霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
01 橄欖山
〔1630〕
02 宣伝使
〔1631〕
03 聖地夜
〔1632〕
04 訪問客
〔1633〕
05 至聖団
〔1634〕
第2篇 聖地巡拝
06 偶像都
〔1635〕
07 巡礼者
〔1636〕
08 自動車
〔1637〕
09 膝栗毛
〔1638〕
10 追懐念
〔1639〕
第3篇 花笑蝶舞
11 公憤私憤
〔1640〕
12 誘惑
〔1641〕
13 試練
〔1642〕
14 荒武事
〔1643〕
15 大相撲
〔1644〕
16 天消地滅
〔1645〕
第4篇 遠近不二
17 強請
〔1646〕
18 新聞種
〔1647〕
19 祭誤
〔1648〕
20 福命
〔1649〕
21 遍路
〔1650〕
22 妖行
〔1651〕
第5篇 山河異涯
23 暗着
〔1652〕
24 妖蝕
〔1653〕
25 地図面
〔1654〕
26 置去
〔1655〕
27 再転
〔1656〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第64巻上
> 第1篇 日下開山 > 第3章 聖地夜
<<< 宣伝使
(B)
(N)
訪問客 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第三章
聖地夜
(
せいちよ
)
〔一六三二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第1篇 日下開山
よみ(新仮名遣い):
ひのしたかいさん
章:
第3章 聖地夜
よみ(新仮名遣い):
せいちよ
通し章番号:
1632
口述日:
1923(大正12)年07月10日(旧05月27日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
エルサレム市街
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-25 18:10:05
OBC :
rm64a03
愛善世界社版:
37頁
八幡書店版:
第11輯 390頁
修補版:
校定版:
36頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
ブラバーサはエルサレムの
停車場
(
ていしやぢやう
)
でバハーウラーに
袂別
(
けつべつ
)
し、
002
プラツトホームを
出
(
い
)
で、
003
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
街道
(
かいだう
)
を
散歩
(
さんぽ
)
し
初
(
はじ
)
めた。
004
既
(
すで
)
に
黄昏
(
たそがれ
)
近
(
ちか
)
くなつた
近辺
(
きんぺん
)
の
山々
(
やまやま
)
の
背景
(
はいけい
)
を、
005
美
(
うつく
)
しい
夕日
(
ゆふひ
)
が
五色
(
ごしき
)
の
雲
(
くも
)
の
線
(
せん
)
を
曳
(
ひ
)
いて
色彩
(
いろど
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
006
併
(
しか
)
し
何
(
なん
)
となく
寂
(
さび
)
し
気
(
げ
)
な
印象
(
いんしやう
)
が
刻
(
きざ
)
まれて
来
(
く
)
る。
007
シオンの
城
(
しろ
)
を
正面
(
しやうめん
)
に
控
(
ひか
)
へながら、
008
路
(
みち
)
の
両側
(
りやうがは
)
の
畑丘
(
はたをか
)
に
映
(
は
)
えて
居
(
ゐ
)
る
落付
(
おちつ
)
いた
緑色
(
みどりいろ
)
の
葉
(
は
)
が、
009
痛々
(
いたいた
)
しげに
塵埃
(
ぢんあい
)
のために
灰白色
(
くわいはくしよく
)
に
化
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
る
橄欖
(
かんらん
)
の
木
(
き
)
を
懐
(
なつ
)
かしみながら、
010
車馬
(
しやば
)
の
往来
(
わうらい
)
繁
(
しげ
)
き
大通
(
おほどおり
)
をエルサレムの
市街
(
しがい
)
へと
進
(
すす
)
む。
011
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
から『モシモシ』と
呼
(
よ
)
ぶ
婦人
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
える。
012
ブラバーサは
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
013
立止
(
たちとど
)
まつてその
婦人
(
ふじん
)
の
近
(
ちか
)
づくのを
待
(
ま
)
つとはなしに
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
014
見
(
み
)
れば
曼陀羅
(
まんだら
)
模様
(
もよう
)
のある
厚
(
あつ
)
いブエールで
顔
(
かほ
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
覆
(
おほ
)
ふて
居
(
ゐ
)
るユダヤの
婦人
(
ふじん
)
で、
015
死
(
し
)
の
国
(
くに
)
からでも
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
な
気味
(
きみ
)
の
悪
(
わる
)
い
姿
(
すがた
)
であつた。
016
ブラバーサは
月光
(
げつくわう
)
の
下
(
もと
)
に、
017
初
(
はじ
)
めて
此
(
この
)
市中
(
しちう
)
に
於
(
おい
)
て
声
(
こゑ
)
を
掛
(
かけ
)
られたユダヤの
婦人
(
ふじん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
018
ギヨツとしながら
例
(
れい
)
の
丸
(
まる
)
い
眼
(
まなこ
)
を
嫌
(
いや
)
らしく
光
(
ひか
)
らした。
019
マリヤ
『
見
(
み
)
ず
知
(
し
)
らずの
賤
(
いや
)
しき
婦女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
として、
020
尊
(
たふと
)
き
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
を
御
(
お
)
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
め
致
(
いた
)
しまして
済
(
す
)
まないことで
御座
(
ござ
)
いますが、
021
妾
(
わたくし
)
はアメリカンコロニーの
婦女
(
をんな
)
で、
022
マグダラのマリヤと
申
(
まを
)
す
基督
(
キリスト
)
信者
(
しんじや
)
で
御座
(
ござ
)
います。
023
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
摂理
(
せつり
)
に
由
(
よ
)
つて
貴師
(
あなた
)
の
爰
(
ここ
)
に
御
(
お
)
降
(
くだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
を
前知
(
ぜんち
)
し、
024
急
(
いそ
)
いで
聖地
(
せいち
)
の
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
兼
(
か
)
ね、
025
尊
(
たふと
)
き
御教
(
みをしへ
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
く
罷
(
まかり
)
出
(
い
)
でました
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
026
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
怪
(
あや
)
しき
婦女
(
をんな
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬから、
027
何
(
ど
)
うぞ
妾
(
わたし
)
に
聖地
(
せいち
)
の
案内
(
あんない
)
を
命
(
さ
)
せて
下
(
くだ
)
さいませぬか』
028
と
真心
(
まごころ
)
を
面
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はして
頼
(
たの
)
む
様
(
やう
)
に
云
(
い
)
ふ。
029
ブラバーサは
土地
(
とち
)
不案内
(
ふあんない
)
のこの
市中
(
しちう
)
で、
030
思
(
おも
)
はぬ
親切
(
しんせつ
)
な
婦人
(
ふじん
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
打喜
(
うちよろこ
)
びながら、
031
ブラバーサ
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
032
私
(
わたし
)
は
高砂島
(
たかさごじま
)
より
遥々
(
はるばる
)
と
神命
(
しんめい
)
に
由
(
よ
)
つて、
033
聖地
(
せいち
)
へ
参向
(
さんかう
)
のために
来
(
き
)
たものですが、
034
何分
(
なにぶん
)
初
(
はじ
)
めての
事
(
こと
)
ですから
土地
(
とち
)
も
一向
(
いつかう
)
不案内
(
ふあんない
)
の
処
(
ところ
)
へ、
035
貴婦
(
あなた
)
が
案内
(
あんない
)
をして
遣
(
や
)
らふと
仰有
(
おつしや
)
るのは、
036
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあ
)
はせで
御座
(
ござ
)
いませう。
037
併
(
しか
)
し
最早
(
もはや
)
今日
(
こんにち
)
は
夜分
(
やぶん
)
になりましたから、
038
何処
(
どこ
)
かのホテルへ
一泊
(
いつぱく
)
致
(
いた
)
し、
039
明朝
(
みやうてう
)
緩
(
ゆつ
)
くりと
橄欖
(
かんらん
)
登山
(
とざん
)
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
きもので
御座
(
ござ
)
いますが、
040
適当
(
てきたう
)
なホテルを
御
(
お
)
示
(
しめ
)
し
下
(
くだ
)
さいますまいか』
041
マリヤ
『
貴師
(
あなた
)
も
定
(
さだ
)
めて
御
(
お
)
疲労
(
つかれ
)
で
御座
(
ござ
)
いませうから、
042
今晩
(
こんばん
)
はホテルに
御
(
ご
)
一泊
(
いつぱく
)
なさるが
宜
(
よろ
)
しいでせう。
043
聖地
(
せいち
)
巡礼者
(
じゆんれいしや
)
のために
設
(
まう
)
けられた
大仕掛
(
おほじかけ
)
なホスビース・ノートルダム・ド・フランスと
云
(
い
)
ふ
加持力
(
カトリツク
)
の
僧院
(
そうゐん
)
が
御座
(
ござ
)
いまして、
044
其
(
その
)
設備
(
せつび
)
は
一切
(
いつさい
)
ホテルと
少
(
すこ
)
しも
変
(
かは
)
りなく、
045
且
(
か
)
つ
大変
(
たいへん
)
親切
(
しんせつ
)
で
宿料
(
しゆくれう
)
も
一宿
(
いつしゆく
)
が
一
(
いつ
)
ポンド
内外
(
ないぐわい
)
ですから、
046
それへ
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませうか』
047
ブラバーサ
『カトリックの
僧院
(
そうゐん
)
ですか。
048
夫
(
そ
)
れは
願
(
ねが
)
ふても
無
(
な
)
き
結構
(
けつこう
)
な
所
(
ところ
)
、
049
どうか
其処
(
そこ
)
へ
案内
(
あんない
)
を
願
(
ねが
)
ひませう』
050
マリヤ
『ハア
左様
(
さやう
)
なさいませ。
051
妾
(
わたし
)
も
貴師
(
あなた
)
と
今晩
(
こんばん
)
は
同宿
(
どうしゆく
)
して、
052
種々
(
いろいろ
)
の
珍
(
めづ
)
らしい
高砂島
(
たかさごじま
)
の
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたま
)
はりたう
御座
(
ござ
)
います』
053
と
先導
(
せんだう
)
に
立
(
た
)
ち、
054
カトリックの
僧院
(
そうゐん
)
ホテルへと
案内
(
あんない
)
され、
055
今宵
(
こよひ
)
は
爰
(
ここ
)
に
一宿
(
いつしゆく
)
する
事
(
こと
)
となつた。
056
両人
(
りやうにん
)
は
二階
(
にかい
)
の
一室
(
いつしつ
)
に
案内
(
あんない
)
され、
057
夕餉
(
ゆふげ
)
を
済
(
す
)
ませ、
058
窓外
(
そうぐわい
)
を
遠
(
とほ
)
く
見
(
み
)
やると、
059
折
(
をり
)
しも
十六夜
(
じふろくや
)
の
満月
(
まんげつ
)
が
皎々
(
かうかう
)
として
下界
(
げかい
)
を
隈
(
くま
)
なく
照
(
て
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
060
大
(
おほ
)
きな
僧院
(
そうゐん
)
にも
似
(
に
)
ず
宿泊者
(
しゆくはくしや
)
は
僅
(
わづ
)
かに
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
で、
061
何
(
いづ
)
れも
各宗
(
かくしう
)
の
僧侶
(
そうりよ
)
であつた。
062
マリヤはブラバーサに
向
(
む
)
かひ、
063
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
064
今晩
(
こんばん
)
の
月
(
つき
)
は
亦
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
美
(
うる
)
はしき
空
(
そら
)
に
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
つて
聖師
(
せいし
)
の
御
(
ご
)
来着
(
らいちやく
)
を
祝
(
しゆく
)
して
居
(
ゐ
)
るやうですなア。
065
斯様
(
かやう
)
な
良
(
よ
)
い
月
(
つき
)
の
夜
(
よ
)
を
室内
(
しつない
)
に
明
(
あ
)
かす
事
(
こと
)
は、
066
少
(
すこ
)
し
計
(
ばか
)
り
勿体
(
もつたい
)
ないぢや
有
(
あ
)
りませぬか。
067
何
(
ど
)
うでせう、
068
一
(
ひと
)
つ
月明
(
つきあ
)
かりに
散歩
(
さんぽ
)
でもして
御
(
お
)
寝
(
やす
)
みになりましたら、
069
妾
(
わたし
)
もこの
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
ては
室内
(
しつない
)
計
(
ばか
)
りに
蟄居
(
ちつきよ
)
する
気
(
き
)
になりませぬわ』
070
ブラバーサ
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
良
(
よ
)
い
月
(
つき
)
です。
071
高砂島
(
たかさごじま
)
で
見
(
み
)
た
月
(
つき
)
も
今
(
いま
)
この
聖地
(
せいち
)
で
見
(
み
)
る
月
(
つき
)
も、
072
余
(
あま
)
り
変
(
かは
)
りはありませぬが、
073
何
(
なん
)
だか
月
(
つき
)
が
懐
(
なつ
)
かしくなつて
参
(
まゐ
)
りました。
074
無為
(
むゐ
)
に
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かすのも
神界
(
しんかい
)
へ
対
(
たい
)
して
済
(
す
)
まない
様
(
やう
)
な
心地
(
ここち
)
がします。
075
何
(
ど
)
うか
案内
(
あんない
)
を
願
(
ねが
)
ひませうかなア』
076
マリヤ
『ハイ
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
います』
077
と
早
(
はや
)
くもマリヤは
二階
(
にかい
)
の
階段
(
かいだん
)
を
下
(
お
)
りかけた。
078
ブラバーサもマリヤの
後
(
あと
)
からホテルを
忍
(
しの
)
ぶ
様
(
やう
)
にして
門外
(
もんぐわい
)
に
出
(
で
)
た。
079
両人
(
りやうにん
)
は
市街
(
しがい
)
の
外側
(
そとがは
)
を
西
(
にし
)
の
城壁
(
じやうへき
)
に
添
(
そ
)
ふてダマスカスの
門
(
もん
)
を
目当
(
めあて
)
に
歩
(
ほ
)
を
運
(
はこ
)
ぶ。
080
上部
(
じやうぶ
)
が
凹凸
(
あふとつ
)
になつた
厳
(
いか
)
めしいこの
城壁
(
じやうへき
)
や
門
(
もん
)
は、
081
皆
(
みな
)
中世
(
ちうせい
)
に
造
(
つく
)
られたものだが、
082
何
(
なん
)
となく
古
(
ふる
)
い
市街
(
しがい
)
には
応
(
ふさ
)
はしい
感覚
(
かんかく
)
を
与
(
あた
)
へる。
083
この
門
(
もん
)
からダマスカスへの
道路
(
だうろ
)
が
通
(
つう
)
じて
居
(
ゐ
)
る。
084
両人
(
りやうにん
)
は
月光
(
げつくわう
)
を
浴
(
あ
)
びながら、
085
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
市街
(
しがい
)
の
北部
(
ほくぶ
)
を
横断
(
わうだん
)
し、
086
聖
(
せい
)
ステフアンの
門
(
もん
)
へと
出
(
で
)
た。
087
荒
(
あら
)
い
敷石
(
しきいし
)
の
道路
(
だうろ
)
は、
088
所々
(
ところどころ
)
に
低
(
ひく
)
いトンネル
様
(
やう
)
のアルカードで
覆
(
おほ
)
はれて
居
(
ゐ
)
て、
089
月光
(
げつくわう
)
の
輝
(
かがや
)
く
下
(
した
)
では
内部
(
ないぶ
)
の
深
(
ふか
)
い
深
(
ふか
)
い
暗黒面
(
あんこくめん
)
が
殊更
(
ことさら
)
寂
(
さび
)
しく
物
(
もの
)
すごく
感
(
かん
)
じられた。
090
道路
(
だうろ
)
の
両側
(
りやうがは
)
の
所々
(
ところどころ
)
に、
091
赤
(
あか
)
いトルコ
帽
(
ばう
)
を
被
(
かぶ
)
つたアラブが
小
(
ちひ
)
さい
茶碗
(
ちやわん
)
で
濃
(
こ
)
いコーヒーを
呑
(
の
)
んだり、
092
フラスコ
様
(
やう
)
の
大仕掛
(
おほじかけ
)
な
装置
(
さうち
)
で
水
(
みづ
)
を
通過
(
つうくわ
)
させて
長
(
なが
)
いゴム
管
(
くわん
)
で
吸入
(
きふにふ
)
する
強
(
つよ
)
い
煙草
(
たばこ
)
をのん
気
(
き
)
さうに
呑
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら、
093
両人
(
りやうにん
)
の
方
(
はう
)
へ
迂散
(
うさん
)
な
奴
(
やつ
)
が
来
(
き
)
よつたなアと
云
(
い
)
つた
様
(
やう
)
な
顔付
(
かほつ
)
きで
睨
(
にら
)
んで
居
(
ゐ
)
た。
094
ブラバーサ
『
彼
(
か
)
の
男
(
をとこ
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
095
異様
(
いやう
)
の
眼
(
まなこ
)
を
光
(
ひか
)
らして
居
(
ゐ
)
ましたが、
096
何
(
なに
)
かの
信仰
(
しんかう
)
を
以
(
もつ
)
て
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのですか』
097
マリヤ
『
彼
(
あ
)
の
人
(
ひと
)
等
(
ら
)
は
極端
(
きよくたん
)
なアセイズムを
主唱
(
しゆしやう
)
する
人々
(
ひとびと
)
で、
098
妾
(
わたし
)
が
聖地
(
せいち
)
を
巡拝
(
じゆんぱい
)
するのを
見
(
み
)
て、
099
ボリセイズムだと
云
(
い
)
つて
嘲
(
あざけ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ。
100
物質
(
ぶつしつ
)
文明
(
ぶんめい
)
にかぶれてアセイズム
者
(
しや
)
と
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですから、
101
容易
(
ようい
)
に
信仰
(
しんかう
)
に
導
(
みちび
)
くことは
出来難
(
できがた
)
い
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
ですわ』
102
ブラバーサ
『
斯
(
かか
)
る
聖地
(
せいち
)
にも
依然
(
やつぱり
)
アセイズム
者
(
しや
)
が
入込
(
いりこ
)
んで
居
(
ゐ
)
るのですか』
103
マリヤ
『アセイズム
者
(
しや
)
は
愚
(
おろ
)
か、
104
ソシアリストもコンミユニストもアナーキストもニヒリストも
沢山
(
たくさん
)
に
入込
(
いりこ
)
んで
来
(
き
)
て
居
(
を
)
ります。
105
そして
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
に
詣
(
まう
)
で
来
(
く
)
る
信徒
(
しんと
)
に
対
(
たい
)
して
種々
(
しゆじゆ
)
の
嘲罵
(
てうば
)
を
浴
(
あ
)
びせます。
106
妾
(
わたし
)
も
何
(
なん
)
とかして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
尊
(
たふと
)
き
御
(
お
)
道
(
みち
)
に
救
(
すく
)
ひたいと
思
(
おも
)
つて、
107
毎日
(
まいにち
)
毎夜
(
まいや
)
エルサレムの
市街
(
しがい
)
に
立
(
た
)
つて、
108
声
(
こゑ
)
をからして
演説
(
えんぜつ
)
をいたしましたが、
109
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いても
立腹
(
りつぷく
)
いたします。
110
そして
大変
(
たいへん
)
な
強迫
(
きやうはく
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
に
出
(
い
)
で、
111
遂
(
つひ
)
には
鉄拳
(
てつけん
)
の
雨
(
あめ
)
を
降
(
ふ
)
らすのです。
112
印度
(
いんど
)
の
釈尊
(
しやくそん
)
も
縁
(
えん
)
なき
衆生
(
しゆじやう
)
は
度
(
ど
)
し
難
(
がた
)
しと
仰有
(
おつしや
)
つた
相
(
さう
)
ですが、
113
現界
(
げんかい
)
から
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
身魂
(
みたま
)
の
籍
(
せき
)
を
地獄
(
ぢごく
)
に
置
(
お
)
いて
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
には、
114
如何
(
いか
)
なる
神
(
かみ
)
の
福音
(
ふくいん
)
も
到底
(
たうてい
)
耳
(
みみ
)
には
入
(
い
)
りませぬ。
115
夫
(
そ
)
れ
故
(
ゆゑ
)
妾
(
わたし
)
の
団体
(
だんたい
)
アメリカンコロニーの
人々
(
ひとびと
)
は、
116
迷信者
(
めいしんじや
)
扱
(
あつか
)
ひを
受
(
う
)
け、
117
人間
(
にんげん
)
らしく
附合
(
つきあ
)
つて
呉
(
く
)
れないのです。
118
モウ
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
聖
(
せい
)
メシヤの
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
つより
仕方
(
しかた
)
がありませぬわ』
119
ブラバーサ
『
高砂島
(
たかさごじま
)
でも、
120
依然
(
いぜん
)
今
(
いま
)
の
貴女
(
あなた
)
の
御
(
お
)
話
(
はなし
)
と
同様
(
どうやう
)
に、
121
吾々
(
われわれ
)
の
信奉
(
しんぽう
)
するルートバハーの
教
(
をしへ
)
やその
信者
(
しんじや
)
を
迷信者
(
めいしんじや
)
扱
(
あつか
)
ひをなし、
122
あらゆる
圧迫
(
あつぱく
)
と
妨害
(
ばうがい
)
を
加
(
くは
)
へ、
123
大聖主
(
だいせいしゆ
)
までも
邪神
(
じやしん
)
扱
(
あつか
)
ひに
致
(
いた
)
して、
124
上下
(
じやうげ
)
の
民衆
(
みんしう
)
が
挙
(
こぞ
)
つて
反抗
(
はんかう
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
に
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふ
有様
(
ありさま
)
です。
125
然
(
しか
)
し
是
(
これ
)
も
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
で
解決
(
かいけつ
)
が
付
(
つ
)
くものと
私
(
わたし
)
は
堅
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
ります。
126
メシヤが
聖地
(
せいち
)
へ
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
つて
御
(
お
)
降
(
くだ
)
りになる
暁
(
あかつき
)
は、
127
如何
(
いか
)
なる
智者
(
ちしや
)
学者
(
がくしや
)
も
悪人
(
あくにん
)
も
太陽
(
たいやう
)
の
前
(
まへ
)
の
星
(
ほし
)
の
如
(
ごと
)
く
影
(
かげ
)
を
隠
(
かく
)
し、
128
屹度
(
きつと
)
メシヤの
膝下
(
しつか
)
に
跪付
(
ひざまづ
)
くやうになるでせう。
129
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
らくの
辛抱
(
しんばう
)
ですよ』
130
マリヤ
『
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くメシヤの
降臨
(
かうりん
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
度
(
た
)
きもので
御座
(
ござ
)
います。
131
真正
(
しんせい
)
のメシヤは
何時
(
いつ
)
の
頃
(
ころ
)
になつたら
出現
(
しゆつげん
)
されるでせうか』
132
ブラバーサ
『
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
にメシヤは、
133
或
(
あ
)
る
聖地
(
せいち
)
に
降誕
(
かうたん
)
されて
諸種
(
しよしゆ
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
整
(
ととの
)
へて
居
(
を
)
られますから
余
(
あま
)
り
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
でもありますまい。
134
併
(
しか
)
しメシヤは
只今
(
ただいま
)
の
処
(
ところ
)
では
十字架
(
じふじか
)
の
責苦
(
せめく
)
に
逢
(
あ
)
つて、
135
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
た
)
めに
苦
(
くる
)
しみて
居
(
を
)
られますが、
136
軈
(
やが
)
て
電
(
いなづま
)
の
東天
(
とうてん
)
より
西天
(
せいてん
)
に
閃
(
ひらめ
)
く
如
(
ごと
)
く
現
(
あら
)
はれたまふでせう。
137
私
(
わたし
)
はメシヤ
再臨
(
さいりん
)
の
先駆
(
せんく
)
として
参
(
まゐ
)
つたものです』
138
マリヤ
『それは
何
(
なに
)
より
耳
(
みみ
)
寄
(
よ
)
りの
御
(
お
)
話
(
はな
)
し
緩
(
ゆつく
)
りと
橄欖山
(
かんらんざん
)
上
(
じやう
)
に
於
(
おい
)
て
承
(
うけたまは
)
り
度
(
た
)
いものですなア』
139
ブラバーサ
『
是非
(
ぜひ
)
聞
(
き
)
いて
戴
(
いただ
)
かねばなりませぬ』
140
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
141
是
(
これ
)
が
有名
(
いうめい
)
な
聖
(
せい
)
ステフアンの
門
(
もん
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ』
142
ブラバーサ
『
聖者
(
せいじや
)
が
曳
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
され
石
(
いし
)
で
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
されたといふ、
143
伝説
(
でんせつ
)
のある
聖
(
せい
)
ステフアンの
門
(
もん
)
ですか。
144
ヘエー』
145
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
少時
(
しばし
)
憂愁
(
いうしう
)
に
沈
(
しづ
)
む。
146
マリヤ
『
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
通過
(
つうくわ
)
する
毎
(
ごと
)
に、
147
聖者
(
せいじや
)
の
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
信仰力
(
しんかうりよく
)
を
追想
(
つゐさう
)
して、
148
益々
(
ますます
)
信仰
(
しんかう
)
の
熱度
(
ねつど
)
を
加
(
くは
)
へたので
御座
(
ござ
)
います』
149
と
稍
(
やや
)
傾首
(
うつむい
)
て
涙
(
なみだ
)
ぐむ。
150
ブラバーサ
『アヽ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
151
信仰力
(
しんかうりよく
)
弱
(
よわ
)
きこのブラバーサをして、
152
無限
(
むげん
)
の
力
(
ちから
)
を
御
(
お
)
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ。
153
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
イ
四
(
よ
)
、
154
五
(
い
)
ツ
六
(
む
)
ユ
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
』
155
と
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
156
暫
(
しば
)
し
感歎
(
かんたん
)
止
(
や
)
まなかつた。
157
○
158
聖
(
せい
)
ステフアンの
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
ると、
159
少
(
すこ
)
しく
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
になつて
居
(
ゐ
)
る。
160
マリヤの
後
(
あと
)
に
従
(
つ
)
いてゲツセマネの
有名
(
いうめい
)
な
園
(
その
)
に
近
(
ちか
)
づいた。
161
橄欖山
(
かんらんざん
)
は
呼
(
よ
)
べば
答
(
こた
)
ふる
様
(
やう
)
に
近
(
ちか
)
くなつて
来
(
き
)
た。
162
分
(
ぶ
)
の
厚
(
あつ
)
い
丈
(
た
)
けの
高
(
たか
)
い、
163
石造
(
せきざう
)
の
垣
(
かき
)
で
厳重
(
げんぢう
)
に
囲
(
かこ
)
まれて
居
(
ゐ
)
るのがゲツセマネの
園
(
その
)
である。
164
処々
(
ところどころ
)
にサイブレスの
木
(
き
)
が
頭
(
あたま
)
を
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
るのが
見
(
み
)
えるばかりで、
165
一見
(
いつけん
)
して
外側
(
そとがは
)
からは
墓地
(
ぼち
)
のやうな
感
(
かん
)
じを
与
(
あた
)
へる。
166
夜
(
よる
)
の
事
(
こと
)
とて
門扉
(
もんぴ
)
が
固
(
かた
)
く
鎖
(
とざ
)
され、
167
内部
(
ないぶ
)
は
見
(
み
)
ることが
出来
(
でき
)
ない。
168
そこから
団子石
(
だんごいし
)
のゴロ
付
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
る
峻
(
けは
)
しい
坂路
(
さかみち
)
を
攀
(
よぢ
)
て、
169
目的
(
もくてき
)
の
橄欖山
(
かんらんざん
)
へ
登
(
のぼ
)
るのである。
170
反対側
(
はんたいがは
)
の
山
(
やま
)
の
頂
(
いただき
)
に
王座
(
わうざ
)
して
居
(
ゐ
)
る
月光
(
げつくわう
)
に
由
(
よ
)
つて
装
(
よそは
)
れたエルサレムの
市街
(
しがい
)
、
171
美
(
うつく
)
しい
気高
(
けだか
)
いシオンの
娘
(
むすめ
)
の
姿
(
すがた
)
は
眼前
(
がんぜん
)
に
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
る。
172
その
美
(
うつく
)
しさは
現実
(
げんじつ
)
に
存在
(
そんざい
)
して
居
(
ゐ
)
るのか、
173
夫
(
そ
)
れともキリストに
伴
(
ともな
)
ふ
聯想
(
れんさう
)
が
幻影
(
げんえい
)
を
造
(
つく
)
り
出
(
だ
)
したのかと、
174
ブラバーサの
想像
(
さうざう
)
は
瞬間
(
しゆんかん
)
に
世界
(
せかい
)
歴史
(
れきし
)
の
全体
(
ぜんたい
)
を
通
(
とほ
)
つて
走
(
はし
)
る。
175
丁度
(
ちやうど
)
、
176
高砂島
(
たかさごじま
)
の
聖地
(
せいち
)
桶伏山
(
をけふせやま
)
の
蓮華台
(
れんげだい
)
上
(
じやう
)
の
廃墟
(
はいきよ
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つた
時
(
とき
)
と
同様
(
どうやう
)
に、
177
然
(
しか
)
しその
二
(
ふた
)
つの
感想
(
かんさう
)
は、
178
ブラバーサに
取
(
と
)
つては
名状
(
めいじやう
)
しがたきコントラストであつた。
179
キリスト
教
(
けう
)
とヘレニズムの
葛藤
(
かつとう
)
、
180
夫
(
そ
)
れは
過去
(
くわこ
)
二千
(
にせん
)
年間
(
ねんかん
)
の
人類
(
じんるゐ
)
の
歴史
(
れきし
)
を
解
(
と
)
くための
悲哀
(
ひあい
)
なる
鍵
(
かぎ
)
となるのであつた。
181
そして
此
(
この
)
マリア
婦人
(
ふじん
)
を
始
(
はじ
)
め、
182
コロニーの
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
や、
183
純真
(
じゆんしん
)
なる
数多
(
あまた
)
の
奉道者
(
ほうだうしや
)
が
今
(
いま
)
に
至
(
いた
)
るまで
神
(
かみ
)
を
求
(
もと
)
め、
184
真善
(
しんぜん
)
を
極
(
きは
)
め
美
(
び
)
に
焦
(
こ
)
がるる
純
(
じゆん
)
な
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めて
来
(
き
)
た
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
浮
(
う
)
かべては、
185
そぞろに
涙
(
なみだ
)
の
溢
(
あふ
)
るるのも
覚
(
おぼ
)
えなくなつて
了
(
しま
)
つた。
186
アヽこの
悲哀
(
ひあい
)
なる
不調和
(
ふてうわ
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
取
(
と
)
り
除
(
のぞ
)
きたいものだ。
187
キリスト
教
(
けう
)
は
何処
(
どこ
)
までも
現世界
(
げんせかい
)
を
灰色
(
はひいろ
)
に
染
(
そめ
)
なければ
止
(
や
)
まないであらうか。
188
アクロポリスに
踵
(
きびす
)
を
向
(
む
)
ける
事
(
こと
)
なしにエルサレムに
巡礼
(
じゆんれい
)
する
事
(
こと
)
には
成
(
な
)
らぬのであらうか。
189
何故
(
なにゆゑ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は、
190
此
(
こ
)
の
世
(
よ
)
をモウ
少
(
すこ
)
し
調和
(
てうわ
)
的
(
てき
)
に
造
(
つく
)
り
玉
(
たま
)
はなかつたのであらうかと、
191
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
愚痴
(
ぐち
)
と
歎息
(
たんそく
)
を
漏
(
も
)
らさざるを
得
(
え
)
なかつた。
192
ブラバーサは
黙然
(
もくねん
)
として
追懐
(
つゐくわい
)
久
(
ひさし
)
うして
居
(
ゐ
)
る。
193
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
194
何
(
なに
)
か
頻
(
しき
)
りに
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
らつしやる
様
(
やう
)
ですが、
195
妾
(
わたし
)
の
行動
(
かうどう
)
に
就
(
つ
)
いて
御
(
お
)
気
(
き
)
に
召
(
め
)
さない
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますか。
196
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
197
如何様
(
いかやう
)
にも
悪
(
あし
)
き
点
(
てん
)
は
改
(
あらた
)
めますから』
198
ブラバーサ
『イエイエ、
199
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
して
気
(
き
)
に
合
(
あ
)
はない
道理
(
だうり
)
が
御座
(
ござ
)
いませうか。
200
只々
(
ただただ
)
私
(
わたし
)
はこの
聖地
(
せいち
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
見
(
み
)
るに
付
(
つ
)
け、
201
古
(
いにしへ
)
の
歴史
(
れきし
)
が
胸
(
むね
)
に
浮
(
う
)
かびて
参
(
まゐ
)
りまして、
202
感慨
(
かんがい
)
無量
(
むりやう
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
たのです』
203
マリヤは
軽
(
かる
)
く、
204
マリヤ
『そりやさうでせう
共
(
とも
)
、
205
妾
(
わたし
)
だつて
幾度
(
いくど
)
聖地
(
せいち
)
に
来
(
き
)
てから、
206
古
(
いにしへ
)
の
歴史
(
れきし
)
を
追懐
(
つゐくわい
)
して
泣
(
な
)
いたか
分
(
わか
)
りませぬわ。
207
然
(
しか
)
し
今晩
(
こんばん
)
は
夜
(
よ
)
も
更
(
ふ
)
けましたから、
208
ホテルへ
一先
(
ひとま
)
づ
引返
(
ひきかへ
)
し、
209
又
(
また
)
明日
(
みやうにち
)
はゆるゆる
案内
(
あんない
)
さして
頂
(
いただ
)
きませう』
210
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つていそいそと
歩
(
あゆ
)
み
出
(
だ
)
した。
211
爰
(
ここ
)
にブラバーサ、
212
マリヤの
二人
(
ふたり
)
は
月光
(
げつくわう
)
の
下
(
した
)
をキドロンの
谷
(
たに
)
をエルサレムの
側
(
がは
)
へ
渡
(
わた
)
り、
213
市街
(
しがい
)
の
東南隅
(
とうなんぐう
)
の
城壁
(
じやうへき
)
に
添
(
そ
)
ふて、
214
ダング・ゲート(
汚物
(
をぶつ
)
の
門
(
もん
)
)へ
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
215
ダング・ゲートは
昔
(
むかし
)
此
(
この
)
門
(
もん
)
から
汚物
(
をぶつ
)
を
運
(
はこ
)
び
去
(
さ
)
つた
所
(
ところ
)
と
伝
(
つた
)
へられて
居
(
ゐ
)
る。
216
シロアムの
村
(
むら
)
が
眼下
(
がんか
)
に
展開
(
てんかい
)
して
居
(
ゐ
)
る。
217
その
門
(
もん
)
を
這入
(
はい
)
つてユダヤ
人街
(
じんがい
)
とマホメツト
教徒
(
けうと
)
街
(
がい
)
との
間
(
あひだ
)
を
通過
(
つうくわ
)
し、
218
ジヤツフアの
門
(
もん
)
へと
出
(
で
)
た。
219
現今
(
げんこん
)
のエルサレムの
市街
(
しがい
)
はアラブ、
220
ユダヤ
人
(
じん
)
、
221
アルメニヤ
人
(
じん
)
の
住
(
す
)
みて
居
(
ゐ
)
る
三
(
みつ
)
ツの
区域
(
くゐき
)
によつて
仕切
(
しき
)
られて
居
(
ゐ
)
る。
222
神殿
(
しんでん
)
の
跡
(
あと
)
に
近
(
ちか
)
い
暗
(
くら
)
いアルカードの
傍
(
かたはら
)
に、
223
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
のアラブが
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
224
手真似
(
てまね
)
で
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らない
言葉
(
ことば
)
で
両人
(
りやうにん
)
を
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めた。
225
両人
(
りやうにん
)
は
気味
(
きみ
)
悪
(
わ
)
る
相
(
さう
)
に
聞
(
き
)
かぬ
風
(
ふう
)
を
装
(
よそほ
)
ひスタスタと
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めた。
226
ダマスカス、
227
聖
(
せい
)
ステフアン、
228
ゲツセマネと
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
は
熱烈
(
ねつれつ
)
な
信仰者
(
しんかうしや
)
の
胸
(
むね
)
に
深刻
(
しんこく
)
な
感動
(
かんどう
)
を
与
(
あた
)
へるものである。
229
ブラバーサは
傾首
(
うつむ
)
きながら
一足
(
ひとあし
)
一足
(
ひとあし
)
指
(
ゆび
)
の
尖
(
さき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ、
230
ウンウンと
独
(
ひと
)
り
心
(
こころ
)
に
囁
(
ささや
)
きながら、
231
マリヤの
後
(
あと
)
について
行
(
ゆ
)
く。
232
然
(
しか
)
し
現代
(
げんだい
)
の
多数
(
たすう
)
の
基督
(
キリスト
)
教徒
(
けうと
)
、
233
それ
等
(
ら
)
に
対
(
たい
)
して
宗教
(
しうけう
)
は
無意味
(
むいみ
)
な
形式
(
けいしき
)
、
234
死
(
し
)
し
去
(
さ
)
つた
伝統
(
トラヂシオン
)
に
過
(
す
)
ぎない。
235
呑気
(
のんき
)
な
基督
(
キリスト
)
教徒
(
けうと
)
中
(
ちう
)
に
真
(
しん
)
にダマスカスの
道
(
みち
)
にある
使徒
(
しと
)
パウロの
心
(
こころ
)
を
自身
(
じしん
)
に
体験
(
たいけん
)
し、
236
キリストのゲツセマネの
園
(
その
)
における
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
御
(
お
)
悩
(
なや
)
みの
一端
(
いつたん
)
だに
汲
(
く
)
み
得
(
う
)
る
信徒
(
しんと
)
が
幾人
(
いくにん
)
あるであらうか、
237
と
慨歎
(
がいたん
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずにマリヤに
半町
(
はんちやう
)
ばかりも
遅
(
おく
)
れてしまつた。
238
(
大正一二・七・一〇
旧五・二七
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 宣伝使
(B)
(N)
訪問客 >>>
霊界物語
>
第64巻上
> 第1篇 日下開山 > 第3章 聖地夜
Tweet
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【03 聖地夜|第64巻(卯の巻)上|霊界物語/rm64a03】
合言葉「みろく」を入力して下さい→