霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 国武丸(くにたけまる)〔五一二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第2篇 天岩戸開(二) よみ(新仮名遣い):あまのいわとびらき(二)
章:第16章 国武丸 よみ(新仮名遣い):くにたけまる 通し章番号:512
口述日:1922(大正11)年03月10日(旧02月12日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
呉の海を、国武丸が進んで行く。船中の客たちは四方山話にふけっている。甲は世の中の混乱を嘆いて神の存在を疑うが、乙は神様と人間は持ちつ持たれつだから、人間も心をしっかり持たねばならない、と論じる。
また、この呉の海は昔は玉の井の湖で、大自在天配下の鬼神と竜神の戦いの際に、二つに分かれて呉の海と琵琶の湖になったのだ、と語った。人間の悪が栄えたので、竜神たちは海の底の竜宮に姿を隠してしまったのだ、と説く。
そして、人間の鏡が曇っていると、神様が神力を映そうと思っても、映る道がないのだ、と戒める。
話しているうちに、ものすごい風が起こって、国武丸はあわや沈没という状態に陥ってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-12 00:45:34 OBC :rm1216
愛善世界社版:135頁 八幡書店版:第2輯 675頁 修補版: 校定版:142頁 普及版:58頁 初版: ページ備考:
001 (てん)月日(つきひ)(ひかり)なく、002()村雲(むらくも)ふさがりて、003()しき神代(かみよ)(くれ)(うみ)004国武丸(くにたけまる)()()げて水夫(かこ)(あやつ)(かい)(おと)は、005(なみ)蛇紋(じやもん)(えが)きつつ、006コーカス(ざん)(ふもと)()して(すす)()く。
007 (かぜ)()く、008(あぶら)(なが)したやうな(しづ)かな、009(さびし)みのある海面(かいめん)船脚(ふなあし)(おそ)く、010(なみ)()()けて北東(ほくとう)()して(すす)む。011()海上(かいじやう)(ただよ)ふこと旬日(じゆんじつ)012数十(すうじふ)(にん)船客(せんきやく)四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)()るのみ。
013(かふ)()毎日(まいにち)日日(ひにち)(てん)(くも)り、014()()ふに()はれぬ(はな)むしられるやうな臭気(しうき)がして()る。015(わか)(もん)(あたま)までが白髪(しらが)になる。016(とし)()らぬに禿頭(はげあたま)彼方(あちら)にも此方(こちら)にも()ゑて()る。017五穀(ごこく)(みの)らず、018果物(くだもの)(じゆく)せず、019病気(びやうき)(おこ)る、020獅子(しし)や、021(とら)や、022(おほかみ)大蛇(をろち)所々(ところどころ)(あら)はれて(ひと)(がい)する、023(こま)つた()(なか)になつたものだナア。024()うなつて()ると人間(にんげん)(よわ)いものだ。025吾々(われわれ)(すく)(まこと)(かみ)(さま)(はた)して()(なか)()一柱(ひとり)でもあるとすれば、026()んな()(なか)(いち)(にち)(はや)立替(たてか)へて(くだ)さりさうなものだな』
027(おつ)『それや(かみ)(さま)屹度(きつと)()るよ。028(まこと)(かみ)(さま)(ひろ)世界(せかい)(ただ)一柱(ひとはしら)より()いのだ。029何程(なにほど)(えら)(かみ)さまだとて一柱(ひとり)では、030さう(すみ)から(すみ)まで()(まは)りさうなことは()いぢやないか。031(かみ)(さま)一方(いつぱう)(たす)(もつ)()かつしやる(あと)から、032(また)悪魔(あくま)がドンドンと魅入(みい)つて()くのだから仕方(しかた)()い。033各自(めいめい)心得(こころえ)(たま)(みが)くより仕様(しやう)がないわ。034さう(かみ)さまばかりに(もた)れて()つても自分(じぶん)から改心(かいしん)せなくては、035(かみ)(さま)がお(いで)になつても、036アー()んな(けが)れた(やつ)(くづ)(はう)()れてやれと()つて、037屑籠(くづかご)(なか)()()まれて(しま)ふかも()れない。038他力(たりき)信神(しんじん)結構(けつこう)だが、039他力(たりき)(なか)自力(じりき)信神(しんじん)()ければならぬよ』
040(へい)自力(じりき)(たす)かるのなれば(べつ)(かみ)(さま)()くても()いぢやないか』
041(おつ)自力(じりき)(なか)他力(たりき)()り、042他力(たりき)(なか)自力(じりき)()る。043(かみ)(さま)人間(にんげん)とは(もち)(もた)れつ呼吸(いき)(あは)ねば、044()神徳(しんとく)(あら)はれて()ぬのだ。045人間(にんげん)(かみ)(さま)(たす)けられて()(なか)活躍(くわつやく)し、046(かみ)人間(にんげん)(うやま)はれて()神徳(しんとく)(あら)はし(たま)ふのだ。047毎日(まいにち)()(つか)ねて他力(たりき)ばかりを()つて()(ところ)でさう易々(やすやす)(たな)から牡丹餅(ぼたもち)()ちて()(やう)(わけ)には()かない。048人間(にんげん)(つく)()(みち)(つく)し、049(こころ)(つく)し、050()(つく)し、051もう(これ)自分(じぶん)(ちから)(つく)しやうが()いと()(ところ)まで()つたとこで、052(かみ)(さま)(ちから)()へて(くだ)さるのだ。053偸安(とうあん)姑息(こそく)自分(じぶん)(ばか)()べき(こと)もせず(らく)(はう)(らく)(はう)へと、054身勝手(みがつて)なことばかり(かんが)へて()(やつ)に、055(かみ)さまだつてナニ(まも)つて(くだ)さるものか。056これ()()(なか)(くも)つて()たのも、057みんな(かみ)(さま)所行(わざ)ぢやない。058吾々(われわれ)人間(にんげん)心得(こころえ)(わる)いからだ。059(たがひ)(にく)み、060(ねた)み、061(うら)み、062(そし)り、063(いか)り、064(のろ)ひ、065瞋恚(しんい)(ほむら)(もや)して悪魔道(あくまだう)のやうに、066優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)067弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)悪心(あくしん)悪行(あくぎやう)天地(てんち)(つつ)むで、068自然(しぜん)()んな日月(じつげつ)(ひかり)()えぬ暗黒界(あんこくかい)(あら)はれたのだ。069(つま)人間(にんげん)(くち)から()邪気(じやき)()つたのだよ。070()うしても(これ)善言(ぜんげん)美詞(びし)言霊(ことたま)(もつ)直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)()(なほ)天津(あまつ)神言(かみごと)伊吹(いぶ)きに(よつ)て、071この天地(てんち)妖雲(えううん)(はら)(きよ)めねば、072天日(てんじつ)(ひかり)(あふ)ぐことは何時(いつ)までも出来(でき)ぬ。073(あめ)()らず、074(かぜ)()し、075地上(ちじやう)邪気(じやき)蔓延(まんえん)する。076一体(いつたい)(まへ)たちは()世界(せかい)()うなると(おも)つてゐるのか』
077(かふ)()うなるつたつて、078()うも仕方(しかた)()いぢやないか。079一人(ひとり)二人(ふたり)言霊(ことたま)(きよ)くした(ところ)大海(たいかい)一滴(いつてき)080(なん)(やく)()つものか。081(かみ)(さま)でさへも()一柱(ひとり)()(まは)らぬのに、082()して人間(にんげん)分際(ぶんざい)一人(ひとり)や、083半分(はんぶん)084何程(なにほど)(きよ)言霊(ことたま)使(つか)つた(ところ)(なん)(たし)にもなりはせぬぢやないか』
085(おつ)人間(にんげん)(かみ)(さま)容器(いれもの)だ。086(かみ)(さま)人間(にんげん)身体(からだ)(はい)つて(くだ)さらば、087その身魂(みたま)日月(じつげつ)(ごと)(かがや)いて、088()んな暗黒(あんこく)()(なか)でも薩張(さつぱり)すつかりと(きよ)まつて(しま)ふのだが、089(なに)()つても吾々(われわれ)肉体(にくたい)には(しこ)曲津(まがつ)()()んで()るから、090(かみ)(さま)(はい)つて(くだ)さる(すき)()いのだよ。091(いち)(にち)(はや)(こころ)曲津(まがつ)()()して、092真如(しんによ)日月(じつげつ)(こころ)(てん)(かがや)かすやうにならなくては駄目(だめ)だ。093(ちり)(あくた)(たま)つた座敷(ざしき)には、094(たつと)いお(きやく)さんは()ゑることは出来(でき)ない。095マアマア身魂(みたま)掃除(さうぢ)一等(いつとう)だな』
096(かふ)『この(くれ)(うみ)には大変(たいへん)竜神(りうじん)さまが、097この(ごろ)(あら)はれたと()ふことだよ。098その竜神(りうじん)(あら)はれた風評(うわさ)()つた(ころ)から、099()うして天地(てんち)真暗気(まつくろけ)になつたぢやないか』
100(おつ)勿体(もつたい)ないことを()ふな。101この(くれ)(うみ)は、102(むかし)(たま)()(みづうみ)()水晶(すゐしやう)湖水(こすゐ)があつて、103そこに沢山(たくさん)諸善(しよぜん)竜神(りうじん)(さま)がお住居(すまゐ)をしてござつたのだ。104その時代(じだい)(この)(あた)りは世界(せかい)楽土(らくど)()はれた(ところ)であつたが、105その(たま)()(みづうみ)占領(せんりやう)せむとして、106大自在天(だいじざいてん)部下(ぶか)なる牛雲別(うしくもわけ)107蟹雲別(かにくもわけ)()悪神(わるがみ)が、108()めよせ()たり、109竜神(りうじん)さまと鬼神(おにがみ)との(たたか)ひがあつて、110その(とき)(たま)()湖水(こすゐ)(てん)()(あが)り、111(ふた)つに(わか)れて出来(でき)たのがこの(くれ)(うみ)と、112琵琶(びは)(うみ)だよ。113さう()因縁(いんねん)()()(うみ)()うして悪神(あくがみ)さまが住居(すまゐ)()さるものかい。114(あんま)人間(にんげん)悪賢(わるかしこ)うなつて(あく)(さか)んになつたが(ため)に、115地上(ちじやう)諸善神(しよぜんしん)(のこ)らず(てん)(のぼ)られ、116竜神(りうじん)さまは(いづ)れも(うみ)(そこ)117(すなは)竜宮(りうぐう)(そこ)へ、118()(ひそ)(たま)うたのだ。119この地上(ちじやう)には、120(まこと)(かみ)(さま)みんな愛想(あいさう)をつかし見捨(みす)てて(あるひ)(てん)(のぼ)り、121(あるひ)(うみ)(そこ)()らるるやうになつたものだから、122(こは)(もの)()しの悪魔(あくま)横行(わうかう)濶歩(くわつぽ)するやうになつたのだよ』
123(かふ)(かみ)(さま)全能(ぜんのう)ぢやとか、124(あい)だとか()ふぢやないか。125(しん)吾々(われわれ)(あい)(たま)ふならば、126何故(なぜ)飽迄(あくまで)保護(ほご)をして(くだ)さらぬのだ。127()うなつて()ると(かみ)慈愛(じあい)(うたが)はざるを()ぬではないか。128(えう)するに(かみ)()ふものは(うつく)しい、129綺麗(きれい)なばかりで実力(じつりよく)()いものと()える。130(こころ)(きたな)悪魔(あくま)跋扈(ばつこ)()()ねて(てん)()けたり、131(うみ)(そこ)(かく)れるとは、132なんと(かみ)(さま)不甲斐(ふがひ)()いものだナア。133吾々(われわれ)人間(にんげん)でさへも()うして地上(ちじやう)依然(いぜん)辛抱(しんばう)してゐるぢやないか』
134(おつ)莫迦(ばか)()ふな。135(ひと)(さかん)なれば(てん)()ち、136(てん)(さだ)まつて(ひと)(せい)す」と()ふことがある。137何程(なにほど)(かみ)(さま)人間(にんげん)(てら)してやらうと思召(おぼしめ)しても、138(かがみ)(くも)つて()るから(かみ)(さま)()神力(しんりき)(うつ)(みち)()いのだ。139(にご)つた(どろ)(いけ)には(きよ)(つき)(かげ)(うつ)らぬ。140(くも)つた(かがみ)には姿(すがた)(うつ)らない、141(かみ)(さま)清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)142(ひかり)だから()()(きたな)人間(にんげん)には()うつりなさらうと(おも)つてもうつることが出来(でき)ないのだよ』
143(かふ)其処(そこ)(かみ)さまぢやないか。144吾々(われわれ)(たま)(くも)つて()れば、145(なん)とかして勝手(かつて)(みが)いて、146うつればよささうなものぢやないか。147(たま)(みが)け、148(みが)いた(もの)には、149うつつてやらう、150(まも)つてやらう、151(たす)けてやらう、152(みが)けぬ(もの)には、153うつらぬ、154(まも)つてはやらぬ、155(たす)けぬと()ふのでは(べつ)吾々(われわれ)(かは)つたことは()いぢやないか。156吾々(われわれ)でも(いろ)(しろ)い、157(とし)(わか)い、158綺麗(きれい)別嬪(べつぴん)には不知(しらず)不識(しらず)()がうつり、159(こころ)がうつり、160気分(きぶん)がよくなるし、161(きたな)いお多福面(かめづら)(いろ)(くろ)い、162どて南瓜(かぼちや)のやうな(やつ)には、163(なん)となしに心持(こころもち)(わる)くつて、164そよそよと()いて()(かぜ)(いや)()ふやうな()になる。165其処(そこ)人間(にんげん)(こころ)だ。166仕方(しかた)()いが世界(せかい)人民(じんみん)(みな)()()だと仰有(おつしや)(かみ)親心(おやごころ)から()たなれば、167極道(ごくだう)()不具(ふぐ)()は、168(おや)(こころ)としてなほ可愛(かあい)がつて()れさうなものぢやないか。169(これ)(かんが)へると余程(よつぽど)吾々(われわれ)(はう)慈悲心(じひしん)(ふか)いやうだワイ』
170(おつ)『よう理窟(りくつ)()(やつ)だな。171神界(しんかい)(こと)人間界(にんげんかい)理窟(りくつ)(わか)るものかい。172至大(しだい)無外(むぐわい)173至小(しせう)無内(むない)174千変(せんぺん)万化(ばんくわ)(かみ)(さま)()(はたら)き、175そんな人間(にんげん)標準(へうじゆん)としての屁理窟(へりくつ)()つたつて、176(かみ)(さま)大慈(だいじ)大悲(だいひ)大御心(おほみこころ)(わか)るものかい。177各自(めいめい)身魂(みたま)(みが)くが一等(いつとう)だ』
178(かふ)『さうすると()(うみ)にござる竜神(りうじん)さまは、179(ぜん)(かみ)()ふのか。180(ぜん)(かみ)なら一寸(ちよつと)姿(すがた)(あら)はして吾々(われわれ)安心(あんしん)をさして(くだ)さつてもよかりさうなものだのにナア』
181(おつ)何時(なんどき)でも(あら)はして(くだ)さるよ。182()んなことは(かみ)(さま)自由(じいう)自在(じざい)だ。183(しか)(なが)吾々(われわれ)のやうな(むさ)(くる)しい身魂(みたま)人間(にんげん)が、184竜神(りうじん)さまの(あたま)(うへ)()うして(ふね)()つて(けが)して(わた)つて()るのだから、185(なん)とも()れないよ。186マゴマゴすると大変(たいへん)()立腹(りつぷく)()けて荒波(あらなみ)()つて、187(ふね)一緒(いつしよ)竜宮(りうぐう)()きをせにやならぬかも(わか)らぬぞよ』
188(かふ)『たとへ(ふね)ひつくりかへつても、189竜宮(りうぐう)()けるならば結構(けつこう)ぢやないか。190(かみ)(さま)ばかり(きよ)らかな(てん)や、191(うみ)(そこ)(はい)つて地上(ちじやう)人間(にんげん)()んな悪魔(あくま)(なか)()つたらかして()くとは、192ちつと量見(りやうけん)(わか)(かね)る。193竜宮(りうぐう)()つて(もら)つて(おれ)(ひと)(かみ)(さま)談判(だんぱん)をして地上(ちじやう)人間(にんげん)(まも)つて(もら)ふやうにしたいのだ』
194(おつ)何程(なにほど)結構(けつこう)竜宮(りうぐう)()つた(ところ)で、195自分(じぶん)(こころ)(かがみ)(くも)つて()れば、196(うつく)しいことはないわ、197(おに)や、198大蛇(をろち)や、199醜女(しこめ)200探女(さぐめ)四方(しはう)八方(はつぱう)から取囲(とりかこ)むで(くる)しめに()るだけのものだよ。201(こころ)相応(さうおう)(かみ)(さま)(あら)はれ(たま)ふのだ。202そこが千変(せんぺん)万化(ばんくわ)(かみ)()(はたら)きだよ』
203 ()(はな)(をり)しも(にはか)一陣(いちぢん)颶風(ぐふう)(さつ)()(おこ)つて(ふね)をキリキリ(まは)し、204山岳(さんがく)(ごと)(なみ)()数十(すうじふ)(にん)生命(いのち)()せたる国武丸(くにたけまる)は、205(いま)海中(かいちう)(ぼつ)せむとするの光景(くわうけい)とはなりにける。
206大正一一・三・一〇 旧二・一二 外山豊二録)
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