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天を畏れよ
インフォメーション
題名:
天を畏れよ
著者:
出口王仁三郎
ページ:
331
概要:
備考:
「人類愛善新聞」昭和一〇年八月号所収「専ら天を畏れ其の啓示に心せよ」と同じ
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B123900c098
001
孔子曰く、
002
「君子に三つの畏れあり、
003
天命を畏れ、
004
大人
(
たいじん
)
を畏れ、
005
聖人の
言
(
げん
)
を畏る」と。
006
また賢王ソロモン曰く「エボハを恐るるは智の
本
(
もと
)
なり」と。
007
かくの如く
古
(
いにしへ
)
の聖賢は民を導くに「天を恐れよ、
008
神を畏れよ」と教へたものである。
009
然るに今日の政治家や教育者達はかへつて「天を恐ること勿れ、
010
神を畏るべからず」と教へているやうに思はれるのである。
011
人がなによりも天を畏れ、
012
神以外の何ものをも畏れなくなつた時、
013
始めて理想の世界が地上に実現する。
014
然るに今日の学校教育は、
015
何よりもまづ試験を恐れさす教育ではないか。
016
また今日の社会教育はどうか。
017
或ひは権力を恐れしめ、
018
或ひは金力を恐れしめ、
019
また法律の制裁、
020
科学の威力を恐れしめる教育が施されて居るのではないか。
021
権門の家庭ではその子女を養育するに当つて、
022
如何に権力が今の世に偉大であるかを知らしめようと努力する。
023
富を求める者は金力の強大性を力説し、
024
法律家は法の制裁を恐れしめることによつて地上天国が出現するかの如く教へ、
025
科学者は何ものよりも科学の力の恐るべきを強調する。
026
もし、
027
孔子の言葉を正しとするならば、
028
今の世の政治は明かに君子の道にそむける政治であり、
029
またソロモンの言葉を賢しとするならば、
030
今日の教育家達はすべて智を得ざる徒であると云はれても致し方なき次第である。
031
智者とは日を知る者の意である。
032
日は熱と光の源泉であり万有生命の原動である。
033
果して今日の科学者に「生命の根本」を明かにせるものが一人でもあるか。
034
即ち日を知れる智者なるものが果して幾ばくあるか。
035
ここに今日の科学が今一段進歩したならば間もなく明かにするであらう程度の、
036
人間と自然界の関係を述べておかうと思ふ。
037
人の心が平和と喜びと慈みに充ちている時、
038
即ち愛善の精神に満たされてゐる時には、
039
その五体から
明紫
(
めいし
)
の霊光を放射するものである。
040
この明紫の霊光に包まれると、
041
人間はもちろん、
042
動物植物に至るまで、
043
その精神的物質的生長力が旺盛になつてくるのである。
044
故に子女を養育するに際しては勿論であるが、
045
動物を飼育し植物を栽培するに当つても、
046
常に愛の心を以てせなけれは正しい結果をもたらすことは出来ないものである。
047
今日、
048
庭園なるものは金力を誇り権勢を示すためにつくられて居るやうであるが、
049
実は庭園なるものはその樹木
草苔
(
さうたい
)
によつてその家人の徳性を表現するものなのである。
050
故に如何に金をかけ人力を尽しても、
051
徳なき家の庭園は観る人の目でははなはだ貧弱にしか見られないものである。
052
また人の心が乱れ、
053
悲しみと憎悪に満ちてゐる時、
054
即ち愛悪の精神が漲ってゐる時には、
055
その五体から
暗赤
(
あんせき
)
の色を放射するものである。
056
これは常に破壊性殺害性の力を有するものであつて、
057
そのために刺激を受けると、
058
精神的にも物質的にも生長力を阻害されるものである。
059
人によつて何となく衣類器具等を汚し損する人がある。
060
これも右の如き破壊的色素の一つの働きである。
061
しかしてかかる愛悪の霊的色素が段々と天地に充満してくると、
062
その結果肉体的には病を発生し、
063
精神的には不安
懊悩
(
あうなう
)
を誘発するに至るものである。
064
この悪気を払ひ清める行事が
禊祓
(
みそぎはらひ
)
である。
065
しかして禊祓にも色々あつて、
066
斎戒沐浴
(
さいかいもくよく
)
もその一種であり、
067
神籬
(
ひもろぎ
)
による祓戸、
068
祝詞奏上、
069
鎮魂等すべて禊祓の一方法である。
070
しかしてもし人間が悔い改めと禊の業を修めずして邪気いよいよ天地に充満し来たる時には、
071
祓戸の神の御発動となつて暴風豪雨等によつて邪気が清められるのである。
072
神の恩寵最も豊かなる我が国において特に然りである。
073
故に我が国においては古来国難の当来する前においては、
074
ことに自然界の変災が多いのであつて、
075
これは神が特に日本を愛し給ふ象徴なのである。
076
余は最近の我が国における天災地変について議論をすることを避けたい。
077
科学万能主義者が過去の聖賢の言葉を否定する説に、
078
同ずる人々を一々論難しても仕方がない。
079
だが余は
躓
(
つまづ
)
く石にも神の警告を感得する謙虚敬虔な心を持つ人は幸ひであると言ふものである。
080
天の異象を見、
081
地の変兆を知らされても、
082
神を知らざる者の目は節穴同然、
083
耳は木耳同様、
084
まことに悲しむべき世相である。
085
かかる世相を誰が招いたのであらうか。
086
余は過去の聖賢とともに「天を恐れよ、
087
神を畏れよ」と、
088
今の世に叫ぶものである。
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