第一九章 玉野の神丘〔一八八七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第2篇 真鶴新国
よみ(新仮名遣い):まなづるしんこく
章:第19章 玉野の神丘
よみ(新仮名遣い):たまののみおか
通し章番号:1887
口述日:1933(昭和8)年10月27日(旧09月9日)
口述場所:水明閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一行は、玉野の森の白砂の上を馬に乗って、ようやく玉野比女の館のある丘に着いた。
玉野丘と言われる平坦な高台の聖地である。
顕津男の神が丘のふもとから見上げると、丘の上には紅・白・紫・黄・青の五色の幔幕が張りまわされており、尊い神がご降臨されている様子であった。
顕津男の神は、なるほど、それで玉野比女が出迎えに来られなかったのか、と歌を歌う。後から来た生代比女は、どうやら主の神がご降臨されているらしい、と顕津男の神に歌いかける。後から来た神々は、丘の厳かな様子にいっせいに馬を下りた。
従者神たちが述懐歌を歌っていると、玉野比女が大麻を手に悠然として現れた。玉野比女は、顕津男の神を待ちかねて老いてしまったこと、今まさに主の神がご降臨されて、顕津男の神をお待ちになっていることを告げる。
玉野比女と生代比女は対面する。玉野比女は、生代比女が自分の代わりに御子を身ごもったのは、神の神言によってであったと述懐し、ともに神国を作ろうと呼びかける。
玉野比女に仕える本津真言の神・待合比古の神は、瑞の御霊来着の喜びを歌う。
一方、顕津男の神の従者神たちは、主の神のご降臨をかしこみ、丘のふもとで神言を奏上していた。一行は、大神のご降臨とは知らずに馬で聖地を汚してしまったことを悔い、いったん森の入り口まで戻った。そして清水に身を清めてから徒歩で戻ってくると、もうあくる日の夕方になっていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7419
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 242頁
修補版:
校定版:305頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 白梅の薫る玉野の森の白砂を、002馬の蹄に踏みなづみながら、003老松の蔭を潜りて、004漸く玉野比女の神の鎮まり給ふ聖所に着き給ふ。
005 この丘は、006玉野丘と称し、007南北一里、008東西二里にわたる平坦の高地にして、009白銀の砂は、010天津日に照りかがよひ、011神苑を包める常磐樹は蜿蜒として枝を交へ、012紫微天界の粋を集めたるばかり思はるる聖所なりける。
013 顕津男の神は、014山の麓に駒乗り降り給ひ、015丘の上をふりさけ見給ふに、016紅、017白、018紫、019黄、020青の五色の幔幕を張り廻され、021何事か尊き神の御降臨ありし様子なり。022茲に顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。
023『国土生むと駒に跨り来て見れば
024箒目正しく清められあり
025何神の天降りますかは知らねども
027玉野比女わが出で立ちをよそにして
028出迎へまさぬは訳あるらしも
029ともかくも謹みいやまひこの丘を
030心清めて登り見むかな』
031 斯く歌ひ給ふ折しも、032駒を早めて入り来りし生代比女の神は、033ひらりと駒を飛び降り、034御歌詠ませ給ふ。
035『瑞御霊早くも此処に来ませるよ
036吾は急ぎて後追ひまつりぬ
037この聖所主の大神の天降りますか
039神生みの神業に仕へし吾にして
040岐美に後れむ事をはぢけり
041主の神の天降りますにや吹く風も
042かをり妙なり白梅の丘に
043いざさらば前に立ちませわれこそは
044御後に従ひ御山に登らむ』
045 斯く歌ひ給ふ折しも、046遠見男の神一行其他の神々は、047漸く駆けつけ給ひ、048一斉に駒を飛び降り、049老松の枝に手綱を結びつけ、050息を休ませながら、051遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。
052『道遠み白駒かけて漸くに
053岐美の在所をさぐり来にけり
054何神の天降りますにやこの聖所
055空吹く風も妙にかをれり
056真鶴の国の真秀良場この聖所は
057国土生み給ふにふさはしきかも
058此処にして国の御柱たて給ひ
059真鶴国を治め給ふか
060この丘に繁れる常磐の松並木
062松毎に千歳の鶴の巣ぐひたる
063この清丘は神の御舎
064主の神の天降りましたる心地して
065登りなづみぬこの清丘を』
066 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
067『如何ならむ尊き神の天降りますか
069稜威高き神の鎮まる神の丘を
070わけは知らねど吾は畏みぬ
071吹く風も穏かにしてわが面を
072清しく照らす木洩陽のかげ』
073 斯く歌ひ給ふ折しも、074玉野比女の神は大麻を手にしながら、075悠然として現れ給ひ、076御歌詠ませ給ふ。
077『岐美待ちて気永くなりし玉野比女
078常磐の松と共に老いぬる
079神生みの神業に仕ふと永年を
080岐美待ちかねて老いにけらしな
081幾万里の荒野をわたり訪ひ来ます
082岐美の真心嬉しかりける
083幾度か指折り数へよき月日
084待つ甲斐ありて岐美に逢ふかも
085主の神はいと厳かに天降りまし
086奥殿深く臨ませ給へり
087いざさらば顕津男の神登りませ
088われは御前にたちて仕へむ』
089 顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。
090『千万里の大野をわたり公許に
091今日は漸く訪ね来つるも
092苔むして神さびたてる老松の
093かげをし見れば公の偲ばゆ
094姫小松はや老松と栄ゆまで
095待たせる公をいとしみ思ふ
096かくならば神生み為さむ詮もなし
097心を合せて国土を生まむか
098生代比女吾を迎へて貴の御子
099孕ませ給へり公に代りて』
100 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
101『音に聞く玉野の比女の御姿の
102尊さ清しさ畏みまつる
103真鶴の山の精より生れ出でで
104吾御子生みの業に仕へし』
105 玉野比女の神は御歌詠ませ給ふ。
106『愛らしき生代の比女の心かな
107心安かれ吾も祝はむ
108神業を果し給ひし生代比女
109神の神言を尊しと思ふ
110今よりは御腹の御子を育みて
111ともに神国を造らむと思ふ』
112 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
113『有難し玉野の比女の御言葉
115国魂の神を孕みし吾にして
116公の言葉を有難く思ふ』
117 顕津男の神は御歌詠ませ給ふ。
118『けなげなる玉野の比女の言葉かな
119我はいふべき言の葉も無し
120ともかくも玉野の比女に従ひて
121この清丘に進み登らむ』
122 玉野比女の神の御供に仕へまつり、123此処に現れ給ふ本津真言の神は、124御歌詠ませ給ふ。
125『吾こそはウ声に生れし本津真言の神よ
126今日嬉しくも岐美を迎へし
127比女神の待ちに待たせる瑞御霊
128迎ふる今日ぞ嬉しかりけり
129はろばろと荒野をわたり海を越え
130来ませる岐美を尊く思ふ
131主の神の天降りましける聖所に
132着かせる岐美は雄々しき神はも
133真鶴の国のひらけし始めより
134かかる目出度き例はあらじ
135主の神は天降りましまし瑞御霊
136此処に現れます今日ぞ目出度き
137玉野比女は岐美迎へむとおぼせども
138大神のみそば離れかねつつ
139はろばろと岐美の出でまし出迎への
140後れし罪を許させ給へ
141玉野比女神に代りて今此処に
142ことわけのぶる本津真言の神よ』
143 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。
144『朝まけて主の大神は降りまし
145瑞の御霊は今現れましぬ
146愛善の紫微天界の真秀良場に
147今日は嬉しも神々迎へて
148いざさらば玉野の比女の導きに
149登らせ給へこの清丘へ』
151『有難し三柱神の出で迎へ
152厚き心を我は嬉しむ』
153と歌ひ給ひつつ、154しづしづと緩勾配の丘道を登らせ給へば、155遠見男の神以下の神々は、156主の神の御降臨と聞きて畏み、157山の登り口に両掌を合せ神言を奏上しながら、158時の到るを待たせ給ひける。
159 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。
160『思ひきや瑞の御霊に仕へ来て
161主の大神の天降りにあふとは
162主の神の天降り給ひしこの国は
164鬱蒼と天を封じてそそり立つ
165常磐樹の森によき事を聞くも
166かくならば吾等は謹み畏みて
167主の大神に清く祈らむ』
168 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
169『老松の四方をかしこみしこの森に
170かかる目出度さ思はざりけり
171主の神の天降り給ひしこの丘に
172紫の雲棚引きにけり
173五色の幕を清しく張り廻し
174主の大神を斎きたるらし
175この幕を越ゆる術なきわが御魂
176まだ晴れやらぬ心の曇りに
177智慧証覚未だ足らねば主の神に
178まみえむ術の無きが悲しき
179久方の天より降りし主の神の
180功を拝む丘の麓に』
181 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。
182『智慧証覚よし劣るとも真心の
184よしやよしわが真心は足らずとも
185神国を思ふ心は尊し
186さりながら瑞の御霊の大神の
188玉野比女瑞の御霊と生代比女に
189生言霊をのべて帰らせり
190神々に一言だにもかけまさず
191帰り給ひし事のうたてさ
192真心の光は未だこの丘に
194 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。
195『うれしくもこの清丘の麓まで
196御供に仕へしわが幸を思ふ
197言霊の澄みきりあへぬ吾にして
198これの聖所に来りしを喜ぶ
199老松のかげに心を清めつつ
200この真清水にうつしてや見む
201あちこちに魂を洗へと真清水は
202湧き出でにける神の功に
203幾何の御手洗池のある中を
205わが来る右りと左に湧き出でし
206清水は魂を洗ふ真清水』
207 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。
208『宇礼志穂の神の言霊に照らされて
210身を浄め魂を洗ひて進むべき
211真清水の池通り来しかも
212黙々と神は教を垂れ給ひ
213魂も洗へと清水湧かせり
214瑞御霊御供に仕へてしらずしらず
215わが魂線は傲ぶりにけむ』
216 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。
217『幾百と限りもしらぬ玉野池の
219この森のあらむ限りの真清水の
220池を求めて魂洗はばや
221取返しならぬ過ち為しにけり
222この御手洗を軽く見なしつ
223自ら森の樹蔭に湧きし水と
224軽く思ひしことを今悔ゆ』
225 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。
226『たまきはる生命の清水を見ながらに
227掬はむ道を忘れゐたりき
228行く先をただ急ぎつつ目の下の
230主の神の天降りましたるこの森は
231清き御魂の進むべきのみ
232玉野森馬蹄にけがせしわが罪を
233許させ給へ主の大御神』
234 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。
235『いざさらば元来し道に引返し
236駒を止めて徒歩歩きせむ
237主の神の今日のよき日に天降りますを
238知らず進みし迂濶さを悔ゆ』
239 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。
240『常磐樹の松に清しく鳴く鶴は
242愚しき吾と思へば恥づかしく
243瑞の御霊にまみえむ術なし
244瑞御霊生代の比女は吾を後に
245かけ出でましし御心悟りぬ
246今となり瑞の御霊の御心を
248何時の間にかわが魂線は傲ぶりて
249禊の業を忘れゐたるよ
250主の神の天降りましたるこの森を
251馬の蹄にけがせし悲しさ』
252 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。
253『今となりて吾恥づかしくなりにけり
254真言いづみの禊忘れて
255いざさらば神々たちよ駒並めて
256元来し道に引返し見む
257この森の外に抜け出で数多き
258泉に御魂洗ひて進まむ』
259 斯く神々は、260馬の蹄に知らず知らず聖所を汚せし事を悔い、261一目散に元来し道に引返し、262駒を玉野の森の入口遠く繋ぎ置き、263各も各も真清水に身を清め心を浄め、264天津祝詞を奏上し、265再び主の神の天降ります丘を指して、266真砂に足を踏みなづみつつ、267其翌る日の黄昏るる頃、268辛うじて丘の麓に着き給ひける。
269(昭和八・一〇・二七 旧九・九 於水明閣 林弥生謹録)