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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
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第11巻(戌の巻)
言霊反
凡例
信天翁(二)
総説歌
第1篇 長駆進撃
01 クス野ケ原
〔468〕
02 一目お化
〔469〕
03 死生観
〔470〕
04 梅の花
〔471〕
05 大風呂敷
〔472〕
06 奇の都
〔473〕
07 露の宿
〔474〕
第2篇 意気揚々
08 明志丸
〔475〕
09 虎猫
〔476〕
10 立聞
〔477〕
11 表教
〔478〕
12 松と梅
〔479〕
13 転腹
〔480〕
14 鏡丸
〔481〕
第3篇 言霊解
15 大気津姫の段(一)
〔482〕
16 大気津姫の段(二)
〔483〕
17 大気津姫の段(三)
〔484〕
第4篇 満目荒寥
18 琵琶の湖
〔485〕
19 汐干丸
〔486〕
20 醜の窟
〔487〕
21 俄改心
〔488〕
22 征矢の雨
〔489〕
23 保食神
〔490〕
第5篇 乾坤清明
24 顕国宮
〔491〕
25 巫の舞
〔492〕
26 橘の舞
〔493〕
27 太玉松
〔494〕
28 二夫婦
〔495〕
29 千秋楽
〔496〕
余白歌
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> 第1篇 長駆進撃 > 第5章 大風呂敷
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第五章
大
(
おほ
)
風呂敷
(
ぶろしき
)
〔四七二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
篇:
第1篇 長駆進撃
よみ(新仮名遣い):
ちょうくしんげき
章:
第5章 大風呂敷
よみ(新仮名遣い):
おおぶろしき
通し章番号:
472
口述日:
1922(大正11)年02月28日(旧02月02日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
時公は用事を思い出して、鉄彦に、鉄姫の言付けを伝えて村に帰るようにと促した。しかし鉄彦は、宣伝使となった以上は目的を果たすまでは何があろうと家へは帰れないから、そう鉄姫に伝えてくれ、と答えた。
時公は、それでは伝言のついでに大蛇を退治してから帰ろう、と大風呂敷を広げる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-10-13 18:06:17
OBC :
rm1105
愛善世界社版:
45頁
八幡書店版:
第2輯 529頁
修補版:
校定版:
45頁
普及版:
18頁
初版:
ページ備考:
001
東雲
(
しののめ
)
の
空
(
そら
)
別
(
わ
)
け
昇
(
のぼ
)
る
東彦
(
あづまひこ
)
[
※
「東雲別」と「東彦」は石凝姥の旧名
]
002
青雲
(
あをくも
)
別
(
わ
)
けて
中天
(
ちうてん
)
に
003
光
(
ひかり
)
も
清
(
きよ
)
く
高彦
(
たかひこ
)
の
[
※
「青雲別」は高彦の旧名
]
004
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
005
二八
(
にはち
)
の
春
(
はる
)
の
梅ケ香
(
うめがか
)
や
006
鉄谷村
(
かなたにむら
)
の
鉄彦
(
かなひこ
)
が
007
鉄門
(
かなど
)
を
守
(
まも
)
る
時公
(
ときこう
)
と
008
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しき
宣伝歌
(
せんでんか
)
009
謡
(
うた
)
ひ
謡
(
うた
)
ひて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
010
荒野
(
あれの
)
ケ
原
(
はら
)
に
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
011
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
か
曲神
(
まがかみ
)
か
012
醜女
(
しこめ
)
探女
(
さぐめ
)
の
吹
(
ふ
)
く
息
(
いき
)
か
013
息
(
いき
)
も
吐
(
つ
)
かずにすたすたと
014
勢
(
いきほ
)
ひ
猛
(
たけ
)
く
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
015
あゝ
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し
016
大蛇
(
をろち
)
探女
(
さぐめ
)
や
醜神
(
しこがみ
)
の
017
仮令
(
たとへ
)
幾万
(
いくまん
)
来
(
きた
)
るとも
018
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とを
造
(
つく
)
りたる
019
御祖
(
みおや
)
の
神
(
かみ
)
のたまひてし
020
我
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
の
神力
(
しんりき
)
に
021
敵
(
てき
)
するものはあらざらめ
022
敵
(
てき
)
は
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
外
(
ほか
)
でない
023
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
に
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
024
潜
(
ひそ
)
む
やつ
こそ
我
(
わが
)
敵
(
てき
)
ぞ
025
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
や
曲神
(
まがかみ
)
を
026
伊吹
(
いぶき
)
祓
(
はら
)
ひて
清
(
きよ
)
めたる
027
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
たる
我
(
わが
)
身
(
み
)
には
028
月日
(
つきひ
)
の
光
(
ひかり
)
遍
(
あまね
)
くて
029
玉
(
たま
)
は
真澄
(
ますみ
)
の
鏡
(
かがみ
)
なす
030
鏡
(
かがみ
)
に
勝
(
まさ
)
る
日本魂
(
やまとだま
)
031
珍
(
うづ
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
抜
(
ぬ
)
き
持
(
も
)
ちて
032
我
(
わが
)
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
に
障
(
さや
)
りたる
033
曲
(
まが
)
の
大蛇
(
をろち
)
を
寸断
(
すんだん
)
し
034
勝鬨
(
かちどき
)
あぐる
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
の
035
はやくも
来
(
きた
)
るクスの
原
(
はら
)
036
新玉原
(
あらたまはら
)
となりにける。
037
高彦
(
たかひこ
)
『サア
皆
(
みな
)
さん、
038
此処
(
ここ
)
で
一寸
(
ちよつと
)
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めて、
039
いよいよ
戦闘
(
せんとう
)
準備
(
じゆんび
)
にかかりませう。
040
まづ
先陣
(
せんぢん
)
は
強力
(
がうりき
)
無双
(
むさう
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
、
041
時公
(
ときこう
)
さまに
願
(
ねが
)
ふ
事
(
こと
)
にしよう。
042
我々
(
われわれ
)
と
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は
本陣
(
ほんぢん
)
、
043
東彦
(
あづまひこ
)
さまと
鉄彦
(
かなひこ
)
さまは
左右
(
さいう
)
の
両翼
(
りやうよく
)
となり、
044
三角形
(
さんかくけい
)
に
敵
(
てき
)
の
本営
(
ほんえい
)
に
向
(
むか
)
つて
進撃
(
しんげき
)
するのですな』
045
時公
(
ときこう
)
『モシモシ、
046
力
(
ちから
)
の
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
が
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つて、
047
万々一
(
まんまんいち
)
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
にがぶつとゆかれては
終
(
しま
)
ひだ。
048
後
(
あと
)
の
控
(
ひかへ
)
がありませぬ。
049
総
(
すべ
)
て
戦
(
たたか
)
ひは
後
(
あと
)
の
控
(
ひかへ
)
が
肝腎
(
かんじん
)
です』
050
高彦
(
たかひこ
)
『
強
(
つよ
)
さうに
云
(
い
)
つても
弱
(
よわ
)
い
男
(
をとこ
)
だ。
051
随分
(
ずゐぶん
)
空威張
(
からゐばり
)
の
上手
(
じやうず
)
な
法螺吹
(
ほらふ
)
きだな。
052
マア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
053
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して、
054
それからゆつくり
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
を
定
(
さだ
)
め、
055
陣容
(
ぢんよう
)
を
整
(
ととの
)
へて
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
敵
(
てき
)
の
牙城
(
がじやう
)
に
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
にしませうか』
056
時公
(
ときこう
)
『ヤア、
057
一寸
(
ちよつと
)
皆
(
みな
)
さん
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
058
私
(
わたくし
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げねばならぬ、
059
肝腎
(
かんじん
)
の
御用
(
ごよう
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
ました。
060
エヽ
鉄彦
(
かなひこ
)
様
(
さま
)
、
061
貴方
(
あなた
)
直
(
す
)
ぐ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
062
鉄彦
(
かなひこ
)
『なンだ』
063
時公
(
ときこう
)
『
何
(
な
)
ンでもよろしいが、
064
帰
(
かへ
)
つてさへ
下
(
くだ
)
されば
分
(
わか
)
るのです』
065
鉄彦
(
かなひこ
)
『コレ、
066
分
(
わか
)
ると
云
(
い
)
つたつて
肝腎
(
かんじん
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
067
何
(
なん
)
でもない
事
(
こと
)
に
駒
(
こま
)
の
首
(
かしら
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るものか、
068
ハツキリと
云
(
い
)
はぬかい』
069
時公
(
ときこう
)
『エヽ、
070
実
(
じつ
)
は
申上
(
まをしあ
)
げ
悪
(
にく
)
い
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
071
貴方
(
あなた
)
が
東彦
(
あづまひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
三人
(
さんにん
)
連
(
づれ
)
で
館
(
やかた
)
をお
立
(
た
)
ち
遊
(
あそ
)
ばした
二日目
(
ふつかめ
)
の
夜半
(
よなか
)
頃
(
ごろ
)
、
072
風
(
かぜ
)
がザアザア、
073
雨
(
あめ
)
がシヤアシヤア、
074
雨垂
(
あまだれ
)
の
雫
(
しづく
)
がポトンポトンと、
075
それはそれは
淋
(
さび
)
しい
真闇
(
まつくら
)
の、
076
化物
(
ばけもの
)
でも
出
(
だ
)
さうな
晩
(
ばん
)
でした。
077
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
奥様
(
おくさま
)
が、
078
オヽ
臭
(
くさ
)
いとも
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
はずに、
079
便所
(
はばかり
)
にお
出
(
いで
)
になりましたところが、
080
便所
(
はばかり
)
の
横
(
よこ
)
からニユーと
出
(
で
)
た
糸柳
(
いとやなぎ
)
の
雨
(
あめ
)
に
濡
(
ぬ
)
れた
冷
(
つめ
)
たい
枝
(
えだ
)
が、
081
風
(
かぜ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
奥様
(
おくさま
)
の
顔
(
かほ
)
をザラリと
撫
(
な
)
でた
其
(
その
)
途端
(
とたん
)
に
奥様
(
おくさま
)
はあらう
事
(
こと
)
かあるまい
事
(
こと
)
か、
082
アツと
云
(
い
)
つたきり
荒肝
(
あらきも
)
をおつ
潰
(
つぶ
)
して、
083
其
(
そ
)
の
場
(
ば
)
に
バタリ
、
084
スワ
一大事
(
いちだいじ
)
と
門番
(
もんばん
)
の
時公
(
ときこう
)
までが、
085
雨蛙
(
あまがへる
)
の
様
(
やう
)
に、
086
胸
(
むね
)
を
トキトキ
させながら
近寄
(
ちかよ
)
りて
見
(
み
)
れば、
087
こは
抑
(
そも
)
如何
(
いか
)
に、
088
呼
(
よ
)
べど
叫
(
さけ
)
べど
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
も
梨
(
なし
)
の
礫
(
つぶて
)
の
浅間
(
あさま
)
しいお
姿
(
すがた
)
、
089
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
冷
(
つめ
)
たくなつて
居
(
ゐ
)
らつしやる。
090
アヽどうしたらよからう、
091
奥様
(
おくさま
)
もう
一度
(
いちど
)
もの
を
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さい。
092
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
に
呆
(
ほう
)
けてお
出
(
で
)
ましになつた
留守
(
るす
)
に、
093
貴方
(
あなた
)
がこんな
事
(
こと
)
におなりなされては、
094
この
時公
(
ときこう
)
はどうして
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
顔
(
かほ
)
が
合
(
あは
)
されませう、
095
と
涙
(
なみだ
)
に
掻
(
か
)
き
暮
(
く
)
れました』
096
鉄彦
(
かなひこ
)
『ヤア、
097
鉄姫
(
かなひめ
)
は
死
(
し
)
ンだのか』
098
時公
(
ときこう
)
『ハイ、
099
サツパリ
ことき
れて
仕舞
(
しま
)
つて、
100
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
仰有
(
おつしや
)
りませぬ。
101
もうかうなる
上
(
うへ
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
行方
(
ゆくへ
)
を
探
(
さが
)
し、
102
立派
(
りつぱ
)
なお
葬
(
とむらひ
)
をして
上
(
あ
)
げたならば、
103
せめても せめても せめても』
104
鉄彦
(
かなひこ
)
『
何
(
なん
)
だ、
105
ハツキリ
言
(
い
)
はぬか。
106
奥
(
おく
)
は
真実
(
ほんたう
)
に
死
(
し
)
んだのか』
107
時公
(
ときこう
)
『ハイ、
108
御
(
お
)
帰幽
(
かくれ
)
になりました。
109
そこで
奥様
(
おくさま
)
が「オイ
時公
(
ときこう
)
、
110
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
でない。
111
早
(
はや
)
く
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ」と
仰有
(
おつしや
)
いました。
112
そこでこの
時公
(
ときこう
)
は「
奥様
(
おくさま
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました」シテコイナと、
113
七分
(
しちぶ
)
三分
(
さんぶ
)
に
尻引
(
しりひ
)
つからげ、
114
襷
(
たすき
)
十文字
(
じふもんじ
)
に
綾
(
あや
)
どりて、
115
後鉢巻
(
うしろはちまき
)
リン
と
締
(
し
)
め、
116
大身
(
おほみ
)
の
槍
(
やり
)
を
提
(
ひつさ
)
げ「ヤアヤア
者
(
もの
)
共
(
ども
)
遠
(
とほ
)
からん
者
(
もの
)
は
音
(
おと
)
にも
聞
(
き
)
け、
117
近
(
ちか
)
くば
寄
(
よ
)
つて
目
(
め
)
にも
見
(
み
)
よ、
118
鉄谷村
(
かなたにむら
)
に
於
(
おい
)
て
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
我
(
わが
)
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
きて
驚
(
おどろ
)
くな。
119
知
(
し
)
る
者
(
もの
)
は
知
(
し
)
る、
120
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
知
(
し
)
らぬ、
121
女
(
をんな
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
一匹
(
いつぴき
)
、
122
時公
(
ときこう
)
さまとは
我
(
わが
)
事
(
こと
)
なるぞ」』
123
鉄彦
(
かなひこ
)
『オイオイ
時公
(
ときこう
)
、
124
貴様
(
きさま
)
何
(
なに
)
云
(
い
)
ふんだ、
125
真面目
(
まじめ
)
に
言
(
い
)
はぬか』
126
時公
(
ときこう
)
『ハイ、
127
あまり
嬉
(
うれ
)
しくて
一寸
(
ちよつと
)
逆上
(
のぼせ
)
ました。
128
奥
(
おく
)
さまが
一旦
(
いつたん
)
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れて
冷
(
つめ
)
たくなつて
仕舞
(
しま
)
つた。
129
何
(
ど
)
うしよう
斯
(
か
)
うしようと
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
へと
大騒動
(
おほさうどう
)
をやつてる
最中
(
さいちう
)
、
130
持
(
も
)
つべきものは
子
(
こ
)
なりけりですな。
131
彼
(
あ
)
の
優
(
やさ
)
しい
清姫
(
きよひめ
)
さまが、
132
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
つて
神琴
(
かみこと
)
とやらを
弾
(
だん
)
ぜられたが
最後
(
さいご
)
、
133
琴
(
こと
)
の
弦
(
つる
)
のやうにたちまち
奥様
(
おくさま
)
がピンピンと
跳
(
は
)
ねかへつて
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
134
殊
(
こと
)
の
外
(
ほか
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
で「オイ
時公
(
ときこう
)
、
135
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
さまを
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ、
136
女
(
をんな
)
計
(
ばか
)
りでは
心細
(
こころぼそ
)
い、
137
人間
(
にんげん
)
は
老少
(
らうせう
)
不定
(
ふぢやう
)
だ。
138
亦
(
また
)
もやこんな
事
(
こと
)
があつては
取返
(
とりかへ
)
しがならぬ。
139
貴様
(
きさま
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
後
(
あと
)
追
(
お
)
ひかけて、
140
事
(
こと
)
の
次第
(
しだい
)
を
細
(
こま
)
やかに
悉
(
ことごと
)
く
申上
(
まをしあ
)
げて、
141
二人
(
ふたり
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に、
142
よく
理由
(
ことわけ
)
を
言
(
い
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
い」と、
143
殊更
(
ことさら
)
の
御
(
お
)
頼
(
たの
)
み、
144
断
(
ことわ
)
る
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
145
一目散
(
いちもくさん
)
に
追
(
お
)
つかけて
来
(
き
)
たので
御座
(
ござ
)
います。
146
若
(
も
)
しやの
事
(
こと
)
でクス
野ケ原
(
のがはら
)
の
大蛇
(
をろち
)
にでも、
147
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
呑
(
の
)
まれて
仕舞
(
しま
)
ふやうな
事
(
こと
)
があつたら、
148
この
時公
(
ときこう
)
は、
149
どうして
奥
(
おく
)
さまに
断
(
ことわ
)
りが
云
(
い
)
はれませうか』
150
鉄彦
(
かなひこ
)
『
我々
(
われわれ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のために
決心
(
けつしん
)
して、
151
アーメニヤの
悪魔
(
あくま
)
を
天下
(
てんか
)
のために
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
すのだから、
152
それが
済
(
す
)
む
迄
(
まで
)
は、
153
小
(
ちひ
)
さい
一家
(
いつか
)
の
事
(
こと
)
にかかはつて
居
(
を
)
られない。
154
特
(
とく
)
に
尊
(
たふと
)
い
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
だ。
155
貴様
(
きさま
)
怖
(
こは
)
ければ
帰
(
かへ
)
つてもよいから、
156
俺
(
おれ
)
は
仮令
(
たとへ
)
大蛇
(
をろち
)
に
呑
(
の
)
まれたつて
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
が
済
(
す
)
む
迄
(
まで
)
は、
157
決
(
けつ
)
して、
158
決
(
けつ
)
して
帰
(
かへ
)
らないから
奥
(
おく
)
にさう
言
(
い
)
つて
言伝
(
ことづけ
)
をして
呉
(
く
)
れ』
159
時公
(
ときこう
)
『ヤア
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
160
貴方
(
あなた
)
もよく
ことこと
と
仰有
(
おつしや
)
います。
161
別
(
べつ
)
に
大
(
たい
)
した
事
(
こと
)
も
無
(
な
)
いのですから、
162
いつその
事
(
こと
)
大蛇
(
をろち
)
を
退治
(
たいぢ
)
してから
帰
(
かへ
)
らして
貰
(
もら
)
ひませう』
163
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『ホヽヽヽヽヽ、
164
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても、
165
時
(
とき
)
さんの
大風呂敷
(
おほぶろしき
)
、
166
面白
(
おもしろ
)
いわ』
167
時公
(
ときこう
)
『アヽさうだ。
168
この
大風呂敷
(
おほぶろしき
)
で
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
をぐるりと
包
(
つつ
)
んで
棒
(
ぼう
)
の
先
(
さき
)
にポイと
引
(
ひ
)
つかけて、
169
鉄谷村
(
かなたにむら
)
に
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて、
170
サア、
171
これが
時
(
とき
)
さまのお
土産
(
みやげ
)
だ、
172
皆
(
みな
)
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
173
擲
(
なぐ
)
らうと
叩
(
たた
)
かうと、
174
煮
(
た
)
いて
喰
(
くら
)
はうと、
175
だいぢや
ないと
嚇
(
おど
)
かしてやらうかな』
176
鉄彦
(
かなひこ
)
『もう
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
洒落
(
しやれ
)
は
止
(
や
)
めて
呉
(
く
)
れ、
177
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
場合
(
ばあひ
)
だ』
178
時公
(
ときこう
)
『
千騎
(
せんき
)
も
詮索
(
せんさく
)
もいつたものか。
179
一気
(
いつき
)
呵成
(
かせい
)
に
突撃
(
とつげき
)
を
試
(
こころ
)
むるのですなア。
180
サア
東彦
(
あづまひこ
)
さま、
181
高彦
(
たかひこ
)
さま、
182
お
梅
(
うめ
)
さま、
183
私
(
わたくし
)
が
先陣
(
せんぢん
)
を
勤
(
つと
)
めませう。
184
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
、
185
千仭
(
せんじん
)
の
功
(
こう
)
を
一簣
(
いつき
)
に
欠
(
か
)
くやうな
下手
(
へた
)
な
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
しませぬ。
186
宣伝
(
せんでん
)
万歌
(
ばんか
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
で、
187
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
すは
案
(
あん
)
の
内
(
うち
)
、
188
案
(
あん
)
じるより
産
(
う
)
むが
易
(
やす
)
い。
189
サア
行
(
ゆ
)
きませう』
190
一同
(
いちどう
)
は
191
一同
『
面白
(
おもしろ
)
いなア』
192
と
座
(
ざ
)
を
立
(
た
)
つて、
193
時公
(
ときこう
)
の
千切
(
ちぎ
)
れ
千切
(
ちぎ
)
れの
出任
(
でまか
)
せの
宣伝歌
(
せんでんか
)
に
笑
(
わら
)
ひつ
倒
(
こ
)
けつ、
194
新玉原
(
あらたまはら
)
の
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
195
(
大正一一・二・二八
旧二・二
加藤明子
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