大火災はタラハン市の過半を焼き払い、城内にまで飛び火、茶寮一棟を全焼した。市内には不逞首陀団、主義者団が横行し、目も当てられぬ惨状を呈した。全消防隊、目付け侍を繰り出し、ようやく消化、暴徒の鎮撫を見た。
左守は邸宅を焼かれ、部下を指揮して騒動の収拾にあたっていたが、騒動が収まったのを見て、大王の間に伺候した。するとすでに王は、この騒ぎに驚きのあまり発熱し、人事不省に陥っていた。
左守はこの事態に際して太子に指揮を仰ごうと、太子殿にやってきた。左守は自分の辞任と息子アリナの行く末を頼み込む。
太子(アリナの変装)は、自分は父王の危篤に際して自分が動くことはできないと説く。そして王に代わって左守の職を解き、復興院の総裁に任じた。そして他の重臣と協議の上、復興に力を尽くすように諭す。
左守が帰った後、シノブがやってきて、化けの皮がはがれるのを心配するアリナに気合を入れる。シノブが下がると、入れ違いに右守がやってくる。
右守は、臨終の床の王から太子を呼ぶように言われて、太子を王の床に連れて行こうとやってきたのであった。太子は後からすぐに行くと言って先に右守を返すが、ここで途方にくれてしまう。
そこへシノブがやってきて、太子が帰ってきたことを伝える。太子は父王が臨終であることを聞くと、狼狽のあまり、労働服を着替えるのを忘れてしまう。部屋に戻ってからそれに気づくが、右守が再び父王の臨終を告げに来ると、我を忘れて汚れた労働服のまま、病床に駆けつけてしまう。極度の近眼の右守も、太子の身なりに気がつかなかった。