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第75巻(寅の巻)
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第80巻(未の巻)
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第8巻(未の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 智利の都
01 朝日丸
〔351〕
02 五十韻
〔352〕
03 身魂相応
〔353〕
04 烏の妻
〔354〕
05 三人世の元
〔355〕
06 火の玉
〔356〕
第2篇 四十八文字
07 蛸入道
〔357〕
08 改心祈願
〔358〕
09 鏡の池
〔359〕
10 仮名手本
〔360〕
第3篇 秘露より巴留へ
11 海の竜宮
〔361〕
12 身代り
〔362〕
13 修羅場
〔363〕
14 秘露の邂逅
〔364〕
15 ブラジル峠
〔365〕
16 霊縛
〔366〕
17 敵味方
〔367〕
18 巴留の関守
〔368〕
第4篇 巴留の国
19 刹那心
〔369〕
20 張子の虎
〔370〕
21 滝の村
〔371〕
22 五月姫
〔372〕
23 黒頭巾
〔373〕
24 盲目審神
〔374〕
25 火の車
〔375〕
26 讃嘆
〔376〕
27 沙漠
〔377〕
28 玉詩異
〔378〕
29 原山祇
〔379〕
第5篇 宇都の国
30 珍山峠
〔380〕
31 谷間の温泉
〔381〕
32 朝の紅顔
〔382〕
33 天上眉毛
〔383〕
34 烏天狗
〔384〕
35 一二三世
〔385〕
36 大蛇の背
〔386〕
37 珍山彦
〔387〕
38 華燭の典
〔388〕
第6篇 黄泉比良坂
39 言霊解一
〔389〕
40 言霊解二
〔390〕
41 言霊解三
〔391〕
42 言霊解四
〔392〕
43 言霊解五
〔393〕
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第二三章
黒頭巾
(
くろづきん
)
〔三七三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:
第4篇 巴留の国
よみ(新仮名遣い):
はるのくに
章:
第23章 黒頭巾
よみ(新仮名遣い):
くろずきん
通し章番号:
373
口述日:
1922(大正11)年02月08日(旧01月12日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
蚊々虎と高彦は、五月姫の心中を忖度しながら滑稽な問答を交わしている。淤縢山津見と五月姫が門内に入った後、蚊々虎と高彦は締め出されてしまうが、再び招き入れられて館に入った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-07 14:49:02
OBC :
rm0823
愛善世界社版:
154頁
八幡書店版:
第2輯 206頁
修補版:
校定版:
156頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
五月姫
(
さつきひめ
)
の
従者
(
じゆうしや
)
は
松明
(
たいまつ
)
を
点
(
とも
)
し
乍
(
なが
)
ら、
002
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
道案内
(
みちあんない
)
をなす、
003
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
後
(
あと
)
に
随
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
004
蚊々虎
(
かがとら
)
、
005
高彦
(
たかひこ
)
の
二人
(
ふたり
)
は
途々
(
みちみち
)
話
(
はな
)
しを
始
(
はじ
)
める。
006
蚊々虎
(小さい声で)『おい、
007
縁
(
えん
)
は
異
(
い
)
なもの
乙
(
おつ
)
なものじやないか。
008
吾輩
(
わがはい
)
のやうな
目許
(
めもと
)
の
涼
(
すず
)
しい
鼻筋
(
はなすぢ
)
の
通
(
とほ
)
つた、
009
口許
(
くちもと
)
の
締
(
しま
)
つた
男
(
をとこ
)
らしい、
010
そしてお
負
(
まけ
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
毛
(
け
)
の
生
(
は
)
えた
男
(
をとこ
)
を
嫌
(
きら
)
つて、
011
あの
禿茶瓶
(
はげちやびん
)
の
醜国別
(
しこくにわけ
)
が
好
(
す
)
きだとは、
012
何処
(
どこ
)
で
勘定
(
かんぢやう
)
が
合
(
あ
)
ふのだらう。
013
彼奴
(
あいつ
)
が
頭巾
(
づきん
)
を
着
(
き
)
てよるから、
014
夜
(
よる
)
の
事
(
こと
)
なり
間違
(
まちが
)
へよつたのだぜ。
015
頭巾
(
づきん
)
を
脱
(
ぬ
)
いだら
五月姫
(
さつきひめ
)
は
吃驚
(
びつくり
)
しよつて「
矢張
(
やつぱ
)
り
人違
(
ひとちが
)
ひで
御座
(
ござ
)
りました。
016
こちらのお
方
(
かた
)
」ナンテ
言
(
い
)
ひよつて、
017
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
へ
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
るに
決
(
きま
)
つてるわ。
018
アンナ
男
(
をとこ
)
を
可愛
(
かあい
)
がつたところで、
019
何処
(
どこ
)
が
尻
(
けつ
)
やら
頭
(
どたま
)
やら
判
(
わか
)
つたものぢやない。
020
物好
(
ものずき
)
もあればあるものだね』
021
高彦
(
たかひこ
)
(荒熊)
『
俺
(
わし
)
が
女
(
をんな
)
だつたら……』
022
蚊々虎
『さうだつたら、
023
俺
(
おれ
)
に
惚
(
ほ
)
れるだらう』
024
高彦(荒熊)
『
自惚
(
うぬぼ
)
れない。
025
貴様
(
きさま
)
の
腰
(
こし
)
は
く
の
字
(
じ
)
に
曲
(
まが
)
つて
居
(
を
)
るなり、
026
皺嗄声
(
しはがれごゑ
)
の
疳声
(
かんごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
027
石原
(
いしはら
)
を
薬罐
(
やくわん
)
でも
引摺
(
ひきず
)
る
様
(
やう
)
な
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
はれたら、
028
愛想
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きて
了
(
しま
)
ふわ。
029
マア
何
(
なに
)
かい、
030
宣伝使
(
せんでんし
)
の
禿頭
(
はげあたま
)
の
化
(
ばけ
)
が
露
(
あら
)
はれて、
031
五月姫
(
さつきひめ
)
が
尻
(
しり
)
を
振
(
ふ
)
つたら、
032
第二
(
だいに
)
の
候補者
(
こうほしや
)
はマア
高
(
たか
)
さまかい』
033
蚊々虎
『
高
(
たか
)
が
知
(
し
)
れたる
高彦
(
たかひこ
)
が、
034
何
(
なん
)
だい。
035
山道
(
やまみち
)
の
関守
(
せきもり
)
奴
(
め
)
が、
036
余
(
あんま
)
り
自惚
(
うぬぼ
)
れな』
037
高彦(荒熊)
『
へつぴり
腰
(
ごし
)
の
薬罐声
(
やくわんごゑ
)
の
貴様
(
きさま
)
に、
038
五月姫
(
さつきひめ
)
も
有
(
あ
)
つたものかい』
039
蚊々虎
『
何
(
なに
)
、
040
馬鹿
(
ばか
)
にしよるない』
041
と
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
042
高彦
(
たかひこ
)
の
横面
(
よこづら
)
を
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めてポカンとやらうとするを、
043
高彦
(
たかひこ
)
は、
044
高彦(荒熊)
『おい、
045
三五教
(
あななひけう
)
だよ、
046
堪
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びだ』
047
蚊々虎
『ヤアー、
048
宣伝使
(
せんでんし
)
も
辛
(
つら
)
いものだナ。
049
俺
(
おれ
)
が
今迄
(
いままで
)
の
蚊々虎
(
かがとら
)
だつたら、
050
貴様
(
きさま
)
の
頭
(
あたま
)
を
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
やつてやるのだけれど、
051
あゝ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
胴欲
(
どうよく
)
だワイ』
052
五月姫
(
さつきひめ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
争
(
あらそ
)
ひを
聞
(
き
)
いて、
053
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず、
054
五月姫
『ホヽヽヽ』
055
と
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
したり。
056
蚊々虎
『おい
高公
(
たかこう
)
、
057
ホヽヽホケキヨーぢやと。
058
まるで
鶯
(
うぐひす
)
の
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
だね』
059
高彦(荒熊)
『そらア
貴様
(
きさま
)
の
薬罐声
(
やくわんごゑ
)
とは、
060
テンデ
物
(
もの
)
が
違
(
ちが
)
ふよ。
061
金
(
きん
)
と
鉛
(
なまり
)
か、
062
お
月
(
つき
)
さまと
鼈
(
すつぽん
)
か、
063
雲
(
くも
)
と
泥
(
どろ
)
か、
064
まあソンナものだなあ』
065
蚊々虎
『
何
(
なに
)
つ! キリキリキリキリ』
066
高彦(荒熊)
『こら、
067
歯軋
(
はぎし
)
りを
噛
(
か
)
んで
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めよつて、
068
そら
三五教
(
あななひけう
)
だよ。
069
見直
(
みなほ
)
し、
070
聞直
(
ききなほ
)
しだ』
071
蚊々虎
『
直
(
ぢき
)
に
人
(
ひと
)
に
轡
(
くつわ
)
を
篏
(
は
)
めよつて、
072
コンナ
奴
(
やつ
)
に
生半熟
(
なまはんじゆく
)
教理
(
けうり
)
を
教
(
をし
)
へると
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いわ』
073
五月姫
『
皆
(
みな
)
さま
暗夜
(
やみよ
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
に
預
(
あづか
)
りました。
074
これが
妾
(
わらは
)
の
両親
(
りやうしん
)
の
住
(
す
)
まつて
居
(
を
)
ります
破屋
(
あばらや
)
でござります。
075
さあさあお
上
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
076
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
は、
077
淤縢山津見
『
然
(
しか
)
らば
御免
(
ごめん
)
』
078
と、
079
五月姫
(
さつきひめ
)
に
導
(
みちび
)
かれ、
080
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
081
蚊々虎
(
かがとら
)
はその
口真似
(
くちまね
)
をして、
082
蚊々虎
『
暗夜
(
あんや
)
の
処
(
ところ
)
、
083
ご
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
084
これが
妾
(
わらは
)
の
両親
(
りやうしん
)
の
住
(
す
)
まつて
居
(
を
)
ります
荒屋
(
あばらや
)
でござります。
085
さあさあお
上
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
086
……
然
(
しか
)
らば
御免
(
ごめん
)
』
087
高彦(荒熊)
『
貴様
(
きさま
)
独言
(
ひとりごと
)
いうて、
088
一人
(
ひとり
)
返事
(
へんじ
)
をしてるのか。
089
馬鹿
(
ばか
)
だなあ』
090
蚊々虎
『おい
高彦
(
たかひこ
)
、
091
馬鹿
(
ばか
)
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか、
092
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
せ』
093
高彦(荒熊)
『
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい
目
(
め
)
に
逢
(
あ
)
つたワイ。
094
おい
蚊々虎
(
かがとら
)
、
095
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しとると
門
(
もん
)
から
突出
(
つきだ
)
されやしまひかな』
096
蚊々虎
『
何
(
なに
)
、
097
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
しよつたら
突
(
つ
)
き
出
(
で
)
たら
可
(
い
)
いのだ。
098
つき
出
(
いで
)
て、
099
月出
(
つきで
)
る
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
さまに
成
(
な
)
るのだ。
100
あゝ、
101
月
(
つき
)
が
上
(
あが
)
つた、
102
あれ
見
(
み
)
い、
103
三五
(
さんご
)
の
明月
(
めいげつ
)
だ』
104
四辺
(
しへん
)
は
月光
(
げつくわう
)
に
照
(
てら
)
されて、
105
昼
(
ひる
)
の
如
(
ごと
)
くに
明
(
あか
)
るくなりぬ。
106
二人
(
ふたり
)
は
今
(
いま
)
や
東天
(
とうてん
)
を
かす
めて
差昇
(
さしのぼ
)
る
満月
(
まんげつ
)
の
光
(
ひかり
)
を
眺
(
なが
)
めて、
107
色々
(
いろいろ
)
と
無駄話
(
むだばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
る
内
(
うち
)
、
108
中門
(
なかもん
)
はガラガラ ピシヤツと
閉
(
し
)
められ、
109
五月姫
(
さつきひめ
)
、
110
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
は、
111
深
(
ふか
)
く
門内
(
もんない
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したりける。
112
蚊々虎
『おい
高公
(
たかこう
)
、
113
ガラガラ ピシヤンぢや』
114
高彦(荒熊)
『オイ
蚊々虎
(
かがとら
)
、
115
ガラガラ ピシヤンて
何
(
なん
)
だい』
116
蚊々虎
『
何
(
なん
)
だつてガラガラ ピシヤンぢや
無
(
な
)
いか』
117
高彦(荒熊)
『ガラガラ ピシヤンが
何
(
なん
)
だい。
118
閉
(
しめ
)
る
時
(
とき
)
はピシヤンと
云
(
い
)
ふし
開
(
あ
)
ける
時
(
とき
)
はガラガラと
云
(
い
)
ふのだ。
119
何処
(
どこ
)
の
門口
(
もんぐち
)
だつて、
120
ガラガラ ピシヤンはするよ。
121
何
(
なに
)
が
珍
(
めづら
)
しいのだ』
122
蚊々虎
『
貴様
(
きさま
)
も
血
(
ち
)
の
環
(
めぐ
)
りの
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
だな。
123
それでは
宣伝使
(
せんでんし
)
も
落第
(
らくだい
)
だよ。
124
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
はピツシヤリと
閉
(
しま
)
つて、
125
俺
(
おい
)
ら
二人
(
ふたり
)
は
放
(
ほ
)
つとけぼり
だ。
126
人
(
ひと
)
を
雲天井
(
くもてんじやう
)
に
寝
(
ね
)
さしよつて、
127
自分
(
じぶん
)
らは
綾錦
(
あやにしき
)
に
包
(
つつ
)
まれて
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
128
今晩
(
こんばん
)
は
神楽
(
かぐら
)
をあげて
面白
(
おもしろ
)
さうに
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きをやりよるのだよ。
129
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しいぢやないか。
130
一
(
ひと
)
つ
今晩
(
こんばん
)
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
でも
叩
(
たた
)
いて
囃
(
はや
)
してやらうかい、
131
むかつく
からなあ』
132
高彦(荒熊)
『
三五教
(
あななひけう
)
だ。
133
堪
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びだ。
134
怒
(
おこ
)
つちやいかぬよ』
135
蚊々虎
『
馬鹿
(
ばか
)
にしやがるなアー、
136
辛抱
(
しんばう
)
せうかい』
137
この
時
(
とき
)
又
(
また
)
もやガラガラと
音
(
おと
)
がして、
138
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
若
(
わか
)
い
女
(
をんな
)
、
139
徐々
(
しづしづ
)
と
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
140
女
『これはこれはお
二方
(
ふたかた
)
様
(
さま
)
、
141
夜
(
よる
)
の
事
(
こと
)
と
言
(
い
)
ひ、
142
取
(
と
)
り
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
りますで、
143
つい
忘
(
わす
)
れました。
144
お
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
二人
(
ふたり
)
の
方
(
かた
)
は
何処
(
どこ
)
へゐらつしやつたと、
145
大変
(
たいへん
)
にお
尋
(
たづ
)
ねで
御座
(
ござ
)
います。
146
どうぞ
早
(
はや
)
く
此方
(
こちら
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
147
蚊々虎
『おい、
148
これだから
堪
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びが
第一
(
だいいち
)
だと
言
(
い
)
ふのだナ。
149
俯伏
(
うつぶ
)
いた
拍子
(
へうし
)
に
頭巾
(
づきん
)
を
辷
(
すべ
)
り
落
(
おと
)
して
光
(
ひか
)
つた
頭
(
あたま
)
を
五月姫
(
さつきひめ
)
に
見
(
み
)
られて、
150
落第
(
らくだい
)
しよつたのだぜ。
151
斯
(
か
)
う
成
(
な
)
ると
矢張
(
やつぱ
)
り
蚊々虎
(
かがとら
)
さまだよ』
152
高彦(荒熊)
『
糠喜
(
ぬかよろこ
)
びをするない、
153
お
前
(
まへ
)
のやうな
腰付
(
こしつ
)
きでは
誰
(
たれ
)
だつて
惚
(
ほれ
)
やしないよ。
154
それは
目
(
め
)
の
まん
丸
(
まる
)
い
鼻
(
はな
)
の
大
(
おほ
)
きい
口
(
くち
)
の
大
(
おほ
)
きい
締
(
しま
)
りのある、
155
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
ても
強
(
つよ
)
さうな
高彦
(
たかひこ
)
さまに、
156
白羽
(
しらは
)
の
矢
(
や
)
が
立
(
た
)
つのだよ。
157
まあまあ
明日
(
あす
)
の
朝
(
あさ
)
に
勝敗
(
しようはい
)
が
分
(
わか
)
るわ』
158
女
『もしもしお
客様
(
きやくさま
)
お
話
(
はなし
)
は
後
(
あと
)
でゆつくりして
下
(
くだ
)
さいませ。
159
お
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
大変
(
たいへん
)
お
待
(
ま
)
ちで
御座
(
ござ
)
います』
160
蚊々虎
(
かがとら
)
『
吐
(
ぬか
)
したりな
吐
(
はか
)
したりな、
161
お
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
待遠
(
まちどほ
)
だとい。
162
エヘン』
163
と
蚊々虎
(
かがとら
)
は
肩
(
かた
)
怒
(
いか
)
らして
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち
門内
(
もんない
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したりけり。
164
(
大正一一・二・八
旧一・一二
東尾吉雄
録)
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