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第66巻(巳の巻)
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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
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特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第78巻(巳の巻)
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第9巻(申の巻)
序歌
凡例
総説歌
第1篇 長途の旅
01 都落
〔394〕
02 エデンの渡
〔395〕
03 三笠丸
〔396〕
04 大足彦
〔397〕
05 海上の神姿
〔398〕
06 刹那信心
〔399〕
07 地獄の沙汰
〔400〕
第2篇 一陽来復
08 再生の思
〔401〕
09 鴛鴦の衾
〔402〕
10 言葉の車
〔403〕
11 蓬莱山
〔404〕
第3篇 天涯万里
12 鹿島立
〔405〕
13 訣別の歌
〔406〕
14 闇の谷底
〔407〕
15 団子理屈
〔408〕
16 蛸釣られ
〔409〕
17 甦生
〔410〕
第4篇 千山万水
18 初陣
〔411〕
19 悔悟の涙
〔412〕
20 心の鏡
〔413〕
21 志芸山祇
〔414〕
22 晩夏の風
〔415〕
23 高照山
〔416〕
24 玉川の滝
〔417〕
25 窟の宿替
〔418〕
26 巴の舞
〔419〕
第5篇 百花爛漫
27 月光照梅
〔420〕
28 窟の邂逅
〔421〕
29 九人娘
〔422〕
30 救の神
〔423〕
31 七人の女
〔424〕
32 一絃琴
〔425〕
33 栗毛の駒
〔426〕
34 森林の囁
〔427〕
35 秋の月
〔428〕
36 偽神憑
〔429〕
37 凱歌
〔430〕
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(二)
余白歌
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第三二章
一絃琴
(
いちげんきん
)
〔四二五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
篇:
第5篇 百花爛漫
よみ(新仮名遣い):
ひゃっからんまん
章:
第32章 一絃琴
よみ(新仮名遣い):
いちげんきん
通し章番号:
425
口述日:
1922(大正11)年02月17日(旧01月21日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高砂洲から間の国へ宣伝の旅を続けていた駒山彦は、鷹取別の手下である春山彦の館から、梅ケ香姫の一弦琴の音色が聞こえてくるのを聞きつけた。
もしや姫が囚われの身になっているのではないかと案じた駒山彦は、春山彦の館の門を叩いて、中に入れるようにと大音声で呼ばわった。
迎えに出た竹野姫、梅ケ香姫と駒山彦は、久々の再会を果たした。奥へ通された駒山彦は、常世神王の部下である春山彦が主神を祀っているのを見て驚いたが、松代姫から一部始終を聞かされて納得した。
駒山彦は喜び、神に感謝してこれまでの来歴を歌に歌いこんだ。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-23 23:37:06
OBC :
rm0932
愛善世界社版:
248頁
八幡書店版:
第2輯 363頁
修補版:
校定版:
259頁
普及版:
105頁
初版:
ページ備考:
001
空
(
そら
)
に
轟
(
とどろ
)
く
磐船
(
いはふね
)
の
002
響
(
ひび
)
きは
何時
(
いつ
)
か
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
003
冬樹
(
ふゆき
)
を
渡
(
わた
)
る
木枯
(
こがらし
)
の
004
声
(
こゑ
)
も
寂
(
さび
)
しく
聞
(
きこ
)
ゆなる
005
冬
(
ふゆ
)
の
初
(
はじ
)
めとなりぬれど
006
春
(
はる
)
めき
渡
(
わた
)
る
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
007
神
(
かみ
)
の
屋敷
(
やしき
)
に
神寿
(
かみほぎ
)
の
008
言霊
(
ことたま
)
清
(
きよ
)
き
一絃琴
(
いちげんきん
)
009
天地
(
てんち
)
に
通
(
つう
)
ずる
一条
(
ひとすぢ
)
の
010
その
声
(
こゑ
)
清
(
きよ
)
き
琴糸
(
こといと
)
の
011
捌
(
さばき
)
の
音色
(
ねいろ
)
もサヤサヤに
012
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろつぷ
)
を
洗
(
あら
)
ふなり
013
折
(
を
)
りから
門前
(
もんぜん
)
に
佇
(
たたず
)
む
男
(
をとこ
)
014
片手
(
かたて
)
を
耳
(
みみ
)
にあてながら
015
木枯
(
こがらし
)
荒
(
すさ
)
ぶ
初冬
(
はつふゆ
)
の
016
峰
(
みね
)
の
嵐
(
あらし
)
か
松風
(
まつかぜ
)
か
017
訪
(
たづ
)
ぬる
人
(
ひと
)
の
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
か
018
心
(
こころ
)
の
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
神
(
かみ
)
019
とどめて
聴
(
き
)
くも
縁
(
えん
)
の
端
(
はし
)
020
心
(
こころ
)
に
通
(
かよ
)
ふ
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
は
021
常磐
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
の
松代姫
(
まつよひめ
)
022
思
(
おも
)
ひの
竹野
(
たけの
)
著
(
いちじる
)
く
023
戸外
(
こぐわい
)
に
響
(
ひび
)
く
床
(
ゆか
)
しさよ
024
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
025
貴
(
うづ
)
の
命
(
みこと
)
の
御
(
おん
)
すさび
026
何処
(
どこ
)
とはなしに
潤
(
うるほ
)
ひの
027
声
(
こゑ
)
をしるべに
独言
(
ひとりごと
)
。
028
駒山彦
(
こまやまひこ
)
『
合点
(
がつてん
)
のゆかぬこの
館
(
やかた
)
の
様子
(
やうす
)
、
029
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
日頃
(
ひごろ
)
奏
(
かな
)
でさせ
給
(
たま
)
ふ
一絃琴
(
いちげんきん
)
のその
音色
(
ねいろ
)
、
030
様子
(
やうす
)
ありげな
春山彦
(
はるやまひこ
)
のこの
館
(
やかた
)
、
031
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つて
事
(
こと
)
の
実否
(
じつぴ
)
を
探
(
さぐ
)
らむと、
032
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
は
逸
(
はや
)
れども、
033
人目
(
ひとめ
)
の
垣
(
かき
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
034
何
(
なん
)
とせむ
方
(
かた
)
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
の、
035
心
(
こころ
)
短
(
みじか
)
き
門番
(
もんばん
)
に
怒鳴
(
どな
)
りつけられ、
036
追
(
お
)
つ
払
(
ぱら
)
はれなば
如何
(
いか
)
にせむ。
037
虫
(
むし
)
が
知
(
し
)
らすか
何
(
なん
)
となく、
038
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
り
兼
(
か
)
ねしこの
門口
(
かどぐち
)
、
039
神
(
かみ
)
の
誠
(
まこと
)
の
教
(
のり
)
を
以
(
も
)
て
叩
(
たた
)
かば
開
(
ひら
)
く
胸
(
むね
)
の
裡
(
うち
)
、
040
叩
(
たた
)
いて
見
(
み
)
むか
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し、
041
ここは
春山
(
はるやま
)
の
郷
(
さと
)
の
司
(
つかさ
)
、
042
ウラル
彦
(
ひこ
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
曲神
(
まがかみ
)
の
住所
(
すみか
)
、
043
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
すは
易
(
やす
)
けれど、
044
大事
(
だいじ
)
の
前
(
まへ
)
の
一
(
いち
)
小事
(
せうじ
)
、
045
くだらぬ
事
(
こと
)
に
暇
(
ひま
)
をとり
大切
(
たいせつ
)
なる
吾
(
わ
)
が
使命
(
しめい
)
を
仕損
(
しそん
)
じなば、
046
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
に
対
(
たい
)
し
奉
(
たてまつ
)
り、
047
何
(
なん
)
と
言訳
(
いひわけ
)
あるべきぞ。
048
嗚呼
(
ああ
)
恨
(
うら
)
めしやウラル
彦
(
ひこ
)
、
049
開
(
あ
)
けて
入
(
はい
)
らうか、
050
開
(
あ
)
けずに
居
(
を
)
らうか、
051
開
(
あ
)
けて
口惜
(
くや
)
しき
玉手箱
(
たまてばこ
)
』
052
魂
(
たま
)
の
御柱
(
みはしら
)
搗
(
つ
)
き
固
(
かた
)
め、
053
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うちて、
054
思
(
おも
)
ひきつたる
大音声
(
だいおんじやう
)
。
055
駒山彦
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
駒山彦
(
こまやまひこ
)
とは
吾事
(
わがこと
)
なり。
056
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
鷹取別
(
たかとりわけ
)
が
魔神
(
まがみ
)
に
組
(
くみ
)
する
春山彦
(
はるやまひこ
)
、
057
この
門
(
もん
)
開
(
ひら
)
け』
058
と
右手
(
みぎて
)
に
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めつつ、
059
割
(
わ
)
れむ
許
(
ばか
)
りに
門
(
もん
)
の
扉
(
とびら
)
を
打叩
(
うちたた
)
く。
060
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
き
松代姫
(
まつよひめ
)
は、
061
何
(
なん
)
となく
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えある
門
(
かど
)
の
声
(
こゑ
)
、
062
松代姫
『
竹野姫
(
たけのひめ
)
、
063
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
、
064
そなたは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
ながら
門口
(
かどぐち
)
に
出
(
い
)
で、
065
いかなる
人
(
ひと
)
か、
066
調
(
しら
)
べて
給
(
た
)
も』
067
竹野姫、梅ケ香姫
『ハイ』
068
と
答
(
こた
)
へて
両人
(
りやうにん
)
は
徐々
(
しづしづ
)
と
起
(
た
)
つて
門
(
かど
)
の
口
(
くち
)
。
069
竹野姫
『
何方
(
いづかた
)
なれば
門戸
(
もんこ
)
を
叩
(
たた
)
きたまふぞ。
070
何
(
なん
)
となく
床
(
ゆか
)
しき、
071
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えのある
御
(
おん
)
声
(
こゑ
)
、
072
名告
(
なの
)
らせたまへ』
073
と
声
(
こゑ
)
かくれば、
074
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
門外
(
もんぐわい
)
より、
075
駒山彦
『ヤアさう
聞
(
き
)
く
声
(
こゑ
)
は
竹野姫
(
たけのひめ
)
殿
(
どの
)
、
076
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
殿
(
どの
)
、
077
吾
(
われ
)
こそは
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
にて
別
(
わか
)
れたる
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にて
候
(
さふらふ
)
。
078
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
たる
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
079
而
(
しか
)
も
御
(
おん
)
二方
(
ふたがた
)
様
(
さま
)
、
080
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
鷹取別
(
たかとりわけ
)
が
幕下
(
ばくか
)
の
春山彦
(
はるやまひこ
)
、
081
ウラル
教
(
けう
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
曲神
(
まがかみ
)
の
館
(
やかた
)
に
忍
(
しの
)
ばせ
給
(
たま
)
ふは
何故
(
なにゆゑ
)
ぞ。
082
これには
深
(
ふか
)
き
様子
(
やうす
)
もあらむ、
083
委細
(
ゐさい
)
包
(
つつ
)
まず
述
(
の
)
べられたし』
084
竹野姫
『これには
深
(
ふか
)
き
仔細
(
しさい
)
のござれば、
085
先
(
ま
)
づまづお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
086
と
門
(
もん
)
の
閂
(
かんぬき
)
をとり
外
(
はづ
)
し、
087
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
いて
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
で、
088
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
手
(
て
)
をとつて
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
089
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
は
手
(
て
)
を
支
(
つか
)
へ、
090
竹野姫、梅ケ香姫
『アヽこれはこれは
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
091
魔神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
る
荒野原
(
あらのはら
)
、
092
さぞお
困
(
こま
)
りでございませう。
093
先
(
ま
)
づまづお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
094
と
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
ガラリと
押
(
お
)
し
開
(
ひら
)
く。
095
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は、
096
駒山彦
『
然
(
しか
)
らば
御免
(
ごめん
)
』
097
と
言
(
い
)
ひつつズツと
座敷
(
ざしき
)
に
通
(
とほ
)
れば、
098
思
(
おも
)
ひがけなき
松代姫
(
まつよひめ
)
、
099
春山彦
(
はるやまひこ
)
が
家内
(
かない
)
の
各々
(
めいめい
)
、
100
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
山野
(
やまぬの
)
河海
(
かはうみ
)
の
供物
(
くもつ
)
を
献
(
けん
)
じ、
101
神
(
かみ
)
を
慰
(
いさ
)
むる
真最中
(
まつさいちう
)
、
102
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
不審
(
ふしん
)
の
面色
(
おももち
)
にて、
103
駒山彦
『
思
(
おも
)
ひ
掛
(
がけ
)
なき
松代姫
(
まつよひめ
)
殿
(
どの
)
、
104
この
家
(
や
)
の
御主人
(
あるじ
)
春山彦
(
はるやまひこ
)
殿
(
どの
)
、
105
貴下
(
あなた
)
はウラル
教
(
けう
)
を
奉
(
ほう
)
じ
鷹取別
(
たかとりわけ
)
に
媚
(
こ
)
び
諛
(
へつら
)
ふ
春山
(
はるやま
)
の、
106
郷
(
さと
)
の
司
(
つかさ
)
と
聞
(
き
)
きしに
拘
(
かか
)
はらず、
107
神前
(
しんぜん
)
恭
(
うやうや
)
しく
三五教
(
あななひけう
)
の
奉
(
ほう
)
ずる
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
を
祀
(
まつ
)
り、
108
神慮
(
しんりよ
)
を
慰
(
なぐさ
)
め
居
(
ゐ
)
給
(
たま
)
ふこの
場
(
ば
)
の
光景
(
くわうけい
)
、
109
合点
(
がつてん
)
ゆかず、
110
包
(
つつ
)
み
隠
(
かく
)
さず
委細
(
ゐさい
)
物語
(
ものがた
)
られたし』
111
と
迫
(
せま
)
るにぞ、
112
松代姫
(
まつよひめ
)
は、
113
松代姫
『
貴神
(
きしん
)
は
駒山彦
(
こまやまひこ
)
殿
(
どの
)
、
114
一別
(
いちべつ
)
以来
(
いらい
)
何
(
なん
)
の
消息
(
たより
)
もなく、
115
雨
(
あめ
)
、
116
風
(
かぜ
)
、
117
霜
(
しも
)
の
憂
(
う
)
き
節
(
ふし
)
に、
118
心
(
こころ
)
にかかる
汝
(
なれ
)
が
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
119
ようマア
無事
(
ぶじ
)
に
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
120
妾
(
わらは
)
姉妹
(
おとどい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
121
実
(
じつ
)
に
愧
(
はづ
)
かしき
事
(
こと
)
ながら、
122
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
計略
(
けいりやく
)
にかかり、
123
一命
(
いちめい
)
すでに
危
(
あやふ
)
き
処
(
ところ
)
、
124
情
(
なさけ
)
も
深
(
ふか
)
き
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
の
神
(
かみ
)
に
助
(
たす
)
けられ、
125
今
(
いま
)
やこの
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
らむとするきはどい
処
(
ところ
)
、
126
貴神
(
きしん
)
にお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
つたのも
測
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
思召
(
ぼしめし
)
、
127
どうぞ
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
に、
128
妾
(
わらは
)
に
代
(
かは
)
つて
厚
(
あつ
)
く
御
(
おん
)
礼
(
れい
)
申
(
まを
)
して
下
(
くだ
)
さい』
129
駒山彦
『
久振
(
ひさしぶ
)
りの
対面
(
たいめん
)
と
云
(
い
)
ひ、
130
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
帰順
(
きじゆん
)
と
云
(
い
)
ひ、
131
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
引
(
ひ
)
き
合
(
あ
)
はせ。
132
アヽこれは
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
様
(
さま
)
、
133
よくもよくも
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
下
(
くだ
)
さいました、
134
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
135
と、
136
遉
(
さすが
)
剛毅
(
がうき
)
の
駒山彦
(
こまやまひこ
)
も
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
の
袖
(
そで
)
をしぼる。
137
春山彦
(
はるやまひこ
)
は
初
(
はじ
)
めて
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
138
春山彦
『
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
りしこの
国
(
くに
)
は、
139
恵
(
めぐ
)
みの
花
(
はな
)
のパラダイス、
140
何処
(
いづこ
)
の
空
(
そら
)
にも
神柱
(
かむばしら
)
、
141
太敷
(
ふとし
)
く
立
(
た
)
てて
守
(
まも
)
ります、
142
その
御柱
(
みはしら
)
と
選
(
えら
)
ばれし、
143
春山彦
(
はるやまひこ
)
が
親子
(
おやこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
嬉
(
うれ
)
しさ。
144
御
(
お
)
礼
(
れい
)
は
却
(
かへ
)
つて
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
る、
145
幾久
(
いくひさ
)
しくも
変
(
かは
)
りなく、
146
吾
(
われ
)
らの
心
(
こころ
)
を
護
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ、
147
四柱
(
よはしら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
殿
(
どの
)
』
148
妻
(
つま
)
夏姫
(
なつひめ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
月
(
つき
)
、
149
雪
(
ゆき
)
、
150
花
(
はな
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
紅葉
(
もみぢ
)
の
如
(
ごと
)
き
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はせ、
151
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかきくれて
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
英姿
(
えいし
)
をば
伏拝
(
ふしをが
)
むこそ
殊勝
(
しゆしよう
)
なれ。
152
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
掻曇
(
かきくも
)
る、
153
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
を
霽
(
はら
)
さむと、
154
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
衝立
(
つつた
)
ち
上
(
あが
)
り、
155
駒山彦
『
雪
(
ゆき
)
に
輝
(
かがや
)
く
高白
(
かうはく
)
の
156
山
(
やま
)
に
攻
(
せ
)
め
来
(
く
)
る
御軍
(
みいくさ
)
の
157
言霊別
(
ことたまわけ
)
の
司
(
つかさ
)
をば
158
撃
(
う
)
つて
捨
(
す
)
てむと
常世彦
(
とこよひこ
)
159
常世
(
とこよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
仰
(
あふ
)
せにて
160
数多
(
あまた
)
の
神軍
(
しんぐん
)
引率
(
いんそつ
)
し
161
攻
(
せ
)
むる
折
(
をり
)
しも
大空
(
おほぞら
)
を
162
轟
(
とどろ
)
き
来
(
きた
)
る
磐船
(
いはふね
)
や
163
鳥船
(
とりふね
)
よりは
投
(
な
)
げ
下
(
おろ
)
す
164
激
(
はげ
)
しき
弾
(
たま
)
に
砕
(
くぢ
)
かれて
165
何
(
なに
)
かは
堪
(
たま
)
らむ
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
166
生命
(
いのち
)
消
(
き
)
えなむ
折柄
(
をりから
)
に
167
この
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
皇神
(
すめかみ
)
の
168
情
(
なさけ
)
の
網
(
あみ
)
に
掬
(
すく
)
はれて
169
惜
(
をし
)
き
生命
(
いのち
)
をながらへつ
170
三笠
(
みかさ
)
の
丸
(
まる
)
の
船中
(
せんちう
)
に
171
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
朝日子
(
あさひこ
)
の
172
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
助
(
たす
)
けられ
173
この
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
174
羽山津見
(
はやまづみ
)
の
神
(
かみ
)
となり
175
深山
(
みやま
)
の
奥
(
おく
)
に
捨
(
す
)
てられて
176
心
(
こころ
)
も
闇
(
くら
)
き
谷底
(
たにぞこ
)
の
177
百日
(
ももひ
)
百夜
(
ももよ
)
の
苦
(
くる
)
しみを
178
凌
(
しの
)
ぎて
此処
(
ここ
)
に
村肝
(
むらきも
)
の
179
心
(
こころ
)
も
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
を
越
(
こ
)
え
180
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて
秘露
(
ひる
)
の
国
(
くに
)
181
夜
(
よる
)
の
旅路
(
たびぢ
)
を
重
(
かさ
)
ねつつ
182
千座
(
ちくら
)
の
罪
(
つみ
)
もカルの
空
(
そら
)
183
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
184
ハザマの
森
(
もり
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
185
松竹梅
(
まつたけうめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
186
如何
(
いかが
)
ならむと
煩
(
わづら
)
ひつ
187
縁
(
えにし
)
の
糸
(
いと
)
に
操
(
あやつ
)
られ
188
冬
(
ふゆ
)
とは
言
(
い
)
へど
春山
(
はるやま
)
の
189
館
(
やかた
)
に
立
(
た
)
ちて
門内
(
もんない
)
の
190
様子
(
やうす
)
窺
(
うかが
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
191
耳
(
みみ
)
に
馴染
(
なじみ
)
の
一絃琴
(
いちげんきん
)
192
その
言霊
(
ことたま
)
も
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
り
193
琴
(
こと
)
の
音色
(
ねいろ
)
も
清々
(
すがすが
)
と
194
縋
(
すが
)
る
思
(
おも
)
ひの
門
(
もん
)
の
口
(
くち
)
195
佇
(
たたず
)
む
折柄
(
をりから
)
竹野姫
(
たけのひめ
)
196
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
の
御
(
おん
)
姿
(
すがた
)
197
思
(
おも
)
ひもかけぬ
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
の
198
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
しのこの
対面
(
たいめん
)
199
春山彦
(
はるやまひこ
)
よ
夏姫
(
なつひめ
)
よ
200
月
(
つき
)
雪
(
ゆき
)
花
(
はな
)
の
三娘
(
みむすめ
)
よ
201
栄
(
さか
)
え
久
(
ひさ
)
しき
松
(
まつ
)
の
代
(
よ
)
を
202
松竹梅
(
まつたけうめ
)
の
永久
(
とこしへ
)
に
203
教
(
をしへ
)
も
開
(
ひら
)
く
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
204
嬉
(
うれ
)
しし
嬉
(
うれ
)
し
喜
(
よろこ
)
ばし
205
御恵
(
みめぐ
)
み
深
(
ふか
)
き
野立彦
(
のだちひこ
)
206
野立
(
のだち
)
の
姫
(
ひめ
)
や
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
207
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
御
(
ご
)
高恩
(
かうおん
)
208
遥
(
はるか
)
に
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る』
209
と
始
(
はじ
)
め
終
(
をは
)
りの
物語
(
ものがたり
)
、
210
勇
(
いさ
)
みに
勇
(
いさ
)
む
駒山彦
(
こまやまひこ
)
のその
顔
(
かんばせ
)
、
211
他所
(
よそ
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
勇
(
いさ
)
ましき。
212
(
大正一一・二・一七
旧一・二一
北村隆光
録)
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