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第11巻(戌の巻)
言霊反
凡例
信天翁(二)
総説歌
第1篇 長駆進撃
01 クス野ケ原
〔468〕
02 一目お化
〔469〕
03 死生観
〔470〕
04 梅の花
〔471〕
05 大風呂敷
〔472〕
06 奇の都
〔473〕
07 露の宿
〔474〕
第2篇 意気揚々
08 明志丸
〔475〕
09 虎猫
〔476〕
10 立聞
〔477〕
11 表教
〔478〕
12 松と梅
〔479〕
13 転腹
〔480〕
14 鏡丸
〔481〕
第3篇 言霊解
15 大気津姫の段(一)
〔482〕
16 大気津姫の段(二)
〔483〕
17 大気津姫の段(三)
〔484〕
第4篇 満目荒寥
18 琵琶の湖
〔485〕
19 汐干丸
〔486〕
20 醜の窟
〔487〕
21 俄改心
〔488〕
22 征矢の雨
〔489〕
23 保食神
〔490〕
第5篇 乾坤清明
24 顕国宮
〔491〕
25 巫の舞
〔492〕
26 橘の舞
〔493〕
27 太玉松
〔494〕
28 二夫婦
〔495〕
29 千秋楽
〔496〕
余白歌
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> 第2篇 意気揚々 > 第12章 松と梅
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第一二章
松
(
まつ
)
と
梅
(
うめ
)
〔四七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
篇:
第2篇 意気揚々
よみ(新仮名遣い):
いきようよう
章:
第12章 松と梅
よみ(新仮名遣い):
まつとうめ
通し章番号:
479
口述日:
1922(大正11)年03月01日(旧02月03日)
口述場所:
筆録者:
井上留五郎
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
梅ケ香姫は、この場で姉の松代姫に出会えた嬉しさを歌い、自分の今までの宣伝の遍歴を姉に報告した。
この歌を聞いて一行は、孔雀姫が梅ケ香姫の姉・松代姫であることを知った。松代姫は、竹野姫はコーカス山に宣伝に向かったこと、自分はここにしばらく居を構えて、道行く人に宣伝していたことを歌で明かした。
ここに、勝公はこの館に留まって、松代姫の代わりに旅人に宣伝することとなり、松代姫と梅ケ香姫は、時公、八公、鴨公を従えて、竹野姫の加勢にコーカス山に向かうこととなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-08-11 19:42:47
OBC :
rm1112
愛善世界社版:
112頁
八幡書店版:
第2輯 553頁
修補版:
校定版:
112頁
普及版:
47頁
初版:
ページ備考:
001
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『
黄泉
(
よもつ
)
の
嶋
(
しま
)
の
戦
(
たたか
)
ひに
002
桃
(
もも
)
の
木実
(
このみ
)
と
現
(
あら
)
はれし
003
松竹梅
(
まつたけうめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
004
天教山
(
てんけうざん
)
に
駆
(
かけ
)
あがり
005
神
(
かみ
)
の
御言
(
みこと
)
をかしこみて
006
四方
(
よも
)
の
雲霧
(
くもきり
)
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
007
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
御代
(
みよ
)
に
照
(
てら
)
さむと
008
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
009
霜
(
しも
)
を
凌
(
しの
)
んで
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
010
名
(
な
)
さへ
目出
(
めで
)
たき
梅ケ香
(
うめがか
)
の
011
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
012
駱駝
(
らくだ
)
の
背
(
せな
)
に
跨
(
またが
)
りて
013
アシの
沙漠
(
さばく
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
014
クス
野ケ原
(
のがはら
)
の
枉神
(
まがかみ
)
も
015
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
神言
(
かみごと
)
に
016
服
(
まつろ
)
はさむと
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
017
神
(
かみ
)
の
稜威
(
みいづ
)
も
高彦
(
たかひこ
)
の
018
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かむ
)
づかさ
019
月
(
つき
)
雪
(
ゆき
)
花
(
はな
)
の
三柱
(
みはしら
)
に
020
新玉原
(
あらたまはら
)
に
巡
(
めぐ
)
り
逢
(
あ
)
ひ
021
ここに
逢
(
あ
)
ふ
瀬
(
せ
)
を
喜
(
よろこ
)
びつ
022
東雲別
(
しののめわけ
)
の
東彦
(
あづまひこ
)
023
鉄谷村
(
かなたにむら
)
の
時
(
とき
)
さまと
024
三人
(
みたり
)
逢
(
あ
)
うたり
六柱
(
むはしら
)
の
025
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
き
一行
(
いつかう
)
は
026
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
027
雪
(
ゆき
)
踏
(
ふ
)
みわけて
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
028
雪
(
ゆき
)
より
清
(
きよ
)
き
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
は
029
コーカス
山
(
ざん
)
の
枉神
(
まがかみ
)
を
030
打
(
う
)
ち
払
(
はら
)
はむとめいめいに
031
右
(
みぎ
)
や
左
(
ひだり
)
に
手分
(
てわけ
)
して
032
明志
(
あかし
)
の
湖
(
うみ
)
に
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
033
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
折柄
(
をりから
)
に
034
跡
(
あと
)
追
(
お
)
ひ
来
(
きた
)
る
時
(
とき
)
さまの
035
従神
(
みとも
)
の
神
(
かみ
)
に
助
(
たす
)
けられ
036
孔雀
(
くじやく
)
の
姫
(
ひめ
)
の
枉神
(
まがかみ
)
を
037
只
(
ただ
)
一言
(
ひとこと
)
の
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
に
038
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
導
(
みちび
)
きて
039
助
(
たす
)
けやらむと
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
040
思
(
おも
)
ひもかけぬ
孔雀姫
(
くじやくひめ
)
041
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
のかがやきて
042
みろくの
御世
(
みよ
)
を
松代姫
(
まつよひめ
)
043
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
住処
(
すみか
)
ぞと
044
さとりし
時
(
とき
)
の
嬉
(
うれ
)
しさよ
045
さはさりながら
竹野姫
(
たけのひめ
)
046
姉
(
あね
)
の
命
(
みこと
)
は
今
(
いま
)
いづこ
047
雪
(
ゆき
)
積
(
づ
)
む
野辺
(
のべ
)
を
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
と
048
さすらひ
給
(
たま
)
ふか
痛
(
いた
)
はしや
049
嗚呼
(
ああ
)
姉上
(
あねうへ
)
よ
姉上
(
あねうへ
)
よ
050
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
の
開
(
ひら
)
くごと
051
心
(
こころ
)
も
晴
(
は
)
れし
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
052
八十
(
やそ
)
の
曲霊
(
まがひ
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
053
功績
(
いさを
)
も
高
(
たか
)
きアーメニヤ
054
神
(
かみ
)
の
都
(
みやこ
)
を
立直
(
たてなほ
)
し
055
天教
(
てんけう
)
地教
(
ちけう
)
の
山
(
やま
)
に
在
(
ま
)
す
056
野立
(
のだち
)
の
彦
(
ひこ
)
や
野立姫
(
のだちひめ
)
057
高照姫
(
たかてるひめ
)
のおん
前
(
まへ
)
に
058
勲功
(
いさを
)
をたつる
常磐木
(
ときはぎ
)
の
059
色
(
いろ
)
も
妙
(
たへ
)
なる
松代姫
(
まつよひめ
)
060
神
(
かみ
)
の
世
(
よ
)
松
(
まつ
)
の
世
(
よ
)
みろくの
世
(
よ
)
061
松
(
まつ
)
の
神世
(
かみよ
)
に
因
(
ちなみ
)
たる
062
姉
(
あね
)
の
命
(
みこと
)
のいさをしを
063
喜
(
よろこ
)
び
祝
(
いは
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る』
064
と
歌
(
うた
)
つて
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
いた。
065
八
(
やつ
)
は
小声
(
こごゑ
)
で、
066
八公
『おいおい、
067
勝公
(
かつこう
)
、
068
鴨公
(
かもこう
)
、
069
どうやら、
070
こりや
風
(
かぜ
)
が
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
だぞ。
071
貴様
(
きさま
)
は
明志丸
(
あかしまる
)
の
中
(
なか
)
で
弱味
(
よわみ
)
につけこむ
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
だとか、
072
風
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
いたとか
引
(
ひ
)
かぬとか、
073
吐
(
ほざ
)
いて
居
(
ゐ
)
やがつたが、
074
こいつは
又
(
また
)
けつたいな、
075
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ』
076
勝公
(
かつこう
)
『
かつかつ
ながら、
077
どうも
怪
(
あや
)
しいものだな、
078
美
(
うつく
)
しい
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たら、
079
孔雀姫
(
くじやくひめ
)
の
妹
(
いもうと
)
だつて。
080
きよろきよろして
居
(
ゐ
)
ると
最前
(
さいぜん
)
の
様
(
やう
)
に
茹
(
ゆ
)
であげて、
081
噛
(
か
)
むで
食
(
く
)
ふと
吐
(
ぬ
)
かしたが、
082
本当
(
ほんたう
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ』
083
時公
(
ときこう
)
『サア
勝公
(
かつこう
)
、
084
どうだ。
085
貴様
(
きさま
)
の
刹那心
(
せつなしん
)
を
聞
(
き
)
かうかい、
086
心機
(
しんき
)
一転
(
いつてん
)
はどうだ』
087
勝公
『
心機
(
しんき
)
一転
(
いつてん
)
どころか、
088
神経
(
しんけい
)
興奮
(
こうふん
)
だ。
089
オイオイ
時
(
とき
)
さま、
090
道連
(
みちづれ
)
の
誼
(
よしみ
)
で
一
(
ひと
)
つ
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
りを
申上
(
まをしあ
)
げてくれぬか』
091
時公
(
ときこう
)
『
断
(
ことわ
)
りは
断
(
ことわ
)
りだが、
092
そんな
事
(
こと
)
は
時
(
とき
)
さまの
方
(
はう
)
から
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
りだ。
093
どうで
貴様
(
きさま
)
は
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
で
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
苦
(
くる
)
しめた
奴
(
やつ
)
だから、
094
其
(
その
)
お
礼
(
れい
)
返
(
がへ
)
しだ。
095
マア
覚悟
(
かくご
)
をしたがよからう。
096
人間
(
にんげん
)
は
刹那心
(
せつなしん
)
が
大事
(
だいじ
)
だ。
097
なンぼ
切
(
せつ
)
なくても
観念
(
くわんねん
)
せい』
098
勝公
(
かつこう
)
『
第一着
(
だいいちちやく
)
に
苛
(
いぢ
)
めた
奴
(
やつ
)
は
鴨公
(
かもこう
)
だ、
099
その
次
(
つぎ
)
が
八公
(
やつこう
)
で、
100
第三番
(
だいさんばん
)
目
(
め
)
が
此
(
この
)
勝
(
かつ
)
さまではないワイ。
101
モシモシ
松代姫
(
まつよひめ
)
さまの
孔雀姫
(
くじやくひめ
)
さま、
102
私
(
わたし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
知
(
し
)
りませぬ、
103
茹
(
ゆ
)
でて
喰
(
く
)
ふのなら
八
(
や
)
ツ
足
(
あし
)
の
蛸
(
たこ
)
か
鴨
(
かも
)
が
味
(
あぢ
)
がよろしい。
104
私
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
なものをおあがりになつても、
105
かつ
かつして、
106
岩
(
いは
)
を
噛
(
か
)
む
様
(
やう
)
であんまり
美味
(
うまく
)
はありませぬぜ』
107
時公
(
ときこう
)
『ハヽヽヽアハヽヽヽ』
108
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『オホヽヽヽ』
109
松代姫
(
まつよひめ
)
『ヤア
皆
(
みな
)
さん、
110
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
111
うまい
都合
(
つがふ
)
です。
112
鰹
(
かつを
)
だとか、
113
鴨
(
かも
)
だとか、
114
蛸
(
たこ
)
だとか、
115
本当
(
ほんたう
)
においしさうな
御
(
お
)
名
(
な
)
の
方
(
かた
)
ですな』
116
時公
(
ときこう
)
『
噛
(
か
)
んで
食
(
く
)
ふ
様
(
やう
)
に
云
(
い
)
うてあげて
下
(
くだ
)
さりませ。
117
さうせぬとなかなか
此奴
(
こいつ
)
は
頑固
(
ぐわんこ
)
な
男
(
をとこ
)
で
腹
(
はら
)
へは
這入
(
はい
)
りませぬ』
118
勝公
(
かつこう
)
『コレコレ
時
(
とき
)
さま、
119
要
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うて
智慧
(
ちゑ
)
を
付
(
つ
)
けてくれない、
120
化物
(
ばけもの
)
の
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
つてたまるものか。
121
お
前
(
まへ
)
が
居
(
を
)
ると
危
(
あぶ
)
なくて、
122
はら
はらするワイ、
123
腹
(
はら
)
の
立
(
た
)
つ
奴
(
やつ
)
だ。
124
アーアー、
125
夢
(
ゆめ
)
か
現
(
うつつ
)
か
鬼
(
おに
)
か
蛇
(
じや
)
か、
126
我
(
わが
)
身
(
み
)
に
来
(
きた
)
る
災難
(
さいなん
)
を
祓
(
はら
)
ひ
給
(
たま
)
へ
清
(
きよ
)
め
給
(
たま
)
へ』
127
時公
(
ときこう
)
『ウハハヽヽヽ、
128
モシモシ
孔雀姫
(
くじやくひめ
)
様
(
さま
)
、
129
貴方
(
あなた
)
と
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
さまと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
よつて、
130
一
(
ひと
)
つ
宛
(
づつ
)
頂戴
(
ちやうだい
)
しませうかい。
131
孔雀
(
くじやく
)
が
鴨
(
かも
)
を
食
(
く
)
ふのは
鳥
(
とり
)
同志
(
どうし
)
で
共喰
(
ともぐひ
)
になつて
面白
(
おもしろ
)
くないから、
132
時
(
とき
)
さまが
鴨
(
かも
)
をいただくなり、
133
お
梅
(
うめ
)
さまはちよつと
酸
(
す
)
い
名
(
な
)
だから、
134
八足
(
やつあし
)
の
八公
(
やつこう
)
を
三杯酢
(
さんばいず
)
につけて
食
(
く
)
ふなり、
135
松代姫
(
まつよひめ
)
様
(
さま
)
は
勝公
(
かつこう
)
をおあがりなさい、
136
松
(
まつ
)
の
魚
(
うを
)
は
鰹
(
かつを
)
だ。
137
丁度
(
ちやうど
)
誂
(
あつら
)
へ
向
(
む
)
きの
献立
(
こんだて
)
だ。
138
アハヽヽヽ』
139
勝公
(
かつこう
)
『おい
時
(
とき
)
さま、
140
一体
(
いつたい
)
どうだ、
141
本当
(
ほんたう
)
にお
前
(
まへ
)
食
(
く
)
ふつもりか。
142
何
(
なん
)
だか
変
(
へん
)
な
奴
(
やつ
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たら
貴様
(
きさま
)
ら
二人
(
ふたり
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
計略
(
けいりやく
)
にかけて、
143
斯
(
こ
)
んな
魔窟
(
まくつ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
やがつたのだな。
144
もう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
死物狂
(
しにものぐる
)
ひだ。
145
サア
時公
(
ときこう
)
、
146
時
(
とき
)
の
間
(
ま
)
も
猶予
(
いうよ
)
はならぬぞ。
147
此奴
(
こいつ
)
はアルタイ
山
(
ざん
)
に
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
る
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ。
148
此
(
この
)
勝
(
かつ
)
さんが
貴様
(
きさま
)
の
どたま
を
かつん
とやつてやろか、
149
もう
仕方
(
しかた
)
がない
破
(
やぶ
)
れかぶれだ。
150
八
(
やつ
)
は
此奴
(
こやつ
)
を
八裂
(
やつざき
)
にするなり、
151
此方
(
こちら
)
から
反対
(
あべこべ
)
に
かも
うかい。
152
のー
鴨公
(
かもこう
)
』
153
時公
(
ときこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
だなあ、
154
みんな
嘘
(
うそ
)
だよ。
155
なんでも
最前
(
さいぜん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
けば、
156
姉
(
ねえ
)
さまらしい、
157
よく
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
を
視
(
み
)
くらべて
見
(
み
)
よ。
158
少
(
すこ
)
しおからだが
大
(
おほ
)
きい
様
(
やう
)
だが、
159
眼
(
め
)
から
鼻
(
はな
)
から
口
(
くち
)
の
工合
(
ぐあひ
)
からまるで
瓜二
(
うりふた
)
つだ、
160
マア
安心
(
あんしん
)
せ、
161
滅多
(
めつた
)
に
食
(
く
)
はれる
気遣
(
きづか
)
ひはない』
162
勝公
(
かつこう
)
『
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
だ、
163
人
(
ひと
)
の
肝玉
(
きもだま
)
をひつくり
覆
(
かへ
)
しやがつた。
164
オイオイ
八公
(
やつこう
)
、
165
鴨公
(
かもこう
)
、
166
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ』
167
時公
(
ときこう
)
『
肝玉
(
きもだま
)
がひつくり
覆
(
かへ
)
つたのぢや
無
(
な
)
かろう、
168
貴様
(
きさま
)
の
刹那心
(
せつなしん
)
で
正念玉
(
しやうねんだま
)
がひつくり
覆
(
かへ
)
つたのだ。
169
オイ、
170
ま
一遍
(
いつぺん
)
ひつくり
覆
(
かへ
)
して、
171
万劫
(
まんがふ
)
末代
(
まつだい
)
もう
覆
(
かへ
)
らぬ
様
(
やう
)
に
三五教
(
あななひけう
)
に
帰依
(
きえ
)
するか』
172
勝公
(
かつこう
)
『するとも するとも、
173
味噌
(
みそ
)
もすれば
臼
(
うす
)
もする。
174
もう
是
(
これ
)
から、
175
此処
(
ここ
)
の
味噌摺
(
みそすり
)
奴
(
やつこ
)
になつて
使
(
つか
)
うてもらはうかい』
176
松代姫
(
まつよひめ
)
は
にこ
にこしながら
立
(
た
)
ちあがり、
177
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めた。
178
松代姫
(
まつよひめ
)
『
常磐
(
ときは
)
堅磐
(
かきは
)
に
動
(
うご
)
きなき
179
みろくの
御世
(
みよ
)
を
建
(
た
)
てむとて
180
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
や
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
181
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
をあななひて
182
荒野
(
あれの
)
ケ
原
(
はら
)
をひらき
行
(
ゆ
)
く
183
松竹梅
(
まつたけうめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
184
ウラルの
彦
(
ひこ
)
の
枉神
(
まがかみ
)
の
185
醜
(
しこ
)
の
荒
(
すさ
)
びを
治
(
をさ
)
めむと
186
竹野
(
たけの
)
の
姫
(
ひめ
)
はコーカスの
187
深山
(
みやま
)
を
指
(
さ
)
して
出
(
い
)
で
行
(
ゆ
)
きぬ
188
妾
(
わらは
)
は
暫
(
しば
)
し
孔雀野
(
くじやくの
)
の
189
雪
(
ゆき
)
かきわけて
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
の
190
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
を
照
(
てら
)
さむと
191
往来
(
ゆきき
)
の
人
(
ひと
)
を
松代姫
(
まつよひめ
)
192
光
(
ひかり
)
眩
(
まば
)
ゆき
玉鉾
(
たまぼこ
)
の
193
道
(
みち
)
踏
(
ふ
)
み
分
(
わ
)
けて
今
(
いま
)
ここに
194
孔雀
(
くじやく
)
の
姫
(
ひめ
)
と
身
(
み
)
をやつし
195
青人草
(
あをひとぐさ
)
をことごとに
196
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
に
救
(
すく
)
ひつつ
197
常夜
(
とこよ
)
の
暗
(
やみ
)
の
岩屋戸
(
いはやど
)
を
198
開
(
ひら
)
く
常磐
(
ときは
)
の
松代姫
(
まつよひめ
)
199
待
(
ま
)
つ
甲斐
(
かひ
)
ありて
我
(
わ
)
が
慕
(
した
)
ふ
200
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
に
今
(
いま
)
ここで
201
まめな
姿
(
すがた
)
を
三
(
み
)
つの
桃
(
もも
)
202
大
(
おほ
)
かむづみの
神業
(
かむわざ
)
を
203
照
(
てら
)
す
時
(
とき
)
こそ
来
(
きた
)
りけり
204
常磐
(
ときは
)
堅磐
(
かきは
)
の
時
(
とき
)
さまよ
205
曲
(
まが
)
のみたまの
盛
(
さか
)
り
居
(
ゐ
)
て
206
天
(
てん
)
に
勝
(
か
)
つてふ
勝
(
かつ
)
さまよ
207
天
(
てん
)
定
(
さだ
)
まれば
人
(
ひと
)
に
勝
(
か
)
つ
208
八
(
やつ
)
の
嶋根
(
しまね
)
の
八
(
や
)
しま
国
(
くに
)
209
八
(
やつ
)
さま
鴨
(
かも
)
さま
諸共
(
もろとも
)
に
210
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
211
心
(
こころ
)
を
照
(
てら
)
せやひら
手
(
で
)
を
212
拍
(
う
)
ちて
御神
(
みかみ
)
を
讃
(
たた
)
へかし
213
あゝ
梅ケ香
(
うめがか
)
よ
梅ケ香
(
うめがか
)
よ
214
神
(
かみ
)
の
稜威
(
みいづ
)
も
一時
(
いちどき
)
に
215
開
(
ひら
)
く
常磐
(
ときは
)
の
松代姫
(
まつよひめ
)
216
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
時
(
とき
)
さまと
217
コーカス
山
(
ざん
)
に
駆
(
か
)
けのぼり
218
猛
(
たけ
)
き
曲津
(
まがつ
)
に
悩
(
なや
)
み
居
(
ゐ
)
る
219
竹野
(
たけの
)
の
姫
(
ひめ
)
の
神業
(
かむわざ
)
を
220
翼
(
たす
)
けあななひ
奉
(
まつ
)
るべし
221
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とは
祭
(
まつ
)
りあひ
222
相
(
あひ
)
み
互
(
たがひ
)
に
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
223
誠
(
まこと
)
を
一
(
ひと
)
つの
松代姫
(
まつよひめ
)
224
ここに
五
(
ご
)
人
(
にん
)
のいづみたま
225
雪
(
ゆき
)
より
清
(
きよ
)
き
真心
(
まごころ
)
の
226
いきを
合
(
あ
)
はして
進
(
すす
)
むべし
227
いきを
合
(
あ
)
はして
進
(
すす
)
むべし』
228
時公
(
ときこう
)
『ヤア
是
(
これ
)
で
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も、
229
春
(
はる
)
の
雪
(
ゆき
)
と
疑問
(
ぎもん
)
がとけて
了
(
しま
)
つた。
230
とけて
嬉
(
うれ
)
しい
相生
(
あひおひ
)
の、
231
松
(
まつ
)
にまつたる
神世
(
かみよ
)
の
初
(
はじ
)
まり、
232
開
(
ひら
)
くは
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
ばかりではない、
233
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
心
(
こころ
)
も
さらり
と
開
(
ひら
)
いた。
234
サアサア
皆
(
みな
)
さん
皆
(
みな
)
さん、
235
早
(
はや
)
くこの
場
(
ば
)
を
開
(
ひら
)
いた
開
(
ひら
)
いた』
236
松代姫
(
まつよひめ
)
は
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
と
共
(
とも
)
にコーカス
山
(
ざん
)
に
向
(
むか
)
ふ
事
(
こと
)
となつた。
237
さうして
勝公
(
かつこう
)
は
此
(
この
)
館
(
やかた
)
に
留
(
とど
)
まつて、
238
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つて
枉神
(
まがかみ
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
す
事
(
こと
)
となつた。
239
時公
(
ときこう
)
、
240
八公
(
やつこう
)
、
241
鴨公
(
かもこう
)
は
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
随従
(
ずゐじゆう
)
して、
242
威勢
(
ゐせい
)
よくコーカス
山
(
ざん
)
に
向
(
むか
)
ふ
事
(
こと
)
となつた。
243
(
大正一一・三・一
旧二・三
井上留五郎
録)
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