霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 戦伝歌(せんでんか)〔一七四〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第4篇 月光徹雲 よみ(新仮名遣い):げっこうてつうん
章:第16章 戦伝歌 よみ(新仮名遣い):せんでんか 通し章番号:1740
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
カーク、サーマンが再び小屋の番をしているところへ、三五教の宣伝歌が聞こえてくる。
二人はデタラメな宣伝歌を歌って対抗しようとするが、怖気づいて水車小屋の地下に逃げ込んでしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-05-08 07:42:48 OBC :rm6816
愛善世界社版:218頁 八幡書店版:第12輯 232頁 修補版: 校定版:221頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001高天原(たかあまはら)宮柱(みやばしら)
002千木(ちぎ)(たか)()りて永久(とこしへ)
003(しづ)まりゐます伊都能売(いづのめ)
004(かみ)(みこと)(かしこ)みて
005山野(さんや)河海(かかい)(うち)(わた)
006照国別(てるくにわけ)(したが)ひて
007河鹿(かじか)(たうげ)(ふところ)
008谷間(たにま)()えて(やうや)くに
009(ほこら)(もり)辿(たど)りつき
010山口(やまぐち)浮木(うきき)(もり)()
011ライオン(がは)(うち)(わた)
012(あふひ)(ぬま)()(わた)
013(つき)(こころ)(きよ)めつつ
014彼方(あなた)此方(こなた)山々(やまやま)
015立籠(たてこも)りつつ国人(くにびと)
016(くる)しめなやむ曲神(まがかみ)
017言向和(ことむけやは)梓弓(あづさゆみ)
018()きて(かへ)らぬハルの(うみ)
019(たま)御舟(みふね)()(まか)
020数多(あまた)(ひと)(すく)ひつつ
021スガの(みなと)上陸(じやうりく)
022(かみ)(をしへ)(つた)へつつ第67巻第10章「スガの長者」参照
023(また)もや山野(さんや)(うち)(わた)
024照国別(てるくにわけ)()(きみ)
025(かみ)(いくさ)(がつ)せむと
026()()についで(すす)(をり)
027(たつみ)(かた)(とき)(こゑ)
028炎々(えんえん)(てん)(こが)しつつ
029タラハン城市(じやうし)大火災(だいくわさい)
030(すく)はにやならぬと雄健(をたけ)びし
031(あゆ)みを(はこ)(をり)もあれ
032曲神(まがかみ)(ども)(さへぎ)られ
033五日(いつか)六日(むゆか)(いたづら)
034あらぬ月日(つきひ)(すご)しつつ
035標渺(へうぼう)千里(せんり)荒野原(あらのはら)
036(すす)()るこそ(いさ)ましき
037(てん)日月(じつげつ)()(わた)
038下界(げかい)()らし(たま)はむと
039(こころ)をなやませ(たま)へども
040中津(なかつ)御空(みそら)黒雲(くろくも)
041十重(とへ)二十重(はたへ)(ふさ)がりて
042天津(あまつ)日影(ひかげ)(かく)しつつ
043初夏(しよか)(ころ)とは()(なが)
044まだ肌寒(はださむ)秋心地(あきごこち)
045()()(うゑ)(いね)(なへ)
046発達(はつたつ)あしく(あか)らみて
047飢饉(ききん)凶兆(きようてう)(あら)はせり
048あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
049御霊(みたま)(さちは)ひましまして
050(しも)万民(ばんみん)罪科(つみとが)
051(ゆる)させ(たま)(また)(かみ)
052()ちて覇張(はば)れる曲人(まがびと)
053(こころ)(きよ)(つみ)をとり
054(まこと)(ひと)となさしめて
055(あめ)(した)には(あだ)もなく
056(やみ)(けが)れもなき(まで)
057()らさせ(たま)惟神(かむながら)
058梅公別(うめこうわけ)宣伝使(せんでんし)
059(いづ)(みたま)瑞霊(みづみたま)
060(あは)(たま)ひてなりませる
061伊都能売(いづのめ)(みたま)大神(おほかみ)
062御前(みまへ)慴伏(ひれふ)()(まつ)
063朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
064(つき)()つとも()くるとも
065仮令(たとへ)大地(だいち)()るるとも
066(まこと)(ひと)つの三五(あななひ)
067(かみ)(をしへ)(したが)へば
068この()(なか)(いつ)として
069()(おそ)るべきものはなし
070(かみ)(おもて)(あら)はれて
071(かみ)(おに)とを立別(たてわ)ける
072(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
073(こころ)(きよ)大直日(おほなほひ)
074(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
075(ただ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
076(ひろ)(こころ)()(なほ)
077(つみ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
078(ゆる)して(とほ)(かみ)(みち)
079行手(ゆくて)(まが)(あら)はれて
080(わが)()如何(いか)なる(あだ)なすも
081(かみ)(めぐみ)(つつ)まれし
082(まこと)身魂(みたま)(なに)かあらむ
083(おそ)(きた)れよ曲津(まがつ)(かみ)
084(たたか)(いど)めよ大蛇(をろち)(ども)
085(われ)には(いづ)(そな)へあり
086生言霊(いくことたま)武器(ぶき)をもて
087幾億万(いくおくまん)魔軍(まいくさ)
088(またた)(うち)にいと(やす)
089言向和(ことむけやは)(すす)むべし
090三千(さんぜん)世界(せかい)(うめ)(はな)
091一度(いちど)(ひら)(かみ)(のり)
092(ひら)いて()りて()(むす)
093月日(つきひ)(つち)(おん)()
094(この)()(すく)生神(いきがみ)
095高天原(たかあまはら)()れませり
096あゝ(いさま)しや(いさま)しや
097(かみ)(よさ)しの宣伝使(せんでんし)
098(つき)御国(みくに)(くだ)()
099いろいろ雑多(ざつた)(わざはひ)
100(もも)(くるし)甘受(かんじゆ)しつ
101無人(むじん)(さかひ)()(ごと)
102春野(はるの)(かぜ)(わた)るごと
103(かみ)大道(おほぢ)(ひら)()
104あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
105御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
106 水車(すいしや)小屋(ごや)立番(たちばん)(やと)はれてゐたカーク、107サーマンの二人(ふたり)宣伝歌(せんでんか)(こゑ)()いて、108少時(しばらく)(みみ)(かたむ)けてゐた。
109カーク『オイ、110サーマン、111どうやらあの(こゑ)三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)(こゑ)のやうだぞ。112(なん)とはなしに心持(こころもち)(わる)くなつて()たぢやないか。113もしもあんな(やつ)此処(ここ)へでも、1131やつて()よつたら114(たちま)地下室(ちかしつ)太子(たいし)遭難(さうなん)看破(かんぱ)し、115(おれ)(たち)霊縛(れいばく)とやらをかけ(たふ)しておき、116肝心(かんじん)(たま)(かつ)(さら)へて、117(かへ)るかも()れないぞ。118(さいはひ)にして(ほか)(みち)(とほ)ればいいが、119どうやら(うま)()つて此方(こちら)()るやうな塩梅(あんばい)(しき)だ。120此奴(こいつ)(なん)とか(かんが)へねばなるまいぞ』
121サーマン『ウン、122いかにも、123身体(からだ)がビクビク(ふる)()して()た。124金玉寺(きんぎよくじ)和尚(おしやう)上京(じやうきやう)しさうになつて()たよ』
125カ『(むか)ふも宣伝使(せんでんし)だ。126宣伝使(せんでんし)(おつ)(ぱら)ふには、127此方(こつち)宣伝使(せんでんし)真似(まね)をせなくちやなるまい。128(れい)(もつ)(れい)(たい)し、129(たい)(もつ)(たい)(たい)し、130(ちから)(もつ)(ちから)(たい)するのが神軍(しんぐん)兵法(へいはふ)だからのう』
131サ『宣伝歌(せんでんか)(うた)へと()つたつて、132(おれ)不断(ふだん)から無信心(ぶしんじん)だからウラル(けう)宣伝歌(せんでんか)なんかチツとも()らぬわ。133()めよ(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)(やみ)よ」(ぐらゐ)()つてるが、134それから(さき)はネツカラ記憶(きおく)(ぞん)してゐないからな』
135カ『ナーニ、136そこはいい加減(かげん)出鱈目(でたらめ)(しやべ)るのだ。137(こゑ)さへさしておけばいいのだ。138(あま)明瞭(はつきり)した(こと)()ふとアラ()えて(かへつ)威厳(ゐげん)のないものだ。139チツタ(わけ)(わか)らぬ(こと)(さへづ)(はう)が、140余程(よほど)(おく)があるやうに()えて、141(てき)退散(たいさん)させるのに最善(さいぜん)方法(はうはふ)だ。142マア貴様(きさま)から(ひと)つやつて()よ。143肝心要(かんじんかなめ)正念場(しやうねんば)になりや、144このカークさまが堂々(だうだう)言霊(ことたま)発射(はつしや)するから、145()先陣(せんぢん)として貴様(きさま)出鱈目(でたらめ)宣伝歌(せんでんか)をやつて()い。146まだ距離(きより)(とほ)いから(なに)をやつてもいい、147(ただ)(うた)らしく(きこ)へたらよい。148此方(こちら)(うた)明瞭(はつきり)(わか)るやうになつたら、149(おれ)本陣(ほんぢん)(うけたま)はるのだ。150いいか(ひと)つやつて()い』
151サ『(おれ)貴様(きさま)()(とほ)牝鶏(めんどり)だから到底(たうてい)(うた)へないよ。152どうか(うた)はお(まへ)専門(せんもん)にしておいてくれ。153一生(いつしやう)(たの)みだから』
154カ『よし、155(うた)へなら(おれ)一人(ひとり)引受(ひきう)けるが、156その(かは)り、157(この)(あひだ)()つた(ひやく)(ゑん)(うち)二十(にじふ)(ゑん)此方(こちら)へ、158歌賃(うたちん)として(わた)すだらうな』
159サ『エー、160二十(にじふ)(ゑん)()さにやならぬなら(おれ)(うた)つて()せる。161その(かは)貴様(きさま)(うた)ふのだぞ。162貴様(きさま)(うた)はねば此方(こちら)二十(にじふ)(ゑん)(もら)ふのだ』
163カ『ヨシヨシ164もし(おれ)がよう(うた)はなんだら(ひやく)(ゑん)でもやるわ。165サア(うた)つたり(うた)つたり、166(てき)間近(まぢか)押寄(おしよ)せたりだ、167(はや)(はや)く』
168サ『エー、169(やかま)しい(をとこ)だな。170何分(なにぶん)(はら)貯蓄(ちよちく)がないのだから、171さう着々(ちやくちやく)()るものかい。172(かか)()()()すのは、173随分(ずいぶん)(くる)しいと()ふけど、174(なに)(ほど)難産(なんざん)()つても(はら)(なか)にあるものを()すのだから(やす)いものだ。175(おれ)(たち)(はら)にないものを()すのだから(くる)しいものだよ。176アーア二十(にじふ)(ゑん)金儲(かねまう)けは(つら)いものだな』
177カ『エー、178グヅグヅ()はずに(はや)(うた)つたり(うた)つたり』
179サ『()めよ(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)(やみ)
180(やみ)(あと)には(つき)()
181つきはつきぢやが(さか)づきぢや
182(おれ)のお(かか)のサカヅキは
183何処(どこ)にあるかと(たづ)ねたら
184草野(くさの)(はら)(たに)(そこ)
185(ふね)のやうな(かたち)した
186(いけ)真中(まんなか)(しま)がある』
187カ『馬鹿(ばか)188そんな宣伝歌(せんでんか)(なに)有難(ありがた)い。189もつとしつかり()はぬかい』
190サ『(うま)れてから(はじ)めての(うた)だもの、191さううまく()くものかい。192さう茶々(ちやちや)()れない。193サア(これ)からやり(なほ)しだ。194しつかり()け、
195大宮山(おほみややま)(かみ)(もり)
196千木(ちぎ)(たか)()りて永久(とこしへ)
197をさまり(たま)(かみ)さまは
198盤古(ばんこ)神王(しんのう)()(こと)
199(この)(かみ)(さま)はカラピンの
200大王(だいわう)(さま)氏神(うぢがみ)
201()(この)(ごろ)(なん)として
202あれ()(ちから)()いのだらう
203大切(だいじ)大切(だいじ)氏子(うぢこ)さま
204カラピン(わう)のお(しろ)まで
205飛火(とびひ)(いた)して大切(たいせつ)
206宝物(たからもの)()けたのは
207(かみ)守護(しゆご)のない(しるし)
208(いま)洋行(やうかう)流行(はや)るので
209神王(しんのう)(さま)沢山(たくさん)
210旅費(りよひ)(こしら)(ふね)()
211常世(とこよ)(くに)(わた)つたか
212(みや)眷族(けんぞく)八咫烏(やたがらす)
213一月前(ひとつきまへ)から一匹(いつぴき)
214(もり)でカアカア()きよらぬ
215(ただ)(かな)しげに杜鵑(ほととぎす)
216ホヽヽヽヽ(ほろ)ぶと()いてゐる
217右守(うもり)(かみ)(たの)まれて
218カラピン(わう)太子(たいし)をば
219懸賞付(けんしやうつき)(しば)()
220地底(ちてい)牢獄(らうごく)(つな)いだは
221(みな)(おれ)(たち)功名(こうみやう)
222もし(かみ)さまが(ござ)るなら
223氏子(うぢこ)()れます太子(たいし)をば
224こんな(ひど)()()はしたら
225(かなら)(ばち)をあてるだらう
226チツとも(たたり)のないのんは
227(かみ)がお不在(るす)(しるし)ぞや
228それ それ それ それ宣伝歌(せんでんか)
229だんだんだんだん(ちか)うなつた
230オイオイカーク用意(ようい)せよ
231交代(かうたい)時間(じかん)(せま)つたぞ
232(おれ)宣伝歌(せんでんか)(たね)ぎれだ
233もう(この)(うへ)逆様(さかさま)
234()つた(ところ)(しらみ)さへ
235こぼれる気遣(きづか)ひない(ほど)
236どうやら鼻血(はなぢ)()ちさうだ
237(むね)(はら)とはガラガラと
238大騒擾(だいさうぜう)勃発(ぼつぱつ)
239地震(ぢしん)(かみなり)()(くるま)
240(へそ)(あた)りが(あつ)うなつた
241(へそ)(ちや)でも()かすのか
242(あつ)くて(くる)しうて(たま)らない
243これこの(とほ)(あせ)()
244こら こら こら こらカーク()
245(はや)(かは)つて(うた)はぬか
246白馬(はくば)姿(すがた)()()した
247どうやら立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)
248此方(こちら)(むか)つて()るやうだ
249盤古(ばんこ)神王(しんのう)塩長彦(しほながひこ)
250不在(るす)(かみ)さまシツかりと
251(わたし)(ねがひ)()きなされ
252いよいよ(うた)(たね)ぎれだ
253あゝ(かな)はぬ(かな)はない
254目玉(めだま)()()()るやうだ
255オイ、256カーク(これ)二十(にじふ)(ゑん)価値(ねうち)はあるだらう。257サア(はや)貴様(きさま)もやらぬかい。258(てき)間近(まぢか)押寄(おしよ)せたぢやないか』
259カ『よーし、260(おれ)武者振(むしやぶり)()()れ、261立派(りつぱ)(うた)だぞ、262ヘン、
263右守(うもり)(かみ)(つか)へたる
264(おれ)(まこと)のカークさま
265(あたま)をカーク(はぢ)をカーク
266(しま)ひの(はて)には疥癬(ひぜん)カク
267(ひと)礼儀(れいぎ)をカク(やつ)
268(おれ)ではないぞや(いま)ここに
269吠面(ほえづら)かわいて(ふる)うてゐる
270小童(こわつぱ)野郎(やらう)のサーマンだ
271カークの(ごと)腰抜(こしぬけ)
272(おれ)相棒(あひぼう)にした(やつ)
273サツパリ(むか)ふの()えぬ(やつ)
274右守(うもり)(かみ)()がきかぬ
275どことはなしに()がおくれ
276(むか)(じし)には()()たず
277(ちか)(きこ)ゆる宣伝歌(せんでんか)
278(むね)(ひび)いてせつろしい
279いやいやまてまて(これ)からだ
280捻鉢巻(ねぢはちまき)をリンとしめ
281(ふた)つの(うで)(より)をかけ
282ドンドンドンと四股(しこ)をふみ
283三十六(さんじふろく)(ぺう)真中(まんなか)
284(おれ)陣屋(ぢんや)(さだ)めつつ
285いかなる(つよ)敵軍(てきぐん)
286(おし)よせ()るも(おつ)()らし
287(なぐ)(たふ)して吼面(ほえづら)
288かわかせやるは()のあたり
289盤古(ばんこ)神王(しんのう)塩長彦(しほながひこ)
290(うづ)大神(おほかみ)(まも)りませ
291あゝあ益々(ますます)(ちか)よつた
292こんな(ところ)宣伝使(せんでんし)
293やつて()たならなんとせう
294どうか彼方(あちら)方角(はうがく)
295(まよ)うて()くやうにして()しい
296(まこと)(かみ)があるならば
297(わし)(ねがひ)()くだらう
298こりやこりやサーマン地下室(ちかしつ)
299(こころ)(くば)れよ油断(ゆだん)すな
300大切(だいじ)(たま)()られては
301(あと)言訳(いひわけ)ない(ほど)
302あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
303かうなる(うへ)地下室(ちかしつ)
304(かく)れて(ござ)太子(たいし)こそ
305(かへ)つて(おれ)より幸福(しあはせ)
306ほんとに怪体(けたい)(こゑ)がする
307彼奴(あいつ)(うた)()(たび)
308(はら)はグレグレグレついて
309胸元(むなもと)(くるし)()げさうだ
310(にはか)(あたま)(いた)()
311(むね)はつかへる(はら)(いた)
312(あし)付根(つけね)がガクガクと
313遠慮(ゑんりよ)もなしに(ふる)()
314あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
315(わづ)(ひやく)(りやう)(かね)(もら)うて
316こんな(つら)()をさせられちや
317ほんとに(まこと)につまらない
318あの(ひやく)(りやう)(たま)()
319(いのち)(ひと)つと掛替(かけがへ)
320(おも)へば(おも)へば(おれ)(たち)
321(いのち)はお(やす)いものだな
322あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
323(かな)はぬ(かな)はぬ、324到底(たうてい)(おれ)(たち)(てこ)にも(ぼう)にも()代物(しろもの)ではないわ。325一層(いつそう)地下室(ちかしつ)(もぐ)()まうか。326(かへ)つてこんな(ところ)におると宣伝使(せんでんし)()につき、327(くび)(たま)でも引抜(ひきぬ)かれちや大変(たいへん)だ。328三十六(さんじふろく)(けい)()ぐるが(おく)()329サーマンだつて地下室(ちかしつ)(もぐ)()んで土竜(むぐらもち)真似(まね)をしてゐやがる。330ナーニ(おれ)一人(ひとり)頑張(ぐわんば)必要(ひつえう)があらうか』
331()(なが)水車(すいしや)小屋(ごや)(なか)(あわただ)しく(はし)()332ドンドンドンと地下室(ちかしつ)さして(くだ)()く。
333大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 北村隆光録)
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