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第69巻(申の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第68巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 名花移植
01 貞操論
〔1725〕
02 恋盗詞
〔1726〕
03 山出女
〔1727〕
04 茶湯の艶
〔1728〕
第2篇 恋火狼火
05 変装太子
〔1729〕
06 信夫恋
〔1730〕
07 茶火酌
〔1731〕
08 帰鬼逸迫
〔1732〕
第3篇 民声魔声
09 衡平運動
〔1733〕
10 宗匠財
〔1734〕
11 宮山嵐
〔1735〕
12 妻狼の囁
〔1736〕
13 蛙の口
〔1737〕
第4篇 月光徹雲
14 会者浄離
〔1738〕
15 破粋者
〔1739〕
16 戦伝歌
〔1740〕
17 地の岩戸
〔1741〕
第5篇 神風駘蕩
18 救の網
〔1742〕
19 紅の川
〔1743〕
20 破滅
〔1744〕
21 祭政一致
〔1745〕
余白歌
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第一五章
破粋者
(
やぶれすゐしや
)
〔一七三九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第4篇 月光徹雲
よみ(新仮名遣い):
げっこうてつうん
章:
第15章 破粋者
よみ(新仮名遣い):
やぶれすいしゃ
通し章番号:
1739
口述日:
1925(大正14)年01月30日(旧01月7日)
口述場所:
月光閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
秋野が原のあたりに人気もない片隅に、古ぼけた水車小屋が立っていた。カーク、サーマンという二人の男が小屋の番をしている。
二人は右守サクレンスの手下であった。
これより以前に、太子とスバール姫は右守の手下たちに捕らえて、小屋の地下室に幽閉されていたのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6815
愛善世界社版:
204頁
八幡書店版:
第12輯 226頁
修補版:
校定版:
207頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
那美山
(
なみやま
)
の
南麓
(
なんろく
)
、
002
秋野
(
あきの
)
ケ
原
(
はら
)
の
片隅
(
かたすみ
)
に
古
(
ふる
)
ぼけた
茅葺
(
かやぶき
)
の
水車
(
すいしや
)
小屋
(
ごや
)
が
建
(
た
)
つてゐる。
003
附近
(
あたり
)
に
人家
(
じんか
)
もなく、
004
見
(
み
)
わたす
限
(
かぎ
)
り、
005
東
(
とう
)
南
(
なん
)
西
(
せい
)
の
三方
(
さんぱう
)
は
原野
(
げんや
)
の
萱草
(
かやぐさ
)
が
天
(
てん
)
に
連
(
つら
)
なつてゐる。
006
此
(
この
)
水車
(
すいしや
)
小屋
(
ごや
)
は
水車
(
みづぐるま
)
の
枠
(
わく
)
も
損
(
そん
)
じ
杵
(
きね
)
も
折
(
を
)
れ、
007
所々
(
ところどころ
)
に
雨
(
あめ
)
もりがして、
008
今
(
いま
)
は
全然
(
ぜんぜん
)
活動
(
くわつどう
)
を
中止
(
ちうし
)
してゐる。
009
カーク、
010
サーマンの
二人
(
ふたり
)
は
何事
(
なにごと
)
か
此
(
この
)
茅屋
(
あばらや
)
に
秘密
(
ひみつ
)
の
蔵
(
ざう
)
するものの
如
(
ごと
)
く、
011
お
勤
(
つと
)
め
大事
(
だいじ
)
と
蛙面
(
かはづづら
)
をさらして
仁王
(
にわう
)
の
如
(
ごと
)
く
仕
(
つか
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
012
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
013
カーク『オイ、
014
サーマン、
015
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
は
随分
(
ずいぶん
)
骨
(
ほね
)
が
折
(
を
)
れたぢやないか。
016
彼
(
あ
)
の
古寺
(
ふるでら
)
へ
十
(
じふ
)
人
(
にん
)
づつの
手下
(
てした
)
を
引
(
ひき
)
つれ、
017
つかまえに
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
や、
018
俺
(
おれ
)
も「
到底
(
たうてい
)
此奴
(
こいつ
)
ア
駄目
(
だめ
)
かなア……」と
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
匙
(
さぢ
)
を
投
(
な
)
げたが、
019
断
(
だん
)
じて
行
(
おこな
)
へば
鬼神
(
きじん
)
も
之
(
これ
)
を
避
(
さ
)
くとかいつて、
020
たうとう
物
(
もの
)
にした。
021
あの
時
(
とき
)
に
俺
(
おれ
)
の
勇気
(
ゆうき
)
が
途中
(
とちう
)
に
挫
(
くじ
)
けやうものなら、
022
サツパリ
目的物
(
もくてきぶつ
)
は
取逃
(
とりのが
)
し、
023
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
づつの
懸賞金
(
けんしやうきん
)
は
駄目
(
だめ
)
になる
所
(
ところ
)
だつた。
024
汝
(
きさま
)
等
(
たち
)
も
俺
(
おれ
)
のお
蔭
(
かげ
)
で、
025
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
の
大金
(
たいきん
)
にありついたのだから、
026
チツとは
俺
(
おれ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
も
知
(
し
)
つてゐるだらうな』
027
サーマン『ヘン、
028
偉
(
えら
)
相
(
さう
)
に
云
(
い
)
ふない。
029
汝
(
きさま
)
は
太子
(
たいし
)
の
一瞥
(
いちべつ
)
に
会
(
あ
)
うて、
030
ビリビリと
震
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し、
031
地上
(
ちじやう
)
へ
平太張
(
へたば
)
つて、
032
息
(
いき
)
をつめ、
033
物
(
もの
)
さへ
碌
(
ろく
)
によう
云
(
い
)
はなかつたぢやないか。
034
其
(
その
)
時
(
とき
)
、
035
俺
(
おれ
)
が「オイ、
036
カーク、
037
しつかりせぬかい」と
靴
(
くつ
)
で
汝
(
きさま
)
の
尻
(
けつ
)
を
蹴
(
け
)
つてやつたので、
038
漸
(
やうや
)
く
輿
(
みこし
)
を
上
(
あ
)
げよつたぢやないか。
039
行
(
い
)
きなり、
040
女
(
あま
)
つちよに
睾丸
(
きんたま
)
をつかまれて
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
青
(
あを
)
くなり、
041
歯
(
は
)
をくひしばり
白目
(
しろめ
)
許
(
ばか
)
りにしやがつて、
042
フンのびた
時
(
とき
)
のザマつたらなかつたよ、
043
余
(
あま
)
り
偉
(
えら
)
相
(
さう
)
に
云
(
い
)
ふものぢやないワ』
044
カ『それだつて、
045
太子
(
たいし
)
のカークれ
場所
(
ばしよ
)
は
此
(
この
)
古寺
(
ふるでら
)
だと、
046
カーク
信
(
しん
)
を
以
(
もつ
)
て
報告
(
はうこく
)
したのは
俺
(
おれ
)
ぢやないか。
047
それだから
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
俺
(
おれ
)
は
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
の
一番槍
(
いちばんやり
)
、
048
誉
(
ほま
)
れは
天下
(
てんか
)
にカークカークたるものだ』
049
サ『
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
発見者
(
はつけんしや
)
だと
云
(
い
)
つても、
050
ヤツパリ
俺
(
おれ
)
の
勇気
(
ゆうき
)
がなかつたら、
051
汝
(
きさま
)
はあの
山奥
(
やまおく
)
で
冷
(
つめ
)
たくなり、
052
狼
(
おほかみ
)
共
(
ども
)
の
餌食
(
ゑじき
)
になつてゐる
代物
(
しろもの
)
だ。
053
命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
のサーマンさまだぞ。
054
オイ
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
の
内
(
うち
)
五十
(
ごじふ
)
両
(
りやう
)
位
(
ぐらゐ
)
俺
(
おれ
)
にボーナスを
出
(
だ
)
しても、
055
余
(
あま
)
り
損
(
そん
)
はいくまいぞ。
056
五十
(
ごじふ
)
両
(
りやう
)
で
命
(
いのち
)
が
助
(
たす
)
かつたと
思
(
おも
)
へば
安
(
やす
)
いものだ。
057
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
いても
一切
(
いつさい
)
衆生
(
しゆじやう
)
が
成仏
(
じやうぶつ
)
するんだからなア』
058
カ『ヘン、
059
欲
(
よく
)
な
事
(
こと
)
をいふない。
060
此方
(
こつち
)
の
方
(
はう
)
へ
五十
(
ごじふ
)
両
(
りやう
)
よこせ。
061
右守
(
うもり
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
062
誰
(
たれ
)
も
誰
(
たれ
)
も
平等
(
びやうどう
)
に、
063
皆
(
みな
)
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
づつ
渡
(
わた
)
しやがつたものだから、
064
論功
(
ろんこう
)
行賞
(
かうしやう
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て、
065
非常
(
ひじやう
)
に
不公平
(
ふこうへい
)
があるのだ。
066
俺
(
おれ
)
やモウこんな
淋
(
さび
)
しい
所
(
ところ
)
で、
067
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
僅
(
わづか
)
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
やそこらの
月給
(
げつきふ
)
を
貰
(
もら
)
つて
居
(
を
)
るこた
厭
(
いや
)
になつた。
068
俺
(
おれ
)
やモウ
明日
(
あした
)
から
辞職
(
じしよく
)
するから、
069
汝
(
きさま
)
一人
(
ひとり
)
で
番
(
ばん
)
するがよからう。
070
汝
(
きさま
)
は
自
(
みづか
)
ら
称
(
しよう
)
して
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
だと
云
(
い
)
つてゐやがるから、
071
虎
(
とら
)
が
来
(
き
)
たつて、
072
狼
(
おほかみ
)
が
来
(
き
)
たつて
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だらう、
073
ウツフフフ。
074
とつけ
もない
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
現
(
あら
)
はれたものだ、
075
イツヒヽヽヽ』
076
サ『コリヤ、
077
カーク、
078
余
(
あま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
079
お
経
(
きやう
)
の
文句
(
もんく
)
にも、
080
「
曩
(
のう
)
莫
(
まく
)
三
(
さー
)
満
(
まん
)
多
(
だ
)
」といふ
事
(
こと
)
があるぢやないか。
081
「
三
(
さー
)
満
(
まん
)
多
(
だ
)
」さへ
唱
(
とな
)
へたら、
082
三災
(
さんさい
)
七厄
(
しちやく
)
も
立所
(
たちどころ
)
に
消滅
(
せうめつ
)
し、
083
豺狼
(
さいらう
)
毒蛇
(
どくじや
)
盗人
(
ぬすびと
)
の
難
(
なん
)
も
084
火難
(
くわなん
)
水難
(
すいなん
)
剣
(
けん
)
の
難
(
なん
)
も
085
一遍
(
いつぺん
)
に
逃
(
のが
)
れるという
結構
(
けつこう
)
なお
経
(
きやう
)
だよ。
086
その
名
(
な
)
をつけてるサー
満
(
まん
)
だから、
087
俺
(
おれ
)
は
即
(
すなは
)
ち
天下
(
てんか
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
サーマンといふのだ、
088
エツヘヽヽヽ』
089
カ『
併
(
しか
)
し
地下室
(
ちかしつ
)
の
太子
(
たいし
)
は
何
(
ど
)
うしてゐるだらう。
090
舌
(
した
)
でも
噛
(
か
)
んで
死
(
し
)
によつたら
大変
(
たいへん
)
だがなア。
091
「どこ
迄
(
まで
)
も
殺
(
ころ
)
さないやうにせ、
092
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
与
(
あた
)
へず、
093
干殺
(
ほしころ
)
せ」と、
094
右守司
(
うもりのかみ
)
の
御
(
ご
)
内命
(
ないめい
)
だから、
095
自殺
(
じさつ
)
でもやられちや、
096
忽
(
たちま
)
ち
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
首問題
(
くびもんだい
)
だぞ』
097
サ『そんな
心配
(
しんぱい
)
はすな。
098
何
(
なん
)
というても
隣室
(
りんしつ
)
に
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
の
美人
(
びじん
)
が
這入
(
はい
)
つてゐるのだもの、
099
あの
細
(
ほそ
)
い
窓
(
まど
)
の
穴
(
あな
)
から
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
合
(
あ
)
うて、
100
甘
(
あま
)
い
囁
(
ささや
)
きをつづけ、
101
楽
(
たのし
)
く
面白
(
おもしろ
)
く
平然
(
へいぜん
)
として
日夜
(
にちや
)
を
送
(
おく
)
られるかも
知
(
し
)
れぬ。
102
吾々
(
われわれ
)
下司
(
げす
)
下郎
(
げらう
)
の
心理
(
しんり
)
状態
(
じやうたい
)
とは
又
(
また
)
、
103
格別
(
かくべつ
)
違
(
ちが
)
つたものだからのう』
104
『
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
太子
(
たいし
)
だつて
美人
(
びじん
)
の
面
(
つら
)
許
(
ばか
)
り
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つても
腹
(
はら
)
は
膨
(
ふく
)
れないよ。
105
諺
(
ことわざ
)
にも……
腹
(
はら
)
がへつては
戦争
(
いくさ
)
が
出来
(
でき
)
ぬ……と
云
(
い
)
ふぢやないか。
106
饑渇
(
きかつ
)
に
迫
(
せま
)
つて
恋
(
こひ
)
だの
鮒
(
ふな
)
だのと、
107
そんな
陽気
(
やうき
)
な
事
(
こと
)
思
(
おも
)
うてゐられるか。
108
汝
(
きさま
)
も
余程
(
よほど
)
理解
(
りかい
)
のない
奴
(
やつ
)
だなア』
109
サ『ナアニ、
110
「
兎角
(
とかく
)
浮世
(
うきよ
)
は
色
(
いろ
)
と
酒
(
さけ
)
」と、
111
俗謡
(
ぞくえう
)
にもある
通
(
とほ
)
り、
112
飯
(
めし
)
よりも
酒
(
さけ
)
が
大事
(
だいじ
)
だ、
113
酒
(
さけ
)
よりも
大切
(
たいせつ
)
なは
色
(
いろ
)
だ。
114
其
(
その
)
色女
(
いろをんな
)
と
仮令
(
たとへ
)
隔
(
へだ
)
てはあるにしても、
115
毎日
(
まいにち
)
顔
(
かほ
)
見合
(
みあ
)
はして、
116
甘
(
あま
)
つたるい
事
(
こと
)
いつて
楽
(
たの
)
しんでゐる
太子
(
たいし
)
の
胸中
(
きようちう
)
は、
117
暖風
(
だんぷう
)
春
(
はる
)
の
野
(
の
)
を
渡
(
わた
)
るが
如
(
ごと
)
き
心持
(
こころもち
)
でゐられるだらうよ。
118
恋
(
こひ
)
は
生命
(
せいめい
)
の
源泉
(
げんせん
)
だと
云
(
い
)
ふぢやないか。
119
俺
(
おれ
)
だつてあんな
美人
(
びじん
)
に
恋
(
こひ
)
されるのなら、
120
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
や
千
(
せん
)
日
(
にち
)
、
121
一杯
(
いつぱい
)
の
水
(
みづ
)
を
呑
(
の
)
まいでも、
122
一椀
(
いちわん
)
の
食
(
しよく
)
をとらいでも
得心
(
とくしん
)
だ。
123
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
天下
(
てんか
)
の
名誉
(
めいよ
)
だからなア』
124
カ『アツハヽヽヽ、
125
法外
(
はふはづ
)
れの
馬鹿
(
ばか
)
野郎
(
やらう
)
だなア。
126
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
断
(
た
)
てば
人間
(
にんげん
)
は
死
(
し
)
ぬぢやないか……
127
死
(
し
)
んで
花実
(
はなみ
)
が
咲
(
さ
)
くものか……といふ
俗謡
(
ぞくえう
)
があるだらう。
128
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
命
(
いのち
)
が
資本
(
しほん
)
だ。
129
人間
(
にんげん
)
は
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
取
(
と
)
り
命
(
いのち
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
保
(
たも
)
つてこそ、
130
恋
(
こひ
)
といふものの
味
(
あぢ
)
はひが
分
(
わか
)
るのだ。
131
筍笠
(
たけのこがさ
)
のやうに
骨
(
ほね
)
と
皮
(
かは
)
と
筋
(
すぢ
)
とになつて
痩衰
(
やせおとろ
)
へ
胃病薬
(
ゐびやうやく
)
の
看板
(
かんばん
)
の
様
(
やう
)
に
壁下地
(
かべしたぢ
)
が
現
(
あら
)
はれ、
132
手足
(
てあし
)
は
筋骨
(
すぢぼね
)
立
(
た
)
つて
竹細工
(
たけざいく
)
に
濡
(
ぬ
)
れ
紙
(
がみ
)
をはつたやうなスタイルになつては
133
恋
(
こひ
)
も
宮
(
みや
)
もあつたものかい』
134
サ『
恋
(
こひ
)
でも
宮
(
みや
)
でもないよ。
135
海魚
(
うみざかな
)
の
王
(
わう
)
たる
鯛子
(
たひし
)
様
(
さま
)
だ。
136
それだから
太子
(
たいし
)
霊従
(
れいじう
)
の
行動
(
かうどう
)
を
遊
(
あそ
)
ばすのだ。
137
政治
(
せいぢ
)
なんか
如何
(
どう
)
でも
可
(
よ
)
い、
138
親
(
おや
)
なんか
如何
(
どう
)
でも
可
(
よ
)
い、
139
自分
(
じぶん
)
の
恋
(
こひ
)
の
欲望
(
よくばう
)
さへ
遂
(
と
)
げれば
人生
(
じんせい
)
はそれで
可
(
い
)
いのだ……などと
云
(
い
)
つて、
140
あらう
事
(
こと
)
か、
141
あろまい
事
(
こと
)
か、
142
山海
(
さんかい
)
に
等
(
ひと
)
しき
養育
(
やういく
)
の
恩
(
おん
)
を
受
(
う
)
けた
父親
(
てておや
)
の
難病
(
なんびやう
)
を
見捨
(
みす
)
てて、
143
好
(
す
)
いた
女
(
をんな
)
と
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
随徳寺
(
ずゐとくじ
)
をきめこむといふ
粋
(
すゐ
)
なお
方
(
かた
)
だからなア』
144
カ『それだから
親
(
おや
)
の
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
つて、
145
こんな
所
(
ところ
)
へ
投
(
なげ
)
込
(
こ
)
まれたのだ。
146
つまり
吾
(
わが
)
身
(
み
)
から
出
(
で
)
た
錆
(
さび
)
だから、
147
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でも
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
148
……
天
(
てん
)
のなせる
災
(
わざはひ
)
は
或
(
あるひ
)
は
避
(
さ
)
くるを
得
(
う
)
べし。
149
自
(
みづか
)
らなせる
災
(
わざはひ
)
はさく
可
(
べか
)
らず……といふ
教
(
をしへ
)
がある。
150
丁度
(
ちやうど
)
それにテツキリ
符合
(
ふがふ
)
してゐるぢやないか。
151
虎
(
とら
)
か
山犬
(
やまいぬ
)
のやうに、
1511
檻
(
をり
)
の
中
(
なか
)
へ
放
(
ほり
)
込
(
こ
)
まれて、
152
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
与
(
あた
)
へられず、
153
悶
(
もだ
)
え
苦
(
くるし
)
んでゐるとは、
154
実
(
じつ
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
千万
(
せんばん
)
だ。
155
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
之
(
これ
)
も
自業
(
じごふ
)
自得
(
じとく
)
だから
仕様
(
しやう
)
がないワ』
156
サ『さう
悪口
(
わるくち
)
を
云
(
い
)
ふものぢやない。
157
汝
(
きさま
)
だつて
俺
(
おれ
)
だつて
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
の
大金
(
たいきん
)
にありつき、
158
女房
(
にようばう
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
着物
(
きもの
)
の
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
も
買
(
か
)
つてやれたのは、
159
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
様
(
さま
)
が、
160
あゝいふ
事
(
こと
)
をして
下
(
くだ
)
さつたお
蔭
(
かげ
)
ぢやないか。
161
余
(
あま
)
り
粗末
(
そまつ
)
にすると
冥加
(
みやうが
)
が
悪
(
わる
)
いぞ。
162
オイ
汝
(
きさま
)
、
163
何
(
なん
)
とかして
焼芋
(
やきいも
)
のヘタでも
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て、
164
ソツと
放
(
ほり
)
込
(
こ
)
んだら
何
(
ど
)
うだ。
165
其
(
その
)
位
(
くらゐ
)
な
人情
(
にんじやう
)
はあつても、
166
余
(
あま
)
り
罰
(
ばち
)
ア
当
(
あた
)
るまいぞ』
167
カ『
馬鹿
(
ばか
)
いふな、
168
そんな
事
(
こと
)
をしようものなら、
169
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
だ。
170
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
自己愛
(
じこあい
)
世間愛
(
せけんあい
)
の
尊重
(
そんちよう
)
される
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
171
そんな
宋襄
(
そうじやう
)
の
仁
(
じん
)
は
止
(
や
)
めたが
可
(
よ
)
からう。
172
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
保護
(
ほご
)
上
(
じやう
)
険呑
(
けんのん
)
至極
(
しごく
)
だぞ』
173
サ『それでも
汝
(
きさま
)
、
174
万々一
(
まんまんいち
)
太子
(
たいし
)
が
再
(
ふたた
)
び
世
(
よ
)
に
出
(
で
)
られ、
175
王者
(
わうじや
)
に
成
(
な
)
られた
時
(
とき
)
は
如何
(
どう
)
する
積
(
つも
)
りだ。
176
俺
(
おれ
)
を
苦
(
くる
)
しめよつたと
云
(
い
)
つて、
177
首
(
くび
)
をうたれても
仕方
(
しかた
)
あるまい。
178
さうだから
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
にチツと
位
(
ぐらゐ
)
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
を
払
(
はら
)
つて、
179
焼芋
(
やきいも
)
のヘタ
位
(
ぐらゐ
)
は
恵
(
めぐ
)
んでおく
方
(
はう
)
が、
180
自己愛
(
じこあい
)
の
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
最
(
もつと
)
も
賢明
(
けんめい
)
な
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
ぢやないか』
181
カ『ヘン、
182
モウ
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は
籠
(
かご
)
の
鳥
(
とり
)
だ。
183
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
になり、
184
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
となり、
185
太陽
(
たいやう
)
が
西
(
にし
)
から
上
(
あが
)
る
事
(
こと
)
があつても、
186
……………
世
(
よ
)
に
出
(
で
)
るやうな
事
(
こと
)
があるものか。
187
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
長
(
なが
)
い
者
(
もの
)
にはまかれ、
188
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
の
前
(
まへ
)
には
尾
(
を
)
をふつて
従
(
したが
)
ふのが、
189
自己
(
じこ
)
保存
(
ほぞん
)
上
(
じやう
)
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
良法
(
りやうはふ
)
だ。
190
俺
(
おれ
)
は
断
(
だん
)
じて
何物
(
なにもの
)
も
与
(
あた
)
へない
積
(
つもり
)
だよ』
191
サ『
汝
(
きさま
)
、
192
さういふけれど、
193
太子
(
たいし
)
の
死
(
し
)
な
無
(
な
)
い
内
(
うち
)
に
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
陰謀
(
いんぼう
)
が
露顕
(
ろけん
)
し、
194
太子
(
たいし
)
の
在処
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つて、
195
立派
(
りつぱ
)
な
役人
(
やくにん
)
共
(
ども
)
がお
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
たとすれば、
196
「
其
(
その
)
時
(
とき
)
や
大切
(
だいじ
)
にしておきやよかつたに」と、
197
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
悔
(
くや
)
むでも、
198
最早
(
もはや
)
及
(
およ
)
ばぬ
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
りだ。
199
六日
(
むゆか
)
の
菖蒲
(
あやめ
)
十日
(
とをか
)
の
菊
(
きく
)
だ。
200
それだから
汝
(
きさま
)
の
利益
(
りえき
)
上
(
じやう
)
、
201
俺
(
おれ
)
がソツと
忠告
(
ちうこく
)
するのだ』
202
カ『
俺
(
おれ
)
は
断
(
だん
)
じてそんな
女々
(
めめ
)
しい
卑屈
(
ひくつ
)
な
事
(
こと
)
はせないよ。
203
時
(
とき
)
の
天下
(
てんか
)
に
従
(
したが
)
へといふぢやないか。
204
権威
(
けんゐ
)
赫々
(
かくかく
)
として、
205
月日
(
じつげつ
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
き
亘
(
わた
)
る
右守
(
うもり
)
の
君
(
きみ
)
にさへ、
206
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
れば
可
(
い
)
いのだ。
207
オイ
汝
(
きさま
)
、
208
地下室
(
ちかしつ
)
へ
行
(
い
)
つて、
209
一寸
(
ちよつと
)
査
(
しら
)
べて
来
(
こ
)
い。
210
俺
(
おれ
)
や
此処
(
ここ
)
で
外面
(
ぐわいめん
)
の
看視
(
かんし
)
に
当
(
あた
)
るから……』
211
太子
(
たいし
)
は
地下室
(
ちかしつ
)
の
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれて
今日
(
けふ
)
で
三日
(
みつか
)
、
212
一飲
(
いちいん
)
一食
(
いつしよく
)
もせず、
213
細
(
ほそ
)
い
狭
(
せま
)
い
窓
(
まど
)
を
覗
(
のぞ
)
いて、
214
スバール
姫
(
ひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
幽
(
かすか
)
に
眺
(
なが
)
め、
215
それをせめてもの
慰
(
なぐさめ
)
となし、
216
死期
(
しき
)
の
至
(
いた
)
るを
従容
(
しようよう
)
として
待
(
ま
)
つてゐた。
217
其処
(
そこ
)
へ
看視役
(
かんしやく
)
のサーマンがやつて
来
(
き
)
て、
218
サ『モシモシ
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
219
貴
(
たふと
)
き
御
(
おん
)
身
(
み
)
を
以
(
も
)
つて、
220
かやうな
処
(
ところ
)
に
断食
(
だんじき
)
の
御
(
ご
)
修業
(
しうげふ
)
を
遊
(
あそ
)
ばすとは
実
(
じつ
)
に
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りまして
厶
(
ござ
)
います。
221
私
(
わたくし
)
もタラハン
国
(
ごく
)
の
国民
(
こくみん
)
の
一人
(
ひとり
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
222
何
(
なん
)
とかして
殿下
(
でんか
)
に
対
(
たい
)
し
御
(
ご
)
恩報
(
おんはう
)
じが
致
(
いた
)
したい
考
(
かんが
)
へで
厶
(
ござ
)
いますが、
223
何分
(
なにぶん
)
相棒
(
あいぼう
)
のカークといふ
奴
(
やつ
)
、
224
無情
(
むじやう
)
冷酷
(
れいこく
)
なる
鬼畜
(
きちく
)
の
如
(
ごと
)
き
動物
(
どうぶつ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
225
私
(
わたくし
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
きき
)
入
(
い
)
れず、
226
何
(
なに
)
かお
腹
(
なか
)
にたまる
物
(
もの
)
を
差上
(
さしあ
)
げたいと
焦慮
(
せうりよ
)
して
居
(
を
)
りますが、
227
もしもそんな
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しまして、
228
右守司
(
うもりのかみ
)
の
耳
(
みみ
)
へ
入
(
い
)
れば
忽
(
たちま
)
ち
私
(
わたくし
)
の
首
(
くび
)
は
一間先
(
いつけんさき
)
へ
転
(
ころが
)
り、
229
ヤツと
叫
(
さけ
)
ぶ
間
(
ま
)
も
無
(
な
)
く
死出
(
しで
)
の
旅立
(
たびだち
)
と、
230
約
(
つま
)
らない
事
(
こと
)
になつて
了
(
しま
)
ひますなり、
231
殿下
(
でんか
)
の
御
(
ご
)
境遇
(
きやうぐう
)
は
察
(
さつ
)
し
参
(
まゐ
)
らして
居
(
を
)
りますが、
232
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬから、
233
どうぞ
因縁
(
いんねん
)
づくぢやと
諦
(
あきら
)
めて
234
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
2341
心
(
こころ
)
をお
慰
(
なぐさ
)
めなさいませ。
235
暗
(
やみ
)
があれば
明
(
あか
)
りもある
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
236
殿下
(
でんか
)
だつて
何時
(
いつ
)
までもかやうな
不運
(
ふうん
)
が
続
(
つづ
)
くものぢや
厶
(
ござ
)
いますまい。
237
屹度
(
きつと
)
元
(
もと
)
の
貴
(
たふと
)
い
御位
(
みくらゐ
)
にお
上
(
のぼ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
いとも
限
(
かぎ
)
りませぬ、
238
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
何
(
ど
)
うぞ
私
(
わたくし
)
を
御
(
お
)
引立
(
ひきた
)
て
下
(
くだ
)
さいませ。
239
お
馬
(
うま
)
の
別当
(
べつたう
)
でも、
240
お
馬車
(
ばしや
)
の
馭者
(
ぎよしや
)
にでも
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますから……』
241
太子
(
たいし
)
『ハヽヽヽ
随分
(
ずいぶん
)
辞令
(
じれい
)
の
巧
(
たくみ
)
な
野郎
(
やらう
)
だなア。
242
それ
程
(
ほど
)
親切
(
しんせつ
)
があるなれば、
243
何故
(
なぜ
)
余
(
よ
)
を
捕縛
(
ほばく
)
したのだ。
244
汝
(
きさま
)
が
二十
(
にじふ
)
人
(
にん
)
の
悪人輩
(
あくにんばら
)
を
指揮
(
しき
)
して、
245
予
(
よ
)
を
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
投込
(
なげこ
)
む
様
(
やう
)
に
致
(
いた
)
しただ
無
(
な
)
いか。
246
そんな
偽善
(
ぎぜん
)
的
(
てき
)
同情
(
どうじやう
)
の
詞
(
ことば
)
は
聞
(
き
)
くも
汚
(
けが
)
らはしい、
247
そちらへ
行
(
ゆ
)
け』
248
サ『それは
殿下
(
でんか
)
の
誤解
(
ごかい
)
と
申
(
まを
)
すもので
厶
(
ござ
)
います。
249
私
(
わたくし
)
は
決
(
けつ
)
して
殿下
(
でんか
)
をお
苦
(
くるし
)
め
申
(
まを
)
さうなどの
悪心
(
あくしん
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
250
元
(
もと
)
より
殿下
(
でんか
)
に
対
(
たい
)
し、
251
何
(
なん
)
の
怨
(
うら
)
みもない
私
(
わたし
)
で
厶
(
ござ
)
いますから』
252
太
(
たい
)
『アツハヽヽヽ
怨
(
うら
)
みはなからうが
恩恵
(
おんけい
)
は
味
(
あぢ
)
はつただらう。
253
予
(
よ
)
を
捕縛
(
ほばく
)
した
為
(
ため
)
に
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
の
懸賞金
(
けんしやうきん
)
を
貰
(
もら
)
つたぢやないか』
254
サ『ハイ、
255
ソリヤ
受取
(
うけとり
)
ましたけれど、
256
女房
(
にようばう
)
の
着物
(
きもの
)
を
買
(
か
)
つたりなど
致
(
いた
)
しまして、
257
私
(
わたし
)
の
身
(
み
)
には
一文
(
いちもん
)
もつけた
覚
(
おぼ
)
えは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
258
甘
(
うま
)
い
酒
(
さけ
)
の
一杯
(
いつぱい
)
も
呑
(
の
)
んだ
事
(
こと
)
もなく、
259
つまり
全部
(
ぜんぶ
)
嬶
(
かかあ
)
の
奴
(
やつ
)
にふんだくられて
了
(
しま
)
ひました。
260
どうか
恨
(
うらみ
)
があるなら
内
(
うち
)
の
嬶
(
かかあ
)
を
恨
(
うら
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
261
一文
(
いちもん
)
も
儲
(
まう
)
けてゐない
私
(
わたくし
)
に
対
(
たい
)
し、
262
そんな
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
るのは
余
(
あま
)
り
御
(
ご
)
無理
(
むり
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
263
太
(
たい
)
『ハヽヽヽ、
264
妙
(
めう
)
な
団子
(
だんご
)
理窟
(
りくつ
)
を
捏
(
こね
)
る
奴
(
やつ
)
だな。
265
汝
(
きさま
)
は
常識
(
じやうしき
)
をどこへやつたのだ』
266
サ『ハイ、
267
情色
(
じやうしき
)
は
女房
(
にようばう
)
が
内
(
うち
)
に
大切
(
たいせつ
)
に
保護
(
ほご
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
268
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
間柄
(
あひだがら
)
でも、
269
斯
(
か
)
う
所
(
ところ
)
を
隔
(
へだ
)
つて
住
(
す
)
まつて
居
(
を
)
りますれば、
270
情色
(
じやうしき
)
の
楽
(
たの
)
しみも
到底
(
たうてい
)
味
(
あぢは
)
う
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
271
太
(
たい
)
『テモ
扨
(
さ
)
ても
情
(
なさけ
)
ない
野郎
(
やらう
)
だなア。
272
サ
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
たち
)
去
(
さ
)
れ』
273
サ『
殿下
(
でんか
)
274
さうポンポンいふものぢやありませぬよ。
275
生殺
(
せいさつ
)
与奪
(
よだつ
)
の
権
(
けん
)
は、
276
言
(
い
)
はば
間接
(
かんせつ
)
に
吾々
(
われわれ
)
が
握
(
にぎ
)
つてる
様
(
やう
)
なものですから、
277
チツとは
監視役
(
かんしやく
)
の
私
(
わたくし
)
に
対
(
たい
)
しては、
278
もうチツと
許
(
ばか
)
り
丁寧
(
ていねい
)
に
仰有
(
おつしや
)
つても、
279
余
(
あま
)
り
御損
(
ごそん
)
にもなりますまい。
280
余
(
あま
)
りポンつき
遊
(
あそ
)
ばすと、
281
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
為
(
ため
)
になりませぬぞや』
282
と
堅固
(
けんご
)
なる
檻
(
をり
)
に、
283
猛悪
(
まうあく
)
なる
虎
(
とら
)
を
押込
(
おしこ
)
めて、
284
外
(
そと
)
から
苛責
(
さいなん
)
でゐるやうな
心持
(
こころもち
)
になつて、
285
下司
(
げす
)
下郎
(
げらう
)
が
威張
(
ゐば
)
つてゐる。
286
隣
(
となり
)
の
室
(
しつ
)
よりスバール
姫
(
ひめ
)
は
窓
(
まど
)
をさし
覗
(
のぞ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
287
『あの
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
288
左様
(
さやう
)
な
獣
(
けだもの
)
に
相手
(
あひて
)
におなりなさいますな。
289
妾
(
わらは
)
は
残念
(
ざんねん
)
で
厶
(
ござ
)
います』
290
太
(
たい
)
『
成程
(
なるほど
)
、
291
其方
(
そなた
)
のいふ
通
(
とほ
)
りだ。
292
今後
(
こんご
)
は
何
(
なに
)
も
云
(
い
)
はうまい。
293
オイ
野郎
(
やらう
)
共
(
ども
)
、
294
邪魔
(
じやま
)
になる、
295
早
(
はや
)
く
上
(
うへ
)
へ
上
(
あが
)
つて、
296
水車
(
すいしや
)
小屋
(
ごや
)
の
立番
(
たちばん
)
でも
致
(
いた
)
せ』
297
と
大喝
(
だいかつ
)
され、
298
流石
(
さすが
)
のサーマンも
首
(
くび
)
をすくめ
乍
(
なが
)
ら、
299
鼠
(
ねずみ
)
のやうに
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
逃去
(
にげさ
)
つた。
300
カークは
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
に
頬杖
(
ほほづゑ
)
を
突
(
つ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
301
コクリコクリと
居睡
(
ゐねむ
)
つてゐた。
302
サ『コリヤコリヤ、
303
カーク、
304
職務
(
しよくむ
)
を
大切
(
たいせつ
)
にせぬか、
305
白昼
(
はくちう
)
に
居睡
(
ゐねむ
)
るといふ
事
(
こと
)
があるかい』
306
カ『ヤア、
307
サーマンか、
308
俺
(
おれ
)
やチツとも
居睡
(
ゐねむ
)
つてはゐないよ。
309
俯
(
うつ
)
むいて
沈思
(
ちんし
)
黙考
(
もくかう
)
、
310
哲学
(
てつがく
)
の
研究
(
けんきう
)
をやつてゐたのだ』
311
サ『ヘーン、
312
うまい
事
(
こと
)
いふない。
313
鼾
(
いびき
)
をかいてゐたぢやないか』
314
カ『きまつた
事
(
こと
)
だ。
315
哲学
(
てつがく
)
上
(
じやう
)
鼾
(
いびき
)
の
原理
(
げんり
)
は
如何
(
いか
)
なるものなりやと、
316
実地
(
じつち
)
の
研究
(
けんきう
)
をやつてゐたのだ。
317
無学
(
むがく
)
文盲
(
もんまう
)
な
汝
(
きさま
)
に
哲学
(
てつがく
)
の
研究
(
けんきう
)
が
解
(
わか
)
るか。
318
それだから
常識
(
じやうしき
)
がないといふのだ』
319
サ『エー、
320
太子
(
たいし
)
にも、
321
情色
(
じやうしき
)
がないと
誹
(
そし
)
られ、
322
又
(
また
)
汝
(
きさま
)
にも
情色
(
じやうしき
)
がないと
誹
(
そし
)
られ、
323
本当
(
ほんたう
)
に
男
(
をとこ
)
の
面
(
つら
)
は
丸
(
まる
)
つぶれだ。
324
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
余
(
あま
)
りいうて
貰
(
もら
)
ふまいかい。
325
女房
(
にようばう
)
がある
以上
(
いじやう
)
情色
(
じやうしき
)
はあるぢやないか。
326
汝
(
きさま
)
こそ
鰥暮
(
やもめぐら
)
しだから、
327
情色
(
じやうしき
)
なんか
味
(
あぢ
)
はつたこたあるまい』
328
カ『ハヽヽヽ、
329
色情
(
しきじやう
)
と
常識
(
じやうしき
)
と
間違
(
まちが
)
へてゐやがるな。
330
オイ、
331
コラ、
332
此
(
この
)
カークはな、
333
天下一
(
てんかいち
)
の
男地獄
(
をとこぢごく
)
、
334
色魔
(
しきま
)
の
先生
(
せんせい
)
と
謳
(
うた
)
はれて
来
(
き
)
たものだよ。
335
汝
(
きさま
)
等
(
ら
)
のやうな
唐変木
(
たうへんぼく
)
の
敢
(
あへ
)
て
窺知
(
きち
)
し
得
(
う
)
る
範囲
(
はんゐ
)
ぢやない。
336
鼠
(
ねずみ
)
とる
猫
(
ねこ
)
は
爪
(
つめ
)
隠
(
かく
)
すと
云
(
い
)
つてな。
337
女
(
をんな
)
の
無
(
な
)
いやうな
面
(
つら
)
してる
奴
(
やつ
)
に、
338
却
(
かへつ
)
て
女
(
をんな
)
が
沢山
(
たくさん
)
あるものだ。
339
汝
(
きさま
)
は
此
(
この
)
間
(
かん
)
の
消息
(
せうそく
)
を
知
(
し
)
らないから、
340
恋
(
こひ
)
や
情
(
じやう
)
を
語
(
かた
)
るに
足
(
た
)
らない
人物
(
じんぶつ
)
だ』
341
サ『ヘン、
342
仰有
(
おつしや
)
いますワイ、
343
汝
(
きさま
)
のやうな、
344
鳶
(
とび
)
の
巣
(
す
)
と
間違
(
まちが
)
へられるやうな
頭
(
あたま
)
の
毛
(
け
)
をモシヤモシヤと
生
(
お
)
え
茂
(
しげ
)
らせ、
345
和布
(
わかめ
)
の
行列然
(
ぎやうれつぜん
)
たる
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
やがつて、
346
色魔
(
しきま
)
だの、
347
男地獄
(
をとこぢごく
)
だのと、
348
そんな
事
(
こと
)
吐
(
ぬか
)
す
柄
(
がら
)
ぢやあるまい。
349
ヤツパリ
睡呆
(
ねとぼ
)
けてゐやがるな。
350
オイ、
351
そこの
小溝
(
こみぞ
)
で
手水
(
てうず
)
でも
使
(
つか
)
うて
来
(
こ
)
い』
352
カ『そこが
汝
(
きさま
)
らたちの
解
(
わか
)
らない
所
(
ところ
)
だ。
353
……
恋
(
こひ
)
の
上手
(
じやうず
)
は
窶
(
やつ
)
れてかかる……と
云
(
い
)
つてな、
354
俺
(
おれ
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
が
却
(
かへつ
)
て
女
(
をんな
)
に
惚
(
ほれ
)
られるのだ。
355
汝
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
に
女子
(
をなご
)
の
真似
(
まね
)
をして、
356
頭
(
あたま
)
にチツクをつけたり、
357
石灰
(
いしばひ
)
の
粉
(
こな
)
を
塗
(
ぬ
)
つたり、
358
嬶
(
かかあ
)
の
月経
(
つきやく
)
を
頬辺
(
ほほべた
)
に
塗
(
ぬ
)
つて、
359
色男然
(
いろをとこぜん
)
と
構
(
かま
)
へてる
奴
(
やつ
)
にや
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
から
愛想
(
あいさう
)
をつかし、
360
唾
(
つば
)
でも
吐
(
は
)
つかけ
逃
(
にげ
)
て
了
(
しま
)
ふものだ。
361
尻
(
しり
)
の
大砲
(
たいはう
)
や
肱
(
ひぢ
)
の
鉄砲
(
てつぱう
)
を
打
(
うち
)
かけられ、
362
鳩
(
はと
)
が
豆鉄砲
(
まめでつぱう
)
を
喰
(
くら
)
つたやうな
面
(
つら
)
で
指
(
ゆび
)
を
喰
(
く
)
はへて、
363
女
(
をんな
)
の
後姿
(
うしろすがた
)
を
怨
(
うら
)
めしげに
眺
(
なが
)
めてゐる
代物
(
しろもの
)
は、
364
汝
(
きさま
)
のやうな
柔弱
(
にうじやく
)
男子
(
だんし
)
の
身
(
み
)
の
果
(
はて
)
だ。
365
ヘン
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい』
366
サ『ほつといてくれ、
367
女房
(
にようばう
)
のある
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
と
嬶
(
かか
)
なしとは
到底
(
たうてい
)
間
(
ま
)
が
合
(
あ
)
はぬからのう。
368
汝
(
きさま
)
は
最前
(
さいぜん
)
俺
(
おれ
)
を
無学
(
むがく
)
文盲
(
もんまう
)
だと
云
(
い
)
ひよつたが、
369
汝
(
きさま
)
位
(
ぐらゐ
)
無学
(
むがく
)
文盲
(
もんまう
)
な
奴
(
やつ
)
はあるまいよ。
370
無学
(
むがく
)
の
奴
(
やつ
)
を
称
(
しよう
)
して、
371
ヨメないカカないと
云
(
い
)
ふぢやないか、
372
ザマア
見
(
み
)
やがれ。
373
之
(
これ
)
にや
一句
(
いつく
)
もあるまい、
374
イツヒヽヽヽ』
375
カ『コリヤ、
376
そんなこたどうでもよい。
377
地下室
(
ちかしつ
)
の
様子
(
やうす
)
はどうだつたい。
378
隊長
(
たいちやう
)
に
報告
(
はうこく
)
せぬかい』
379
サ『
何
(
なに
)
も
報告
(
はうこく
)
すべき
原料
(
げんれう
)
がないぢやないか』
380
カ『ハハア、
381
汝
(
きさま
)
は
太子
(
たいし
)
に
叱
(
しか
)
りつけられ、
382
謝罪
(
あやま
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
やがつたな。
383
どうも
汝
(
きさま
)
の
素振
(
そぶり
)
が
怪
(
あや
)
しいと
思
(
おも
)
つてゐたよ』
384
サ『
然
(
しか
)
り
然
(
しか
)
り、
385
然
(
しか
)
り
而
(
しか
)
うして
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
から
叱
(
しか
)
りつけて
来
(
き
)
たのだ。
386
流石
(
さすが
)
の
太子
(
たいし
)
もオンオンと
声
(
こゑ
)
をあげて
泣
(
な
)
いてゐたよ。
387
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
偉
(
えら
)
い
者
(
もの
)
だらう。
388
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くもタラハン
城
(
じやう
)
の
太子
(
たいし
)
を
一言
(
いちごん
)
の
下
(
もと
)
に
叱咤
(
しつた
)
するといふ
蘇如
(
そじよ
)
将軍
(
しやうぐん
)
のやうな
英雄
(
えいゆう
)
だからなア』
389
カ『ヘン、
390
そんな
事
(
こと
)
が
何
(
なに
)
自慢
(
じまん
)
になるか。
391
堅固
(
けんご
)
な
檻
(
をり
)
の
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
つてゐる
以上
(
いじやう
)
は
太子
(
たいし
)
だつて、
392
虎
(
とら
)
だつて、
393
狼
(
おほかみ
)
だつて、
394
何
(
ど
)
うする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
395
誰
(
たれ
)
だつて
叱
(
しか
)
る
位
(
ぐらゐ
)
は
屁
(
へ
)
のお
茶
(
ちや
)
だ』
396
サ『ナニ、
397
理窟
(
りくつ
)
からいへばそんなものだが、
398
実地
(
じつち
)
に
臨
(
のぞ
)
んでみよ。
399
どこ
共
(
とも
)
なく
威厳
(
ゐげん
)
が
備
(
そな
)
はつてゐて、
400
其
(
その
)
前
(
まへ
)
へ
行
(
ゆ
)
くと
体
(
からだ
)
はビリビリ
慄
(
ふる
)
ひ、
401
目
(
め
)
はまくまくし、
402
舌
(
した
)
は
上腮
(
うはあご
)
の
方
(
はう
)
へひつついて
固
(
かた
)
くなり、
403
胸
(
むね
)
はドキドキ、
404
足
(
あし
)
はフナフナ、
405
仲々
(
なかなか
)
叱
(
しか
)
る
勇気
(
ゆうき
)
は
容易
(
ようい
)
に
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ないよ。
406
俺
(
おれ
)
なら
こされ
、
407
一口
(
ひとくち
)
でも
叱
(
しか
)
りつける
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのだ』
408
カ『アツハヽヽヽ、
409
手厳
(
てきび
)
しく
反対
(
あべこべ
)
に、
410
叱
(
しか
)
りつけられよつたのだらう』
411
かく
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも
412
吹
(
ふき
)
来
(
く
)
る
西風
(
にしかぜ
)
に
送
(
おく
)
られて、
4121
幽
(
かす
)
かに
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
413
(
大正一四・一・七
新一・三〇
於月光閣
松村真澄
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