霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二八章 三柱(みはしら)貴子(みこ)〔五二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第4篇 古事記略解 よみ(新仮名遣い):こじきりゃっかい
章:第28章 三柱の貴子 よみ(新仮名遣い):みはしらのみこ 通し章番号:524
口述日: 口述場所: 筆録者:谷村真友[#講演筆録] 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
伊邪那岐命は霊界の主宰者として、左の目を洗って、天照大御神を生みなされた。また右の目を洗って、月読命を生みなされた。目はもっとも重要な部分であり、宇宙を納める文字通り眼なのである。
天照大御神は、綾部の本部で祭っている神様である。
次に鼻を洗って須佐之男命を生みなされた。鼻は物質の元を意味する。また真ん中の位置を示し、統治を表すのである。
三貴神を得た伊邪那岐命は、喜んで御頸玉を天照大御神にお授けになった。この御頸玉の言霊解は、恒天暦、太陽暦、太陰暦の三つの暦をお授けになった、ということである。
天照大御神は全大宇宙の主宰であり、月読命はそれを助ける補佐の役目を与えられた、ということである。須佐之男命の海原とは、地球を意味している。
したがって、天孫降臨以前は、須佐之男命が地上をしろしめしていたことが、古事記からわかるのである。
しかし地上が混乱し、須佐之男命はたいへんお嘆きになった。神代といえども世が行き詰まって、さまざまなよからぬ事件が起こってきた。今日の状態も、古事記に見られる神代のこの岩戸開き前によく似ている。
伊邪那岐命は、このような状態になってしまったことで、須佐之男命を責められた。これは文武百官が体主霊従に陥り、政党の争いがあるため、須佐之男命がなにほど一柱で努力されても、混乱を治めることができなくなってしまったのである。
そのため、須佐之男命は責任をかぶり、母神・伊邪那美命のまします根の堅洲国(月界)へと帰りたい、と申し出たのである。
伊邪那岐命は、こうなってしまった原因は体主霊従の神々らにあることはわかっているのだが、彼らの眼を覚ますために敢えて、自分の子である須佐之男命を罰して、もって広く神々らを改心させようとしたのであった。
しかし体主霊従に陥った八百万の神々らは、かえって須佐之男命が主宰者として不適格であったと、冷淡な間違った考え方を持っていた。まことに、治めがたい世であったのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-06-12 11:34:25 OBC :rm1228
愛善世界社版:243頁 八幡書店版:第2輯 716頁 修補版: 校定版:259頁 普及版:107頁 初版: ページ備考:
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]神霊界 > 大正9年11月11日号(第131号) > 天の岩戸開〔古事記の真解〕
001 神代(かみよ)太古(むかし)002伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)よりお(うま)(あそ)ばした天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)(さま)003この(かみ)(さま)()大神(おほかみ)(さま)申上(まをしあ)げて、004本部(ほんぶ)綾部(あやべ)()(まつ)りしてあります(ところ)(かみ)(さま)であります。005このへんから申上(まをしあ)げます。
006 伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)
007 『筑紫(つくし)日向(ひむか)(たちばな)小戸(をど)阿波岐(あはぎ)(はら)(おい)禊身(みそぎ)(たま)(とき)008(ひだり)(おん)()(あら)(たま)ひて()りませる(かみ)御名(みな)天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)009(つぎ)(みぎり)(おん)()(あら)(たま)ひて()りませる(かみ)御名(みな)月読(つきよみの)(みこと)
010といふことが()いて御座(ござ)います。011()といふものは吾々(われわれ)肉体(にくたい)から(まを)しますると、012(みぎ)(ひだり)両方(りやうはう)()ちて()りまして(もの)()るといふことの(うへ)(もつと)大切(たいせつ)なものであります(ばか)りか、013()(こころ)(まど)(まを)します(ぐらゐ)重要(ぢうえう)なもので御座(ござ)います。014(ところ)一歩(いつぽ)(すす)んで(かんが)へて()ますと、015(すべ)てこの宇宙間(うちうかん)(かたち)()つて()るものは森羅(しんら)万象(ばんしやう)(のこ)らず()すなはち眼目(がんもく)といふものがなくてはならぬ。016実際(じつさい)(あら)ゆるものに眼目(がんもく)があると()(こと)吾人(ごじん)(つね)(これ)(みと)()るのであります。017姿(すがた)こそ人間(にんげん)のやうな姿(すがた)ではないけれど、018()動物(どうぶつ)(おい)てもこの()をもつて()ります。019禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)草木(さうもく)(たぐひ)(いた)るまで(この)()のないものはありませぬ。020また(ひと)つの文章(ぶんしやう)()みましても、021この(なか)にも(かなら)眼目(がんもく)といふものがあります。022()勅語(ちよくご)(なか)にも()があります。
023 『皇祖(クワウソ)皇宗(クワウソウ)(クニ)(ハジ)ムルコト宏遠(クワウエン)(トク)()ツルコト深厚(シンコウ)ナリ、024(ナンジ)臣民(シンミン)()(チユウ)()(カウ)ニ』
025 これが教育(けういく)勅語(ちよくご)眼目(がんもく)であります。026また戊申(ぼしん)詔書(せうしよ)には、
027 『淬礪(サイレイ)(マコト)(イタ)サバ国運(コクウン)発展(ハツテン)(モト)(チカ)(ココ)()リ』
028 これが(つま)()になつて()る。029その(とほ)(はじ)天地(てんち)をお(つく)りになるに(あた)つても、030この宇宙(うちう)(をさ)める(ため)にはどうしても、031()といふものが必要(ひつえう)であるといふので、032そこで伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)天地(てんち)(しゆ)をお(はじ)めになつたのであります。033すなはち伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)は、034()(てん)(しゆ)をこしらへたい、035この霊界(れいかい)主宰者(しゆさいしや)をこしらへたいと思召(おぼしめ)しになりまして(ひだり)()(あら)(たま)うた、036この(ひだり)()といふのは()であります。037太陽神(たいやうしん)であつて(うへ)である。038(みぎ)()といふのが太陰神(たいいんしん)であつて(した)であります。039言霊(ことたま)天則(てんそく)から(まを)しますと(ひだり)(をとこ)040(みぎ)(をんな)と、041これは(すで)(かみ)(さま)御代(みよ)から()まつた(おきて)である。042(しか)るにこの(ひだり)()(あら)うてお(うま)れになつたのが()大神(おほかみ)043天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)であつて、044(みぎ)()(あら)うてお(うま)れになつたのが月読(つきよみの)(みこと)045さうすると()からお(うま)れになつたのは、046変性(へんじやう)男子(なんし)女子(によし)でありました。047(ひだり)()をお(あら)ひになつて()ぐお(うま)れになつたのが変性(へんじやう)男子(なんし)天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)でありました。048これで(つま)(ひだり)宇宙(うちう)霊界(れいかい)とし、049(みぎ)地球(ちきう)として、050天上(てんじやう)天下(てんか)(きみ)をお()みになつた(わけ)であります。
051 『(つぎ)御鼻(みはな)(あら)(たま)ひしときに()りませる(かみ)御名(みな)建速(たけはや)須佐之男(すさのをの)(みこと)
052 はな(はじ)めに()るの意義(いぎ)(すなは)(はじ)めである。053物質(ぶつしつ)(もと)であります。054(はな)()いて(しか)して(あと)から()(むす)びます。055人間(にんげん)身体(からだ)出来(でき)るにつきましても、056()胎内(たいない)(おい)人間(にんげん)(かたち)出来(でき)(はじ)めは(はな)である。057それから()出来(でき)る。058絵師(ゑし)人間(にんげん)()()きましても、059その輪廓(りんくわく)()くのに(なに)より(さき)(はな)(ゑが)く、060(はな)真中(まんなか)である。061(はな)(さき)()いて(しか)(のち)()()(くち)()いてそこで都合(つがふ)()()出来(でき)るのである。062この(はじ)めて出来(でき)統治(とうぢ)位地(ゐち)にお()ちになるのが須佐之男(すさのをの)(みこと)であります。063(ぞく)(なん)でも(もの)完成(くわんせい)したことを眼鼻(めはな)がついたと(まを)します。064(かみ)(さま)(この)世界(せかい)をお(つく)りになつて、065さうしてそこに(はじ)めて眼鼻(めはな)をおつけになつたのであります。
066 『(この)(とき)伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)(いた)歓喜(よろこば)して()(たま)はく』
067 (いよいよ)天地(てんち)完全(くわんぜん)出来(でき)たから、068(かみ)(さま)非常(ひじやう)にお(よろこ)びになつた。069これまでに(かみ)(さま)随分(ずゐぶん)沢山(たくさん)()()(たち)をお()みになつて()りますが衝立(つきたつ)船戸(ふなど)(かみ)(さま)から十二柱(じふにはしら)ありました。070その(つぎ)三柱(みはしら)(うま)れになつてをるので都合(つがふ)十五柱(じふごはしら)であります。071男神(をとこがみ)(さま)(われ)はかやうに沢山(たくさん)()()むだが、072しかし今度(こんど)(やう)眼鼻(めはな)になる(ところ)()(はじ)めてである。
073(われ)御子(みこ)()みて、074()みの(はて)三柱(みはしら)貴子(うづのみこ)()たり』
075(おほ)せられまして、076やがて、
077(その)御頸珠(みくびたま)(たま)()母由良(もゆら)()りゆらかして』
078 (すなは)ちむかしの勾玉(まがたま)(まを)したやうな、079高貴(かうき)(ひと)(かざ)りとしてかけて()つた頸珠(くびたま)であります。080丁度(ちやうど)(いま)(まを)しますと(だい)勲位章(くんゐしやう)とか、081大綬章(だいじゆしやう)とか、082一等(いつとう)勲章(くんしやう)とか()意味(いみ)の、083曲玉(まがたま)のやうなのを()けて()られたかと(おも)はれます。
084 そこでこの(たま)自分(じぶん)からお()(はづ)しになつて天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)にお(わた)しになつた。085母由良(もゆら)にとりゆらかしてといふことは(なん)でも非常(ひじやう)(よろこ)んで(もの)(わた)すときには、086自然(しぜん)()身体(からだ)()れる。087一面(いちめん)から()へば()つて(わた)す。088(いただ)くときにも(また)()つて(いただ)く、089(いま)()()ふやうなことでは御座(ござ)いませぬけれども、090本当(ほんたう)(うれ)しいときには()うなつて()るのであります。091さて(これ)()りよい音鳴(ねな)りをさせながら天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)(たま)ひまして詔給(のりたま)はく、
092 『()(みこと)高天(たかあま)(はら)()らせ』
093高天原(たかあまはら)主宰(しゆさい)せよと(おふ)せになつて(たま)をお(さづ)けになつたのであります。
094 『かれ(その)御頸珠(みくびのたま)()御倉(みくら)板挙之(たなの)(かみ)(まを)す』
095 ()御倉(みくら)板挙之(たなの)(かみ)といふことは、096言霊学(げんれいがく)(じやう)から()ても、097(かみ)(さま)(はう)(まを)されまする(こよみ)――(この)世界(せかい)には恒天暦(かうてんれき)098太陽暦(たいやうれき)099太陰暦(たいいんれき)()つの(こよみ)(つね)運行(うんかう)循環(じゆんかん)して()るのであります。100で、101(この)御頸珠(みくびたま)をお(さづ)けになつたといふのは、102所謂(いはゆる)御倉(みくら)板挙之(たなの)(かみ)103(すなは)恒天暦(かうてんれき)104太陽暦(たいやうれき)105太陰暦(たいいんれき)をお(さづ)けになつたのであります。
106 『(つぎ)月読(つきよみの)(みこと)詔給(のりたま)はく「()(みこと)(よる)食国(をすくに)()らせ」と事依(ことよ)さし(たま)ひき』
107 (みぎ)()よりお(うま)れになつた月読(つきよみの)(みこと)(よる)主宰(しゆさい)をせよと(あふ)せられた。108()らせといふことは、109大事(だいじ)守護(まも)()(をさ)めよといふ意味(いみ)で、110太陰(たいいん)世界(せかい)主宰(しゆさい)せよと仰有(おつしや)つた。111高天原(たかあまはら)全大(ぜんだい)宇宙(うちう)である。112(よる)食国(おすくに)(ひる)(じう)である。113それで月読(つきよみの)(みこと)はどこまでも天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)(たす)けて宇宙(うちう)経綸(けいりん)(あた)れと、114()()(みことのり)であります。
115 『(つぎ)建速(たけはや)須佐之男(すさのをの)(みこと)詔給(のりたま)はく「()(みこと)海原(うなばら)()らせ」と事依(ことよ)さし(たま)ひき』
116 須佐之男(すさのをの)(みこと)(はな)からお(うま)れになつた(かた)であります。117海原(うなばら)といふのは(この)地球(ちきう)(じやう)のことであります。118地球(ちきう)(りく)三分(さんぶん)(いち)しかありませぬ、119三分(さんぶん)()といふものは(うみ)であります。120地球(ちきう)総称(そうしよう)して大海原(おほうなばら)(まを)すのであります。121()うして伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)(さま)(ふか)いお(かんが)へから夫々(それぞれ)(その)()ろしめす(ところ)を、122各々(おのおの)にお()けになつて、123(なんぢ)高天原(たかあまはら)を、124(なんぢ)(よる)食国(おすくに)を、125(なんぢ)地球(ちきう)(じやう)(すなは)大海原(おほうなばら)()ろしめせと、126()神勅(しんちよく)になつたのであります。127今日(こんにち)天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)三代(さんだい)日子番能(ひこほの)邇々芸(ににぎの)(みこと)が、128どうも(この)(くに)(をさ)まらぬといふので(てん)から大神(おほかみ)神勅(しんちよく)(ほう)じて()降臨(かうりん)になつて、129地球(ちきう)(じやう)をお(をさ)(あそ)ばして、130さうして(わが)皇室(くわうしつ)()先祖(せんぞ)となり、131(その)(のち)万世(ばんせい)一系(いっけい)(この)(くに)をお(をさ)めになつてあるのでありますが、132それより以前(いぜん)()きましては、133古事記(こじき)によりますと須佐之男(すさのをの)(かみ)(この)(くに)知召(しろしめ)されたといふことは(さき)大神(おほかみ)神勅(しんちよく)()ても明白(めいはく)事実(じじつ)であります。
134 『(かれ)各々(おのおの)(よさ)(たま)へる御言(みこと)(まま)に、135()らしめす(うち)に、136(はや)須佐之男(すさのをの)(みこと)137()さし(たま)へる(くに)()らさずて、138八拳髯(やつかひげ)胸前(むなさき)(いた)るまで(なき)いさちき』
139 須佐之男(すさのをの)(みこと)大神(おほかみ)(おほせ)(したが)つて地上(ちじやう)降臨(かうりん)(あそ)ばされた。140地上(ちじやう)(をさ)める()めに、141(くだ)りになりましたけれども、142その(とき)この地上(ちじやう)(みだ)れて()つて、143神代(かみよ)にも丁度(ちやうど)今日(こんにち)のやうな()があつたものと()えます。144今日(こんにち)のやうに政治(せいぢ)であらうが、145宗教(しうけう)であらうが、146教育(けういく)であらうが、147(なに)から(なん)まで一切(いつさい)のものが()(つま)つて(しま)うて、148もう()きも(もど)りも()げも(おろ)しも出来(でき)(やう)になつて()つた。149それで須佐之男(すさのをの)(みこと)(さま)は、150この()(なか)(やす)らけく(たひら)けく(をさ)めて大神(おほかみ)安堵(あんど)させ(たてまつ)(こと)出来(でき)ないから非常(ひじやう)にお(なげ)きになつて、151八拳髯(やつかひげ)胸前(むなさき)(いた)るまで』(なが)(なが)(ひげ)()びて胸前(むなさき)(ところ)まで(さが)つて()るまで()心配(しんぱい)をなすつた。152(ひと)といふものは(ひげ)(こしら)へたり(かみ)(ととの)へたり、153いろいろのことをして、154容貌(ようばう)(ととの)へなくてはならぬけれども、155(この)(くに)(をさ)めようといふ(こと)に、156(あま)()心配(しんぱい)(あそ)ばしたのでありますから、157()らぬ()にこの(ひげ)八拳(やつか)(なが)()びて()つたのであります。
158 『()きいさちき』
159といふのは、160()(なか)一切(いつさい)(ことごと)くのものが、161もうどうしても、162これから(すす)むで()くとか、163(ひら)けて()くとか、164どうしたらよいかといふ方法(はうはふ)がない、165()のつけやうがないといふまでに非常(ひじやう)()(つま)つて(しま)つた状態(じやうたい)を、166(なげ)きになるさまに形容(けいよう)したのであります。
167 『(その)()(たま)(さま)は』
168どういふ工合(ぐあひ)であつたかといふと、
169 『青山(あをやま)枯山(かれやま)なす()()らし』
170 (いま)まで(やま)などの草木(さうもく)青々(あをあを)()(しげ)つて()たのに、171()()(つま)つた(ため)()れて(しま)うた。172()らして(しま)うた。173(やま)がすつかり一変(いつぺん)して枯山(かれやま)となつてしまうた。174これは今日(こんにち)状態(じやうたい)によつく()()るではありませぬか。175(いま)まで(じふ)(ねん)計画(けいくわく)176(ひやく)(ねん)計画(けいくわく)といふやうな(ふう)にいろいろな事業(じげふ)(くはだ)てられた。177何会社(なにくわいしや)()つの、178(あるひ)何事業(なにじげふ)(おこ)されたと、179無茶(むちや)苦茶(くちや)四五(しご)年前(ねんぜん)から本年(ほんねん)(はる)までは(えら)(いきほひ)で、180好景気(かうけいき)謳歌(おうか)して、181青々(あをあを)とした(やま)(ごと)くに有頂天(うちやうてん)になつて()りましたが、182青山(あをやま)がいつまでも天空(てんくう)につかへないが(ごと)くに、183なんぼ()()びたつて(てん)につかへる気遣(きづか)ひのないやうに、184一朝(いつてう)()きつまれば最早(もはや)さう()(いきほひ)はすつくり()れて(しま)ふ。185今年(ことし)(はる)からこの(かた)186(もと)()もなくなつて、187青山(あをやま)枯山(かれやま)になつた。188どうしても()びる方法(はうはふ)もない、189()()えたるが(ごと)有様(ありさま)になつて(しま)つたのであります。
190 『河海(かはうみ)(ことごと)()()しき』
191 (やま)枯山(かれやま)となつたと(おな)じく、192(かは)(うみ)(ことごと)(かわ)いて(しま)うて、193一滴(いつてき)(みづ)もなくなつたといふのであります。194今日(こんにち)()(なか)(たと)へて(まを)しますれば、195郵船(いうせん)会社(くわいしや)とか、196商船(しやうせん)会社(くわいしや)とか(その)()いろいろの海運業(かいうんげふ)追々(おひおひ)仕事(しごと)がなくなつて二進(につち)三進(さつち)()かなくなつた。197すると(この)海河(うみかは)労働(らうどう)仕事(しごと)従事(じうじ)して()るものは、198稼殖(かしよく)(みち)のなくなるのは勿論(もちろん)199稼業(かげふ)(はな)れる、200(しよく)(はな)れるといふことになつて()ると一家(いつか)子供(こども)(いた)るまで、201(ことごと)()()しになる。202最早(もは)()(みち)がないやうになると、203もう乾干(ひぼし)になるより仕様(しやう)がない。204(すべ)(うみ)(かせ)いで()(もの)も、205(かは)従事(じうじ)して()(もの)も、206(その)()一切(いつさい)のことに従事(じうじ)して()(もの)も、207みんな()()しになつて(しま)うたのである。
208 『(これ)(もつ)悪神(あらぶるかみ)(おと)なひ、209狭蠅(さばへ)なす(みな)()き、210(よろづ)(もの)(わざはひ)(ことごと)(おこ)りき』
211 神代(かみよ)(おい)ても()()(つま)つて()れば、212そこにいろいろの不祥(ふしやう)なる事件(じけん)(おこ)つて()たものと()えます。
213 (かしこ)くも明治(めいぢ)天皇(てんわう)陛下(へいか)が、
214 『(コレ)古今(ココン)(ツウ)ジテ(アヤマ)ラズ(コレ)中外(チユウグワイ)(ホドコ)シテ(モト)ラズ』教育勅語の一節
215(あふ)せられましたやうに、216真理(しんり)といふものは(いづ)れの時代(じだい)にも適応(てきおう)するので御座(ござ)います。217(すで)古事記(こじき)明文(めいぶん)にある(ところ)御座(ござ)います。218今日(こんにち)状態(じやうたい)(かんが)へて()れば、219丁度(ちやうど)(この)岩戸(いはと)(びら)(まへ)状態(じやうたい)()()()る。220()がどん(ぞこ)()(つま)つて労働(らうどう)しようにも仕事(しごと)がない、221仕事(しごと)がなければ妻子(さいし)眷族(けんぞく)(やしな)ふことが出来(でき)ない。222生活(せいくわつ)といふことが出来(でき)なくなるとそこで悪神(あらぶるかみ)(おと)なひとなり、223いろいろの騒動(さうだう)(おこ)つて()る、224人間(にんげん)(こころ)(すさ)んで()る。225衣食(いしよく)()つて礼節(れいせつ)()る、226(いま)まで()(たましひ)()つて()つたものも、227だんだん(わる)(たま)(ちから)(おさ)へられて悪化(あくくわ)して(しま)ふ。228()ふか()はぬか、229()ぬか()きるか、230()うて()ぬか()はずに()ぬか、231()()(くる)しい立場(たちば)になりますと、232人心(じんしん)日増(ひま)しに悪化(あくくわ)して()くないことが往々(わうわう)(はじ)まる。233(はなは)だしきは警察(けいさつ)()つて()厄介(やくかい)になつた(はう)(らく)で、234(やし)なつて()れて安全(あんぜん)だといふものが出来(でき)る。235監獄(かんごく)()れば()はして()れる、236金銭(きんせん)はなくても()いといふ具合(ぐあひ)自暴(じばう)自棄(じき)(てき)悪神(あらぶるかみ)(おと)なひが(はじ)まる。237(この)(おと)なひといふのは、238(かみ)(さま)()真意(しんい)(そむ)いた(ところ)の、239いろいろの論説(ろんせつ)()()るといふので、240あちらからも此方(こちら)からも異端(いたん)邪説(じやせつ)(むらが)(おこ)ることであります。241()うした結果(けつくわ)が、242うるさい(ところ)五月蠅(さばへ)のやうにブンブンブンといろいろの(こと)()いて、
243 『(よろづ)(もの)(わざはひ)(ことごと)(おこ)りき』
244 一切(いつさい)のものに災禍(さいくわ)(おこ)つて()る。245外交(ぐわいかう)(うへ)()きましても、246内治(ないぢ)(うへ)()きましても、247商工業(しやうこうげふ)(うへ)にも、248一切(いつさい)万事(ばんじ)249(なに)()にも、250()(なか)のありと(あら)ゆるものに(むか)つて、251みな災禍(さいくわ)(おこ)つて()るのであります。252そこで(てん)から伊邪那岐(いざなぎの)大神(おほかみ)(これ)御覧(ごらん)になつて、
253 『(はや)須佐之男(すさのをの)(みこと)詔給(のりたま)はく』
254仰有(おつしや)るのには、
255 『(なん)とかも、256いましは、257事依(ことよ)させる(くに)(しら)さずて()きいさちる』
258 そなたは、259(この)大海原(おほうなばら)(くに)(をさ)めよと()うてあるのに、260何故(なにゆゑ)それを(をさ)めぬのか、261()(なか)()()難局(なんきよく)(おちい)らせたのか、262()うして(さわ)がしい()(なか)として(しま)うたのか、263大変(たいへん)にお(せめ)になつたのであります。264すると須佐之男(すさのをの)(みこと)は、265(まこと)(あひ)()まぬ(こと)であります。266()(かく)これは(わたくし)(ちから)()らぬからであります。267(わたくし)(わる)いのでありますとお(こた)へになつた。268(しか)()うなつて()ては如何(いか)なる(ひと)()()ても、269(この)時節(じせつ)には(かな)はない。270(をさ)まるときには(をさ)めなくても(をさ)まるが、271(をさ)まらぬときに(これ)(をさ)めるといふ(こと)(むつ)かしいものであります。272(ひと)(さか)んなれば(てん)()ち、273(てん)(さだ)まつて(ひと)(せい)す、274悪運(あくうん)(つよ)(とき)には如何(いか)なる(かみ)もこれを()うも()うもする(こと)出来(でき)ない。275(うしとら)金神(こんじん)(さま)(この)時節(じせつ)(いきほひ)には(かな)はぬと(あふ)せられて、276それで三千(さんぜん)年間(ねんかん)あの()(かく)れて、277今日(こんにち)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)時節(じせつ)()つて、278現在(げんざい)(あら)はれ(てん)大神(おほかみ)(さま)()命令(めいれい)(ほう)じて、279三千(さんぜん)世界(せかい)立替(たてかへ)立直(たてなほ)しをなさらうといふのであります。280大神(おほかみ)(さま)でさへもさう(あふ)せに()るのでありますから、281()して須佐之男(すさのをの)(みこと)大変(たいへん)()(つま)つた地上(ちじやう)(をさ)めようとなさつてもどうして(をさ)まらう(はず)がありませう。282(しか)らば何故(なにゆゑ)須佐之男(すさのをの)(みこと)()一人(ひとり)では(をさ)まらないのであるかと(まを)せば、283それは今日(こんにち)文武(ぶんぶ)百官(ひやくくわん)がありまして、284()政党(せいたう)政派(せいは)(たがひ)(あひ)(あらそ)ひ、285一方(いつぱう)()うすれば一方(いつぱう)苦情(くじやう)()()して(おも)ふやうにならぬ(ごと)(まへ)(まを)しましたやうに(すで)にいろいろの(かみ)(さま)(たち)沢山(たくさん)あつて、286(その)神々(かみがみ)(さま)各自(めいめい)天津(あまつ)(かみ)御心(みこころ)()(ちが)へて、287所謂(いはゆる)体主(たいしゆ)霊従(れいじう)(おちい)つて()られたので、288一人(ひとり)須佐之男(すさのをの)(みこと)がどれ(ほど)(まこと)(みち)(ひら)かうとなすつた(ところ)で、289(さら)(みみ)()れるものがない、290各自(めいめい)勝手(かつて)真似(まね)をなさる。291丁度(ちやうど)強情(がうじやう)(めくら)(つんぼ)との寄合(よりあひ)のやうであります。292そこに千仭(せんじん)(たに)があつても(めくら)顛覆(ひつくりか)へるまでは()らぬ(かほ)をしてをる。293どれ(ほど)(かみなり)()つても(つんぼ)足下(あしもと)()ちるまでは平気(へいき)である。294それに強情(がうじやう)()つて(たれ)(なん)注意(ちゆうい)しても()かない。295神代(かみよ)(ひと)もそのやうに体主(たいしゆ)霊従(れいじう)で、296どうしても(みこと)命令(めいれい)()かなかつた。297それで須佐之男(すさのをの)(みこと)は、298これは()りも(なほ)さず自分(じぶん)責任(せきにん)である、299自分(じぶん)不徳(ふとく)(いた)(ところ)である、300到底(たうてい)自分(じぶん)(ちから)では(およ)ばないのであると、301(みづか)らをお()めになつて、
302 『あは(はは)(くに)303()堅洲国(かたすくに)(まか)らんと(おも)ふが(ゆゑ)()く』
304 (わたし)はもうお(いとま)(いただ)いて、305(はは)(くに)(かへ)らうと(あふ)せられたのであります。306()堅洲国(かたすくに)(まを)すのは母神(ははがみ)伊邪那美(いざなみの)(みこと)がおいでになつてゐる(ところ)であります。307(もつと)もこれまでの()国学者(こくがくしや)(たち)()堅洲国(かたすのくに)といふのは地下(ちか)(くに)であると()つて()りますが、308(しか)一番(いちばん)(この)伊邪那美(いざなみの)(みこと)月読(つきよみの)(みこと)(おな)じく月界(げつかい)()()でになつたのでありますから、309月界(げつかい)()堅洲国(かたすのくに)()つたのであります。310須佐之男(すさのをの)(みこと)自分(じぶん)(ちから)()らないのである、311不徳(ふとく)(いた)(ところ)であるからして(みづか)()()いて、312()堅洲(かたす)(くに)()かうと仰有(おつしや)つて、313一言(いちごん)部下(ぶか)神々(かみがみ)不心得(ふこころえ)や、314(その)(わる)行状(ぎやうじやう)(あふ)せられなかつた。315如何(いか)にも(をとこ)らしい潔白(けつぱく)なお(かた)御座(ござ)います。316(ところ)伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)非常(ひじやう)()立腹(りつぷく)になつた。
317 『(しか)らばみまし(この)(くに)にはな()みそ』
318 (その)(はう)のやうな(この)海原(うなばら)(をさ)める力量(りきりやう)()いものならば、319二度(にど)(この)(くに)()むではならぬ。320勝手(かつて)()堅洲国(かたすくに)()つたがよからう。321一時(いつとき)でも()つてはならぬぞとお(しか)りになつたけれども、322伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)須佐之男(すさのをの)(みこと)心中(しんちう)()くに()()存知(ぞんぢ)である。323自分(じぶん)()がどうして(この)(くに)(をさ)める(こと)出来(でき)ないか、324どうして自分(じぶん)(うづ)()()ふことを(よろづ)神々(かみがみ)()かぬか、325(はら)(そこ)では充分(じゆうぶん)()存知(ぞんぢ)でありますが、326それを彼此(かれこれ)仰有(おつしや)らない。327(こころ)(うち)には千万(せんまん)無量(むりやう)のお(かな)しみを()つて()られまするけれども、328(ほか)(おほ)くの神々(かみがみ)(きず)をつけるといふことは(かんが)(もの)である。329それで須佐之男(すさのをの)(みこと)刑罰(けいばつ)(あた)へて罪人(ざいにん)としたならば、330その()八百万(やほよろづ)(かみ)331これに()いて()(ところ)(かみ)(たち)はそれを()(みな)改心(かいしん)するであらう、332その(わる)かつたことを(さと)るであらうと思召(おぼしめ)して大神(おほかみ)(さま)自分(じぶん)()(ばつ)せられたのでありまして、333普通(ふつう)(もの)出来(でき)(にく)いことで御座(ござ)います。334その広大(くわうだい)なるお(なさけ)(ぶか)御心(みこころ)は、335(まこと)勿体(もつたい)ない次第(しだい)でありませぬか。336(この)須佐之男(すさのをの)(みこと)(つみ)()うたならば、337あれこそ吾々(われわれ)()めに(つみ)せられたのである、338(まこと)()まないことであるから、339吾々(われわれ)()(あらた)めて本当(ほんたう)政治(せいぢ)をしなければならぬ、340改心(かいしん)(はや)(いた)して(みこと)(つみ)(ゆる)されむ(こと)八百万(やほよろづ)神々(かみがみ)(おも)ふであらうと思召(おぼしめ)して伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)(この)処置(しよち)をお()(あそ)ばしたのであるが、341矢張(やつぱり)体主(たいしゆ)霊従(れいじう)(おちい)られた八百万(やほよろづ)(かみ)(たち)容易(ようい)にそれがお(わか)りにならず、342あれは当然(たうぜん)である、343政治(せいぢ)主権(しゆけん)をあんな(もの)(にぎ)つて()つては(くに)(をさ)まらう(はず)がない、344あれが()なくなれば(また)()(かみ)(さま)()るに(ちが)ひない、345(いな)吾々(われわれ)(ちから)充分(じうぶん)()(をさ)めようといふやうな(すこぶ)冷淡(れいたん)間違(まちが)つた(かんが)へを()つて()つたのであります。346(まこと)にこんな()(なか)(をさ)めようとするには並大抵(なみたいてい)(こと)ではないので御座(ござ)います。
347大正九・一〇・一五 講演筆録)
348大正一一・三・五再録 谷村真友録)
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