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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第12巻(亥の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 天岩戸開(一)
01 正神邪霊
〔497〕
02 直会宴
〔498〕
03 蚊取別
〔499〕
04 初蚊斧
〔500〕
05 初貫徹
〔501〕
06 招待
〔502〕
07 覚醒
〔503〕
第2篇 天岩戸開(二)
08 思出の歌
〔504〕
09 正夢
〔505〕
10 深夜の琴
〔506〕
11 十二支
〔507〕
12 化身
〔508〕
13 秋月滝
〔509〕
14 大蛇ケ原
〔510〕
15 宣直し
〔511〕
16 国武丸
〔512〕
第3篇 天岩戸開(三)
17 雲の戸開
〔513〕
18 水牛
〔514〕
19 呉の海原
〔515〕
20 救ひ舟
〔516〕
21 立花島
〔517〕
22 一島攻撃
〔518〕
23 短兵急
〔519〕
24 言霊の徳
〔520〕
25 琴平丸
〔521〕
26 秋月皎々
〔522〕
27 航空船
〔523〕
第4篇 古事記略解
28 三柱の貴子
〔524〕
29 子生の誓
〔525〕
30 天の岩戸
〔526〕
余白歌
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第二章
直会宴
(
なほらひえん
)
〔四九八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
篇:
第1篇 天岩戸開(一)
よみ(新仮名遣い):
あまのいわとびらき(一)
章:
第2章 直会宴
よみ(新仮名遣い):
なおらいえん
通し章番号:
498
口述日:
1922(大正11)年03月06日(旧02月08日)
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
磐楠彦の三人の息子・高光彦、玉光彦、国光彦は、筑紫島に渡り、イホの都に宣伝歌を歌いながらやって来た。
三人はとある森林にやってきて、野宿に一夜の宿を取った。そこには小さな国魂神の祠があった。夜中ごろ、大勢の人が祠にやってくる物音がした。兄弟は目を覚まし、耳を傾けた。
一人の男が代表して神酒を献じ、何事か祈りを捧げた。続いて直会の宴になり、人々のざわめきが聞こえた。
兄弟たちが人々の話を窺っていると、天候不順で不作の村では、村人たちが酋長や長者の春公に不満を持ち、財産を開放するように要求していた。酋長や春公は、蓄えはまさかのときの備えであって、ここは耐えて生活をなんとかつないで凌ぐ時機だと説得している。
村人たちはほとんどがウラル教だったが、酋長と春公は三五教であることを自ら明かしていた。
村人の初公は、ついに強硬手段に出て、人々を率いて酋長と春公に襲い掛かった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-11 23:01:23
OBC :
rm1202
愛善世界社版:
14頁
八幡書店版:
第2輯 630頁
修補版:
校定版:
14頁
普及版:
5頁
初版:
ページ備考:
001
千歳
(
ちとせ
)
の
老松
(
らうしよう
)
雲表
(
うんぺう
)
に
002
聳
(
そび
)
えて
高
(
たか
)
き
万寿山
(
まんじゆざん
)
003
堅磐
(
かきは
)
常盤
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
の
世
(
よ
)
を
004
知
(
しら
)
す
磐樟彦
(
いはくすひこ
)
の
神
(
かみ
)
005
花
(
はな
)
は
紅
(
くれなゐ
)
葉
(
は
)
は
緑
(
みどり
)
006
花
(
はな
)
の
都
(
みやこ
)
の
緑
(
みどり
)
の
流
(
なが
)
れ
007
フサの
国
(
くに
)
をば
後
(
あと
)
にして
008
聖地
(
せいち
)
を
越
(
こ
)
えて
茲
(
ここ
)
に
兄弟
(
きやうだい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
009
住江
(
すみのえ
)
の
国
(
くに
)
を
跋渉
(
ばつせふ
)
し
010
イホの
都
(
みやこ
)
ものり
越
(
こ
)
えて
011
愈
(
いよいよ
)
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
に
着
(
つ
)
く
012
心
(
こころ
)
つくしの
益良男
(
ますらを
)
が
013
純世
(
すみよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
鎮
(
しづ
)
まりし
014
其
(
その
)
国魂
(
くにたま
)
を
清
(
きよ
)
めむと
015
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
白瀬川
(
しらせがは
)
016
一
(
ひ
)
二
(
ふ
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つの
滝
(
たき
)
017
水音
(
みなおと
)
高
(
たか
)
き
宣伝歌
(
せんでんか
)
018
歌
(
うた
)
ひ
歌
(
うた
)
ひて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
019
高光彦
(
たかてるひこ
)
、
020
玉光彦
(
たまてるひこ
)
、
021
国光彦
(
くにてるひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
022
イホの
都
(
みやこ
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くのであつた。
023
日
(
ひ
)
は
黄昏
(
たそが
)
れて
長
(
なが
)
き
春日
(
はるひ
)
の
旅
(
たび
)
に
疲
(
つか
)
れたる
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
024
とある
森林
(
しんりん
)
に
蓑
(
みの
)
を
敷
(
し
)
き、
025
露
(
つゆ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ、
026
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かしけり。
027
此処
(
ここ
)
には
小
(
ちひ
)
さき
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
祠
(
ほこら
)
あり。
028
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
に
身
(
み
)
を
横
(
よこ
)
たへ
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
029
夜半
(
よは
)
と
覚
(
おぼ
)
しき
頃
(
ころ
)
大勢
(
おほぜい
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たり。
030
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はこの
声
(
こゑ
)
に
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
031
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
032
其
(
その
)
話
(
はなし
)
を
私
(
ひそ
)
かに
聞
(
き
)
き
居
(
ゐ
)
る。
033
群集
(
ぐんしふ
)
の
中
(
なか
)
より
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
が
選
(
えら
)
ばれたるが、
034
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ
灯火
(
とうくわ
)
を
献
(
けん
)
じ、
035
神酒
(
みき
)
を
捧
(
ささ
)
げ
何事
(
なにごと
)
か
祈願
(
きぐわん
)
を
籠
(
こ
)
め
終
(
をは
)
つて
直会
(
なほらひ
)
の
宴
(
えん
)
に
移
(
うつ
)
りしと
見
(
み
)
え、
036
人々
(
ひとびと
)
の
声
(
こゑ
)
は
刻々
(
こくこく
)
に
高
(
たか
)
くなり、
037
歌
(
うた
)
ふもの、
038
飲
(
の
)
むもの、
039
踊
(
をど
)
るもの、
040
泣
(
な
)
く、
041
笑
(
わら
)
ふ、
042
怒
(
いか
)
る、
043
種々
(
しゆじゆ
)
様々
(
さまざま
)
の
活劇
(
くわつげき
)
が
演
(
えん
)
ぜられつつありける。
044
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
祠
(
ほこら
)
の
蔭
(
かげ
)
より
床
(
ゆか
)
しげに
人々
(
ひとびと
)
の
話
(
はなし
)
を、
045
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
まし、
046
息
(
いき
)
を
殺
(
ころ
)
して
窺
(
うかが
)
ひ
居
(
ゐ
)
る。
047
甲
(
かふ
)
(春公)
『ヨウ、
048
酋長
(
しうちやう
)
さま、
049
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
さまでしたが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何
(
なん
)
と
御
(
お
)
告
(
つ
)
げがありましたか』
050
酋長
(
しうちやう
)
『
有
(
あ
)
つたでもなし、
051
無
(
な
)
かつたでもなし。
052
マアマア
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
が
心
(
こころ
)
を
一
(
ひと
)
つにして
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
弁
(
わきま
)
へ、
053
善
(
ぜん
)
の
方
(
はう
)
へ
進
(
すす
)
むより
仕方
(
しかた
)
がないなア』
054
乙
(
おつ
)
『
膳飽
(
ぜんあく
)
と
云
(
い
)
つたつて、
055
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
に
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
許
(
ばか
)
り
日天
(
につてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
もろくに
見
(
み
)
えず、
056
お
月様
(
つきさま
)
は
曇
(
くも
)
り
勝
(
が
)
ちで
夜
(
よる
)
は
殆
(
ほと
)
ンど
真
(
しん
)
の
闇
(
やみ
)
、
057
昼
(
ひる
)
と
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
が
今
(
いま
)
までの
朧月夜
(
おぼろつきよ
)
の
様
(
やう
)
なものだ。
058
これでは
五穀
(
ごこく
)
も
実
(
みの
)
らず
果物
(
くだもの
)
は
皆
(
みな
)
虫
(
むし
)
が
入
(
い
)
つて
食
(
く
)
へる
様
(
やう
)
になるまでにバタリと
地
(
ち
)
に
落
(
お
)
ちる。
059
病気
(
びやうき
)
は
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
起
(
おこ
)
る。
060
大勢
(
おほぜい
)
の
人間
(
にんげん
)
の
食
(
た
)
べる
米
(
こめ
)
はなし、
061
果物
(
くだもの
)
はなし、
062
どうして
膳
(
ぜん
)
に
飽
(
あ
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るものか』
063
甲
(
かふ
)
(春公)
『オイ、
064
貴様
(
きさま
)
は
間違
(
まちが
)
つてゐるよ。
065
善
(
ぜん
)
と
云
(
い
)
へば
正直
(
しやうぢき
)
な
心
(
こころ
)
を
持
(
も
)
つて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
敬
(
うやま
)
ひ、
066
我
(
わが
)
身
(
み
)
を
捨
(
す
)
てても
人
(
ひと
)
の
為
(
た
)
めになる
事
(
こと
)
をするのだ。
067
悪
(
あく
)
といへばそれの
反対
(
はんたい
)
だよ』
068
乙
(
おつ
)
『そんな
事
(
こと
)
は
三歳児
(
みつご
)
でも
知
(
し
)
つてるワイ。
069
善
(
よ
)
い
事
(
こと
)
をすれば
其
(
その
)
時
(
とき
)
から
気分
(
きぶん
)
が
良
(
よ
)
くなる。
070
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をすれば
何
(
なん
)
となしに
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
い。
071
何物
(
なにもの
)
かに
叱
(
しか
)
られる
様
(
やう
)
な
心持
(
こころも
)
ちになつて
来
(
く
)
る。
072
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
肝腎
(
かんじん
)
の
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
の
食物
(
くひもの
)
がなくて、
073
可愛
(
かあい
)
い
女房
(
にようばう
)
や
子
(
こ
)
が、
074
骨
(
ほね
)
と
皮
(
かは
)
とに
痩衰
(
やせおとろ
)
へ
渇命
(
かつめい
)
に
及
(
およ
)
ばうとして
居
(
ゐ
)
るのに、
075
これを
見乍
(
みなが
)
ら
何
(
ど
)
うして
人
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
処
(
どころ
)
か。
076
どうしてもかうしても
利己主義
(
われよし
)
になるのは
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ぬぢやないか』
077
甲
(
かふ
)
(春公)
『そこを
辛抱
(
しんばう
)
して、
078
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるのだ。
079
それでなければ
善
(
ぜん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬよ』
080
乙
(
おつ
)
『さう
偉
(
えら
)
さうに
理窟
(
りくつ
)
を
云
(
い
)
ふのなら、
081
貴様
(
きさま
)
の
家
(
うち
)
の
倉
(
くら
)
をあけて
町中
(
まちぢう
)
の
者
(
もの
)
に
其
(
その
)
米
(
こめ
)
を
施
(
ほどこ
)
してやつたらどうだい。
082
言
(
い
)
ふべくして
行
(
おこな
)
ふべからざる
善
(
ぜん
)
は
偽善
(
ぎぜん
)
だ。
083
貴様
(
きさま
)
は
飢
(
う
)
ゑた
味
(
あぢ
)
を
知
(
し
)
らぬからそんな
気楽
(
きらく
)
な
理窟
(
りくつ
)
や
大平楽
(
たいへいらく
)
を
並
(
なら
)
べるのだ。
084
どうだ
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とが
解
(
わか
)
つたか』
085
一同
(
いちどう
)
『
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
。
086
初公
(
はつこう
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ。
087
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
通
(
どほ
)
り
善悪
(
ぜんあく
)
を
立別
(
たてわ
)
けて
困
(
こま
)
つた
者
(
もの
)
を
助
(
たす
)
ける
様
(
やう
)
に、
088
春公
(
はるこう
)
さまの
倉
(
くら
)
を
開
(
あ
)
けて
町中
(
まちぢう
)
の
者
(
もの
)
に
善
(
ぜん
)
の
鑑
(
かがみ
)
を
出
(
だ
)
して
貰
(
もら
)
はうかい』
089
春公
(
はるこう
)
『イヤ、
090
俺
(
おれ
)
も
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
を
助
(
たす
)
けてやりたいと
思
(
おも
)
うて、
091
三杯
(
さんばい
)
食
(
く
)
ふ
処
(
ところ
)
は
二杯
(
にはい
)
にして
貯
(
た
)
めてあるのだ。
092
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らこれは
まさか
の
時
(
とき
)
に
助
(
たす
)
ける
為
(
た
)
めだ。
093
未
(
ま
)
だ
俺
(
おれ
)
の
処
(
ところ
)
の
米
(
こめ
)
を
出
(
だ
)
して
町中
(
まちぢう
)
へ
分配
(
ぶんぱい
)
する
時期
(
じき
)
ではない。
094
今
(
いま
)
出
(
だ
)
してやると、
095
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
宜
(
よ
)
い
気
(
き
)
になつて
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
飲
(
の
)
み
食
(
く
)
ひに
耽
(
ふけ
)
り、
096
終
(
しま
)
ひには
喧嘩
(
けんくわ
)
計
(
ばか
)
りする
様
(
やう
)
になつて、
097
お
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
に
冥加
(
みやうが
)
が
悪
(
わる
)
いから、
098
反
(
かへ
)
つて
善
(
ぜん
)
が
悪
(
あく
)
になると
俺
(
おれ
)
も
困
(
こま
)
るから、
099
マアマア
働
(
はたら
)
ける
丈
(
だ
)
けは
働
(
はたら
)
いて、
100
愈
(
いよいよ
)
世界
(
せかい
)
が
真暗
(
まつくら
)
がりになる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
其
(
その
)
時
(
とき
)
こそ、
101
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
相身
(
あひみ
)
互
(
たがひ
)
ぢや。
102
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
勝手
(
かつて
)
に
倉
(
くら
)
をあけて
食
(
く
)
ふ
様
(
やう
)
にする』
103
丙
(
へい
)
『それも
一
(
ひと
)
つの
理窟
(
りくつ
)
だが
持
(
も
)
つとる
奴
(
やつ
)
は
穢
(
きたな
)
いものだ。
104
何
(
なん
)
の
彼
(
か
)
のと
理窟
(
りくつ
)
を
付
(
つ
)
けて
出
(
だ
)
し
惜
(
をし
)
みをするものだ。
105
末
(
すゑ
)
の
百
(
ひやく
)
より
今
(
いま
)
の
五十
(
ごじふ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
もある。
106
先
(
さき
)
になつて
善
(
ぜん
)
をするより
善
(
ぜん
)
は
急
(
いそ
)
げだ。
107
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
倉
(
くら
)
を
開
(
あ
)
け
放
(
はな
)
して
町中
(
まちぢう
)
を
助
(
たす
)
けたら、
108
どれ
丈
(
だ
)
け
春公
(
はるこう
)
さまの
光
(
ひかり
)
が
輝
(
かがや
)
くか
知
(
し
)
れまい。
109
ナア
春
(
はる
)
さま、
110
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
はぬ、
111
人気
(
にんき
)
の
立
(
た
)
つた
時
(
とき
)
にホツ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
すのだぜ。
112
それがお
前
(
まへ
)
の
身
(
み
)
の
為
(
た
)
めだよ』
113
春公
(
はるこう
)
『
皆
(
みな
)
の
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
、
114
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
てくれ。
115
斯
(
こ
)
う
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
余
(
あま
)
りも
日
(
ひ
)
は
照
(
て
)
らず、
116
闇
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
は
続
(
つづ
)
く。
117
山
(
やま
)
の
木
(
き
)
は
枯
(
か
)
れる、
118
毎日
(
まいにち
)
々々
(
まいにち
)
地響
(
ぢひび
)
きはする、
119
病人
(
びやうにん
)
は
沢山
(
たくさん
)
出来
(
でき
)
る、
120
先
(
さき
)
が
案
(
あん
)
じられて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
121
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
は、
122
木
(
き
)
の
葉
(
は
)
でも
根
(
ね
)
でも、
123
草
(
くさ
)
でも
噛
(
か
)
んで
生命
(
いのち
)
を
繋
(
つな
)
いで
置
(
お
)
くのだ。
124
木
(
き
)
の
葉
(
は
)
は
枯
(
か
)
れ、
125
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
何一
(
なにひと
)
つ
食
(
く
)
ふ
物
(
もの
)
がなくなつた
時
(
とき
)
に
初
(
はじ
)
めて
倉
(
くら
)
をあけて、
126
米
(
こめ
)
や
麦
(
むぎ
)
や、
127
粟
(
あは
)
、
128
黍
(
きび
)
、
129
稗
(
ひえ
)
などを
搗
(
つ
)
いて
各自
(
めいめい
)
が
粥
(
かゆ
)
にでもして、
130
世界
(
せかい
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
を
凌
(
しの
)
ぐ
様
(
やう
)
にしなくては
心細
(
こころぼそ
)
いからな』
131
丁
(
てい
)
『
木
(
き
)
を
食
(
く
)
への、
132
草
(
くさ
)
を
食
(
く
)
へのと
余
(
あま
)
り
人間
(
にんげん
)
を
莫迦
(
ばか
)
にして
呉
(
く
)
れるな。
133
虫
(
むし
)
か
牛馬
(
ぎうば
)
か
何
(
な
)
ンぞの
様
(
やう
)
に
人間
(
にんげん
)
が
木
(
き
)
や
草
(
くさ
)
を
食
(
く
)
はれるものなら
誰
(
たれ
)
も
働
(
はたら
)
きはしない。
134
ヘン、
135
余
(
あま
)
り
莫迦
(
ばか
)
にするな』
136
春公
(
はるこう
)
『お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は、
137
難儀
(
なんぎ
)
だ!
困
(
こま
)
る!と
口々
(
くちぐち
)
に
悔
(
くや
)
んで
居
(
ゐ
)
るけれど、
138
毎日
(
まいにち
)
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
み、
139
米
(
こめ
)
が
美味
(
うま
)
い、
140
味
(
あぢ
)
ないと
小言
(
こごと
)
云
(
い
)
つてる
間
(
あひだ
)
は
駄目
(
だめ
)
だよ』
141
初公
(
はつこう
)
『そンな
理窟
(
りくつ
)
は
止
(
や
)
めにして
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
が
大切
(
たいせつ
)
だ。
142
有
(
あ
)
る
者
(
もの
)
は
無
(
な
)
い
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をするし、
143
無
(
な
)
い
者
(
もの
)
は
有
(
あ
)
る
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
をしたい
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
144
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
酋長
(
しうちやう
)
さまに
明瞭
(
はつきり
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
貰
(
もら
)
つて、
145
春公
(
はるこう
)
の
倉
(
くら
)
を
開
(
あ
)
けたが
宜
(
よ
)
いか
開
(
あ
)
けぬがよいか
判断
(
はんだん
)
して
貰
(
もら
)
はう。
146
モシモシ
酋長
(
しうちやう
)
さま、
147
もう
一度
(
いちど
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
右
(
みぎ
)
の
事
(
こと
)
を
伺
(
うかが
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
148
酋長
(
しうちやう
)
『
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
はない。
149
善悪
(
ぜんあく
)
をよく
弁
(
わきま
)
へて
正直
(
しやうぢき
)
にするが
一番
(
いちばん
)
だ』
150
乙
(
おつ
)
『
酋長
(
しうちやう
)
様
(
さま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
ですか、
151
よう
善
(
ぜん
)
とか
悪
(
あく
)
とか
仰有
(
おつしや
)
いますな』
152
酋長
(
しうちやう
)
『さうだ、
153
俺
(
おれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
だ。
154
此
(
こ
)
のイホの
人間
(
にんげん
)
は
八分
(
はちぶ
)
までウラル
教
(
けう
)
だから
秘
(
かく
)
して
居
(
を
)
つたが、
155
もう
斯
(
か
)
うなつては
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
いから、
156
明瞭
(
はつきり
)
と
三五教
(
あななひけう
)
だと
言明
(
げんめい
)
して
置
(
お
)
く。
157
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
ウラル
教
(
けう
)
に
呆
(
はう
)
けて
仕事
(
しごと
)
もせずに
酒
(
さけ
)
計
(
ばか
)
り
飲
(
の
)
んで、
158
利己主義
(
われよし
)
を
行
(
や
)
つて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
曇
(
くも
)
らすものだから、
159
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
は
一面
(
いちめん
)
に
邪気
(
じやき
)
が
発生
(
はつせい
)
し、
160
山
(
やま
)
は
枯
(
か
)
れる
河
(
かは
)
は
干
(
ひ
)
る、
161
五穀
(
ごこく
)
は
実
(
みの
)
らず
果物
(
くだもの
)
は
熟
(
じゆく
)
さず、
162
日月
(
じつげつ
)
の
光
(
ひかり
)
も
黒雲
(
くろくも
)
につつまれて
皆
(
みな
)
見
(
み
)
えぬ
様
(
やう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
になつて
了
(
しま
)
ふたのだ。
163
それでもまだ
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ねば、
164
どんな
事
(
こと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るか
分
(
わか
)
つたものぢやない。
165
ちつとは
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひたい。
166
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
為
(
ため
)
だ。
167
酋長
(
しうちやう
)
は
床
(
とこ
)
の
置物
(
おきもの
)
だとか
云
(
い
)
つて、
168
何時
(
いつ
)
も
俺
(
おれ
)
を
莫迦
(
ばか
)
扱
(
あつか
)
ひして
聞
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れぬものだから、
169
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
吾々
(
われわれ
)
を
戒
(
いまし
)
める
為
(
た
)
めにこんな
常闇
(
とこやみ
)
の
世界
(
せかい
)
を
現
(
あら
)
はしなさつたのだ。
170
もう
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
今
(
いま
)
までの
悪
(
わる
)
い
精神
(
せいしん
)
を
立替
(
たてか
)
へて
善
(
ぜん
)
に
立帰
(
たちかへ
)
りますと
此
(
この
)
神前
(
しんぜん
)
で
誓
(
ちか
)
つてくれ』
171
初公
(
はつこう
)
『ヨシ
分
(
わか
)
つた。
172
酋長
(
しうちやう
)
と
春公
(
はるこう
)
とは
腹
(
はら
)
を
合
(
あは
)
せて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
楯
(
たて
)
に、
173
自分
(
じぶん
)
計
(
ばか
)
り
安楽
(
あんらく
)
に
暮
(
くら
)
して、
174
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
苦
(
くる
)
しむのを
高見
(
たかみ
)
から
見物
(
けんぶつ
)
すると
云
(
い
)
ふ
悪
(
わる
)
い
量見
(
りやうけん
)
だナ。
175
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
176
酋長
(
しうちやう
)
と
春公
(
はるこう
)
の
首
(
くび
)
ツ
玉
(
たま
)
を
抜
(
ぬ
)
くのだ。
177
ヤイヤイ
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて、
178
吠
(
ほえ
)
たり
笑
(
わら
)
つたりして
居
(
を
)
る
場合
(
ばあひ
)
ぢやないぞ。
179
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
一身
(
いつしん
)
上
(
じやう
)
に
関
(
くわん
)
する
大問題
(
だいもんだい
)
だぞ』
180
と
呶鳴
(
どな
)
り
付
(
つ
)
ける。
181
一同
(
いちどう
)
は
初公
(
はつこう
)
の
号令
(
がうれい
)
の
下
(
もと
)
に
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
182
酋長
(
しうちやう
)
と
春公
(
はるこう
)
を
目
(
め
)
がけて
各自
(
てんで
)
に
棍棒
(
こんぼう
)
を
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
183
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
酒
(
さけ
)
の
機嫌
(
きげん
)
で
打
(
う
)
つて
掛
(
かか
)
る。
184
嗚呼
(
ああ
)
この
結果
(
けつくわ
)
は
如何
(
いか
)
に
治
(
をさ
)
まらむとするか。
185
(
大正一一・三・六
旧二・八
藤津久子
録)
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