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第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
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第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第72巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 水波洋妖
01 老の高砂
〔1810〕
02 時化の湖
〔1811〕
03 厳の欵乃
〔1812〕
04 銀杏姫
〔1813〕
05 蛸船
〔1814〕
06 夜鷹姫
〔1815〕
07 鰹の網引
〔1816〕
第2篇 杢迂拙婦
08 街宣
〔1817〕
09 欠恋坊
〔1818〕
10 清の歌
〔1819〕
11 問答所
〔1820〕
12 懺悔の生活
〔1821〕
13 捨台演
〔1822〕
14 新宅入
〔1823〕
15 災会
〔1824〕
16 東西奔走
〔1825〕
第3篇 転化退閉
17 六樫問答
〔1826〕
18 法城渡
〔1827〕
19 旧場皈
〔1828〕
20 九官鳥
〔1829〕
21 大会合
〔1830〕
22 妖魅帰
〔1831〕
筑紫潟
余白歌
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第二一章
大会合
(
だいくわいがふ
)
〔一八三〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
篇:
第3篇 転化退閉
よみ(新仮名遣い):
てんかたいへい
章:
第21章 大会合
よみ(新仮名遣い):
だいかいごう
通し章番号:
1830
口述日:
1926(大正15)年07月01日(旧05月22日)
口述場所:
天之橋立なかや別館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1929(昭和4)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-02-15 13:11:10
OBC :
rm7221
愛善世界社版:
259頁
八幡書店版:
第12輯 695頁
修補版:
校定版:
271頁
普及版:
102頁
初版:
ページ備考:
001
スガの
港
(
みなと
)
の
百万
(
ひやくまん
)
長者
(
ちやうじや
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
薬種
(
やくしゆ
)
問屋
(
どひや
)
の
奥
(
おく
)
の
室
(
ま
)
には、
002
若主人
(
わかしゆじん
)
のイルクを
初
(
はじ
)
め
老父
(
らうふ
)
のアリスにダリヤ
姫
(
ひめ
)
、
003
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
、
004
花香姫
(
はなかひめ
)
、
005
門番
(
もんばん
)
のアル、
006
エス
及
(
およ
)
びスガの
宮
(
みや
)
の
神司
(
かむつかさ
)
たりし
玉清別
(
たまきよわけ
)
迄
(
まで
)
が
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めて
密談
(
みつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
007
ヨリコ『アリス
様
(
さま
)
、
008
イルク
様
(
さま
)
、
009
其
(
その
)
他
(
た
)
皆
(
みな
)
さまに、
010
妾
(
わらは
)
はお
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
さねばなりませぬ、
011
折角
(
せつかく
)
大枚
(
たいまい
)
なお
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
して、
012
立派
(
りつぱ
)
なお
宮
(
みや
)
を
造
(
つく
)
つて
頂
(
いただ
)
き、
013
道場
(
だうぢやう
)
の
主
(
あるじ
)
と
迄
(
まで
)
任
(
ま
)
けられまして、
014
身
(
み
)
に
余
(
あま
)
る
光栄
(
くわうえい
)
に
浴
(
よく
)
して
居
(
を
)
りましたが、
015
ツイ
妾
(
わらは
)
の
慢心
(
まんしん
)
より
宗教
(
しうけう
)
問答所
(
もんだふどころ
)
等
(
など
)
と
看板
(
かんばん
)
を
掲
(
かか
)
げたのが
災
(
わざはひ
)
の
因
(
もと
)
となり、
016
妾
(
わらは
)
を
初
(
はじ
)
め
玉清別
(
たまきよわけ
)
様
(
さま
)
、
017
ダリヤ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
018
及
(
およ
)
び
御
(
ご
)
一門
(
いちもん
)
に
対
(
たい
)
し、
019
非常
(
ひじやう
)
の
損害
(
そんがい
)
をおかけ
致
(
いた
)
し
其
(
その
)
罪
(
つみ
)
誠
(
まこと
)
に
万死
(
ばんし
)
に
値
(
あたひ
)
致
(
いた
)
します。
020
熟々
(
つらつら
)
考
(
かんが
)
へますれば
021
オーラ
山
(
さん
)
に
立籠
(
たてこも
)
り
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
とまでなつて
悪事
(
あくじ
)
悪行
(
あくかう
)
を
敢行
(
かんかう
)
して
来
(
き
)
た
罪
(
つみ
)
深
(
ふか
)
い
体
(
からだ
)
、
022
どうして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
屋敷
(
やしき
)
に
勤
(
つと
)
める
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませう。
023
折角
(
せつかく
)
の
聖地
(
せいち
)
もウラナイ
教
(
けう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまに
渡
(
わた
)
さねばならないやうな
破目
(
はめ
)
になりました。
024
これ
皆
(
みな
)
妾
(
わらは
)
の
至
(
いた
)
らぬ
罪
(
つみ
)
で
御座
(
ござ
)
いますから
025
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
の
御
(
ご
)
成敗
(
せいばい
)
を
願
(
ねが
)
ひたう
御座
(
ござ
)
います』
026
アリス『ヨリコ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
027
左様
(
さやう
)
なお
心遣
(
こころづかひ
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
にして
下
(
くだ
)
さい。
028
三万
(
さんまん
)
や
五万
(
ごまん
)
の
金
(
かね
)
を
使
(
つか
)
つてお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てた
処
(
ところ
)
で、
029
別
(
べつ
)
に
私
(
わたくし
)
の
宅
(
たく
)
の
財産
(
しんしやう
)
が
傾
(
かたむ
)
くと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
でもなし、
030
一旦
(
いつたん
)
、
031
ウラナイ
教
(
けう
)
に
渡
(
わた
)
した
以上
(
いじやう
)
は
是非
(
ぜひ
)
なしとして、
032
再
(
ふたた
)
び
以前
(
いぜん
)
に
幾層倍
(
いくそうばい
)
増
(
ま
)
した
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
ご
)
神殿
(
しんでん
)
を
造
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げ、
033
ウラナイ
教
(
けう
)
の
向
(
むか
)
ふを
張
(
は
)
つて
見
(
み
)
せてやらうぢやありませぬか。
034
なア
悴
(
せがれ
)
、
035
お
前
(
まへ
)
はどう
思
(
おも
)
ふか、
036
老
(
お
)
いては
子
(
こ
)
に
従
(
したが
)
へと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
もあるから、
037
お
前
(
まへ
)
の
意見
(
いけん
)
に
任
(
まか
)
しておく』
038
イルク『
当家
(
たうけ
)
の
財産
(
ざいさん
)
は、
039
もとより
罪
(
つみ
)
の
固
(
かたま
)
りで
出来
(
でき
)
たのですから、
040
何程
(
なにほど
)
立派
(
りつぱ
)
なお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てても、
041
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
に
立
(
た
)
たないのは
必然
(
ひつぜん
)
の
結果
(
けつくわ
)
です。
042
決
(
けつ
)
して
私
(
わたくし
)
は
惜
(
を
)
しいとは
思
(
おも
)
ひませぬ。
043
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
しあれば、
044
当家
(
たうけ
)
の
財産
(
ざいさん
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
して
立派
(
りつぱ
)
なお
宮
(
みや
)
を
造
(
つく
)
り
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
います』
045
アリ『
成程
(
なるほど
)
、
046
悴
(
せがれ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りだ、
047
お
前
(
まへ
)
に
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
一任
(
いちにん
)
しておく。
048
皆
(
みな
)
さま、
049
悴
(
せがれ
)
とトツクリ
相談
(
さうだん
)
して
下
(
くだ
)
さい、
050
私
(
わたくし
)
は
老年
(
としより
)
の
身
(
み
)
、
051
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
しまして、
052
離棟
(
はなれ
)
で
休
(
やす
)
まして
貰
(
もら
)
ひます』
053
と
座敷杖
(
ざしきづゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
054
病
(
や
)
み
上
(
あが
)
りの
体
(
からだ
)
を
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
つて
離棟
(
はなれ
)
をさして
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
055
玉清
(
たまきよ
)
『
私
(
わたくし
)
も
永年
(
ながねん
)
の
間
(
あひだ
)
神谷村
(
かみたにむら
)
で
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
を
致
(
いた
)
し、
056
何
(
なん
)
とかして
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
を
再興
(
さいこう
)
させ
度
(
た
)
いものと
千辛
(
せんしん
)
万慮
(
ばんりよ
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
057
当家
(
たうけ
)
の
発起
(
ほつき
)
によつて
立派
(
りつぱ
)
な
宮
(
みや
)
が
建
(
た
)
て
上
(
あが
)
り、
058
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
神司
(
かむづかさ
)
となり、
059
先祖
(
せんぞ
)
も
業
(
げふ
)
をつむ
事
(
こと
)
になつて
大変
(
たいへん
)
に
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
奉仕
(
ほうし
)
して
居
(
を
)
りましたが、
060
モウかうなれば、
061
何
(
なん
)
とも
致
(
いた
)
し
方
(
かた
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
062
私
(
わたくし
)
はこれより
神谷村
(
かみたにむら
)
に
立
(
たち
)
帰
(
かへ
)
り、
063
もとの
如
(
ごと
)
く
里庄
(
りしやう
)
をつとめ、
064
村民
(
そんみん
)
を
安堵
(
あんど
)
させてやりませう』
065
ダリヤ『モシ、
066
玉清別
(
たまきよわけ
)
様
(
さま
)
、
067
あまりお
気
(
き
)
が
短
(
みじか
)
いぢやありませぬか。
068
どうぞ
暫
(
しばら
)
く、
069
何
(
なん
)
とか
定
(
きま
)
る
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さいませ。
070
やがて
間
(
ま
)
もなく、
071
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばすでせうから、
072
その
上
(
うへ
)
トツクリ
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
遊
(
あそ
)
ばしての
上
(
うへ
)
の
事
(
こと
)
に
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
います』
073
玉清
(
たまきよ
)
『
敗軍
(
はいぐん
)
の
将
(
しやう
)
は
兵
(
へい
)
を
語
(
かた
)
らず、
074
然
(
しか
)
らば
少時
(
しばらく
)
お
言葉
(
ことば
)
に
甘
(
あま
)
へ、
075
逗留
(
とうりう
)
さして
頂
(
いただ
)
きませう』
076
アル『モシ
若旦那
(
わかだんな
)
さま、
077
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
要
(
い
)
りませぬよ、
078
キツトあの
高姫
(
たかひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
079
今
(
いま
)
に
尻尾
(
しつぽ
)
を
出
(
だ
)
しますからマア
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さい。
080
私
(
わたくし
)
とエスとが
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
彼奴
(
あいつ
)
の
素性
(
すじやう
)
を
探索
(
たんさく
)
してゐます。
081
モウここ
十日
(
とをか
)
と
経
(
た
)
たない
中
(
うち
)
に、
082
キツト
杢助
(
もくすけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
を
叩
(
たた
)
き
出
(
だ
)
して
御覧
(
ごらん
)
に
入
(
い
)
れます。
083
キユーバーの
野郎
(
やらう
)
も
臭
(
くさ
)
い
代物
(
しろもの
)
です。
084
少時
(
しばらく
)
成行
(
なりゆき
)
に
任
(
まか
)
して
見
(
み
)
てゐたらどうでせう』
085
イルク『いかにも、
086
彼奴
(
あいつ
)
ア、
087
私
(
わたくし
)
も
怪
(
あや
)
しい
奴
(
やつ
)
だと
思
(
おも
)
つてゐる、
088
キツト
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
善悪
(
ぜんあく
)
を
裁
(
さば
)
いて
下
(
くだ
)
さるだらう。
089
大国常立
(
おほくにとこたちの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
090
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
は、
091
あのやうな
悪人
(
あくにん
)
に
聖場
(
せいぢやう
)
を
任
(
まか
)
して、
092
安閑
(
あんかん
)
と
見
(
み
)
て
御座
(
ござ
)
るやうな、
093
ヘドロい
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いますまい』
094
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
してゐる
処
(
ところ
)
へドヤドヤと
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
るは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
照国別
(
てるくにわけ
)
、
095
照公
(
てるこう
)
、
096
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
097
コオロ、
098
コブライの
五人
(
ごにん
)
連
(
づ
)
れであつた。
099
照国
(
てるくに
)
『
御免
(
ごめん
)
なさいませ、
100
拙者
(
せつしや
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
照国別
(
てるくにわけ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
101
梅公
(
うめこう
)
が
何時
(
いつ
)
やらは、
102
いかいお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
つたさうで
御座
(
ござ
)
いますが、
103
まだ
彼
(
かれ
)
は
当家
(
たうけ
)
へは
帰
(
かへ
)
つて
居
(
を
)
りませぬか』
104
イル『ハイ、
105
貴方
(
あなた
)
が
噂
(
うはさ
)
に
高
(
たか
)
き
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか、
106
私
(
わたくし
)
は
当家
(
たうけ
)
の
主
(
あるじ
)
、
107
イルクと
申
(
まを
)
します、
108
いい
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
109
サアサアどうか
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
110
照公
(
てるこう
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
の
弟子
(
でし
)
、
111
照公
(
てるこう
)
と
申
(
まを
)
します、
112
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しく』
113
玄真
(
げんしん
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
玄真坊
(
げんしんばう
)
と
申
(
まを
)
す
修験者
(
しうげんじや
)
で
御座
(
ござ
)
います、
114
何分
(
なにぶん
)
よろしく
御
(
お
)
見知
(
みし
)
りおき
下
(
くだ
)
さいまして
以後
(
いご
)
御
(
ご
)
懇意
(
こんい
)
に
願
(
ねが
)
ひます』
115
コオ『
奴輩
(
やつがれ
)
はコオロと
申
(
まを
)
す、
116
あまり、
117
善
(
よ
)
くもない、
118
悪
(
わる
)
くもない
三品
(
さんぴん
)
野郎
(
やらう
)
でげす。
119
不思議
(
ふしぎ
)
にも
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
一行
(
いつかう
)
に
難船
(
なんせん
)
した
処
(
ところ
)
を
救
(
たす
)
けられお
伴
(
とも
)
になつて
参
(
まゐ
)
りました。
120
どうか
門番
(
もんばん
)
にでも
使
(
つか
)
つてやつて
下
(
くだ
)
さい』
121
コブ『
奴輩
(
やつがれ
)
はコブライと
申
(
まを
)
しまして、
122
チツト
斗
(
ばか
)
り
名
(
な
)
の
売
(
う
)
れたやうな、
123
売
(
う
)
れぬやうな
侠客
(
けふかく
)
渡世
(
とせい
)
を
致
(
いた
)
しますもので
御座
(
ござ
)
います。
124
何分
(
なにぶん
)
よろしくお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
125
イル『ヤア
皆様
(
みなさま
)
、
126
よくこそお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいました。
127
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
照国別
(
てるくにわけ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
と
共
(
とも
)
に
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さい、
128
チツト
許
(
ばか
)
り
当家
(
たうけ
)
には
心配事
(
しんぱいごと
)
が
起
(
おこ
)
りまして、
129
相談
(
さうだん
)
の
最中
(
さいちう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
130
照公
(
てるこう
)
『いかなる
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
131
幸
(
さいは
)
ひ
先生
(
せんせい
)
もゐらつしやるし、
132
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
らお
力
(
ちから
)
になりませう』
133
イル『ハイ、
134
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
135
何分
(
なにぶん
)
よろしく』
136
と
挨拶
(
あいさつ
)
し、
137
自
(
みづか
)
ら
茶
(
ちや
)
を
出
(
だ
)
し
菓子
(
くわし
)
を
出
(
だ
)
し、
138
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
饗応
(
きやうおう
)
する。
139
照国
(
てるくに
)
『
当家
(
たうけ
)
は
非常
(
ひじやう
)
な
旧家
(
きうか
)
と
見
(
み
)
えますな、
140
庭石
(
にはいし
)
の
苔
(
こけ
)
むしたる
趣
(
おもむき
)
と
云
(
い
)
ひ、
141
石燈籠
(
いしどうろう
)
と
云
(
い
)
ひ、
142
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れを
慰
(
なぐさ
)
むるには
屈強
(
くつきやう
)
のお
座敷
(
ざしき
)
、
143
イヤ、
144
どうも
立派
(
りつぱ
)
なお
座敷
(
ざしき
)
を
汚
(
けが
)
して
済
(
す
)
みませぬ』
145
イル『
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います。
146
見
(
み
)
る
影
(
かげ
)
もなき
破家
(
あばらや
)
に
駕
(
かご
)
を
抂
(
ま
)
げられまして、
147
一家
(
いつか
)
一門
(
いちもん
)
の
光栄
(
くわうえい
)
之
(
これ
)
に
過
(
す
)
ぎたる
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
148
子孫
(
しそん
)
の
代
(
だい
)
迄
(
まで
)
云
(
い
)
ひ
伝
(
つた
)
へて
喜
(
よろこ
)
ぶで
御座
(
ござ
)
いませう』
149
玉清
(
たまきよ
)
『
私
(
わたくし
)
は
神谷村
(
かみたにむら
)
の
玉清別
(
たまきよわけ
)
と
申
(
まを
)
す
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
御座
(
ござ
)
います。
150
照国別
(
てるくにわけ
)
様
(
さま
)
とやら、
151
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
お
見知
(
みし
)
りおかれまして、
152
今後
(
こんご
)
共
(
とも
)
、
153
よろしく
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
の
程
(
ほど
)
をお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
154
照国
(
てるくに
)
『ヤア
貴方
(
あなた
)
は
噂
(
うはさ
)
に
承
(
うけたま
)
はつた
玉清別
(
たまきよわけ
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
155
これは
珍
(
めづら
)
しい
処
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
にかかりました。
156
何分
(
なにぶん
)
よろしくお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します。
157
時
(
とき
)
にイルクさま、
158
今
(
いま
)
一寸
(
ちよつと
)
承
(
うけたま
)
はれば
当家
(
たうけ
)
には
何
(
なに
)
か
取込事
(
とりこみごと
)
があつて
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
の
最中
(
さいちう
)
だと
聞
(
き
)
きましたが、
159
どうかお
邪魔
(
じやま
)
になれば
席
(
せき
)
を
外
(
はづ
)
しますから』
160
イル『イヤ、
161
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
には
及
(
およ
)
びませぬ、
162
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
はスガの
宮
(
みや
)
の
件
(
けん
)
に
就
(
つ
)
きまして……』
163
と
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
詳細
(
しやうさい
)
に
物語
(
ものがた
)
つた。
164
照国別
(
てるくにわけ
)
は「ウーン」と
云
(
い
)
つたきり
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
んで
少時
(
しばし
)
思案
(
しあん
)
にくれて
居
(
ゐ
)
たが、
165
何
(
なに
)
か
期
(
き
)
するところあるものの
如
(
ごと
)
く
膝
(
ひざ
)
をハタと
打
(
う
)
ち
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
頷
(
うなづ
)
いて、
166
『ヤ、
167
分
(
わか
)
りました、
168
どうか
私
(
わたくし
)
に
任
(
まか
)
して
下
(
くだ
)
さい、
169
この
解決
(
かいけつ
)
はキツトつけて
上
(
あ
)
げませう』
170
イル『
何分
(
なにぶん
)
よろしく、
171
お
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
します』
172
ヨリ『
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
173
妾
(
わらは
)
は
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
弟子
(
でし
)
梅公別
(
うめこうわけ
)
さまに
非常
(
ひじやう
)
なお
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
つたもので
御座
(
ござ
)
います。
174
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
りまするのは
花香
(
はなか
)
と
云
(
い
)
つて
妾
(
わらは
)
の
妹
(
いもうと
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
175
不思議
(
ふしぎ
)
の
縁
(
えん
)
で
梅公別
(
うめこうわけ
)
様
(
さま
)
の
妻
(
つま
)
にして
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
に
内定
(
ないてい
)
してゐるもので
御座
(
ござ
)
います。
176
何分
(
なにぶん
)
よろしく
御
(
お
)
とりなしをお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます』
177
照国
(
てるくに
)
『ヤ、
178
かねて
梅公別
(
うめこうわけ
)
からヨリコ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
も
花香姫
(
はなかひめ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
ります、
179
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
思召
(
おぼしめし
)
次第
(
しだい
)
ですからな』
180
花香
(
はなか
)
『これはこれはお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
、
181
初
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかります。
182
妾
(
わらは
)
は
今
(
いま
)
姉
(
あね
)
の
申
(
まを
)
しました
通
(
とほ
)
り、
183
梅公別
(
うめこうわけ
)
さまに
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
贔屓
(
ひいき
)
に
預
(
あづか
)
つてゐる
花香
(
はなか
)
で
御座
(
ござ
)
います。
184
何分
(
なにぶん
)
よろしく……
今後
(
こんご
)
のお
世話
(
せわ
)
をお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
しまする』
185
斯
(
か
)
く
互
(
たがひ
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
なせる
折
(
をり
)
しも、
186
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
重
(
おも
)
たげに
大
(
おほ
)
きな
葛籠
(
つづら
)
を
背負
(
せお
)
ひ、
187
エチエチ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
188
梅公
(
うめこう
)
『ア、
189
御免
(
ごめん
)
なさい、
190
梅公別
(
うめこうわけ
)
です、
191
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
無沙汰
(
ぶさた
)
を
致
(
いた
)
しました』
192
番頭
(
ばんとう
)
のアルは
頭
(
あたま
)
をピヨコピヨコ
下
(
さ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
193
『ヤア、
194
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました、
195
先生
(
せんせい
)
、
196
若旦那
(
わかだんな
)
様
(
さま
)
も、
197
大旦那
(
おほだんな
)
様
(
さま
)
も
大変
(
たいへん
)
、
198
先生
(
せんせい
)
のお
越
(
こ
)
しをお
待
(
ま
)
ちで
御座
(
ござ
)
いました。
199
之
(
これ
)
から
一寸
(
ちよつと
)
奥
(
おく
)
へ
申
(
まを
)
して
来
(
き
)
ますから』
200
梅公
(
うめこう
)
『イヤ、
201
それには
及
(
およ
)
びませぬ、
202
照国別
(
てるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
えてゐるでせう。
203
……
私
(
わたくし
)
の
方
(
はう
)
から
伺
(
うかが
)
ひます』
204
と、
205
大葛籠
(
おほつづら
)
を
玄関
(
げんくわん
)
にソツと
下
(
おろ
)
し、
206
案内
(
あんない
)
もなく
奥内
(
おくない
)
さしてニコニコし
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
207
梅公
(
うめこう
)
『ヤ、
208
先生
(
せんせい
)
初
(
はじ
)
め
皆
(
みな
)
さま、
209
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
、
210
お
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
いましたね』
211
照国
(
てるくに
)
『ヤ、
212
今
(
いま
)
当家
(
たうけ
)
へ
伺
(
うかが
)
つた
所
(
ところ
)
だ、
213
実
(
じつ
)
はお
前
(
まへ
)
が、
214
あの
暴風雨
(
しけ
)
に
小舟
(
こぶね
)
を
出
(
だ
)
して
浪
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
に
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つたものだから、
215
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
心配
(
しんぱい
)
してゐたのだ。
216
ヤ、
217
無事
(
ぶじ
)
で
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
218
花香姫
(
はなかひめ
)
も
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
だらう』
219
ヨリ『
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
、
220
お
久
(
ひさ
)
しう
御
(
お
)
目
(
め
)
にかかりませぬ、
221
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
でお
目出度
(
めでた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
222
花香
(
はなか
)
も
大変
(
たいへん
)
にお
待
(
まち
)
申
(
まを
)
した
様子
(
やうす
)
で
御座
(
ござ
)
います、
223
これ
花香
(
はなか
)
、
224
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
を
申
(
まを
)
さないか』
225
花香姫
(
はなかひめ
)
は
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめ
乍
(
なが
)
ら
恥
(
はづか
)
しさうに
手
(
て
)
をついて、
226
『アノ、
227
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
228
イーエ、
229
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
230
お
久
(
ひさ
)
しう
御座
(
ござ
)
います、
231
妾
(
わたし
)
、
232
どれ
程
(
ほど
)
待
(
ま
)
つてゐたか
知
(
し
)
れませぬのよ』
233
梅公別
(
うめこうわけ
)
は
無雑作
(
むざふさ
)
に
愛想
(
あいそ
)
よく、
234
『ヤ、
235
奥
(
おく
)
さま、
236
イヤ
奥
(
おく
)
さまと
云
(
い
)
つては
済
(
す
)
まないが、
237
花香姫
(
はなかひめ
)
さま、
238
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
でお
目出度
(
めでた
)
う、
239
私
(
わたし
)
だつてヤツパリ
花香
(
はなか
)
さまの
事
(
こと
)
ア
何時
(
いつ
)
でも
忘
(
わす
)
れてゐやしませぬよ』
240
花香
(
はなか
)
『ハイ、
241
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
242
そのお
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
得心
(
とくしん
)
致
(
いた
)
しました』
243
照公
(
てるこう
)
『オイ、
244
梅公
(
うめこう
)
、
245
馬鹿
(
ばか
)
にすない、
246
何
(
なに
)
かおごつて
貰
(
もら
)
はうかい。
247
俺
(
おれ
)
の
前
(
まへ
)
で、
248
おやすくない
処
(
ところ
)
を
見
(
み
)
せつけやがつて、
249
あまりひどいぢやないか、
250
アツハヽヽ』
251
ヨリ『
梅公別
(
うめこうわけ
)
さま、
252
当然
(
あたりまへ
)
ですわね、
253
これ
花香
(
はなか
)
さま、
254
何
(
なに
)
もオヂオヂする
事
(
こと
)
はありませぬよ、
255
云
(
い
)
ひ
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
あれば
人
(
ひと
)
さまの
中
(
なか
)
でも
構
(
かま
)
はない、
256
ドシドシ
云
(
い
)
つたがよい、
257
憚
(
はばか
)
りながら
姉
(
ねえ
)
さまがついて
居
(
を
)
りますからな』
258
照公
(
てるこう
)
『ヤ、
259
これは
堪
(
たま
)
らぬ、
260
お
面
(
めん
)
、
261
お
小手
(
こて
)
、
262
お
胴
(
どう
)
、
263
お
突
(
つき
)
と
御座
(
ござ
)
るワイ。
264
ヤ、
265
斯
(
か
)
うなりやいよいよ
敗北
(
はいぼく
)
だ。
266
照公
(
てるこう
)
砲台
(
はうだい
)
も
沈黙
(
ちんもく
)
せなくちやなるまい、
267
ウツフヽヽヽ』
268
梅公
(
うめこう
)
『
仇話
(
あだばなし
)
は
扨
(
さて
)
おいて
269
海上
(
かいじやう
)
から
ほのか
にスガ
山
(
やま
)
の
聖地
(
せいち
)
を
見
(
み
)
れば
怪
(
あや
)
しい
雲
(
くも
)
が
立
(
た
)
つてゐました。
270
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
事
(
こと
)
はありませぬかな』
271
イル『ハイ、
272
お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
273
その
事
(
こと
)
に
就
(
つ
)
きまして
今
(
いま
)
、
274
相談会
(
さうだんくわい
)
を
開
(
ひら
)
いて
居
(
を
)
つた
処
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
275
梅公
(
うめこう
)
『
高姫
(
たかひめ
)
、
276
杢助
(
もくすけ
)
、
277
キユーバー
等
(
とう
)
の
悪人
(
あくにん
)
が
聖地
(
せいち
)
を
占領
(
せんりやう
)
せむとしてゐるのでせう』
278
イル『ハイ、
279
已
(
すで
)
に
占領
(
せんりやう
)
されて
了
(
しま
)
つたのです。
280
最早
(
もはや
)
今
(
いま
)
となつては、
281
手
(
て
)
の
出
(
だ
)
しやうも
御座
(
ござ
)
いませぬので……』
282
梅公
(
うめこう
)
『
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
なさるな、
283
梅公別
(
うめこうわけ
)
がキツト
解決
(
かいけつ
)
をつけませう、
284
悪人輩
(
あくにんばら
)
を
一言
(
いちごん
)
のもとに
叩
(
たた
)
き
出
(
だ
)
し、
285
もとの
聖地
(
せいち
)
に
回復
(
くわいふく
)
せむは
吾
(
わが
)
方寸
(
はうすん
)
に
御座
(
ござ
)
います。
286
ヨリコさまもダリヤさまも、
287
玉清別
(
たまきよわけ
)
さまも
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい、
288
キツトもとの
通
(
とほ
)
りにしてお
目
(
め
)
にかけませう。
289
大方
(
おほかた
)
、
290
高姫
(
たかひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
291
ヨリコさまの
素性
(
すじやう
)
を
洗
(
あら
)
ひ、
292
理窟
(
りくつ
)
づくめに
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
したのでせう』
293
ヨ『ハイ、
294
お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほり
)
で
御座
(
ござ
)
います。
295
何分
(
なにぶん
)
汚
(
けが
)
れた
魂
(
みたま
)
で
御座
(
ござ
)
いますから
296
聖場
(
せいぢやう
)
を
守
(
まも
)
る
等
(
など
)
云
(
い
)
ふ
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ、
297
妾
(
わたし
)
の
慢心
(
まんしん
)
から
柄
(
がら
)
にも
合
(
あ
)
はぬ
宮仕
(
みやづかへ
)
を
致
(
いた
)
しまして
聖場
(
せいぢやう
)
を
汚
(
けが
)
し、
298
皆
(
みな
)
さまに
対
(
たい
)
し
申訳
(
まをしわけ
)
がないので、
299
この
通
(
とほ
)
り
悄
(
しほ
)
れ
返
(
かへ
)
つてゐるので
御座
(
ござ
)
います』
300
梅公
(
うめこう
)
『
昔
(
むかし
)
は
昔
(
むかし
)
、
301
今
(
いま
)
は
今
(
いま
)
、
302
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
悪事
(
あくじ
)
があつても、
303
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めた
以上
(
いじやう
)
は
白無垢
(
しろむく
)
同然
(
どうぜん
)
、
304
一点
(
いつてん
)
の
罪
(
つみ
)
も
汚
(
けが
)
れもあらう
筈
(
はず
)
がありませぬ、
305
左様
(
さやう
)
な
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
になさいませ』
306
と
慰
(
なぐさ
)
めおき、
307
照国別
(
てるくにわけ
)
、
308
イルク、
309
玉清別
(
たまきよわけ
)
を
別室
(
べつしつ
)
に
招
(
まね
)
き、
310
高姫
(
たかひめ
)
追放
(
つゐはう
)
の
計画
(
けいくわく
)
に
密議
(
みつぎ
)
をこらし
悠然
(
いうぜん
)
として
再
(
ふたた
)
びもとの
座
(
ざ
)
に
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
311
梅公
(
うめこう
)
『
大空
(
おほぞら
)
に
塞
(
ふさ
)
がる
黒雲
(
くろくも
)
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
312
月日
(
つきひ
)
を
照
(
てら
)
す
科戸辺
(
しなどべ
)
の
神
(
かみ
)
。
313
よしやよし
醜
(
しこ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
包
(
つつ
)
むとも
314
科戸辺
(
しなどべ
)
の
神
(
かみ
)
吹
(
ふ
)
きや
払
(
はら
)
はむ』
315
これより
一同
(
いちどう
)
はスガ
山
(
やま
)
回復
(
くわいふく
)
の
策戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
各々
(
おのおの
)
手分
(
てわ
)
けをして
取
(
とり
)
かかり、
316
明日
(
みやうにち
)
を
期
(
き
)
して
大挙
(
たいきよ
)
スガ
山
(
やま
)
に
神軍
(
しんぐん
)
を
進
(
すす
)
むる
事
(
こと
)
とした。
317
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
318
(
大正一五・七・一
旧五・二二
於天之橋立なかや旅館
北村隆光
録)
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