第二章 野路の草枕〔一八七〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第1篇 渺茫千里
よみ(新仮名遣い):びょうぼうせんり
章:第2章 野路の草枕
よみ(新仮名遣い):のじのくさまくら
通し章番号:1870
口述日:1933(昭和8)年10月20日(旧09月2日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神は、雲を払った多々久美の神の言霊を褒め称える。
多々久美の神は恐縮して謙遜するが、顕津男の神は、自分の心にかかった現世比女への恋着の曇りをも払ってくれた、と感謝の歌を歌う。
一行、この原野で野宿することとなったので、おのおの、述懐歌を歌う。
一夜を明かした一行は、朝日とともに、再び原野を歌うたいつつ進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7402
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 168頁
修補版:
校定版:26頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 広袤千里の原野を覆ひたる夕空の叢雲を、002生言霊に吹き払ひ、003天地を清めたる多々久美の神の功績を深く感じ給ひて、004御歌詠ませ給ふ。
005顕津男の神『天晴れ天晴れ多々久美の神の言霊に
006天地をこめし雲は散らへり
007言霊の御水火に生れしもの皆は
008また言霊に消え失するかも
009わが行手深く包みし醜雲の
010晴れて清しき夕の広野よ
011久方の天津御空の星かげは
012黄金白銀とかがよひにけり
013多々久美の神の功績なかりせば
014科戸の風は吹かざるべきを
015わが供に仕へて公はいやさきに
016貴の功を立て給ひける
017三笠山頂上つつみし白雲も
018今はあとなく晴れ渡るらむ
019夕月の影やうやくに現れて
020草葉の露は照り初めにけり
021月出でて草葉にすだく虫の音も
023天津日はかくろひ給へども月読の
024神の光に草枕やすし
025草枕旅を重ねて大野原
026闇と雲とに包まれしはや
027久方の空に輝く月かげを
028見ればわが霊冴え渡り行く
029現世の比女神も今日の月読を
030仰ぎつ吾を偲びますらむ』
031 多々久美の神は、032御歌詠ませ給ふ。
033『はづかしも瑞の御霊の称言
034聞けば嬉しも今宵の胸は
035御尾前に仕へ奉りて言霊の
037岐美が行く道に雲霧あらせじと
038吾御尾前に仕へ奉りぬ
039惟神神の生みてし天界にも
041 顕津男の神、042再び御歌詠ませ給ふ。
043『愛善の道をはづして恋となりし
045比女神を恋ふる心の胸の火は
046雲霧となりて空にあふれしか
047現世比女神の思ひは天を焼き
048わが霊線は地を覆へり
049執着の心ゆ出し黒雲の
050群立ちにつつ行手なやますも
051今日よりは心の駿馬綱締めて
052安らに平らに神業仕へむ
053天界といへども未だ生み終へぬ
054国土は怪しの雲霧立つも
055科戸辺の神の伊吹に四方の国
056包める雲霧払ふたふとさ』
057 近見男の神は歌ひ給ふ。
058『瑞御霊出でます神業の大野原を
059包みし雲は晴れ渡りけり
060晴れ渡る御空の奥にかがやける
062瑞御霊月読の神を力にて
063国土生みの御供仕へ奉らな
064見渡せば大野が原に湯気立ちて
065未だ地稚く一樹だにもなし
066見の限り草ばうばうの荒野原
067分け行く道のはろけくもあるか
068主の神の神霊に生れし国土なれば
069安く進まむ醜の荒野も
070多々久美の神の添ひますこの旅路
071雲立ち騒ぐも何おそるべき
072多々久美の神の功は風の神
073科戸辺比古を生ましめにけり
074国土造る道ははろけし吾は今
075荒野の夕虫の音聞くなり
076駿馬の足は急げど大野原
078夕されば虫の音清しきこの野辺に
079鏡の月は満ち照らひたり
080仰ぎ見る御空雲なく星の海
081浪も静かに月舟の行く
082月舟の御空流るるさま見つつ
083移り行く世を偲ばれにける』
084 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
085『思ひきや万里の荒野に瑞御霊と
086月に照らされ虫を聞くとは
087瑞御霊行手はろけし圓屋比古
088吾は気永く仕へ奉らな
089久方の天津高宮伏し拝み
090遥けく宣らむ善言美詞を
091善言美詞朝夕を宣りつれど
092非時曇るわが魂あやしも』
093 茲に国中比古の神は御歌詠み給ふ。
094『限りなき広けき紫微の天界に
095国魂神を生ます畏さ
096美しき紫微天界の国中に
098神々の心の曇り固まりて
099水火濁りつつ雲となりつる
100朝夕に厳の言霊宣り上げて
101世の黒雲を払ひ清めむ
102山青く水又清き天界の
103中に生れしわが幸思へり
104言霊の水火を清めて主の神の
105依さしの神業朝夕守らむ
106御供に仕へ奉りてこの宵を
108主の神の天津真言の言霊に
109この天地は弥栄えまさむ
110清き赤き正しき真言の言霊は
111荒ぶる神も和ぎ伏すなり
112瑞御霊神の御供に仕へつつ
113今日言霊の功をさとりぬ
114多々久美の神の功は言霊の
115清き明るき水火の力よ』
116 宇礼志穂の神は歌ひ給ふ。
117『草枕旅のなやみの空晴れし
118このたそがれを宇礼志穂の神
119天地に喜び満つる国原と
120思へば吾は宇礼志穂の神
121主の神の神言かしこみ瑞御霊
122神に仕へて宇礼志穂の神
123宇礼志穂の神の喜び花となり
124又月となり四方にかをらむ
125行き暮れて闇に包まれ淋しかる
126夕を出でし月は宇礼志穂
127御子生ませ喜び勇み宇礼志穂の
128いとまもあらに立ち出で給ひぬ
129幾千里荒野を渡り瑞御霊の
130岐美と居るかも月の夕を』
131 国中比古の神は再び歌ひ給ふ。
132『天晴れ天晴れ天津日は照る月は満つ
133野に花匂ひ虫の音冴えたる
134久方の天津神国の国中に
135吾は楽しも神業に仕へて
136瑞御霊神の神言の功績に
137この曠原や神国樹つらむ
138国土造り国魂神を生まさむと
139勤しみ給ふ功畏し
140美しき天と地との国中に
141比古比女二神は御子を生ませり
142永久の神国の種と瑞御霊
143生ませる御子に国は拓けむ
144瑞御霊神の御稜威ぞ高照の
145尾上遥けし月読のかげは
146瑞御魂朝な夕なをさすらひて
147八十比女神に涙そそがす
148尊さを思へば朝夕暮の
150月読の神のかがやく夕の野に
151駒諸共に安寝するかも
152神々はいねましにけむ草の根に
153鼾の浪の打寄せにつつ』
154 斯く各も各も述懐を歌ひ給ひて、155一夜を明し、156天津日の豊栄昇りし頃、157近見男の神先頭に、158瑞の御霊の神柱は、159駒に鞭うち、160際限もなき草莽々の野を、161御歌をうたひながら進ませ給ふぞ畏けれ。
162(昭和八・一〇・二〇 旧九・二 於水明閣 森良仁謹録)