第一七章 六樫問答〔一八二六〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻
篇:第3篇 転化退閉
よみ(新仮名遣い):てんかたいへい
章:第17章 六樫問答
よみ(新仮名遣い):むつかしもんだふ
通し章番号:1826
口述日:1926(大正15)年07月01日(旧05月22日)
口述場所:天之橋立なかや別館
筆録者:北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:スガの宮では、キューバーの後釜として、薬種問屋の門番をしていたアルとエスが、便所掃除をしている。
スガの宮に仕える一同が、食堂に集まって朝食を取っていると、表に高姫がやってきて、宗教問答の挑戦に来たと呼ばわる。
ヨリコ姫は、まずダリヤ、花香が最初に問答を仕掛け、かなわないようであれば最後に自分が出るようにと順番を決める。
高姫は、この世の根本の神の神名を尋ねる。
ダリヤはそれは国常立の神様であると答えるが、高姫に根本の誠の神は大弥勒、と説き負かされてしまう。
次に、花香姫が登場し、高姫は問答を仕掛けて言う。
「根本の昔に、猿が三匹飛んできて、三千世界をかき回し、この世に暗と明かりと雨降りをきたしたのは、どういう訳か」
花香はそれには答えず、高姫が自分の出す問題に答えられたら、回答しよう、と言って問う。
「根本の昔に猿が六匹飛んできて、それぞれ、雪隠、頭、恥じ、借用証文、おかゆ、そこら辺り、をかき回し、ついでにお尻をかき回した。」
高姫は、わけのわからないことを言う女と問答はできないと、ヨリコ姫を出すように騒ぎ出し、花香は奥へ引っ込んでしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:2019-02-13 15:10:35
OBC :rm7217
愛善世界社版:203頁
八幡書店版:第12輯 675頁
修補版:
校定版:209頁
普及版:79頁
初版:
ページ備考:
001 懺悔生活の偽君子、002スコブッツエン宗の教祖と名乗る妖僧キユーバーは003ダリヤ姫に対する恋衣のすげなくも破れしより、004もとより心の汚い便所掃除、005糞度胸を据ゑ、006捨台詞を残して007問答所より屁の如く消え去つた。008あとはヨリコ、009花香、010ダリヤの三人、011何程女丈夫でも男の受持つべき掃除は永く続かないとて、012薬種問屋の主人イルクに掛合ひ013門番のアル、014エスを臨時掃除番として、015手伝はしむることとなつた。016朝も早うから、017新参者の掃除番はキユーバー、018ダリヤが奮戦苦闘の古戦場、019上雪隠の掃除しながら、
020アル『オイ、021エス、022主人の言付だから是非もなく、023エースと云つて返事はしたものの、024本当に糞忌々しい、025バカ臭い目に遇ふぢやないか、026エー、027これだから人に使はれるのは辛いと云ふのだ』
028エス『何程辛いと云つても仕方がないぢやないか、029何一つ人に勝れた芸能がアルと云ふでもなし、030雪隠の虫のやうに、031ババの尻斗り狙つてゐるやうな事で、032気の利いた大役も勤まりさうな事がないぢやないか。033いつも雪隠と云ふやつは、034紛擾の種を蒔く奴だ。035昨日もスコブッツエン宗の小便使、036キユーバーとかキユーフンとか云ふ糞坊主が037ダリヤさまに糞糟にこきおろされ、038犬の糞のやうに云はれ、039終ひの果にや040糞然として屁つ放り腰で雲を霞と逃げ散つたりと云ふ為体、041その跡釜に据ゑられた俺達アまるつきり雪隠虫だ、042然し雪隠虫だつて落胆するにや及ばないよ、043少時糞壺の中でウヨウヨしてる間に羽が生え、044立派な金襴の衣を着けて、045金蠅となり、046ヨリコ姫の頭へでも止つて糞小便を放りかけるやうになるのだからのう』
047アル『門番も今日はお尻の門番と
048成り下りけり糞忌々し。
049仰ぎ見て穴恐ろしと雪隠虫
050泣くに泣かれぬ糞を被りつ。
051世の中の臭い味ひしりの穴
052やがて羽衣着くる雪隠虫。
053金襴の衣まとへば糞虫も
054人の頭にとまり糞放る』
055エス『ヨリコ姫ダリヤとしり(知)合の穴なれば
056肥え(光栄)ならむと糞虫云ふらむ。
057美はしき乙女の尻はよけれども
058糞婆の尻いと臭きかな。
059天香は雪隠空しうせぬと云ふ
060日に三回の飯礼ありせば』
061 斯く話してゐる所へヨリコ女帝が盲腸、062結腸、063直腸辺りの大清潔法を施行すべく、064やつて来た。065アルはこれを見て、
066アル『あな尊とひしりの君の御降臨
068ヨリコ『雪隠と云ふ字は雪に隠るなり
069白妙の衣まとふ糞虫』
070エス『白妙の衣をまとひて糞虫は
071黄金の餌朝夕に喰ふ』
072ヨリコ『アル、エスの二人の君よ心して
074アル『アル望み抱へし吾は糞度胸
075すゑてかかりぬ便所掃除に』
076エス『アル望みなどとしり顔するでない
077糞奴めがいばり散らすな』
078ヨリコ『アル、エスの二人の君よ今少時
079はばかり玉へ吾帰るまで』
080アル『はばかりの掃除はすれどこの男
081はばかり乍ら腕に骨あり』
082エス『えらさうにしり顔なしてブツブツと
083口先過ぎてババ垂れるなよ』
084 両人はヨリコ姫の用を足す間、085便所遠く庭の隅のパインの下にクルツプ砲の難を避けた。
086アル『いか程に容姿美はしき女帝さへ
087下から見れば愛想やつきむ』
088エス『裏門を開いて出づる兵卒の
090アル『バカ云ふなばば垂れ腰を眺めたら
091かたい約束も小便し度くならむ』
092エス『草木もゆる谷の流れをピユーピユーと
093鵯越の進むよしなし。
094谷の戸を開いて出るは鶯の
095声ならずして鵯の声』
096アル『思うたよりヨリコの姫の長雪隠
097心短き俺は堪らぬ』
098エス『こんなことヨリコの姫に聞えたら
099糞腹立てて尻や持て来む。
100何事も皆しりの穴ヨリコ姫
101尻もて来れば猫婆きめる。
102猫婆をきめる積りでキユーバーが
103便所掃除請合しならむ。
104こつぴどくこき卸されて糞腹立て
105糞垂れ腰の糞坊主去ぬ』
106 ヨリコ姫は便所から、107しとやかに出て来た。108アル、109エスは先を争うて手洗鉢の前により、110柄杓の柄をとり水を無暗矢鱈にかけながら、
111アル『弁天の化身のやうな女帝様の
112お手洗ふさへしやくの種なる』
113エス『このやうな美人を妻にする男
114面見るさへも小しやくにさはる』
115ヨリコ『八尺の二人の男が漸くに
116五勺許りの水を呉れたり。
117雪隠の掃除も神の御恵みよ
118天香さまの出世見給へ』
119アル『何程に出世したとて何時迄も
121ヨリコ『左様ならアルさまエスさま別れませう
122又明日の朝会ふを楽しみに』
123と云ひ乍らヨリコ姫は吾居室に帰つて行く。
125 ヨリコ姫、126花香、127ダリヤ、128アル、129エスの聯合家族は130食堂に集つて四方山の話に耽り乍ら朝飯を喫してゐると、131表の玄関に向つて甲走つた女の声が聞えて来た。
132高姫『ハイ、133御免なさいませ、134一寸物をお尋ね申します。135ヨリコさまと云ふ無冠の女帝さまはお宅で御座いますかな、136宗教問答のためにウラナイ教の教主、1361千草の高姫が参りました。137別に驚くやうな女ぢや御座いませぬ、138第一霊国の身魂、139日出神の生宮、140下津岩根の大弥勒の化身で御座いますよ』
142ヨリコ『ホツホヽヽヽ、143朝つぱらから、144何処の狂人か知らないが、145妙な事を云うて来よつたものだ。146ダリヤさま、147妾の代理となつて少時相手になつてやつて下さいな』
148ダリヤ『女帝様の仰せでは御座いますが、149狂者を相手にする事は真平御免を蒙り度う御座います』
150ヨリ『第一線に貴女出て下さい、151もしも戦況危しと見た時は第二線として花香に行つて貰ひます。152その第二線が破れました時、153殿として此ヨリコが大獅子吼を致しますからね』
154アル『もしもし女帝様、155あんな狂者にダリヤ姫さまなんか、1551出すのは勿体ないぢやありませぬか、156先陣は私が勤めますから157何卒此役目をアルに譲つて下さいませ、158タカガ知れた狂者ぢやありませぬか』
159ヨリコ『お前さまは決して相手になつちやいけませぬよ、160いくつ位の女か161一寸様子を調べて来て貰ひさへすれば宜しい』
162アル『ハイ、163承知致しました、164オイ、165エス、166お前は俺の副将軍だ、167ソツト後から従いて来い』
168と云ひ乍ら、169早くも玄関口に立塞がり、
170アル『イヨー! 何とマア チツト許り年はよつて居るが、171ステキなものだなア』
172高『これ奴さま、173ナーンぢやいな、174失礼な、175お客さまの前で立はだかつて、176挨拶一つ知らない穀潰しだな、177僕のやり方を見りや大抵主人の性質が分るものだ。178此下駄の脱ぎ方と云ひ、179乱離骨灰、180まるつきりなつちやゐないぢやないか。181ヘン偉相に宗教問答所なんて、182まるつきり狂者の沙汰だ』
183アル『オイ、184高姫とか云ふ中婆さま、185人の所の宅へ出て来て、186履物の小言まで云うてくれな、187俺方の悪口をつくのならまだ虫を堪へておくが、188天下無双の才女、189ヨリコ姫女帝の悪口まで吐かすに於ては、190断じて此玄関は通さない。191エー糞忌々しい、192婆の来る所ぢやない、193屁なつと嗅いで去んでくれ』
194高『ホツホヽヽヽ、195お前がさう云はいでも、196此高姫がヨリコ姫の膏を絞り、197蛸を釣り灸をすゑ、198鼬の最後屁を放らして往生さしてやるから臭い顔して待て居なさい、199ド奴の糞奴め。200こんなガラクタ男を使うて、201えらさうに構へ込んでゐるとは誠に以て噴飯の至りだ、202ホツホヽヽヽ』
203アル『エー、204とても、205こんな気違婆は俺方の挺棒に合はない、206サア第一線だ第一線だ』
207と云ひ乍ら奥に飛び込み、
208アル『もしもし女帝様、209竹に210鶯、211梅に雀と云ふやうな婆が来ましたよ』
212ヨリコ『ホツホヽヽヽそれは木違ひ鳥違ひと云ふのだらう、213サア之から梅に雀の婆さまに向つて、214戦闘開始をやつて下さい』
215ダリヤ『ハイ、216及ばず乍ら第一線に立ちませう、217どうか後援を頼みます』
218と云ひ乍ら玄関口に出た。
219ダリヤ『玉鉾の道の問答せむものと
220遥々尋ね来りし君はも。
221いざさらば問答席へ通りまし
222及ばずながら案内申さむ』
223高『むづかしき歌よみかけて高姫を
224困らさむとす猾さに呆れし。
225兎も角も此家の奥へ踏ん込んで
226狸の化の皮むいて見む』
227と云ひ乍ら、228ダリヤ姫に従ひ問答席についた。
229ダリ『いざさらば寛ぎ給へ椅子の上に
230世の悉はしりの穴の君』
231高『賢しげな事を云へども何処やらに
232息のぬけたる汝の顔かも。
233汝こそはヨリコの姫の身代りと
234吾慧眼に見えたり如何にや』
235ダリ『妾こそヨリコの姫の妹よ
236ダリヤの花の名を負ひし姫。
237何なりと問答遊ばせ立板に
238水の流るる如く答へむ』
239高『美はしき女にも似ず出し抜けに
240大法螺を吹くしりの太さよ。
241いざさらば吾問ふことに答へかし
242今日こそ汝が生死の境ぞ』
243ダリ『如何ならむ賢き人の来るとも
244後へはひかぬ弦離れたる征矢』
248斜に開き白歯をば
249むき出し乍ら手を振つて 250演説口調で語り出す
251高『お前はヨリコの妹と
253宣る言霊を一々に 254川瀬の水の流る如
255答へて裁くで御座らうな
257一つの問題出しませう
259誠の神は何神か 260何卒聞かして貰ひませう
262問答所の役員と云へませうか
263サアサア如何に』と詰寄れば
265ダリ『如何なる難しいお尋ねと
267この世の御先祖は云はいでも 268世界に知れた厳霊
269国常立の神様よ 270この神様は泥海を
271造り固めて山川や 272草木の神迄生みました
273吾方の誠の親です』と 274云へば高姫反かへり
276高姫『三五教のトチ呆け
278誠の神は大弥勒 279底津岩根の神様よ
280人間姿の分際で 281誠の神は分らうまい
283沢山の人を欺すより
285お前ぢや事が分らない
286肝腎要の当の主
288余りに相撲が違ふので 289阿呆らしくて話になりませぬ』
291顔を真赤に染め乍ら
293つづいて出て来る美婦人は
294天女に擬ふ花香姫 295千草の高姫見るよりも
297静に梅花の口開き
300梅の花香と申します
303即座にお答へ申しませう
304遠慮会釈は要りませぬ
306云へば高姫反りかへり
307高『妾こそ誠の救世主
309第一天人の霊魂ぞや 310下津岩根の大弥勒
311三千世界の救世主 312日出神と現はれて
315教の道の神柱
317謹み敬ひ吾言葉
321貴女に質問致すぞや 322抑々天地の根本の
324その又根本の根本の
325まだまだ根本の根本の 326昔の昔のさる昔
327ま一つの昔の又昔 328ま一つの昔の大昔
331猿が三匹飛んで来て 332三千世界を掻きまはし
333この世に暗と明りと雨降りを 334来した訳は如何ですか
335この訳聞かして貰ひませう』 336云へば花香は噴き出し
337花『弥勒の弥勒のまだ弥勒 338ま一つ弥勒のその弥勒
339日の出の日の出のまだ日の出 340も一つ日の出のその日の出
341昔の昔の大昔 342猿が六匹飛んで来て
343一つは雪隠を掻きまはす
346一つは借用証文書きまはす
351お前さまの問題に答へませう』 352等と分らぬ予防線
354用心堅固に備へしは
356生れし甲斐ぞ見えにける
357高姫拳を固めつつ 358力限りに卓を打ち
359高『これやこれや女つちよ痩せ女郎 360そんな事云うて高姫を
363女を相手にやして居れぬ 364当の主人のヨリコ姫
365早く此の場へ引出せよ
367道場破りをして見せる
369いよいよ之から正念場 370気の毒なのはお前達
371折角建てた神館
375世の持ち終りとなつたのだ
377ウラナイ教の御神徳 378今更感じ入りました』
379 花香姫は高姫のあまりの強情に呆れ果て、380暗に打ち出す鉄砲玉に持てあましつつ匆々としてヨリコの居室に駆け込んで了つた。
381(大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立文珠なかや別館 北村隆光録)