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第72巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 水波洋妖
01 老の高砂
〔1810〕
02 時化の湖
〔1811〕
03 厳の欵乃
〔1812〕
04 銀杏姫
〔1813〕
05 蛸船
〔1814〕
06 夜鷹姫
〔1815〕
07 鰹の網引
〔1816〕
第2篇 杢迂拙婦
08 街宣
〔1817〕
09 欠恋坊
〔1818〕
10 清の歌
〔1819〕
11 問答所
〔1820〕
12 懺悔の生活
〔1821〕
13 捨台演
〔1822〕
14 新宅入
〔1823〕
15 災会
〔1824〕
16 東西奔走
〔1825〕
第3篇 転化退閉
17 六樫問答
〔1826〕
18 法城渡
〔1827〕
19 旧場皈
〔1828〕
20 九官鳥
〔1829〕
21 大会合
〔1830〕
22 妖魅帰
〔1831〕
筑紫潟
余白歌
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第一五章
災会
(
さいくわい
)
〔一八二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
篇:
第2篇 杢迂拙婦
よみ(新仮名遣い):
もくうせっぷ
章:
第15章 災会
よみ(新仮名遣い):
さいかい
通し章番号:
1824
口述日:
1926(大正15)年06月30日(旧05月21日)
口述場所:
天之橋立なかや別館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫はウラナイ教の館に集まった善男善女を前に、講演を始めている。
自分が救世主であること、三五教がいかに堕落した教えであるか、など気炎を上げている。
そこへ、キューバーがやってきて三五教を攻撃する演説を始め、ウラナイ教を援護する。
演説が終わって、高姫とキューバーは久しぶりの対面となる(トルマン国では、幽冥界旅行をした折に夫婦の契りをし、一緒に国取りの謀議をした仲であった)。
キューバーは、ヨリコ姫が、「自分を説き伏せた者にはスガの宮を明渡す」などといって、宗教問答の挑戦者を募っていることを知らせる。
高姫は早速乗り込もうとする。
キューバーは、高姫が今は杢助と夫婦になっていることを知り、「自分こそ誠の夫」と乗り込もうとするが、高姫に当て身を食わされ、床下に放り込まれてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7215
愛善世界社版:
176頁
八幡書店版:
第12輯 666頁
修補版:
校定版:
183頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
トルマン
国
(
ごく
)
の
王妃
(
わうひ
)
なる
002
千草
(
ちぐさ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
体
(
たい
)
をかり
003
再
(
ふたた
)
び
娑婆
(
しやば
)
に
甦
(
よみがへ
)
り
004
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
と
名
(
な
)
を
変
(
か
)
へて
005
曲
(
まが
)
の
精霊
(
せいれい
)
に
沁
(
し
)
み
込
(
こ
)
んだ
006
ウラナイ
教
(
けう
)
をどこ
迄
(
まで
)
も
007
たてにやおかぬと
雄猛
(
をたけ
)
びし
008
前世
(
ぜんせ
)
に
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
びたる
009
大雲山
(
たいうんざん
)
の
洞穴
(
ほらあな
)
に
010
棲
(
すま
)
へる
大蛇
(
をろち
)
の
乾児
(
こぶん
)
なる
011
妖幻坊
(
えうげんばう
)
に
再会
(
さいくわい
)
し
012
又
(
また
)
もや
夫婦
(
ふうふ
)
の
縁
(
えん
)
結
(
むす
)
び
013
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
と
彷徨
(
さまよ
)
ひつ
014
スガの
港
(
みなと
)
の
北町
(
きたまち
)
に
015
漸
(
やうや
)
く
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
買
(
かひ
)
求
(
もと
)
め
016
スガの
聖地
(
せいち
)
に
建
(
た
)
てられし
017
三五教
(
あななひけう
)
の
神殿
(
しんでん
)
を
018
向
(
むか
)
ふに
廻
(
まは
)
して
勢力
(
せいりよく
)
を
019
比
(
くら
)
べむものと
雄猛
(
をたけ
)
びし
020
立派
(
りつぱ
)
な
神殿
(
しんでん
)
造
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げ
021
俄
(
にはか
)
役員
(
やくゐん
)
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
022
雇
(
やと
)
ひ
来
(
きた
)
りて
厳
(
おごそ
)
かな
023
口調
(
くてう
)
を
以
(
もつ
)
て
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
る
024
善男
(
ぜんなん
)
善女
(
ぜんによ
)
に
相向
(
あひむか
)
ひ
025
四脚
(
しきやく
)
の
机
(
つくゑ
)
を
前
(
まへ
)
に
置
(
お
)
き
026
椅子
(
いす
)
に
腰
(
こし
)
かけ
悠然
(
いうぜん
)
と
027
コツプの
水
(
みづ
)
を
啜
(
すす
)
りつつ
028
エヘンと
一声
(
ひとこゑ
)
咳払
(
せきばら
)
ひ
029
扇
(
あふぎ
)
片手
(
かたて
)
に
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら
030
信者
(
しんじや
)
の
上
(
うへ
)
に
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぎ
031
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
く
美貌
(
びばう
)
もて
032
涼
(
すず
)
しき
声
(
こゑ
)
にて
語
(
かた
)
るらく
033
『
皆
(
みな
)
さまようこそお
詣
(
まゐ
)
りよ
034
妾
(
わたし
)
は
人間
(
にんげん
)
に
見
(
み
)
ゆれども
035
決
(
けつ
)
して
俗人
(
ぞくじん
)
ぢやありませぬ
036
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
天人
(
てんにん
)
の
037
霊
(
みたま
)
を
受
(
う
)
けて
生
(
うま
)
れたる
038
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
で
039
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大弥勒
(
おほみろく
)
040
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
041
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
と
申
(
まを
)
します
042
妾
(
わたし
)
の
教
(
をし
)
ふる
御教
(
みをしへ
)
は
043
ウラナイ
教
(
けう
)
と
云
(
い
)
ひまして
044
天下
(
てんか
)
に
比類
(
たぐひ
)
のない
教
(
をしへ
)
045
盲
(
めくら
)
は
目
(
め
)
が
開
(
あ
)
き
聾
(
つんぼ
)
は
聞
(
きこ
)
え
046
躄
(
いざり
)
は
立
(
た
)
つて
歩
(
ある
)
きます
047
肺病
(
はいびやう
)
、
腎臓
(
じんざう
)
、
心臓病
(
しんざうびやう
)
048
胃病
(
ゐびやう
)
は
愚
(
おろ
)
か
十二
(
じふに
)
指腸
(
しちやう
)
049
盲腸炎
(
まうちやうえん
)
に
神経痛
(
しんけいつう
)
050
気管支
(
きくわんし
)
加答児
(
かたる
)
に
肺
(
はい
)
加答児
(
かたる
)
051
流行性
(
りうかうせい
)
感冒
(
かんぱう
)
コレラ
病
(
びやう
)
052
猩紅熱
(
しやうこうねつ
)
にパラチブス
053
横根
(
よこね
)
や
疳瘡
(
かんさう
)
や
骨
(
ほね
)
うづき
054
陰睾
(
いんきん
)
田虫
(
たむし
)
に
疥癬虫
(
ひぜんむし
)
055
如何
(
いか
)
なる
病
(
やまひ
)
も
高姫
(
たかひめ
)
が
056
心
(
こころ
)
に
叶
(
かな
)
うた
人
(
ひと
)
ならば
057
即座
(
そくざ
)
に
癒
(
なほ
)
して
上
(
あ
)
げますよ
058
それぢやと
云
(
い
)
つてウラナイの
059
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
の
分
(
わか
)
らない
060
お
方
(
かた
)
にや
神徳
(
しんとく
)
やりませぬ
061
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
062
どちらが
偉
(
えら
)
いと
云
(
い
)
ふやうな
063
比較
(
ひかく
)
研究
(
けんきう
)
の
信者
(
しんじや
)
には
064
罰
(
ばち
)
こそあたれ
神徳
(
おかげ
)
ない
065
ここの
道理
(
だうり
)
を
聞
(
き
)
きわけて
066
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじう
)
の
信仰
(
しんかう
)
を
067
皆
(
みな
)
さま
励
(
はげ
)
んでなさいませ
068
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
総務
(
そうむ
)
をば
069
務
(
つと
)
めて
御座
(
ござ
)
つた
杢助
(
もくすけ
)
さま
070
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
071
三羽烏
(
さんばがらす
)
と
云
(
い
)
はれたる
072
天下
(
てんか
)
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
073
三五教
(
あななひけう
)
に
愛想
(
あいそ
)
をば
074
おつかしなさつて
高姫
(
たかひめ
)
が
075
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
に
賛同
(
さんどう
)
し
076
遂
(
つひ
)
に
進
(
すす
)
んで
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
と
077
おなり
遊
(
あそ
)
ばし
御教
(
みをしへ
)
を
078
天下
(
てんか
)
に
開
(
ひら
)
いて
御座
(
ござ
)
ると
云
(
い
)
ふ
079
珍現象
(
ちんげんしやう
)
になつたのも
080
決
(
けつ
)
して
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
でない
081
メツキは
直
(
す
)
ぐに
剥
(
は
)
げるぞや
082
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
のウラナイ
教
(
けう
)
083
擦
(
こす
)
れば
擦
(
こす
)
る
程
(
ほど
)
光
(
ひか
)
り
出
(
だ
)
す
084
鋭敏
(
えいびん
)
の
頭脳
(
づなう
)
の
持主
(
もちぬし
)
の
085
杢助
(
もくすけ
)
さまは
逸早
(
いちはや
)
く
086
ウラナイ
教
(
けう
)
の
誠
(
まこと
)
をば
087
感得
(
かんとく
)
されて
三五
(
あななひ
)
の
088
曲津
(
まがつ
)
の
教
(
をしへ
)
を
捨
(
す
)
てられた
089
これ
丈
(
だ
)
け
見
(
み
)
ても
分
(
わか
)
るだらう
090
スガの
宮居
(
みやゐ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
091
玉清別
(
たまきよわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
は
092
何処
(
いづこ
)
の
馬骨
(
ばこつ
)
か
牛骨
(
ぎうこつ
)
か
093
或
(
あるひ
)
は
狐
(
きつね
)
の
容器
(
いれもの
)
か
094
狸
(
たぬき
)
のお
化
(
ばけ
)
か
知
(
し
)
らねども
095
どうしてあのやうなスタイルで
096
神
(
かみ
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
が
保
(
たも
)
てませう
097
見
(
み
)
てゐて
下
(
くだ
)
され
一月
(
ひとつき
)
も
098
経
(
た
)
たない
中
(
うち
)
にメチヤメチヤに
099
壊
(
こは
)
れて
了
(
しま
)
ふは
目
(
ま
)
のあたり
100
鏡
(
かがみ
)
にかけし
如
(
ごと
)
くです
101
誠
(
まこと
)
の
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
102
ウラナイ
教
(
けう
)
より
外
(
ほか
)
にない
103
ヨリコの
姫
(
ひめ
)
や
花香姫
(
はなかひめ
)
104
ダリヤの
姫
(
ひめ
)
とか
云
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
105
何
(
なに
)
をしとるか
知
(
し
)
らねども
106
清浄
(
せいじやう
)
無垢
(
むく
)
の
神館
(
かむやかた
)
107
月
(
つき
)
に
七日
(
なぬか
)
の
不浄
(
ふじやう
)
ある
108
女
(
をんな
)
を
三人
(
みたり
)
も
泊
(
とま
)
らせて
109
どうして
神
(
かみ
)
が
喜
(
よろこ
)
ばう
110
若
(
も
)
しも
喜
(
よろこ
)
ぶ
神
(
かみ
)
なれば
111
必
(
かなら
)
ず
曲津
(
まがつ
)
に
違
(
ちが
)
ひない
112
妾
(
わたし
)
も
最早
(
もはや
)
四十三
(
しじふさん
)
113
若
(
わか
)
い
姿
(
すがた
)
はして
居
(
を
)
れど
114
月
(
つき
)
に
七日
(
なぬか
)
のお
客
(
きやく
)
さま
115
宿泊
(
しゆくはく
)
なさるやうな
身
(
み
)
ではない
116
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
うてもウラナイの
117
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
誠
(
まこと
)
ぞや
118
気
(
き
)
をつけなされよ
皆
(
みな
)
の
人
(
ひと
)
119
必
(
かなら
)
ず
曲津
(
まがつ
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
120
迷
(
まよ
)
うて
地獄
(
ぢごく
)
の
先駆
(
さきが
)
けを
121
なさらぬやうにと
気
(
き
)
をつける
122
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
123
ウラナイ
教
(
けう
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
124
ヘグレのヘグレのヘグレ
武者
(
むしや
)
125
ヘグレ
神社
(
じんじや
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
126
リントウビテンの
大御神
(
おほみかみ
)
127
地上
(
ちじやう
)
大臣
(
だいじん
)
地上姫
(
ちじやうひめ
)
128
地上丸
(
ちじやうまる
)
さま
行成
(
ゆきなり
)
さま
129
定子
(
さだこ
)
の
姫
(
ひめ
)
さま
杵築姫
(
きつきひめ
)
130
弥勒
(
みろく
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
131
貞彦姫
(
さだひこひめ
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
132
言上姫
(
ことじやうひめ
)
さま
春子
(
はるこ
)
さま
133
その
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
134
御前
(
みまへ
)
に
謹
(
つつし
)
み
高姫
(
たかひめ
)
が
135
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
と
現
(
あら
)
はれて
136
この
場
(
ば
)
に
集
(
つど
)
ふ
人々
(
ひとびと
)
の
137
守護
(
しゆご
)
を
命
(
めい
)
じおきまする
138
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
139
御霊
(
みたま
)
幸
(
さきは
)
ひましませよ』
140
かかる
処
(
ところ
)
へ
修験者
(
しうげんじや
)
141
錫杖
(
しやくぢやう
)
左手
(
ゆんで
)
につき
乍
(
なが
)
ら
142
深網笠
(
ふかあみがさ
)
に
顔
(
かほ
)
隠
(
かく
)
し
143
いと
荘重
(
さうちよう
)
な
言霊
(
ことたま
)
を
144
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げ
乍
(
なが
)
ら
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り
145
『ウラナイ
教
(
けう
)
の
大本部
(
だいほんぶ
)
146
教祖
(
けうそ
)
の
君
(
きみ
)
に
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
147
お
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
す』と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
148
群集
(
ぐんしふ
)
の
中
(
なか
)
をかき
分
(
わ
)
けて
149
演壇
(
えんだん
)
目
(
め
)
蒐
(
が
)
けて
進
(
すす
)
みより
150
高姫司
(
たかひめつかさ
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち
151
『
拙僧
(
せつそう
)
こそは
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
152
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
現
(
あ
)
れませる
153
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
ご
)
寵臣
(
ちようしん
)
154
スコブッツエン
宗
(
しう
)
の
大教祖
(
だいけうそ
)
155
キユーバーと
申
(
まを
)
す
僧
(
そう
)
で
御座
(
ござ
)
る
156
どうか
一場
(
いちぢやう
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
157
許
(
ゆる
)
させ
玉
(
たま
)
へ』と
呼
(
よば
)
はれば
158
高姫
(
たかひめ
)
不審
(
ふしん
)
の
眉
(
まゆ
)
ひそめ
159
何処
(
どこ
)
かで
聞
(
き
)
いた
声
(
こゑ
)
の
色
(
いろ
)
160
面
(
おもて
)
は
笠
(
かさ
)
で
見
(
み
)
えねども
161
もしや
自分
(
じぶん
)
の
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ふ
162
キユーバーの
君
(
きみ
)
ではあるまいか
163
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
御
(
ご
)
登壇
(
とうだん
)
164
結構
(
けつこう
)
なお
話
(
はなし
)
頼
(
たの
)
みます
165
これこれ
皆
(
みな
)
の
御
(
ご
)
信者
(
しんじや
)
よ
166
妾
(
わたし
)
はこれから
降壇
(
かうだん
)
し
167
奥
(
おく
)
の
一室
(
ひとま
)
で
休
(
やす
)
みます
168
この
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
修験者
(
しうげんじや
)
169
必
(
かなら
)
ず
尊
(
たふと
)
いお
話
(
はなし
)
を
170
して
下
(
くだ
)
さるに
違
(
ちが
)
ひない
171
神妙
(
しんめう
)
にお
聞
(
き
)
きなされや』と
172
云
(
い
)
ひつつ
人
(
ひと
)
をかき
分
(
わ
)
けて
173
隣
(
とな
)
りの
部屋
(
へや
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め
174
様子
(
やうす
)
如何
(
いか
)
にと
窺
(
うかが
)
ひぬ
175
キユーバーも
千草
(
ちぐさ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
の
176
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るより
仰天
(
ぎやうてん
)
し
177
ハートに
浪
(
なみ
)
は
騒
(
さわ
)
げども
178
そしらぬ
顔
(
かほ
)
を
装
(
よそほ
)
ひつ
179
賛成
(
さんせい
)
演説
(
えんぜつ
)
初
(
はじ
)
めける
180
キユーバーはコップに
水
(
みづ
)
をつぎ
181
オホンと
一声
(
ひとこゑ
)
咳払
(
せきばら
)
ひ
182
神官扇
(
しんくわんあふぎ
)
を
斜
(
しや
)
に
構
(
かま
)
へ
183
笠
(
かさ
)
抜
(
ぬ
)
ぎ
捨
(
す
)
てて
群集
(
ぐんしふ
)
を
184
ジロジロ
見廻
(
みまは
)
し
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
く
185
『
拙僧
(
せつそう
)
こそはウラナイの
186
道
(
みち
)
に
永年
(
ながねん
)
苦労
(
くらう
)
した
187
諸国
(
しよこく
)
巡礼
(
じゆんれい
)
の
行者
(
ぎやうじや
)
です
188
今
(
いま
)
現
(
あら
)
はれた
高姫
(
たかひめ
)
の
189
教主
(
けうしゆ
)
の
君
(
きみ
)
は
人
(
ひと
)
でない
190
天津空
(
あまつそら
)
より
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
り
191
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
192
天降
(
あも
)
り
玉
(
たま
)
ひし
生神
(
いきがみ
)
ぞ
193
皆
(
みな
)
さま
喜
(
よろこ
)
びなさいませ
194
此
(
この
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
信
(
しん
)
じなば
195
寿命
(
じゆみやう
)
長久
(
ちやうきう
)
福徳
(
ふくとく
)
円満
(
ゑんまん
)
196
五穀
(
ごこく
)
豊穣
(
ほうじやう
)
息災
(
そくさい
)
延命
(
えんめい
)
まがひなし
197
そもそも
神
(
かみ
)
には
正神
(
せいしん
)
と
198
邪神
(
じやしん
)
の
二
(
ふた
)
つの
区別
(
くべつ
)
あり
199
神
(
かみ
)
を
信仰
(
しんかう
)
するならば
200
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
を
敬
(
うやま
)
うて
201
邪神
(
よこしまがみ
)
を
捨
(
す
)
てなされ
202
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
は
生命
(
いのち
)
を
与
(
あた
)
へ
203
病
(
やまひ
)
を
癒
(
い
)
やし
福徳
(
ふくとく
)
を
204
授
(
さづ
)
け
玉
(
たま
)
ふ
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
御
(
お
)
やり
方
(
かた
)
205
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
は
病気
(
びやうき
)
を
起
(
おこ
)
し
206
貧乏
(
びんばふ
)
を
齎
(
もたら
)
し
命
(
いのち
)
を
縮
(
ちぢ
)
め
207
大雨
(
おほあめ
)
大風
(
おほかぜ
)
地震
(
ぢしん
)
まで
208
人
(
ひと
)
の
嫌
(
いや
)
がる
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り
209
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
にするものだ
210
スガの
御山
(
みやま
)
に
建
(
た
)
てられし
211
三五教
(
あななひけう
)
も
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り
212
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
りつつ
213
悪魔
(
あくま
)
の
神
(
かみ
)
を
呼
(
よ
)
び
集
(
つど
)
へ
214
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
乱
(
みだ
)
さむと
215
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
念
(
ねん
)
じてる
216
何卒
(
なにとぞ
)
皆
(
みな
)
さま
気
(
き
)
をつけて
217
スガの
山
(
やま
)
へは
行
(
ゆ
)
かぬやう
218
近所
(
きんじよ
)
合壁
(
がつぺき
)
いましめて
219
ウラナイ
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
220
おかげを
頂
(
いただ
)
きなされませ
221
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
222
私
(
わたし
)
も
教主
(
けうしゆ
)
に
用
(
よう
)
がある
223
一先
(
ひとま
)
づ
御免
(
ごめん
)
』と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
224
悠々
(
いういう
)
演壇
(
えんだん
)
降
(
くだ
)
りつつ
225
高姫司
(
たかひめつかさ
)
の
潜
(
ひそ
)
みたる
226
隣
(
となり
)
の
部屋
(
へや
)
をさして
行
(
ゆ
)
く
227
数多
(
あまた
)
の
信者
(
しんじや
)
は
怪訝顔
(
けげんがほ
)
228
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やら
分
(
わか
)
らぬと
229
互
(
たがひ
)
に
小言
(
こごと
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
230
ボツボツ
家路
(
いへぢ
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
231
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
232
目玉
(
めだま
)
飛
(
とび
)
出
(
だ
)
す
面白
(
おもしろ
)
さ。
233
高姫
(
たかひめ
)
は
一室
(
ひとま
)
に
隠
(
かく
)
れてキユーバーの
演説
(
えんぜつ
)
を
聞
(
き
)
いてゐたが、
234
『
背恰好
(
せかつかう
)
と
云
(
い
)
ひ、
235
顔
(
かほ
)
の
形
(
かたち
)
と
云
(
い
)
ひ、
236
声色
(
こはいろ
)
と
云
(
い
)
ひ、
237
トルマン
城
(
じやう
)
で
会
(
あ
)
うたキユーバーに
少
(
すこ
)
しも
違
(
ちが
)
はない。
238
ハテ
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たワイ、
239
悋気
(
りんき
)
の
深
(
ふか
)
い
杢助
(
もくすけ
)
さまは
別館
(
べつくわん
)
に
寝
(
ね
)
てゐらつしやるから、
240
いいやうなものの
何時
(
なんどき
)
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めるか
分
(
わか
)
らない。
241
もしキユーバーさまであつたなら、
242
如何
(
どう
)
しようかな』
243
と
胸
(
むね
)
を
抱
(
いだ
)
いて
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
244
其処
(
そこ
)
へキユーバーが
足音
(
あしおと
)
忍
(
しの
)
ばせ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り
小声
(
こごゑ
)
になつて、
245
『これ、
246
千草姫
(
ちぐさひめ
)
どの、
247
この
面
(
つら
)
を
覚
(
おぼ
)
えてゐますか』
248
高
(
たか
)
『ハイ、
249
そのお
顔
(
かほ
)
を
忘
(
わす
)
れてなりませうか、
250
天下
(
てんか
)
に
類例
(
るゐれい
)
のない
御
(
ご
)
容貌
(
ようばう
)
ですもの。
251
そして
貴方
(
あなた
)
、
252
ひどいぢやありませぬか、
253
何処
(
どこ
)
をうろついてゐらつしやつたのです』
254
キユ『
時
(
とき
)
に
千草殿
(
ちぐさどの
)
、
255
スガ
山
(
やま
)
の
神館
(
かむやかた
)
にはヨリコ
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
山賊
(
さんぞく
)
上
(
あが
)
りの
女
(
をんな
)
が
傲然
(
がうぜん
)
と
構
(
かま
)
へ
込
(
こ
)
み、
256
宗教
(
しうけう
)
問答所
(
もんだふどころ
)
と
大看板
(
おほかんばん
)
を
掲
(
かか
)
げ、
257
「
妾
(
わらは
)
を
説
(
と
)
き
伏
(
ふ
)
せた
人
(
ひと
)
には
此
(
この
)
館
(
やかた
)
の
役目
(
やくめ
)
をお
渡
(
わた
)
し
申
(
まを
)
す」と
図々
(
づうづう
)
しくも
掲
(
かか
)
げて
居
(
ゐ
)
るのだ、
258
どうだ
259
お
前
(
まへ
)
は
一
(
ひと
)
つ
問答
(
もんだふ
)
に
行
(
ゆ
)
く
気
(
き
)
はないか』
260
高
(
たか
)
『ナニ、
261
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
がそんな
事
(
こと
)
を
書
(
か
)
いて
居
(
を
)
りますか、
262
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
馬鹿
(
ばか
)
でせう、
263
己
(
おの
)
が
刀
(
かたな
)
で
己
(
おの
)
が
首
(
くび
)
、
264
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
でせう。
265
ヤア
面白
(
おもしろ
)
い、
266
それぢや
今日
(
けふ
)
から
準備
(
じゆんび
)
しておいて、
267
明日
(
あす
)
は
出
(
で
)
かけてやりませう』
268
キユ『ヤ、
269
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
有難
(
ありがた
)
い、
270
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
拙者
(
せつしや
)
もお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう。
271
然
(
しか
)
し
千草姫
(
ちぐさひめ
)
さま、
272
お
前
(
まへ
)
さまに
これ
はあるのかい』
273
と
親指
(
おやゆび
)
をつき
出
(
だ
)
す。
274
高姫
(
たかひめ
)
はやや
口
(
くち
)
ごもり
乍
(
なが
)
ら
思
(
おも
)
ひきつて、
275
『ハイ、
276
時置師
(
ときおかし
)
の
神
(
かみ
)
の
杢助
(
もくすけ
)
さまと
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
夫
(
をつと
)
が
御座
(
ござ
)
います。
277
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
仰有
(
おつしや
)
ると
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めますから、
278
どうか
小声
(
こごゑ
)
で
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
279
キユ『
誠
(
まこと
)
の
夫
(
をつと
)
が
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのに、
280
誠
(
まこと
)
の
夫
(
をつと
)
の
俺
(
おれ
)
が
何
(
なに
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
する
必要
(
ひつえう
)
があるか、
281
その
杢助
(
もくすけ
)
とか
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
282
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
を
横取
(
よこど
)
りしよつた
曲者
(
くせもの
)
だ。
283
ヨーシ、
284
奥
(
おく
)
へ
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
んで
談判
(
だんぱん
)
をやつてやらう』
285
と
立
(
たち
)
上
(
あが
)
らうとする、
286
高姫
(
たかひめ
)
は
矢庭
(
やには
)
に
胸倉
(
むなぐら
)
をグツと
取
(
と
)
り、
287
喉
(
のど
)
を
締
(
し
)
め、
288
あて
身
(
み
)
をくわし、
289
床
(
ゆか
)
の
下
(
した
)
にソツと
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
290
あゝキユーバーの
運命
(
うんめい
)
は
如何
(
どう
)
なるであらうか。
291
(
大正一五・六・三〇
旧五・二一
於天之橋立なかや旅館
北村隆光
録)
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