第三一章 谷間の温泉〔三八一〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:第5篇 宇都の国
よみ(新仮名遣い):うづのくに
章:第31章 谷間の温泉
よみ(新仮名遣い):たにまのおんせん
通し章番号:381
口述日:1922(大正11)年02月09日(旧01月13日)
口述場所:
筆録者:土井靖都
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:蚊々虎の後を追ってやって来た宣伝使たちは、温泉が煙を上げてもうもうと湧き出ているところにやってきた。見れば、蚊々虎は倒れている男の前で神言を奏上し、鎮魂を施している。
蚊々虎は自分の鎮魂が効を奏さないので、淤縢山津見に鎮魂を頼もうと呼んでいたのであった。淤縢山津見は天の数歌を歌い、もろ手を組んでウンと一声息をかけると、倒れていた男は起き上がり、宣伝使たちに礼を述べた。
倒れていたのは、正鹿山津見(桃上彦)であった。正鹿山津見はこれまでの経緯を一行に語った。
正鹿山津見は、秘露の都を宣伝した後、巴留の国へ宣伝に向かったところが、鷹取別の手下によって重傷を負い、沙漠に葬られた。そこから夜陰にまぎれて逃げ出し、峠を越えようとして温泉があることを知り、傷を癒していたが、湯にあたって倒れてしまったところに、一行が来て助けてくれたのだ、と語り、改めて感謝の意を表した。
淤縢山津見は何事も神様のお引き合わせであると語り、一同は温泉の周囲に端座して神言を奏上した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:2020-06-07 15:31:47
OBC :rm0831
愛善世界社版:211頁
八幡書店版:第2輯 226頁
修補版:
校定版:215頁
普及版:93頁
初版:
ページ備考:
001 三人の宣伝使は、002声を知辺に崎嶇たる谷道を、003流れに沿うて登り来たり、004見れば湯煙濛々と立ち昇り、005天然の温泉が湧き居る。006蚊々虎は一人真裸になつて、007倒れてゐる男の前に双手を組み、008神言を奏上し、009鎮魂を施しゐたり。
010 駒山彦は之を見て、
014 蚊々虎は鎮魂を了り、
015蚊々虎『ヤア、016何でもない。017此処に一人の人間が倒れて居るのだ。018身体を探つて見れば、019まだ血の循つて居るせいか、020この湯のせいか知らぬがそこら中温い。021どうぞして助けたいものだと、022一生懸命鎮魂してるのだが、023俺らの力では此奴ばかりはいかぬ。024淤縢山津見の宣伝使に、025一つ鎮魂をやつて貰ひたいと思つて呼んだのだよ。026モシモシ先生、027一つこの男に鎮魂を施してくださいな』
030と云ひながら、031天の数歌を歌ひ了つて双手を組み、032ウンと一声、033鎮魂の息を掛た。034裸体になつて倒れて居た男は、035ムクムクと起上り、036目を擦りながら、037四人の宣伝使が前に在るに気がつき、
038男(正鹿山津見)『ヤア、039何れの方か存じませぬが、040一命をお救ひ下さいまして有難う存じます』
041と顔を上ぐる途端に、042蚊々虎は、
043蚊々虎『ヨー、044貴方は秘露の都で御目に懸つた、045正鹿山津見の宣伝使では御座らぬか』
046正鹿山津見『アア貴方は蚊々虎殿か。047ヨーヨー、048淤縢山津見殿、049思はぬ処で御目に懸りました。050是も全く三五教の神様の御引合せ、051有難う存じます』
052淤縢山津見『貴方はどうして、053斯る山奥に御越しになつたのですか、054是には何か深き仔細がありませう』
055正鹿山津見『ハイ、056私は秘露の都で、057日の出神様や貴方らと袂を分ち、058それより巴留の国を宣伝せむと、059この珍山峠を越え、060鷹取別の城下に宣伝歌を歌つて参りました。061所が俄に数百の駱駝隊が現はれて、062前後左右より取囲み、063槍の切尖にて所構はず突刺され、064失神したと思へば、065沙漠の中に葬られて居た。066私は砂を掻き分けて這ひ上り、067夜陰に紛れて巴留の都を逃げ出し、068この峠に差しかかる折りしも、069傷所はますます痛み、070最早一歩も進むことが出来なくなり、071喉の渇きを谷水に医さむと、072細谷川の清水を汲んで見れば、073何とも知れぬ芳き香と味がある。074さうして此水は谷水に似ず実に温かい。075是は薬の水ではあるまいかと、076手に掬つて傷所に塗つて見た所が、077忽ち其傷は癒えました。078されど身体の疲労はどことなく苦しく、079それに堪へかね、080この谷川を遡れば屹度良い温泉があらう、081其処へ行つて身の養生を致さむと、082漸く此温泉を尋ね当ました。083それより日夜この温泉に身を浸し、084数多の槍傷はすつかり癒えましたが、085あまり浴湯が過ぎたと見えて逆上し、086知覚精神を喪失してこの場に倒れて居た処、087尊き神の御引合せ、088貴方方に巡り合ひ、089命を助けて貰ひました。090コンナ有難い事はありませぬ』
091と両眼に涙を湛へながら、092両手を合せて感謝の意を表したり。
094淤縢山津見『何事も神様の御引き合せ、095吾々は神様の綱に操られて、096貴方を救ふべく遣はされたものでありませう。097吾々は感謝の言葉を受けては、098実に勿体ない気がする。099天地の大神に早く感謝をして下さい。100吾々も共に神言を奏上いたしませう』
101と淤縢山津見の言葉に従ひ、102一同はこの温泉の周囲に端坐して神言を奏上したりける。
103(大正一一・二・九 旧一・一三 土井靖都録)
104(第二六章~第三一章 昭和一〇・三・三 於天恩郷透明殿 王仁校正)