霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第四章 銀杏姫(いてふひめ)〔一八一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第1篇 水波洋妖 よみ(新仮名遣い):すいはようよう
章:第4章 銀杏姫 よみ(新仮名遣い):いちょうひめ 通し章番号:1813
口述日:1926(大正15)年06月29日(旧05月20日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
杢助は船から飛び込んだ際、元の妖幻坊の正体をあらわし、獅子と虎のあいのこの恐ろしい姿となって、高姫を連れ、離れ島に漂着した。
妖幻坊は自分の姿の言い訳として、高姫を救うために魔術を使ったといってごまかす。
妖幻坊は、自分の姿が完全に元の妖怪に戻ってしまいそうになったので、高姫に隠れて変化の術を使おうと、竹やぶに飛び込んだ。
しかし、その竹やぶには恐ろしい蟻が住んでおり、たちまちに体中を噛み付かれて苦しみ倒れてしまった。
高姫はそのありさまを見て驚くが、竹やぶの後ろの大銀杏の祠に男女がいるのを目ざとく見つけ、彼らの着衣と船を失敬して妖幻坊を助け出そうとする。
二人の男女、フクエと岸子は、家の事情で仲を裂かれそうになり、銀杏の神のご利益を頼ってお参りにきていたのであった。
高姫は銀杏の女神の声色を使って二人をだまし、着物を献上させた上、竹やぶに飛び込んで妖幻坊を救うように仕向ける。
妖幻坊と高姫は、蟻に責められる二人を捨て置いて、さっさと逃げてしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:八島の主(八島主) データ凡例: データ最終更新日:2020-05-28 09:23:49 OBC :rm7204
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第12輯 620頁 修補版: 校定版:44頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 杢助(もくすけ)()けた妖幻坊(えうげんばう)(およ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)002高砂丸(たかさごまる)破壊(はくわい)沈没(ちんぼつ)(いのち)(ばか)りは(たす)からむものと、003両人(りやうにん)(とも)手早(てばや)着衣(ちやくい)()ぎすて、004真裸体(まつぱだか)となつて海中(かいちう)()()んだ(さい)005妖幻坊(えうげんばう)(まつた)(もと)正体(しやうたい)(あら)はし006獅子(しし)(とら)との混血児(あひのこ)たる(おそ)ろしき姿(すがた)となつて(しま)つた。007高姫(たかひめ)真裸体(まつぱだか)となつて()だらけの妖幻坊(えうげんばう)(くび)(くら)ひつき、008(なみ)のままに(ただよ)(なが)老木(らうぼく)(しげ)れる(ひと)つの(はな)(じま)漂着(へうちやく)した。
009 高姫(たかひめ)はホツト一息(ひといき)(なが)ら、
010『アヽこれ杢助(もくすけ)さま、011大変(たいへん)暴風雨(しけ)()ひ、012(わたし)はもう(いのち)()くなるかと(おも)つて()ましたのに、013(まへ)さまの変身(へんしん)(じゆつ)()荒湖(あらうみ)乗切(のりき)り、014(かげ)(いのち)(たす)かりました。015(なん)とマア貴方(あなた)(えら)(かく)(げい)をもつて()らつしやるのですねえ』
016 妖幻坊(えうげんばう)高姫(たかひめ)正体(しやうたい)見附(みつ)けられ、017大変(たいへん)(こころ)(いた)め、018如何(どう)()(わけ)をして胡魔化(ごまくわ)さうかと(おも)つて()矢先(やさき)019高姫(たかひめ)(はう)から(かへ)つて感賞(かんしやう)言葉(ことば)()け、020(こころ)(そこ)から善意(ぜんい)(かい)して()(こと)(さと)つたので、021わざと得意(とくい)(つら)をしやくり(なが)ら、
022『オイ、023千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)024(おれ)魔術(まじゆつ)(えら)いものだらうがな、025まさかの(とき)になれば獅子(しし)とも(とら)とも(わか)らぬ()ういふ怪体(けつたい)形相(ぎやうさう)変化(へんげ)するのだもの、026天下(てんか)(おそ)れるもの(ひと)つも()しだ。027(おれ)()()美人(びじん)女房(にようばう)にして()以上(いじやう)は、028(ひと)つの不思議(ふしぎ)妙術(めうじゆつ)使(つか)つてお(まへ)信用(しんよう)()ておかないと、029何時(いつ)東助(とうすけ)野郎(やらう)鞍替(くらがへ)せらるるか(わか)らない危険(きけん)区域(くゐき)()かれて()るのだから、030(まへ)(たす)ける(ため)()()(みにく)肉体(にくたい)変化(へんげ)して031千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)女帝(によてい)忠勤(ちうきん)(はげ)んで()たのだよ、032アハヽヽヽ』
033高姫(たかひめ)『アタ(にく)らしい杢助(もくすけ)さまだこと、034(ふた)()には東別(あづまのわけ)だの東助(とうすけ)だのと、035そんな(ふる)めかしい(はなし)()めて(もら)ひませうかい。036東助(とうすけ)なんて淡路(あはぢ)洲本(すもと)船頭稼(せんどうかせ)ぎをやつて()つた、037渋紙面(しぶかみづら)をして(いろ)(くろ)独活(うど)大木(たいぼく)みたよな体見倒(がらみだふ)しですよ。038何一(なにひと)(はな)(わざ)()つて()ると()ふでもなし、039八島(やしま)(ぬし)初版・愛世版では「八島の別」だが、校定版では「八島の主」になっている。ここではイソ館の教主である八島主のことを指している。のお(ひげ)(ちり)(はら)ひ、040(しり)(にほひ)()いで(よろこ)んで()るやうな代物(しろもの)は、041仮令(たとへ)十千万(とちまん)(りやう)(かね)()んで(さかさ)になつて(ある)いて()せても(なび)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)ぢやありませぬよ。042東助(とうすけ)なんて()ふのは勿体(もつたい)ない、043彼奴(あいつ)豆腐(とうふ)(すけ)結構(けつこう)だ。044(この)高姫(たかひめ)(ゆび)一本(いつぽん)で、045(つぶ)さうと(めが)うと自由(じいう)自在(じざい)ですもの、046オホヽヽヽ』
047(えう)『これ(たか)チヤン、048随分(ずいぶん)法螺(ほら)()くぢやないか、049斎苑(いそ)(やかた)東助(とうすけ)肱鉄砲(ひぢてつぱう)()()され(もろ)くも敗北(はいぼく)し、050()()河鹿(かじか)(たうげ)(わた)つて(ほこら)(もり)()()み、051()果無(はかな)むで(くす)ぼつて()たぢやないか、052(ちつ)頬桁(ほほげた)()ぎるぞや』
053(たか)頬下駄(ほほげた)()くのは呆助(はうすけ)(くらゐ)適当(てきたう)ですよ。054いや朴下駄(ほほげた)でも東助(とうすけ)なら()ぎて()る、055この千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)はトルマン(ごく)女帝(によてい)だから、056(きり)下駄(げた)伽羅(きやら)下駄(げた)(しやう)()つて()るのですよ。057ヘン、058朴下駄(ほほげた)()ぎるなんて(あま)(ひと)軽蔑(けいべつ)して(もら)ひますまいかい』
059(えう)『オイオイ(たか)チヤン、060さう()(ちがひ)をして(もら)つては(いささ)迷惑(めいわく)だ。061(はなし)脱線(だつせん)して仕舞(しま)つたよ、062ほうげた()ぎると()つたのはお(まへ)(くち)()ぎると()つたのだ』
063(たか)『ヘン、064(くち)()ぎるなんて馬鹿(ばか)にしなさるな、065(わたし)だつて(くち)すぎ(くらゐ)立派(りつぱ)(いた)しますよ、066(をとこ)一匹(いつぴき)二匹(にひき)(くらゐ)(あそ)ばして(やしな)つてやりますワ』
067(えう)『アハヽヽヽ、068益々(ますます)(わか)らぬぢやないか』
069(たか)益々(ますます)(わか)らぬの、070(わか)れぬのと、071それや(なに)()ふのですか、072(まへ)さまは(この)高姫(たかひめ)(わか)れようと(おも)つてゐらつしやるのでせう。073盛装(せいさう)()らし(かみ)立派(りつぱ)()つて074白粉(しろい)でもつけて()姿(すがた)()て、075(まへ)さまは岡惚(をかぼれ)をやつて()たのだらう。076()難船(なんせん)して保護色(ほごしよく)衣類(きもの)(なみ)(さら)はれ、077(かみ)はサンバラに(みだ)れ、078要塞(えうさい)地帯(ちたい)丸出(まるだ)しになつた姿(すがた)()愛想(あいそ)()きたのでせう。079ヘン、080これでも、
081都々逸(どどいつ))お(まへ)(いや)でも(また)()(ひと)
082 ()けれや(わたし)()()たぬ
083()俗謡(ぞくえう)(とほ)084(をとこ)のすたり(もの)はあつても(をんな)のすたり(もの)三千(さんぜん)世界(せかい)何処(どこ)(さが)しても滅多(めつた)()りませぬぞや。085ヘン、086(いや)なら(いや)ときつぱりと()つて(くだ)さい、087此方(こつち)にも(かんが)へがありますからな』
088(えう)『アヽ益々(ますます)(こま)つた(こと)()ふぢやないか、089ハハー(わか)つた! ()めた! この杢助(もくすけ)妖術(えうじゆつ)使(つか)()ぎ、090()んな姿(すがた)()けた姿(すがた)女帝(によてい)のお()(とま)り、091秋風(あきかぜ)()いたのだな、092よし、093それならそれで(この)(はう)にも(かんが)へる余地(よち)十分(じふぶん)にある(はず)だ』
094(たか)(また)しても、095(まへ)さまは(わたし)(じゆつ)()がらすのかいなア、096エヽ(はら)(わる)(ひと)だこと、097そしてあの曲輪(まがわ)(たま)如何(どう)なさいましたか。098よもや(うみ)(おと)しはなされますまいなア』
099(えう)『ウン、100それや心配(しんぱい)すな、101(うみ)()()(さい)(はら)(なか)()()んでおいたから大丈夫(だいぢやうぶ)だ』
102(たか)『マアマア()()んだのですか、103ヘーン、104何故(なぜ)(わたし)()まして(くだ)さらないの、105本当(ほんたう)貴方(あなた)水臭(みづくさ)いお(かた)だワ』
106(えう)『お(まへ)()ましたいは山々(やまやま)だが、107咄嗟(とつさ)場合(ばあひ)108そんな余裕(よゆう)があつて(たま)らうかい、109失礼(しつれい)(なが)杢助(もくすけ)高天原(たかあまはら)にチヤンと(をさ)めておいたから、110何時(いつ)(また)()()(とき)があるであらう、111さう心配(しんぱい)はするに(およ)ばないよ』
112(たか)成程(なるほど)113抜目(ぬけめ)のない杢助(もくすけ)さまだこと、114それでこそ高姫(たかひめ)最愛(さいあい)(をつと)115末代(まつだい)(まで)旦那(だんな)(さま)だワ。116(しか)杢助(もくすけ)さま、117(この)(しま)()くは()いたが、118()(はだか)では道中(だうちう)出来(でき)ないし、119曲輪(まがわ)(はふ)でも使(つか)つて立派(りつぱ)着物(きもの)(いち)(まい)(こしら)へて(くだ)さる(わけ)には()きますまいかなア。120貴方(あなた)だつてさう()だらけの変化姿(へんげすがた)では人中(ひとなか)へも()られますまい』
121(えう)成程(なるほど)122(まへ)()(とほ)りだ、123(おれ)()(とほ)りだ。124雨蛙(あまがへる)()()まつて()(とほ)りだ、125()()しは(みぎ)(とほ)りだ。126(おれ)(この)(とほ)りだ、127両手(りやうて)(つち)について(まさ)高姫(たかひめ)(きみ)(あやま)(まゐ)らする(とほ)りだ。128アハヽヽヽ』
129(たか)『これ(もく)チヤン、130(わら)うて()場合(ばあひ)ぢやありませぬよ。131(なに)(ほど)(はる)ぢやと()つても()(さむ)くつては、132やりきれないぢやありませぬか、133(なん)とか工夫(くふう)御座(ござ)いますまいかなア』
134(えう)『ヤア、135此処(ここ)(ふね)一艘(いつそう)(つな)いである。136これから(かんが)へると、137(たれ)(この)(しま)上陸(じやうりく)して()人間(にんげん)がある(はず)だ。138(ひと)其奴(そいつ)(かは)()いて、139(まへ)(おれ)とが()(まと)(こと)とせうでは()いか』
140(たか)全然(まるつき)追剥(おひはぎ)のやうな(こと)をするのですか、141それでは時置師(ときおかし)宣伝使(せんでんし)とは()はれますまい。142(わたし)だつて(なに)(ほど)(さむ)くつても泥棒(どろばう)した衣類(きもの)()(まと)(こと)(いや)です。143そんな(こと)をすれや日出(ひのでの)(かみ)神格(しんかく)薩張(さつぱり)()()ちて仕舞(しま)ひますワ』
144(えう)『てもさても馬鹿(ばか)正直(しやうぢき)女帝(によてい)(さま)だなア。145(むかし)から(たとへ)にも()(はら)()へられぬと()ふぢやないか。146大善(だいぜん)をなさむとすれば、147小悪(せうあく)(とき)場合(ばあひ)により()むを()ないだらうよ。148アヽ(さむ)(さむ)い、149()(にはか)(きつ)(かぜ)()いて()ては、150(おれ)(たま)らない。151何処(どこ)かに()竹藪(たけやぶ)でもあれば、152すつこんで(かぜ)()けたいものだ』
153()(なが)ら、154高姫(たかひめ)(つづ)け」と一声(ひとこゑ)(のこ)し、155篠竹(しのだけ)のシヨボシヨボと()えて()竹藪(たけやぶ)(なか)()(かく)して仕舞(しま)つた。156(その)(じつ)(やうや)くに(かほ)だけ人間(にんげん)らしく(ばけ)()るものの、157()一片(いつぺん)布片(ふへん)(まと)つて()ないので(くる)しくつて(たま)らず、158(かほ)までが(もと)妖怪(えうくわい)還元(くわんげん)しさうなので、159そんなエグイ(つら)()せては、160流石(さすが)高姫(たかひめ)愛想(あいそ)をつかすだらうと(おも)ひ、161この竹藪(たけやぶ)()()第二(だいに)変化術(へんげじゆつ)(ほどこ)()めであつた。162(この)(やぶ)(ひやく)(つぼ)(ばか)りの面積(めんせき)があつて、163(その)(なか)()るや(いな)(たちま)白胡麻(しろごま)のやうな(あり)(むれ)数知(かずし)れず(のぼ)りつき、164如何(いか)なる人間(にんげん)(いへど)身体中(からだぢう)()(やぶ)り、165(たちま)身体(からだ)(はれ)(あが)痛痒(いたかゆ)うて(たま)らない。166さうこうして()(うち)に、167(あし)(いつ)(しやく)もある(あや)しい蜘蛛(くも)幾万(いくまん)ともなくやつて()(しり)から粘着性(ねんちやくせい)(つよ)(いと)()し、168身体(からだ)をぎりぎり(まき)にして仕舞(しま)ふと()(おそ)ろしい()(もり)である。169それとも()らず妖幻坊(えうげんばう)()()んだのだから(たま)らない。170(あら)くたい()(あひだ)幾万(いくまん)とも()れない(あり)()みつく(いた)さ、171(さすが)妖幻坊(えうげんばう)悲鳴(ひめい)をあげて(とら)(うな)るやうな呻吟声(うめきごゑ)高姫(たかひめ)(すく)ひを(もと)めて()る。172高姫(たかひめ)(その)(こゑ)()きつけて(やぶ)(そば)()()(なか)(のぞ)いて()れば、173妖幻坊(えうげんばう)(あり)()められ七転(しちてん)八倒(はつたう)(くる)しみの真最中(まつさいちう)であつた。174高姫(たかひめ)()転倒(てんたう)せむ(ばか)()(おどろ)(なが)竹藪(たけやぶ)(うしろ)(はう)(まは)つて()ると、175一寸(ちよつと)小高(こだか)(つか)()つて、176(その)(うへ)周囲(しうゐ)三丈(さんぢやう)もある大銀杏(おほいてふ)(てん)()して()つて()る。177銀杏(いてふ)根本(ねもと)には(ちひ)さい(ほこら)()つて()て、178(わか)男女(だんぢよ)何事(なにごと)(すすりな)きしながら(いの)つて()た。179()()のない高姫(たかひめ)は、180(はや)くも男女(だんぢよ)二人(ふたり)着衣(ちやくい)失敬(しつけい)して東助(とうすけ)(なん)(すく)自分(じぶん)着用(ちやくよう)せむものと、181銀杏(いてふ)()(うしろ)(かく)れて両人(りやうにん)(はなし)()いて()た。
182(をんな)『もしフクエさま、183どう(いた)しませう。184(なに)(ほど)貴方(あなた)(わたし)(こひ)におちて(なや)んで()ましても、185強欲(がうよく)継母(ままはは)が、186貴方(あなた)との(こひ)(ゆる)して()れないのですもの。187スガの(みなと)呉服屋(ごふくや)(よめ)()けと、188煙管(きせる)(たたみ)(たた)いての日夜(にちや)折檻(せつかん)189(うみ)両親(りやうしん)(すで)にこの()()り、190継母(けいぼ)()(そだ)てられた(わたし)191その恩義(おんぎ)(おも)へばどうして(こひ)しい貴方(あなた)と、192天下(てんか)()れて()(こと)出来(でき)ませう。193(また)(わたし)(いへ)はスガの呉服屋(ごふくや)さまに大変(たいへん)借金(しやくきん)があり、194それを(かへ)さなけれやなりませず、195(かへ)(かね)はなし、196(はは)大変(たいへん)心配(しんぱい)(いた)して()ります。197()(わたし)縁談(えんだん)(ことわ)りでもせうものなら、198(こひ)しきスガの(さと)()(こと)出来(でき)ませぬ。199だと()つて貴方(あなた)(おも)()(こと)如何(どう)しても出来(でき)ませぬ、200(なん)とか()銀杏(いてふ)(かみ)(さま)()利益(りやく)によつて円満(ゑんまん)解決(かいけつ)をつけて(もら)ひたいもので御座(ござ)います』
201(また)もや(すすりな)く。
202フクエ『オイ岸子(きしこ)203さう悲観(ひくわん)したものぢやない。204(この)(かみ)(さま)女神(めがみ)(さま)だと()(こと)だから、205きつとお(まへ)同情(どうじやう)して(くだ)さるに相違(さうゐ)ない。206(わし)ぢやとて()主人持(しゆじんもち)()(うへ)207どうする(こと)出来(でき)ぬみじめな有様(ありさま)だが、208(まへ)(わか)れる(くらゐ)なら、209一層(いつそ)ハルの(うみ)()()げて()んだが()しだよ』
210岸子(きしこ)(この)(かみ)(さま)一切(いつさい)衣服(いふく)をお(そな)へすれば211屹度(きつと)(ねがひ)(かな)へて(くだ)さると()ふぢやありませぬか、212上衣(うはぎ)だけなりとお(そな)へして(かへ)りませうか』
213フクエ『成程(なるほど)214上衣(うはぎ)(いち)(まい)(ぐらゐ)(そな)へしたつて(べつ)(くる)しくはない』
215 ()(はな)(をり)しも、216銀杏(いてふ)木蔭(こかげ)より、217(やさ)しき(をんな)(こゑ)
218(をんな)(わらは)こそは、219銀杏姫(いてふひめ)(みこと)御座(ござ)るぞや、220(いま)より千五百(せんごひやく)(ねん)(むかし)221恋男(こひをとこ)()はむ()(たらひ)(ふね)()つて、222この(はな)(じま)()()(かよ)ひ、223折柄(をりから)暴風雨(しけ)()ひ、224()しき(いのち)(うみ)藻屑(もくづ)となし、225(その)精霊(せいれい)()つて(ここ)裸姫(はだかひめ)となり、226()銀杏(いてふ)(ひめ)(みこと)(あらた)め、227衣類(いるゐ)一切(いつさい)(われ)(けん)ずるものには、228如何(いか)なる(こひ)(かな)()させむ229縁結(えんむす)びの守護神(しゆごじん)であるぞや。230そち(たち)両人(りやうにん)(こひ)はこの千草(ちぐさ)オツトドツコイ銀杏姫(いてふひめ)(みこと)請合(うけあ)うて(かな)へてやらう(ほど)に、231衣類(いるゐ)一切(いつさい)此処(ここ)()()て、232(その)(うへ)この()(やぶ)()()んで、233(なや)める(ひと)つの生物(いきもの)真裸(まつぱだか)(まま)(すく)()せよ。234さすれば其方(そち)願望(ぐわんまう)(かなら)(かなら)今日(こんにち)只今(ただいま)より(かな)へて(つかは)すぞや、235夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ、236夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ』
237()(こゑ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)である。238二人(ふたり)男女(だんぢよ)(まこと)(かみ)言葉(ことば)(しん)じ、239両人(りやうにん)一度(いちど)惜気(をしげ)もなく、240下着(したぎ)(まで)(のこ)らず()()銀杏姫(いてふひめ)(みこと)(たてまつ)り、241神勅(しんちよく)(ごと)()(やぶ)()()んで、242白蟻(しろあり)(なや)(くる)しめる妖幻坊(えうげんばう)をやつとの(こと)()()して仕舞(しま)つた。243不思議(ふしぎ)にも白蟻(しろあり)(やぶ)(そと)一歩(いつぽ)()づるや(いな)や、244一匹(いつぴき)(のこ)らず、245身体(からだ)より()ちて藪中(やぶなか)逸早(いちはや)姿(すがた)(かく)して仕舞(しま)つた。246二人(ふたり)男女(だんぢよ)甘々(うまうま)高姫(たかひめ)計略(けいりやく)にかかり真裸(まつぱだか)にせられ、247(その)(うへ)妖幻坊(えうげんばう)(すく)ふべく藪中(やぶなか)()()んだ(ため)248身体(からだ)一面(いちめん)白蟻(しろあり)(たか)られ身動(みうご)きならず、249七転(しちてん)八倒(ばつたう)(くる)しみをして()る。
250(たか)『ホヽヽヽヽ、251オイそこな(わか)二人(ふたり)(はう)(ども)252こなさまは銀杏姫(いてふひめ)(みこと)でも(なん)でもないんだよ。253よつく(みみ)(さら)へて()いておきや、254ウラナイ(けう)大教主(だいけうしゆ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)さまだよ。255二人(ふたり)真裸(まつぱだか)白蟻(しろあり)()(ころ)されるのも前世(ぜんせ)因縁(いんねん)だ。256その(かは)(いさぎよ)(あり)(ども)()つて(もら)つて()になさい、257屹度(きつと)最奥(さいあう)第一(だいいち)天国(てんごく)258()(にせ)銀杏姫(いてふひめ)衣類(きもの)(けん)じた(とく)によつて(すく)()げてやらぬ(こと)もないぞや、259……これ(もく)チヤン、260(なに)(とぼ)けて()るのぢや、261(しつか)りなさらぬかいな』
262(えう)『ヤア高姫(たかひめ)263よう(たす)けて()れた。264(おも)はず()らず()(もり)()()んで(ひと)つよりない(いのち)(ぼう)()(ところ)だつた。265(まへ)縦横(じうわう)無尽(むじん)智略(ちりやく)によつて()杢助(もくすけ)一命(いちめい)(たす)かつたやうなものだ。266いや感謝(かんしや)するよ』
267(たか)『ホヽヽヽヽ、268これ(もく)チヤン、269曲輪(まがわ)(たま)神力(しんりき)如何(どう)なつたのですか、270まさか白蟻(しろあり)(やつ)()られたのぢやありますまいなア。271神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)妙術(めうじゆつ)使(つか)ふお(まへ)さまが、272(あり)なんかにしてやられるとは、273()つと均衡(つりあひ)()れぬぢやありませぬか』
274(えう)(あま)いものには(あり)(たか)る、275(から)(やつ)には(あり)(たか)らぬと()ふぢやないか。276()(かく)(おれ)人間(にんげん)としては最上等(さいじやうとう)だ、277さうして(をんな)(あま)いだらう。278血液(けつえき)人一倍(ひといちばい)(あま)いなり、279何分(なにぶん)身魂(みたま)(すぐ)れて()いものだから(あり)(やつ)280有難(ありがた)がつて()いついたら(はな)れぬのだよ。281(まへ)だつて(おれ)()ひついたら容易(ようい)(はな)して()れまいがな』
282(たか)成程(なるほど)283道理(だうり)()けば御尤(ごもつと)千万(せんばん)284()つかり(もく)チヤンは、285これから(あり)()(ところ)へは()つて(もら)はないやうにせねばなりませぬワ。286(わたし)だつて287きつと(あり)につかれる(からだ)(ちが)ひありませぬからなア』
288(えう)『それやさうかも()れぬ、289いつも喋々(てふてふ)喃々(なんなん)(あま)(ささや)きを()かして()れるからなアー。290(しか)(おれ)(たす)けて()れた二人(ふたり)男女(だんぢよ)可愛(かあい)さうだから(たす)けてやらうぢやないか。291(なん)()うても(おれ)(いのち)(おや)だからのう』
292(たか)(もく)チヤン、293それや(なに)()ふのですか、294(まへ)さまの正体(しやうたい)見附(みつ)けられた以上(いじやう)295こんな(もの)()いては後日(ごじつ)(さまたげ)になるぢやありませぬか。296あの(とほ)(あり)()はしておけば、2961(べつ)人殺(ひとごろし)(つみ)にもならず、297(あり)(よろこ)んで(はら)(ふく)らすなり、298(あり)()めには吾々(われわれ)救世主(きうせいしゆ)ですよ。299(あり)だつて人間(にんげん)だつて(おな)(こと)ですよ、300たつた人間(にんげん)二人(ふたり)(いのち)(かは)りに数百万(すうひやくまん)(あり)(いのち)(すく)へば、301何程(いくら)功徳(くどく)になるか()れませぬよ。302そんな宋襄(そうじやう)(じん)はおよしなさい。303折角(せつかく)(よろこ)んで()(あり)(こま)りますよ。304サアサア二人(ふたり)衣類(きもの)胡魔化(ごまくわ)して()いたから、305貴方(あなた)(をとこ)(はう)をお()けなさい。306(わたし)(いや)だけれど阿魔女(あまつちよ)(はう)暫時(ざんじ)()てやりますワ、307(なん)智慧(ちゑ)(ほど)()(たふと)いものがあらうか、308杢助(もくすけ)さま、309千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)器量(きりやう)はちと(わか)りましたか』
310(えう)烏賊(いか)にも、311(かに)にも(たこ)にも(あし)四人前(よにんまへ)だ、312ヤア感心(かんしん)々々(かんしん)313(まへ)腕前(うでまへ)には時置師(ときおかし)杢助(もくすけ)(おそ)入谷(いりや)鬼子(きし)母神(もじん)だ。314(あき)(がへる)(つら)(みづ)だ、315ウフヽヽヽ』
316フクエ『もしもし(わたくし)(たす)けて(くだ)さいな、317(あま)殺生(せつしやう)ぢや御座(ござ)いませぬか』
318 高姫(たかひめ)(あご)をしやくり(なが)ら、
319(たか)『ヘン頓馬(とんま)野郎(やらう)()320それや(なに)()ふのだ。321最前(さいぜん)あれだけ丁寧(ていねい)引導(いんだう)(わた)して()いたぢやないか、322マア(ゆつく)りと其処(そこ)両人(りやうにん)()(くは)れて()たらよからう、323有難(ありがた)うと感謝(かんしや)しなさい、324(まへ)(からだ)(たちま)蟻ケ塔(ありがたふ)になるぞや、325(あさ)から(ばん)(まで)(はたら)いても(はたら)いても()へぬ()(なか)326()とつて(くは)れるとは幸福(かうふく)人間(にんげん)だ、327オホヽヽヽ』
328(にく)らしげに(あご)()()し、329(しり)()()(たた)いて一目散(いちもくさん)杢助(もくすけ)(とも)船着場(ふなつきば)()(かへ)り、330二人(ふたり)(つな)いでおいた小船(こぶね)()(まか)せ、331(なみ)なぎ(わた)(はる)湖面(こめん)鼻歌(はなうた)(うた)(なが)(あま)(ささや)きをつづけて何処(いづく)ともなく()いで()く。
332大正一五・六・二九 旧五・二〇 於天之橋立なかや旅館 加藤明子録)
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki