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第64巻(卯の巻)上
序
総説
第1篇 日下開山
01 橄欖山
〔1630〕
02 宣伝使
〔1631〕
03 聖地夜
〔1632〕
04 訪問客
〔1633〕
05 至聖団
〔1634〕
第2篇 聖地巡拝
06 偶像都
〔1635〕
07 巡礼者
〔1636〕
08 自動車
〔1637〕
09 膝栗毛
〔1638〕
10 追懐念
〔1639〕
第3篇 花笑蝶舞
11 公憤私憤
〔1640〕
12 誘惑
〔1641〕
13 試練
〔1642〕
14 荒武事
〔1643〕
15 大相撲
〔1644〕
16 天消地滅
〔1645〕
第4篇 遠近不二
17 強請
〔1646〕
18 新聞種
〔1647〕
19 祭誤
〔1648〕
20 福命
〔1649〕
21 遍路
〔1650〕
22 妖行
〔1651〕
第5篇 山河異涯
23 暗着
〔1652〕
24 妖蝕
〔1653〕
25 地図面
〔1654〕
26 置去
〔1655〕
27 再転
〔1656〕
余白歌
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第一二章
誘惑
(
いうわく
)
〔一六四一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上
篇:
第3篇 花笑蝶舞
よみ(新仮名遣い):
かしょうちょうぶ
章:
第12章 誘惑
よみ(新仮名遣い):
ゆうわく
通し章番号:
1641
口述日:
1923(大正12)年07月12日(旧05月29日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
橄欖山の山頂
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-25 18:33:00
OBC :
rm64a12
愛善世界社版:
133頁
八幡書店版:
第11輯 426頁
修補版:
校定版:
133頁
普及版:
62頁
初版:
ページ備考:
001
ブラバーサは
蒼空
(
さうくう
)
の
月
(
つき
)
を
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
ら
只一人
(
ただひとり
)
シヨンボリと
立
(
た
)
つてゐる。
002
そこへスタスタやつて
来
(
き
)
た
女
(
をんな
)
は、
003
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
から
真心
(
まごころ
)
をこめて
聖地
(
せいち
)
の
案内
(
あんない
)
をしてくれたマリヤであつた。
004
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
005
あなたお
一人
(
ひとり
)
で
御座
(
ござ
)
りますか。
006
妾
(
わたし
)
は
又
(
また
)
サロメ
様
(
さま
)
と
御
(
ご
)
一緒
(
いつしよ
)
かと
思
(
おも
)
つてゐました』
007
ブラバーサ
『あゝ
貴女
(
あなた
)
はマリヤ
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
りましたか。
008
貴女
(
あなた
)
もお
一人
(
ひとり
)
で
夜分
(
やぶん
)
によくお
出
(
いで
)
になりましたな』
009
マリヤ
『ハイ、
010
あなたのお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
つて
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
とは
存
(
ぞん
)
じ
乍
(
なが
)
らコロニーをソツと
脱
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
して
参
(
まゐ
)
りましたのですよ。
011
折角
(
せつかく
)
サロメ
様
(
さま
)
とシツポリ
話
(
はな
)
さうと
思
(
おも
)
つて
御座
(
ござ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
012
エライ
邪魔者
(
じやまもの
)
が
参
(
まゐ
)
りまして、
013
お
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
ませます。
014
月
(
つき
)
に
村雲
(
むらくも
)
、
015
花
(
はな
)
に
嵐
(
あらし
)
とやら、
016
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
行
(
ゆ
)
かないもので
御座
(
ござ
)
いますよ。
017
ホヽヽヽヽ』
018
ブラバーサ
『これは
又
(
また
)
、
019
妙
(
めう
)
なお
言葉
(
ことば
)
を
承
(
うけたま
)
はります。
020
サロメ
様
(
さま
)
も
時々
(
ときどき
)
当山
(
たうざん
)
へお
参
(
まゐ
)
りになり、
021
私
(
わたし
)
も
二三回
(
にさんくわい
)
此
(
この
)
山上
(
さんじやう
)
で
偶然
(
ぐうぜん
)
お
目
(
め
)
にかかりましたが、
022
別
(
べつ
)
にサロメ
様
(
さま
)
と
内密
(
ないみつ
)
で
話
(
はな
)
さねばならぬやうな
訳
(
わけ
)
もありませぬから、
023
何卒
(
どうぞ
)
気
(
き
)
をもみて
下
(
くだ
)
さいますな。
024
私
(
わたし
)
は
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
な
態度
(
たいど
)
に
満心
(
まんしん
)
の
感謝
(
かんしや
)
を
捧
(
ささ
)
げて
居
(
を
)
ります』
025
マリヤ
『
聖師
(
せいし
)
は
嘘
(
うそ
)
を
仰有
(
おつしや
)
らぬもの、
026
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
に
間違
(
まちがひ
)
なくば
妾
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
027
時
(
とき
)
に
一
(
ひと
)
つお
願
(
ねが
)
ひし
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますが、
028
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬか。
029
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
差上
(
さしあ
)
げました
手紙
(
てがみ
)
はお
読
(
よみ
)
下
(
くだ
)
さつたでせうな』
030
ブラバーサ
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
以前
(
いぜん
)
にアラブが
貴女
(
あなた
)
からの
手紙
(
てがみ
)
だと
云
(
い
)
つてカトリックの
僧院
(
そうゐん
)
迄
(
まで
)
届
(
とど
)
けて
呉
(
く
)
れましたが、
031
その
儘
(
まま
)
、
032
まだ
開封
(
かいふう
)
もせずに
懐
(
ふところ
)
に
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
ります』
033
マリヤ
『
貴方
(
あなた
)
は
私
(
わたし
)
の
真心
(
まごころ
)
がお
分
(
わか
)
りにならぬのでせう。
034
いやお
嫌
(
きら
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばすのでせう。
035
海洋
(
かいやう
)
万里
(
ばんり
)
を
越
(
こ
)
えて
遥々
(
はるばる
)
聖地
(
せいち
)
にお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばし、
036
清
(
きよ
)
きお
身体
(
からだ
)
に
黴菌
(
ばいきん
)
が
附着
(
ふちやく
)
した
様
(
やう
)
に
思召
(
おぼしめ
)
して、
037
穢
(
きたな
)
い
女
(
をんな
)
の
手紙
(
てがみ
)
なんか、
038
読
(
よ
)
まないと
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
でせう。
039
それならそれで
宜
(
よろ
)
しい、
040
妾
(
わたし
)
は
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばなりませぬから、
041
読
(
よ
)
んで
貰
(
もら
)
はない
手紙
(
てがみ
)
なら、
042
貴方
(
あなた
)
に
差上
(
さしあ
)
げても
無駄
(
むだ
)
ですから
返
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
043
ブラバーサ
『マリヤさまさう
立腹
(
りつぷく
)
して
貰
(
もら
)
つちや
困
(
こま
)
りますよ。
044
別
(
べつ
)
にそんな
考
(
かんが
)
へがあつたのぢやありませぬ。
045
あまり
聖地
(
せいち
)
の
研究
(
けんきう
)
に
没頭
(
ぼつとう
)
してゐましたので
遂
(
つひ
)
失念
(
しつねん
)
して
居
(
を
)
つたのです』
046
マリヤ
『
妾
(
わたし
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
忘
(
わす
)
れられる
位
(
くらゐ
)
なら
妾
(
わたし
)
等
(
など
)
は
念頭
(
ねんとう
)
に
無
(
な
)
いのでせうな、
047
アヽ
悔
(
くや
)
しい!』
048
ブラバーサ
『マリヤさま、
049
どうして
貴女
(
あなた
)
を
忘
(
わす
)
れませう。
050
エルサレムの
停車場
(
ていしやぢやう
)
へ
着
(
つ
)
くと
匆々
(
さうさう
)
、
051
あの
街道
(
かいだう
)
で
貴女
(
あなた
)
にお
目
(
め
)
にかかり、
052
見知
(
みし
)
らぬ
異郷
(
いきやう
)
の
空
(
そら
)
で
思
(
おも
)
はぬ
貴女
(
あなた
)
とお
会
(
あ
)
ひした、
053
あの
時
(
とき
)
の
印象
(
いんしやう
)
は
一生
(
いつしやう
)
私
(
わたし
)
は
忘
(
わす
)
れませぬ。
054
どうぞ
悪
(
わる
)
くは
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな』
055
マリヤ
『
貴方
(
あなた
)
は
聖地
(
せいち
)
巡覧
(
じゆんらん
)
の
折
(
をり
)
、
056
どこ
迄
(
まで
)
も
妾
(
わたし
)
を
愛
(
あい
)
すると
仰有
(
おつしや
)
つたぢやありませぬか。
057
妾
(
わたし
)
はその
温
(
あたた
)
かいお
言葉
(
ことば
)
が
骨身
(
ほねみ
)
に
浸
(
し
)
み
渡
(
わた
)
り、
058
もはや
今日
(
けふ
)
となつては
恋
(
こひ
)
の
曲物
(
くせもの
)
に
捕
(
とら
)
はれ、
059
どうする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
060
妾
(
わたし
)
の
命
(
いのち
)
は
貴方
(
あなた
)
の
掌中
(
しやうちう
)
に
握
(
にぎ
)
られたも
同様
(
どうやう
)
で
御座
(
ござ
)
ります。
061
何卒
(
どうぞ
)
その
手紙
(
てがみ
)
を
月影
(
つきかげ
)
に
照
(
て
)
らし
一度
(
いちど
)
読
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さいませ。
062
そしてキツパリと
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
いもので
御座
(
ござ
)
ります』
063
ブラバーサ
『
左様
(
さやう
)
ならば
折角
(
せつかく
)
の
御
(
お
)
思召
(
ぼしめし
)
、
064
お
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ふか、
065
従
(
したが
)
はぬかは
後
(
のち
)
の
問題
(
もんだい
)
として、
066
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
もここで
拝見
(
はいけん
)
しませう』
067
と
懐
(
ふところ
)
より
信書
(
しんしよ
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
068
封
(
ふう
)
押
(
お
)
し
切
(
き
)
つて、
069
胸
(
むね
)
轟
(
とどろ
)
かせ
乍
(
なが
)
ら
読
(
よ
)
み
初
(
はじ
)
めた………………
070
一
(
ひとつ
)
、
071
吾
(
わが
)
最
(
もつと
)
も
敬愛
(
けいあい
)
するルートバハーの
聖師
(
せいし
)
ブラバーサ
様
(
さま
)
に
一書
(
いつしよ
)
を
差上
(
さしあ
)
げ、
072
切
(
せつ
)
なる
妾
(
わらは
)
が
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
告白
(
こくはく
)
致
(
いた
)
します。
073
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
074
あなたは
全世界
(
ぜんせかい
)
の
人類
(
じんるゐ
)
や
凡
(
すべ
)
てのものの
為
(
ため
)
に
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なにお
苦
(
くる
)
しみ
遊
(
あそ
)
ばすのは
実
(
じつ
)
に
尊
(
たふと
)
く
感謝
(
かんしや
)
に
堪
(
た
)
へませぬ。
075
そこへ
又
(
また
)
妾
(
わたし
)
のやうな
大罪人
(
だいざいにん
)
がお
近
(
ちか
)
づきになりまして
益々
(
ますます
)
お
苦
(
くる
)
しみを
増
(
まし
)
なさる
事
(
こと
)
を
深
(
ふか
)
く
謝罪
(
しやざい
)
致
(
いた
)
します。
076
妾
(
わたし
)
は
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかつてより
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうだう
)
にからまれ、
077
日夜
(
にちや
)
苦悶
(
くもん
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
を
)
ります。
078
此
(
この
)
苦
(
くる
)
しみを
免
(
まぬが
)
れむと
朝夕
(
あさゆふ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
祈
(
いの
)
り、
079
大
(
だい
)
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
し
自
(
みづか
)
ら
心
(
こころ
)
を
警
(
いまし
)
め、
080
幾度
(
いくたび
)
か
鞭
(
むち
)
をうつてもうつても
粉
(
こ
)
にして
砕
(
くだ
)
いても、
081
此
(
この
)
猛烈
(
まうれつ
)
な
情熱
(
じやうねつ
)
の
煩悩火
(
ぼんなうくわ
)
は
弱
(
よわ
)
い
女
(
をんな
)
の
意志
(
いし
)
では
消
(
け
)
す
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ。
082
妾
(
わたし
)
は
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
み、
083
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
に
責
(
せめ
)
られて
居
(
を
)
ります。
084
あゝ
此
(
この
)
妾
(
わたし
)
の
霊肉共
(
れいにくとも
)
に
救
(
すく
)
うて
下
(
くだ
)
さるものは
誰人
(
たれびと
)
で
御座
(
ござ
)
りませうか。
085
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
の
尊
(
たふと
)
い
温
(
あたた
)
かい
愛
(
あい
)
より
外
(
ほか
)
には
何物
(
なにもの
)
もありませぬ。
086
妾
(
わたし
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
の
愛情
(
あいじやう
)
の
籠
(
こ
)
もつた、
087
寛
(
ゆた
)
かな
御懐
(
みふところ
)
に
抱
(
いだ
)
かれ
度
(
た
)
いので
御座
(
ござ
)
ります。
088
身
(
み
)
も
魂
(
たましひ
)
も
全部
(
ぜんぶ
)
を
捧
(
ささ
)
げ
奉
(
まつ
)
つて、
089
さうして
暫
(
しばら
)
く
無意識
(
むいしき
)
状態
(
じやうたい
)
になつて
眠
(
ねむ
)
つて
見
(
み
)
たう
御座
(
ござ
)
ります。
090
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
は、
091
はしたない
賤
(
いや
)
しき
女
(
をんな
)
と
思召
(
おぼしめ
)
さるるでせうが、
092
貴方
(
あなた
)
に
抱
(
いだ
)
かるるのは
妾
(
わたし
)
の
生命
(
いのち
)
を
生
(
い
)
かし、
093
妾
(
わたし
)
をして
間
(
ま
)
もなく、
094
美
(
うつく
)
しい
芽
(
め
)
を
吹
(
ふ
)
き
大活動
(
だいくわつどう
)
をさして
下
(
くだ
)
さる
準備
(
じゆんび
)
となるのではありますまいか。
095
妾
(
わたし
)
の
霊
(
れい
)
も
体
(
たい
)
も
恋
(
こひ
)
の
焔
(
ほのほ
)
の
為
(
ため
)
に
疲
(
つか
)
れきつて
居
(
を
)
ります。
096
もはや
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えむばかりになりました。
097
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
、
098
妾
(
わたし
)
と
云
(
い
)
ふものを、
099
どうか、
100
も
一度
(
いちど
)
甦
(
よみがへ
)
らせて
下
(
くだ
)
さいませ。
101
あまり
人
(
ひと
)
の
来
(
こ
)
ない
閑寂
(
かんじやく
)
な
処
(
ところ
)
で、
102
シンミリと
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
の
温
(
あたた
)
かい
愛
(
あい
)
の
御手
(
みて
)
に
抱
(
だ
)
きしめて
復活
(
ふくくわつ
)
せしめて
下
(
くだ
)
さいませ。
103
万一
(
まんいち
)
それがために
仮令
(
たとへ
)
幾万
(
いくまん
)
の
敵
(
てき
)
を
受
(
う
)
けるとも、
104
幾万
(
いくまん
)
人
(
にん
)
の
罵詈
(
ばり
)
嘲笑
(
てうせう
)
を
受
(
う
)
くるとも
決
(
けつ
)
して
恐
(
おそ
)
るるものではありませぬ。
105
之
(
これ
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つの
御旨
(
みむね
)
だと
信
(
しん
)
じます。
106
そして
妾
(
わたし
)
を
生
(
い
)
かして
働
(
はたら
)
かしめて
下
(
くだ
)
さる
事
(
こと
)
は
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
が
天下
(
てんか
)
に
活躍
(
くわつやく
)
して
下
(
くだ
)
さる
事
(
こと
)
になるのではありますまいか。
107
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
の
苦
(
くるし
)
みは
妾
(
わたし
)
の
苦
(
くるし
)
みであると
共
(
とも
)
に
妾
(
わたし
)
の
苦
(
くるし
)
みは
聖師
(
せいし
)
様
(
さま
)
の
苦
(
くるし
)
みであるに
相違
(
さうゐ
)
ありませぬ。
108
可憐
(
かれん
)
なる
女
(
をんな
)
の
一人
(
ひとり
)
を
生
(
い
)
かさうと
殺
(
ころ
)
さうと、
109
お
心
(
こころ
)
一
(
ひと
)
つにあるので
御座
(
ござ
)
りますから。
110
又
(
また
)
妾
(
わたし
)
の
死
(
し
)
は
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
死
(
し
)
でなくてはなりませぬ。
111
エルサレムの
停車場
(
ていしやぢやう
)
で
海洋
(
かいやう
)
万里
(
ばんり
)
を
隔
(
へだ
)
てた
男女
(
だんぢよ
)
がお
目
(
め
)
にかかつたのは
実
(
じつ
)
に
不可思議
(
ふかしぎ
)
な
何者
(
なにもの
)
かが
両人
(
りやうにん
)
の
間
(
あひだ
)
に
結
(
むす
)
びついて、
112
どうしても
一体
(
いつたい
)
とならねばならぬやうな、
113
前世
(
ぜんせ
)
からの
約束
(
やくそく
)
だと
信
(
しん
)
じます。
114
妾
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
と
妾
(
わたし
)
と
息
(
いき
)
を
合
(
あは
)
せて
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
する
事
(
こと
)
を
以
(
もつ
)
て、
115
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
だと
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
ります。
116
弥勒
(
みろく
)
の
神政
(
しんせい
)
建設
(
けんせつ
)
の
為
(
ため
)
ならば
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御旨
(
みむね
)
とある
以上
(
いじやう
)
、
117
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
にても
従
(
したが
)
ひまつらねばなりますまい。
118
妾
(
わたし
)
が
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
を
恋愛
(
れんあい
)
する
事
(
こと
)
は
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
罪悪
(
ざいあく
)
だとは
考
(
かんが
)
へられませぬ。
119
何卒
(
どうぞ
)
絶対
(
ぜつたい
)
の
愛
(
あい
)
を
以
(
もつ
)
て
妾
(
わたし
)
を
愛
(
あい
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
120
決
(
けつ
)
して
永久
(
えいきう
)
の
愛
(
あい
)
を
要求
(
えうきう
)
するのでは
御座
(
ござ
)
りませぬ。
121
もはや
妾
(
わたし
)
の
霊肉
(
れいにく
)
ともに
一変
(
いつぺん
)
すべき
時機
(
じき
)
が
近
(
ちか
)
づいたのです。
122
仮令
(
たとへ
)
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
でも
貴方
(
あなた
)
の
温
(
あたた
)
かき
懐
(
ふところ
)
に
抱
(
いだ
)
かれさへすれば
善
(
よ
)
いので
御座
(
ござ
)
ります。
123
妾
(
わたし
)
は
身命
(
しんめい
)
を
神国
(
しんこく
)
成就
(
じやうじゆ
)
のために
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
へ
差上
(
さしあ
)
げて
居
(
ゐ
)
るので
御座
(
ござ
)
ります。
124
何卒
(
どうぞ
)
色
(
いろ
)
よい
返事
(
へんじ
)
を
至急
(
しきふ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
いもので
御座
(
ござ
)
ります。
125
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
マリヤより
126
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
へ
127
ブラバーサは
一巡
(
いちじゆん
)
読
(
よ
)
み
了
(
を
)
はり、
128
ハツと
吐息
(
といき
)
をつき
無言
(
むごん
)
のまま
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
んで
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
129
マリヤ
『
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
、
130
可憐
(
かれん
)
な
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
、
131
妾
(
わたし
)
の
願
(
ねがひ
)
をキツと
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さるでせうな』
132
ブラバーサ
『
貴方
(
あなた
)
の
真心
(
まごころ
)
はよく
諒解
(
りようかい
)
致
(
いた
)
しました。
133
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
制度
(
せいど
)
のやかましいルートバハーの
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
宣伝使
(
せんでんし
)
として、
134
何程
(
なにほど
)
貴女
(
あなた
)
が
熱烈
(
ねつれつ
)
に
愛
(
あい
)
して
下
(
くだ
)
さらうとも
恋愛
(
れんあい
)
関係
(
くわんけい
)
を
結
(
むす
)
ぶ
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ、
135
どうぞこればかりは
見直
(
みなほ
)
し
宣直
(
のりなほ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
136
マリヤ
『さう
仰有
(
おつしや
)
いますと、
137
貴方
(
あなた
)
は
妾
(
わたし
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにせうと
仰有
(
おつしや
)
るのですか。
138
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
制度
(
せいど
)
も
亦
(
また
)
人倫
(
じんりん
)
の
大本
(
たいほん
)
もよく
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
ります。
139
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
140
それは
理性
(
りせい
)
的
(
てき
)
の
見解
(
けんかい
)
で
御座
(
ござ
)
りまして、
141
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうだう
)
はそんな
規則張
(
きそくば
)
つたものぢや
御座
(
ござ
)
りませぬ。
142
恋
(
こひ
)
にやつれ
息
(
いき
)
もたえだえになつて
居
(
ゐ
)
る
此
(
この
)
女
(
をんな
)
をして
悶死
(
もんし
)
せしめ
玉
(
たま
)
ふので
御座
(
ござ
)
りますか。
143
貴方
(
あなた
)
に
会
(
あ
)
ひさへしなければ
妾
(
わたし
)
はこんな
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
は
起
(
おこ
)
らないので
御座
(
ござ
)
ります。
144
貴方
(
あなた
)
は
妾
(
わたし
)
を
日出島
(
ひのでじま
)
から
亡
(
ほろ
)
ぼしにお
越
(
こ
)
しなさつた
悪魔
(
あくま
)
だと
思
(
おも
)
ひますわ。
145
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
吾々
(
われわれ
)
に
恋愛
(
れんあい
)
と
云
(
い
)
ふ
貴重
(
きちよう
)
なものを
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつたのです。
146
もし
此
(
この
)
恋愛
(
れんあい
)
を
自由
(
じいう
)
に
働
(
はたら
)
かす
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なければ、
147
日夜
(
にちや
)
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へる
妾
(
わたし
)
にどうして
此
(
こ
)
んな
考
(
かんが
)
へを
起
(
おこ
)
さしめられたでせうか。
148
そんな
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
らず
一滴
(
いつてき
)
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
あらば、
149
妾
(
わたし
)
の
願
(
ねがひ
)
を
叶
(
かな
)
へさして
下
(
くだ
)
さいませ。
150
決
(
けつ
)
して
乱倫
(
らんりん
)
乱行
(
らんぎやう
)
の
罪
(
つみ
)
にもなりますまい。
151
貴方
(
あなた
)
の
奥
(
おく
)
さまにして
頂
(
いただ
)
きたいとは
申
(
まを
)
しませぬ。
152
今
(
いま
)
ここで
貴方
(
あなた
)
に
素気
(
すげ
)
なく
刎
(
は
)
ねられたが
最後
(
さいご
)
、
153
妾
(
わたし
)
はガリラヤの
海
(
うみ
)
を
最後
(
さいご
)
の
場所
(
ばしよ
)
と
致
(
いた
)
します。
154
さすれば
貴方
(
あなた
)
の
名誉
(
めいよ
)
でもありますまい。
155
それ
故
(
ゆゑ
)
妾
(
わたし
)
の
死
(
し
)
は
貴方
(
あなた
)
の
死
(
し
)
ではあるまいかと
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
に
記
(
しる
)
したので
御座
(
ござ
)
ります』
156
ブラバーサは
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み
吐息
(
といき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
157
ブラバーサ
『あゝ、
158
誘惑
(
いうわく
)
の
魔
(
ま
)
の
手
(
て
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
廻
(
まは
)
つてゐるものだな。
159
岩石
(
がんせき
)
に
等
(
ひと
)
しき
固
(
かた
)
き
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
も
僅
(
わづ
)
か
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
の
心
(
こころ
)
に
打砕
(
うちくだ
)
かれむとするのか。
160
寸善
(
すんぜん
)
尺魔
(
しやくま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
とはよく
云
(
い
)
つたものだ。
161
あゝどうしたら、
162
宜
(
よ
)
からうかな』
163
と
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら
深
(
ふか
)
き
思
(
おも
)
ひに
沈
(
しづ
)
む。
164
マリヤは
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
くブラバーサに
背後
(
はいご
)
より
喰
(
くら
)
ひつき
満身
(
まんしん
)
の
力
(
ちから
)
をこめて
抱
(
だ
)
きしめた。
165
ブラバーサは
驚
(
おどろ
)
き
乍
(
なが
)
ら
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
思
(
おも
)
ふやう、
166
ブラバーサ
『あゝ
仕方
(
しかた
)
がない、
167
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
猛烈
(
まうれつ
)
な
恋
(
こひ
)
におちた
女
(
をんな
)
を
素気
(
すげ
)
なく
振
(
ふ
)
り
放
(
はな
)
せばキツと
過
(
あやま
)
ちがあるだらう。
168
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
か
知
(
し
)
らねども
暫
(
しばら
)
く
彼女
(
かれ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り
任
(
まか
)
せおき、
169
徐
(
おもむろ
)
に
道理
(
だうり
)
を
説
(
と
)
き
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ましてやらねばなるまい』
170
と
心
(
こころ
)
に
頷
(
うな
)
づき
乍
(
なが
)
ら
言葉
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
めて、
171
ブラバーサ
『いや、
172
マリヤ
様
(
さま
)
、
173
よくそこ
迄
(
まで
)
思
(
おも
)
つて
下
(
くだ
)
さいます。
174
実
(
じつ
)
に
感謝
(
かんしや
)
に
堪
(
た
)
へませぬ。
175
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
はここに
参
(
まゐ
)
りましてから、
176
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
に
足
(
た
)
りませぬ。
177
私
(
わたし
)
はあと
七十
(
しちじふ
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
身体
(
からだ
)
を
清潔
(
せいけつ
)
にして
或
(
ある
)
使命
(
しめい
)
は
果
(
はた
)
さねばなりませぬから
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
行
(
ぎやう
)
を
済
(
す
)
ます
迄
(
まで
)
、
178
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
179
マリヤ
『ソンナ
気休
(
きやす
)
めを
云
(
い
)
つて
妾
(
わたし
)
をお
騙
(
だま
)
しなさるのぢやありませぬか。
180
その
場
(
ば
)
逃
(
のが
)
れの
言
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
とより
思
(
おも
)
へませぬ。
181
どうか
的確
(
てきかく
)
なお
言葉
(
ことば
)
を
賜
(
たま
)
はりたいもので
御座
(
ござ
)
ります』
182
ブラバーサは
吐息
(
といき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
永
(
なが
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
に
陥
(
おちい
)
つた。
183
マリヤも
暫
(
しばら
)
く
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
打慄
(
うちふる
)
ふてゐたが、
184
思
(
おも
)
ひきつたやうに
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いてブラバーサの
手
(
て
)
を
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り、
185
マリヤ
『
妾
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
に
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかつてから
今日
(
けふ
)
で
殆
(
ほとん
)
ど
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
、
186
どうしたものかセリバシー
生活
(
せいくわつ
)
をやつて
来
(
き
)
た
身
(
み
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
187
その
時
(
とき
)
から
恋
(
こひ
)
におち、
188
此
(
この
)
一月
(
ひとつき
)
の
間
(
あひだ
)
も
殆
(
ほとん
)
ど
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
のやうに
長
(
なが
)
きを
感
(
かん
)
じました。
189
妾
(
わたし
)
のあまり
永
(
なが
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
の
恋
(
こひ
)
は
妾
(
わたし
)
の
頭脳
(
づなう
)
を
腐
(
くさ
)
らし
破
(
やぶ
)
つて
了
(
しま
)
ひました。
190
そして
妾
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
恋
(
こひ
)
の
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
を
味
(
あぢ
)
はつてゐます。
191
私
(
わたし
)
は
之
(
これ
)
を
何時迄
(
いつまで
)
も
秘密
(
ひみつ
)
として
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのです。
192
何卒
(
どうぞ
)
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
救
(
すく
)
ふと
思
(
おも
)
つて
妾
(
わたし
)
の
恋
(
こひ
)
を
諒解
(
りやうかい
)
して
下
(
くだ
)
さい。
193
此
(
この
)
猛烈
(
まうれつ
)
な
恋愛
(
れんあい
)
を
笑
(
わら
)
ふなら
笑
(
わら
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
194
又
(
また
)
誹
(
そし
)
るなら
誹
(
そし
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
195
もはや
妾
(
わたし
)
は
恋
(
こひ
)
に
悩
(
なや
)
む
狂人
(
きちがひ
)
です。
196
妾
(
わたし
)
の
目
(
め
)
に
浮
(
う
)
かぶものは
山川
(
さんせん
)
草木
(
さうもく
)
一切
(
いつさい
)
が
恋
(
こひ
)
しい
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
のお
姿
(
すがた
)
になつて
見
(
み
)
えるのですもの、
197
狂
(
くる
)
つてるのかも
知
(
し
)
れませぬ。
198
あゝ
苦
(
くる
)
しい、
199
こんな
不思議
(
ふしぎ
)
な
恋
(
こひ
)
を
誰
(
たれ
)
がさせたので
御座
(
ござ
)
いませうか。
200
エルサレムの
町
(
まち
)
でお
目
(
め
)
にかかつてから
妾
(
わたし
)
はスツカリ
恋
(
こひ
)
の
捕虜
(
とりこ
)
となつて
了
(
しま
)
ひました。
201
妾
(
わたし
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
与
(
あた
)
へられた
恋
(
こひ
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
ります。
202
恋
(
こひ
)
を
与
(
あた
)
へられた
時
(
とき
)
は
思
(
おも
)
ひきり
恋
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
はひつつ
生
(
いき
)
るもので
御座
(
ござ
)
いませう。
203
妾
(
わたし
)
が
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
を
恋
(
こ
)
ふる
事
(
こと
)
は
決
(
けつ
)
して
不合理
(
ふがふり
)
でも
不道徳
(
ふだうとく
)
でも
御座
(
ござ
)
いますまい。
204
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御旨
(
みむね
)
だと
信
(
しん
)
ぜられてなりませぬ。
205
厳粛
(
げんしゆく
)
な
神聖
(
しんせい
)
な
恋
(
こひ
)
が
変
(
かは
)
つて
博愛
(
はくあい
)
となつた
時
(
とき
)
は、
206
尊
(
たふと
)
さと
偉大
(
ゐだい
)
さと
美
(
うつく
)
しさとを
知
(
し
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませう。
207
ルートバハーの
御教
(
みをしへ
)
の
人類愛
(
じんるゐあい
)
は
斯様
(
かやう
)
な
意味
(
いみ
)
を
云
(
い
)
ふのではありますまいか。
208
人類愛
(
じんるゐあい
)
そのものを
愛
(
あい
)
するの
愛
(
あい
)
、
209
それは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
愛
(
あい
)
で、
210
即
(
すなは
)
ち
自分
(
じぶん
)
を
見出
(
みいだ
)
す
為
(
た
)
めの
愛
(
あい
)
であり、
211
自分
(
じぶん
)
自身
(
じしん
)
を
建設
(
けんせつ
)
すべき
天国
(
てんごく
)
に
昇
(
のぼ
)
るべき
愛
(
あい
)
の
初
(
はじ
)
めであり
終
(
をは
)
りでありませう。
212
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
が
妾
(
わたし
)
を
理解
(
りかい
)
して
下
(
くだ
)
さらぬ
事
(
こと
)
は
実
(
じつ
)
に
絶大
(
ぜつだい
)
なる
悲
(
かな
)
しみで
御座
(
ござ
)
います。
213
妾
(
わたし
)
もアメリカンコロニーに
籍
(
せき
)
をおき、
214
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
再臨
(
さいりん
)
を
待
(
ま
)
ち、
215
全世界
(
ぜんせかい
)
救済
(
きうさい
)
の
使命
(
しめい
)
を
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
216
どうして
戯
(
たはむ
)
れの
恋
(
こひ
)
に
浮
(
う
)
かれて
居
(
を
)
れませうか。
217
妾
(
わたし
)
は
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
手
(
て
)
によつて
新
(
あらた
)
に
生
(
うま
)
れなくてはならないのです。
218
霊肉
(
れいにく
)
ともに
復活
(
ふくくわつ
)
せねばならぬのです。
219
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
と
愛
(
あい
)
し
愛
(
あい
)
され、
220
貴方
(
あなた
)
と
結
(
むす
)
ぶ
事
(
こと
)
によつて
新
(
あらた
)
に
力
(
ちから
)
を
与
(
あた
)
へらるるので
御座
(
ござ
)
ります。
221
もし
此
(
この
)
妾
(
わたし
)
の
恋愛
(
れんあい
)
が
不合理
(
ふがふり
)
だと
仰有
(
おつしや
)
るのならば
貴方
(
あなた
)
の
神力
(
しんりき
)
で
取去
(
とりさ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
222
とは
云
(
い
)
ふものの
一度
(
いちど
)
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ふた
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
温
(
あたたか
)
い
御
(
おん
)
顔
(
かんばせ
)
とそのやさしいお
言葉
(
ことば
)
は
妾
(
わたし
)
の
全身
(
ぜんしん
)
に
流
(
なが
)
れて
血
(
ち
)
となつて
居
(
を
)
ります』
223
ブラバーサ
『
私
(
わたし
)
は
厳粛
(
げんしゆく
)
なる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
を
頂
(
いただ
)
き
神聖
(
しんせい
)
にして
犯
(
をか
)
すべからざる
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
に
於
(
おい
)
て
恋愛
(
れんあい
)
問題
(
もんだい
)
にぶつかるとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
ひませぬでした。
224
然
(
しか
)
し
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうどう
)
は
何
(
いづ
)
れの
国
(
くに
)
の
人
(
ひと
)
も
変
(
かは
)
らないものと
見
(
み
)
えますなア。
225
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
を
決
(
けつ
)
して
葬
(
はうむ
)
り
去
(
さ
)
るやうな
勇気
(
ゆうき
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
226
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
怪
(
あや
)
しき
関係
(
くわんけい
)
を
結
(
むす
)
ばなくても
心
(
こころ
)
と
心
(
こころ
)
と
融
(
と
)
け
合
(
あ
)
ひさへすれば、
227
それで
恋愛
(
れんあい
)
は
完全
(
くわんぜん
)
に
保
(
たも
)
たれて
行
(
ゆ
)
くぢやありませぬか。
228
凡
(
すべ
)
て
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
吾々
(
われわれ
)
……
然
(
しか
)
らば
霊的
(
れいてき
)
の
恋仲
(
こひなか
)
となりませう。
229
さあ
何卒
(
どうぞ
)
その
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
230
マリヤ
『いえいえ
妾
(
わたし
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
の
愛
(
あい
)
の
御手
(
みて
)
に
昼
(
ひる
)
も
夜
(
よる
)
も
抱
(
だ
)
いて
慰
(
なぐさ
)
めて
欲
(
ほ
)
しいので
御座
(
ござ
)
います。
231
いつも
尊
(
たふと
)
い
懐
(
ふところ
)
に
抱
(
いだ
)
かれ
微笑
(
ほほゑみ
)
つつ
恋
(
こひ
)
を
歌
(
うた
)
つて
見
(
み
)
たいのです。
232
……あゝ
妾
(
わたし
)
の
恋
(
こひ
)
しい
慕
(
した
)
はしい
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
御
(
おん
)
上
(
うへ
)
に
幸
(
さち
)
多
(
おほ
)
かれ……と』
233
ブラバーサ
『
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
いますが、
234
何卒
(
どうぞ
)
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
行
(
ぎやう
)
が
済
(
す
)
む
迄
(
まで
)
は
触
(
さは
)
らないで
下
(
くだ
)
さい。
235
怪
(
あや
)
しい
考
(
かんが
)
へが
起
(
おこ
)
つては
修行
(
しうぎやう
)
の
邪魔
(
じやま
)
になりますからな』
236
マリヤ
『
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
身辺
(
しんぺん
)
に
危
(
あぶな
)
い
事
(
こと
)
が
迫
(
せま
)
つて
来
(
き
)
た
事
(
こと
)
がお
分
(
わか
)
りになりませぬか。
237
妾
(
わたし
)
はそれが
心配
(
しんぱい
)
でならないのです。
238
それ
故
(
ゆゑ
)
アメリカンコロニーの
牛耳
(
ぎうじ
)
を
握
(
にぎ
)
る
妾
(
わたし
)
と
締結
(
ていけつ
)
して
下
(
くだ
)
さるのならば
貴方
(
あなた
)
の
危難
(
きなん
)
を
逃
(
のが
)
れるのは
当然
(
たうぜん
)
ですよ。
239
ユダヤ
人
(
じん
)
は
同化
(
どうくわ
)
し
難
(
がた
)
い
人種
(
じんしゆ
)
ですからな』
240
ブラバーサ
『
何
(
なに
)
か
私
(
わたし
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
について
危険
(
きけん
)
が
迫
(
せま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですか。
241
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
敵
(
てき
)
が
来
(
き
)
ても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せした
私
(
わたし
)
、
242
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
に
驚
(
おどろ
)
く
事
(
こと
)
はありませぬから、
243
先
(
ま
)
づ
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
244
マリヤ
『
貴方
(
あなた
)
は、
245
さう
楽観
(
らくくわん
)
して
居
(
を
)
られますが、
246
貴方
(
あなた
)
の
周囲
(
しうゐ
)
には
沢山
(
たくさん
)
の
悪魔
(
あくま
)
が
取囲
(
とりかこ
)
んで
居
(
を
)
りますよ。
247
今
(
いま
)
妾
(
わたし
)
は
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ
恋愛
(
れんあい
)
を
思
(
おも
)
ひきり
路傍
(
ろばう
)
相逢
(
あひあ
)
ふ
人
(
ひと
)
の
如
(
ごと
)
き
態度
(
たいど
)
を
採
(
と
)
らうと
思
(
おも
)
つても、
248
それが
出来
(
でき
)
ないのです。
249
貴方
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
思
(
おも
)
へば
涙
(
なみだ
)
が
出
(
で
)
てたまりませぬ。
250
それで
貴方
(
あなた
)
の
側
(
そば
)
を
離
(
はな
)
れたくはありませぬ』
251
ブラバーサ
『マリヤさま、
252
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
強迫
(
きやうはく
)
するのぢやありませぬか。
253
随分
(
ずゐぶん
)
悪辣
(
あくらつ
)
な
手段
(
しゆだん
)
を
廻
(
めぐ
)
らして
恋
(
こひ
)
の
欲望
(
よくばう
)
を
遂
(
と
)
げむとなさるのではあるまいかと
思
(
おも
)
はれてなりませぬわ』
254
マリヤ
『いえいえどうしてどうして
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
ずるピユリタンの
一人
(
ひとり
)
として
嘘
(
うそ
)
偽
(
いつは
)
りが
申
(
まを
)
されませうか。
255
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
冥罰
(
めいばつ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしう
御座
(
ござ
)
います。
256
妾
(
わたし
)
は
師
(
し
)
の
君様
(
きみさま
)
の
身辺
(
しんぺん
)
を
守
(
まも
)
るため
仮令
(
たとへ
)
恋
(
こひ
)
せなくても
離
(
はな
)
れ
度
(
た
)
くはないのです。
257
此
(
この
)
エルサレムの
町
(
まち
)
へ
貴方
(
あなた
)
がおいでになつてから、
258
日
(
ひ
)
の
出島
(
でじま
)
の
聖師
(
せいし
)
々々
(
せいし
)
と
云
(
い
)
つて
貴方
(
あなた
)
に
帰順
(
きじゆん
)
する
人
(
ひと
)
が
沢山
(
たくさん
)
出来
(
でき
)
ましたが、
259
真
(
しん
)
に
貴方
(
あなた
)
を
愛
(
あい
)
する
人
(
ひと
)
が
果
(
はた
)
して
幾人
(
いくにん
)
ありませうか。
260
凡
(
すべ
)
ての
人
(
ひと
)
が
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
対
(
たい
)
して
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
敬
(
けい
)
して
居
(
ゐ
)
るやうですが、
261
然
(
しか
)
し
妾
(
わたし
)
は
案
(
あん
)
ぜられてならないのです。
262
また
此方
(
こちら
)
へおいでになつてから
間
(
ま
)
もなく、
263
土地
(
とち
)
人情
(
にんじやう
)
もお
分
(
わか
)
りになつてゐないのですからな』
264
ブラバーサ
『
然
(
しか
)
らば
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
に
任
(
まか
)
します。
265
どうなつとして
下
(
くだ
)
さいませ。
266
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らここ
七十
(
しちじふ
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
は
特
(
とく
)
に
猶予
(
いうよ
)
を
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
いので
御座
(
ござ
)
います。
267
貴女
(
あなた
)
の
要求
(
えうきう
)
を
容
(
い
)
れました
上
(
うへ
)
は
相対
(
さうたい
)
的
(
てき
)
に
私
(
わたし
)
の
要求
(
えうきう
)
も
容
(
い
)
れて
貰
(
もら
)
はねばなりませぬからな』
268
マリヤ
『どうも
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
269
然
(
しか
)
らば
隠忍
(
いんにん
)
致
(
いた
)
します。
270
どうぞ
注意
(
ちうい
)
をして
外
(
ほか
)
の
女
(
をんな
)
に
相手
(
あひて
)
にならぬやうに
願
(
ねが
)
ひます。
271
サロメさまにお
会
(
あ
)
ひになつても
言葉
(
ことば
)
をお
交
(
かは
)
しになつちやいけませぬよ。
272
貴方
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
危険
(
きけん
)
が、
273
そのため
襲来
(
しふらい
)
してはなりませぬからな』
274
ブラバーサ
『ハヽヽヽヽ
最前
(
さいぜん
)
からマリヤさまが
私
(
わたし
)
の
身辺
(
しんぺん
)
に
悪魔
(
あくま
)
が
狙
(
ねら
)
つてゐる、
275
危険
(
きけん
)
が
襲
(
おそ
)
ふてゐると
仰有
(
おつしや
)
つたのは、
276
分
(
わか
)
りました。
277
いや
随分
(
ずゐぶん
)
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
のない……
貴女
(
あなた
)
も
女
(
をんな
)
ですな、
278
アツハヽヽヽ』
279
マリヤ
『エツヘヽヽヽ
何
(
なん
)
なつと
勝手
(
かつて
)
に
仰有
(
おつしや
)
いましな。
280
然
(
しか
)
し
呉々
(
くれぐれ
)
もお
気
(
き
)
をつけなさいませや。
281
さあ
之
(
これ
)
から
妾
(
わたし
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
帰
(
かへ
)
りませう』
282
ブラバーサ
『ソンナラ
私
(
わたし
)
はお
山
(
やま
)
を
一
(
ひと
)
まはりして
帰
(
かへ
)
りますから
貴女
(
あなた
)
は
一足先
(
ひとあしさき
)
にお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さい。
283
七十
(
しちじふ
)
日
(
にち
)
さへ
経
(
た
)
てば
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
も
駱駝
(
らくだ
)
のやうに
二人
(
ふたり
)
連
(
づれ
)
で
歩
(
ある
)
かして
頂
(
いただ
)
きませう。
284
アハヽヽヽ』
285
マリヤ
『お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らないものはお
先
(
さき
)
へ
帰
(
かへ
)
りませう。
286
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けるまでお
待
(
ま
)
ちなさいませ。
287
夜鷹
(
よたか
)
でも
参
(
まゐ
)
りませうから』
288
と
捨台詞
(
すてぜりふ
)
を
残
(
のこ
)
し
橄欖山
(
かんらんざん
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
289
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つてブラバーサは
吐息
(
といき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
お
)
ろし、
290
ブラバーサ
『あゝ
困
(
こま
)
つたものだな。
291
どうして
此
(
この
)
難関
(
なんくわん
)
を
切
(
き
)
り
抜
(
ぬ
)
けやうか。
292
これも
大方
(
おほかた
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
試
(
ため
)
しだらう。
293
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
294
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
295
何卒
(
なにとぞ
)
悪魔
(
あくま
)
の
誘惑
(
いうわく
)
に
陥
(
おちい
)
らぬやう
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
を
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります。
296
心
(
こころ
)
の
弱
(
よわ
)
き
私
(
わたくし
)
に
対
(
たい
)
し
絶対力
(
ぜつたいりよく
)
をお
授
(
さづ
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
297
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せて
天地
(
てんち
)
に
向
(
む
)
かつて
拝謝
(
はいしや
)
し
乍
(
なが
)
ら
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
頂
(
いただき
)
を
隈
(
くま
)
なく
逍遥
(
せうえう
)
し
初
(
はじ
)
めた。
298
古
(
ふる
)
ぼけた
小
(
ちひ
)
さい
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
一
(
ひと
)
つの
影
(
かげ
)
が
蠢
(
うごめ
)
いてゐる。
299
月
(
つき
)
は
薄雲
(
はくうん
)
の
帳
(
とばり
)
を
被
(
かぶ
)
つて
昼
(
ひる
)
ともなく
夜
(
よる
)
ともなく
一種
(
いつしゆ
)
異様
(
いやう
)
の
光
(
ひかり
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げて
居
(
ゐ
)
る。
300
(
大正一二・七・一二
旧五・二九
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