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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
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第9巻(申の巻)
序歌
凡例
総説歌
第1篇 長途の旅
01 都落
〔394〕
02 エデンの渡
〔395〕
03 三笠丸
〔396〕
04 大足彦
〔397〕
05 海上の神姿
〔398〕
06 刹那信心
〔399〕
07 地獄の沙汰
〔400〕
第2篇 一陽来復
08 再生の思
〔401〕
09 鴛鴦の衾
〔402〕
10 言葉の車
〔403〕
11 蓬莱山
〔404〕
第3篇 天涯万里
12 鹿島立
〔405〕
13 訣別の歌
〔406〕
14 闇の谷底
〔407〕
15 団子理屈
〔408〕
16 蛸釣られ
〔409〕
17 甦生
〔410〕
第4篇 千山万水
18 初陣
〔411〕
19 悔悟の涙
〔412〕
20 心の鏡
〔413〕
21 志芸山祇
〔414〕
22 晩夏の風
〔415〕
23 高照山
〔416〕
24 玉川の滝
〔417〕
25 窟の宿替
〔418〕
26 巴の舞
〔419〕
第5篇 百花爛漫
27 月光照梅
〔420〕
28 窟の邂逅
〔421〕
29 九人娘
〔422〕
30 救の神
〔423〕
31 七人の女
〔424〕
32 一絃琴
〔425〕
33 栗毛の駒
〔426〕
34 森林の囁
〔427〕
35 秋の月
〔428〕
36 偽神憑
〔429〕
37 凱歌
〔430〕
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(二)
余白歌
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第一八章
初陣
(
うひぢん
)
〔四一一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
篇:
第4篇 千山万水
よみ(新仮名遣い):
せんざんばんすい
章:
第18章 初陣
よみ(新仮名遣い):
ういじん
通し章番号:
411
口述日:
1922(大正11)年02月14日(旧01月18日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一方、珍山彦と三姉妹は智利の国の南方にあるハラの港に着いた。一行は船に乗り込んだ。船の名はアタル丸と言い、アタルの港(ヒルの国)に帰るところであった。
船中では、熊公と虎公が雑談話をしていた。虎公は自らの犯してきた悪を自慢していた。智利の港で、桃上彦は死んだ、と嘘の情報を話して三姉妹一行から金を詐取したのは、実はこの虎公であった。
珍山彦は虎公と熊公の会話を聞いて、松代姫に、二人の改心を促す宣伝を命じた。松代姫は船中に立って、しとやかに二人を諭す宣伝歌を歌い始めた。
松代姫はその宣伝歌に自分の身の上を読み込み、また人間は、神から身魂を与えられた神に等しき存在であり、直日に見直し聞きなおして心の玉を取り戻すように、と語りかけた。
船中の人々はこの声に耳を澄ませて静かに聞き入り、また感嘆している。虎公は以前の威勢のよさにも似ず、この歌に感じて大声をあげて泣き伏した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
テルの国(てるの国)、テルの港(てるの港)
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-12-30 17:53:00
OBC :
rm0918
愛善世界社版:
147頁
八幡書店版:
第2輯 327頁
修補版:
校定版:
153頁
普及版:
61頁
初版:
ページ備考:
001
珍山彦
(
うづやまひこ
)
は
松
(
まつ
)
、
002
竹
(
たけ
)
、
003
梅
(
うめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に、
004
草
(
くさ
)
の
衾
(
しとね
)
に
石枕
(
いはまくら
)
、
005
数
(
かず
)
を
重
(
かさ
)
ねて
漸々
(
やうやう
)
に
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
の
南方
(
なんぱう
)
ハラの
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
きぬ。
006
夜船
(
よぶね
)
は
今
(
いま
)
に
出帆
(
しゆつぱん
)
せむとする
間際
(
まぎは
)
なり。
007
十三夜
(
じふさんや
)
の
月
(
つき
)
は、
008
満天
(
まんてん
)
黒雲
(
くろくも
)
に
包
(
つつ
)
まれて
光
(
ひかり
)
を
隠
(
かく
)
し、
009
一点
(
いつてん
)
の
星影
(
ほしかげ
)
もなき
真
(
しん
)
の
闇
(
やみ
)
なり。
010
この
船
(
ふね
)
の
名
(
な
)
はアタル
丸
(
まる
)
といひ、
011
アタルの
港
(
みなと
)
より、
012
ハラの
港
(
みなと
)
に
数多
(
あまた
)
の
果物
(
くだもの
)
を
積
(
つ
)
み、
013
人
(
ひと
)
を
乗
(
の
)
せ
来
(
きた
)
り、
014
今
(
いま
)
や
国
(
くに
)
に
帰
(
かへ
)
らむとする
時
(
とき
)
なりき。
015
船頭
(
せんどう
)
は
黒暗
(
くらやみ
)
の
中
(
なか
)
より、
016
船頭
『いま
船
(
ふね
)
が
出
(
で
)
ます、
017
乗
(
の
)
る
人
(
ひと
)
は
早
(
はや
)
く
乗
(
の
)
りなさいー』
018
と、
019
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
て、
020
竹筒
(
たけづつ
)
を
口
(
くち
)
に
当
(
あ
)
てなどして、
021
ブーブーと
吹
(
ふ
)
き
知
(
し
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
022
折
(
をり
)
からの
南風
(
なんぷう
)
に、
023
船
(
ふね
)
の
帆
(
ほ
)
は
風
(
かぜ
)
を
充分
(
じゆうぶん
)
に
孕
(
はら
)
んで、
024
船脚
(
ふなあし
)
早
(
はや
)
く
進行
(
しんかう
)
し
始
(
はじ
)
めたり。
025
珍山彦
(
うづやまひこ
)
一行
(
いつかう
)
は
船
(
ふね
)
の
一隅
(
いちぐう
)
に
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
026
この
時
(
とき
)
船中
(
せんちう
)
は
誰彼
(
たれかれ
)
の
顔
(
かほ
)
さへ
碌
(
ろく
)
に
見
(
み
)
えない
程
(
ほど
)
の
暗
(
くら
)
さなり。
027
船頭
(
せんどう
)
は
燈台
(
とうだい
)
を
目標
(
めあて
)
に、
028
船頭
『
智利
(
てる
)
の
御国
(
みくに
)
を
船出
(
ふなで
)
して
029
夜
(
よる
)
なき
秘露
(
ひる
)
へ
帰
(
かへ
)
りゆく
030
覆
(
かへ
)
るためしも
浪
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
031
風
(
かぜ
)
も
あたる
の
港
(
みなと
)
まで』
032
と
節
(
ふし
)
流暢
(
なだらか
)
に
歌
(
うた
)
つてゐる。
033
船中
(
せんちう
)
には、
034
あちらこちらと
雑談
(
ざつだん
)
始
(
はじ
)
まる。
035
熊公
(
くまこう
)
『オイ、
036
虎公
(
とらこう
)
、
037
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
やら
筑紫
(
つくし
)
の
国
(
くに
)
から
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
時
(
とき
)
に、
038
三笠丸
(
みかさまる
)
の
船客
(
せんきやく
)
から、
039
ドツサリと
酒代
(
さかて
)
をボツタクツタでないか
[
※
第7章のエピソード。
]
。
040
貴様
(
きさま
)
も
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
にかけたら
抜目
(
ぬけめ
)
のない
奴
(
やつ
)
だなア』
041
虎公
(
とらこう
)
『ここは
人中
(
ひとなか
)
だ、
042
人中
(
ひとなか
)
で
恥
(
はぢ
)
を
振撒
(
ふりま
)
きよるのか。
043
コラ
熊公
(
くまこう
)
、
044
俺
(
おれ
)
を
何
(
なん
)
だと
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
る、
045
俺
(
おれ
)
はこの
高砂島
(
たかさごじま
)
に、
046
誰
(
たれ
)
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
もない
鬼
(
おに
)
の
虎
(
とら
)
さまだぞ』
047
熊公
『
人中
(
ひとなか
)
でも
船中
(
せんちう
)
でも、
048
夜
(
よ
)
の
中
(
なか
)
でも
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
でも
構
(
かま
)
ふものか。
049
貴様
(
きさま
)
は
却々
(
なかなか
)
の
悪党
(
あくたう
)
だが、
050
しかし
其処
(
そこ
)
まで
悪党
(
あくたう
)
も
徹底
(
てつてい
)
すれば、
051
却
(
かへつ
)
て
偉
(
えら
)
いワ』
052
虎公
『
決
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だい。
053
弁天
(
べんてん
)
さまとも、
054
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまとも、
055
例
(
たと
)
へ
方
(
がた
)
ない
立派
(
りつぱ
)
な
美人
(
びじん
)
が、
056
しかも
三
(
さん
)
人
(
にん
)
。
057
そこに
美
(
うつく
)
しい
強
(
つよ
)
さうな
家来
(
けらい
)
が
一人
(
ひとり
)
随
(
つ
)
いて
居
(
を
)
つた。
058
そこで
亀公
(
かめこう
)
の
野郎
(
やらう
)
、
059
業腹
(
ごふばら
)
を
煮
(
に
)
やし
自暴自棄
(
やけ
)
になり、
060
酒
(
さけ
)
をチビチビ
飲
(
の
)
み
出
(
だ
)
して
種々
(
いろいろ
)
な
話
(
はなし
)
の
末
(
すゑ
)
、
061
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
さまが、
062
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
で
殺
(
ころ
)
された
話
(
はなし
)
をやりよつた。
063
さうすると、
064
その
家来
(
けらい
)
が
一寸
(
ちよつと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
しますとお
出
(
い
)
でたのだ。
065
そこでこの
方
(
はう
)
が
亀公
(
かめこう
)
の
話
(
はなし
)
を
横奪
(
よこど
)
りして「ヘイ、
066
何
(
なん
)
でございます」とやつた
処
(
ところ
)
が、
067
その
男
(
をとこ
)
は
何
(
なん
)
でも
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
さまの
家来
(
けらい
)
の
端
(
はし
)
くれと
見
(
み
)
えて、
068
私
(
わたくし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
仔細
(
しさい
)
があつて、
069
面会
(
めんくわい
)
に
参
(
まゐ
)
る
者
(
もの
)
と
言
(
い
)
ふのだ。
070
サア
占
(
し
)
めた、
071
お
出
(
い
)
でたなア、
072
と
手
(
て
)
ぐすね
引
(
ひ
)
いて
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
ると、
073
鰯網
(
いわしあみ
)
に
鯨
(
くじら
)
がかかつたやうに、
074
虎
(
とら
)
さまの
舌
(
した
)
の
先
(
さき
)
に
乗
(
の
)
つて、
075
見
(
み
)
たこともないやうな
立派
(
りつぱ
)
な
金
(
かね
)
をガチヤガチヤゾロリと
出
(
だ
)
しをつた。
076
それで
此奴
(
こいつ
)
却々
(
なかなか
)
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
るワイ、
077
一遍
(
いつぺん
)
に
言
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つたら
物
(
もの
)
に
成
(
な
)
らぬ、
078
またお
代
(
かは
)
りをと
云
(
い
)
ふ
調子
(
てうし
)
で、
079
いい
加減
(
かげん
)
に
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
ると、
080
お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
判
(
わか
)
りにくい、
081
もちと
確
(
しつ
)
かりハツキリと
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れと
言
(
い
)
ふのだ。
082
そこでこの
虎
(
とら
)
さまは、
083
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
金
(
かね
)
次第
(
しだい
)
だとかましたところ、
084
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
らぬ
都人
(
みやこびと
)
の
青首
(
あをくび
)
が「うん、
085
さうか、
086
酒代
(
さかて
)
が
欲
(
ほ
)
しいのか、
087
うるさい
奴
(
やつ
)
だなア」と
莞爾
(
につこ
)
と
笑
(
わら
)
つて、
088
またドスンと
重
(
おも
)
たい
程
(
ほど
)
呉
(
く
)
れよつたのだ。
089
あんなぼろい
事
(
こと
)
は
滅多
(
めつた
)
にありやせぬ。
090
誰
(
たれ
)
か、
091
またあんな
話
(
はなし
)
をやつて
呉
(
く
)
れないかなア』
092
熊公
『オイ、
093
虎公
(
とらこう
)
、
094
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
した
)
に
何遍
(
なんべん
)
も
鰌
(
どぜう
)
は
居
(
を
)
らぬよ。
095
お
前
(
まへ
)
のやうな、
096
欲
(
よく
)
の
熊鷹
(
くまたか
)
には
同情
(
どうじやう
)
は
出来
(
でき
)
ない』
097
松
(
まつ
)
、
098
竹
(
たけ
)
、
099
梅
(
うめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
は
側
(
かたはら
)
にあつて、
100
熊
(
くま
)
と
虎
(
とら
)
との
対話
(
たいわ
)
に
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
聴
(
き
)
いてゐる。
101
珍山彦
(
うづやまひこ
)
は
小声
(
こごゑ
)
で、
102
珍山彦
『
松代姫
(
まつよひめ
)
様
(
さま
)
、
103
妙
(
めう
)
な
話
(
はなし
)
をやつてますなア。
104
蛙
(
かへる
)
は
口
(
くち
)
からとやら、
105
現在
(
げんざい
)
あなた
方
(
がた
)
の
乗
(
の
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやるのも
知
(
し
)
らずに、
106
自分
(
じぶん
)
の
悪事
(
あくじ
)
を
手柄
(
てがら
)
さうに
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
妙
(
めう
)
な
奴
(
やつ
)
もあるものだ。
107
一
(
ひと
)
つあの
男
(
をとこ
)
を
帰順
(
きじゆん
)
させたら
何
(
ど
)
うでせうか。
108
悪
(
あく
)
に
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
は、
109
また
善
(
ぜん
)
にも
強
(
つよ
)
いものですよ』
110
松代姫
『さうでせうかなア。
111
あんな
人
(
ひと
)
でも
改心
(
かいしん
)
するでせうか』
112
珍山彦
『あなたも
宣伝使
(
せんでんし
)
の
初陣
(
うひぢん
)
だ。
113
あの
男
(
をとこ
)
を
改心
(
かいしん
)
さす
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬやうでは、
114
到底
(
たうてい
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は
勤
(
つと
)
まりませぬなア』
115
松代姫
『アヽ、
116
一
(
ひと
)
つそれではやつて
見
(
み
)
ませう』
117
松代姫
(
まつよひめ
)
は
立
(
た
)
つて
声
(
こゑ
)
しとやかに
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
むる。
118
松代姫
『
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
りし
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
119
神
(
かみ
)
の
御魂
(
みたま
)
に
生
(
あ
)
れませる
120
神
(
かみ
)
にひとしき
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
121
いかで
心
(
こころ
)
の
曲
(
まが
)
るべき
122
いかで
心
(
こころ
)
の
曇
(
くも
)
るべき
123
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
に
月
(
つき
)
は
照
(
て
)
る
124
心
(
こころ
)
の
海
(
うみ
)
に
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
125
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
る
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
126
善
(
よ
)
きも
悪
(
あ
)
しきも
押
(
お
)
しなべて
127
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
をうくるなり
128
禍
(
わざはひ
)
多
(
おほ
)
き
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
129
父
(
ちち
)
には
離
(
はな
)
れ
垂乳根
(
たらちね
)
の
130
母
(
はは
)
にはこの
世
(
よ
)
を
先立
(
さきだ
)
たれ
131
憂
(
うれ
)
ひに
悩
(
なや
)
む
雛鳥
(
ひなどり
)
の
132
心
(
こころ
)
悲
(
かな
)
しき
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
133
恵
(
めぐ
)
みも
高
(
たか
)
き
高砂
(
たかさご
)
の
134
珍
(
うづ
)
の
御国
(
みくに
)
に
現
(
あ
)
れませる
135
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
に
会
(
あ
)
はむとて
136
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
き
照彦
(
てるひこ
)
の
137
従僕
(
しもべ
)
の
司
(
つかさ
)
ともろともに
138
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
はる
の
空
(
そら
)
139
恋
(
こひ
)
しき
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
にして
140
歩
(
あゆ
)
みも
馴
(
な
)
れぬ
山坂
(
やまさか
)
を
141
草
(
くさ
)
の
衾
(
しとね
)
や
石枕
(
いはまくら
)
142
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
に
潤
(
うるほ
)
ひつ
143
心
(
こころ
)
つくし
の
国
(
くに
)
を
経
(
へ
)
て
144
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
に
よる
の
市
(
まち
)
145
よる
の
港
(
みなと
)
を
船出
(
ふなで
)
して
146
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
を
みかさ
丸
(
まる
)
147
波風
(
なみかぜ
)
荒
(
あら
)
き
海原
(
うなばら
)
を
148
渡
(
わた
)
るも
淋
(
さび
)
しき
手弱女
(
たをやめ
)
の
149
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
にたつ
雲
(
くも
)
の
150
黒白
(
あやめ
)
も
判
(
わ
)
かぬ
真
(
しん
)
の
闇
(
やみ
)
151
闇
(
やみ
)
より
出
(
い
)
でて
闇
(
やみ
)
に
入
(
い
)
る
152
日数
(
ひかず
)
重
(
かさ
)
ねてやうやうに
153
月日
(
つきひ
)
も
てる
の
港
(
みなと
)
まで
154
来
(
き
)
たる
折
(
をり
)
しも
何人
(
なんびと
)
か
155
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
の
物語
(
ものがたり
)
156
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
垂乳根
(
たらちね
)
は
157
遠
(
とほ
)
き
御国
(
みくに
)
へ
出
(
い
)
でますと
158
聞
(
き
)
きたる
時
(
とき
)
の
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
の
159
悲
(
かな
)
しさ
辛
(
つら
)
さ
如何
(
いか
)
ばかり
160
量
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
161
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
ぶ
折
(
をり
)
からに
162
この
世
(
よ
)
に
鬼
(
おに
)
はなきものか
163
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
みかへる
の
164
神
(
かみ
)
と
現
(
あ
)
れます
大蛇彦
(
をろちひこ
)
165
その
温
(
あたた
)
かき
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
に
166
憂
(
うれ
)
ひの
雲
(
くも
)
も
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
り
167
波
(
なみ
)
を
押分
(
おしわ
)
け
昇
(
のぼ
)
る
日
(
ひ
)
の
168
光
(
ひか
)
る
心
(
こころ
)
の
嬉
(
うれ
)
しさよ
169
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
170
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわけ
)
る
171
この
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
172
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
173
ただ
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
174
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
せ
175
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
176
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
仇
(
あだ
)
は
赦
(
ゆる
)
せかし
177
人
(
ひと
)
を
恕
(
ゆる
)
すは
烏羽玉
(
うばたま
)
の
178
闇
(
やみ
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ふ
身
(
み
)
の
罪
(
つみ
)
を
179
祓
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
むるものぞかしと
180
教
(
をし
)
へ
導
(
みちび
)
く
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
181
神
(
かみ
)
と
君
(
きみ
)
とに
あななひ
の
182
道
(
みち
)
を
教
(
をし
)
ふる
麻柱教
(
あななひけう
)
183
教
(
をしへ
)
の
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられて
184
暗
(
くら
)
き
闇世
(
やみよ
)
も
てる
の
国
(
くに
)
185
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
ひる
の
国
(
くに
)
186
朝日
(
あさひ
)
あたる
の
港
(
みなと
)
まで
187
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこそ
楽
(
たの
)
しけれ
188
あゝ
虎公
(
とらこう
)
よ
虎公
(
とらこう
)
よ
189
われは
御教
(
みのり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
190
奪
(
と
)
られた
金
(
かね
)
は
惜
(
を
)
しくない
191
ただ
惜
(
を
)
しむべきものがある
192
神
(
かみ
)
に
貰
(
もら
)
うた
虎公
(
とらこう
)
の
193
清
(
きよ
)
き
身魂
(
みたま
)
を
枉津見
(
まがつみ
)
の
194
神
(
かみ
)
に
心
(
こころ
)
を
曇
(
くも
)
らされ
195
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
守
(
まも
)
る
魂
(
たましひ
)
を
196
奪
(
と
)
られ
給
(
たま
)
ひし
事
(
こと
)
ぞかし
197
奪
(
と
)
られた
魂
(
たま
)
は
是非
(
ぜひ
)
なしと
198
思
(
おも
)
ふことなく
今
(
いま
)
よりは
199
霊
(
たま
)
の
真柱
(
みはしら
)
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
200
下津
(
したつ
)
磐根
(
いはね
)
に
千木
(
ちぎ
)
高
(
たか
)
く
201
言霊柱
(
ことたまばしら
)
建
(
た
)
てかけて
202
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
の
賜
(
たま
)
ひてし
203
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
をとり
返
(
かへ
)
せ
204
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
をとり
返
(
かへ
)
せ
205
返
(
かへ
)
す
返
(
がへ
)
すも
悲
(
かな
)
しきは
206
魂
(
たま
)
を
抜
(
ぬ
)
かれし
虎公
(
とらこう
)
の
207
おん
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
ぞ
行
(
ゆ
)
く
末
(
すゑ
)
ぞ
208
あゝ
虎公
(
とらこう
)
よ、とら
公
(
こう
)
よ
209
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
片時
(
かたとき
)
も
210
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
にのりなほせ
211
神
(
かみ
)
の
産
(
う
)
みてし
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
212
神
(
かみ
)
にひとしき
者
(
もの
)
ぞかし
213
神
(
かみ
)
にひとしき
者
(
もの
)
ぞかし
214
神
(
かみ
)
の
身魂
(
みたま
)
と
現
(
あら
)
はれて
215
善
(
よ
)
しと
悪
(
あ
)
しとを
省
(
かへり
)
みよ
216
ただ
今
(
いま
)
までの
曲業
(
まがわざ
)
を
217
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
218
直日
(
なほひ
)
の
神
(
かみ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
219
わけて
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
よ
220
誉
(
ほ
)
めよ
称
(
たた
)
へよ
神
(
かみ
)
の
恩
(
おん
)
221
魂
(
たま
)
を
洗
(
あら
)
へよ
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
222
暗
(
やみ
)
を
馳
(
は
)
せ
行
(
ゆ
)
くこの
船
(
ふね
)
よ
223
神
(
かみ
)
の
身魂
(
みたま
)
の
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
224
てる
の
港
(
みなと
)
を
後
(
あと
)
にして
225
大御恵
(
おほみめぐ
)
みも
弥
(
いや
)
深
(
ふか
)
き
226
青海原
(
あをうなばら
)
を
渡
(
わた
)
りつつ
227
よる
なき
ひる
の
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
228
あたる
の
港
(
みなと
)
に
進
(
すす
)
むごと
229
いと
速
(
すみや
)
かに
速
(
すみや
)
かに
230
心
(
こころ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
ふべし
231
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
を
洗
(
あら
)
ふべし』
232
船中
(
せんちう
)
の
人々
(
ひとびと
)
は、
233
この
声
(
こゑ
)
に
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
ませ、
234
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
静
(
しづ
)
かに
聞
(
き
)
き
入
(
い
)
る。
235
暗
(
くら
)
き
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
にはこの
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いて、
236
何
(
いづ
)
れも
感歎
(
かんたん
)
する
声
(
こゑ
)
頻
(
しき
)
りに
起
(
おこ
)
れり。
237
虎公
(
とらこう
)
は
以前
(
いぜん
)
の
元気
(
げんき
)
にも
似
(
に
)
ず、
238
大声
(
おほごゑ
)
をあげて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
び
伏
(
ふ
)
しぬ。
239
アタル
丸
(
まる
)
は
燈台
(
とうだい
)
を
目標
(
めあて
)
に、
240
暗
(
やみ
)
を
破
(
やぶ
)
りて
荒浪
(
あらなみ
)
を
切
(
き
)
りながら、
241
チヨクチヨクと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
242
(
大正一一・二・一四
旧一・一八
東尾吉雄
録)
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