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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
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天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
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第9巻(申の巻)
序歌
凡例
総説歌
第1篇 長途の旅
01 都落
〔394〕
02 エデンの渡
〔395〕
03 三笠丸
〔396〕
04 大足彦
〔397〕
05 海上の神姿
〔398〕
06 刹那信心
〔399〕
07 地獄の沙汰
〔400〕
第2篇 一陽来復
08 再生の思
〔401〕
09 鴛鴦の衾
〔402〕
10 言葉の車
〔403〕
11 蓬莱山
〔404〕
第3篇 天涯万里
12 鹿島立
〔405〕
13 訣別の歌
〔406〕
14 闇の谷底
〔407〕
15 団子理屈
〔408〕
16 蛸釣られ
〔409〕
17 甦生
〔410〕
第4篇 千山万水
18 初陣
〔411〕
19 悔悟の涙
〔412〕
20 心の鏡
〔413〕
21 志芸山祇
〔414〕
22 晩夏の風
〔415〕
23 高照山
〔416〕
24 玉川の滝
〔417〕
25 窟の宿替
〔418〕
26 巴の舞
〔419〕
第5篇 百花爛漫
27 月光照梅
〔420〕
28 窟の邂逅
〔421〕
29 九人娘
〔422〕
30 救の神
〔423〕
31 七人の女
〔424〕
32 一絃琴
〔425〕
33 栗毛の駒
〔426〕
34 森林の囁
〔427〕
35 秋の月
〔428〕
36 偽神憑
〔429〕
37 凱歌
〔430〕
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(二)
余白歌
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第二三章
高照山
(
たかてるやま
)
〔四一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
篇:
第4篇 千山万水
よみ(新仮名遣い):
せんざんばんすい
章:
第23章 高照山
よみ(新仮名遣い):
たかてるやま
通し章番号:
416
口述日:
1922(大正11)年02月15日(旧01月19日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
虎公、熊公が神恩に感じ入って感謝を述べているところへ、四五人の荒男がやってきた。それは旧知の鹿公一行であった。
鹿公は高照山の岩窟に、八岐の大蛇という神が現れて、結構な御神徳を下さっている、という話をして、去っていく。虎公、熊公はその神を見定めようと、岩窟に向かって谷道を進んでいった。
岩窟の前にはたくさんの参詣人が祈っている。岩窟からはいやらしい笑い声が聞こえ、信徒に悪をなし弱肉強食を進めるようにと託宣を垂れている。
虎公は立ち上がって名乗りを上げ、岩窟の神に向かって挑戦し始めた。熊公も、改心を勧告する。しかし岩窟の声は逆に、二人の過去の罪を責め、宣伝使としての未熟さを言霊を駆使してなじり始めた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-07-02 16:13:45
OBC :
rm0923
愛善世界社版:
177頁
八幡書店版:
第2輯 337頁
修補版:
校定版:
184頁
普及版:
74頁
初版:
ページ備考:
001
ヒルとカルとの
国境
(
くにざかひ
)
、
002
高照山
(
たかてるやま
)
[
※
「ヒルとカルとの国境、高照山」はこれから二人が行く場所であって、これは「玉山」の間違いではないかと思われる。第22章a088では「玉山の麓」に居ると記されている。
]
の
山口
(
やまぐち
)
の、
003
芝生
(
しばふ
)
に
残
(
のこ
)
されし
熊公
(
くまこう
)
、
004
虎公
(
とらこう
)
の
二人
(
ふたり
)
は、
005
松代姫
(
まつよひめ
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
影
(
かげ
)
の
隠
(
かく
)
るるまで
見送
(
みおく
)
りながら
虎公
(
とらこう
)
は、
006
虎公
『あゝ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
一行
(
いつかう
)
は、
007
吾々
(
われわれ
)
にお
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
されず、
008
温
(
あたた
)
かい
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
して、
009
この
場
(
ば
)
をいそいそと
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
かれた。
010
何
(
ど
)
うで、
011
吾々
(
われわれ
)
のやうな
罪
(
つみ
)
の
重
(
おも
)
い
人間
(
にんげん
)
だから、
012
お
供
(
とも
)
は
叶
(
かな
)
はぬのだらうが、
013
あゝ
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
をした。
014
せめて
三年前
(
さんねんまへ
)
に、
015
今
(
いま
)
のやうな
心
(
こころ
)
になつて
居
(
を
)
れば、
016
立派
(
りつぱ
)
にお
伴
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さつたであらうに、
017
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば、
018
この
身
(
み
)
の
罪
(
つみ
)
が
恨
(
うら
)
めしい』
019
と
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
る。
020
熊公
『
虎公
(
とらこう
)
よ。
021
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してさうではないよ。
022
俺
(
おれ
)
たちをどうぞ
立派
(
りつぱ
)
な
神
(
かみ
)
の
柱
(
はしら
)
にしてやりたいと
思
(
おも
)
つて、
023
わざと
捨
(
す
)
ててお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
024
あの
獅子
(
しし
)
といふ
奴
(
やつ
)
は、
025
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
んでから
三日目
(
みつかめ
)
に、
026
谷底
(
たにぞこ
)
へ
蹴
(
け
)
り
落
(
おと
)
して、
027
上
(
あが
)
つて
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
をまた
蹴
(
け
)
り
落
(
おと
)
し
蹴
(
け
)
り
落
(
おと
)
し、
028
三遍
(
さんぺん
)
以上
(
いじやう
)
あがつて
来
(
き
)
たものでないと、
029
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
にせぬと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だよ。
030
谷
(
たに
)
へ
落
(
おと
)
されて
くたばる
やうな
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
では、
031
到底
(
たうてい
)
悪魔
(
あくま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
生存
(
せいぞん
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
032
まして
悪魔
(
あくま
)
の
様
(
やう
)
な
人間
(
にんげん
)
を
教
(
をし
)
へ
導
(
みちび
)
く
宣伝使
(
せんでんし
)
だもの、
033
お
師匠
(
ししやう
)
さまを
杖
(
つゑ
)
に
突
(
つ
)
いたり
頼
(
たよ
)
りにするやうな
事
(
こと
)
では、
034
完全
(
くわんぜん
)
な
御用
(
ごよう
)
は
出来
(
でき
)
ないから、
035
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
る
涙
(
なみだ
)
を
内
(
うち
)
へ
流
(
なが
)
して、
036
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
神心
(
かみごころ
)
から、
037
吾々
(
われわれ
)
を
置
(
お
)
き
去
(
ざ
)
りにして
往
(
ゆ
)
かれたのだ。
038
人間
(
にんげん
)
は
到底
(
たうてい
)
深
(
ふか
)
い
深
(
ふか
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御心
(
みこころ
)
は
判
(
わか
)
るものでない。
039
それだから
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
にも、
040
「この
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
041
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
042
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
043
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
せ」
044
とあるのだ。
045
見直
(
みなほ
)
しが
肝腎
(
かんじん
)
だ。
046
繊弱
(
かよわ
)
い
吾々
(
われわれ
)
のやうな
智慧
(
ちゑ
)
の
暗
(
くら
)
い
人間
(
にんげん
)
は、
047
無限
(
むげん
)
絶対
(
ぜつたい
)
、
048
無始
(
むし
)
無終
(
むしう
)
の
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
従
(
したが
)
つて、
049
真心
(
まごころ
)
籠
(
こ
)
めて
祈
(
いの
)
るより
外
(
ほか
)
はない。
050
祈
(
いの
)
ればきつと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
栄光
(
えいくわう
)
が
吾々
(
われわれ
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
輝
(
かがや
)
くであらう』
051
と
涙
(
なみだ
)
まじりに
語
(
かた
)
る
折
(
をり
)
しも、
052
弓矢
(
ゆみや
)
を
持
(
も
)
つた
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
荒
(
あら
)
くれ
男
(
をとこ
)
、
053
犬
(
いぬ
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れながら
坂路
(
さかみち
)
を
下
(
くだ
)
り
来
(
く
)
る。
054
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
は、
055
熊公
(
くまこう
)
、
056
虎公
(
とらこう
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
057
男(鹿公)
『オー、
058
貴様
(
きさま
)
はこの
高砂島
(
たかさごじま
)
でも
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
い
熊公
(
くまこう
)
、
059
虎公
(
とらこう
)
ぢやないか。
060
貴様
(
きさま
)
の
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
くと
泣
(
な
)
く
子
(
こ
)
も
泣
(
な
)
き
止
(
や
)
むと
云
(
い
)
ふ
野郎
(
やらう
)
だのに、
061
今日
(
けふ
)
はマアどうしたことか。
062
貴様
(
きさま
)
なんだい、
063
ベソベソと
吠面
(
ほえづら
)
かわいて……』
064
虎公
(
とらこう
)
『ヨーこれは
鹿公
(
しかこう
)
か。
065
俺
(
おれ
)
はな、
066
すつかり
改心
(
かいしん
)
したのだ。
067
今
(
いま
)
まで
悪人
(
あくにん
)
だと
世間
(
せけん
)
の
者
(
もの
)
に
言
(
い
)
はれて
来
(
き
)
たが、
068
これからは
すつかり
と
善心
(
ぜんしん
)
に
立返
(
たちかへ
)
つて、
069
自分
(
じぶん
)
の
罪
(
つみ
)
の
懺悔
(
ざんげ
)
をし、
070
今
(
いま
)
までの
罪亡
(
つみほろ
)
ぼしに、
071
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つて、
072
教
(
をし
)
へを
説
(
と
)
き
廻
(
まは
)
り
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのだ。
073
あまり
有難
(
ありがた
)
うて、
074
今
(
いま
)
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
たところだよ。
075
お
前
(
まへ
)
も
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
殺生
(
せつしやう
)
は
止
(
や
)
めて、
076
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
いて、
077
善人
(
ぜんにん
)
になつて
呉
(
く
)
れ。
078
虎公
(
とらこう
)
が
改心
(
かいしん
)
の
門口
(
かどぐち
)
、
079
宣伝
(
せんでん
)
の
初陣
(
うひぢん
)
だ。
080
貴様
(
きさま
)
が
改心
(
かいしん
)
して
呉
(
く
)
れたならば、
081
この
高砂島
(
たかさごじま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
皆
(
みな
)
改心
(
かいしん
)
するのだ』
082
鹿公
『フフン、
083
何
(
なに
)
吐
(
ぬ
)
かしよるのだ。
084
鬼
(
おに
)
の
念仏
(
ねんぶつ
)
見
(
み
)
たよな
事
(
こと
)
吐
(
ほざ
)
きよつて、
085
何処
(
どこ
)
を
押
(
おさ
)
へたらそんな
音
(
ね
)
が
出
(
で
)
るのだ。
086
この
頃
(
ごろ
)
の
暑
(
あつ
)
さに、
087
一寸
(
ちよつと
)
心
(
こころ
)
が
変
(
へん
)
になりよつたな。
088
ヘン、
089
とろくさ
い、
090
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
凡
(
すべ
)
て
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
だ。
091
大魚
(
たいぎよ
)
は
小魚
(
せうぎよ
)
を
呑
(
の
)
み、
092
小魚
(
せうぎよ
)
は
虫
(
むし
)
を
食
(
く
)
つて
互
(
たがひ
)
に
生活
(
せいくわつ
)
する
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
093
犬
(
いぬ
)
が
猫
(
ねこ
)
を
捕
(
と
)
る、
094
猫
(
ねこ
)
が
鼠
(
ねずみ
)
をとる、
095
鼠
(
ねずみ
)
が
隠居
(
いんきよ
)
の
茶
(
ちや
)
の
子
(
こ
)
をとる、
096
茶
(
ちや
)
の
子
(
こ
)
が
隠居
(
いんきよ
)
の
機嫌
(
きげん
)
とる、
097
隠居
(
いんきよ
)
が
襦袢
(
じゆばん
)
の
虱
(
しらみ
)
とる、
098
虱
(
しらみ
)
が
頭
(
あたま
)
のフケをとる、
099
といつて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
廻
(
まは
)
りものだ。
100
海猟師
(
うみれふし
)
が
魚
(
うを
)
を
捕
(
と
)
るのも
山猟師
(
やまれふし
)
が
猪
(
しし
)
を
獲
(
と
)
るのも、
101
皆
(
みな
)
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
だ。
102
猟師
(
れふし
)
がなければ
皮
(
かは
)
を
使
(
つか
)
ふ
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
103
魚
(
うを
)
を
食
(
く
)
ふ
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
やしない。
104
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
、
105
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
が
自然
(
しぜん
)
の
法則
(
はふそく
)
だよ。
106
貴様
(
きさま
)
もそんな
女々
(
めめ
)
しい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はずに、
107
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
り
鬼虎
(
おにとら
)
となつて、
108
売出
(
うりだ
)
したらどうだい。
109
ここまで
売
(
う
)
り
出
(
だ
)
した
名
(
な
)
を
零
(
ぜろ
)
にするのも
惜
(
を
)
しいぢやないか』
110
熊公
(
くまこう
)
『あゝ、
111
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とは
違
(
ちが
)
つたものだナア。
112
善
(
ぜん
)
ほど
辛
(
つら
)
いものはない、
113
否
(
いな
)
結構
(
けつこう
)
なものはない。
114
貴様
(
きさま
)
もそんなことを
言
(
い
)
はずに、
115
虎公
(
とらこう
)
のやうに
改心
(
かいしん
)
して、
116
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祈
(
いの
)
る
気
(
き
)
にならぬか』
117
鹿公
『イヤ、
118
俺
(
おれ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祈
(
いの
)
つてるよ。
119
俺
(
おれ
)
の
祈
(
いの
)
つてる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はな、
120
そんな
腰
(
こし
)
の
弱
(
よわ
)
い、
121
ヘナヘナした
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
で
屁
(
へ
)
を
放
(
こ
)
いた
様
(
やう
)
な、
122
頼
(
たよ
)
りない
教
(
をしへ
)
をする
神
(
かみ
)
さまとは
訳
(
わけ
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
123
いま
俺
(
おれ
)
はその
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
詣
(
まゐ
)
つて
来
(
き
)
たのだ』
124
虎公
(
とらこう
)
『お
前
(
まへ
)
が
詣
(
まゐ
)
つて
来
(
き
)
た
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
といふのは、
125
そら
何
(
ど
)
ういふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だい』
126
鹿公
『
貴様
(
きさま
)
、
127
あれ
程
(
ほど
)
名高
(
なだか
)
いのに
未
(
ま
)
だ
聞
(
き
)
かぬのか。
128
随分
(
ずゐぶん
)
遅耳
(
おそみみ
)
だのう。
129
ここをズツと
三
(
さん
)
里
(
り
)
ばかり
奥
(
おく
)
へ
這入
(
はい
)
ると、
130
そこに
高照山
(
たかてるやま
)
の
深
(
ふか
)
い
谷
(
たに
)
がある。
131
そこには
長
(
なが
)
い
滝
(
たき
)
が
落
(
お
)
ちて
居
(
を
)
つて、
132
滝壺
(
たきつぼ
)
の
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
に
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
の
洞穴
(
ほらあな
)
があるのだ。
133
さうして
東
(
ひがし
)
の
方
(
はう
)
の
穴
(
あな
)
からは
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
がするのだ。
134
その
岩
(
いは
)
に
向
(
むか
)
つて、
135
何事
(
なにごと
)
でも
教
(
をし
)
へて
貰
(
もら
)
ひに
行
(
ゆ
)
くのだ。
136
一
(
いつ
)
ぺん
貴様
(
きさま
)
も
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
よ、
137
沢山
(
たくさん
)
の
人
(
ひと
)
が
詣
(
まゐ
)
つて
居
(
ゐ
)
るよ。
138
一寸
(
ちよつと
)
取
(
と
)
り
違
(
ちが
)
ひ
野郎
(
やらう
)
が
行
(
ゆ
)
くと、
139
その
岩
(
いは
)
の
穴
(
あな
)
から
大
(
おほ
)
きな
火焔
(
くわえん
)
の
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
して、
140
身体
(
からだ
)
をチヤリチヤリと
焼
(
や
)
かれるのだ。
141
貴様
(
きさま
)
のやうな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
が
行
(
い
)
つたら、
142
きつと
岩
(
いは
)
の
穴
(
あな
)
から
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
火
(
ひ
)
の
舌
(
した
)
に
舐
(
な
)
められて、
143
黒焦
(
くろこげ
)
になつて
了
(
しま
)
ふだらうよ』
144
熊公
(
くまこう
)
『それは
一体
(
いつたい
)
、
145
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
神
(
かみ
)
だい』
146
鹿公
『
何
(
なん
)
といふ
神
(
かみ
)
だか、
147
エー、
148
忘
(
わす
)
れたが、
149
なんでも
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
とか
聞
(
き
)
いたよ』
150
熊公
(
くまこう
)
『
一体
(
いつたい
)
、
151
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのだい』
152
鹿公
『
委
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
つたが、
153
とも
角
(
かく
)
時代
(
じだい
)
向
(
む
)
きのする
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ
居
(
を
)
る
神
(
かみ
)
さまだ。
154
マアかい
摘
(
つま
)
んで
言
(
い
)
へば、
155
人間
(
にんげん
)
は
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
立派
(
りつぱ
)
に
暮
(
くら
)
して、
156
天
(
てん
)
から
与
(
あた
)
へられた
甘
(
うま
)
い
物
(
もの
)
を
喰
(
く
)
つて、
157
美
(
うつく
)
しい
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
て、
158
酒
(
さけ
)
でも
飲
(
の
)
んで
元気
(
げんき
)
をつけと
云
(
い
)
ふのだ。
159
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
の
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
のやうな、
160
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
から
屁
(
へ
)
をこいた
様
(
やう
)
な、
161
けち
臭
(
くさ
)
い
御
(
ご
)
託宣
(
たくせん
)
とはわけが
違
(
ちが
)
ふのだ。
162
まあ
貴様
(
きさま
)
ら、
163
メソメソ
泣
(
な
)
いて
居
(
を
)
らずに
一遍
(
いつぺん
)
行
(
い
)
つて
来
(
こ
)
い。
164
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めてよからうぞ』
165
虎公
(
とらこう
)
『
鹿公
(
しかこう
)
、
166
お
前
(
まへ
)
はその
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じて
居
(
ゐ
)
るのか』
167
鹿公
『
信
(
しん
)
ずるも
信
(
しん
)
じないもあつたものか。
168
あんな
結構
(
けつこう
)
な
教
(
をしへ
)
が
何処
(
どこ
)
にあらうかい。
169
さやうなら』
170
と
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
猟師
(
れふし
)
は
歩
(
あし
)
を
速
(
はや
)
めて
坂
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
171
虎
(
とら
)
、
172
熊
(
くま
)
の
二人
(
ふたり
)
は
足
(
あし
)
を
速
(
はや
)
めてドンドンと
谷道
(
たにみち
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
173
玉川
(
たまがは
)
の
瀑布
(
ばくふ
)
に
黄昏時
(
たそがれどき
)
に
漸
(
やうや
)
く
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
き
見
(
み
)
れば、
174
琴
(
こと
)
を
立
(
た
)
てたやうな
大瀑布
(
だいばくふ
)
が、
175
高
(
たか
)
く
幾百丈
(
いくひやくぢやう
)
ともなく
懸
(
かか
)
つて
微妙
(
びめう
)
の
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
かな
)
でてゐる。
176
東側
(
ひがしがは
)
の
大巌窟
(
だいがんくつ
)
の
前
(
まへ
)
には、
177
沢山
(
たくさん
)
の
参詣人
(
さんけいにん
)
が
合掌
(
がつしやう
)
して
何事
(
なにごと
)
か
口々
(
くちぐち
)
に
祈願
(
きぐわん
)
してゐる。
178
二人
(
ふたり
)
は
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
にて
諸人
(
もろびと
)
と
共
(
とも
)
に、
179
巌窟
(
がんくつ
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し
合掌
(
がつしやう
)
するや、
180
巌窟
(
がんくつ
)
は
俄
(
にはか
)
に
大音響
(
だいおんきやう
)
を
立
(
た
)
てて
唸
(
うな
)
り
始
(
はじ
)
めたり。
181
一同
(
いちどう
)
は
大地
(
だいち
)
に
頭
(
あたま
)
をピタリとつけ、
182
畏
(
かしこ
)
まつてその
音響
(
おんきやう
)
を
聴
(
き
)
いてゐる。
183
唸
(
うな
)
りは
漸
(
やうや
)
くにして
止
(
や
)
み、
184
巌窟
(
がんくつ
)
の
薄暗
(
うすぐら
)
き
奥
(
おく
)
の
方
(
はう
)
より、
185
声
『アハヽヽヽ』
186
といやらしい
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る。
187
虎
(
とら
)
、
188
熊
(
くま
)
の
二人
(
ふたり
)
は、
189
顔
(
かほ
)
見合
(
みあは
)
して
呆
(
あき
)
れゐる。
190
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
より、
191
声
『
悪
(
あ
く
)
の
栄
(
さか
)
える
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
192
善
(
ぜん
)
ぢや
悪
(
あ
く
)
ぢやと
争
(
あ
らそ
)
ふ
奴輩
(
やつばら
)
。
193
あ
くまで
阿呆
(
あ
はう
)
の
恥
(
はぢ
)
曝
(
さら
)
し、
194
悪
(
あ
く
)
をなさねば
安楽
(
あ
んらく
)
に
世
(
よ
)
は
渡
(
わた
)
れぬぞ。
195
飽
(
あ
)
くまで
食
(
くら
)
へ、
196
飽
(
あ
)
くまで
飲
(
の
)
め、
197
飽
(
あ
)
くまで
力
(
ちから
)
を
現
(
あ
ら
)
はして、
198
悪魔
(
あ
くま
)
と
言
(
い
)
はれようが、
199
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
わが
身
(
み
)
の
為
(
ため
)
に
飽
(
あ
)
くまで
尽
(
つく
)
せ。
200
イ
ヽヽヽ
生命
(
い
のち
)
あつての
物種
(
ものだね
)
だ。
201
要
(
い
)
らざる
教
(
をしへ
)
に
従
(
したが
)
うて、
202
善
(
ぜん
)
の、
203
悪
(
あく
)
の、
204
末
(
すゑ
)
が
怖
(
おそ
)
ろしいのと
萎縮
(
い
ぢ
)
け
散
(
ち
)
らして
ゐ
るよりも、
205
威勢
(
ゐ
せい
)
よく
酒
(
さけ
)
でも
飲
(
の
)
んで、
206
い
つまでも
生々
(
い
きいき
)
として
生命
(
い
のち
)
を
延
(
の
)
ばせ。
207
ウ
ヽヽヽ
後指
(
う
しろゆび
)
を
指
(
さ
)
されようが
後
(
う
しろ
)
を
向
(
む
)
くな。
208
見
(
み
)
ぬ
顔
(
かほ
)
をいたして
甘
(
う
ま
)
い
物
(
もの
)
を
鱈腹
(
たらふく
)
食
(
く
)
ひ、
209
美
(
う
ま
)
い
酒
(
さけ
)
は
酒
(
さけ
)
に
浮
(
う
)
くほど
酔
(
よ
)
うて、
210
甘
(
う
ま
)
い
甘
(
う
ま
)
いと
舌鼓
(
したつづみ
)
、
211
五月蝿
(
う
るさ
)
い
五月蝿
(
う
るさ
)
いと
肩
(
かた
)
の
凝
(
こ
)
るやうな
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
を
聴
(
き
)
くな。
212
この
巌窟
(
いはや
)
には
穴
(
あな
)
がある。
213
ウ
ヽヽヽと
唸
(
う
な
)
る
穴
(
あな
)
があるぞよ。
214
あな
面白
(
おもしろ
)
き
穴
(
あな
)
有
(
あ
)
り
教
(
けう
)
ぢや。
215
迂濶
(
う
くわつ
)
に
聴
(
き
)
くな。
216
エ
ヽヽヽ
遠慮
(
ゑ
んりよ
)
会釈
(
ゑ
しやく
)
もなく
吾身
(
わがみ
)
のためには
人
(
ひと
)
は
構
(
かま
)
うてをれぬぞ。
217
得
(
とく
)
になることならば
何処
(
どこ
)
までも
何処
(
どこ
)
までも
行
(
ゆ
)
け。
218
閻魔
(
え
んま
)
が
怖
(
こは
)
いやうな
事
(
こと
)
ではこの
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
れぬぞ。
219
地獄
(
ぢごく
)
の
閻魔
(
え
んま
)
を
味噌漬
(
みそづけ
)
にして
食
(
く
)
ふやうな
偉
(
え
ら
)
い
心
(
こころ
)
になれ、
220
笑
(
ゑ
ら
)
ぎて
暮
(
くら
)
せ
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
んで。
221
オ
ヽヽヽ
鬼
(
お
に
)
か
大蛇
(
を
ろち
)
の
心
(
こころ
)
になつてこの
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
らねば、
222
この
世
(
よ
)
は
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
、
223
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ぢや。
224
お
互
(
たが
)
ひに
気
(
き
)
をつけて、
225
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
得
(
とく
)
を
図
(
はか
)
れよ。
226
怖
(
お
そ
)
れな、
227
後
(
お
く
)
れな、
228
面白
(
お
もしろ
)
くこの
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
れ、
229
大蛇
(
を
ろち
)
の
神
(
かみ
)
を
朝夕
(
あさゆふ
)
祈
(
いの
)
れ。
230
オ
ヽヽヽヽ
面白
(
お
もしろ
)
い
面白
(
お
もしろ
)
い』
231
虎公
(
とらこう
)
はこの
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて
むつく
と
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
232
虎公
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
233
志芸山津見
(
しぎやまづみ
)
とは
吾
(
わが
)
事
(
こと
)
なるぞ。
234
悪魔
(
あ
くま
)
の
張本
(
ちやうほん
)
、
235
天足
(
あ
だる
)
の
身魂
(
みたま
)
、
236
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
再来
(
さいらい
)
、
237
善
(
ぜん
)
を
退
(
しりぞ
)
け
悪
(
あ
く
)
を
勧
(
すす
)
むる
無道
(
むだう
)
の
汝
(
なんぢ
)
、
238
今
(
いま
)
に
正体
(
しやうたい
)
現
(
あ
ら
)
はして
呉
(
く
)
れむ。
239
ア
ハヽヽヽ、
240
イ
ヒヽヽヽ
異端
(
い
たん
)
邪説
(
じやせつ
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
す、
241
心
(
こころ
)
の
枉
(
ゆが
)
んだ
大蛇
(
をろち
)
の
悪神
(
あくがみ
)
、
242
ま
一度
(
い
ちど
)
言
(
い
)
ふなら
言
(
い
)
つて
見
(
み
)
よ、
243
一寸
(
い
つすん
)
刻
(
きざ
)
みか
五分試
(
ごぶだめ
)
し、
244
生命
(
い
のち
)
を
取
(
と
)
つて
何時
(
い
つ
)
までも、
245
禍
(
わざはひ
)
の
根
(
ね
)
を
断
(
た
)
つてくれむ。
246
違背
(
ゐ
はい
)
あらば
返答
(
へんたふ
)
い
たせ。
247
ウ
フヽヽヽ
狼狽者
(
う
ろたへもの
)
の
うつけ
者
(
もの
)
、
248
迂論
(
う
ろん
)
な
教
(
をしへ
)
を
吐
(
は
)
き
立
(
た
)
てて
人心
(
じんしん
)
を
動
(
う
ご
)
かす
谷穴
(
たにあな
)
の
土竜
(
もぐら
)
、
249
浮世
(
う
きよ
)
を
乱
(
みだ
)
す
汝
(
なんぢ
)
が
悪計
(
あくけい
)
、
250
志芸山津見
(
しぎやまづみ
)
の
現
(
あら
)
はれし
上
(
うへ
)
からは
容赦
(
ようしや
)
はならぬ。
251
得体
(
えたい
)
の
知
(
し
)
れぬ、
252
奴拍手
(
どびやうし
)
脱
(
ぬ
)
けした
声
(
こゑ
)
をしぼり、
253
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
、
254
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
の、
255
エ
グイ
心
(
こころ
)
を
嗾
(
そそ
)
る
奴
(
やつ
)
。
256
オ
ホヽヽヽ
大蛇
(
を
ろち
)
の
悪魔
(
あくま
)
、
257
往生
(
わ
うじやう
)
いたすまで
応対
(
お
うたい
)
いたすぞ。
258
尾
(
を
)
をまいて
降参
(
かうさん
)
いたせばよし、
259
オ
メ
オ
メと
言訳
(
いひわけ
)
に
及
(
およ
)
ばば、
260
志芸山津見
(
しぎやまづみ
)
が
両刃
(
もろは
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
以
(
もつ
)
て
征伐
(
せいばつ
)
いたす。
261
奥山
(
お
くやま
)
の
谷底
(
たにぞこ
)
に
身
(
み
)
をひそめ、
262
この
世
(
よ
)
を
乱
(
みだ
)
す
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
を
ろち
)
、
263
返答
(
へんたふ
)
はどうだツ』
264
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
より、
265
声
『
カ
ヽヽヽ
構
(
か
ま
)
ふな
構
(
かま
)
ふな、
266
蛙
(
か
へる
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
、
267
闇
(
やみ
)
に
烏
(
か
らす
)
の
向
(
むか
)
ふ
見
(
み
)
ず、
268
喧
(
か
しま
)
しいワイ。
269
キ
ヽヽヽ
斬
(
き
)
るの
斬
(
き
)
らぬのと
広言
(
くわうげん
)
吐
(
は
)
くな。
270
貴様
(
き
さま
)
のやうな
腰抜
(
こしぬ
)
けに、
271
大蛇
(
をろち
)
が
斬
(
き
)
れてたまらうか。
272
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
だなア。
273
ク
ヽヽヽ
暗
(
く
ら
)
がり
紛
(
まぎ
)
れに
頭
(
あたま
)
から
食
(
く
)
つてやらうか。
274
くさい
顔
(
かほ
)
して
苦
(
く
る
)
しさうに
俄
(
にはか
)
宣伝使
(
せんでんし
)
とは
片腹
(
かたはら
)
痛
(
いた
)
い、
275
ケ
ヽヽヽ
怪我
(
け
が
)
のない
間
(
うち
)
に
早
(
はや
)
くこの
場
(
ば
)
を
去
(
さ
)
つたがよからう。
276
見当
(
け
んたう
)
の
取
(
と
)
れぬこの
方
(
はう
)
の
言葉
(
ことば
)
、
277
コ
ヽヽヽ
こ
こな
腰抜
(
こ
しぬ
)
け
共
(
ども
)
、
278
殺
(
こ
ろ
)
されぬ
間
(
うち
)
に
こ
の
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れ、
279
こ
はい
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はぬ
内
(
うち
)
に
心
(
こ
ころ
)
を
直
(
なほ
)
して、
280
こ
の
方
(
はう
)
の
言
(
い
)
ひ
条
(
でう
)
につくか、
281
執拗
(
しつこ
)
う
聞
(
き
)
かねば
こ
の
方
(
はう
)
も
耐
(
こ
ら
)
へ
袋
(
ぶ
くろ
)
がきれるぞよ。
282
米喰虫
(
こ
めくひむし
)
の
製糞器
(
せいふんき
)
奴
(
め
)
。
283
ワハヽヽヽ』
284
熊公
(
くまこう
)
『
カ
ヽヽ
神
(
か
み
)
の
使
(
つかひ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
向
(
むか
)
つて
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
な、
285
覚悟
(
か
くご
)
を
致
(
いた
)
せ、
286
体
(
か
らだ
)
も
骨
(
ほね
)
も
改心
(
か
いしん
)
致
(
いた
)
さねば、
287
グダグダにして
遣
(
や
)
らうか。
288
キ
ヽヽ
気
(
き
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し
キ
ツパリと
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
せばよし、
289
き
かぬに
於
(
おい
)
ては
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
はうか、
290
ク
ヽヽ
暗
(
く
ら
)
い
穴
(
あな
)
にすつ
込
(
こ
)
んで、
291
訳
(
わけ
)
も
判
(
わか
)
らぬ
苦情
(
く
じやう
)
を
並
(
なら
)
べ、
292
苦
(
く
る
)
し
紛
(
まぎ
)
れの
捨
(
す
)
てぜりふ、
293
その
手
(
て
)
は
食
(
く
)
はぬ、
294
熊公
(
く
まこう
)
の
身魂
(
みたま
)
の
光
(
ひかり
)
を
知
(
し
)
らざるか、
295
ケ
ヽヽ
怪
(
け
)
しからぬ
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
再来
(
さいらい
)
、
296
コ
ヽヽ
こ
こで
会
(
あ
)
うたは
優曇華
(
うどんげ
)
の、
297
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
春
(
はる
)
の
熊公
(
くまこう
)
が
手柄
(
てがら
)
の
現
(
あら
)
はれ
口
(
ぐち
)
、
298
最早
(
もはや
)
かなはぬ、
299
降参
(
か
うさん
)
するか、
300
返答
(
へんたふ
)
は、
301
コ
ラ、
302
どうぢや』
303
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
より、
304
声
『
サ
ヽヽヽ
騒
(
さ
わ
)
がしいワイ、
305
囀
(
さ
へづ
)
るな、
306
酒
(
さ
け
)
を
飲
(
の
)
め
飲
(
の
)
め、
307
飲
(
の
)
んだら
酔
(
よ
)
へよ、
308
酔
(
よ
)
うたら
踊
(
をど
)
れ。
309
逆
(
さ
か
)
とんぶりになつて
踊
(
をど
)
つて
狂
(
くる
)
へ、
310
扨
(
さ
て
)
も
扨
(
さ
て
)
も
酒
(
さ
け
)
ほど
甘
(
うま
)
いものはない、
311
酒
(
さ
け
)
の
味
(
あぢ
)
を
知
(
し
)
らぬ
猿智慧
(
さ
るぢゑ
)
の
熊公
(
くまこう
)
の
世迷
(
よまひ
)
ごと、
312
坂
(
さ
か
)
から
車
(
くるま
)
を
下
(
おろ
)
すやうに、
313
この
谷底
(
たにぞこ
)
へころげ
落
(
おと
)
してやらうか。
314
シ
ヽヽヽ
執拗
(
し
つこ
)
い
奴
(
やつ
)
ぢや、
315
し
ぶとい
奴
(
やつ
)
ぢや、
316
しがんだ
面
(
つら
)
して
芝生
(
し
ばふ
)
の
上
(
うへ
)
に、
317
ほつとけぼりを
食
(
く
)
はされて、
318
吠面
(
ほえづら
)
かわいた
志芸山津見
(
しぎやまづみ
)
とは
片腹
(
かたはら
)
痛
(
いた
)
い。
319
ス
ヽヽヽ
速
(
す
みや
)
かに、
320
この
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
けばよし、
321
す
つた
捩
(
も
)
じつた
理屈
(
りくつ
)
をこねると、
322
簀巻
(
す
まき
)
に
致
(
いた
)
して
谷底
(
たにぞこ
)
へ
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでやらうか、
323
セ
ヽヽヽ
雪隠虫
(
せ
んちむし
)
奴
(
め
)
が。
324
宣伝使
(
せ
んでんし
)
なんぞと
下
(
くだ
)
らぬ
屁理屈
(
へりくつ
)
を
言
(
い
)
つて
廻
(
まは
)
る
馬鹿
(
ばか
)
人足
(
にんそく
)
。
325
ソ
ヽヽヽ
そ
れでも
貴様
(
きさま
)
は
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
か、
326
底抜
(
そ
こぬ
)
けの
馬鹿
(
ばか
)
とは
そ
の
方
(
はう
)
の
事
(
こと
)
だ。
327
そ
の
しやつ
面
(
つら
)
でどうして
宣伝使
(
せんでんし
)
が
勤
(
つと
)
まらうか、
328
そ
こ
退
(
の
)
け、
329
そ
こ
退
(
の
)
け、
330
この
方
(
はう
)
の
邪魔
(
じやま
)
になるワイ』
331
虎公
(
とらこう
)
『
サ
ヽヽ
逆言
(
さ
かごと
)
ばかり
囀
(
さ
へづ
)
る
悪神
(
あくがみ
)
、
332
さ
あもう
容赦
(
ようしや
)
はならぬ。
333
シ
ヽヽ
志芸山津見
(
し
ぎやまづみ
)
が
言霊
(
ことたま
)
の
威力
(
ゐりよく
)
によつて、
334
汝
(
なんぢ
)
が
身魂
(
みたま
)
を
縛
(
し
ば
)
つて
呉
(
く
)
れむ。
335
死
(
し
)
ぬるか
生
(
い
)
きるか、
336
二
(
ふた
)
つに
一
(
ひと
)
つの
大峠
(
おほたうげ
)
、
337
ス
ヽヽヽ
速
(
す
みや
)
かに
返答
(
へんたふ
)
いたせ。
338
セ
ヽヽ
背中
(
せ
なか
)
に
腹
(
はら
)
は
代
(
か
)
へられよまい。
339
宣伝使
(
せ
んでんし
)
の
吾々
(
われわれ
)
に
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぐか、
340
降参
(
かうさん
)
するか、
341
ソ
ヽヽ
そ
れでもまだ
往生
(
わうじやう
)
いたさぬか、
342
改心
(
かいしん
)
せぬか』
343
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
より、
344
声
『
タ
ヽヽヽ
誑
(
た
わ
)
け
者
(
もの
)
、
345
叩
(
た
た
)
き
潰
(
つぶ
)
して
食
(
く
)
うて
了
(
しま
)
はうか、
346
鼻高神
(
はな
た
かがみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
347
チ
ヽヽヽ
ち
つとばかり
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
たと
申
(
まを
)
して、
348
この
方様
(
はうさま
)
に
意見
(
いけん
)
がましい
知識
(
ち
しき
)
の
足
(
た
)
らぬ
大
(
おほ
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
、
349
一寸
(
ち
よつと
)
は
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
をあてて
見
(
み
)
よ。
350
ツ
ヽヽヽ
捕
(
つ
かま
)
へ
処
(
どころ
)
のない
事
(
こと
)
を
吐
(
ほざ
)
いて
歩
(
ある
)
く、
351
罪
(
つ
み
)
の
深
(
ふか
)
い
両人共
(
りやうにんども
)
、
352
掴
(
つ
か
)
み
潰
(
つ
ぶ
)
してやらうかい。
353
強
(
つ
よ
)
さうに
言
(
い
)
つても、
354
貴様
(
きさま
)
の
胸
(
むね
)
はドキドキして
居
(
を
)
らうがな、
355
テ
ヽヽヽ
天
(
て
ん
)
にも
地
(
ち
)
にも
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
が
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
言
(
い
)
はぬばかりのその
面
(
つら
)
つき、
356
多勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
で
面
(
つ
ら
)
を
剥
(
むか
)
れて
テ
レクサイことはないか。
357
てる
の
国
(
くに
)
から
遥々
(
はるばる
)
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
358
扨
(
さて
)
もさても
馬鹿
(
ばか
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
359
ト
ヽヽヽ
虎公
(
と
らこう
)
の
ト
ボケ
面
(
づら
)
、
360
熊公
(
くまこう
)
の
心
(
こころ
)
の
暗
(
くら
)
い
俄
(
にはか
)
改心
(
かいしん
)
、
361
迚
(
と
て
)
も
迚
(
と
て
)
も
衆生
(
しうじやう
)
済度
(
さいど
)
は
六
(
む
)
つかしからう』
362
熊公
(
くまこう
)
『
ナ
ヽヽ
何
(
な
に
)
を
吐
(
ほざ
)
きよるのだ。
363
タ
ヽヽ
他愛
(
た
あい
)
もないこと、
364
立板
(
た
ていた
)
に
水
(
みづ
)
を
流
(
なが
)
すやうに、
365
よくも
囀
(
さへづ
)
る
狸
(
た
ぬき
)
の
親玉
(
おやだま
)
、
366
誰
(
た
れ
)
にそんな
事
(
こと
)
教
(
をし
)
へて
貰
(
もら
)
ひよつたのだ。
367
誑
(
たわ
)
け
者
(
もの
)
。
368
チ
ヽヽ
一寸
(
ち
よつと
)
は
貴様
(
きさま
)
も
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
369
ツ
ヽヽ
詰
(
つ
ま
)
らぬ
理窟
(
りくつ
)
を
並
(
なら
)
べよつて、
370
テ
ヽヽ
手柄
(
て
がら
)
さうに
ト
ボケきつたことを
吐
(
ぬか
)
しやがるな』
371
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
より、
372
「ウヽヽヽワーワー」と
大音響
(
だいおんきやう
)
ひびき
来
(
きた
)
る。
373
(
大正一一・二・一五
旧一・一九
東尾吉雄
録)
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『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
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飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
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霊界物語ネットに出口王仁三郎の
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