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第61巻(子の巻)
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第11巻(戌の巻)
言霊反
凡例
信天翁(二)
総説歌
第1篇 長駆進撃
01 クス野ケ原
〔468〕
02 一目お化
〔469〕
03 死生観
〔470〕
04 梅の花
〔471〕
05 大風呂敷
〔472〕
06 奇の都
〔473〕
07 露の宿
〔474〕
第2篇 意気揚々
08 明志丸
〔475〕
09 虎猫
〔476〕
10 立聞
〔477〕
11 表教
〔478〕
12 松と梅
〔479〕
13 転腹
〔480〕
14 鏡丸
〔481〕
第3篇 言霊解
15 大気津姫の段(一)
〔482〕
16 大気津姫の段(二)
〔483〕
17 大気津姫の段(三)
〔484〕
第4篇 満目荒寥
18 琵琶の湖
〔485〕
19 汐干丸
〔486〕
20 醜の窟
〔487〕
21 俄改心
〔488〕
22 征矢の雨
〔489〕
23 保食神
〔490〕
第5篇 乾坤清明
24 顕国宮
〔491〕
25 巫の舞
〔492〕
26 橘の舞
〔493〕
27 太玉松
〔494〕
28 二夫婦
〔495〕
29 千秋楽
〔496〕
余白歌
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> 第1篇 長駆進撃 > 第7章 露の宿
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明志丸 >>>
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第七章
露
(
つゆ
)
の
宿
(
やど
)
〔四七四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
篇:
第1篇 長駆進撃
よみ(新仮名遣い):
ちょうくしんげき
章:
第7章 露の宿
よみ(新仮名遣い):
つゆのやど
通し章番号:
474
口述日:
1922(大正11)年02月28日(旧02月02日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行は新玉原を湖に向かって進んでいった。日も暮れてきたので、森の中で一夜の宿を取ることになった。
一行は神言を奏上し、宣伝歌を歌って眠りについた。そこへ付近の村人がやってきて、宣伝使たちの様子を伺っている。三五教の宣伝使を見つけたら捕えようと、待ち構えていたのであった。
男たちがどうやって捕えようか相談をしているときに、梅ケ香姫は目を覚まし、幽霊の振りをして男たちを追い払った。梅ケ香姫を一同を起こした。
すると向こうのほうから数十の松明がやってくるのが見える。群集は遠巻きに恐々と宣伝使たちの方にやってきた。群衆の中から、酒に酔った風の男が一人、宣伝使の前に現れた。
この男、鴨公は最初は威勢のいいことを言っていたが、やがて恐れをなして腰が抜けてへたってしまった。群集の中からさらに、鉄棒を携えた男が現れ、高彦、東彦に打ってかかった。
高彦、東彦は鉄棒をよけながら霊をかけると、鉄棒は葱のようにやわらかくなってしまった。逃げようとする男・勝公に対して、東彦の宣伝使は霊縛をかけた。村人たちは驚いて、てんでに逃げてしまった。
宣伝使たちはゆうゆうと西へ進んでいった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-08-11 19:37:38
OBC :
rm1107
愛善世界社版:
60頁
八幡書店版:
第2輯 535頁
修補版:
校定版:
60頁
普及版:
25頁
初版:
ページ備考:
001
東彦
(
あづまひこの
)
神
(
かみ
)
[
※
石凝姥神の旧名
]
、
002
高彦
(
たかひこの
)
神
(
かみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
003
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
、
004
月
(
つき
)
、
005
雪
(
ゆき
)
、
006
花
(
はな
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
共
(
とも
)
に
一行
(
いつかう
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
新玉原
(
あらたまはら
)
の
枯野
(
かれの
)
を
分
(
わ
)
けつつ
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
口々
(
くちぐち
)
に
歌
(
うた
)
つて、
007
明志
(
あかし
)
の
湖
(
うみ
)
の
方面
(
はうめん
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
008
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
西
(
にし
)
に
舂
(
うすづ
)
いて
夕暮
(
ゆふぐれ
)
告
(
つ
)
ぐる
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
は
仄
(
ほの
)
かに
響
(
ひび
)
いて
来
(
き
)
た。
009
東彦
(
あづまひこ
)
『ヤア
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
を
聞
(
き
)
きました。
010
最早
(
もはや
)
人里
(
ひとざと
)
間近
(
まぢか
)
くなつたと
見
(
み
)
えます。
011
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
日
(
ひ
)
も
漸
(
やうや
)
く
暮
(
くれ
)
かかりましたから、
012
幸
(
さいは
)
ひ
彼方
(
むかう
)
に
見
(
み
)
える
森蔭
(
もりかげ
)
で
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あか
)
しませうか』
013
一同
(
いちどう
)
『さう
致
(
いた
)
しませう』
014
と
森
(
もり
)
を
目当
(
めあて
)
に
疲
(
つか
)
れた
脚
(
あし
)
を
速
(
はや
)
めて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
015
千年
(
ちとせ
)
の
老樹
(
らうじゆ
)
、
016
梢
(
こずゑ
)
の
先
(
さき
)
まで
苔
(
こけ
)
蒸
(
む
)
して
昼
(
ひる
)
尚
(
なほ
)
暗
(
くら
)
き、
017
こんもり
とした
森蔭
(
もりかげ
)
である。
018
東彦
(
あづまひこ
)
『ヤア
月影
(
つきかげ
)
も、
019
星影
(
ほしかげ
)
も
見
(
み
)
えぬ
天然
(
てんねん
)
の
家
(
いへ
)
の
中
(
うち
)
、
020
今宵
(
こよひ
)
は
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
悠乎
(
ゆつくり
)
と
休
(
やす
)
みませう』
021
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
022
例
(
れい
)
の
如
(
ごと
)
く
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
023
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めた。
024
東彦
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
025
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
026
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
027
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
028
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
029
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞直
(
ききなほ
)
せ
030
身
(
み
)
の
過
(
あやまち
)
は
詔
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ
031
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
や
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
032
神
(
かみ
)
の
依
(
よ
)
さしの
宣伝使
(
せんでんし
)
033
クス
野ケ原
(
のがはら
)
を
行
(
ゆ
)
き
過
(
す
)
ぎて
034
漸
(
やうや
)
う
此処
(
ここ
)
に
きた
の
森
(
もり
)
035
神
(
かみ
)
の
稜威
(
みいづ
)
も
高彦
(
たかひこ
)
や
036
梅ケ香
(
うめがか
)
匂
(
にほ
)
ふ
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
037
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
秋月
(
あきづき
)
の
038
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
く
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
039
五六七
(
みろく
)
の
御代
(
みよ
)
を
深雪姫
(
みゆきひめ
)
040
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
かむと
041
天教山
(
てんけうざん
)
の
橘
(
たちばな
)
の
042
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
や
東彦
(
あづまひこ
)
043
世
(
よ
)
は
常闇
(
とこやみ
)
となるとても
044
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りは
明
(
あきら
)
けく
045
空
(
そら
)
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
東彦
(
あづまひこ
)
046
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
彩
(
いろ
)
どりて
047
豊栄
(
とよさか
)
昇
(
のぼ
)
る
朝日子
(
あさひこ
)
の
048
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
まつぶさ
に
049
明志
(
あかし
)
の
湖
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
深
(
ふか
)
く
050
コーカス
山
(
ざん
)
の
峰
(
みね
)
高
(
たか
)
く
051
しこ
の
かうべ
を
照
(
てら
)
しつつ
052
功
(
いさを
)
は
高
(
たか
)
きアーメニヤ
053
荒振
(
あらぶ
)
る
醜
(
しこ
)
のウラル
彦
(
ひこ
)
054
ウラルの
姫
(
ひめ
)
の
荒魂
(
あらみたま
)
055
三五教
(
あななひけう
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
056
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
す
和魂
(
にぎみたま
)
057
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
も
幸魂
(
さちみたま
)
058
悟
(
さとり
)
の
道
(
みち
)
の
奇魂
(
くしみたま
)
059
曲
(
まが
)
を
直日
(
なほひ
)
の
神魂
(
かむみたま
)
060
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
061
醜
(
しこ
)
の
叫
(
さけ
)
びを
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
062
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
月照
(
つきてる
)
の
063
彦
(
ひこ
)
の
命
(
みこと
)
の
治
(
しら
)
す
世
(
よ
)
に
064
大足彦
(
おほだるひこ
)
や
真澄姫
(
ますみひめ
)
065
恵
(
めぐみ
)
は
四方
(
よも
)
に
弘子
(
ひろやす
)
の
066
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
の
現
(
あら
)
はれて
067
この
世
(
よ
)
に
曲
(
まが
)
は
少名彦
(
すくなひこ
)
068
かたき
教
(
をしへ
)
も
竜世姫
(
たつよひめ
)
069
空
(
そら
)
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
言霊
(
ことたま
)
の
070
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
071
百
(
もも
)
の
民草
(
たみくさ
)
純世姫
(
すみよひめ
)
072
豊国姫
(
とよくにひめ
)
の
幸
(
さちは
)
ひて
073
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
074
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
の
奇魂
(
くしみたま
)
075
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
現
(
あら
)
はれて
076
浦安国
(
うらやすくに
)
と
治
(
をさ
)
め
行
(
ゆ
)
く
077
ウラルの
山
(
やま
)
の
曲神
(
まがかみ
)
の
078
八十
(
やそ
)
の
曲津
(
まがつ
)
も
悉
(
ことごと
)
く
079
神
(
かみ
)
の
息吹
(
いぶ
)
きに
吹祓
(
ふきはら
)
ひ
080
祓
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
むる
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
081
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
082
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
083
たとへ
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
084
ウラルの
彦
(
ひこ
)
の
曲業
(
まがわざ
)
を
085
矯直
(
ためなほ
)
さずに
置
(
お
)
くべきや
086
詔
(
の
)
り
直
(
なほ
)
させで
置
(
お
)
くべきや
087
奥
(
おく
)
のわからぬ
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
088
底
(
そこ
)
ひも
知
(
し
)
れぬ
神
(
かみ
)
の
恩
(
おん
)
089
底
(
そこ
)
ひも
知
(
し
)
れぬ
神
(
かみ
)
の
恩
(
おん
)
090
天地
(
てんち
)
に
響
(
ひび
)
く
琵琶
(
びは
)
の
湖
(
うみ
)
091
琵琶
(
びは
)
の
言霊
(
ことたま
)
勇
(
いさ
)
ましく
092
進
(
すす
)
む
吾
(
われ
)
こそ
尊
(
たふと
)
けれ
093
神
(
かみ
)
の
柱
(
はしら
)
ぞ
尊
(
たふと
)
けれ』
094
と
異口
(
いく
)
同音
(
どうおん
)
に
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
つて、
095
蓑
(
みの
)
を
敷
(
し
)
き
二男
(
になん
)
四女
(
しぢよ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
096
やすやすと
眠
(
ねむり
)
に
就
(
つ
)
きぬ。
097
森蔭
(
もりかげ
)
より
現
(
あら
)
はれた
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
098
差足
(
さしあし
)
抜足
(
ぬきあし
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
きた
)
り、
099
寝息
(
ねいき
)
を
考
(
かんが
)
へ、
100
甲
(
かふ
)
『オイ、
101
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も、
102
よく
草臥
(
くたびれ
)
果
(
は
)
てて
潰
(
つぶ
)
れたやうになつてゐやがるワイ。
103
どうぢや
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
にソツと
頸首
(
くびたま
)
に
綱
(
つな
)
をかけて
引張
(
ひつぱ
)
つて
酋長
(
しうちやう
)
さんの
所
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つたら
何
(
ど
)
うだ』
104
乙
(
おつ
)
『
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
105
若
(
も
)
し
慌
(
あわて
)
てウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だつたら、
106
ドテライ
御
(
お
)
目玉
(
めだま
)
を
喰
(
くら
)
はにやならぬ、
107
それより
気
(
き
)
を
落
(
おち
)
つけて
調
(
しら
)
べた
上
(
うへ
)
の
事
(
こと
)
にしようかい』
108
甲
(
かふ
)
『それでも
最前
(
さいぜん
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
を
)
つたが、
109
何
(
ど
)
うやら
節
(
ふし
)
廻
(
まは
)
しが
三五教
(
あななひけう
)
らしかつたぞ。
110
月
(
つき
)
が
照
(
て
)
るとか、
111
曇
(
くも
)
るとか
云
(
い
)
つてゐたぢやないか』
112
丙
(
へい
)
『
定
(
きま
)
つたことだ。
113
今夜
(
こんや
)
の
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
い。
114
照
(
て
)
つたり
曇
(
くも
)
つたりしてゐるぢやないか。
115
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
でなくても、
116
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
も
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
たら、
117
照
(
て
)
るとか、
118
曇
(
くも
)
る
位
(
くらゐ
)
は
知
(
し
)
つとるワイ、
119
貴様
(
きさま
)
そんなことで
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
なぞと
思
(
おも
)
つて
下手
(
へた
)
をやつたら
詰
(
つま
)
らぬぞ』
120
丁
(
てい
)
『マア、
121
八釜敷
(
やかまし
)
う
言
(
い
)
ふことはない。
122
先方
(
むかふ
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
だ。
123
此方
(
こつち
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
、
124
一人
(
ひとり
)
宛
(
づつ
)
掴
(
つか
)
み
合
(
あ
)
ひしてもモー
一人
(
ひとり
)
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
る。
125
ようマア
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
126
衆寡
(
しうくわ
)
敵
(
てき
)
せずと
云
(
い
)
ふことがある』
127
甲
(
かふ
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すんだい。
128
此方
(
こちら
)
は
荒男
(
あらをとこ
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
、
129
先方
(
むかふ
)
は
男
(
をとこ
)
が
二人
(
ふたり
)
に
女
(
をんな
)
が
四
(
よ
)
人
(
にん
)
だ。
130
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
でも
女
(
をんな
)
だけは………』
131
丁
(
てい
)
『
貴様
(
きさま
)
の
力
(
ちから
)
はそんなものだ。
132
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
貴様
(
きさま
)
の
家
(
うち
)
のお
福
(
ふく
)
のやうな
女
(
をんな
)
だと
思
(
おも
)
つたら、
133
的
(
あて
)
が
外
(
はづ
)
れるぞ。
134
男
(
をとこ
)
の
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
は
抓
(
つま
)
んで
放
(
ほか
)
すやうな
力
(
ちから
)
がなくて、
135
どうして
天下
(
てんか
)
を
廻
(
まは
)
ることが
出来
(
でき
)
やうぞ。
136
たとへ
一人
(
ひとり
)
対
(
たい
)
一人
(
ひとり
)
で
組
(
く
)
み
合
(
あ
)
うて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で、
137
先方
(
むかう
)
には
一人
(
ひとり
)
空手
(
あきて
)
があるのだ。
138
其奴
(
そいつ
)
が
一人
(
ひとり
)
残
(
のこ
)
りやがつて
組
(
く
)
み
合
(
あ
)
うとる
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
の
頭
(
あたま
)
をコンコンとやりやがつたら、
139
それこそ
犬
(
いぬ
)
に
噛
(
か
)
まれた
様
(
やう
)
なものだ。
140
それだから
多勢
(
たぜい
)
に
無勢
(
ぶぜい
)
、
141
衆寡
(
しうくわ
)
敵
(
てき
)
せずと
云
(
い
)
ふのだ』
142
甲
(
かふ
)
『アヽ
衆
(
しう
)
か』
143
丁
(
てい
)
『
莫迦
(
ばか
)
にすない。
144
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
云
(
い
)
うて
居
(
を
)
ると、
145
目
(
め
)
をさましやがつたら
大変
(
たいへん
)
だ。
146
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
杢兵衛
(
もくべゑ
)
も
八公
(
やつこう
)
も
吉公
(
きちこう
)
も
源公
(
げんこう
)
も、
147
村中
(
むらぢう
)
の
脛腰
(
すねこし
)
の
立
(
た
)
つ
奴
(
やつ
)
は、
148
皆
(
みな
)
寄
(
よ
)
つて
来
(
き
)
て
遠捲
(
とほまき
)
に
取捲
(
とりま
)
いて
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
に
往生
(
わうじやう
)
さしてやらう』
149
一同
(
いちどう
)
『さうだ、
150
それもよからう。
151
オイ
八公
(
やつこう
)
、
152
貴様
(
きさま
)
一人
(
ひとり
)
ここに
見張
(
みは
)
りをするのだ。
153
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
手分
(
てわけ
)
をして
皆
(
みんな
)
の
奴
(
やつ
)
を
非常
(
ひじやう
)
召集
(
せうしふ
)
だ』
154
丁
(
てい
)
『オイ
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
155
俺
(
おれ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かぬかい。
156
五
(
ご
)
人
(
にん
)
でさへも
危
(
あぶな
)
いのに、
157
一人
(
ひとり
)
居
(
を
)
つて、
158
万一
(
もし
)
中途
(
ちうと
)
に
目
(
め
)
でもさましやがつたら、
159
何
(
ど
)
うするか』
160
甲
(
かふ
)
『
何
(
ど
)
うするも、
161
斯
(
こ
)
うするも、
162
そんな
事
(
こと
)
は
知
(
し
)
らぬワイ。
163
八公
(
やつこう
)
が
八裂
(
やつざ
)
きに
会
(
あ
)
ふ
迄
(
まで
)
のことだ』
164
斯
(
か
)
く
囁
(
ささや
)
く
声
(
こゑ
)
に、
165
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
はフツト
目
(
め
)
をさまし、
166
むくむくと
起上
(
おきあ
)
がり、
167
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『アヽ、
168
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
169
水
(
みづ
)
がありましたら
一杯
(
いつぱい
)
与
(
あた
)
えて
頂戴
(
ちやうだい
)
な』
170
甲
(
かふ
)
『ナニツ、
171
水
(
みづ
)
くれつて。
172
みず
しらずの
俺
(
おれ
)
に
向
(
むか
)
つて
水
(
みづ
)
一杯
(
いつぱい
)
頂戴
(
ちやうだい
)
なぞと、
173
幽霊
(
いうれい
)
か、
174
餓鬼
(
がき
)
のやうに
此奴
(
こいつ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
可笑
(
をか
)
しいぞ。
175
ヤイコラ、
176
幽々
(
いういう
)
霊々
(
れいれい
)
奴
(
め
)
が』
177
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『イーエ、
178
湯
(
ゆ
)
でなくても、
179
水
(
みづ
)
で
結構
(
けつこう
)
でございます。
180
れい
は
後
(
あと
)
で』
181
乙
(
おつ
)
『オイオイ、
182
矢張
(
やつぱ
)
り
幽
(
いう
)
と
霊
(
れい
)
とぢや、
183
水
(
みづ
)
くれと
吐
(
ぬ
)
かす
筈
(
はず
)
ぢや。
184
逃
(
に
)
げろ
逃
(
に
)
げろ。
185
キヤアー』
186
バラバラと
足音
(
あしおと
)
をさせ
乍
(
なが
)
ら、
187
転
(
こ
)
けつ
輾
(
まろ
)
びつ
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
188
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『モシモシ、
189
皆
(
みな
)
さま、
190
折角
(
せつかく
)
御
(
お
)
寝
(
やす
)
みになつてる
所
(
ところ
)
を
御
(
お
)
目
(
め
)
をさまして
済
(
す
)
みませぬが、
191
妙
(
めう
)
なものが
参
(
まゐ
)
りまして、
192
何
(
なん
)
だか
吾々
(
われわれ
)
の
首
(
くび
)
に
縄
(
なは
)
をかけて
引張
(
ひつぱ
)
るとか、
193
下
(
さげ
)
るとか
云
(
い
)
うてゐました。
194
チツト
気
(
き
)
をつけねばなりませぬ』
195
東彦
(
あづまひこ
)
『ナニツ、
196
首
(
くび
)
に
縄
(
なは
)
をかける。
197
莫迦
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
る。
198
我々
(
われわれ
)
を
徳利
(
とつくり
)
と
間違
(
まちが
)
へやがるな』
199
高彦
(
たかひこ
)
『アハヽヽヽ、
200
とつくり
と
見
(
み
)
ないから
間違
(
まちが
)
ふのだ。
201
そんなことは
何
(
ど
)
うでもよい。
202
大分
(
だいぶ
)
に
疲
(
つか
)
れた。
203
吾々
(
われわれ
)
も
今晩
(
こんばん
)
は、
204
とつくり
と
寝
(
ね
)
ようかい』
205
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
『それでも
怪
(
あや
)
しいことを
云
(
い
)
つてゐました。
206
何
(
なん
)
でも
酋長
(
しうちやう
)
に
いふ
とか、
207
れい
を
貰
(
もら
)
はうとか
云
(
い
)
うてゐましたぜ』
208
東彦
(
あづまひこ
)
『そら
大変
(
たいへん
)
だ。
209
彼奴
(
あいつ
)
はウラル
彦
(
ひこ
)
の
目付
(
めつけ
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
210
油断
(
ゆだん
)
は
大敵
(
たいてき
)
だ。
211
サア、
212
月
(
つき
)
、
213
雪
(
ゆき
)
、
214
花
(
はな
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
さまも
起
(
おき
)
なさい
起
(
おき
)
なさい。
215
是
(
これ
)
から
戦闘
(
せんとう
)
準備
(
じゆんび
)
だ』
216
一同
(
いちどう
)
は
眠
(
ねむ
)
りをさまし、
217
身仕度
(
みじたく
)
を
為
(
な
)
し、
218
幽
(
かす
)
かに
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つてゐる。
219
前方
(
ぜんぱう
)
を
見
(
み
)
れば、
220
ワイワイと
人声
(
ひとごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
221
数十
(
すうじふ
)
の
松明
(
たいまつ
)
は
朧夜
(
おぼろよ
)
を
照
(
てら
)
して
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き
乍
(
なが
)
ら
此方
(
こちら
)
に
向
(
むか
)
つて
走
(
はし
)
つて
来
(
く
)
る。
222
東彦
(
あづまひこ
)
『ヤア、
223
捕手
(
とりて
)
だ。
224
皆
(
みな
)
さま、
225
一人
(
ひとり
)
々々
(
ひとり
)
は
面倒
(
めんだう
)
だ。
226
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
を
残
(
のこ
)
らず
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さう。
227
宣伝使
(
せんでんし
)
は
一人旅
(
ひとりたび
)
と
定
(
きま
)
つてゐるのに、
228
妙
(
めう
)
な
拍子
(
ひやうし
)
に
六人
(
ろくにん
)
連
(
づ
)
れになつて、
229
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
叱
(
しか
)
りを
受
(
う
)
けねばよいがと
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
だ。
230
これ
丈
(
だけ
)
沢山
(
たくさん
)
やつて
来
(
く
)
れば、
231
六人前
(
ろくにんまへ
)
の
仕事
(
しごと
)
には
沢山
(
たくさん
)
だ。
232
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
すことにしませうかねー。
233
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何
(
なに
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
るか
分
(
わか
)
らぬから、
234
気
(
き
)
をつけねばなりませぬ。
235
女
(
をんな
)
の
方
(
かた
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
さまは、
236
吾々
(
われわれ
)
の
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
に
屈
(
かが
)
んで
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひなさい。
237
二人
(
ふたり
)
は
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
大声
(
おほごゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
つてやりませう』
238
群衆
(
ぐんしう
)
はチクチクと
怖
(
こは
)
さうに
松明
(
たいまつ
)
を
振
(
ふ
)
り
翳
(
かざ
)
して、
239
森
(
もり
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
240
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
より
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
241
片肌
(
かたはだ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
242
稍
(
やや
)
酒気
(
しゆき
)
を
帯
(
お
)
び
乍
(
なが
)
ら
彼方
(
あちら
)
へヒヨロヒヨロ、
243
此方
(
こちら
)
へヒヨロヒヨロ、
244
千鳥足
(
ちどりあし
)
危
(
あやふ
)
く
杖
(
つゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
245
つかつかと
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれた。
246
男
(
をとこ
)
(鴨公)
『ヤイ
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
だい。
247
セヽヽ
宣伝使
(
せんでんし
)
だろ。
248
ここはウラル
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
領分
(
りやうぶん
)
だぞ。
249
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
とか
云
(
い
)
ひやがつて、
250
生命
(
いのち
)
知
(
し
)
らず
奴
(
め
)
が』
251
東彦
(
あづまひこ
)
『ヤア
貴方
(
あなた
)
は
此
(
この
)
里
(
さと
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
と
見
(
み
)
えますが、
252
我々
(
われわれ
)
は
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
の
通
(
とほ
)
り
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
です』
253
男
(
をとこ
)
(鴨公)
『コラ、
254
俺
(
おれ
)
は
斯
(
こ
)
う
見
(
み
)
えても
年寄
(
としよ
)
りぢやないぞ。
255
貴様
(
きさま
)
のやうな
強
(
つよ
)
さうな
面
(
つら
)
をしよつても、
256
いつかないつかな
驚
(
おどろ
)
くやうな
爺
(
ぢい
)
さまドツコイ
兄
(
にい
)
さまだないわ。
257
サア、
258
れい
か、
259
幽
(
いう
)
か、
260
正体
(
しやうまつ
)
か
白状
(
はくじやう
)
せい』
261
東彦
(
あづまひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
現界
(
げんかい
)
、
262
神界
(
しんかい
)
、
263
幽界
(
いうかい
)
の
霊
(
れい
)
に
対
(
たい
)
して』
264
男
(
をとこ
)
(鴨公)
『ナニツ、
265
幽界
(
いうかい
)
の、
266
霊
(
れい
)
のつて
矢張
(
やつぱ
)
り
怪体
(
けたい
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
267
オイオイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
268
幽界
(
いうかい
)
だ
霊界
(
れいかい
)
だ。
269
何
(
なに
)
を
怖
(
こは
)
さうにしてやがるのだい。
270
早
(
はや
)
う
松明
(
たいまつ
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
んかい。
271
化物
(
ばけもの
)
は
火
(
ひ
)
を
つき
出
(
だ
)
したら
消
(
き
)
えると
云
(
い
)
ふことだ』
272
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
より
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
273
松明
(
たいまつ
)
を
持
(
も
)
つた
儘
(
まま
)
、
274
バタバタと
男
(
をとこ
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
275
二三人の男
『オイ、
276
鴨
(
かも
)
、
277
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
云
(
い
)
つてゐやがるのだ。
278
幽霊
(
いうれい
)
でも
何
(
なん
)
でもないわ。
279
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
280
貴様
(
きさま
)
日頃
(
ひごろ
)
の
業託
(
ごふたく
)
に
似
(
に
)
ず、
281
其
(
そ
)
の
腰付
(
こしつき
)
は
何
(
なん
)
だ。
282
逃
(
に
)
げ
腰
(
ごし
)
になりやがつて
尻
(
しり
)
を
一町
(
いつちやう
)
程
(
ほど
)
も、
283
後方
(
こうはう
)
へ
突出
(
つきだ
)
しやがつて、
284
其
(
そ
)
のざまつたら、
285
ないぢやないか。
286
ヤアヤア
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
287
何人
(
なんにん
)
居
(
を
)
るか
知
(
し
)
らねども、
288
どうせ
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
な
奴
(
やつ
)
ぢやあるまい。
289
尋常
(
じんじやう
)
に
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
せ』
290
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
一度
(
いちど
)
に、
291
四人
『ホヽヽ、
292
可笑
(
をか
)
しいわ』
293
鴨公
(
かもこう
)
『ヤアツ、
294
ソヽヽそれ
見
(
み
)
い。
295
ホヽヽほうぢや。
296
オイオイ
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
ばかり
逃
(
に
)
げて
年寄
(
としより
)
を
一人
(
ひとり
)
ほつとく
のか』
297
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
『エイ
八釜敷
(
やかまし
)
いワイ。
298
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
どころか、
299
捨
(
す
)
てとけ、
300
放
(
ほつ
)
とけだ』
301
鴨公
(
かもこう
)
『ヤイ、
302
待
(
ま
)
たぬか
待
(
ま
)
たぬか』
303
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
悠々
(
いういう
)
として
鴨公
(
かもこう
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれた。
304
鴨公
(
かもこう
)
『コヽヽこら
幽霊
(
いうれい
)
のバヽ
化物
(
ばけもの
)
奴
(
め
)
が、
305
俺
(
おれ
)
を
かもう
と
思
(
おも
)
つても、
306
さうは
行
(
ゆ
)
かぬぞ。
307
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
は
鴨
(
かも
)
さまだ。
308
かもうてくれるな。
309
ソヽヽそれより
噛
(
か
)
みたければ、
310
彼方
(
あつち
)
に
甘
(
うま
)
い
奴
(
やつ
)
が、
311
何程
(
なんぼ
)
でも
居
(
を
)
るワイ』
312
高彦
(
たかひこ
)
『ヤア
鴨
(
かも
)
さまとやら、
313
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さるな。
314
我々
(
われわれ
)
は
化物
(
ばけもの
)
でも、
315
何
(
なん
)
でもない。
316
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
317
皆
(
みな
)
の
方
(
かた
)
を
此処
(
ここ
)
へ
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
318
我々
(
われわれ
)
たちが
結構
(
けつこう
)
な
話
(
はなし
)
を
聴
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げよう、
319
盲
(
めくら
)
は
目
(
め
)
が
開
(
あ
)
き、
320
聾
(
つんぼ
)
は
耳
(
みみ
)
が
聞
(
きこ
)
え、
321
腰
(
こし
)
の
抜
(
ぬ
)
けた
者
(
もの
)
は
腰
(
こし
)
が
立
(
た
)
ち、
322
躄
(
ゐざり
)
は
歩
(
ある
)
く、
323
それはそれは
結構
(
けつこう
)
な
教
(
をしへ
)
だ』
324
鴨公
(
かもこう
)
『ヤイヤイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
325
此奴
(
こいつ
)
はヤヽヽ
矢張
(
やつぱ
)
り
化物
(
ばけもの
)
だ。
326
盲
(
めくら
)
が
目
(
め
)
が
開
(
あ
)
くといひ、
327
躄
(
ゐざり
)
が
立
(
た
)
つと
云
(
い
)
ひくさる。
328
躄
(
ゐざり
)
が
立
(
た
)
つても
俺
(
おれ
)
の
腰
(
こし
)
は
立
(
た
)
たぬ。
329
ヤイヤイ
噛
(
か
)
まれぬうちに
助
(
たす
)
けぬかい
助
(
たす
)
けぬかい』
330
宣伝使
(
せんでんし
)
一同
(
いちどう
)
『アハヽヽヽ、
331
オホヽヽヽ』
332
又
(
また
)
もや
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
より
頑丈
(
ぐわんぢやう
)
な
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
333
鉄棒
(
かなぼう
)
を
携
(
たづさ
)
へ
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たり、
334
男
(
をとこ
)
(勝公)
『
何
(
なん
)
だ、
335
宣伝使
(
せんでんし
)
とやら、
336
アヽヽホヽヽと
笑
(
わら
)
ひやがつて
貴様
(
きさま
)
こそ
余程
(
よつぽど
)
好
(
い
)
い
阿呆
(
あほう
)
だ。
337
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
、
338
これ
程
(
ほど
)
ウラル
彦
(
ひこ
)
の
目付
(
めつけ
)
が
沢山
(
たくさん
)
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
へ、
339
ウカウカと
出
(
で
)
て
来
(
き
)
やがつて、
340
何
(
なに
)
を
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふのだ。
341
これでも
喰
(
くら
)
へ』
342
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
343
高彦
(
たかひこ
)
の
肩先
(
かたさき
)
目
(
め
)
がけてウンと
打
(
う
)
つた。
344
高彦
(
たかひこ
)
はひらりと
体
(
たい
)
を
躱
(
かは
)
した。
345
又
(
また
)
もや
鉄棒
(
かなぼう
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
水車
(
みづぐるま
)
の
如
(
ごと
)
く
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
してやつて
来
(
く
)
る。
346
東彦
(
あづまひこ
)
、
347
高彦
(
たかひこ
)
は
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
鉄棒
(
かなぼう
)
を
避
(
よ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
348
ウンと
一声
(
いつせい
)
霊
(
れい
)
をかけた。
349
忽
(
たちま
)
ち
鉄棒
(
かなぼう
)
は
葱
(
ねぎ
)
の
如
(
ごと
)
くになつた。
350
其
(
そ
)
の
男
(
をとこ
)
は
無我
(
むが
)
夢中
(
むちう
)
になつて、
351
和
(
やはら
)
かになつた
鉄棒
(
かなぼう
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
してゐる。
352
高彦
(
たかひこ
)
は
地上
(
ちじやう
)
に
安坐
(
あんざ
)
した。
353
男
(
をとこ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
頭上
(
づじやう
)
より
打
(
う
)
ち
下
(
おろ
)
す。
354
男
(
をとこ
)
(勝公)
『ヤア、
355
俺
(
おれ
)
はこの
界隈
(
かいわい
)
に
名
(
な
)
の
響
(
ひび
)
いた
勝
(
かつ
)
さまだ。
356
何時
(
いつ
)
でも
負
(
まけ
)
たことの
無
(
な
)
い、
357
勝
(
か
)
つ
計
(
ばか
)
りだから
勝
(
かつ
)
さまと
云
(
い
)
はれてゐるのだ。
358
それに
此奴
(
こいつ
)
はこの
鉄棒
(
かなぼう
)
をこれだけ
喰
(
くら
)
はしても
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をしてゐやがる。
359
矢張
(
やつぱ
)
り
バ
の
字
(
じ
)
に
ケ
の
字
(
じ
)
だ。
360
何
(
なん
)
ぢや
鉄棒
(
かなぼう
)
が
葱
(
ねぎ
)
のやうになりやがつた』
361
と
云
(
い
)
ひながら
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
さうとする。
362
東彦
(
あづまひこ
)
はウンと
霊縛
(
れいばく
)
を
施
(
ほどこ
)
した。
363
勝公
(
かつこう
)
は
足
(
あし
)
を
踏張
(
ふんば
)
つた
限
(
ぎ
)
り
化石
(
くわせき
)
のやうになつて
了
(
しま
)
つた。
364
東彦
(
あづまひこ
)
『オイ
勝
(
かつ
)
さまとやら、
365
マア
一時
(
ひととき
)
ほど
懲
(
こら
)
して
縛
(
しば
)
つて
置
(
お
)
かう、
366
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
此処
(
ここ
)
にさうして
居
(
を
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
367
我々
(
われわれ
)
はこんな
八釜敷
(
やかまし
)
い
所
(
ところ
)
に
安眠
(
あんみん
)
は
出来
(
でき
)
ないから、
368
宿換
(
やどがへ
)
をする。
369
お
前
(
まへ
)
が
来
(
く
)
ると
面倒
(
めんだう
)
だから
硬
(
かた
)
めて
置
(
お
)
く。
370
マア
御
(
ご
)
ゆるりと、
371
左様
(
さやう
)
なら』
372
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
373
一行
(
いつかう
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひつつ
又
(
また
)
もや
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
374
数多
(
あまた
)
の
村人
(
むらびと
)
は
勝公
(
かつこう
)
の
霊縛
(
れいばく
)
されしに
驚
(
おどろ
)
いて、
375
各自
(
てんで
)
に
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せ
固
(
かた
)
く
戸
(
と
)
を
鎖
(
とざ
)
し
家々
(
いへいへ
)
の
火
(
ひ
)
を
消
(
け
)
し
小
(
ちひ
)
さくなつて
慄
(
ふる
)
ひゐたり。
376
六人
『
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
にと
馳
(
か
)
けついて
377
一行
(
いつかう
)
ここに
眠
(
ねむ
)
る
時
(
とき
)
378
ひそびそ
聞
(
きこ
)
ゆる
人声
(
ひとごゑ
)
に
379
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は
目
(
め
)
をさまし
380
水
(
みづ
)
をくれよと
おとなへ
ば
381
怖
(
おぢ
)
けきつたる
里人
(
さとびと
)
は
382
幽
(
いう
)
ぢや
霊
(
れい
)
ぢやと
口々
(
くちぐち
)
に
383
走
(
はし
)
つて
何処
(
どこ
)
へか
身
(
み
)
を
匿
(
かく
)
す
384
暫
(
しばら
)
くありて
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
385
眼
(
まなこ
)
をあげて
眺
(
なが
)
むれば
386
提燈
(
ちやうちん
)
松明
(
たいまつ
)
ここ
彼処
(
かしこ
)
387
腰
(
こし
)
の
曲
(
まが
)
つた
老爺
(
おやぢ
)
さま
388
酒
(
さけ
)
の
機嫌
(
きげん
)
で
我
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
389
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
く
390
又
(
また
)
もや
一人
(
ひとり
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
391
負
(
ま
)
けぬ
嫌
(
きら
)
ひの
勝
(
かつ
)
さまが
392
鉄棒
(
かなぼう
)
打振
(
うちふ
)
り
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る
393
鎮魂
(
みたましづめ
)
の
神術
(
かむわざ
)
を
394
行
(
おこな
)
ひ
見
(
み
)
れば
鉄棒
(
かなぼう
)
は
395
葱
(
ねぎ
)
の
如
(
ごと
)
くに
柔
(
やはら
)
かく
396
打
(
う
)
てど
打
(
う
)
てども
応
(
こた
)
へぬに
397
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
して
吾々
(
われわれ
)
を
398
魔性
(
ましやう
)
の
者
(
もの
)
と
見誤
(
みあやま
)
り
399
恐
(
おそ
)
れて
逃
(
に
)
げむとする
時
(
とき
)
に
400
一寸
(
ちよつと
)
霊
(
れい
)
をばかけてやる
401
忽
(
たちま
)
ち
化石
(
くわせき
)
のやうになり
402
脚
(
あし
)
を
またげた
その
儘
(
まま
)
に
403
立
(
た
)
つて
二
(
ふた
)
つの
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
を
404
きよろきよろ
見廻
(
みまは
)
す
面白
(
おもしろ
)
さ
405
あゝ
勝
(
かつ
)
さまよ
勝
(
かつ
)
さまよ
406
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
き
明
(
あきら
)
かな
407
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
目
(
め
)
をさませ
408
固
(
かた
)
き
心
(
こころ
)
を
打解
(
うちと
)
けて
409
心
(
こころ
)
を
和
(
やはら
)
げ
気
(
き
)
を
和
(
なご
)
め
410
世人
(
よびと
)
に
清
(
きよ
)
く
交
(
まじ
)
はれよ
411
汝
(
なんぢ
)
の
心
(
こころ
)
柔
(
やはら
)
がば
412
体
(
からだ
)
も
共
(
とも
)
に
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
413
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
かへ
るらむ
414
あゝ
勝
(
かつ
)
さまよ
勝
(
かつ
)
さまよ
415
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
416
夢
(
ゆめ
)
にも
忘
(
わす
)
れ
給
(
たま
)
ふまじ
417
吾
(
われ
)
は
是
(
これ
)
より
海山
(
うみやま
)
を
418
越
(
こ
)
えて
闇夜
(
やみよ
)
を
明志湖
(
あかしうみ
)
419
明
(
あか
)
し
暗
(
くら
)
しを
立別
(
たてわ
)
ける
420
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
421
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
』
422
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
423
悠々
(
いういう
)
として
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
りにける。
424
(
大正一一・二・二八
旧二・二
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