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第74巻(丑の巻)
序文
総説
第1篇 渺茫千里
01 科戸の風
〔1869〕
02 野路の草枕
〔1870〕
03 篠の笹原
〔1871〕
04 朝露の光
〔1872〕
05 言霊神橋
〔1873〕
06 真鶴山霊
〔1874〕
07 相聞の闇
〔1875〕
08 黒雲晴明
〔1876〕
09 真鶴鳴動
〔1877〕
第2篇 真鶴新国
10 心の手綱
〔1878〕
11 万代の誓
〔1879〕
12 森の遠望
〔1880〕
13 水上の月
〔1881〕
14 真心の曇らひ
〔1882〕
15 晴天澄潮
〔1883〕
16 真言の力(一)
〔1884〕
17 真言の力(二)
〔1885〕
18 玉野の森
〔1886〕
19 玉野の神丘
〔1887〕
20 松下の述懐
〔1888〕
第3篇 玉藻霊山
21 玉野清庭
〔1889〕
22 天地は曇る
〔1890〕
23 意想の外
〔1891〕
24 誠の化身
〔1892〕
25 感歎幽明
〔1893〕
26 総神登丘
〔1894〕
余白歌
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第一八章
玉野
(
たまの
)
の
森
(
もり
)
〔一八八六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:
第2篇 真鶴新国
よみ(新仮名遣い):
まなづるしんこく
章:
第18章 玉野の森
よみ(新仮名遣い):
たまののもり
通し章番号:
1886
口述日:
1933(昭和8)年10月27日(旧09月9日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
谷前清子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉野の森は、東西十里、南北二十里。年老いた松の木が覆い茂り、地は白砂で覆われ、あちこちに水清き泉が湧いている。すがすがしく神々しい森である。
玉野比女は、森の中央の小高い丘の上に宮を構え、自ら斎主となって主の大神の神霊を祀っていた。
顕津男の神は、玉野の森に足を踏み入れると、駒を止めて歌を歌った。玉野の森をたたえ、玉野比女を呼ばわった。
遠見男の神が一行の先頭に立った。従者の神々は次々に、玉野の森の荘厳さをたたえる歌を歌いながら、玉野比女の館を探して駒を進める。。
生代比女も、馬上より玉野比女に呼びかける歌を歌うと、駒に鞭打って先に駆けて行ってしまった。
一行は玉野の森の中央の、玉野比女の館を目指して進んでいる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7418
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 236頁
修補版:
校定版:
285頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は、
002
一行
(
いつかう
)
の
神々
(
かみがみ
)
に
送
(
おく
)
られ、
003
玉野
(
たまの
)
の
森
(
もり
)
の
聖所
(
すがど
)
に
駒
(
こま
)
を
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
004
東西
(
とうざい
)
十
(
じふ
)
里
(
り
)
、
005
南北
(
なんぼく
)
二十
(
にじふ
)
里
(
り
)
に
渉
(
わた
)
る
玉野森
(
たまのもり
)
は、
006
老松
(
らうしやう
)
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
立
(
た
)
ち
並
(
なら
)
び、
007
白砂
(
はくしや
)
を
以
(
もつ
)
て
地上
(
ちじやう
)
を
覆
(
おほ
)
はれ、
008
あなたこなたの
窪所
(
くぼど
)
には、
009
清泉
(
せいせん
)
の
水
(
みづ
)
を
湛
(
たた
)
へ、
010
自
(
おのづか
)
ら
清
(
すが
)
しき
神森
(
かみもり
)
なり。
011
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
は、
012
この
森
(
もり
)
の
中央
(
ちうあう
)
の
小高
(
こだか
)
き
丘
(
をか
)
の
上
(
うへ
)
に、
013
宮柱
(
みやばしら
)
太敷
(
ふとしき
)
立
(
た
)
て、
014
高天原
(
たかあまはら
)
に
千木
(
ちぎ
)
多加知
(
たかし
)
りて、
015
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
神霊
(
しんれい
)
を
厳
(
おごそ
)
かに
祀
(
まつ
)
り
給
(
たま
)
ひて、
016
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
自
(
みづか
)
ら
斎主
(
さいしゆ
)
となりて、
017
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なを
真心
(
まごころ
)
の
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
し、
018
仕
(
つか
)
へ
給
(
たま
)
ふぞ
畏
(
かしこ
)
けれ。
019
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は、
020
玉野森
(
たまのもり
)
に
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
を
一足
(
ひとあし
)
二足
(
ふたあし
)
踏
(
ふ
)
み
入
(
い
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
021
駒
(
こま
)
を
止
(
とど
)
め
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
022
『
見渡
(
みわた
)
せば
目路
(
めぢ
)
の
限
(
かぎり
)
は
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
023
松
(
まつ
)
の
緑
(
みどり
)
の
栄
(
さか
)
ゆる
聖所
(
すがど
)
よ
024
国土
(
くに
)
稚
(
わか
)
きこの
天界
(
てんかい
)
に
珍
(
めづら
)
しも
025
千歳
(
ちとせ
)
を
経
(
へ
)
にし
松
(
まつ
)
繁
(
しげ
)
るとは
026
わがい
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
の
先々
(
さきざき
)
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
027
松
(
まつ
)
は
繁
(
しげ
)
りて
美
(
うま
)
し
国原
(
くにばら
)
よ
028
国土生
(
くにう
)
みの
神業
(
みわざ
)
仕
(
つか
)
ふと
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
029
この
神森
(
かみもり
)
を
清
(
すが
)
しみ
来
(
き
)
にけり
030
幾千万
(
いくせんまん
)
の
田鶴
(
たづ
)
の
巣
(
す
)
ぐへるこの
森
(
もり
)
の
031
緑
(
みどり
)
に
千代
(
ちよ
)
の
色
(
いろ
)
をそめたり
032
老松
(
らうしよう
)
は
野路
(
のぢ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
を
抱
(
かか
)
へつつ
033
神代
(
みよ
)
とこしへを
歌
(
うた
)
ふ
聖所
(
すがど
)
よ
034
かくの
如
(
ごと
)
清
(
すが
)
しき
広
(
ひろ
)
き
神森
(
かみもり
)
の
035
此処
(
ここ
)
にあるとは
知
(
し
)
らざりにけり
036
松
(
まつ
)
清
(
きよ
)
し
地
(
つち
)
又
(
また
)
清
(
きよ
)
し
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
し
037
真鶴国
(
まなづるくに
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
にして
038
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
いづれに
在
(
おは
)
すか
御
(
おん
)
姿
(
すがた
)
039
さへも
見
(
み
)
えなく
今日
(
けふ
)
の
淋
(
さび
)
しさ
040
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
御子
(
みこ
)
孕
(
はら
)
ますと
聞
(
き
)
きしより
041
玉野
(
たまの
)
の
比女
(
ひめ
)
はかくろひ
坐
(
ま
)
ししか』
042
遠見男
(
とほみを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
うたひ
給
(
たま
)
ふ。
043
『
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
駒
(
こま
)
を
止
(
とど
)
めて
緑
(
みどり
)
濃
(
こ
)
き
044
この
神森
(
かみもり
)
を
清
(
すが
)
しみ
見
(
み
)
るも
045
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
白々
(
しろじろ
)
と
046
匂
(
にほ
)
へる
花
(
はな
)
を
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
と
見
(
み
)
つ
047
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
ゆ
生
(
あ
)
れし
白梅
(
しらうめ
)
の
048
花
(
はな
)
と
思
(
おも
)
へば
尊
(
たふと
)
かりけり
049
時
(
とき
)
じくに
白梅
(
しらうめ
)
匂
(
にほ
)
ふこの
森
(
もり
)
は
050
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
とこそ
知
(
し
)
る
051
いざさらば
吾
(
われ
)
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
ちて
御供
(
みとも
)
せむ
052
馬上
(
ばじやう
)
ゆたかに
御歌
(
みうた
)
うたひつ』
053
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ひ、
054
遠見男
(
とほみを
)
の
神
(
かみ
)
は
一行
(
いつかう
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち、
055
白砂
(
はくしや
)
青松
(
せいしよう
)
の
清
(
すが
)
しき
森蔭
(
もりかげ
)
を、
056
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさま
)
しく、
057
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
058
圓屋
(
まるや
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は、
059
馬上
(
ばじやう
)
より
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
060
『
真鶴山
(
まなづるやま
)
玉野湖
(
たまのみづうみ
)
のり
越
(
こ
)
えて
061
今日
(
けふ
)
の
吉日
(
よきひ
)
に
聖所
(
すがど
)
に
着
(
つ
)
けり
062
真砂
(
まさご
)
踏
(
ふ
)
む
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
のさくさくと
063
音
(
おと
)
の
清
(
すが
)
しも
松
(
まつ
)
の
下蔭
(
したかげ
)
064
わが
面
(
おも
)
を
吹
(
ふ
)
くそよ
風
(
かぜ
)
も
香
(
かを
)
るなり
065
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
を
飾
(
かざ
)
る
白梅
(
しらうめ
)
の
花
(
はな
)
に
066
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
います
館
(
やかた
)
はいづらなる
067
岐美
(
きみ
)
の
出
(
い
)
でまし
迎
(
むか
)
へまさずや
068
行
(
ゆ
)
けど
行
(
ゆ
)
けど
果
(
はて
)
しも
知
(
し
)
らぬ
森蔭
(
もりかげ
)
を
069
果
(
はて
)
なき
思
(
おも
)
ひもどかしみける
070
真鶴
(
まなづる
)
の
国
(
くに
)
を
堅
(
かた
)
むる
国津柱
(
くにつはしら
)
と
071
生
(
あ
)
れ
出
(
い
)
でにけむこれの
神森
(
みもり
)
は』
072
多々久美
(
たたくみ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
073
『
瑞御霊
(
みづみたま
)
進
(
すす
)
ます
道
(
みち
)
に
隈
(
くま
)
もなく
074
森
(
もり
)
かげ
乍
(
なが
)
ら
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
は
光
(
て
)
る
075
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
射
(
さ
)
し
通
(
とほ
)
し
076
ゆたかにかがよふ
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
光
(
かげ
)
077
右左
(
みぎひだり
)
前
(
まへ
)
も
後
(
うしろ
)
も
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
078
松ケ枝
(
まつがえ
)
清
(
すが
)
しく
風
(
かぜ
)
を
孕
(
はら
)
めり
079
大空
(
おほぞら
)
の
蒼
(
あを
)
をうつしてこの
森
(
もり
)
の
080
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずゑ
)
はますます
青
(
あを
)
し
081
松
(
まつ
)
の
青
(
あを
)
御空
(
みそら
)
の
蒼
(
あを
)
と
重
(
かさ
)
なれる
082
空
(
そら
)
に
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ふ
白
(
しろ
)
き
真鶴
(
まなづる
)
083
白妙
(
しろたへ
)
の
真砂
(
まさご
)
を
敷
(
し
)
ける
森蔭
(
もりかげ
)
を
084
吾
(
われ
)
は
清
(
すが
)
しく
白馬
(
はくば
)
に
跨
(
またが
)
る
085
梅
(
うめ
)
匂
(
にほ
)
ふこの
神森
(
かみもり
)
のほがらかさ
086
森
(
もり
)
のあちこち
百千鳥
(
ももちどり
)
啼
(
な
)
く
087
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
かはた
笛
(
ふえ
)
の
音
(
ね
)
か
白鳥
(
しらとり
)
の
088
鳴
(
な
)
く
音
(
ね
)
清
(
すが
)
しき
玉野
(
たまの
)
森蔭
(
もりかげ
)
089
行
(
ゆ
)
けど
行
(
ゆ
)
けど
松
(
まつ
)
のみ
繁
(
しげ
)
るこの
森
(
もり
)
の
090
深
(
ふか
)
きを
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
ともがな』
091
宇礼志穂
(
うれしほ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
092
『
久方
(
ひさかた
)
の
天
(
あめ
)
晴
(
は
)
れ
地
(
つち
)
は
清
(
きよ
)
まりて
093
常磐
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
のしげる
聖所
(
すがど
)
よ
094
まだ
稚
(
わか
)
き
真鶴
(
まなづる
)
の
国
(
くに
)
かくの
如
(
ごと
)
095
老
(
お
)
いたる
松
(
まつ
)
の
繁
(
しげ
)
る
目出度
(
めでた
)
さ
096
神生
(
かみう
)
みの
神業
(
みわざ
)
終
(
を
)
へましし
瑞御霊
(
みづみたま
)
097
また
国土
(
くに
)
生
(
う
)
ます
尊
(
たふと
)
さを
思
(
おも
)
ふ
098
行
(
ゆ
)
けど
行
(
ゆ
)
けどまだ
現
(
あ
)
れまさぬ
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
099
貴
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
はいづらなるらむ
100
この
森
(
もり
)
は
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
造
(
つく
)
らしし
101
真鶴国
(
まなづるくに
)
の
要
(
かなめ
)
なるらむ
102
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
に
従
(
したが
)
ひて
103
はろばろこれの
聖所
(
すがど
)
に
来
(
き
)
つるも
104
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
御心
(
みこころ
)
あらばいち
早
(
はや
)
く
105
出
(
い
)
で
迎
(
むか
)
へませ
岐美
(
きみ
)
のお
成
(
な
)
りを』
106
美波志
(
みはし
)
比古
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
107
『あちこちに
清
(
きよ
)
き
真清水
(
ましみづ
)
湛
(
たた
)
へたる
108
この
神森
(
かみもり
)
は
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
か
109
水底
(
みなそこ
)
の
真砂
(
まさご
)
も
清
(
きよ
)
く
見
(
み
)
えにけり
110
澄
(
す
)
みきらひたる
水
(
みづ
)
の
光
(
ひかり
)
に
111
濁
(
にご
)
りなきこの
真清水
(
ましみづ
)
を
伏
(
ふ
)
し
拝
(
をが
)
み
112
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
悟
(
さと
)
りぬ
113
光闇
(
ひかりやみ
)
行
(
ゆ
)
き
交
(
か
)
ふ
世
(
よ
)
にもかくの
如
(
ごと
)
114
清
(
すが
)
しきものの
地
(
ち
)
に
描
(
ゑが
)
かれぬ
115
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
絵筆
(
ゑふで
)
になりし
玉野森
(
たまのもり
)
116
緑
(
みどり
)
のながめこよなく
清
(
すが
)
し』
117
産玉
(
うぶだま
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
118
『
白砂
(
しらすな
)
に
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずゑ
)
の
樹漏陽
(
こもれび
)
は
119
水玉
(
みづたま
)
の
如
(
ごと
)
うつろひかがよふ
120
白砂
(
しらすな
)
は
年
(
とし
)
ふるままにあからみて
121
樹漏陽
(
こもれび
)
白
(
しろ
)
く
庭
(
には
)
を
描
(
ゑが
)
けり
122
白駒
(
しろこま
)
の
脚
(
あし
)
に
踏
(
ふ
)
みゆく
樹漏陽
(
こもれび
)
を
123
吾
(
われ
)
はおそれみ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くなり
124
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
松
(
まつ
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
にも
125
輝
(
かがや
)
き
給
(
たま
)
ふと
思
(
おも
)
へば
畏
(
かしこ
)
し
126
国土生
(
くにう
)
みの
神業
(
みわざ
)
仕
(
つか
)
ふと
出
(
い
)
でましし
127
岐美
(
きみ
)
乗
(
の
)
らす
駒
(
こま
)
の
脚
(
あし
)
早
(
はや
)
きかも
128
瑞御霊
(
みづみたま
)
乗
(
の
)
らせる
駒
(
こま
)
の
脚
(
あし
)
早
(
はや
)
み
129
はや
御姿
(
みすがた
)
はかくれましぬる
130
国土生
(
くにう
)
みの
神業
(
みわざ
)
助
(
たす
)
けむ
吾
(
われ
)
にして
131
かく
後
(
おく
)
れしは
御神
(
みかみ
)
の
心
(
こころ
)
か
132
速
(
はや
)
くしてよき
事
(
こと
)
もあり
遅
(
おそ
)
くして
133
よき
事
(
こと
)
もあり
神
(
かみ
)
のまにまに
134
玉野森
(
たまのもり
)
の
真砂
(
まさご
)
を
踏
(
ふ
)
みて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
135
駒
(
こま
)
の
脚音
(
あしおと
)
清
(
すが
)
しき
園
(
その
)
なり
136
真鶴
(
まなづる
)
の
国
(
くに
)
とこしへに
拓
(
ひら
)
かむと
137
出
(
い
)
でます
岐美
(
きみ
)
の
後姿
(
うしろで
)
雄々
(
をを
)
しも
138
雄々
(
をを
)
しかる
岐美
(
きみ
)
に
仕
(
つか
)
へて
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
139
これの
聖所
(
すがど
)
をたどり
進
(
すす
)
むも』
140
魂機張
(
たまきはる
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
141
『
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
や
幸
(
さちは
)
ひて
142
この
神森
(
かみもり
)
は
生
(
あ
)
れましにけむ
143
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
永久
(
とは
)
に
守
(
まも
)
らす
神苑
(
かみぞの
)
と
144
思
(
おも
)
へば
何
(
なに
)
かつつましくなりぬ
145
天津空
(
あまつそら
)
に
跼
(
せぐくま
)
りつつ
駒
(
こま
)
の
脚
(
あし
)
146
静
(
しづか
)
に
進
(
すす
)
まむこれの
聖所
(
すがど
)
を
147
駿馬
(
はやこま
)
もこれの
聖所
(
すがど
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
148
蹐
(
ぬきあし
)
しつつ
進
(
すす
)
む
畏
(
かしこ
)
さ
149
清
(
きよ
)
らけき
真砂
(
まさご
)
にのこる
蹄跡
(
あしあと
)
は
150
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
通
(
かよ
)
ひ
路
(
ぢ
)
なりけり
151
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
152
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御跡
(
みあと
)
追
(
お
)
はむか
153
さしこもる
梢
(
こずゑ
)
の
繁
(
しげ
)
みところどころ
154
鶴
(
つる
)
の
巣籠
(
すごも
)
る
神苑
(
みその
)
清
(
すが
)
しき
155
穹天
(
きゆうてん
)
に
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
ゆる
真鶴
(
まなづる
)
の
156
声
(
こゑ
)
に
国原
(
くにばら
)
明
(
あ
)
け
渡
(
わた
)
るらむ』
157
結比合
(
むすびあはせ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
うたひ
給
(
たま
)
ふ。
158
『
天
(
あめ
)
の
水火
(
いき
)
と
地
(
つち
)
の
水火
(
いき
)
とを
結
(
むす
)
び
合
(
あは
)
せ
159
生
(
あ
)
れましにけむこれの
神国
(
みくに
)
は
160
天地
(
あめつち
)
の
中空
(
なかぞら
)
にある
心地
(
ここち
)
して
161
鶴
(
つる
)
の
巣籠
(
すごも
)
る
松蔭
(
まつかげ
)
を
行
(
ゆ
)
くも
162
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
も
白駒
(
しらこま
)
の
163
背
(
せ
)
に
跨
(
またが
)
りて
従
(
したが
)
ひませり
164
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
神生
(
かみう
)
みの
業
(
わざ
)
仕
(
つか
)
へますと
165
これの
聖所
(
すがど
)
に
来
(
きた
)
らす
雄々
(
をを
)
しさ』
166
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
馬上
(
ばじやう
)
より
歌
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
167
『
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
を
結
(
むす
)
び
合
(
あは
)
せの
神
(
かみ
)
とます
168
汝
(
なれ
)
は
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
悟
(
さと
)
りまさずや
169
御子
(
みこ
)
生
(
う
)
みし
吾
(
われ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
170
したはしきままここに
来
(
き
)
つるよ
171
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
にし
逢
(
あ
)
ひてわが
胸
(
むね
)
を
172
明
(
あ
)
かし
奉
(
まつ
)
らむ
真心
(
まごころ
)
の
水火
(
いき
)
に
173
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
繁
(
しげ
)
れるこれの
神森
(
かみもり
)
に
174
吾
(
われ
)
比女神
(
ひめがみ
)
と
永久
(
とは
)
に
住
(
す
)
まむか
175
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
神業
(
みわざ
)
助
(
たす
)
けて
永久
(
とことは
)
に
176
この
神森
(
かみもり
)
を
守
(
まも
)
らむと
思
(
おも
)
ふ
177
真鶴
(
まなづる
)
の
国土
(
くに
)
稚
(
わか
)
ければ
国土
(
くに
)
造
(
つく
)
る
178
神
(
かみ
)
と
議
(
はか
)
りて
世
(
よ
)
を
開
(
ひら
)
くべし
179
水火
(
いき
)
と
水火
(
いき
)
結
(
むす
)
び
合
(
あは
)
せて
生
(
うま
)
れたる
180
御子
(
みこ
)
はまさしく
国
(
くに
)
の
御柱
(
みはしら
)
よ』
181
斯
(
か
)
く
言挙
(
ことあ
)
げし
乍
(
なが
)
ら、
182
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
駒
(
こま
)
に
鞭打
(
むちう
)
ち、
183
一行
(
いつかう
)
の
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
ちて、
184
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駈
(
か
)
け
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
へば、
185
瞬
(
またた
)
くうちにその
後姿
(
うしろで
)
さへも
見
(
み
)
えずなりける。
186
結比合
(
むすびあはせ
)
の
神
(
かみ
)
は、
187
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
後姿
(
うしろで
)
を
見送
(
みおく
)
り
乍
(
なが
)
ら、
188
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
189
『
細女
(
くはしめ
)
よああ
賢女
(
さかしめ
)
よ
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
の
190
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
のすぐれたるかも
191
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
は
伊向
(
いむか
)
ふ
神
(
かみ
)
よ
面勝
(
おもかつ
)
神
(
かみ
)
よ
192
まつ
先
(
さき
)
かけて
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し
給
(
たま
)
ふ
193
吾
(
われ
)
よりも
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
つべき
神
(
かみ
)
乍
(
なが
)
ら
194
今
(
いま
)
まで
後
(
うしろ
)
につづかせ
給
(
たま
)
へり
195
上下
(
かみしも
)
の
序
(
ついで
)
を
正
(
ただ
)
し
今
(
いま
)
よりは
196
国土生
(
くにう
)
みの
業
(
わざ
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
197
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
は
貴
(
うづ
)
の
子
(
こ
)
孕
(
はら
)
ませり
198
わが
仕
(
つか
)
ふべき
神
(
かみ
)
にましける
199
前立
(
さきだ
)
ちて
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ふ
後姿
(
うしろで
)
を
200
はつかに
見
(
み
)
れば
光
(
ひかり
)
なりけり
201
松
(
まつ
)
の
間
(
ま
)
を
輝
(
かがや
)
かせつついち
早
(
はや
)
く
202
岐美
(
きみ
)
の
御後
(
みあと
)
を
追
(
お
)
ひ
給
(
たま
)
ひけむ』
203
美味素
(
うましもと
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
204
『
行
(
ゆ
)
けど
行
(
ゆ
)
けど
果
(
はて
)
しも
知
(
し
)
らぬこの
森
(
もり
)
の
205
真砂
(
まさご
)
に
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
は
悩
(
なや
)
めり
206
さくさくと
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
冴
(
さ
)
えて
207
行
(
ゆ
)
き
悩
(
なや
)
みたる
真砂
(
まさご
)
の
森蔭
(
もりかげ
)
208
玉野湖
(
たまのうみ
)
の
湖水
(
こすゐ
)
に
潜
(
ひそ
)
み
竜
(
りう
)
となりし
209
生代
(
いくよ
)
の
比女
(
ひめ
)
は
面勝
(
おもかつ
)
神
(
かみ
)
なり
210
生代
(
いくよ
)
比女
(
ひめ
)
面勝
(
おもかつ
)
神
(
かみ
)
の
功績
(
いさをし
)
に
211
なごみ
給
(
たま
)
ひし
瑞御霊
(
みづみたま
)
はも
212
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
女神
(
めがみ
)
の
強
(
つよ
)
さ
悟
(
さと
)
りけり
213
進
(
すす
)
むのみなる
神
(
かみ
)
のいさをし
214
いざさらば
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うち
真砂原
(
まさごはら
)
215
急
(
いそ
)
ぎ
進
(
すす
)
まむ
岐美
(
きみ
)
をたづねつ』
216
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
217
一鞭
(
ひとむち
)
あて
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
も
勇
(
いさ
)
ましく、
218
松蔭
(
まつかげ
)
の
真砂路
(
まさごぢ
)
を
一目散
(
いちもくさん
)
に
打
(
う
)
たせ
給
(
たま
)
ふ。
219
いや
果
(
はて
)
に、
220
真言厳
(
まこといづ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
うたひ
給
(
たま
)
ふ。
221
『
神々
(
かみがみ
)
の
貴
(
うづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
まつぶさに
222
吾
(
われ
)
は
聞
(
き
)
けるも
澄
(
す
)
める
心
(
こころ
)
に
223
右左
(
みぎひだり
)
清水
(
しみづ
)
たたへし
清池
(
すがいけ
)
の
224
光
(
ひか
)
れる
中
(
なか
)
を
嬉
(
うれ
)
しみ
行
(
ゆ
)
くも
225
天
(
あめ
)
なるやスの
言霊
(
ことたま
)
の
鳴
(
な
)
り
鳴
(
な
)
りて
226
かかる
聖所
(
すがど
)
は
現
(
あらは
)
れにけむ
227
わが
生
(
う
)
める
荒金
(
あらがね
)
の
地
(
つち
)
も
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
228
御霊
(
みたま
)
と
思
(
おも
)
へば
畏
(
かしこ
)
くぞある
229
ざくざくと
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
のひびかひも
230
神
(
かみ
)
の
御声
(
みこゑ
)
と
思
(
おも
)
へば
畏
(
かしこ
)
し
231
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うち
進
(
すす
)
むべし
232
玉野
(
たまの
)
の
比女
(
ひめ
)
の
御舎
(
みあらか
)
近
(
ちか
)
めば
233
瑞御霊
(
みづみたま
)
玉野
(
たまの
)
の
比女
(
ひめ
)
に
見合
(
みあ
)
ひまし
234
言問
(
ことと
)
ひ
給
(
たま
)
はむこの
潮
(
しほ
)
どきに
235
急
(
いそ
)
ぐもよし
急
(
いそ
)
がずもよし
惟神
(
かむながら
)
236
神
(
かみ
)
のまにまに
進
(
すす
)
むべきのみ』
237
斯
(
か
)
く
各
(
おの
)
も
各
(
おの
)
も
馬上
(
ばじやう
)
ゆたかに、
238
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
乍
(
なが
)
ら、
239
玉野森
(
たまのもり
)
の
中央
(
ちうあう
)
なる
小高
(
こだか
)
き
丘
(
をか
)
の
上
(
うへ
)
に、
240
広
(
ひろ
)
く
建
(
た
)
てられし
玉野
(
たまの
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
門前
(
もんぜん
)
さして
進
(
すす
)
み
給
(
たま
)
ひぬ。
241
(
昭和八・一〇・二七
旧九・九
於水明閣
谷前清子
謹録)
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