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第68巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 名花移植
01 貞操論
〔1725〕
02 恋盗詞
〔1726〕
03 山出女
〔1727〕
04 茶湯の艶
〔1728〕
第2篇 恋火狼火
05 変装太子
〔1729〕
06 信夫恋
〔1730〕
07 茶火酌
〔1731〕
08 帰鬼逸迫
〔1732〕
第3篇 民声魔声
09 衡平運動
〔1733〕
10 宗匠財
〔1734〕
11 宮山嵐
〔1735〕
12 妻狼の囁
〔1736〕
13 蛙の口
〔1737〕
第4篇 月光徹雲
14 会者浄離
〔1738〕
15 破粋者
〔1739〕
16 戦伝歌
〔1740〕
17 地の岩戸
〔1741〕
第5篇 神風駘蕩
18 救の網
〔1742〕
19 紅の川
〔1743〕
20 破滅
〔1744〕
21 祭政一致
〔1745〕
余白歌
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第一〇章
宗匠財
(
そうしやうざい
)
〔一七三四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻
篇:
第3篇 民声魔声
よみ(新仮名遣い):
みんせいませい
章:
第10章 宗匠財
よみ(新仮名遣い):
そうしょうざい
通し章番号:
1734
口述日:
1925(大正14)年01月29日(旧01月6日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
バランス解放を求める民衆の勢いに、ついに大目付頭もバランスを解放する。
大目付頭はバランスの申し立てを調査するため、タルチンを拘引する。
タルチンは逆に理屈で大目付頭を言い負かし、釈放される。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-06-28 06:35:00
OBC :
rm6810
愛善世界社版:
136頁
八幡書店版:
第12輯 201頁
修補版:
校定版:
137頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
取締所
(
とりしまりしよ
)
を
中心
(
ちうしん
)
とし
附近
(
ふきん
)
に
於
(
お
)
ける
民衆
(
みんしう
)
と
侍
(
さむらひ
)
との
闘争
(
とうさう
)
は、
002
一
(
いち
)
時
(
じ
)
酣
(
たけなは
)
となつて
来
(
き
)
たが
003
民衆
(
みんしう
)
の
救主
(
すくひぬし
)
、
004
貧民
(
ひんみん
)
の
慈母
(
じぼ
)
と
尊敬
(
そんけい
)
されて
居
(
ゐ
)
る
大頭目
(
だいとうもく
)
のバランスを
取返
(
とりかへ
)
さむとして、
005
民衆
(
みんしう
)
一般
(
いつぱん
)
は
爺
(
ぢぢ
)
も
婆
(
ばば
)
も、
006
脛腰
(
すねこし
)
の
立
(
た
)
つもの、
007
猫
(
ねこ
)
も
杓子
(
しやくし
)
も
刻々
(
こくこく
)
に
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り
其
(
そ
)
の
勢
(
いきほひ
)
凄
(
すさま
)
じく、
008
目付隊
(
めつけたい
)
も
侍
(
さむらひ
)
も
如何
(
いかん
)
ともすべからず、
009
遂
(
つひ
)
に
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
も
我
(
が
)
を
折
(
を
)
つてバランスの
縄
(
なは
)
を
解
(
と
)
き、
010
民衆
(
みんしう
)
との
妥協
(
だけふ
)
を
図
(
はか
)
り
011
且
(
か
)
つ、
0111
諫言
(
かんげん
)
申上
(
まをしあ
)
げる
事
(
こと
)
となし、
012
茶坊主
(
ちやばうず
)
を
召喚
(
せうくわん
)
して
事
(
こと
)
の
実否
(
じつぴ
)
を
調査
(
てうさ
)
した
上
(
うへ
)
、
013
左守
(
さもり
)
の
悴
(
せがれ
)
アリナを
民衆
(
みんしう
)
の
前
(
まへ
)
にて
重刑
(
ぢうけい
)
に
処
(
しよ
)
す
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
ひ、
014
茲
(
ここ
)
に
漸
(
やうや
)
く
大騒動
(
おほさうどう
)
も
鎮定
(
ちんてい
)
するに
至
(
いた
)
つた。
015
目付頭
(
めつけがしら
)
は
逸早
(
いちはや
)
く
部下
(
ぶか
)
に
命
(
めい
)
じて
茶坊主
(
ちやばうず
)
を
拘引
(
こういん
)
せしめた。
016
茶坊主
(
ちやばうず
)
が
拘引
(
こういん
)
されたのを
見
(
み
)
るや、
017
スバール
姫
(
ひめ
)
は
大
(
おほい
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
018
折柄
(
をりから
)
労働服
(
らうどうふく
)
姿
(
すがた
)
にて
忍
(
しの
)
び
来
(
きた
)
りし
恋人
(
こひびと
)
と
共
(
とも
)
に
019
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
都
(
みやこ
)
を
遠
(
とほ
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
020
アリナも
亦
(
また
)
形勢
(
けいせい
)
の
容易
(
ようい
)
ならざるを
覚
(
さと
)
り、
021
忍
(
シノブ
)
と
共
(
とも
)
に
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
城内
(
じやうない
)
を
逸走
(
いつそう
)
して
了
(
しま
)
つた。
022
茶坊主
(
ちやばうず
)
のタルチンは
厳
(
きび
)
しく
縛
(
いましめ
)
られたまま、
023
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
の
前
(
まへ
)
に
引出
(
ひきだ
)
され
訊問
(
じんもん
)
を
受
(
う
)
けた。
024
大目付役
(
おほめつけやく
)
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すか』
025
タルチンは
長
(
なが
)
い
禿頭
(
はげあたま
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
026
やや
腰
(
こし
)
をかがめて、
027
『ハイ、
028
私
(
わたし
)
は
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
の
傍
(
かたはら
)
に
住
(
す
)
む
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
タルチンと
申
(
まを
)
すもので
厶
(
ござ
)
います。
029
何
(
なん
)
ぞ
折入
(
をりい
)
つた
御用
(
ごよう
)
が
御座
(
ござ
)
りますかな。
030
罪
(
つみ
)
も
無
(
な
)
い
私
(
わたし
)
をお
役人
(
やくにん
)
さまが
突然
(
とつぜん
)
遣
(
や
)
つて
来
(
き
)
て、
031
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
られる
覚
(
おぼ
)
えは
御座
(
ござ
)
りませぬ。
032
爰
(
ここ
)
は
悪人
(
あくにん
)
の
来
(
く
)
る
処
(
ところ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
りませぬか、
033
清浄
(
しやうじやう
)
無垢
(
むく
)
の
私
(
わたし
)
、
034
神妙
(
しんめう
)
に
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
をお
歴々
(
れきれき
)
方
(
がた
)
に
伝授
(
でんじゆ
)
し
淋
(
さび
)
しく
大人
(
おとな
)
しく
余世
(
よせい
)
を
送
(
おく
)
つてゐるもので
厶
(
ござ
)
います。
035
それに
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
連
(
つ
)
れ
添
(
そ
)
うて
居
(
を
)
つた
大切
(
だいじ
)
の
大切
(
だいじ
)
の
嬶
(
かか
)
に
逃
(
にげ
)
られ、
036
心配
(
しんぱい
)
の
最中
(
さいちう
)
、
037
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
られては
一向
(
いつかう
)
、
038
日当
(
につたう
)
も
取
(
と
)
られず、
039
誠
(
まこと
)
に
貧民
(
ひんみん
)
の
私
(
わたし
)
、
040
明日
(
あす
)
から
腮櫃
(
あご
)
が
上
(
あが
)
つて
了
(
しま
)
ひますがな。
041
どうか
相当
(
さうたう
)
の
日当
(
につたう
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
い
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
ります。
042
そして
罪
(
つみ
)
もない
私
(
わたし
)
をお
縛
(
しば
)
りに
成
(
な
)
りましたのだから、
043
賠償品
(
ばいしやうひん
)
を
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
ります。
044
冤罪者
(
えんざいしや
)
賠償法
(
ばいしやうはふ
)
が、
045
発布
(
はつぷ
)
されむとする
今日
(
こんにち
)
、
046
どうか、
047
其所
(
そこ
)
は、
048
あんまり
高
(
たか
)
い
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬから、
049
私
(
わたし
)
の
価値
(
ねうち
)
相当
(
さうたう
)
に
御
(
ご
)
支給
(
しきふ
)
を
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
いもので
御座
(
ござ
)
ります』
050
大目付
(
おほめつけ
)
『
貴様
(
きさま
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だな。
051
お
歴々
(
れきれき
)
の
家庭
(
かてい
)
に
出入
(
でいり
)
し
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
伝授
(
でんじゆ
)
でもしようと
云
(
い
)
ふ
身
(
み
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
052
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
へ
引連
(
ひきつ
)
れられて、
053
左様
(
さやう
)
の
請求
(
せいきう
)
をすると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
054
エーン』
055
タルチン『
如何
(
いか
)
なる
処
(
ところ
)
へ
参
(
まゐ
)
りましても、
056
ヤツパリ
日当
(
につたう
)
は
請求
(
せいきう
)
致
(
いた
)
します。
057
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
の
邸
(
やしき
)
へ
参
(
まゐ
)
つても、
058
又
(
また
)
畏多
(
おそれおほ
)
くもタラハン
城内
(
じやうない
)
の
茶寮
(
ちやりやう
)
に
参
(
まゐ
)
りましても、
059
相当
(
さうたう
)
のお
手当
(
てあて
)
を
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
りますから、
060
仮令
(
たとへ
)
半時
(
はんとき
)
でも、
061
それ
丈
(
だ
)
けのお
手当
(
てあて
)
を
頂
(
いただ
)
かなくちや
渡世
(
とせい
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
062
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
子分
(
こぶん
)
を
使
(
つか
)
つて
063
朝
(
あさ
)
の
九
(
く
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
から
出勤
(
しゆつきん
)
して、
0631
椅子
(
いす
)
に
凭
(
もた
)
れ
064
面白
(
おもしろ
)
さうに
新聞
(
しんぶん
)
を
見
(
み
)
ながら
彼是
(
かれこれ
)
する
間
(
うち
)
に
十二
(
じふに
)
時
(
じ
)
が
来
(
く
)
る、
065
さうすりや
料理屋
(
れうりや
)
弁当
(
べんたう
)
を
取
(
と
)
つて
強
(
した
)
たかお
食
(
あが
)
りなされ、
066
又
(
また
)
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
ばかり
食後
(
しよくご
)
の
運動
(
うんどう
)
だと
云
(
い
)
つて
面白
(
おもしろ
)
い
処
(
ところ
)
を
廻
(
まは
)
り、
067
夫
(
それ
)
から
読
(
よ
)
み
残
(
のこ
)
りの
新聞
(
しんぶん
)
を
読
(
よ
)
み、
068
盲判
(
めくらばん
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つポンポンと
押
(
お
)
して、
0681
サツサと
宅
(
うち
)
に
帰
(
かへ
)
り
069
大小名
(
だいせうみやう
)
の
待遇
(
たいぐう
)
を
受
(
う
)
けて、
0691
沢山
(
たくさん
)
の
月給
(
げつきふ
)
を
取
(
と
)
るお
方
(
かた
)
と
同
(
おな
)
じに
見
(
み
)
て
貰
(
もら
)
つては、
070
チツと
割
(
わ
)
りが
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
ります。
071
私
(
わたし
)
のやうに
高
(
たか
)
い
炭
(
すみ
)
を
爐
(
ろ
)
にくべ、
072
「ヘーコラ、
073
ハイコラ」とお
辞儀
(
じぎ
)
許
(
ばか
)
りして、
074
ヤツトの
事
(
こと
)
で
糊口
(
ここう
)
を
凌
(
しの
)
ぐ
許
(
ばか
)
りのものと
同日
(
どうじつ
)
に
語
(
かた
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
075
大目付
(
おほめつけ
)
『その
方
(
はう
)
は
女房
(
にようばう
)
に
逃
(
に
)
げられたと
申
(
まを
)
したが、
076
その
女房
(
にようばう
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すものか』
077
タル『ハイ、
078
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
は
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
の
ドテンバ
で
厶
(
ござ
)
いますが、
079
どうしても
名
(
な
)
を
申
(
まを
)
しませぬので
袋
(
ふくろ
)
と
申
(
まを
)
してゐます。
080
その
袋
(
ふくろ
)
に
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
持
(
も
)
つて
逃
(
に
)
げられ、
081
私
(
わたし
)
は
梟
(
ふくろ
)
が
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れたやうな
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
んでゐます。
082
貴方
(
あなた
)
も
人民
(
じんみん
)
保護
(
ほご
)
のお
役
(
やく
)
なら
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
を
捜
(
さが
)
して
下
(
くだ
)
さい。
083
そして
女房
(
にようばう
)
と
金
(
かね
)
とを
取返
(
とりかへ
)
して
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものです。
084
実
(
じつ
)
は
保護願
(
ほごねがひ
)
をしようと
思
(
おも
)
ひましたが、
085
何分
(
なにぶん
)
珍客
(
ちんきやく
)
さまがおいで
遊
(
あそ
)
ばすので
目放
(
めばな
)
しが
出来
(
でき
)
ず、
086
其処
(
そこ
)
へあの
大火事
(
おほくわじ
)
と
来
(
き
)
てゐますのでツヒ
遅
(
おく
)
れてゐました』
087
大目付
(
おほめつけ
)
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は、
088
その
日
(
ひ
)
暮
(
ぐら
)
しと
申
(
まを
)
してゐるが、
089
どうして
其
(
その
)
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
所持
(
しよぢ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つたのだ』
090
タル『
之
(
これ
)
は
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほ
)
せられます。
091
お
金
(
かね
)
と
云
(
い
)
ふものは
人間
(
にんげん
)
の
持
(
も
)
つべきものです。
092
人間
(
にんげん
)
が
金
(
かね
)
をもつているのが、
093
どこが
不思議
(
ふしぎ
)
ですかな』
094
大目付
(
おほめつけ
)
『
持
(
も
)
つてゐるのが
悪
(
わる
)
いとは
云
(
い
)
はぬ、
095
どうして
拵
(
こしら
)
へたかと
云
(
い
)
ふのだ』
096
タル『
之
(
これ
)
は
又
(
また
)
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬお
言葉
(
ことば
)
、
097
どうして
拵
(
こしら
)
へたかとは
私
(
わたし
)
をも
紙幣
(
しへい
)
偽造
(
ぎざう
)
犯人
(
はんにん
)
とお
思
(
おも
)
ひですか。
098
彼
(
あ
)
の
紙幣
(
しへい
)
は
兌換
(
だくわん
)
だか
不換
(
ふくわん
)
だか
知
(
し
)
りませぬが、
099
貴方
(
あなた
)
がたが
経営
(
けいえい
)
して
御座
(
ござ
)
る
印刷局
(
いんさつきよく
)
から
刷
(
す
)
り
出
(
だ
)
された
物
(
もの
)
ぢや
御座
(
ござ
)
りませぬか。
100
キューピーさまや
福助
(
ふくすけ
)
さまが
付
(
つ
)
いて
御座
(
ござ
)
る
彼
(
あ
)
のお
札
(
さつ
)
ですよ。
101
私
(
わたし
)
は
紙幣
(
しへい
)
を
拵
(
こしら
)
へるやうな
器用
(
きよう
)
なものでは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
102
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
では
十二
(
じふに
)
手前
(
てまへ
)
を
本
(
もと
)
とし、
103
それから
分
(
わか
)
れて
三百
(
さんびやく
)
十六
(
じふろく
)
手前
(
てまへ
)
となり、
104
又
(
また
)
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
綱目
(
かうもく
)
としては
初段
(
しよだん
)
から
七段
(
しちだん
)
迄
(
まで
)
の
手前
(
てまへ
)
を
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
ります。
105
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
事
(
こと
)
なら、
106
いくらでもお
答
(
こた
)
へ
致
(
いた
)
しますが、
107
金
(
かね
)
を
拵
(
こしら
)
へる
事
(
こと
)
はチツとも
存
(
ぞん
)
じませぬ。
108
之
(
これ
)
はお
役人
(
やくにん
)
さまの、
109
お
眼鏡
(
めがね
)
違
(
ちが
)
ひで
御座
(
ござ
)
りませう、
110
オツホン』
111
大目付
(
おほめつけ
)
『エー、
112
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
だな。
113
その
金
(
かね
)
を、
114
どうして
儲
(
まう
)
けたかと
聞
(
き
)
いてゐるのだ』
115
タル『
之
(
これ
)
は
亦
(
また
)
妙
(
めう
)
なお
尋
(
たづ
)
ねで
御座
(
ござ
)
りますな。
116
私
(
わたし
)
は
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
宗匠
(
そうしやう
)
が
稼業
(
かげふ
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
117
如何
(
どう
)
して
儲
(
まう
)
けようと、
118
商売
(
しやうばい
)
の
上
(
うへ
)
で、
119
儲
(
まう
)
けた
事
(
こと
)
をお
叱
(
とが
)
めを
蒙
(
かうむ
)
る
訳
(
わけ
)
も
有
(
あ
)
るまいし、
120
又
(
また
)
夫
(
それ
)
を
貴方
(
あなた
)
に
説明
(
せつめい
)
する
義務
(
ぎむ
)
も
無
(
な
)
し、
121
又
(
また
)
貴方
(
あなた
)
も
人
(
ひと
)
の
儲
(
まう
)
けた
金
(
かね
)
を
彼是
(
かれこれ
)
言
(
い
)
ふ
権利
(
けんり
)
も
御座
(
ござ
)
りますまい、
122
そんな
事
(
こと
)
は
要
(
い
)
らぬお
節介
(
せつかい
)
ですよ。
123
私
(
わたし
)
もチヨコチヨコお
前
(
まへ
)
さまの
御
(
ご
)
親類内
(
しんるゐうち
)
へ
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
で
出入
(
でい
)
りを
仕
(
し
)
て
居
(
ゐ
)
ますが、
124
お
親類
(
しんるゐ
)
の
方
(
かた
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
けば、
125
大目付
(
おほめつけ
)
さまは
沢山
(
たくさん
)
な
賄賂
(
わいろ
)
を
取
(
と
)
つて
町
(
まち
)
の
真中
(
まんなか
)
へ
待合
(
まちあひ
)
を
許
(
ゆる
)
し、
126
其所
(
そこ
)
へ
妾
(
めかけ
)
を
抱
(
かか
)
へて
御座
(
ござ
)
るとの
事
(
こと
)
、
127
此
(
この
)
話
(
はなし
)
は
決
(
けつ
)
して
違
(
ちが
)
ひますまい。
128
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
129
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
親類
(
しんるゐ
)
、
130
しかも、
131
貴方
(
あなた
)
のお
妹御
(
いもうとご
)
の
嫁入先
(
よめいりさき
)
で
聴
(
き
)
いたのですから』
132
大目付
(
おほめつけ
)
『こりやこりや、
133
外聞
(
ぐわいぶん
)
の
悪
(
わる
)
い
134
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
135
沢山
(
たくさん
)
の
目付
(
めつけ
)
が、
136
其所
(
そこ
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るぢや
無
(
な
)
いか。
137
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
神法
(
しんぱふ
)
を
心得
(
こころえ
)
ぬか、
138
「
事
(
こと
)
の
有無
(
うむ
)
に
拘
(
かかは
)
らず、
139
人
(
ひと
)
を
公衆
(
こうしう
)
の
前
(
まへ
)
にて
誹謗
(
ひばう
)
した
者
(
もの
)
は
知計法
(
ちけいはふ
)
第八百
(
だいはつぴやく
)
条
(
でう
)
にて
刑鉢
(
けいばつ
)
に
処
(
しよ
)
す」と
書
(
か
)
いて
有
(
あ
)
る。
140
メツタの
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものではないぞ』
141
タル『ヘツヘヽヽ、
142
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
りますかな。
143
チツト
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
加減
(
かげん
)
が
過
(
す
)
ぎましたので、
144
熱
(
あつ
)
い
汗
(
あせ
)
をかかせました。
145
ハツハヽヽ』
146
大目付
(
おほめつけ
)
『お
前
(
まへ
)
の
宅
(
うち
)
に、
147
エー、
148
珍客
(
ちんきやく
)
が
居
(
を
)
られたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
149
本当
(
ほんたう
)
か』
150
タル『ヘーヘー、
151
居
(
を
)
られましたとも、
152
まだ
現
(
げん
)
にゐられるでせう。
153
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くもスダルマン
様
(
さま
)
が、
154
元
(
もと
)
の
左守
(
さもり
)
の
娘子
(
むすめご
)
スバール
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ、
155
夫
(
それ
)
は
夫
(
それ
)
は
天女
(
てんによ
)
のやうな
美人
(
びじん
)
をかくまつて
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
で、
156
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
なお
通
(
かよ
)
ひで
御座
(
ござ
)
ります。
157
本当
(
ほんたう
)
に
素敵
(
すてき
)
な
美人
(
びじん
)
ですよ。
158
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つてもスダルマン
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
、
159
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
申
(
まを
)
すも
恐
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
いと
謹
(
つつし
)
んで
御意
(
ぎよい
)
に
応
(
おう
)
じました。
160
何分
(
なにぶん
)
取締所
(
とりしまりしよ
)
あたりから
御
(
ご
)
褒美
(
はうび
)
でも
頂
(
いただ
)
け
相
(
さう
)
なものと、
161
首
(
くび
)
を
長
(
なが
)
うして
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りますよ。
162
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
を
慰
(
なぐさ
)
め
奉
(
まつ
)
り、
163
無上
(
むじやう
)
の
歓喜
(
くわんき
)
をお
与
(
あた
)
へ
申
(
まを
)
した
此
(
この
)
タルチンは、
164
正
(
まさ
)
に
勲一等
(
くんいつとう
)
功一級
(
こういつきふ
)
の
価値
(
かち
)
は
確
(
たしか
)
にあるでせう。
165
夫
(
それ
)
にも
拘
(
かかわ
)
らず、
166
タラハン
国
(
ごく
)
に
於
(
おい
)
て
雷名
(
らいめい
)
隠
(
かく
)
れなき
最大
(
さいだい
)
権力者
(
けんりよくしや
)
、
167
左守
(
さもり
)
のガンヂー
様
(
さま
)
の
一人
(
ひとり
)
息子
(
むすこ
)
アリナの
君様
(
きみさま
)
に
頼
(
たの
)
まれて、
168
未来
(
みらい
)
のお
妃様
(
ひーさま
)
のスバール
嬢
(
ぢやう
)
様
(
さま
)
に、
169
お
茶
(
ちや
)
の
手前
(
てまへ
)
を
伝授
(
でんじゆ
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げて
居
(
ゐ
)
るのです。
170
何程
(
なにほど
)
偉
(
えら
)
相
(
さう
)
に
申
(
まを
)
してもお
前
(
まへ
)
さまとしては、
171
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
を
直接
(
ちよくせつ
)
にお
世話
(
せわ
)
したり、
172
お
妃
(
ひー
)
さまに
尊
(
たふと
)
い
茶道
(
さだう
)
を
伝授
(
でんじゆ
)
すると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
173
マアそんな
小難
(
こむつか
)
しい
顔
(
かほ
)
せずにお
考
(
かんが
)
へなさいませ。
174
今
(
いま
)
に
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
が、
175
大王
(
だいわう
)
の
跡
(
あと
)
を
継
(
つ
)
がれましたならば、
176
私
(
わたし
)
は
大王
(
だいわう
)
様
(
さま
)
のお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
と
成
(
な
)
つて、
177
殿内
(
でんない
)
深
(
ふか
)
く、
178
すまし
込
(
こ
)
み、
179
殿下
(
でんか
)
の
耳
(
みみ
)
を
嗅
(
か
)
ぐ
役
(
やく
)
に
抜擢
(
ばつてき
)
されますよ。
180
夫
(
それ
)
だから
181
お
前
(
まへ
)
さまも
出世
(
しゆつせ
)
が
仕度
(
した
)
くば
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
、
182
此
(
この
)
タルチンを
十分
(
じふぶん
)
待遇
(
たいぐう
)
して
置
(
お
)
きなさい。
183
葡萄酒
(
ぶどうしゆ
)
の
一打
(
いちダース
)
位
(
ぐらゐ
)
贈
(
おく
)
つても
可
(
よ
)
し、
184
金平糖
(
こんぺいとう
)
の
一斤
(
いつきん
)
位
(
ぐらゐ
)
はチヨイチヨイ
贈
(
おく
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
185
此方
(
こちら
)
も
茶菓子
(
ちやぐわし
)
の
足
(
た
)
しにも
成
(
な
)
り、
186
誠
(
まこと
)
に
好都合
(
かうつがふ
)
だ。
187
お
前
(
まへ
)
さまも、
188
私
(
わたし
)
に
取
(
と
)
り
入
(
い
)
るのは
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
ですよ、
189
オツホン』
190
と
豪然
(
がうぜん
)
としてすまし
込
(
こ
)
んでゐる。
191
大目付
(
おほめつけ
)
『オイ、
192
ハルヤ、
193
タルチンの
縄目
(
なはめ
)
を
解
(
と
)
いて
遣
(
や
)
れ』
194
『ハイ、
195
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
196
タル『イヤ、
197
ならぬならぬ、
198
此
(
この
)
縄目
(
なはめ
)
は
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
いて
呉
(
く
)
れ。
199
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
に、
200
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
が
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
201
斯
(
こ
)
んな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はしやがつたと
云
(
い
)
つて、
202
具
(
つぶ
)
さに
言上
(
ごんじやう
)
して
遣
(
や
)
る。
203
さうすると、
204
屹度
(
きつと
)
タルチンの
贔屓
(
ひいき
)
をなさつて、
205
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
は
直
(
す
)
ぐ
様
(
さま
)
免職
(
めんしよく
)
だ。
206
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
だ、
207
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
様
(
さま
)
に
飛火
(
とびひ
)
が
致
(
いた
)
しますよ。
208
此
(
この
)
縄
(
なわ
)
が
解
(
とか
)
し
度
(
た
)
ければ、
209
解
(
と
)
かして
遣
(
や
)
らう。
210
幾等
(
いくら
)
機密費
(
きみつひ
)
を
出
(
だ
)
しますかな』
211
大目付
(
おほめつけ
)
『アツハヽヽヽヽ
此奴
(
こいつ
)
ア、
212
どうも、
213
キ
印
(
じるし
)
だ。
214
キ
印
(
じるし
)
を
捉
(
つか
)
まへて
法律
(
はふりつ
)
で
罰
(
ばつ
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
215
身心
(
しんしん
)
喪失者
(
そうしつしや
)
と
認
(
みと
)
める。
216
オイ、
217
タルチン、
218
唯今
(
ただいま
)
より
放免
(
はうめん
)
する、
219
有難
(
ありがた
)
う
思
(
おも
)
へ』
220
タル『ヘン、
221
さう、
222
うまくは
問屋
(
とひや
)
が
卸
(
おろ
)
しませぬよ。
223
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
覚
(
おぼ
)
え
目出度
(
めでた
)
き
寵臣
(
ちようしん
)
を
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
224
放免
(
はうめん
)
も
糞
(
くそ
)
も
有
(
あ
)
つたものか、
225
チツとお
前
(
まへ
)
さまの
遣
(
や
)
り
方
(
かた
)
は
方面
(
はうめん
)
が
間違
(
まちが
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢや
無
(
な
)
いか。
226
いつかな いつかな
此処
(
ここ
)
を
立退
(
たちの
)
いて
成
(
な
)
るものか。
227
今
(
いま
)
に
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
がタルチンの
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねて、
228
最新調
(
さいしんてう
)
の
自動車
(
じどうしや
)
を
以
(
もつ
)
て
迎
(
むか
)
へに
来
(
こ
)
られるに
違
(
ちが
)
ひない。
229
夫
(
それ
)
迄
(
まで
)
は
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
230
此処
(
ここ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
動
(
うご
)
きませぬぞ』
231
大目付
(
おほめつけ
)
『アヽ
困
(
こま
)
つたものを
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
き
)
たものだな。
232
オイ、
233
ハルヤ、
234
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
235
此
(
この
)
狂人
(
きちがひ
)
の
縄
(
なは
)
を
解
(
と
)
き、
236
彼
(
かれ
)
が
館
(
やかた
)
に
送
(
おく
)
つて
遣
(
や
)
れ。
237
さうして
妙法
(
スダルマ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
在宿
(
ざいしゆく
)
かいなかと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
238
よく
調
(
しら
)
べて
来
(
く
)
るのだぞ。
239
必
(
かなら
)
ず
不都合
(
ふつがふ
)
の
無
(
な
)
いやうに
気
(
き
)
を
注
(
つ
)
けて
行
(
ゆ
)
け』
240
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
大目付
(
おほめつけ
)
は
懐
(
ふところ
)
から
時計
(
とけい
)
を
出
(
だ
)
して、
241
『ヤア、
242
もう
退出
(
たいしゆつ
)
時間
(
じかん
)
だ』
243
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
逃
(
に
)
ぐるが
如
(
ごと
)
く、
244
ドアを
開
(
あ
)
けて
妾宅
(
せふたく
)
さして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
245
タルチンは、
246
大声
(
おほごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
247
タル『コリヤ、
248
大目付
(
おほめつけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
249
逃
(
にげ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか。
250
待
(
ま
)
て、
251
貴様
(
きさま
)
に
一
(
ひと
)
つ
灸
(
きう
)
を
据
(
す
)
ゑて
遣
(
や
)
る
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
る。
252
俺
(
おれ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かずに
逃
(
にげ
)
て
行
(
ゆ
)
けば、
253
明日
(
あす
)
から
免職
(
めんしよく
)
だぞ』
254
と
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
る。
255
漸
(
やうや
)
くにして
数多
(
あまた
)
の
目付
(
めつけ
)
が
持
(
も
)
て
余
(
あま
)
しもののタルチンをいろいろと
納得
(
なつとく
)
させ、
256
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
や
菓子
(
くわし
)
等
(
など
)
を
与
(
あた
)
へて
機嫌
(
きげん
)
をとり、
257
ヤツとの
事
(
こと
)
で
彼
(
かれ
)
の
家
(
いへ
)
に
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
ける
事
(
こと
)
となつた。
258
タルチンは
目付
(
めつけ
)
連
(
れん
)
に
護送
(
ごそう
)
され
乍
(
なが
)
ら
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
道々
(
みちみち
)
、
259
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
の
酔
(
よひ
)
がまはつて、
260
謡
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
261
『あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
262
この
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
何
(
なん
)
として
263
馬鹿
(
ばか
)
に
面白
(
おもしろ
)
うなつたのか
264
妙法
(
スダルマ
)
の
君
(
きみ
)
は
吾
(
わが
)
家
(
いへ
)
に
265
タラハン
城
(
じやう
)
と
間違
(
まちが
)
へて
266
妃
(
きさい
)
の
君
(
きみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
267
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
意茶
(
いちや
)
付
(
つ
)
いて
268
涎
(
よだれ
)
を
垂
(
た
)
らしてお
在
(
は
)
します
269
それに
左守
(
さもり
)
のガンヂーの
270
悴
(
せがれ
)
のアリナがチヨコチヨコと
271
横目
(
よこめ
)
を
使
(
つか
)
つて
遣
(
や
)
つて
来
(
く
)
る
272
さう
斯
(
か
)
うする
中
(
うち
)
タラハンの
273
町
(
まち
)
に
響
(
ひび
)
いた
鐘
(
かね
)
の
音
(
おと
)
274
窓
(
まど
)
押
(
お
)
し
開
(
あ
)
けて
眺
(
なが
)
むれば
275
ドンドンドンと
町中
(
まちなか
)
の
276
民家
(
みんか
)
は
燃
(
も
)
える
人
(
ひと
)
は
泣
(
な
)
く
277
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
にタラハンの
278
街
(
まち
)
の
半
(
なかば
)
は
黒土
(
くろつち
)
と
279
成
(
な
)
つて
了
(
しま
)
つた
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さ
280
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
贅沢
(
ぜいたく
)
三昧
(
ざんまい
)
を
281
尽
(
つく
)
して
居
(
ゐ
)
よつた
富者
(
ふうしや
)
等
(
ら
)
の
282
今日
(
けふ
)
の
惨
(
みじ
)
めの
態
(
さま
)
見
(
み
)
れば
283
ホンに
愉快
(
ゆくわい
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ
284
大目付頭
(
おほめつけがしら
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
285
俺
(
おれ
)
を
態々
(
わざわざ
)
引張
(
ひつぱ
)
つて
286
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
尋
(
たづ
)
ね
上
(
あ
)
げ
287
理窟
(
りくつ
)
に
負
(
ま
)
けて
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
き
288
屁古垂
(
へこた
)
れよつてブルブルと
289
菎蒻
(
こんにやく
)
のやうに
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し
290
懐中
(
くわいちう
)
時計
(
どけい
)
を
取出
(
とりだ
)
して
291
もはや
退出
(
たいしゆつ
)
時間
(
じかん
)
だと
292
甘
(
うま
)
い
辞令
(
じれい
)
を
浴
(
あ
)
びせかけ
293
コソコソコソと
逃
(
に
)
げよつた
294
斯
(
こ
)
んな
瓦落多
(
がらくた
)
役人
(
やくにん
)
が
295
都大路
(
みやこおほぢ
)
の
真中
(
まんなか
)
に
296
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうな
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
297
如何
(
どう
)
して
吾々
(
われわれ
)
人民
(
じんみん
)
が
298
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
く
寝
(
ね
)
られよか
299
さはさり
乍
(
なが
)
ら
是
(
これ
)
も
皆
(
みな
)
300
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
仕組
(
しぐみ
)
だろ
301
零落
(
おちぶ
)
れ
果
(
は
)
てた
俺
(
わし
)
さへも
302
妙法
(
スダルマ
)
の
君
(
きみ
)
のお
見出
(
みだ
)
しに
303
預
(
あづか
)
りよつて
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
304
お
手
(
て
)
をとつての
指南役
(
しなんやく
)
305
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
のお
蔭
(
かげ
)
でこの
俺
(
おれ
)
も
306
薬鑵頭
(
やくわんあたま
)
が
霑
(
うるほ
)
うた
307
エヘヽヽエツヘ エヘヽヽヽ
308
さつてもさても
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
309
人間
(
にんげん
)
万事
(
ばんじ
)
一切
(
いつさい
)
は
310
皆
(
みな
)
塞翁
(
さいをう
)
の
馬
(
うま
)
の
糞
(
くそ
)
311
糞
(
くそ
)
でも
喰
(
くら
)
へ
大目付
(
おほめつけ
)
よ
312
俺
(
わし
)
がもうツヒ
出世
(
しゆつせ
)
して
313
貴様
(
きさま
)
の
頭
(
あたま
)
を
抑
(
おさ
)
へたろか
314
エヘヽヽエツヘ エヘヽヽヽ
315
お
嬶
(
かか
)
の
袋
(
ふくろ
)
は
逸早
(
いちはや
)
く
316
俺
(
おれ
)
を
見捨
(
みす
)
てて
逃
(
に
)
げよつた
317
之
(
これ
)
も
矢張
(
やつぱ
)
り
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
318
俺
(
おれ
)
を
助
(
たす
)
ける
思召
(
おぼしめし
)
319
お
尻
(
けつ
)
の
大
(
おほ
)
きい
嬶
(
かか
)
貰
(
もら
)
へや
320
向
(
むか
)
ふの
方
(
はう
)
から
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
321
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つたその
訳
(
わけ
)
は
322
後
(
あと
)
の
悶錯
(
もんさく
)
なきやうと
323
ウラルの
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
計
(
はか
)
らひ
324
天女
(
てんによ
)
のやうな
妻
(
つま
)
を
持
(
も
)
ち
325
結構
(
けつこう
)
に
結構
(
けつこう
)
に
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
326
面白
(
おもしろ
)
可笑
(
をか
)
しう
暮
(
くら
)
すため
327
之
(
これ
)
ほどボロイ
事
(
こと
)
はない
328
エヘヽヽエツヘ
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
に
329
酔
(
よ
)
た
酔
(
よ
)
た
酔
(
よ
)
た
酔
(
よ
)
たよた
助
(
すけ
)
の
330
呉
(
く
)
れた
酒
(
さけ
)
でも
味
(
あぢ
)
がある
331
ほんに
浮世
(
うきよ
)
は
斯
(
か
)
うしたものか
332
三分
(
さんぶ
)
五厘
(
ごりん
)
に
茶化
(
ちやくわ
)
して
通
(
とほ
)
る
333
茶
(
ちや
)
の
湯
(
ゆ
)
の
師匠
(
ししやう
)
のタルチンは
334
天下
(
てんか
)
に
無比
(
むひ
)
の
幸福者
(
しあわせもの
)
だ
335
向
(
むか
)
ふに
見
(
み
)
えるは
吾
(
わが
)
住
(
す
)
める
336
館
(
やかた
)
の
側
(
そば
)
の
向日
(
むかひ
)
の
森
(
もり
)
だ
337
オイオイ
皆
(
みな
)
の
御
(
ご
)
連中
(
れんちう
)
338
少時
(
しばらく
)
待
(
ま
)
つてゐるがよい
339
俺
(
おれ
)
が
出世
(
しゆつせ
)
の
暁
(
あかつき
)
は
340
キツト
引立
(
ひきた
)
ててやるほどに
341
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
342
悲観
(
ひくわん
)
なさるな
善
(
よ
)
い
後
(
あと
)
は
343
必
(
かなら
)
ず
悪
(
わる
)
い
悪
(
わる
)
いあとは
344
必
(
かなら
)
ず
善
(
よ
)
い
芽
(
め
)
が
吹
(
ふ
)
くものだ
345
エヘヽヽエツヘ エヘヽヽヽ
346
これこれ
皆
(
みな
)
の
衆
(
しう
)
347
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
つた。
348
もう
之
(
これ
)
から
去
(
い
)
んで
下
(
くだ
)
さい』
349
(
大正一四・一・六
新一・二九
北村隆光
録)
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