霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 六樫(むつかし)問答(もんだふ)〔一八二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第3篇 転化退閉 よみ(新仮名遣い):てんかたいへい
章:第17章 六樫問答 よみ(新仮名遣い):むつかしもんだふ 通し章番号:1826
口述日:1926(大正15)年07月01日(旧05月22日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
スガの宮では、キューバーの後釜として、薬種問屋の門番をしていたアルとエスが、便所掃除をしている。
スガの宮に仕える一同が、食堂に集まって朝食を取っていると、表に高姫がやってきて、宗教問答の挑戦に来たと呼ばわる。
ヨリコ姫は、まずダリヤ、花香が最初に問答を仕掛け、かなわないようであれば最後に自分が出るようにと順番を決める。
高姫は、この世の根本の神の神名を尋ねる。
ダリヤはそれは国常立の神様であると答えるが、高姫に根本の誠の神は大弥勒、と説き負かされてしまう。
次に、花香姫が登場し、高姫は問答を仕掛けて言う。
「根本の昔に、猿が三匹飛んできて、三千世界をかき回し、この世に暗と明かりと雨降りをきたしたのは、どういう訳か」
花香はそれには答えず、高姫が自分の出す問題に答えられたら、回答しよう、と言って問う。
「根本の昔に猿が六匹飛んできて、それぞれ、雪隠、頭、恥じ、借用証文、おかゆ、そこら辺り、をかき回し、ついでにお尻をかき回した。」
高姫は、わけのわからないことを言う女と問答はできないと、ヨリコ姫を出すように騒ぎ出し、花香は奥へ引っ込んでしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-02-13 15:10:35 OBC :rm7217
愛善世界社版:203頁 八幡書店版:第12輯 675頁 修補版: 校定版:209頁 普及版:79頁 初版: ページ備考:
001 懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)偽君子(ぎくんし)002スコブッツエン(しう)教祖(けうそ)名乗(なの)妖僧(えうそう)キユーバーは003ダリヤ(ひめ)(たい)する恋衣(こひごろも)のすげなくも(やぶ)れしより、004もとより(こころ)(きたな)便所(はばかり)掃除(さうぢ)005糞度胸(くそどきよう)()ゑ、006捨台詞(すてぜりふ)(のこ)して007問答所(もんだふどころ)より()(ごと)()()つた。008あとはヨリコ、009花香(はなか)010ダリヤの(さん)(にん)011何程(なにほど)女丈夫(をんなぢやうぶ)でも(をとこ)受持(うけも)つべき掃除(さうぢ)(なが)(つづ)かないとて、012薬種(やくしゆ)問屋(どひや)主人(しゆじん)イルクに掛合(かけあ)013門番(もんばん)のアル、014エスを臨時(りんじ)掃除番(さうぢばん)として、015手伝(てつだ)はしむることとなつた。016(あさ)(はや)うから、017新参者(しんざんもの)掃除番(さうぢばん)はキユーバー、018ダリヤが奮戦(ふんせん)苦闘(くとう)古戦場(こせんじやう)019上雪隠(かみせつちん)掃除(さうぢ)しながら、
020アル『オイ、021エス、022主人(しゆじん)言付(いひつけ)だから是非(ぜひ)もなく、023エースと()つて返事(へんじ)はしたものの、024本当(ほんたう)糞忌々(くそいまいま)しい、025バカ(くさ)()()ふぢやないか、026エー、027これだから(ひと)使(つか)はれるのは(つら)いと()ふのだ』
028エス『(なに)(ほど)(つら)いと()つても仕方(しかた)がないぢやないか、029何一(なにひと)(ひと)(すぐ)れた芸能(げいのう)アル()ふでもなし、030雪隠(せつちん)(むし)のやうに、031ババの(しり)(ばか)(ねら)つてゐるやうな(こと)で、032()()いた大役(たいやく)(つと)まりさうな(こと)がないぢやないか。033いつも雪隠(せんち)()ふやつは、034紛擾(ふんぜう)(たね)()(やつ)だ。035昨日(きのふ)もスコブッツエン(しう)小便使(せうべんし)036キユーバーとかキユーフンとか()糞坊主(くそばうず)037ダリヤさまに糞糟(くそかす)にこきおろされ、038(いぬ)(くそ)のやうに()はれ、039(しま)ひの(はて)にや040糞然(ふんぜん)として()()(ごし)(くも)(かすみ)()()つたりと()為体(ていたらく)041その跡釜(あとがま)()ゑられた(おれ)(たち)アまるつきり雪隠虫(せんちむし)だ、042(しか)雪隠虫(せんちむし)だつて落胆(らくたん)するにや(およ)ばないよ、043少時(しばし)糞壺(くそつぼ)(なか)でウヨウヨしてる(あひだ)(はね)()え、044立派(りつぱ)金襴(きんらん)(ころも)()けて、045金蠅(きんばへ)となり、046ヨリコ(ひめ)(あたま)へでも(とま)つて(くそ)小便(せうべん)()りかけるやうになるのだからのう』
047アル『門番(もんばん)今日(けふ)はお(しり)門番(もんばん)
048()(さが)りけり糞忌々(くそいまいま)し。
049(あふ)()穴恐(あなおそ)ろしと雪隠虫(せんちむし)
050()くに()かれぬ(くそ)(かぶ)りつ。
051()(なか)(くさ)(あぢは)しり(あな)
052やがて羽衣(はごろも)()くる雪隠虫(せんちむし)
053金襴(きんらん)(ころも)まとへば糞虫(くそむし)
054(ひと)(あたま)にとまり(くそ)()る』
055エス『ヨリコ(ひめ)ダリヤとしり(知)(あひ)(あな)なれば
056()え(光栄)ならむと糞虫(くそむし)()ふらむ。
057(うる)はしき乙女(をとめ)(しり)はよけれども
058糞婆(くそばば)(しり)いと(くさ)きかな。
059天香(てんかう)雪隠(せんち)(むな)しうせぬと()
060()三回(さんくわい)飯礼(はんれい)ありせば』
061 ()(はな)してゐる(ところ)へヨリコ女帝(によてい)盲腸(まうちやう)062結腸(けつちやう)063直腸(ちよくちやう)(あた)りの(だい)清潔法(せいけつはふ)施行(しかう)すべく、064やつて()た。065アルはこれを()て、
066アル『あな(たふ)とひしり(きみ)()降臨(かうりん)
067アルにあられぬ(はぢ)()しかは』
068ヨリコ『雪隠(せつちん)()()(ゆき)(かく)るなり
069白妙(しろたへ)(きぬ)まとふ糞虫(くそむし)
070エス『白妙(しろたへ)(きぬ)をまとひて糞虫(くそむし)
071黄金(こがね)(ゑじき)朝夕(あさゆふ)()ふ』
072ヨリコ『アル、エスの二人(ふたり)(きみ)(こころ)して
073黄金仏(わうごんぶつ)にならぬやうにせよ』
074アル『アル(のぞ)(かか)へし(われ)糞度胸(くそどきよう)
075すゑてかかりぬ便所(はばかり)掃除(さうぢ)に』
076エス『アル(のぞ)みなどとしり(がほ)するでない
077糞奴(くそやつこ)めがいばり()らすな』
078ヨリコ『アル、エスの二人(ふたり)(きみ)(いま)少時(しばし)
079はばかり(たま)(わが)(かへ)るまで』
080アル『はばかりの掃除(さうぢ)はすれどこの(をとこ)
081はばかり(なが)(うで)(ほね)あり』
082エス『えらさうにしり(がほ)なしてブツブツと
083口先(くちさき)()ぎてババ()れるなよ』
084 両人(りやうにん)はヨリコ(ひめ)(よう)()(あひだ)085便所(はばかり)(とほ)(には)(すみ)のパインの(もと)にクルツプ(はう)(なん)()けた。
086アル『いか(ほど)容姿(みめ)(うる)はしき女帝(によてい)さへ
087(した)から()れば愛想(あいそ)やつきむ』
088エス『裏門(うらもん)(ひら)いて()づる兵卒(へいそつ)
089ラツパの(こゑ)(いさ)ましきかな』
090アル『バカ()ふなばば()(ごし)(なが)めたら
091かたい約束(やくそく)小便(せうべん)()くならむ』
092エス草木(くさき)もゆる(たに)(なが)れをピユーピユーと
093鵯越(ひよどりごえ)(すす)むよしなし。
094(たに)()(ひら)いて()るは(うぐひす)
095(こゑ)ならずして(ひよどり)(こゑ)
096アル(おも)うたよりヨリコの(ひめ)長雪隠(ながせんち)
097(こころ)(みじか)(おれ)(たま)らぬ』
098エス『こんなことヨリコの(ひめ)(きこ)えたら
099糞腹(くそばら)()てて(しり)()()む。
100何事(なにごと)(みな)しりの(あな)ヨリコ(ひめ)
101(しり)もて()れば猫婆(ねこばば)きめる。
102猫婆(ねこばば)をきめる(つも)りでキユーバーが
103便所(はばかり)掃除(さうぢ)請合(うけあひ)しならむ。
104こつぴどくこき(おろ)されて糞腹(くそばら)()
105糞垂(ばばた)(ごし)糞坊主(くそばうず)()ぬ』
106 ヨリコ(ひめ)便所(べんじよ)から、107しとやかに()()た。108アル、109エスは(さき)(あらそ)うて手洗鉢(てうづばち)(まへ)により、110柄杓(ひしやく)()をとり(みづ)無暗(むやみ)矢鱈(やたら)にかけながら、
111アル『弁天(べんてん)化身(けしん)のやうな女帝(によてい)(さま)
112()(あら)ふさへしやく(たね)なる』
113エス『このやうな美人(びじん)(つま)にする(をとこ)
114(つら)()るさへも()しやくにさはる』
115ヨリコ『(はち)(しやく)二人(ふたり)(をとこ)(やうや)くに
116五勺(ごしやく)(ばか)りの(みづ)()れたり。
117雪隠(せつちん)掃除(さうぢ)(かみ)御恵(みめぐ)みよ
118天香(てんかう)さまの出世(しゆつせ)()(たま)へ』
119アル『(なに)(ほど)出世(しゆつせ)したとて何時(いつ)(まで)
120尻掃除(しりさうぢ)とはバツとしませぬ』
121ヨリコ『左様(さやう)ならアルさまエスさま(わか)れませう
122(また)明日(あす)(あさ)()ふを(たの)しみに』
123()(なが)らヨリコ(ひめ)(わが)居室(ゐま)(かへ)つて()く。
124
125 ヨリコ(ひめ)126花香(はなか)127ダリヤ、128アル、129エスの聯合(れんがふ)家族(かぞく)130食堂(しよくだう)(あつま)つて四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)(なが)朝飯(あさめし)(きつ)してゐると、131(おもて)玄関(げんくわん)(むか)つて甲走(かんばし)つた(をんな)(こゑ)(きこ)えて()た。
132高姫(たかひめ)『ハイ、133御免(ごめん)なさいませ、134一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(まを)します。135ヨリコさまと()無冠(むくわん)女帝(によてい)さまはお(たく)御座(ござ)いますかな、136宗教(しうけう)問答(もんだふ)のためにウラナイ(けう)教主(けうしゆ)1361千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)(まゐ)りました。137(べつ)(おどろ)くやうな(をんな)ぢや御座(ござ)いませぬ、138第一(だいいち)霊国(れいごく)身魂(みたま)139日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)140下津(したつ)岩根(いはね)大弥勒(おほみろく)化身(けしん)御座(ござ)いますよ』
141(よば)はつてゐる。
142ヨリコ『ホツホヽヽヽ、143(あさ)つぱらから、144何処(どこ)狂人(きちがひ)()らないが、145(めう)(こと)()うて()よつたものだ。146ダリヤさま、147(わたし)代理(だいり)となつて少時(しばらく)相手(あひて)になつてやつて(くだ)さいな』
148ダリヤ『女帝(によてい)(さま)(おほ)せでは御座(ござ)いますが、149狂者(きちがひ)相手(あひて)にする(こと)真平(まつぴら)御免(ごめん)(かうむ)()御座(ござ)います』
150ヨリ『第一線(だいいつせん)貴女(あなた)()(くだ)さい、151もしも戦況(せんきやう)(あやふ)しと()(とき)第二線(だいにせん)として花香(はなか)()つて(もら)ひます。152その第二線(だいにせん)(やぶ)れました(とき)153殿(しんがり)として(この)ヨリコが(だい)獅子吼(ししく)(いた)しますからね』
154アル『もしもし女帝(によてい)(さま)155あんな狂者(きちがひ)にダリヤ(ひめ)さまなんか、1551()すのは勿体(もつたい)ないぢやありませぬか、156先陣(せんぢん)(わたくし)(つと)めますから157何卒(どうぞ)(この)役目(やくめ)をアルに(ゆづ)つて(くだ)さいませ、158タカガ()れた狂者(きちがひ)ぢやありませぬか』
159ヨリコ『お(まへ)さまは(けつ)して相手(あひて)になつちやいけませぬよ、160いくつ(くらゐ)(をんな)161一寸(ちよつと)様子(やうす)調(しら)べて()(もら)ひさへすれば(よろ)しい』
162アル『ハイ、163承知(しようち)(いた)しました、164オイ、165エス、166(まへ)(おれ)副将軍(ふくしやうぐん)だ、167ソツト(あと)から()いて()い』
168()(なが)ら、169(はや)くも玄関口(げんくわんぐち)(たち)(ふさ)がり、
170アル『イヨー! (なん)とマア チツト(ばか)(とし)はよつて()るが、171ステキなものだなア』
172(たか)『これ(やつこ)さま、173ナーンぢやいな、174失礼(しつれい)な、175(きやく)さまの(まへ)(たち)はだかつて、176挨拶(あいさつ)(ひと)()らない穀潰(ごくつぶ)しだな、177(しもべ)のやり(かた)()りや大抵(たいてい)主人(しゆじん)性質(せいしつ)(わか)るものだ。178(この)下駄(げた)()(かた)()ひ、179乱離(らんり)骨灰(こつぱい)180まるつきりなつちやゐないぢやないか。181ヘン(えら)(さう)宗教(しうけう)問答所(もんだふどころ)なんて、182まるつきり狂者(きちがひ)沙汰(さた)だ』
183アル『オイ、184高姫(たかひめ)とか()中婆(ちうばば)さま、185(ひと)(ところ)(うち)()()て、186履物(はきもの)小言(こごと)まで()うてくれな、187(おれ)(たち)悪口(あくこう)をつくのならまだ(むし)(こら)へておくが、188天下(てんか)無双(むさう)才女(さいぢよ)189ヨリコ(ひめ)女帝(によてい)悪口(あくこう)まで()かすに(おい)ては、190(だん)じて(この)玄関(げんくわん)(とほ)さない。191エー糞忌々(くそいまいま)しい、192(ばば)()(ところ)ぢやない、193()なつと()いで()んでくれ』
194(たか)『ホツホヽヽヽ、195(まへ)がさう()はいでも、196(この)高姫(たかひめ)がヨリコ(ひめ)(あぶら)(しぼ)り、197(たこ)()(きう)をすゑ、198(いたち)最後屁(さいごぺ)()らして往生(わうじやう)さしてやるから(くさ)(かほ)して(まつ)()なさい、199(やつこ)糞奴(くそやつこ)め。200こんなガラクタ(をとこ)使(つか)うて、201えらさうに(かま)()んでゐるとは(まこと)(もつ)噴飯(ふんぱん)(いた)りだ、202ホツホヽヽヽ』
203アル『エー、204とても、205こんな気違(きちがひ)(ばば)(おれ)(たち)挺棒(てこぼう)()はない、206サア第一線(だいいつせん)第一線(だいいつせん)だ』
207()(なが)(おく)()()み、
208アル『もしもし女帝(によてい)(さま)209(たけ)210(うぐひす)211(うめ)(すずめ)()ふやうな(ばば)()ましたよ』
212ヨリコ『ホツホヽヽヽそれは木違(きちが)鳥違(とりちが)ひと()ふのだらう、213サア(これ)から(うめ)(すずめ)(ばあ)さまに(むか)つて、214戦闘(せんとう)開始(かいし)をやつて(くだ)さい』
215ダリヤ『ハイ、216(およ)ばず(なが)第一線(だいいつせん)()ちませう、217どうか後援(こうゑん)(たの)みます』
218()(なが)玄関口(げんくわんぐち)()た。
219ダリヤ『玉鉾(たまぼこ)(みち)問答(もんだふ)せむものと
220遥々(はるばる)(たづ)(きた)りし(きみ)はも。
221いざさらば問答席(もんだふせき)(とほ)りまし
222(およ)ばずながら案内(あない)(まを)さむ』
223(たか)『むづかしき(うた)よみかけて高姫(たかひめ)
224(こま)らさむとす(ずる)さに(あき)れし。
225()(かく)(この)()(おく)()()んで
226(たぬき)(ばけ)(かは)むいて()む』
227()(なが)ら、228ダリヤ(ひめ)(したが)問答席(もんだふせき)についた。
229ダリ『いざさらば(くつろ)(たま)椅子(いす)()
230()(ことごと)しり(あな)(きみ)
231(たか)(さか)しげな(こと)()へども何処(どこ)やらに
232(いき)のぬけたる(なれ)(かほ)かも。
233(なれ)こそはヨリコの(ひめ)身代(みがは)りと
234(わが)慧眼(けいがん)()えたり如何(いか)にや』
235ダリ『(わらは)こそヨリコの(ひめ)(いもうと)
236ダリヤの(はな)()()ひし(ひめ)
237(なん)なりと問答(もんだふ)(あそ)ばせ立板(たていた)
238(みづ)(なが)るる(ごと)(こた)へむ』
239(たか)(うる)はしき(をんな)にも()()()けに
240大法螺(おほぼら)()しり(ふと)さよ。
241いざさらば(わが)()ふことに(こた)へかし
242今日(けふ)こそ(なれ)生死(いきしに)(さかひ)ぞ』
243ダリ『如何(いか)ならむ(かしこ)(ひと)(きた)るとも
244(あと)へはひかぬ(つる)(はな)れたる征矢(そや)
245高姫(たかひめ)いかい()をむいて
246ダリヤの(ひめ)面上(めんじやう)
247ハツタと(にら)大口(おほぐち)
248(ななめ)(ひら)白歯(しろは)をば
249むき()(なが)()()つて
250演説(えんぜつ)口調(くてう)(かた)()
251(たか)『お(まへ)はヨリコの(いもうと)
252名乗(なの)つたからは高姫(たかひめ)
253()言霊(ことたま)一々(いちいち)
254川瀬(かはせ)(みづ)(なが)(ごと)
255(こた)へて(さば)くで御座(ござ)らうな
256よしよしそんなら高姫(たかひめ)
257(ひと)つの問題(もんだい)()しませう
258この()(なか)(つく)りたる
259(まこと)(かみ)何神(なにがみ)
260何卒(なにとぞ)()かして(もら)ひませう
261それが(わか)らぬやうな(こと)
262問答所(もんだふどころ)役員(やくゐん)()へませうか
263サアサア如何(いか)に』と詰寄(つめよ)れば
264ダリヤはニツコと(うち)(わら)
265ダリ『如何(いか)なる(むつか)しいお(たづ)ねと
266(おも)つてゐたのに(なん)のこと
267この()()先祖(せんぞ)()はいでも
268世界(せかい)()れた厳霊(いづみたま)
269国常立(くにとこたち)(かみ)(さま)
270この(かみ)(さま)泥海(どろうみ)
271(つく)(かた)めて山川(やまかは)
272草木(くさき)(かみ)(まで)()みました
273(われ)()(まこと)(おや)です』と
274()へば高姫(たかひめ)(そり)かへり
275フフンと(わら)(はな)(さき)
276高姫三五教(あななひけう)のトチ(ばう)
277大根本(だいこんぽん)根本(こつぽん)
278(まこと)(かみ)大弥勒(おほみろく)
279底津(そこつ)岩根(いはね)(かみ)(さま)
280人間姿(にんげんすがた)分際(ぶんざい)
281(まこと)(かみ)(わか)らうまい
282そんな(くだ)らぬ(こと)()うて
283沢山(たくさん)(ひと)(だま)すより
284(はや)くすつこんで()りなされ
285(まへ)ぢや(こと)(わか)らない
286肝腎要(かんじんかなめ)(たう)(ぬし)
287ヨリコの(ひめ)()んでおいで
288(あま)りに相撲(すまう)(ちが)ふので
289阿呆(あはう)らしくて(はなし)になりませぬ』
290()へばダリヤはうつ()いて
291(かほ)真赤(まつか)()(なが)
292すごすご()つて(おく)()
293つづいて()()美婦人(びふじん)
294天女(てんによ)(まが)花香姫(はなかひめ)
295千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)()るよりも
296いと慇懃(いんぎん)会釈(ゑしやく)して
297(しづか)梅花(ばいくわ)(くち)(ひら)
298(こゑ)しとやかに『(わらは)こそ
299ヨリコの(ひめ)(つか)へたる
300(うめ)花香(はなか)(まを)します
301何卒(なにとぞ)見知(みし)りおかれませ
302いかなる問答(もんだふ)()らねども
303即座(そくざ)にお(こた)(まを)しませう
304遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)()りませぬ
305(なん)なとお(たづ)ねなさいませ』
306()へば高姫(たかひめ)()りかへり
307(たか)(われ)こそ(まこと)救世主(きうせいしゆ)
308高天原(たかあまはら)霊国(れいごく)
309第一(だいいち)天人(てんにん)霊魂(みたま)ぞや
310下津(したつ)岩根(いはね)大弥勒(おほみろく)
311三千(さんぜん)世界(せかい)救世主(きうせいしゆ)
312日出(ひのでの)(かみ)(あら)はれて
313トルマン(ごく)のスガの(まち)
314天降(あまくだ)りたるウラナイの
315(をしへ)(みち)神柱(かむばしら)
316(かなら)粗相(そさう)のないやうに
317(つつし)(うやま)(わが)言葉(ことば)
318(むね)にたたんでトツクリと
319(かんが)へなされよ花香(はなか)さま
320サアサアこれから高姫(たかひめ)
321貴女(あなた)質問(しつもん)(いた)すぞや
322抑々(そもそも)天地(てんち)根本(こんぽん)
323大根本(だいこんぽん)根本(こんぽん)
324その(また)根本(こんぽん)根本(こんぽん)
325まだまだ根本(こんぽん)根本(こんぽん)
326(むかし)(むかし)のさる(むかし)
327(ひと)つの(むかし)(また)(むかし)
328(ひと)つの(むかし)大昔(おほむかし)
329(また)(むかし)のその(むかし)
330ドツト張込(はりこ)んでその(むかし)
331(さる)三匹(さんびき)()んで()
332三千(さんぜん)世界(せかい)()きまはし
333この()(やみ)(あか)りと(あめ)()りを
334(きた)した(わけ)如何(どう)ですか
335この(わけ)()かして(もら)ひませう』
336()へば花香(はなか)()(いだ)
337(はな)弥勒(みろく)弥勒(みろく)のまだ弥勒(みろく)
338(ひと)弥勒(みろく)のその弥勒(みろく)
339()()()()のまだ()()
340(ひと)()()のその()()
341(むかし)(むかし)大昔(おほむかし)
342(さる)六匹(ろつぴき)()んで()
343(ひと)つは雪隠(せんち)()きまはす
344(ひと)つは(あたま)をかきまはす
345(ひと)つは(はぢ)をかきまはす
346(ひと)つは借用(しやくよう)証文(しようもん)()きまはす
347(ひと)つはお(かゆ)をかきまはす
348(ひと)つはそこらをかきまはす
349(ひと)つお(しり)をかきまはす
350此奴(こいつ)(なぞ)がとけたなら
351(まへ)さまの問題(もんだい)(こた)へませう』
352(など)(わか)らぬ予防線(よばうせん)
353鉄条網(てつでうまう)()りまはし
354用心(ようじん)堅固(けんご)(そな)へしは
355流石(さすが)はヨリコの(いもうと)
356(うま)れし甲斐(かひ)()えにける
357高姫(たかひめ)(こぶし)(かた)めつつ
358(ちから)(かぎ)りに(たく)()
359(たか)『これやこれや(あま)つちよ()女郎(めらう)
360そんな(こと)()うて高姫(たかひめ)
361(けむ)りに()かうとはづうづうしい
362(まへ)のやうな(わか)らない
363(をんな)相手(あひて)にやして()れぬ
364(たう)主人(しゆじん)のヨリコ(ひめ)
365(はや)()()(ひき)()せよ
366この高姫(たかひめ)弁舌(べんぜつ)
367道場破(だうぢやうやぶ)りをして()せる
368あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
369いよいよ(これ)から正念場(しやうねんば)
370()(どく)なのはお(まへ)(たち)
371折角(せつかく)()てた神館(かむやかた)
372(しろ)()(わた)しスゴスゴと
373()げねばならぬ断末魔(だんまつま)
374いよいよこれが悪神(あくがみ)
375()()(をは)りとなつたのだ
376あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
377ウラナイ(けう)()神徳(しんとく)
378今更(いまさら)(かん)()りました』
379 花香姫(はなかひめ)高姫(たかひめ)のあまりの強情(がうじやう)(あき)()て、380(やみ)()()鉄砲玉(てつぱうだま)()てあましつつ匆々(さうさう)としてヨリコの居室(ゐま)()()んで(しま)つた。
381大正一五・七・一 旧五・二二 於天之橋立文珠なかや別館 北村隆光録)
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