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皇典の奥義に徹せよ
インフォメーション
題名:
皇典の奥義に徹せよ
著者:
出口王仁三郎
ページ:
304
概要:
備考:
出典不明
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B123900c094
001
最近日本国体の神聖幽顕なる所以が闡明されて来ると共に、
002
皇典古事記に対する恭謙真摯なる研究家が段々と多くなって来たことはまことに慶ぶべき実状である。
003
我が皇典は西欧における文献の如く、
004
単なる過去の歴史的記録ではないのであって、
005
その中には信仰、
006
倫理、
007
政治、
008
法律、
009
経済、
010
国防に関する万古不易の最高原理が示され、
011
進んでは天文地文、
012
即ち今日のいはゆる自然科学の本源が明らかにされてゐるのである。
013
しかし多くの学者達は皇典を解するのに文字の意義によらむとしてゐるが、
014
それではただにその真義を釈明することが出来ないのみならず、
015
かへってそこに怖るべき誤謬を生ぜしめてゐるのである。
016
予は文字なるものが人文の発達に著大なる貢献をなしてゐることを否定するものではないが、
017
他面文字の発達の為に幾多の弊害がもたらされてゐる事実に気付いてゐる人が少ないやうに思はれる。
018
かういふことを云ふと驚く人が沢山あるだらうが、
019
今日の宗教堕落の原因は実に文字の発達にありと言っても過言ではないのである。
020
例へば昔、
021
門外不出と云はれた尊貴なる文献が、
022
今日一円や二円の廉価を以て広く巷間に散布されてゐることは、
023
一面結構なことであるかも知れないが、
024
その為にかへって書物に対する人々の恭敬心を喪失せしめ、
025
いたづらに軽薄なる
片文端句
(
へんぶんたんく
)
の言挙げにはしる輩を続出せしめ、
026
以て玄妙なる大道が如何に今日歪曲され、
027
また玩弄されてゐるかを思はねばならぬ。
028
古
(
いにしへ
)
の聖賢は学を修めむとして海を渡り山を越えた。
029
また道を伝へむとして地の極を行脚した。
030
然るに今日の学生は東西古今の文献を机上に列べて居り、
031
また日夜全国に説教がラヂオで放送されてゐる。
032
しかし労なくして為される修養や便利手軽に得られる信仰がかへって人間の魂の奥所を腐らしてゐることに気が付かない。
033
吾々はただただこの問題に限らず総て些細のことといへども、
034
常に慎重に物の両面を検討し吟味し以てその功罪を研究しなければならない。
035
我が国は神代の
古
(
いにしへ
)
より言霊の生ける国と唱へられ、
036
国家幽事の大典はことごとく語り部によって生きながら言い伝へられ、
037
以て真義の万代に誤りなからむことを期したのである。
038
しかして語り部として、
039
例へば稗田阿礼の如き、
040
最も記憶力強き人が選まれたと伝へられるが、
041
これは単に記憶の問題でなく、
042
実に人格の問題なのであって、
043
その高潔なる人格を通じて、
044
神これに懸かり給うて語らしめたものであるから絶対に誤りなきものである。
045
憲法発布よりわづかに数十年にして、
046
国体を否認するが如き迷論の百出する所以を熟考して、
047
件の消息を謹みて考察すべきである。
048
「肇国の精神に還れ」とは、
049
法を研究せむとする者は立法の精神に還り経済を学ばむとする者は経世済民の本義に還れとの意である。
050
古事記が編纂され文字に表はされるに際し、
051
この意味において如何に絶大なる努力が致されたかは想像に難くない。
052
故に後年の研究者は必ずかかる所以を心底に徹して、
053
文字そのものに囚はれることなく皇国に天照る言霊の活力によりてその扉を開かねばならぬのである。
054
○
055
建武の中興を論ずる人が、
056
当時と今日の日本の国状が大層よく似てゐるといふ。
057
明治維新を研究した人が、
058
今日の日本は当時の情勢と少しも違はないと評する。
059
しかし宇宙に一貫した意志があり国家に永遠の生命がある以上、
060
過去に起きた大事が今日に密接なる関係を有し、
061
また今日の問題が未来の事象に重大なる影響を及ぼすことは当然である。
062
しかしてここにこそ歴史研究の尊さがあるのである。
063
皇典古事記は皇国日本及び世界人類の未来を開示する一大予言書なのである。
064
それはヨハネ黙示録の如く局部的のものでなく、
065
またダニエル書の如く粗略なものではない。
066
その偉大にして精細なることまことに宇宙そのものの如くである。
067
故に今日の学者の皇典に関する解説は、
068
そのほんの一部分の意を述べてゐるのに過ぎないのである。
069
我が国における
三十一文字
(
みそひともじ
)
の和歌のはじまりは、
070
素盞嗚尊の御詠みになった
071
八雲立つ出雲八重垣妻ごめに 八重垣つくるその八重垣を
072
といふ歌である。
073
その意味を言霊によって解釈すると、
074
その歌の中に非常時日本の現下の姿が躍如として描かれてゐるのである。
075
八雲立つ──とは四方八方に雲が立ち込めて天日ために暗き意であって、
076
今日の世界がまさにその通り八雲立つ状態にあるのである。
077
出雲八重垣──とは八雲に対して出雲と掛けたのであるが、
078
いづも
は
いづくも
と
訓
(
よ
)
み、
079
また
何処
(
いづく
)
も(
何国
(
いづく
)
も)といふ意味を表はしてゐるのである。
080
妻ごめに──妻とは我が日本を云ふのである。
081
古来我が国は
秀妻
(
ほつま
)
の国といはれてゐる。
082
故にこれに掛けて素盞嗚尊が優美に妻といはれたのである。
083
即ち「妻ごめに」とは、
084
日本の国を押込める為にといふのである。
085
かくてこの歌の全部の意味は、
086
四方八方に妖雲が立込めて天日ために暗く、
087
どこもここも優しく美しい秀妻の国日本を押込めようとして周囲に十重二十重の八重垣を作る。
088
しかしてその八重垣を果して如何にすべきや……と
鏘々
(
さうさう
)
たる余韻が残されてゐるのである。
089
経済的にも思想的にも政治的にも今日の日本は、
090
如何にして日々激化し来たる内外の八重垣を切り開かうかと悩んでゐるのである。
091
政治家は政治家で、
092
軍人は軍人で、
093
また農村は農村で、
094
妖雲を払って天日を拝し、
095
八重垣を取り除いて自由を享けたい為にこそ、
096
かく苦悩し続けてゐるのである。
097
しかしその御歌に「その八重垣を」とのみ詠はれて、
098
解決の道が開示されてゐないと同様に、
099
今の世がまたその道を見出し得ずして迷ひ続けてゐるのである。
100
然らば時局打開の道を発見する為にはどうすれば良いのか。
101
曰く、
102
天祖、
103
国祖の大神を祀りてその御託宣を祈り、
104
畏みて神典を真読してその奥義に徹することである。
105
非常時日本の打開は、
106
上下心を一にして敬神の至誠に帰ることであるは勿論であるが、
107
その大経綸は一に神典古事記の真義を明徴にし、
108
それに示されたる大道に基づいて国家百般の事象を
経緯
(
けいゐ
)
するのほかに断じて道は無いのである。
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