霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 法城渡(はふじやうわたし)〔一八二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第3篇 転化退閉 よみ(新仮名遣い):てんかたいへい
章:第18章 法城渡 よみ(新仮名遣い):ほうじょうわたし 通し章番号:1827
口述日:1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ヨリコ姫は白づくめの衣装で登場し、まずは高姫を歌合戦で互いを批評しあう。
そして、まずは高姫から、「天地の元を創った根本の生き神の名」を問う。
ヨリコ姫は無終無始、無限絶対、永劫に静まりいます国常立の神様、と答える。
高姫は、それは底津岩根の大弥勒であると言い、その生き宮は誰か、とさらに問い掛ける。
ヨリコは高姫の答えを否定し、神書を調べればやはり国常立の大神がこの世の初めの神であり、その他の神は皆エンゼルであると答え返す。
高姫は、生きた肉体を持って働く神でなければ、空想理想に過ぎないと反論する。
ヨリコは、肉体を持った神は、産土山の聖場におはす、神素盞鳴の大御神であると答え、逆に高姫の神の名を問う。
高姫は、清浄潔白な神が、盗賊の親分となって多くの人を殺してきた、ヨリコのような人間を使うはずがない、ヨリコがいることで、神素盞鳴の大御神の聖場が汚されている、と逆に問い詰める。
それを聞いてヨリコはすごすごと場を引き下がる。問答に勝った高姫は一人、大声を張り上げて喜んでいる。
玄関口では、エル、アス、キューバーが口論を始めていたが、その間に奥の間では、早くもスガの宮の明渡しについて、話し合いが始まっていた。
ヨリコは、自分の犯してきた罪を高姫に指摘され、その罪深い身をもって神の前に仕えることが恐ろしくなってきたと告白する。
高姫・キューバーはスガの宮が自分たちのものになり、得意になって威張り散らしている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-19 15:04:54 OBC :rm7218
愛善世界社版:221頁 八幡書店版:第12輯 681頁 修補版: 校定版:230頁 普及版:86頁 初版: ページ備考:
001 ヨリコ(ひめ)(たづ)()高姫(たかひめ)の、002()でも蒟蒻(こんにやく)でも、003一条縄(ひとすぢなは)ではいけぬやんちや(うし)たる(こと)看破(かんぱ)し、004(した)から(うへ)まで白綸子(しろりんず)づくめの衣装(いしやう)()005(かみ)(なが)(うしろ)()れ、006中啓(ちうけい)()()ち、007絹摺(きぬず)れの(おと)サラサラと、008廊下(らうか)寛歩(くわんぽ)しながら悠々然(いういうぜん)問答(もんだふ)椅子(いす)()りかかり、
009ヨリ『何神(なにがみ)化身(けしん)にますか白梅(しらうめ)
010(はな)(かをり)高姫(たかひめ)(きみ)
011久方(ひさかた)(てん)より(たか)()(はな)
012(きみ)(よそひ)(およ)ばざるらむ。
013(きみ)こそはウラナイ(けう)神柱(かむばしら)
014()()(かみ)()くぞ(たふと)き』
015(たか)『お世辞(せじ)をばならべて稜威(みいづ)高姫(たかひめ)
016揶揄(からか)ひたまふ(つら)(にく)さよ。
017追従(つゐしよう)()ふよな(かみ)御座(ござ)らぬぞ
018ヨリコの(ひめ)よその(かほ)(あら)へ。
019今日(けふ)こそは(なれ)生死(せいし)のさかひ()
020善悪(ぜんあく)()ける(かみ)のおでまし』
021ヨリ『これはしたり高姫(たかひめ)(さま)(おん)言葉(ことば)
022ヨリコの(ひめ)もあきれかへりぬ。
023(わらは)こそ(まこと)(かみ)にヨリコ(ひめ)
024(しこ)荒風(あらかぜ)如何(いか)(おそ)れむ。
025(おそ)ろしき(その)(かんばせ)奥山(おくやま)
026岩窟(いはや)()める(おに)かとぞ(おも)ふ』
027(たか)(なん)()失礼(しつれい)(こと)(ぬか)すのだ
028泥棒上(どろぼうあが)りの山子(やまこ)(をんな)()
029みやびなる(うた)よみかけて(かみ)(みや)
030(けが)さむとするずるさに(あき)れし。
031これからは(まこと)()()(あら)はれて
032(なれ)(こころ)(やみ)()らさむ』
033ヨリ『(わが)(たま)昼夜(ひるよる)さへも白雲(しらくも)
034(そら)(かがや)月日(つきひ)なりけり。
035久方(ひさかた)(あめ)より(くだ)るエンゼルの
036内流(ないりう)()けし(われ)生神(いきがみ)
037(たか)猪口才(ちよこざい)泥棒上(どろぼうあが)りの分際(ぶんざい)
038生神(いきがみ)などとは(けつ)(あき)れる。
039尻喰(けつくら)観音(くわんのん)(さま)真似(まね)をして
040(よそほ)ひばかり(むね)(おほかみ)
041ヨリ『(おほかみ)大神(おほかみ)(さま)()らねども
042(われ)(みたま)はいつも(かがや)く。
043(わが)(たま)(そら)(かがや)日月(じつげつ)
044(ひかり)にまして四方(よも)()らさむ』
045(たか)『ぬかしたり曲津(まがつ)(すぐ)(たましひ)
046尻餅(しりもち)月日(つきひ)(ほたる)(ひか)()
047ヨリ『五月雨(さみだれ)(やみ)()()螢火(ほたるび)
048(よる)()(ひと)のしるべとぞなる。
049螢火(ほたるび)数多(あまた)(あつ)めて(ふみ)をよみ
050(くに)(はしら)となりし(ひと)あり』
051(たか)(えら)さうに理窟(りくつ)ばかりを夕月夜(ゆふづくよ)
052(やま)にかくれてすぐ(やみ)とならむ。
053大空(おほぞら)(かみ)御稜威(みいづ)高姫(たかひめ)
054(ひかり)()れば()(くら)むらむ』
055ヨリ『(きみ)こそは大高山(たいかうざん)山伏(やまぶし)
056(あさ)(ゆふ)なに大法螺(おほぼら)()くなり』
057(たか)法螺貝(ほらがひ)(この)()邪気(じやき)(はら)ふてふ
058(まこと)(かみ)神器(しんき)なりけり。
059法螺(ほら)(ひと)()けないやうな弱虫(よわむし)
060(この)()(なか)()きて甲斐(かひ)なし』
061ヨリ『(たましひ)はよしや()すとも法螺(ほら)(かひ)
062(おと)高姫(たかひめ)になりわたるかな』
063(たか)玄真坊(げんしんばう)法螺貝(ほらがひ)()きの(つま)となり
064()(みだ)したる(なれ)悪神(あくがみ)
065法螺(ほら)()いて錫杖(しやくぢやう)をふり村々(むらむら)
066かたつて(まは)乞食(こじき)祭文(さいもん)
067オーラ(さん)(おほ)法螺(ぼら)(ふき)(やま)(かみ)
068スガの(みや)にて(また)法螺(ほら)()く』
069ヨリ『(なん)なりと勝手(かつて)(ねつ)()きたまへ
070科戸(しなど)(かぜ)伊吹(いぶき)(はら)へば』
071(たか)伊吹山(いぶきやま)(おに)再来(さいらい)(きこ)えたる
072(なれ)(この)()曲津(まがつ)(かみ)なる』
073ヨリ『(なれ)こそはミロクミロクと大法螺(おほぼら)
074()きまくるなる(しこ)曲神(まがかみ)
075(たか)『こりやヨリコ(くち)番所(ばんしよ)がないかとて
076(この)生神(いきがみ)(たて)をつくのか』
077ヨリ『たてつくか(うそ)をつくかは()らねども
078(なれ)がほこには手答(てごたへ)もなし』
079(たか)手答(てごたへ)のなき歌垣(うたがき)()つよりも
080言霊車(ことたまぐるま)めぐらして()む。
081いざさらば(わが)訊問(じんもん)(こた)へかし
082(なれ)生死(せいし)(わか)るる(ところ)ぞ』
083ヨリ『如何(いか)ならむ(とひ)にも(こた)へまつるべし
084早河(はやかは)()(なが)るる(ごと)くに』
085高姫(たかひめ)(こぶし)(にぎ)りつつ
086雄猛(をたけ)びなして(たち)(あが)
087ヨリコの(ひめ)(ねめ)つけて
088(こゑ)調子(てうし)もいと(あら)
089面上(めんじやう)(しゆ)をば(そそ)ぎつつ
090(あふぎ)パチパチ(たく)()
091『これこれヨリコの女帝(によてい)さま
092これから直接(ちよくせつ)問答(もんだふ)
093天地(てんち)(もと)(つく)りたる
094大根本(だいこんぽん)根本(こんぽん)
095生神(いきがみ)(さま)()如何(いか)に』
096()へばヨリコは(ゑみ)(たた)
097如何(いか)なる難題(なんだい)ならむかと
098(おも)へばそんな(こと)ですか
099天地(てんち)(もと)無終(むしう)無始(むし)
100無限(むげん)絶対(ぜつたい)永劫(えいごふ)
101(しづ)まり()ます(くに)(おや)
102国常立(くにとこたち)(かみ)(さま)
103(この)一柱(ひとはしら)(かみ)おきて
104(ほか)(まこと)(かみ)はない
105如何(いかが)御座(ござ)高姫(たかひめ)』と
106(かほ)さしのぞけば高姫(たかひめ)
107フフンと(わら)(はな)(さき)
108(たか)(なん)(わか)らぬ神司(かむつかさ)
109あきれて(もの)()へませぬ
110大慈(だいじ)大悲(だいひ)(かみ)(さま)
111天下(てんか)万民(ばんみん)(ことごと)
112安養(あんやう)浄土(じやうど)(すく)はむと
113(こころ)をくばりたまひつつ
114底津(そこつ)岩根(いはね)()をかくし
115時節(じせつ)()つて種々(いろいろ)
116艱難(かんなん)苦労(くらう)のそのあげく
117いよいよミロクの大神(おほかみ)
118ここに(あら)はれましますぞ
119その(かみ)(さま)生宮(いきみや)
120どこに御座(ござ)るかヨリコさま
121すつかり()てて(くだ)さんせ
122もしも(わたし)()けたなら
123現在(げんざい)(まへ)さまの()(まへ)
124(いき)たり()んだりして()せる』
125()へばヨリコは嘲笑(あざわら)
126ヨリ『貴女(あなた)(おほ)せは(ちが)ひます
127(かみ)御書(みふみ)調(しら)ぶれば
128(この)()(はじ)めと()(かみ)
129国常立(くにとこたち)大神(おほかみ)
130(その)()(もも)神々(かみがみ)
131(みな)エンゼルの(また)御名(みな)
132これより(ほか)にありませぬ』
133()へば高姫(たかひめ)グツと()
134(たか)『ホヽヽヽヽヽホヽヽヽヽ
135これや面白(おもしろ)面白(おもしろ)
136三五教(あななひけう)盲神(めくらがみ)
137こんな(こと)をば(えら)さうに
138()人々(ひとびと)()(むか)
139(まこと)しやかに(をし)へるのか
140国常立(くにとこたち)大神(おほかみ)
141もしも(この)(くに)御座(ござ)るなら
142(わたし)(まへ)()(まゐ)
143それが出来(でき)ない(こと)なれば
144空想(くうさう)理想(りさう)(かみ)でせう
145(この)高姫(たかひめ)()(かみ)
146()きた肉体(にくたい)()ちながら
147()きて(はたら)(いき)ながら
148(ひと)(たす)くる(かみ)ですよ
149その(かみ)(さま)はどこにある
150それを()らして(もら)ひたい』
151()へばヨリコは()(わら)
152ヨリ『肉体(にくたい)もつてます(かみ)
153産土山(うぶすなやま)聖場(せいぢやう)
154千木(ちぎ)(たか)()りてはおはします
155(かむ)素盞嗚(すさのを)大御神(おほみかみ)
156三千(さんぜん)世界(せかい)太柱(ふとばしら)
157これより(ほか)にはありませぬ
158貴女(あなた)(まも)るウラナイの
159(みち)(かみ)何神(なにがみ)
160(しつか)(わたし)()らねども
161(たい)した(かみ)では御座(ござ)るまい』
162()へば高姫(たかひめ)(はら)()
163(たか)(かみ)清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)
164仁慈(じんじ)無限(むげん)()しませば
165()()(つゆ)(あく)もない
166(ひと)(ころ)して(かね)()
167数多(あまた)男女(だんぢよ)(たぶ)らかし
168泥棒稼(どろぼうかせ)ぎをするやうな
169(やから)使(つか)(かみ)ならば
170(まこと)(かみ)では御座(ござ)るまい
171(まへ)素性(すじやう)調(しら)ぶれば
172オーラの(やま)山賊(さんぞく)
173親分(おやぶん)して()曲津(まがつ)(かみ)
174(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
175(ただ)しく(きよ)鎮座(ちんざ)ます
176(この)聖場(せいぢやう)(こし)()ゑて
177(かみ)をば(けが)曲津(まがつ)(かみ)
178(はや)改心(かいしん)した(うへ)
179(いち)()(はや)(この)(せき)
180退(しりぞ)きなされヨリコさま
181(なに)(ほど)改心(かいしん)したとても
182白布(はくふ)(すみ)がついたなら
183(あら)うても(あら)うても(あら)うても
184(すみ)のおちない(その)(ごと)
185どうせ貴女(あなた)創者(きずもの)
186(きず)ある身霊(みたま)神業(しんげふ)
187奉仕(ほうし)するとは()()はぬ
188これでも返答(へんたふ)御座(ござ)るかな
189(この)高姫(たかひめ)()まないが
190泥棒(どろばう)などはやりませぬ
191大根本(だいこんぽん)根本(こんぽん)
192(まこと)(かみ)太柱(ふとばしら)
193(わたし)(きず)()しあれば
194どうぞ(さが)して(くだ)さんせ
195抑々(そもそも)(まこと)(かみ)(さま)
196身霊(みたま)相応(さうおう)()によつて
197(ぜん)には(ぜん)(かみ)(まも)
198(あく)には(あく)(かみ)がつく
199(きず)ある身霊(みたま)にや(きず)(かみ)
200(きよ)身霊(みたま)にや(きよ)(かみ)
201これが天地(てんち)相応(さうおう)だ』
202()へばヨリコは(うつ)むいて
203高姫(たかひめ)一人(ひとり)(のこ)しおき
204すごすご一室(ひとま)()りにける
205高姫(たかひめ)(あと)見送(みおく)つて
206大口(おほぐち)()けて高笑(たかわら)
207(たか)『オホヽヽヽオホヽヽヽ
208(きつね)(たぬき)正体(しやうたい)
209日出(ひのでの)(かみ)(おん)(まへ)
210(つつ)むよしなく(あら)はして
211尻尾(しつぽ)(また)(はさ)みつつ
212すごすご(おく)()()んだ
213ほんに小気味(こぎみ)のよい(こと)
214もう(この)(うへ)はヨリコとて
215(この)高姫(たかひめ)()(むか)
216(たて)つく勇気(ゆうき)御座(ござ)るまい
217(あやま)証文(じようもん)(したた)めて
218今日(けふ)から貴女(あなた)(この)(やかた)
219()かせ(まうし)(たてまつ)
220(つみ)ある(わたし)()素性(すじやう)
221何卒(なにとぞ)(かく)して(くだ)されと
222哀訴(あいそ)歎願(たんぐわん)(きた)るだろう
223あゝ面白(おもしろ)心地(ここち)よや
224今日(けふ)からこれの神館(かむやかた)
225(たな)(うへ)から牡丹餅(ぼたもち)
226()ちて()たよな塩梅(あんばい)
227(わが)()()るは()れたこと
228もしも問答(もんだふ)()けたなら
229(わたし)役目(やくめ)(わた)すぞと
230()いた看板(かんばん)証拠(しようこ)ぞよ
231()てば海路(かいろ)(かぜ)()
232(かみ)(おもて)(あら)はれて
233善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)()()ける
234(この)御教(みをしへ)三五(あななひ)
235(けつ)して(かみ)(のり)でない
236(いま)()(あた)高姫(たかひめ)
237実行(じつかう)なしたる生言葉(いくことば)
238生証文(いきじようもん)のウラナイ(けう)
239千秋(せんしう)万歳(ばんざい)万々歳(ばんばんざい)
240ウラナイ(けう)大神(おほかみ)
241御前(みまへ)(つつし)(かしこ)みて
242今日(けふ)生日(いくひ)()(とき)
243成功(せいこう)(まも)(たま)ひたる
244(めぐみ)感謝(かんしや)(たてまつ)
245あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
246御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませ』と
247四辺(あたり)かまはず大声(おほごゑ)
248()()げながら(ただ)一人(ひとり)
249傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)振舞(ふるまひ)
250よその()()(にく)らしき。
251 (はなし)(かは)つて玄関口(げんくわんぐち)には、252アル、253エス、254キユーバーの(さん)(にん)(しきり)口論(こうろん)(はじ)めて()る。
255アル『こりや、256便所(はばかり)掃除(さうぢ)糞坊主(くそばうず)()257バラモン(しよ)(うつた)へるなんて脅喝(けふかつ)文句(もんく)(なら)()て、258(いぬ)遠吠(とほぼえ)(てき)()()せながら259づうづうしくも(なに)しにやつて()やがつたのだ。260エヽ(きた)ない(きた)ない(くさ)い、261(くそ)臭気(しうき)(はな)をついて(たま)らないワ、262サア()んだり()んだり』
263キユ『ハヽヽヽヽ、264馬鹿(ばか)()ふな、265此処(ここ)今日(けふ)から(おれ)領分(りやうぶん)だ。266貴様(きさま)こそ何処(どこ)かへ()()け、267(いま)(おく)高姫(たかひめ)さまと女帝(によてい)との大問答(だいもんだう)(はじ)まつて()るやうだが、268きつと高姫(たかひめ)さまの(かち)だ。269これや(この)看板(かんばん)()い、270(いま)にこの看板通(かんばんどほ)励行(れいかう)するのだ』
271エス『ハヽヽヽヽこの糞坊主(くそばうず)()272高姫(たかひめ)とか()(ばば)()きついて応援(おうゑん)(たの)んで()よつたのだな、273(なん)見下(みさ)()てた腰抜(こしぬ)野郎(やらう)だな。274八尺(やさか)(まはし)をかいた(をとこ)(なん)だい、275(をんな)加勢(かせい)(たの)んで()るとは卑怯(ひけふ)にも(ほど)があるではないか、276糞垂(くそた)坊主(ばうず)()277まごまごして()ると(かさ)(だい)()くなるぞ、278サアサア足許(あしもと)(あかる)(うち)(また)()(はさ)んで(かへ)つたり(かへ)つたり』
279キユ『ハヽヽヽヽ馬鹿(ばか)だのう。280足許(あしもと)()がついて、281(しり)(あつ)うなつて()るのにまだ貴様(きさま)(たち)()がつかぬのか。282まあ()()れ、283(いま)法城(ほふじやう)()(わた)しと()るから、284その(とき)吠面(ほえづら)かわくな。285(また)薬屋(くすりや)門番(もんばん)逆転(ぎやくてん)して番犬(ばんけん)境遇(きやうぐう)(あまん)286ワンワン(ほえ)ながら(つと)めるのが(せき)(やま)だ。287(なん)とあはれな代物(しろもの)だな、288ウフヽヽヽ』
289 問答席(もんだふせき)にはヨリコ、290花香(はなか)291ダリヤ(ひめ)(さん)(にん)高姫(たかひめ)とさし(むか)ひになり、292法城(ほふじやう)()(わた)しの掛合中(かけあひちう)である。
293ヨリ『千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)(さま)294すつぱりと法城(ほふじやう)()(わた)しますから()()つて(くだ)さい。295貴女(あなた)問答(もんだふ)には(けつ)して(まけ)るやうな(をんな)ぢやありませぬが、296(わらは)(ひと)(かん)じた(こと)御座(ござ)います。297(なに)(ほど)立派(りつぱ)(うつは)でも(やき)つぎにした(うつは)はやつぱり創物(きずもの)です。298貴女(あなた)最前(さいぜん)仰有(おつしや)つた(とほ)299如何(いか)にもオーラ(さん)山賊(さんぞく)女頭目(をんなとうもく)として世人(よびと)(くる)しめ、300所在(あらゆる)罪悪(ざいあく)(をか)して()ました。301かやうな(つみ)(ふか)身霊(みたま)をもつて302至粋(しすゐ)至純(しじゆん)なる大神(おほかみ)(さま)(まへ)(つか)へまつるのは冥加(みやうが)(ほど)(おそ)ろしう御座(ござ)います。303到底(たうてい)(わらは)(けが)れた(つみ)(おも)(からだ)304(かみ)(さま)(おん)(まへ)()資格(しかく)御座(ござ)いませぬ。305貴女(あなた)今日(けふ)(まで)どんな(こと)(あそ)ばしたか(かみ)ならぬ()(わらは)306(すこ)しも(ぞん)じませぬが、307(わらは)(くら)べては()(ほど)(きよ)らかなお身霊(みたま)拝察(はいさつ)(いた)します、308(これ)から(ひと)()づスガの薬屋(くすりや)()()りますから、309(あと)()勝手(かつて)になさいませ』
310高姫(たかひめ)『ホヽヽヽヽ、311成程(なるほど)312(まへ)さまも比較(ひかく)(てき)よく(もの)(わか)(ひと)だ。313最前(さいぜん)生宮(いきみや)()うた言葉(ことば)感激(かんげき)して()(つみ)()ぢ、314法城(ほふじやう)()(わた)す、315その()精神(せいしん)316(じつ)見上(みあ)げたものですよ、317(しか)創物(きずもの)はどこ(まで)創物(きずもの)ですから318足許(あしもと)(あかる)(うち)319トツトとお(かへ)りなさるがよからう』
320ヨリ『(わらは)(いもうと)花香(はなか)321ダリヤも(わらは)(じゆん)じて退席(たいせき)すると()ひますから、322どうかこれも()承知(しようち)(ねが)ひたう御座(ござ)います』
323(たか)何程(なにほど)上面(うはつら)綺麗(きれい)でも創物(きずもの)のお(まへ)さまに使(つか)はれて()つた代物(しろもの)だから、324どうせ完全(くわんぜん)(うつは)ぢやあるまい。325自発(じはつ)(てき)退(しりぞ)かうと()ふのはこれも感心(かんしん)(いた)りだ。326(なん)とまあ神界(しんかい)()経綸(けいりん)()ふものは(えら)いものだな、327ホヽヽヽヽ』
328笑壺(ゑつぼ)()つて()る。329そこへキユーバーが得意面(とくいづら)(さら)肩肱(かたひぢ)(いか)らし330大手(おほて)()つて()(にん)(まへ)()(きた)り、
331千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)どの天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)332功名(こうみやう)手柄(てがら)(いは)(まをし)ます。333ヤイ、334ヨリコ、335花香(はなか)336ダリヤの阿魔女(あまつちよ)(ざま)()やがれ。337(おれ)権勢(けんせい)はこの(とほ)りだ。338サアこれから玉清別(たまきよわけ)野郎(やらう)339アルもエスも(たた)(ばら)ひだ。340エヽ、341(くさ)(くさ)い、342(はな)(けが)れるワ、343(くさ)(をんな)344(くさ)野郎(やらう)()345一刻(いつこく)(はや)()()せろ』
346仁王立(にわうだち)になり347蜥蜴(とかげ)()(あが)つた(やう)なスタイルで四辺(あたり)キヨロキヨロ()(まは)して()る。
348大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立なかや別館 加藤明子録)
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