霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 クス()(はら)〔四六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻 篇:第1篇 長駆進撃 よみ(新仮名遣い):ちょうくしんげき
章:第1章 クス野ケ原 よみ(新仮名遣い):くすのがはら 通し章番号:468
口述日:1922(大正11)年02月28日(旧02月02日) 口述場所: 筆録者:桜井重雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
青雲の別の宣伝使こと天児屋根神司は、高彦と名を改めて、ウラル教の本拠であるアーメニヤに宣伝をなそうと、アルタイ山のふもとのクス野ケ原にやってきた。
日も暮れてきて、ここで一夜を明かそうとした高彦の前に、巨大な一つ目の怪物が襲いかかろうとしていた。
高彦は心静かに宣伝歌を歌い始め、次第に高唱すると、怪物は小さくなっていき、消えてしまった。見れば、怪しい影が雲別けて空に逃げていくのが見えた。
高彦は怪物を追い払って改めて寝ようとすると、何者か杖で体を打つ者がある。驚いて一喝すると、それは鉄谷村の時公だった。
鉄谷村の村長・鉄彦は、三五教の宣伝使となってアーメニヤに宣伝に赴いたが、村では鉄彦の奥方が病気になってしまい、時公はそのことを主人の鉄彦に伝えに、後を追いかけてきたのであった。
高彦は東彦と名乗り、時公と一緒にアーメニヤに向かうことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-10-07 18:31:41 OBC :rm1101
愛善世界社版:9頁 八幡書店版:第2輯 517頁 修補版: 校定版:9頁 普及版:3頁 初版: ページ備考:
001(あま)(はら)(すみ)きり(わた)青雲(あをくも)
002(わけ)(みこと)宣伝使(せんでんし)
003()高彦(たかひこ)(あらた)めて
004岩戸(いはと)(まへ)にいさをしを
005いや永遠(とこしへ)(たて)ましし
006(あめの)児屋根(こやね)神司(かむつかさ)
007ウラルの(やま)やアーメニヤ
008(しこ)本拠(ほんきよ)立籠(たてこも)
009ウラルの(ひこ)やウラル(ひめ)
010八十(やそ)曲津(まがつ)言向(ことむ)けて
011豊葦原(とよあしはら)瑞穂国(みづほくに)
012(くま)なく()まし(てら)さむと
013黄金山(わうごんざん)立出(たちい)でて
014(あま)真名井(まなゐ)打渡(うちわた)
015(なみ)にさらはれ(あめ)()
016()きくる(かぜ)(くしけづ)
017山川(やまかは)(いく)打越(うちこ)えて
018(かみ)稜威(みいづ)もアルタイの
019(やま)より()つる宇智野(うちの)(がは)
020(わた)りてここにクス野原(のはら)
021一望(いちばう)(せん)()(くさ)()
022月日(つきひ)(かさ)ねて(すす)()る。
023 ()(とど)かぬ(かぎ)りの薄野(すすきの)()けて、024ことさら(さむ)木枯(こがらし)()かれながら、025(つか)れし(あし)とぼとぼと、026(とら)(おほかみ)のうそぶく(こゑ)()あてに、027宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら(すす)()く。
028 ()黄昏(たそがれ)(ちか)づきて、029夜気(やき)陰々(いんいん)()(せま)る。030百鳥(ももとり)(こゑ)もピタリと()んで、031(たけ)(けもの)(こゑ)刻々(こくこく)(たか)(きこ)()たりぬ。
032 高彦(たかひこ)宣伝使(せんでんし)は、033一夜(いちや)をここに()かさむと枯野(かれの)(はら)(しとね)とし、034(かほ)(かさ)(おほ)(みの)(かぶ)つて(まどろ)むうち、035何処(どこ)ともなく胸騒(むなさわ)ぎがして()た。036フト()(ひら)けば、037見上(みあ)ぐるばかりの大怪物(だいくわいぶつ)038(ひたひ)中央(ちうあう)(かがみ)(ごと)(ひと)()(ひか)らし、039(はな)神楽(かぐら)獅子(じし)(ごと)く、040(くち)(みみ)まで()け、041青藍色(せいらんしよく)(つら)をして、042高彦(たかひこ)(にら)みつけた。
043 高彦(たかひこ)仰臥(あふぐわ)せしまま黙然(もくねん)として(ひと)()怪物(くわいぶつ)()(はな)たず()つめてゐた。044怪物(くわいぶつ)()だらけの真黒(まつくろ)()()()べて、045高彦(たかひこ)(むね)一掴(ひとつか)みにせむと(せま)()る。
046 高彦(たかひこ)心静(こころしづ)かに宣伝歌(せんでんか)(とな)へた。047怪物(くわいぶつ)(あや)しき(こゑ)()して、048前後(ぜんご)左右(さいう)にキリキリ()ひを(はじ)めた。049高彦(たかひこ)益々(ますます)宣伝歌(せんでんか)高唱(かうしやう)する。050怪物(くわいぶつ)次第(しだい)々々(しだい)にその容積(ようせき)(げん)じ、051(つひ)には(しろ)(けむり)(ごと)(たま)となつて次第(しだい)々々(しだい)()()せた。052中空(ちうくう)(なが)むれば、053(あや)しき黒影(くろかげ)魚鱗(ぎよりん)淡雲(たんうん)()けて(のぼ)()く。
054高彦(たかひこ)『あゝウラル(さん)(おに)()が、055折角(せつかく)(つか)れを(やす)めて()塩梅(あんばい)(ねむ)つてゐたのに、056安眠(あんみん)妨害(ばうがい)(いた)しよつた。057このクスの()油断(ゆだん)のできない(ところ)だと()いてゐた。058ヤア、059もう(すこ)()()けるのに()もあるから、060モウ()寝入(ねい)りしてから()くこととしよう』
061(また)もやコロリと(よこ)たはり、062(あと)白河(しらかは)夜船(よぶね)063鼾声(かんせい)(らい)(ごと)四辺(あたり)(ひび)かしてゐる。
064 この(とき)065何者(なにもの)ともなく高彦(たかひこ)身体(しんたい)()がけて、066(つゑ)をもつて(ちから)(かぎ)りに()つものがある。067高彦(たかひこ)(おどろ)いてスツクと立上(たちあが)り、
068高彦無礼者(ぶれいもの)ツ』
069一喝(いつかつ)したるに、070一人(ひとり)大男(おほをとこ)は、
071時公『バヽヽヽ化物(ばけもの)()が、072馬鹿(ばか)にするな。073その()()はぬぞ。074(おれ)どなた(おも)うて()るか、075(おそ)(おほ)くも、076鉄谷村(かなたにむら)酋長(しうちやう)鉄彦(かなひこ)門番(もんばん)077(いま)こそ(すこ)(とし)はとつたれ、078これでも(わか)(とき)小相撲(こずまう)(ひと)つもとつた近所(きんじよ)界隈(かいわい)()(とほ)つた時公(ときこう)さんだぞ。079(なん)だツ、080最前(さいぜん)(ひと)()化物(ばけもの)となつて、081(おほ)きな無恰好(ぶかつかう)(くち)(ひら)きやがつて、082(あを)(つら)してこの(はう)さまを(おど)かしよつたが、083この(とき)さまの宣伝歌(せんでんか)言霊(ことたま)によつて、084(くも)(かすみ)()げたそのザマは(なん)だ。085今度(こんど)手品(てじな)()へやがつて、086石凝姥(いしこりどめ)宣伝使(せんでんし)真似(まね)をさらして、087こンな(ところ)(よこ)たはつて(いびき)をかいてゐやがるんだ。088もう承知(しようち)せん。089貴様(きさま)はアルタイ(ざん)蛇掴(へびつか)みの子分(こぶん)だらう。090親分(おやぶん)蛇掴(へびつか)みでさへも、091時公(ときこう)さまの()威勢(ゐせい)(おそ)れ、092青白(あをじろ)(ひかり)となつてザマの(わる)(ふんどし)()らしやがつて、093アーメニヤとかいふ(くに)()(かへ)りやがつた(くらゐ)だ。094サア、095()()け、096(した)()せ、097そんな(こと)でビツクリするやうな(とき)さまとは(ちが)ふぞ。098あまり見損(みぞこ)なひをすな』
099高彦(たかひこ)『ヤア、100(とき)さまとやら、101我々(われわれ)化物(ばけもの)ではありませぬ』
102 時公(ときこう)一寸(ちよつと)(した)()し、103(あご)しやくつて、
104時公『ヤア、105(とき)さまとやら、106我々(われわれ)化物(ばけもの)ではありませぬ。107……とケツかるワイ。108その()桑名(くはな)焼蛤(やきはまぐり)だ。109グヅグヅぬかすと、110この(つゑ)がお見舞(みま)(まを)すぞ。111()(たま)()が』
112高彦(たかひこ)『これはこれは化物(ばけもの)とのお見違(みちが)ひ、113(けつ)して(けつ)して左様(さやう)(もの)ではござらぬ。114我々(われわれ)(いま)その(ひと)()小僧(こぞう)出会(であ)つたところだ。115せつかく安眠(あんみん)してをるのに、116中途(ちうと)(おこ)され、117(ねむ)たくて()工合(ぐあひ)が……』
118時公(ときこう)『オツト……御免(ごめん)だ。119()(はなし)()めた()めた。120こつちも一寸(ちよつと)めいわくだから……』
121高彦何分(なにぶん)(ねむ)りが()らぬものだから、122(ねつ)()(した)もつれ……』
123時公『オイオイ、124その(した)はもう()ふな。125(おれ)もあの(した)にはギヨツとした
126高彦何分(なにぶん)長途(ちやうと)(たび)(つか)れたものだから、127(まへ)さんが()たら人間(にんげん)らしくもなからうが……わしの(かほ)蒼白(あをじろ)()えるだらう。128それでお(まへ)(うたが)ふのは……』
129時公(うたが)ふも(うたが)はぬもあつたものかい。130(かほ)(あを)(しろ)いは()ふな。131貴様(きさま)大方(おほかた)蛇掴(へびつかみ)兄弟分(きやうだいぶん)だらう。132(いま)一体(いつたい)(なん)といふ()だ』
133高彦(東彦を偽称)(われ)東彦(あづまひこ)(まを)(もの)ここで高彦は東彦(石凝姥の旧名)と仮に名乗るが、第4章で本名の高彦を名乗る
134時公(ときこう)『ザマ()やがれ。135白状(はくじやう)しよつた。136アクマ(ひこ)()が。137(かへる)(われ)()(くち)から白状(はくじやう)したが、138もうアクマと()つた以上(いじやう)は、139(おれ)(ぜん)にも(つよ)ければ(あく)にも(つよ)(とき)さまだ。140あくま()ちこらしてやる。141(おれ)(かほ)冥途(めいど)土産(みやげ)(あな)あくま()ておけ。142()(くに)(そこ)(くに)()つてもこの(とき)さんのやうな(つよ)いお(かた)滅多(めつた)にありやせぬぞ』
143()ひながら、144(たづさ)へた鉄棒(てつぼう)をもつて()つてかかる。145東彦(あづまひこ)(かさ)をもつて、146その(ぼう)(みぎ)(ひだり)()(なが)ら、147時公(ときこう)(あし)さらへた。148時公(ときこう)はズデンドーと仰向(あふむ)けに(たふ)れた。149東彦(あづまひこ)は、
150東彦(本当は高彦)『ウン』
151一声(ひとこゑ)霊縛(れいばく)をかけたるに時公(ときこう)は、
152時公『オイ、153()(たま)154アクマ(ひこ)155()うしよるのだ。156貴様(きさま)わりとは悪戯(ふざ)けた(こと)をしよる。157身体(からだ)はアルタイ(さん)(おに)化石(くわせき)のやうになつちやつたが、158()(くち)(みみ)とはしつかりしてをるぞ。159貴様(きさま)(ひと)()だ。160(おれ)(ふた)()だ。161(にら)(ころ)してやらうか』
162東彦(あづまひこ)(本当は高彦)『アハヽヽヽ、163やあ、164(とき)さまとやら、165(わたくし)(しん)じて(くだ)さい。166(わたくし)つい最前(さいぜん)のこと、167その(ひと)()小僧(こぞう)出会(であ)つたのだ。168が、169(まへ)さんも途中(とちう)出会(であ)つて()たのか』
170 時公(ときこう)(にはか)調子(てうし)をかへて、
171時公『ハイハイ、172一目(ひとめ)()るよりビツクリ仰天(ぎやうてん)せむとせしが、173()(しば)し、174アルタイ(ざん)蛇掴(へびつか)みでさへも、175この(とき)さまの鼻息(はないき)()()らしたのだ。176(なん)だ、177(ひと)()化物(ばけもの)(くらゐ)(おも)(なほ)してここまでやつて()たが、178(なん)だか膝頭(ひざがしら)こそばくて、179(わら)うたり()いたりしやがつて、180(とき)さんは(おこ)る、181膝坊主(ひざばうず)()(わら)ひする。182(さけ)()まぬに、183一人(ひとり)(さん)(にん)上戸(じやうご)(つと)めて()ました。184(わたくし)主人(しゆじん)鉄彦(かなひこ)というて、185それはそれは(あま)(えら)うない豪傑(がうけつ)ですが、186三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)あななひをしてな、187アナ()(がた)いとか(なん)とか()つて石凝姥(いしこりどめ)宣伝使(せんでんし)と、188(なん)でも()(わす)れたがスイスイ、189(すゐ)()のつく別嬪(べつぴん)宣伝使(せんでんし)三人(さんにん)()れで、190クスの(はら)(むか)ふへ(わた)ると()つて()かけました。191さうしたところが(にはか)(おく)さまが、192病気(びやうき)になつたものだから、193オイ時公(ときこう)194(まへ)天下(てんか)無双(むさう)豪傑(がうけつ)だ、195(ひと)()小僧(こぞう)百匹(ひやつぴき)千匹(せんびき)はビクともようせぬ(やつ)だから、196()苦労(くらう)だが主人(しゆじん)()んで()てくれと、197奥様(おくさま)手毬(てまり)のやうな(なみだ)を、198こぼして(たの)むものだから、199ヨシきた、200たとへウラル(ひこ)軍勢(ぐんぜい)201幾万(いくまん)(きた)るとも、202この(とき)さまが腕力(わんりよく)をもつて、203縦横(じうわう)無尽(むじん)()つて()つて()ちまはし、204木端(こつぱ)微塵(みじん)(くだ)いてやるは(またた)くうちと(しり)ひつからげ、205クスの荒野(あらの)韋駄天(いだてん)(ばし)り、206(なま)かじりの宣伝歌(せんでんか)を、207処々(ところどころ)(うた)つて足拍子(あしべうし)をとり(なが)らやつて()たところ、208(むか)ふに(あや)しき(かげ)がある。209ハーテ(いぶか)しやな、210この荒野(あれの)(はら)(あらは)()づる怪物(くわいぶつ)何者(なにもの)なるぞ、211尋常(じんじやう)()名乗(なの)れとやつて()せたり、212(おも)つたが(なん)だか、213(むか)ふの(した)(なが)うてこつち(した)()かれたか、214(まけ)たか()らないが、215こわばつて一寸(ちよつと)(とき)さまの()(こと)()きやがらぬので、216今度(こんど)()御用(ごよう)だと、217クルクル(かがみ)(ごと)両眼(りやうがん)(ひら)いて()せた。218流石(さすが)(ひと)()怪物(くわいぶつ)も、219(とき)さんの勇気(ゆうき)辟易(へきえき)し、220(ふんどし)()げて西南(せいなん)(てん)()して()()つたり』
221東彦(あづまひこ)(本当は高彦)『アハヽヽヽ、222面白(おもしろ)(やつ)だな』
223時公(ときこう)面白(おもしろ)いか()らぬが、224(わたくし)ねつから面白(おもしろ)くない。225かう(よこ)()つて物語(ものがたり)をしても、226ねつからはつからハバがきかぬ。227(まへ)さまも(わたくし)(そば)()て、228(よこ)()てつたら()うだ。229ゆつくり寝物語(ねものがたり)でもしようかいな』
230東彦(本当は高彦)『アハヽヽヽ、231どこまでも、232徹底(てつてい)した法螺吹(ほらふ)きだな。233()()しみの(つよ)(やつ)だ。234そんなら(わたくし)もお(まへ)(そば)で、235()()けるまで添寝(そひね)をしてやらうか。236これだから悪戯(いたづら)小僧(こぞう)()(おや)(こま)るといふのだ。237やあドツコイシヨ』
238と、239時公(ときこう)(まくら)(なら)べて、240ゴロンと()た。
241時公(ときこう)『やあ、242アクマ(ひこ)なかなか(はな)せるワイ。243しかし、244()(どく)だが、245(とき)さまだと()いけれど、246時公(ときこう)さまではお()()しますまい。247それでも(なん)だかトキトキとしますよ』
248東彦(あづまひこ)(本当は高彦)『アヽ、249(わたくし)退屈(たいくつ)(こま)つてゐたところだ。250霊界(れいかい)物語(ものがたり)ぢやないが、251(ひと)つここでしつぽり仰向(あふむ)けになつて、252寝物語(ねものがたり)でもやらうかい』
253 東雲(しののめ)(そら)()(のぼ)朝日子(あさひこ)の、254東彦(あづまひこ)宣伝使(せんでんし)はムツクリと起上(おきあが)り、255時公(ときこう)霊縛(れいばく)()き、256二人(ふたり)途々(みちみち)神話(しんわ)(ふけ)りながら、257際限(さいげん)()大野原(おほのはら)西(にし)西(にし)へと(すす)()く。
258大正一一・二・二八 旧二・二 桜井重雄録)
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
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