霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 膝栗毛(ひざくりげ)〔一六三八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上 篇:第2篇 聖地巡拝 よみ(新仮名遣い):せいちじゅんぱい
章:第9章 膝栗毛 よみ(新仮名遣い):ひざくりげ 通し章番号:1638
口述日:1923(大正12)年07月11日(旧05月28日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台:エルサレム市街近郊 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-25 18:24:25 OBC :rm64a09
愛善世界社版:100頁 八幡書店版:第11輯 414頁 修補版: 校定版:99頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001 この寺院(じゐん)東南(とうなん)(はう)002(すこ)(へだ)たつて『(ちち)洞窟(どうくつ)』と()ふのがある。003これもチヤペルに()つて()て、004入口(いりぐち)(うへ)聖母(せいぼ)幼児(えうじ)キリストに(ちち)()ませて()立像(りつざう)()かれてある。005伝説(でんせつ)()れば、006このチヤペルの洞穴(どうけつ)(せい)なる家族(かぞく)(かく)れたと()ふ。007聖母(せいぼ)(ちち)(したた)りが(いま)でも洞穴(どうけつ)石灰石(せきくわいせき)(いん)せられて()る。008婦女(ふぢよ)がそれへ参詣(さんけい)をすれば(ちち)()()(やう)になると(しん)じられてゐる。
009 両人(りやうにん)寺院(じゐん)()して(すこ)しく(さき)(すす)んだ。010さうすると、011ヨルダンの(たに)(むか)つた方面(はうめん)(ひろ)眺望(てうばう)展開(てんかい)する橄欖(かんらん)()()わつた平野(へいや)……それは『羊飼(ひつじかひ)()』といふ名称(めいしよう)()せられてゐる。012天界(てんかい)天使(てんし)羊飼(ひつじかひ)にあらはれて、
013『われ万民(ばんみん)(かか)はりたる(だい)なるよろこびの音信(おとづれ)爾曹(なんぢら)()ぐべし』
014とてキリストの降誕(かうたん)()げ、015(おほ)くの天軍(てんぐん)(てん)使(つかひ)(とも)に、
016天上(いとたかき)ところには栄光(えいくわう)(かみ)にあれ。017()には平安(へいあん)018(ひと)には恩沢(めぐみ)あれ』
019(かみ)讃美(さんび)し、020羊飼(ひつじかひ)(たち)がベツレヘムへと(いそ)いだのは、021()(あた)りだと()はれてゐるが、022この(はな)しに(ふさ)はしい(うつく)しい気分(きぶん)()場所(ばしよ)である。023場所(ばしよ)真偽(しんぎ)問題(もんだい)となすに(およ)ばぬ、024仮令(たとへ)少々(せうせう)(ちが)つて()つても、025(この)(ところ)であつた(こと)にしておき()いものだとブラバーサは(こころ)(うち)(おも)ふのであつた。
026 両人(りやうにん)(おな)(みち)(あゆ)んでエルサレム市街(しがい)のホテルへ(かへ)らうとする(とき)027(いま)まで清朗(せいらう)なりし大空(おほぞら)(にはか)(すみ)(なが)した(ごと)真黒(まつくろ)になつた。028両人(りやうにん)()(をは)りの(ちか)づいた(やう)気分(きぶん)(おそ)はれて()ると、029ノアの大洪水(だいこうずゐ)(おも)()させるやうな大雨(おほあめ)土砂降(どしやぶ)りに()つて()容易(ようい)()みさうにもない。030(しか)暫時(しばらく)(あひだ)(あめ)(ちひ)さく()つて(やや)安心(あんしん)する(こと)()た。031()んな(こと)なら自動車(じどうしや)(かへ)さなかつたが()かつたにと、032今更(いまさら)(ごと)後悔(こうくわい)しても(あと)(まつ)りであつた。033この大雨(たいう)(おそ)らく半年(はんねん)日照(ひで)りの(をは)りを(くわく)する祝福(しゆくふく)された最初(さいしよ)慈雨(じう)であつたに相違(さうゐ)ない。034(あめ)()むと紅塵(こうぢん)万丈(ばんぢやう)往来(わうらい)は、035スツカリ(あら)つた(やう)爽快(さうくわい)坦道(たんだう)(かは)つて(しま)つた。036(をか)(うへ)にはエルサレムの市街(しがい)(あめ)あがりの(そら)(その)(うつく)しい姿(すがた)(あら)はしてゐる。037(てん)一方(いつぱう)(あらし)名残(なごり)(くも)には、038エホバの()約束(やくそく)証拠(しようこ)とも(とな)ふべき(にじ)(うる)はしく七色(しちしよく)()えて(たか)(なが)くかかつて()る。039ブラバーサは、
040『われ聖域(せいゐき)なる(あたら)しきエルサレム(そな)(ととの)ひ、041(かみ)(ところ)()(てん)より(くだ)るを()る。042その(さま)新婦(しんぷ)新郎(しんらう)(むか)へむ(ため)(かざ)りたるが(ごと)し』
043とある黙示録(もくしろく)(げん)(こころ)(なか)()(かへ)すのであつた。044(つい)両人(りやうにん)(あめ)()れたるを(さいは)ひとして、045勇気(ゆうき)()して(また)もやハラム・エク・ケリフの神殿(しんでん)拝観(はいくわん)せむと()(はこ)ぶのであつた。046エルサレムの(まち)東南隅(とうなんぐう)キドロンの(たに)(へだ)てて、047橄欖山(かんらんざん)(めん)して()長方形(ちやうはうけい)場所(ばしよ)()いた。048(いま)この広場(ひろば)には回回教(フイフイけう)(ふた)つのモスクが()てられてある。049(むかし)ダビデが神壇(しんだん)(まう)けたのもやはり此処(ここ)である。
050(かれ)はここに荘厳(さうごん)無比(むひ)なる大神殿(だいしんでん)建築(けんちく)する心算(つもり)で、051沢山(たくさん)建築(けんちく)材料(ざいれう)まで蒐集(しうしふ)したが、052(たふと)(きよ)(かみ)宮殿(きうでん)()てるのには平和(へいわ)仁愛(じんあい)(ひと)でなくては神慮(しんりよ)(かな)はないのに、053(かれ)(たたか)ひの(ひと)として(おほ)くの()(なが)したので(かみ)(さま)から(その)(にん)でないとして差止(さしと)められ、054(その)()のソロモンが(はじ)めて(ちち)準備(じゆんび)しておいた豊富(ほうふ)材料(ざいれう)(もつ)(しち)(ねん)日子(につし)(つひ)やして、055神殿(しんでん)(およ)外囲(そとがこ)ひや内庭(ないてい)(なら)びに僧院(そうゐん)完成(くわんせい)することとなつた。056その()(かれ)十三(じふさん)(ねん)もかかつて附近(ふきん)()(ぼく)し、057自分(じぶん)のために(ひと)つ、058(なほ)それに(めん)して自分(じぶん)(つま)フアラオの(むすめ)のためにもモ(ひと)つの宮殿(きうでん)()てたのである。059僧院(そうゐん)はソロモン時代(じだい)神殿(しんでん)広場(ひろば)()(かこ)んで()た。060外壁(ぐわいへき)には(ひがし)黄金門(わうごんもん)あり、061(みなみ)単門(たんもん)062二重門(にぢうもん)(およ)三重門(さんぢうもん)()いて()たと()ふ。063(その)(ほか)(なほ)エルサレムの城壁(じやうへき)()つたのだが、064今日(こんにち)(ところ)では跡方(あとかた)()有様(ありさま)である。065ダビデは(しゆ)のために()てらるべき(みや)比類(ひるゐ)なく荘麗(さうれい)にして、066万国(ばんこく)(つう)じての光栄(くわうえい)()ければ()らぬと()つて()たが、067ソロモンの()てた神殿(しんでん)(じつ)にダビデの()つた(とほ)りの荘麗(さうれい)宮殿(きうでん)であつた。068この神聖(しんせい)なる(をか)(うへ)純白(じゆんぱく)大理石(だいりせき)()黄金(わうごん)(かざ)られ、069要塞(えうさい)宮殿(きうでん)取囲(とりかこ)まれ、070(その)美観(びくわん)世界(せかい)()(ひび)いて()たのである。071その()神殿(しんでん)はユダヤ(じん)崇拝(すうはい)中心(ちうしん)となり、072アツシリア(わう)ネブカドネザルのために破壊(はくわい)され、073ユダヤ(じん)はバビロンに捕虜(ほりよ)として()()られて(しま)つた。074それは紀元前(きげんぜん)五百(ごひやく)八十五(はちじふご)(ねん)(ごろ)のことであつた。075ユダヤ(じん)捕虜(ほりよ)から(まぬが)れて(かへ)り、076種々(いろいろ)苦辛(くしん)して()てた第二回(だいにくわい)()神殿(しんでん)第一回(だいいつくわい)のものよりは(はるか)(おと)つたものであつた。077その()キリスト降誕(かうたん)(すこ)以前(いぜん)に、078ヘロデ(わう)はソロモンの神殿(しんでん)匹敵(ひつてき)する(やう)第三回(だいさんくわい)()立派(りつぱ)宮殿(きうでん)()てたのである。079以上(いじやう)(みつ)ツの神殿(しんでん)(まつた)(おな)場所(ばしよ)位置(ゐち)()めて()た。080キリストが幼児(えうじ)として参詣(さんけい)せられ、081学者(がくしや)(たち)(あひだ)()つて問答(もんだふ)し、082兌銀者(だぎんしや)商人(せうにん)()()(かみ)(みち)()(つた)へたのも、083(この)ヘロデの神殿(しんでん)(おい)てであつた。084その()紀元(きげん)七十(しちじふ)(ねん)085ローマ皇帝(くわうてい)チツスに()るエルサレムの破壊(はくわい)(とも)神殿(しんでん)も「(ひと)つの(いし)(いし)(うへ)(たほ)されずしては(のこ)らじ」との言葉通(ことばどほり)運命(うんめい)()るに(いた)つたのである。086百三十(ひやくさんじふ)(ねん)にハドリアン(てい)がここに異端(いたん)(かみ)ジユピテルの大神殿(だいしんでん)()てたが、087それは六百(ろくぴやく)八十八(はちじふはち)(ねん)(また)回々教(フイフイけう)のモスクに()へられて(しま)つたのである』
088 両人(りやうにん)()広場(ひろば)南端(なんたん)にあるモスケ・エル・アクサの地下(ちか)になつて()宏大(くわうだい)基礎(きそ)建築(けんちく)()た。089無数(むすう)四角(しかく)石柱(せきちう)(たか)広々(ひろびろ)した空間(くうかん)仕切(しき)つて()る。090その角柱(かくばしら)上部(じやうぶ)穹状(きうじやう)()してお(たがひ)(つらな)()つて()る。091()かりは南方(なんぱう)(かべ)(ちひ)さい(まど)から(すこ)()れて()るばかりで、092内部(ないぶ)(もの)すごい(ほど)うす(ぐら)い。093(これ)(ぞく)にソロモンの(うまや)()はれてゐる。094マリヤはソロモンの神殿(しんでん)やヘロデの神殿(しんでん)(なほ)(のこ)つて()石垣(いしがき)(しめ)しながら、
095マリヤ『この場所(ばしよ)はローマとの(たたか)ひにあたり、096ユダヤ(じん)避難(ひなん)した(ところ)です。097(また)十字軍(じふじぐん)(とき)にも(うまや)となつたと()ふことで御座(ござ)います』
098諄々(じゆんじゆん)として由緒(ゆいしよ)()き、099ヱスの揺藍(えうらん)100二重門(にぢうもん)(とう)由来(ゆらい)細々(こまごま)説明(せつめい)するのであつた。
101ブラバーサ『モスケ・エル・アクサはマホメツト(けう)(くわん)して色々(いろいろ)由緒(ゆいしよ)()るやうですな』
102マリヤ『ハイ、103マホメツトが天使(てんし)ガブリエルに(みちび)かれ、104不思議(ふしぎ)白馬(はくば)にまたがつてメツカ()から一夜(いちや)(うち)にエルサレムに()(ところ)として、105回教徒(くわいけうと)()つて(きは)めて神聖(しんせい)場所(ばしよ)(ひと)つになつて()るので御座(ござ)います』
106()ひながらマリヤは後振(あとふ)(かへ)りつつ(おく)()る。
107 (ひろ)本堂(ほんだう)には円柱(ゑんちう)無数(むすう)()つて()り、108(ゆか)一面(いちめん)贅沢(ぜいたく)毛氈(まうせん)敷詰(しきつ)められ、109所々(ところどころ)にムスルマンが(すわ)つて祈祷(きたう)(ささ)げてゐる。110(その)後部(こうぶ)(いは)()つて(その)(いは)(うへ)にキリストの足跡(あしあと)(いん)せられて()ると()ふのも可笑(をか)しいものである。111ムスルマンに()つてキリストはアブラハムやモーゼと(とも)予言者(よげんしや)一人(ひとり)(かぞ)へられて()るが(ゆゑ)に、112(かれ)()はキリストに(つい)ての由緒(ゆいしよ)をも()くの(ごと)尊崇(そんすう)畏敬(ゐけい)して()まないのである。
113 (つぎ)両人(りやうにん)広場(ひろば)中央(ちうあう)にある(おほ)きな、114クボラをいただく八角堂(はちかくだう)のクーベツト・エスサクラ((また)(いは)のクボラ)を見物(けんぶつ)した。115この伽藍(がらん)(おほ)きい(いは)土台(どだい)(うへ)()てられて()て、116その上部(じやうぶ)内部(ないぶ)自然(しぜん)(まま)露出(ろしゆつ)して()る。117この岩上(がんじやう)(おい)てアブラハムが(その)()のイサクを(かみ)への犠牲(ぎせい)にしやうとしたと(つた)へられて()る。118回教徒(くわいけうと)犠牲(ぎせい)()らうとしたのは、119イサクで()くてその長子(ちやうし)イスマエルだと主張(しゆちやう)してゐる。120(なん)となればイスマエルはアラブの種族(しゆぞく)先祖(せんぞ)になつてゐると()はれてゐるからだ。121また回教徒(くわいけうと)伝説(でんせつ)()ればマホメツトは(かれ)不思議(ふしぎ)()旅行(りよかう)(おい)て、122この場所(ばしよ)から(てん)(のぼ)つた。123(かれ)昇天(しようてん)(さい)124この(いは)予言者(よげんしや)(したが)つて(とも)(のぼ)らうとしたが、125(しか)(かみ)世界(せかい)がこの神聖(しんせい)記念物(きねんぶつ)(うしな)ふことを(ほつ)しないで天使(てんし)ガブリエルを(のこ)しその力強(ちからづよ)()でその(いは)をおさへた(ゆゑ)(いま)でもその両端(りやうたん)天使(てんし)(ゆび)(あと)(のこ)つて()るとか(とな)えられてゐる。126サラセン(しき)しつつこく(かざ)られたステーンド・グラツスの(まど)のために内部(ないぶ)蝋燭(らふそく)(とも)さなくては歩行(あるけ)ない(ほど)(くら)かつた。127広場(ひろば)東北端(とうほくたん)大仕掛(おほじかけ)発掘(はつくつ)された場所(ばしよ)がある。128()(めん)から階段(かいだん)をいくつも(くだ)つて()くと、129セメントや(いし)(へり)()つた(おほ)きな貯水池(ちよすゐち)(やう)のものの一端(いつたん)(たつ)する。130ここはヨハネ(でん)(しる)してあるベチスダのプール((いけ))だと()ふことで、131三十八(さんじふはち)年間(ねんかん)()みたるものが(ここ)池水(ちすい)(うご)くのを()つて()て、132キリストに()つて(なほ)された(ところ)ですよと、133マリヤはこの由緒(ゆいしよ)根拠(こんきよ)がありますと(つよ)()つて証明(しようめい)した。
134 終日(しうじつ)(あめ)()つたり()んだりして()た。135夕方(ゆふがた)(そら)(うる)はしく()れて紺碧(こんぺき)(くも)(はだ)(あら)はして()る。136神殿(しんでん)広場(ひろば)(かど)にある燭台(しよくだい)(やう)(かたち)をした(ミナレツト)(うへ)では、137アラブがメツカの方角(はうがく)(むか)ひて(しき)りに()()げて日没前(にちぼつまへ)祈祷(きたう)をしてゐた。138その(なが)(ひび)くオリエンタルなメロデイーはエルサレムには(ふさ)はしく()いと(かん)じながら、139両人(りやうにん)(いそ)いでアメリカンコロニーを()して帰路(きろ)()きける。
140大正一二・七・一一 旧五・二八 北村隆光録)
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