霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 (からす)(つま)〔三五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻 篇:第1篇 智利の都 よみ(新仮名遣い):てるのみやこ
章:第4章 烏の妻 よみ(新仮名遣い):からすのつま 通し章番号:354
口述日:1922(大正11)年02月06日(旧01月10日) 口述場所: 筆録者:東尾吉雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
明けて、日の出神は船中の人々に対して、天地の神の徳を説き諭していた。そこへ、一天にわかに掻き曇り、ものすごい風が吹きすさんで波は山岳のごとくになった。
日の出神は声を張り上げて、宣伝歌の言霊を風に向かって述べ立てた。すると嵐は忽然と静まった。
船中の人々は日の出神の神徳に感じて、進んでその教理を聴聞することとなった。ここに清彦は今までの罪悪をすべて悔改め、日の出神の弟子となり、高砂洲に宣伝を試みることになった。駒山彦と猿世彦は示し合わせて、追って高砂洲に上陸することになる。
船中の旅人たちの噂話に、面那芸司が船旅の途中、海に沈んでしまったことを知った日の出神は、さっと不安の色を浮かべた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-31 19:11:37 OBC :rm0804
愛善世界社版:26頁 八幡書店版:第2輯 161頁 修補版: 校定版:28頁 普及版:12頁 初版: ページ備考:
001(なみ)高砂(たかさご)()()(わた)
002智利(てる)(みやこ)(つき)()
003と、004船頭(せんどう)(ふし)面白(おもしろ)海風(うなかぜ)(こゑ)をさらしながら(うた)ひはじめたり。005()出神(でのかみ)船中(せんちう)人々(ひとびと)(たい)して、006天地(てんち)(かみ)高徳(かうとく)諄々(じゆんじゆん)()(はじ)めたる(をり)しも、007(にはか)一天(いつてん)()(くも)り、008颶風(ぐふう)()(すさ)み、009(なみ)山岳(さんがく)のごとく()ちはじめ、010(いま)まで元気張(げんきば)つてゐた猿世彦(さるよひこ)011駒山彦(こまやまひこ)は、012蒼白(さうはく)(かほ)になり、013片隅(かたすみ)にブルブルと(ふる)へゐる。014数多(あまた)船客(せんきやく)は、015(いづ)れも船底(ふなぞこ)にかぢりつき()(いのち)風前(ふうぜん)燈火(ともしび)かと不安(ふあん)(ねん)()られて、016口々(くちぐち)何事(なにごと)をか(いの)(はじ)めけり。
017 船中(せんちう)(にはか)人声(ひとごゑ)ピタリと(とま)り、018ただ(ちひ)さき祈願(きぐわん)(こゑ)のするのみなりき。019(なみ)(おと)はますます(たか)く、020時々(ときどき)(しほ)(ふね)(あび)せて(たけ)(くる)ふ。021この(とき)()出神(でのかみ)は、022(こゑ)()()げて大音声(だいおんじやう)()ばはりたまふ。
023高天原(たかあまはら)()ろし()
024(あめ)御柱(みはしら)大神(おほかみ)
025神勅(みこと)(かしこ)(あめ)(した)
026四方(よも)国々(くにぐに)(くま)もなく
027(かみ)(をしへ)()(つた)
028闇夜(やみよ)()らす宣伝使(せんでんし)
029()出神(でのかみ)鹿島立(かしまだ)
030(かみ)(おん)ため(くに)のため
031世人(よびと)(すく)ふそのために
032(しほ)八百路(やほぢ)八塩路(やしほぢ)
033(しほ)()けつつ(すす)()
034(われ)(たふと)(かみ)御子(みこ)
035(みづ)(をしへ)(つつし)みて
036()諸人(もろびと)真心(まごころ)
037(あはれ)みたまへ天津(あまつ)(かみ)
038(すく)はせたまへ国津(くにつ)(かみ)
039科戸(しなど)(かみ)水分(みくまり)
040(ただ)しき(かみ)何事(なにごと)
041波路(なみぢ)(たか)竜神(たつがみ)
042(そこ)藻屑(もくづ)鳴門灘(なるとなだ)
043渦巻(うづまき)わたる海原(うなばら)
044御国(みくに)(おも)真心(まごころ)
045(みち)(かよ)ひし宣伝使(せんでんし)
046()言霊(ことたま)天地(あめつち)
047()てる(まこと)(かみ)(こゑ)
048大海原(おほうなばら)()ろし()
049海原彦(うなばらひこ)豊玉姫(とよたまひめ)
050(かみ)(みこと)(いま)いづく
051(かみ)(まつ)れる玉依姫(たまよりひめ)
052(かみ)(みこと)はいま何処(いづこ)
053雨風(あめかぜ)(しげ)(なみ)(たか)
054この諸人(もろびと)(おびや)かす
055大綿津見(おほわだつみ)枉神(まがかみ)
056伊吹(いぶ)きに(はら)()(はら)
057伊吹(いぶ)(はら)ふの(ちから)()
058()言霊(ことたま)(きこ)えずば
059(われ)はこれより天地(あめつち)
060(かみ)(かは)りて三五(あななひ)
061言挙(ことあ)げなさむ綿津(わだつ)(かみ)
062科戸(しなど)(ひこ)科戸姫(しなどひめ)
063()()(わた)(しづ)まれよ
064とく()(わた)(しづ)まれよ』
065と、066(きよ)言霊(ことたま)(かぜ)(むか)つて()()てたまへば、067さしも猛烈(まうれつ)なりし暴風(ばうふう)も、068車軸(しやぢく)(なが)大雨(おほあめ)も、069忽然(こつぜん)として(しづ)まり、070天津(あまつ)御空(みそら)黒雲(くろくも)上衣(うはぎ)()ぎて、071紺碧(こんぺき)(はだ)(あら)はし、072()晃々(くわうくわう)として中天(ちうてん)(かがや)き、073(うみ)諸鳥(もろとり)悠々(いういう)として(つばさ)をひろげ、074頭上(づじやう)(たか)(よろこ)ばしき(こゑ)()()げて、075口々(くちぐち)(さけ)びはじめけり。076紺碧(こんぺき)海面(かいめん)は、077あたかも(かがみ)のごとく()(わた)り、078地獄(ぢごく)()でて天国(てんごく)(はる)()うたるごとき心地(ここち)せられ、079船中(せんちう)諸人(もろびと)は、080ほとんど蘇生(そせい)したる面色(おももち)にて、081()出神(でのかみ)身辺(しんぺん)()(あつ)まり、082その神徳(しんとく)感謝(かんしや)し、083なほも(すす)みて教理(けうり)拝聴(はいちやう)することとなりぬ。084船中(せんちう)人々(ひとびと)()出神(でのかみ)神徳(しんとく)(かん)じ、085(こころ)(そこ)より信仰(しんかう)(ねん)(おこ)し、086なほも(すす)みてその教理(けうり)聴聞(ちやうもん)したりける。
087 ここに清彦(きよひこ)は、088(いま)までの(すべ)ての罪悪(ざいあく)()(あらた)め、089()出神(でのかみ)弟子(でし)となり、090高砂島(たかさごじま)宣伝(せんでん)(こころ)むる(こと)となりぬ。091猿世彦(さるよひこ)092駒山彦(こまやまひこ)は、093清彦(きよひこ)(あと)()ひて、094何事(なにごと)(しめ)(あは)せ、095高砂島(たかさごじま)上陸(じやうりく)したりけり。
096 またもや船中(せんちう)雑談(ざつだん)(はな)()()でにけり。
097(かふ)(民)『やれやれ(おそ)ろしい(こと)だつたのう。098すんで(こと)竜宮(りうぐう)()きをする(ところ)だつたが、099(わた)浮世(うきよ)(おに)()い、100天道(てんだう)(ひと)(ころ)さずとはよく()つたものだ。101()出神(でのかみ)(さま)がこの(ふね)()つて()られなかつたら、102吾々(われわれ)(ふか)餌食(ゑじき)になつて(しま)つたかも()れない。103()しもソンナ(こと)があつたら、104(おれ)()ぬのは天命(てんめい)だと(おも)つて(あきら)めるが、105(くに)(のこ)つた(つま)()が、106どうして月日(つきひ)(おく)るだらう。107女房(にようばう)が「あゝ(こひ)しい(たみ)さまは」と()つて()くかも()れぬ』
108(おつ)『コンナ(ところ)でのろけるない。109貴様(きさま)()んだつて()(もの)があるか。110村中(むらぢう)悪者(わるもの)()くなつたと()つて、111(もち)でも()いて(いは)(もの)もあらうし、112貴様(きさま)(かかあ)は、113鹿公(しかこう)入魂(じつこん)だから、114邪魔(じやま)(はら)はれた、115()(うへ)(こぶ)()れたと()うて、116(もち)でも()いて(いは)ふかも()れぬよ。117()(もの)()つたら(からす)か、118(かき)()(せみ)がとまつて()(くらゐ)だ。119アツハツハヽヽ』
120(たみ)馬鹿(ばか)にするない、121()んで(よろこ)(やつ)(ひろ)世界(せかい)()つて(たま)るか。122(てん)にも()にも、123一人(ひとり)(をつと)一人(ひとり)女房(にようばう)だ。124(おれ)国許(くにもと)出立(しゆつたつ)する(とき)125女房(にようばう)(おれ)(たもと)(すが)りついて、126ドウゾ(いち)(にち)(はや)(かへ)つて()頂戴(ちやうだい)ネ、127あなたのお(かほ)()えねば()()けぬ、128()()れぬ、129毎日(まいにち)高砂(たかさご)(そら)(なが)めて()つて()ます、130エヘン、131あの(やさ)しい(かほ)()きよつたぞ。132そこを貴様(きさま)()せてやりたかつたワイ』
133(おつ)馬鹿(ばか)にするない。134あの(やさ)しい(かかあ)()つたものかい、135(あたま)禿()げた神楽鼻(かぐらばな)の、136鰐口(わにぐち)団栗目(どんぐりめ)の、137天下(てんか)一品(いつぴん)珍無類(ちんむるゐ)()面相(めんさう)別嬪(べつぴん)を、138(からす)だつて(かへり)みるものは()りやしないよ』
139(へい)左様(さう)()はれぬぞ。140何時(いつ)やらも野良(のら)()(はたら)いて()(とき)に、141(そば)(もり)(からす)()よつて、142カカア、143カカアと()んで()たよ』
144(たみ)『ソンナ(はなし)()めにして(かみ)(さま)(をが)まぬかい。145また(なみ)でも()つたら、146今度(こんど)はもう(たす)かりつこは()いぞ』
147(てい)(この)(あひだ)も、148面那芸(つらなぎ)宣使(かみ)さまとかが(ふね)()つて、149筑紫(つくし)(しま)から天教山(てんけうざん)()かれる途中(とちう)(うみ)()れて(ふね)暗礁(あんせう)にぶつつかり、150メキメキと(こは)れて(しま)つた。151そして(きやく)(のこ)らず()んで(しま)つたと()ふことだよ』
152(たみ)『その面那芸(つらなぎ)宣使(かみ)はどう()つたのだ。153ソンナ(とき)には此処(ここ)御座(ござ)()出神(でのかみ)(さま)(やう)に、154何故(なぜ)神徳(しんとく)をよう(あらは)さなかつたのだらう。155面那芸(つらなぎ)(かみ)とは(うはさ)()宣伝使(せんでんし)でないか』
156(おつ)『さう、157宣伝使(せんでんし)だ。158(しか)神徳(しんとく)()いから、159危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)(ひと)(すく)(やう)(こと)は、160薩張(さつぱ)りようセンデン使()だよ。161それで自分(じぶん)一緒(いつしよ)にぶくぶくと(もろ)くも(しづ)んで(しま)つて、162あゝあゝ(くる)しい(つら)難儀(なんぎ)(こと)()つたと(あわ)()いた。163そこでつらなぎ(かみ)ぢや。164(たれ)(かれ)(みな)(つら)難儀(なんぎ)()()つて、165つらなぎのかみに()つて(しま)つたのだ。166最前(さいぜん)のやうに、167清彦(きよひこ)さまの(やう)説教(せつけう)をする宣伝使(せんでんし)もあるし、168()しも()出神(でのかみ)()(ふね)()つて()られ()かつたら清彦(きよひこ)宣伝使(せんでんし)が、169また面那芸(つらなぎ)(かみ)(やう)運命(うんめい)()つたかも()れぬ。170さうすれば(おい)らも(みな)面那芸(つらなぎ)のめに()うとるのだ。171()出神(でのかみ)(さま)()神徳(しんとく)(わす)れてはならぬぞ、172あゝ有難(ありがた)い、173有難(ありがた)い』
174口々(くちぐち)私語(ささやい)てゐる。175()出神(でのかみ)はこの雑談中(ざつだんちう)に、176面那芸(つらなぎ)(かみ)()れる(ふね)沈没(ちんぼつ)した(こと)()いて(むね)(をど)らせ、177その(かほ)には、178(さつ)不安(ふあん)(いろ)(ただよ)ひにける。
179大正一一・二・六 旧一・一〇 東尾吉雄録)
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