)
の
美人
(
びじん
)
を
囲
(
かくま
)
つて
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
に
合引
(
あひびき
)
させ、
051
堕落
(
だらく
)
させたと
云
(
い
)
つて
重
(
おも
)
い
罪
(
つみ
)
にでも
問
(
と
)
はれたら、
052
それこそ
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
が
飛
(
と
)
ぶぢやありませぬか。
053
お
前
(
まへ
)
さまは
大体
(
だいたい
)
利口
(
りこう
)
に
出来
(
でき
)
てゐないから、
054
女房
(
にようばう
)
の
心配
(
しんぱい
)
は
一通
(
ひととほ
)
りぢやない。
055
チツト
気
(
き
)
をつけて
下
(
くだ
)
さいや、
056
お
金
(
かね
)
がよつた
時
(
とき
)
、
057
さうムチヤに
費
(
つか
)
つては、
058
マサカの
時
(
とき
)
にどうしますか。
059
お
前
(
まへ
)
さまはヒネ
南瓜
(
かぼちや
)
だから
何時
(
いつ
)
国替
(
くにがへ
)
してもよろしいが、
060
此
(
この
)
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
い
女房
(
にようばう
)
をどうして
下
(
くだ
)
さるつもりですか。
061
今日
(
けふ
)
はお
銚子
(
てうし
)
は
二本
(
にほん
)
でおいて
下
(
くだ
)
さい。
062
お
前
(
まへ
)
さまが
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うと
梯子酒
(
はしござけ
)
ぢやからヒヨロヒヨロと
宅
(
うち
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
063
裏町
(
うらまち
)
辺
(
あたり
)
の
待合
(
まちあひ
)
にでも
惚気
(
のろけ
)
込
(
こ
)
んで、
064
ありもせぬ
金
(
かね
)
を
費
(
つか
)
はれちや、
065
宅
(
うち
)
の
会計
(
くわいけい
)
がやりきれませぬからな』
066
タル『エー、
067
酒
(
さけ
)
が
理
(
り
)
におちて
甘
(
うま
)
くないわ。
068
今日
(
けふ
)
は
機嫌
(
きげん
)
よく
飲
(
の
)
ましてくれ。
069
しやうもない
世帯
(
しよたい
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かしてくれては
流石
(
さすが
)
茶人
(
ちやじん
)
の
俺
(
わし
)
も、
070
いささか
閉口
(
へいこう
)
だ。
071
さう
石
(
いし
)
に
根
(
ね
)
つぎするやうに
心配
(
しんぱい
)
するものぢやない。
072
俺
(
おれ
)
の
宅
(
うち
)
は
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
さまの
余慶
(
よけい
)
で、
073
之
(
これ
)
から
一陽
(
いちやう
)
来復
(
らいふく
)
の
気分
(
きぶん
)
に
向
(
むか
)
ふのだ。
074
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
075
山奥
(
やまおく
)
から
生捕
(
いけど
)
つて
厶
(
ござ
)
つた、
076
あのスバール
姫
(
ひめ
)
さまは
弁才天
(
べんざいてん
)
様
(
さま
)
。
077
さうして
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
は
毘沙門天
(
びしやもんてん
)
様
(
さま
)
だ。
078
お
前
(
まへ
)
は
云
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
ばず
布袋
(
ほてい
)
和尚
(
おしやう
)
なり、
079
俺
(
おれ
)
は
頭
(
あたま
)
が
長
(
なが
)
いから
福禄寿
(
げほう
)
だ。
080
そこへ
恵比須
(
ゑびす
)
や
大黒
(
だいこく
)
のついた
金札
(
きんさつ
)
が
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
懐
(
ふところ
)
に
納
(
をさ
)
まつて
厶
(
ござ
)
るなり、
081
チヤンと
六福神
(
ろくふくじん
)
は
揃
(
そろ
)
つてゐるのだ。
082
も
一
(
ひと
)
つの
事
(
こと
)
で
七福神
(
しちふくじん
)
となるのだから
心配
(
しんぱい
)
するな。
083
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はふ
国
(
くに
)
だから、
084
こんな
時
(
とき
)
は
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
祝
(
いは
)
ふに
限
(
かぎ
)
るよ。
085
チヤンと
六福神
(
ろくふくじん
)
が
揃
(
そろ
)
つてる
所
(
ところ
)
へ、
086
お
前
(
まへ
)
の
名
(
な
)
が
袋
(
ふくろ
)
だから
丁度
(
ちやうど
)
揃
(
そろ
)
つて
七福神
(
しちふくじん
)
だ。
087
芽出度
(
めでた
)
い
芽出度
(
めでた
)
い
酒
(
さけ
)
喰
(
く
)
はずんばあるべからずだ。
088
飯
(
めし
)
飲
(
の
)
まずんばあるべからずだ、
089
エツヘヽヽヽ』
090
袋
(
ふくろ
)
『
何
(
なん
)
とまア
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
をいい
年
(
とし
)
して
居
(
を
)
つて
云
(
い
)
へたものですな。
091
お
前
(
まへ
)
さまの
宅
(
うち
)
に
後妻
(
ごさい
)
に
入
(
い
)
つてから
已
(
すで
)
に
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
にもなるぢやありませぬか。
092
着換
(
きがへ
)
の
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
も
買
(
か
)
つてくれた
事
(
こと
)
もなし、
093
足袋
(
たび
)
一足
(
いつそく
)
買
(
か
)
つてくれた
事
(
こと
)
もないのに、
094
いつも
亭主面
(
ていしゆづら
)
さげて、
095
偉
(
えら
)
相
(
さう
)
に
何
(
なん
)
ですか。
096
その
金
(
かね
)
こつちにお
渡
(
わた
)
しなさい、
097
私
(
わたし
)
が
預
(
あづか
)
つておきます。
098
お
前
(
まへ
)
さまにお
金
(
かね
)
を
持
(
も
)
たしておくと
剣呑
(
けんのん
)
だ。
099
チツト
許
(
ばか
)
り
渋皮
(
しぶかは
)
のむけた
女
(
をんな
)
を
見
(
み
)
ると
直
(
すぐ
)
グニヤグニヤになつて
100
家
(
いへ
)
も
女房
(
にようばう
)
も
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
うと
云
(
い
)
ふ
奴倒
(
どたふ
)
しものだからな。
101
ほんとにいけすかない
薬鑵爺
(
やくわんおやぢ
)
だよ』
102
タル『こらこら
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふか。
103
貧乏
(
びんばふ
)
はして
居
(
を
)
つても
104
俺
(
おれ
)
はタラハン
城
(
じやう
)
に
歴仕
(
れきし
)
する
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
さまだよ。
105
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
にならうと
思
(
おも
)
へば、
106
余程
(
よほど
)
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
、
107
生花
(
いけばな
)
、
108
歌
(
うた
)
、
109
俳諧
(
はいかい
)
等
(
とう
)
の
諸芸
(
しよげい
)
は
一渡
(
ひとわた
)
り
嗜
(
たしな
)
んでおかねばならず、
110
言葉使
(
ことばつかひ
)
も
高尚
(
かうしやう
)
につかはねばならぬぢやないか。
111
お
前
(
まへ
)
のやうに
大
(
おほ
)
きな
図体
(
づうたい
)
をして
蛙
(
かへる
)
のやうな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
し、
112
ひびきの
入
(
い
)
つた
釣鐘
(
つりがね
)
のやうにガアガア
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ふと、
113
名門
(
めいもん
)
の
恥辱
(
ちじよく
)
だ、
114
エーン。
115
此
(
この
)
夫
(
をつと
)
にして
此
(
この
)
妻
(
つま
)
ありと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるから、
116
俺
(
わし
)
の
女房
(
にようばう
)
ならチツト
女房
(
にようばう
)
らしう、
117
品行
(
ひんかう
)
を
謹
(
つつし
)
んで
貰
(
もら
)
はねば
困
(
こま
)
るぢやないか。
118
何時
(
いつ
)
だつて
女
(
をんな
)
の
癖
(
くせ
)
に
囲爐裏
(
ゐろり
)
の
側
(
そば
)
に
胡坐
(
あぐら
)
かき、
119
煙草
(
たばこ
)
ばかりをパクつかせ、
120
飯
(
めし
)
を
焚
(
た
)
かすれば
焦
(
こ
)
げつかす、
121
タマタマ
焦
(
こげ
)
なかつたと
思
(
おも
)
へば
半焚
(
はんだ
)
きの
心
(
しん
)
のある
飯
(
めし
)
を
喰
(
く
)
はせやがるし、
122
何時
(
いつ
)
だつて
飯
(
めし
)
らしい
飯
(
めし
)
を
喰
(
く
)
わした
事
(
こと
)
があるか。
123
アーア、
124
俺
(
おれ
)
も、
125
せう
事
(
こと
)
なしにこんな
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
つたのだが、
126
かう
懐
(
ふところ
)
が
暖
(
あたた
)
かになつて
来
(
く
)
ると、
127
もつとした…………』
128
袋
(
ふくろ
)
は
胸倉
(
むなぐら
)
をグツととり、
129
『こりや
薬鑵爺
(
やくわんおやぢ
)
、
130
もつと
の
後
(
あと
)
を
聞
(
き
)
かせ、
131
俺
(
わし
)
を
追
(
おひ
)
出
(
だ
)
すつもりか。
132
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
から
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されるよりも
私
(
わし
)
の
方
(
はう
)
から
追
(
お
)
ひ
出
(
で
)
てやるのだ。
133
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
も
幾度
(
いくたび
)
か
見込
(
みこ
)
みが
立
(
た
)
たないから、
134
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さう
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さうと
思
(
おも
)
つたが
先立
(
さきだ
)
つものは
金
(
かね
)
だ。
135
此
(
この
)
薬鑵
(
やくわん
)
奴
(
め
)
、
136
之
(
これ
)
でもいつか
懐
(
ふところ
)
をふくらしやがる
事
(
こと
)
があるだらう。
137
その
時
(
とき
)
こそは
懐
(
ふところ
)
の
金
(
かね
)
をスツカリ
奪
(
うば
)
ひとつてドロンと
消
(
き
)
えてやるつもりだつた。
138
こんな
険呑
(
けんのん
)
な
暗雲
(
やみくも
)
飛
(
と
)
び
乗
(
の
)
りの
芸当
(
げいたう
)
をやるものについて
居
(
を
)
つては
139
袋
(
ふくろ
)
の
生命
(
いのち
)
が
険呑
(
けんのん
)
だ』
140
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
懐
(
ふところ
)
の
札束
(
さつたば
)
をむしりとり、
141
強力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
して
老爺
(
おやぢ
)
の
尻
(
しり
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
蹴
(
け
)
り
乍
(
なが
)
ら、
142
腮
(
あご
)
をしやくり、
143
袋
(
ふくろ
)
『お
蔭
(
かげ
)
さまで
一千
(
いつせん
)
両
(
りやう
)
のお
金
(
かね
)
にありつきました。
144
永
(
なが
)
らくお
世話
(
せわ
)
になりました。
145
タルチンさま、
146
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
に
一千
(
いつせん
)
円
(
ゑん
)
は
安
(
やす
)
いものでせう。
147
精
(
せい
)
出
(
だ
)
しておまうけなさいませ。
148
貯
(
たま
)
つた
時
(
とき
)
は、
149
又
(
また
)
頂
(
いただ
)
きに
出
(
で
)
ますよ。
150
アバよ』
151
と
牛
(
うし
)
のやうな
尻
(
しり
)
をクレツと
引捲
(
ひきまく
)
り、
152
『
薬鑵爺
(
やくわんおやぢ
)
尻
(
けつ
)
でも
喰
(
く
)
らへ』
153
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
一目散
(
いちもくさん
)
に
逃
(
にげ
)
出
(
だ
)
したり。
154
タルチンは
無念
(
むねん
)
の
歯
(
は
)
がみをなし、
155
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけむとすれども、
156
大女
(
おほをんな
)
の
力強
(
ちからづよ
)
に
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
尻
(
しり
)
こぶたを
蹴
(
け
)
られた
為
(
ため
)
、
157
大腿骨
(
だいたいこつ
)
に
痛
(
いた
)
みを
感
(
かん
)
じ、
158
顔
(
かほ
)
をしかめて
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
女房
(
にようばう
)
の
後
(
あと
)
を
怨
(
うら
)
めしげに
見送
(
みおく
)
つてゐる。
159
『アー、
160
袋
(
ふくろ
)
の
奴
(
やつ
)
、
161
馬鹿
(
ばか
)
にしやがる。
162
折角
(
せつかく
)
マンマとせしめた
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
で
占領
(
せんりやう
)
して、
163
おまけに
手厳
(
てきび
)
しく
毒
(
どく
)
つき
乍
(
なが
)
ら
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
きやがつた。
164
アヽ、
165
又
(
また
)
俺
(
おれ
)
は
元
(
もと
)
の
木阿弥
(
もくあみ
)
だ。
166
文
(
もん
)
なしの
素寒貧
(
すかんぴん
)
だ。
167
よくよく
金
(
かね
)
に
縁
(
えん
)
のない
男
(
をとこ
)
と
見
(
み
)
えるわい。
168
然
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばなるまい。
169
万々一
(
まんまんいち
)
、
170
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
をかくまつて
逢引
(
あひびき
)
さしてゐる
事
(
こと
)
がお
歴々
(
れきれき
)
の
耳
(
みみ
)
にでも
這入
(
はい
)
らうものなら、
171
お
出入
(
でいり
)
差止
(
さしと
)
めは
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
172
お
袋
(
ふくろ
)
の
云
(
い
)
つたやうに
俺
(
おれ
)
の
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
が
飛
(
と
)
ぶかも
知
(
し
)
れない。
173
又
(
また
)
幸
(
さいはひ
)
に
命
(
いのち
)
だけは
助
(
たす
)
かつたとした
所
(
ところ
)
で、
174
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
のお
出入
(
でいり
)
もなくなり、
175
アリナさま
迄
(
まで
)
も
来
(
こ
)
られないやうな
破目
(
はめ
)
になつたら、
176
此
(
この
)
茶坊主
(
ちやばうず
)
はどうしたらよいかな。
177
どうも
心配
(
しんぱい
)
になつて
来
(
き
)
た。
178
家宝
(
かほう
)
伝来
(
でんらい
)
の
名物
(
めいぶつ
)
道具
(
だうぐ
)
よりも
大切
(
たいせつ
)
にしてゐる
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
珍客
(
ちんきやく
)
、
179
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を、
180
もしも
老臣
(
らうしん
)
共
(
ども
)
に
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
され、
181
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
から
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
られるやうな
事
(
こと
)
があつたとしたら、
182
それこそ
俺
(
おれ
)
も
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
だ。
183
地獄
(
ぢごく
)
と
極楽
(
ごくらく
)
へ
往復
(
わうふく
)
する
茶柄杓
(
ちやびしやく
)
の
中折
(
なかを
)
れ。
184
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
の
湯加減
(
ゆかげん
)
も、
185
俄
(
にはか
)
に
足茶釜
(
あしちやがま
)
の
底
(
そこ
)
ぬけ
騒
(
さわ
)
ぎをやらねばなるまい。
186
アーア、
187
何
(
なん
)
とかいい
工夫
(
くふう
)
はあるまいかな。
188
干
(
ひ
)
からびた
頭脳
(
づなう
)
から
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
しても、
189
よい
智慧
(
ちゑ
)
は
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ず、
190
どうしてマサカの
時
(
とき
)
の
準備
(
じゆんび
)
をしようかな』
191
と
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
192
胡坐
(
あぐら
)
をかいて、
193
燗徳利
(
かんどくり
)
を
前
(
まへ
)
に
転
(
ころ
)
がしたまま
思案
(
しあん
)
にくれてゐる。
194
暫
(
しば
)
らくしてタルチンはニツコと
笑
(
わら
)
ひ、
195
『イヤ、
196
流石
(
さすが
)
は
茶湯
(
ちやのゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
だ。
197
いい
智慧
(
ちゑ
)
が
浮
(
う
)
かんで
来
(
き
)
たぞ。
198
万々一
(
まんまんいち
)
不幸
(
ふかう
)
にして
太子
(
たいし
)
さまがお
出入
(
でいり
)
遊
(
あそ
)
ばさぬやうになつても
構
(
かま
)
はぬ。
199
よもやノメノメとあのスバール
姫
(
ひめ
)
を
殿中
(
でんちう
)
へ、
200
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
られる
筈
(
はず
)
はない。
201
さうすればキツト
此
(
この
)
タルチンが、
202
どつかへお
隠
(
かく
)
し
申
(
まを
)
さねばなるまい。
203
太子
(
たいし
)
もキツト、
204
さうして
呉
(
く
)
れと
仰有
(
おつしや
)
るに
定
(
き
)
まつてる。
205
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
考
(
かんが
)
へても、
206
それより
外
(
ほか
)
に
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
はないもの。
207
太子
(
たいし
)
さまだつて、
208
アリナさまだつて、
209
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
内所
(
ないしよ
)
でやつて
厶
(
ござ
)
る
事
(
こと
)
だから
弱味
(
よわみ
)
がある。
210
そこを
甘
(
うま
)
くつけ
入
(
い
)
つて、
211
あの
名玉
(
めいぎよく
)
を
処分
(
しよぶん
)
するのは
処世
(
しよせい
)
上
(
じやう
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
だ。
212
捨売
(
すてうり
)
にしても
二万
(
にまん
)
や
三万
(
さんまん
)
の
価値
(
かち
)
はある
玉
(
たま
)
だ。
213
僅
(
わづか
)
に
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
や
二千
(
にせん
)
円
(
ゑん
)
のつまみ
金
(
がね
)
を
貰
(
もら
)
つてヒヤヒヤとして
暮
(
くら
)
してゐるよりも、
214
さうなりや
二三万
(
にさんまん
)
円
(
ゑん
)
にでも
売
(
う
)
り
飛
(
と
)
ばし
215
トルマン
国
(
ごく
)
にでも
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
2151
立派
(
りつぱ
)
な
女房
(
にようばう
)
でも
貰
(
もら
)
つて
216
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
気楽
(
きらく
)
に
暮
(
くら
)
すが
一等
(
いつとう
)
だ。
217
俺
(
おれ
)
には
何
(
なん
)
とした
幸運
(
かううん
)
が
見舞
(
みま
)
うて
来
(
き
)
たのだらう、
218
エツヘヽヽヽ』
219
と
一人
(
ひとり
)
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
220
折
(
をり
)
から
聞
(
きこ
)
ゆる、
221
警鐘
(
けいしよう
)
乱打
(
らんだ
)
の
声
(
こゑ
)
、
222
タルチンは
足
(
あし
)
をひきずり
乍
(
なが
)
ら
窓
(
まど
)
の
戸
(
と
)
をあけて
外
(
そと
)
を
眺
(
なが
)
むれば、
223
タラハン
城下
(
じやうか
)
に
当
(
あた
)
つて、
2231
火災
(
くわさい
)
を
起
(
おこ
)
し
224
炎
(
ほのほ
)
の
舌
(
した
)
は
高
(
たか
)
く
大空
(
おほぞら
)
を
舐
(
なめ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
225
タル『ヤア、
226
此奴
(
こいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ。
227
御
(
お
)
得意先
(
とくいさき
)
が
火事
(
くわじ
)
にでも
会
(
あ
)
ふやうな
事
(
こと
)
があれば、
228
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
懐
(
ふところ
)
に
大影響
(
だいえいきやう
)
を
来
(
きた
)
す
所
(
ところ
)
だ。
229
そして
日頃
(
ひごろ
)
お
出入
(
でいり
)
の
情誼
(
じやうぎ
)
として
火事
(
くわじ
)
見舞
(
みまひ
)
に
行
(
ゆ
)
かねばなるまい。
230
どうやらあの
勢
(
いきほひ
)
では
容易
(
ようい
)
に
火事
(
くわじ
)
もおさまりさうにはないわい。
231
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
には
済
(
す
)
まないが
232
一
(
ひと
)
つ
留守
(
るす
)
を
頼
(
たの
)
んで
火事
(
くわじ
)
見舞
(
みまひ
)
に
出
(
で
)
かけようかな』
233
と
太
(
ふと
)
い
杖
(
つゑ
)
をつき
234
大女
(
おほをんな
)
の
袋
(
ふくろ
)
に
蹴
(
け
)
られて
痛
(
いた
)
んだ
足
(
あし
)
をチガチガさせ
乍
(
なが
)
ら、
235
離室
(
はなれ
)
の
茶室
(
ちやしつ
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
236
『もしもしお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
、
237
タラハン
城下
(
じやうか
)
は
大変
(
たいへん
)
な
火災
(
くわさい
)
が
起
(
おこ
)
つて
居
(
を
)
ります。
238
ここは
町
(
まち
)
を
余程
(
よほど
)
離
(
はな
)
れてゐますから、
239
メツタに
飛火
(
とびひ
)
もしませぬから、
240
安心
(
あんしん
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
241
私
(
わたくし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
お
出入先
(
でいりさき
)
へ
見舞
(
みまひ
)
に
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
りますから、
242
どうぞ
火事
(
くわじ
)
を
見物
(
けんぶつ
)
し
乍
(
なが
)
ら
留守
(
るす
)
をしてゐて
下
(
くだ
)
さいませ』
243
太子
(
たいし
)
『
成程
(
なるほど
)
、
244
大変
(
たいへん
)
な
大火事
(
おほくわじ
)
と
見
(
み
)
えるな。
245
此
(
この
)
調子
(
てうし
)
では、
246
どうやら
城内
(
じやうない
)
も
危険
(
きけん
)
が
迫
(
せま
)
る
恐
(
おそ
)
れがある。
247
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
よ
)
はここに
神妙
(
しんめう
)
にスバールと
留守
(
るす
)
をして
居
(
ゐ
)
るから、
248
余
(
よ
)
に
構
(
かま
)
はず
行
(
い
)
つて
来
(
く
)
るがいいわ』
249
タル『ハイ、
250
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します。
251
そんなら
之
(
これ
)
から
急
(
いそ
)
ぎ
見舞
(
みまひ
)
に
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
ります』
252
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
漿酸
(
ほうづき
)
提灯
(
ちやうちん
)
をぶらつかせ、
253
片手
(
かたて
)
に
杖
(
つゑ
)
をつき、
254
チガチガと
泥濘
(
でいねい
)
に
満
(
み
)
ちた
悪道
(
わるみち
)
を
尻
(
しり
)
きれになつた
下駄
(
げた
)
を
穿
(
うが
)
ち
出
(
いで
)
て
行
(
ゆ
)
く。
255
太子
(
たいし
)
『これ、
256
スバール、
257
随分
(
ずいぶん
)
壮観
(
さうくわん
)
ぢやないか。
258
余
(
よ
)
はまだあんな
大
(
おほ
)
きな
火事
(
くわじ
)
を
生
(
うま
)
れてから
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
はない。
259
火事
(
くわじ
)
と
云
(
い
)
ふものは
本当
(
ほんたう
)
に
勇
(
いさ
)
ましいものだな』
260
ス『
仰
(
おほ
)
せの
如
(
ごと
)
く
実
(
じつ
)
に
火事
(
くわじ
)
は
人気
(
にんき
)
のいいものです。
261
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
地上
(
ちじやう
)
に
蟻
(
あり
)
の
這
(
は
)
うてゐるのさへもハツキリ
見
(
み
)
えます。
262
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
火災
(
くわさい
)
にあうた
人
(
ひと
)
は
可愛
(
かあい
)
さうぢやありませぬか。
263
どうか
人命
(
じんめい
)
に
関
(
くわん
)
するやうな
事
(
こと
)
がなければよう
厶
(
ござ
)
いますがな』
264
太子
(
たいし
)
『ウン、
265
さうだな。
266
どうか
無事
(
ぶじ
)
にをさまればいいが。
267
あれあれだんだん
火
(
ひ
)
が
燃
(
も
)
え
拡
(
ひろ
)
がつて
来
(
き
)
た。
268
あのスツと
高
(
たか
)
く
白
(
しろ
)
く
光
(
ひか
)
つてゐる
壁
(
かべ
)
は
城内
(
じやうない
)
の
隅櫓
(
すみやぐら
)
だ。
269
火
(
ひ
)
は
隅櫓
(
すみやぐら
)
を
舐
(
なめ
)
出
(
だ
)
したぢやないか、
270
こいつア
大変
(
たいへん
)
だ。
271
さうして
大変
(
たいへん
)
な
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
272
余
(
よ
)
が
城内
(
じやうない
)
に
帰
(
かへ
)
つて
居
(
を
)
つたならば、
2721
又
(
また
)
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
したらうに
273
城内
(
じやうない
)
へ
飛火
(
とびひ
)
がしたりするやうな
事
(
こと
)
あれば、
274
忽
(
たちま
)
ち
俺
(
おれ
)
の
所在
(
ありか
)
を
老臣
(
らうしん
)
共
(
ども
)
が
尋
(
たづ
)
ねまはるに
違
(
ちが
)
ひない。
275
アリナが
甘
(
うま
)
くやつてくれればいいが、
276
アヽそれ
許
(
ばか
)
りが
気
(
き
)
にかかる』
277
と、
278
うなだれる。
279
ス『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
貴方
(
あなた
)
はお
心
(
こころ
)
が
弱
(
よわ
)
いぢやありませぬか。
280
夜前
(
やぜん
)
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
いました、
281
「お
前
(
まへ
)
の
側
(
そば
)
に
居
(
ゐ
)
るならば、
282
仮令
(
たとへ
)
天
(
てん
)
は
落
(
お
)
ち、
2821
地
(
ち
)
はくだけ
283
タラハン
城
(
じやう
)
は
焼
(
や
)
けおちても
敢
(
あへ
)
て
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
せない。
284
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
との
恋愛
(
れんあい
)
さへ、
285
完全
(
くわんぜん
)
に
維持
(
ゐぢ
)
されたら
何
(
なに
)
よりの
幸
(
さいはひ
)
だ。
286
余
(
よ
)
は
王位
(
わうゐ
)
も
富
(
とみ
)
も
城
(
しろ
)
も
捨
(
す
)
てた」と
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか。
287
チツとお
落
(
お
)
ち
付
(
つ
)
きなさい。
288
見
(
み
)
つともないぢやありませぬか』
289
と
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ。
290
太子
(
たいし
)
はスバールの
言葉
(
ことば
)
に
肝
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
し
乍
(
なが
)
ら、
291
さあらぬ
体
(
てい
)
にて、
292
『アツハヽヽヽ
如何
(
いか
)
にも
尤
(
もつと
)
も
千万
(
せんばん
)
、
293
火災
(
くわさい
)
なんか
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
するに
足
(
た
)
らないよ。
294
サア
夜分
(
やぶん
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
295
お
前
(
まへ
)
と
二人
(
ふたり
)
手
(
て
)
をひいて
郊外
(
かうぐわい
)
の
散歩
(
さんぽ
)
に
出
(
で
)
かけ
296
火事
(
くわじ
)
の
見物
(
けんぶつ
)
をしようではないか』
297
警鐘
(
けいしよう
)
乱打
(
らんだ
)
の
声
(
こゑ
)
は
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
聞
(
きこ
)
え、
298
民衆
(
みんしう
)
の
叫
(
さけ
)
ぶ
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
は
鯨波
(
げいは
)
の
如
(
ごと
)
く
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
りぬ。
299
(
大正一四・一・六
新一・二九
北村隆光
録)
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