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第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
01 橄欖山
〔1630〕
02 宣伝使
〔1631〕
03 聖地夜
〔1632〕
04 訪問客
〔1633〕
05 至聖団
〔1634〕
第2篇 聖地巡拝
06 偶像都
〔1635〕
07 巡礼者
〔1636〕
08 自動車
〔1637〕
09 膝栗毛
〔1638〕
10 追懐念
〔1639〕
第3篇 花笑蝶舞
11 公憤私憤
〔1640〕
12 誘惑
〔1641〕
13 試練
〔1642〕
14 荒武事
〔1643〕
15 大相撲
〔1644〕
16 天消地滅
〔1645〕
第4篇 遠近不二
17 強請
〔1646〕
18 新聞種
〔1647〕
19 祭誤
〔1648〕
20 福命
〔1649〕
21 遍路
〔1650〕
22 妖行
〔1651〕
第5篇 山河異涯
23 暗着
〔1652〕
24 妖蝕
〔1653〕
25 地図面
〔1654〕
26 置去
〔1655〕
27 再転
〔1656〕
余白歌
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第二三章
暗着
(
あんちやく
)
〔一六五二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第5篇 山河異涯
よみ(新仮名遣い):
さんがいがい
章:
第23章 暗着
よみ(新仮名遣い):
あんちゃく
通し章番号:
1652
口述日:
1923(大正12)年07月13日(旧05月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
橄欖山の山頂
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-12-08 15:38:04
OBC :
rm64a23
愛善世界社版:
251頁
八幡書店版:
第11輯 471頁
修補版:
校定版:
253頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
名利
(
めいり
)
の
欲
(
よく
)
に
捉
(
とら
)
はれし
002
男女
(
なんによ
)
四人
(
よたり
)
の
醜魂
(
しこたま
)
は
003
うろたへ
騒
(
さわ
)
ぎ
小北山
(
こぎたやま
)
004
後
(
あと
)
に
見
(
み
)
すてて
汽車
(
きしや
)
の
窓
(
まど
)
005
勢
(
いきほ
)
ひ
込
(
こ
)
んで
乗込
(
のりこ
)
めば
006
轍
(
わだち
)
の
音
(
おと
)
も
轟々
(
ごうごう
)
と
007
大地
(
だいち
)
をビリビリふるはせて
008
何
(
なん
)
の
当途
(
あてど
)
も
嵐山
(
あらしやま
)
009
花園
(
はなぞの
)
二条
(
にでう
)
京都駅
(
きやうとえき
)
010
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
向日町
(
むかふまち
)
011
上
(
のぼ
)
る
山崎
(
やまざき
)
高槻
(
たかつき
)
や
012
大阪駅
(
おほさかえき
)
も
乗越
(
のりこ
)
えて
013
出
(
い
)
でゆく
先
(
さき
)
は
広島
(
ひろしま
)
や
014
馬関
(
ばくわん
)
の
関
(
せき
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
015
転覆丸
(
てんぷくまる
)
に
身
(
み
)
を
乗
(
の
)
せて
016
漸
(
やうや
)
く
釜山
(
ふざん
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
017
京城
(
けいじやう
)
平壌
(
へいぜう
)
鴨緑
(
あふりよく
)
の
018
橋
(
はし
)
を
渡
(
わた
)
つて
満洲
(
まんしう
)
の
019
広軌
(
くわうき
)
鉄道
(
てつだう
)
スクスクと
020
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
についで
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
021
二十
(
にじふ
)
余
(
よ
)
日
(
にち
)
の
汽車
(
きしや
)
の
上
(
うへ
)
022
漸
(
やうや
)
く
聖地
(
せいち
)
に
安着
(
あんちやく
)
し
023
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
きエルサレム
024
市中
(
しちう
)
をウロウロ
迂路
(
うろ
)
付
(
つ
)
きつ
025
一目散
(
いちもくさん
)
に
橄欖
(
かんらん
)
の
026
山
(
やま
)
を
目
(
め
)
がけて
駆上
(
かけあが
)
り
027
四辺
(
あたり
)
の
景色
(
けしき
)
を
見
(
み
)
まはして
028
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせ
呆
(
あき
)
れゐる。
029
お
寅
(
とら
)
はほつと
息
(
いき
)
をつぎ、
030
お寅
『アヽヤレヤレ、
031
ヤツトの
事
(
こと
)
で、
032
八千
(
はつせん
)
哩
(
マイル
)
の
水陸
(
すゐりく
)
を
渡
(
わた
)
り、
033
目的
(
もくてき
)
地点
(
ちてん
)
へ
達
(
たつ
)
しました。
034
何
(
なん
)
とマア
桶伏山
(
をけぶせやま
)
によく
似
(
に
)
た
所
(
ところ
)
ですな。
035
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
山
(
やま
)
の
具合
(
ぐあひ
)
と
云
(
い
)
ひ
木
(
き
)
の
具合
(
ぐあひ
)
と
云
(
い
)
ひ、
036
どうも
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
桶伏山
(
をけふせやま
)
とはどこ
共
(
とも
)
なしに
物淋
(
ものさび
)
しいやうな
気
(
き
)
がするではありませぬか。
037
又
(
また
)
外国
(
ぐわいこく
)
身魂
(
みたま
)
を
盛
(
さか
)
んに
教育
(
けういく
)
せうと
思
(
おも
)
つて、
038
大
(
おほ
)
きな
学校
(
がくかう
)
を
建
(
た
)
ててゐるだありませぬか。
039
練瓦
(
れんぐわ
)
や
石
(
いし
)
をたたんで、
040
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
な
霊場
(
れいぢやう
)
をワヤにする
奴
(
やつ
)
は、
041
何処
(
どこ
)
の
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
人種
(
じんしゆ
)
だらうかなア』
042
守宮別
(
やもりわけ
)
は
迷惑顔
(
めいわくがほ
)
にて、
043
守宮別
『コレコレお
寅
(
とら
)
さま、
044
さう
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
云
(
い
)
ふものぢやありませぬよ。
045
あれはシオン
大学
(
だいがく
)
と
云
(
い
)
つて、
046
世界
(
せかい
)
の
学者
(
がくしや
)
を
集
(
あつ
)
めて、
047
世界
(
せかい
)
の
思想界
(
しさうかい
)
を
改良
(
かいりやう
)
しやうといふ
所
(
ところ
)
ですよ。
048
つまり
日
(
ひ
)
の
出
(
での
)
守護
(
しゆご
)
にせうと
云
(
い
)
つて、
049
ユダヤの
学者
(
がくしや
)
や
世界
(
せかい
)
の
博士
(
はかせ
)
等
(
たち
)
が
寄
(
よ
)
つて
経営
(
けいえい
)
してるのですよ。
050
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
なら
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つても
笑
(
わら
)
ひませぬが、
051
言葉
(
ことば
)
の
通
(
つう
)
じない
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つては
困
(
こま
)
りますからな。
052
あなたは
外国語
(
ぐわいこくご
)
が
分
(
わか
)
らぬのだから、
053
何事
(
なにごと
)
も
私
(
わたし
)
の
言
(
い
)
ふやうにして
下
(
くだ
)
さい』
054
お寅
『ヘン、
055
外国語
(
ぐわいこくご
)
が、
056
何
(
なに
)
夫程
(
それほど
)
有難
(
ありがた
)
いのだい。
057
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
さまは
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
をイロハ
四十八
(
しじふはち
)
文字
(
もじ
)
で
何
(
なに
)
もかも
治
(
をさ
)
めると
仰有
(
おつしや
)
つたのぢやありませぬか。
058
之
(
これ
)
から
外国人
(
ぐわいこくじん
)
に
改心
(
かいしん
)
さしてイロハ
四十八
(
しじふはち
)
文字
(
もじ
)
の
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
言葉
(
ことば
)
を
覚
(
おぼ
)
えさしたら
可
(
い
)
いだありませぬか。
059
それ
丈
(
だけ
)
の
権威
(
けんゐ
)
がなくて
何
(
ど
)
うして
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
となれますか。
060
お
前
(
まへ
)
さまも
余程
(
よほど
)
分
(
わか
)
らぬことを
云
(
い
)
ふぢやありませぬか。
061
オホヽヽヽ』
062
守宮別
『
又
(
また
)
はしや
がれるのかなア。
063
併
(
しか
)
し
何
(
なん
)
ぼ
はしや
いでも、
064
外国人
(
ぐわいこくじん
)
に
日本語
(
にほんご
)
の
分
(
わか
)
る
人
(
ひと
)
が
少
(
すくな
)
いからマア
結構
(
けつこう
)
だ。
065
サア
是
(
これ
)
からシオン
大学
(
だいがく
)
の
建築
(
けんちく
)
工事
(
こうじ
)
でも
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
ひませうかい』
066
お寅
『コレ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
067
そんな
気楽
(
きらく
)
なことをいつてる
時
(
とき
)
だありますまい。
068
早
(
はや
)
く、
069
桶伏山
(
をけぶせやま
)
からソツと
隠
(
かく
)
れて
来
(
き
)
てゐるといふブラバーサの
所在
(
ありか
)
を
捜
(
さが
)
し、
070
談判
(
だんぱん
)
せねば
思惑
(
おもわく
)
が
立
(
た
)
ちませぬぞや』
071
かく
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へシオン
大学
(
だいがく
)
の
創立者
(
さうりつしや
)
たるスバール
博士
(
はかせ
)
が、
072
ステツキをつき
乍
(
なが
)
らやつて
来
(
き
)
た。
073
守宮別
(
やもりわけ
)
は
得意
(
とくい
)
の
英語
(
えいご
)
で
何
(
なん
)
だかペラペラと
話
(
はな
)
しかけた。
074
博士
(
はかせ
)
も
極
(
きは
)
めて
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に
守宮別
(
やもりわけ
)
と
握手
(
あくしゆ
)
し
乍
(
なが
)
ら
半時
(
はんとき
)
ばかり
話
(
はな
)
してゐた。
075
其
(
その
)
要点
(
えうてん
)
は……
守宮別
(
やもりわけ
)
が
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
から
救世主
(
きうせいしゆ
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
を
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
たといふ
大体
(
だいたい
)
の
話
(
はなし
)
であつた。
076
スバール
博士
(
はかせ
)
は
真面目
(
まじめ
)
に
聞
(
き
)
いてゐたが、
077
しまひには
吹出
(
ふきいだ
)
してニタツと
笑
(
わら
)
ひ
袂
(
たもと
)
を
別
(
わか
)
つたのである。
078
守宮別
(
やもりわけ
)
は
此
(
この
)
博士
(
はかせ
)
に
認
(
みと
)
められなければ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
もダメだと
思
(
おも
)
つたが、
079
そ
知
(
し
)
らぬ
面
(
つら
)
して
平気
(
へいき
)
を
装
(
よそほ
)
ふてゐた。
080
お
寅
(
とら
)
はスバール
博士
(
はかせ
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
081
又
(
また
)
もや
喋
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
したり。
082
お寅
『コレ、
083
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
084
チーチク、
085
パーパーと
雀
(
すずめ
)
のよなことをいつてゐたが、
086
一体
(
いつたい
)
何
(
なに
)
をいつてゐたのだい。
087
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
だといふことをお
前
(
まへ
)
さまは
言
(
い
)
はなかつたのかい』
088
守宮別
『ソンナことに
如才
(
じよさい
)
がありますか。
089
その
為
(
ため
)
にはるばる
来
(
き
)
たのではありませぬか。
090
確
(
たしか
)
に
云
(
い
)
ひましたよ。
091
あの
方
(
かた
)
はスバール
博士
(
はかせ
)
といふて
世界
(
せかい
)
で
有名
(
いうめい
)
な
学者
(
がくしや
)
ですよ。
092
あの
人
(
ひと
)
さへ
分
(
わか
)
れば
世界中
(
せかいぢう
)
の
人間
(
にんげん
)
があなたを
救世主
(
きうせいしゆ
)
と
認
(
みと
)
めてくれますよ』
093
お寅
『
何
(
なん
)
とマア
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものだなア。
094
ここへ
着
(
つ
)
くが
早
(
はや
)
いか、
095
スバール
博士
(
はかせ
)
に
会
(
あ
)
ふて
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
を
認
(
みと
)
めて
貰
(
もら
)
ふとは
本当
(
ほんたう
)
に
神
(
かみ
)
さまも
偉
(
えら
)
いワイ。
096
ヘン、
097
ブラバーサなんて、
098
抜
(
ぬけ
)
がけの
功名
(
こうみやう
)
をせうと
思
(
おも
)
つて
先
(
さき
)
へ
来
(
き
)
乍
(
なが
)
ら、
099
何処
(
どこ
)
の
隅
(
すみ
)
に
居
(
ゐ
)
るかとも
云
(
い
)
はれてゐないとみえて、
100
橄欖山
(
かんらんざん
)
に
姿
(
すがた
)
も
見
(
み
)
えぬぢやないか。
101
どつかへ
消滅
(
せうめつ
)
したと
見
(
み
)
える。
102
オホヽヽヽあた
気味
(
きみ
)
の
可
(
よ
)
い、
103
だから
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
従
(
したが
)
へ……といふのだ。
104
コレ
曲彦
(
まがひこ
)
さま、
105
お
花
(
はな
)
さま、
106
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
が
分
(
わか
)
りましたかな』
107
曲彦
『
今
(
いま
)
来
(
き
)
たばかりで
根
(
ね
)
つから
何
(
なに
)
も
分
(
わか
)
りませぬ』
108
お寅
『エヽ、
109
何
(
なん
)
といふ
盲
(
めくら
)
だいな。
110
お
花
(
はな
)
さま、
111
お
前
(
まへ
)
は
分
(
わか
)
つただらうな』
112
お花
『
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふても
英語
(
えいご
)
を
知
(
し
)
らないものだから
不便
(
ふべん
)
で
御座
(
ござ
)
いますワイ』
113
お寅
『そこが
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
でいくのだよ。
114
イロハ
四十八
(
しじふはち
)
文字
(
もじ
)
さへ
使
(
つか
)
へば
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
に
通用
(
つうよう
)
するのだからな』
115
曲彦
『
曲彦
(
まがひこ
)
が
考
(
かんが
)
へると、
116
現
(
げん
)
に
此処
(
ここ
)
では
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
言葉
(
ことば
)
が
通用
(
つうよう
)
せぬぢやありませぬか。
117
イロハ
四十八
(
しじふはち
)
文字
(
もじ
)
も
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
なものですな』
118
お寅
『コレ、
119
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
120
二人
(
ふたり
)
の
分
(
わか
)
らずやに、
121
今
(
いま
)
の
博士
(
はかせ
)
のことをトツクリと
合点
(
がつてん
)
の
行
(
ゆ
)
くやうに
言
(
い
)
ふて
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さい。
122
さうするとチツとは、
123
目
(
め
)
がさめるでせうから、
124
今
(
いま
)
あの
博士
(
はかせ
)
が
去
(
い
)
んだから、
125
やがて
旗
(
はた
)
を
立
(
た
)
てて
大勢
(
おほぜい
)
で
迎
(
むか
)
へに
来
(
く
)
るだらう。
126
エヘヽヽヽ』
127
守宮別
『コレお
寅
(
とら
)
さま、
128
ダメですよ。
129
さう
今
(
いま
)
から
喜
(
よろこ
)
んで
貰
(
もら
)
ふと
困
(
こま
)
りますがな』
130
お寅
『エヽ?
何
(
なに
)
がダメだい。
131
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
てるだないか。
132
世界
(
せかい
)
の
学者
(
がくしや
)
ともあるものが、
133
ソンナことが
分
(
わか
)
らぬと
云
(
い
)
ふことがあるものか。
134
お
前
(
まへ
)
はそんなこと
云
(
い
)
つて
いちやつ
かすのだらう、
135
本当
(
ほんたう
)
のこと
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
136
守宮別
『
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
云
(
い
)
つたら、
137
あなたビツクリしますよ。
138
サア
当山
(
たうざん
)
を
下
(
くだ
)
つて、
139
どつかのホテルへ
這入
(
はい
)
りませう』
140
お寅
『そして
博士
(
はかせ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つたのだい』
141
守宮別
『モウ
云
(
い
)
ひますまい。
142
偽
(
にせ
)
予言者
(
よげんしや
)
、
143
偽
(
にせ
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
来
(
く
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
144
お
前
(
まへ
)
さまも
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
ませと
云
(
い
)
ひました。
145
何
(
ど
)
うもあの
博士
(
はかせ
)
の
云
(
い
)
ふことには
真理
(
しんり
)
があるやうです。
146
こんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
て
恥
(
はぢ
)
を
掻
(
か
)
きました。
147
何
(
なに
)
しろ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
偽
(
にせ
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
ですからなア』
148
お寅
『エヽ
馬鹿
(
ばか
)
にしなさるな。
149
お
前
(
まへ
)
さまの
云
(
い
)
ひ
様
(
やう
)
が
悪
(
わる
)
いからだ。
150
チーパーチーパーと
小鳥
(
ことり
)
の
鳴
(
な
)
く
様
(
やう
)
なこと
云
(
い
)
つて、
151
何
(
なに
)
分
(
わか
)
るものか。
152
なぜモツと
分
(
わか
)
る
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
らぬのだい。
153
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
人
(
ひと
)
だなア』
154
守宮別
『
何
(
ど
)
つかでウヰスキーでも
一杯
(
いつぱい
)
やらぬと
元気
(
げんき
)
が
出
(
で
)
ませぬワ。
155
一遍
(
いつぺん
)
エルサレムの
町
(
まち
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
きませう、
156
そこでゆつくり
話
(
はな
)
しませう』
157
お寅
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
158
何処
(
どこ
)
ぞ
此処
(
ここ
)
らにブラバーサが
潜伏
(
せんぷく
)
して
居
(
ゐ
)
るか
知
(
し
)
れぬから、
159
一遍
(
いつぺん
)
彼奴
(
あいつ
)
に
会
(
あ
)
うて
面
(
つら
)
の
皮
(
かは
)
をヒンむいてやらむことにや
仕方
(
しかた
)
がない。
160
何
(
なん
)
でも
彼奴
(
あいつ
)
がシオン
大学
(
だいがく
)
の
博士
(
はかせ
)
等
(
ら
)
に
会
(
あ
)
うて
邪魔
(
じやま
)
をして
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない。
161
サアサア
曲彦
(
まがひこ
)
さま、
162
お
花
(
はな
)
さま、
163
此
(
この
)
山
(
やま
)
を
小口
(
こぐち
)
から
捜
(
さが
)
すのだよ』
164
守宮別
『お
寅
(
とら
)
さま、
165
ブラバーサだつて、
166
コンナ
山
(
やま
)
ばかりに
居
(
を
)
り
相
(
さう
)
なことはない。
167
朝
(
あさ
)
とか
晩
(
ばん
)
とかに
一遍
(
いつぺん
)
づつ
参
(
まゐ
)
る
位
(
くらゐ
)
でせう。
168
キツと
何
(
ど
)
つかの
宿
(
やど
)
に
居
(
を
)
るに
違
(
ちがひ
)
ありませぬワ』
169
お寅
『
折角
(
せつかく
)
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
たのだから、
170
ソンナラ
此処
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
さまを
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
して、
171
歌
(
うた
)
でも
詠
(
よ
)
んで、
172
それからエルサレム
迄
(
まで
)
一先
(
ひとま
)
づ
行
(
ゆ
)
くことにしませう』
173
曲彦
『モシお
寅
(
とら
)
さま、
174
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
を
拝
(
をが
)
めと
云
(
い
)
ひなさるが、
175
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
貴女
(
あなた
)
とは
違
(
ちが
)
ひましたかいな』
176
お寅
『エー
合点
(
がつてん
)
の
悪
(
わる
)
い、
177
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
云
(
い
)
へば
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大弥勒
(
おほみろく
)
さまを
拝
(
をが
)
めと
云
(
い
)
ふことだがな。
178
一
(
いち
)
を
聞
(
き
)
いたら
十
(
じふ
)
を
悟
(
さと
)
るのが
大和
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
ですよ。
179
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
迄
(
まで
)
教
(
をし
)
へてやらねばならぬといふのは、
180
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たものだなア』
181
曲彦
『それでもお
寅
(
とら
)
さまの
選
(
より
)
によつた
水晶魂
(
すゐしやうみたま
)
が
来
(
き
)
たのだもの、
182
さう
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひますまいか。
183
アタ
阿呆
(
あはう
)
らしい、
184
こんな
遠
(
とほ
)
い
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
ついて
来
(
き
)
て、
185
いきなり
小言
(
こごと
)
を
聞
(
き
)
かうとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
ひませぬワイ、
186
なアお
花
(
はな
)
さま、
187
本当
(
ほんたう
)
にバカらしいぢやありませぬか。
188
歌
(
うた
)
もロクによむ
気
(
き
)
になりませぬがな』
189
お花
『コレ
曲彦
(
まがひこ
)
さま、
190
ここへ
来
(
き
)
た
上
(
うへ
)
はモウ
仕方
(
しかた
)
がない、
191
守宮別
(
やもりわけ
)
さまとお
寅
(
とら
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
りにするのだよ。
192
言葉
(
ことば
)
も
分
(
わか
)
らず、
193
神徳
(
しんとく
)
の
足
(
た
)
らぬ
者
(
もの
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つたつてダメだらう……
神力
(
しんりき
)
の
高
(
たか
)
いお
寅
(
とら
)
さまと
外国語
(
ぐわいこくご
)
の
分
(
わか
)
つた
守宮別
(
やもりわけ
)
さまに
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
するより
途
(
みち
)
がありませぬワイ』
194
守宮別
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
此処
(
ここ
)
へ
来
(
く
)
れば
此
(
この
)
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
天下
(
てんか
)
だ。
195
お
寅
(
とら
)
さまもチツと
我
(
が
)
を
折
(
を
)
つて
私
(
わたし
)
の
云
(
い
)
ふことを
聞
(
き
)
きなされ。
196
イロハ
四十八
(
しじふはち
)
文字
(
もじ
)
も
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
ては
余
(
あま
)
り
権威
(
けんゐ
)
がありますまいがな。
197
アハヽヽヽ』
198
お寅
『これ
丈
(
だけ
)
立派
(
りつぱ
)
な
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
から
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
になつてゐるのに、
199
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
ばかりとみえて、
200
一人
(
ひとり
)
も
歓迎
(
くわんげい
)
に
来
(
こ
)
ぬぢやないか。
201
コレ
守宮
(
やもり
)
さま、
202
お
前
(
まへ
)
さまの
談判
(
だんぱん
)
が
悪
(
わる
)
いからだ。
203
モ
一遍
(
いつぺん
)
宣直
(
のりなほ
)
して
来
(
き
)
なさい。
204
それが
厭
(
いや
)
ならブラバーサを
捜
(
さが
)
して、
205
彼奴
(
あいつ
)
を
博士
(
はかせ
)
の
前
(
まへ
)
であやまらすが
宜
(
よろ
)
しい。
206
さうすりや
一遍
(
いつぺん
)
に
信用
(
しんよう
)
が
回復
(
くわいふく
)
しますぞや』
207
お
寅
(
とら
)
『
海山
(
うみやま
)
をはるばる
越
(
こ
)
えて
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
208
聞
(
き
)
きしに
違
(
たが
)
ふ
橄欖
(
かんらん
)
の
山
(
やま
)
』
209
お
花
(
はな
)
『
思
(
おも
)
ひきや
長
(
なが
)
い
鉄路
(
てつろ
)
を
渡
(
わた
)
り
来
(
き
)
て
210
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
にて
小言
(
こごと
)
聞
(
き
)
くとは』
211
お寅
『コレお
花
(
はな
)
さま、
212
何
(
なん
)
といふ
不足
(
ふそく
)
らしい
歌
(
うた
)
をいふのだい。
213
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しなさい』
214
お花
『ハイハイ、
215
宣直
(
のりなほ
)
さうと
云
(
い
)
つたつて、
216
乗車
(
じやうしや
)
切符
(
きつぷ
)
もなし、
217
何
(
ど
)
うするのですかい』
218
お寅
『エー
合点
(
がつてん
)
の
悪
(
わる
)
い、
219
歌
(
うた
)
を
言
(
い
)
ひ
直
(
なほ
)
しなさいと
云
(
い
)
ふのだがなア』
220
お
花
(
はな
)
『
果
(
は
)
てしなき
海山
(
うみやま
)
越
(
こ
)
えてこがれたる
221
聖地
(
せいち
)
にやうやうつきの
空
(
そら
)
かな』
222
お寅
『
又
(
また
)
ソンナことを
言
(
い
)
ひなさる、
223
つきの
空
(
そら
)
なぞと
私
(
わたし
)
は
月
(
つき
)
は
嫌
(
きら
)
ひだと
何時
(
いつ
)
も
云
(
い
)
ふぢやないか。
224
丸
(
まる
)
くなつたり
虧
(
か
)
けたり、
225
細
(
ほそ
)
くなつたり、
226
出
(
で
)
たり
出
(
で
)
なかつたりするやうな、
227
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
的
(
てき
)
の
月
(
つき
)
のことをいつて
下
(
くだ
)
さるな。
228
何
(
なん
)
で
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
を
歌
(
うた
)
ひなさらぬか。
229
コレ
曲彦
(
まがひこ
)
さま、
230
お
前
(
まへ
)
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
つて
御覧
(
ごらん
)
……』
231
曲彦
(
まがひこ
)
『
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
あとに
見
(
み
)
すてて
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
232
乗
(
の
)
りて
来
(
き
)
たのは
橄欖
(
かんらん
)
の
山
(
やま
)
』
233
お寅
『ソリヤ
何
(
なん
)
ぢやいなア。
234
ソンナ
腰抜歌
(
こしぬけうた
)
がありますか』
235
曲彦
『それでも
私
(
わたし
)
は
力
(
ちから
)
一
(
いち
)
パイ、
236
知恵
(
ちゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
してよんだのだから、
237
余
(
あま
)
り
笑
(
わら
)
ふて
貰
(
もら
)
ひますまいかい』
238
お寅
『エー、
239
下手
(
へた
)
でも
上手
(
じやうず
)
でもよい。
240
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
のことを
歌
(
うた
)
ふのだよ』
241
曲彦
(
まがひこ
)
は、
242
曲彦
『
日
(
ひ
)
出
(
い
)
づる
国
(
くに
)
の
御空
(
みそら
)
を
立出
(
たちで
)
たる
243
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまは
目
(
め
)
から
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
神
(
かみ
)
となる』
244
お寅
『
何
(
なん
)
といふバカだらうかな。
245
エーエー
仕方
(
しかた
)
がない、
246
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
を
力
(
ちから
)
にするな、
247
杖
(
つゑ
)
につくなと
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた
筈
(
はず
)
だ。
248
ドレ
私
(
わたし
)
が
自
(
みづか
)
ら
詠
(
よ
)
んでみませう……
249
烏羽玉
(
うばたま
)
の
暗
(
やみ
)
をてらしてさし
上
(
のぼ
)
る
250
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
光
(
ひかり
)
尊
(
たふと
)
し
251
と、
252
かういふのだよ』
253
曲彦
『あなたのいふ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
さまは
日天
(
につてん
)
さまのこつちや
御座
(
ござ
)
いませぬか、
254
チツと
可笑
(
をか
)
しいぢや
御座
(
ござ
)
いませぬかい』
255
お
寅
(
とら
)
『コラ
曲彦
(
まがひこ
)
、
256
よく
聞
(
き
)
きなさい。
257
此
(
この
)
世界
(
せかい
)
は
元
(
もと
)
は
一天
(
いつてん
)
さまがお
造
(
つく
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
258
そして
一天
(
いつてん
)
様
(
さま
)
のお
子様
(
こさま
)
に
日天
(
につてん
)
月天
(
ぐわつてん
)
とあるのだ。
259
それを
御
(
ご
)
三体
(
さんたい
)
の
大神
(
おほかみ
)
といふのだ。
260
併
(
しか
)
し
月天
(
ぐわつてん
)
さまといふのは
盈虧
(
みちかけ
)
のあるお
月様
(
つきさま
)
だないよ。
261
月天
(
ぐわつてん
)
が
行
(
ゆ
)
きましたかな。
262
次
(
つぎ
)
が
鍾馗
(
しようき
)
さまの
霊
(
みたま
)
、
263
其
(
その
)
次
(
つぎ
)
が
東方朔
(
とうはうさく
)
の
身魂
(
みたま
)
、
264
此
(
この
)
五
(
いつ
)
つを
合
(
あは
)
せて
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
五苦楽
(
ごくらく
)
といふのだ。
265
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
の
端々
(
はしばし
)
に
○
(
まる
)
をつけて
御覧
(
ごらん
)
なさい、
266
ヤツパリ
五
(
いつ
)
つになりませうがな』
267
曲彦
『
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
さまやユラリ
彦
(
ひこ
)
さま、
268
ミロク
成就
(
じやうじゆ
)
の
大神
(
おほかみ
)
さまは
何
(
ど
)
うなつたのですか。
269
東方朔
(
とうはうさく
)
なことを
仰有
(
おつしや
)
いますな。
270
それでも
正気
(
しやうき
)
で
仰有
(
おつしや
)
るのですか。
271
日天
(
につてん
)
月天
(
ぐわつてん
)
が
行
(
ゆ
)
きませぬワイ。
272
オツホヽヽヽ』
273
お寅
『
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
言葉
(
ことば
)
とは
此処
(
ここ
)
の
言葉
(
ことば
)
は
違
(
ちが
)
ふから
名
(
な
)
を
変
(
か
)
へたのだよ。
274
英語
(
えいご
)
を
使
(
つか
)
ふ
国
(
くに
)
へ
来
(
き
)
たら
英語
(
えいご
)
で
言
(
い
)
はなならぬからなア』
275
曲彦
『ヘーエ、
276
それでも
英語
(
えいご
)
ですかいな、
277
曲彦
(
まがひこ
)
には
合点
(
がてん
)
が
承知
(
しようち
)
しませぬワ』
278
お寅
『エーエ、
279
ゴテゴテいひなさるな、
280
サア
一
(
ひと
)
つ
守宮別
(
やもりわけ
)
さまも
歌
(
うた
)
ひなさい』
281
守宮別
『
私
(
わたし
)
は
英語
(
えいご
)
で
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
つてみませう。
282
極簡単
(
ごくかんたん
)
によく
分
(
わか
)
るやうにいひますから、
283
気
(
き
)
をつけて
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さいや……
284
ヂヤパニース、
285
セウホクザンノ、
286
ヤンチヤアバーサン、
287
オー、
288
トラワー、
289
キンモーキウビニー、
290
ダー、
291
マサレテー、
292
ウミヤマヲコエ、
293
ココマデヤツテキタノワー、
294
カワイ、
295
ソー、
296
ダゾヨー、
297
オレモ、
298
スバールハカセニアウテ、
299
ニセモノトイフコトガワカリタノダゾヨ、
300
ソレデアイソガツーキターダカラ、
301
ハライセニサケデモノンデヤロート、
302
オモツテイルノダー、
303
アータ、
304
アホラシ、
305
バカニ、
306
シラレ、
307
タゾヨ、
308
イヒ、
309
イヒヽヽヽヽ、
310
あゝ
英語
(
えいご
)
の
歌
(
うた
)
も
一寸
(
ちよつと
)
六
(
む
)
つかしいワイ』
311
お寅
『コレ、
312
守宮
(
やもり
)
さま、
313
人
(
ひと
)
が
知
(
し
)
らぬかと
思
(
おも
)
ふて
何
(
なん
)
といふ
悪口
(
わるくち
)
をいふのだい。
314
ヘン、
315
そんな
英語
(
えいご
)
位
(
くらゐ
)
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
りますぞや。
316
私
(
わたし
)
だつてその
位
(
くらゐ
)
の
英語
(
えいご
)
は
立派
(
りつぱ
)
に
使
(
つか
)
つてみせますぞや。
317
お
前
(
まへ
)
さまはヤケになつて
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
むと
云
(
い
)
つただらう。
318
呑
(
の
)
むと
云
(
い
)
つたつて、
319
お
金
(
かね
)
がなければ
呑
(
の
)
めますまい。
320
チヤンと
私
(
わたし
)
が
懐
(
ふところ
)
にしめこみてゐるのだから、
321
一合
(
いちがふ
)
づつ
呑
(
の
)
まして
上
(
あ
)
げやう。
322
お
前
(
まへ
)
さまに
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
ますと、
323
泥
(
どろ
)
に
酔
(
よ
)
ふた
鮒
(
ふな
)
の
様
(
やう
)
になつてチツとも
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬからなア…………エー
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
うなつて
来
(
き
)
た。
324
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
エルサレムの
何
(
ど
)
つかで
宿
(
やど
)
をとることにせうかい………
皆
(
みな
)
さま、
325
ついて
来
(
き
)
なされや』
326
と
肩
(
かた
)
や
尻
(
しり
)
をプリンプリンとふり
乍
(
なが
)
ら
不機嫌
(
ふきげん
)
な
面
(
かほ
)
して
山
(
やま
)
を
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
327
(
大正一二・七・一三
旧五・三〇
松村真澄
録)
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