第二二章 天地は曇る〔一八九〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第3篇 玉藻霊山
よみ(新仮名遣い):たまもれいざん
章:第22章 天地は曇る
よみ(新仮名遣い):てんちはくもる
通し章番号:1890
口述日:1933(昭和8)年10月29日(旧09月11日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:生代比女は、顕津男の神と共に導かれていたが、なんとなく玉野比女が自分を快く思っていないのではないか、との念から、松の木陰に身を潜めていた。そして、自分のしたことのおろかさを悔い、大神にお詫びの歌を歌っていた。
瑞の御霊を悩ませつづけ、ついには玉野比女の神業であった神生みを奪ってしまった自分の罪に涙していた。
すると、白砂の庭を、大幣を打ち振りながら一人の神人が近づいてきた。そして大幣を打ち振りながら、自分は力充男の神であり、何事も神の心として勇んで来るように、と生代比女に声をかけた。
力充男の神は、自分は力を添え充ちさせる神、と歌い、罪穢れのある身であれば、そもそもこの聖所には登って来れないのだから、と生代比女を励ます。
力充男の神の歌に心の晴れた生代比女は、先に顕津男の神が禊をした清泉に導かる。生代比女は清泉を前に喜びの歌を歌い、天津祝詞を奏上した。
すると、待合比古の神がやってきて、主の大神が待っているので、早く来るように、と生代比女を迎えに来る。
生代比女は、自分を主の神が待っていることを知り、喜びによみがえったような心地のありがたさを歌った。
生代比女は、待合比古の神に導かれ、力充男の神に守られて、白砂を踏みながら大宮居に静静と進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7422
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 259頁
修補版:
校定版:372頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 茲に生代比女の神は、002顕津男の神と共に導かれ給ひけるが、003玉野比女の神の御顔どことなく美しからぬ心地しければ、004松の樹蔭に身を潜めて、005その身の愚さを悔い、006さめざめと泣き給ひつつ、007ひそかに主の大神に詫言を宣り給ひつつ歌はせ給ふ。008その御歌。
009『あさましき吾にもあるか聖所に
010登りて魂は戦き慄ふも
011主の神の大御心に叶はぬか
013玉野比女神の心の悲しさを
014吾は思ひて堪へやらぬかも
015瑞御霊神の心を悩ませし
016吾は怪しき女神なりしよ
017恋すてふ怪しき雲に包まれて
018吾は神業を妨げにけむ
019斯くなれば天地にわが身の置場なし
020ゆるさせ給へ主の大御神
021真鶴の神山恋しくなりにけり
022煙となりて消えたき思ひに
023玉野比女神の神言の神業を
024犯せし吾は邪神なりしか
025如何にしてこの罪穢払はむと
026思へど詮なし御子は孕みぬ
027瑞御霊一目もかけず吾を後に
028御前に進ませ給ふ畏さ
029村肝の心の神に責められて
030吾恥づかしく死なまく思ふも
031聖所を汚さむことの恐しさ
032吾行く道は閉されにけり
033万代の末の末まで恋せじと
034吾は悟りぬ聖所に来て
035胸の火の燃え立つままに天地の
036道ふみ外し罪の身となりぬ
037おほらかに生むべき御子にあらずやと
038思へば悲し重きこの身は
039御手にさへ触れず孕みしこのからだ
040わが魂線の怪しさを思ふ
041一度の手枕も無く情なや
042想像妊娠の今日の苦しさ
043わが歎き凝固りて雲となり
044御空の月日覆ひ隠さむ
045主の神の御前に白す言霊の
047天渡る陽光も月の顔も
048吾恐しく拝むよしなし
049つらつらに思へば罪の恐しさ
050わが玉の緒は切れむとするも
051玉の緒の生命はよしやまかるとも
052岐美思ふ心の如何で失すべき
053果しなきわが思ひかも天地に
054只一柱の岐美を恋ひつつ
055わが恋ふる岐美はすげなく玉野比女に
056御手を曳かれて奥に入らせる
057善悪の乱れ混交る天界に
058わが縺れ髪解くよしもなし
059玉野丘の聖所に吾は導かれ
060斯かる歎きに逢ふぞ悲しき
061瑞御霊玉野の比女と出でませる
062後姿を吾は見送りて泣く
063神の影側になければ吾一人
064憚ることなく泣き飽かむかも
065常磐樹の松は繁れど白梅は
066匂へど吾は悲しく淋し
067いと清き白砂の丘に只一人
068世をはかなみて吾は泣くなり
069如何にして今日の艱みを払はむと
071主の神の依さしに反き瑞御霊の
072心汚せし吾を悔ゆるも
073あだ花となりしわが身の恋心
074斯かる歎きの御子を孕みて
075思ひきやこの聖所に導かれ
076松の樹蔭に潜み泣かむとは』
077 斯く歌ひ給ふ折しもあれ、078大幣を左右左に打振りながら、079ザクリザクリと庭の白砂を踏みくだきつつ近寄り給ふ神人あり。080生代比女の神の忍ばせる松の樹蔭に悠々近寄り給ひ、081大幣を左右左に又もや打振りながら、
082『常磐樹の松の樹蔭にしのびます
083生代比女神勇み給はれ
084吾こそは力充男の神なれば
085公迎へむと急ぎ来つるも
086何事も神の心と思召せ
087歎き止めて勇ませ給へよ
088如何ならむ艱みおはすか知らねども
089この聖所は喜びの国土よ
090悲しみも艱みも知らぬこの丘に
091勇ませ給へ生代比女の神』
092 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
093『有難し貴き公の言の葉に
094吾は悲しさ弥まさりける
095主の神の天降らすこれの清丘に
096汚れある身の恐しさに泣く』
097 力充男の神は御歌詠ませ給ふ。
098『何事のおはしますかは知らねども
099力を添へむ充男の神吾は
100天渡る月も流転の影ぞかし
101歎き給ひそ惟神なれば
102罪穢ある身は如何に急るとも
104聖所にのぼらす力おはす公は
105罪穢なぞ塵ほどもなし
106いざさらば心の駒を立て直し
107玉の泉に禊給はれ
108主の神の御心によりて吾は今
109公迎へむと急ぎ来しはや』
110 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
111『有難し力充男の神の宣
113死なましとひたに思ひしわが心
115愛善の天津神国に生れ合ひて
116歎きに沈みし愚さを思ふ
117わが心ひがみたりけむ玉野比女の
118御顔を畏れちぢみつ』
119 力充男の神はまた詠ませ給ふ。
120『安らかに心広けく勇ましく
121雄々しく優しくおはしませ比女よ
122愛善の天界なれば恋すてふ
124天界のこの真秀良場に出でまして
125何を歎かむ月冴ゆる庭に
126いざさらば玉の泉に案内せむ
127進ませ給へ生代比女の神よ』
128 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
129『薨らむと思ひし事も真言ある
131いざさらば公の真言に従ひて
132玉の泉に禊せむかも
133真鶴は御空に舞へり白梅は
134樹の間に匂へり何を歎かむ
135見の限りすべてのものは勇むなるを
136何に迷ひて吾歎きけむ
137主の神の天降りませる聖所を
138吾涙もて汚せし悔しさ
139村肝の心一つの持ちやうに
140明るくもなり曇らふ神代かな
141情ある公の言葉にわが魂の
142力は充ちて雄々しくなりぬ』
143 力充男の神は前に立たせながら、144御歌詠ませ給ふ。
145『樹下闇時雨に晴れて天津日の
146光は清しく輝きにけり
147村時雨晴れたる後の月光は
148一入明るく冴え渡るなり
149高ゆくや月も流転の影ぞかし
150何を歎かむこの天界に
151果しなき思ひの雲霧晴れ渡り
152瑞の御霊の月かげを見む』
153 生代比女の神は御歌詠ませ給ふ。
154『一夜の契りも知らぬ生代比女の
156真鶴の国原遥けく閉したる
157雲霧晴れて清しき吾はも
158主の神の愛善の御水火に包まれて
160斯くならば雲霧もなしわが魂は
161月日の如く冴え渡りつつ
162大幣にわが魂線を清められ
164 力充男の神は、165大幣を打ち振り打ち振り老松の蔭に展開せる、166玉泉の汀に導き給ひつつ、167御歌詠ませ給ふ。
168『主の神の清き心のしたたりに
169あらはれ出でし玉の清水よ
170玉野比女朝夕に禊ませる
171この玉泉の底ひ知れずも
172瑞御霊七度の禊終へ給ひ
173大宮深く進ませ給ひぬ
174吾も亦朝夕をこの水に
175洗ひ清めて魂を生かせり
176真清水は澄みに澄みつつ掬ぶ手に
177梅の香ただよふ香ゆかしき
178いざさらば天津祝詞を奏上し
179禊がせ給へこれの泉に』
180 生代比女の神は喜びに堪へず、181御歌詠ませ給ふ。
183清けき清水真清水に
185月の鏡の弥清く
187紫微天界の神国に
190永久に生かせる真清水清水
191斯かる聖所に導かれ
193宣らせ給ひし有難さ
194この真清水や主の神の
195潔き清しき御心の鏡かも
196この真寸鏡真寸鏡
197玉の真清水うまし水
198清しき水よ玉の緒の
199生命保たす生き水よ
200生ける御神の霊線の
205生命の清水真清水よ』
206と御歌うたひ終りて、207天津祝詞を声朗かに奏上し給ひし折もあれ、208急ぎ此処に現れ給ひしは、209さきに瑞の御霊に仕へたる、210待合比古の神におはしける。
211 待合比古の神は御歌詠ませ給ふ。
212『生代比女神の姿のおはさぬに
213吾心づき迎へ来つるも
214神生みの神業仕へし公なれば
215早く御供に加はりまさね
216いざさらば吾導かむ急がせよ
217主の大神も待たせ給へば』
218 生代比女の神は意外の喜びに、219よみがへりたる心地して、220御歌詠ませ給ふ。
221『有難し忝なしと申すより
223いざさらば御前に仕へ奉るべし
224清き心に月日浮べて』
225 茲に生代比女の神は、226待合比古の神に導かれ、227力充男の神に守られて、228大宮居に進むべく広庭の白砂を踏みなづみつつ静々と進ませ給ふ。
229(昭和八・一〇・二九 旧九・一一 於水明閣 森良仁謹録)