第一五章 晴天澄潮〔一八八三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第2篇 真鶴新国
よみ(新仮名遣い):まなづるしんこく
章:第15章 晴天澄潮
よみ(新仮名遣い):せいてんちょうちょう
通し章番号:1883
口述日:1933(昭和8)年10月24日(旧09月6日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神の仁慈のこもった歌に、生代比女の恨みの炎は消えてしまった。静かで美しい玉野湖の情景は、天国浄土の様を取り戻した。
この光景に遠見男の神は瑞御霊の大愛をたたえる歌を歌った。
圓屋比古の神は、愛善・愛悪が行き交って国が固まる様を悟り、天地を丸く治めることに尽力することを誓った。また、顕津男の神の活動をたたえた。
多々久美の神は、恋の恐ろしい側面を目の当たりにした感慨を歌った。
宇礼志穂の神は、瑞御霊の神業の辛苦に思いを馳せる歌を歌った。
美波志比古の神は、瑞御霊の仁慈の徳と言霊の力をたたえる歌を歌った。
産玉の神は、生代比女の一途な思いを憐れみ慈しむ歌を歌った。
魂機張の神は、神業と生代比女の思いの間で苦しんだ顕津男の神の心に、涙の歌を歌った。
結比合の神は、再び澄み渡った景色に、目的地・玉野森へ心が急ぐ思いを歌った。
美味素の神は、湖面を照らす月と、ゆきかう日の徳をたたえる歌を歌った。
真言厳の神は、月の恵みをたたえ、先頭に立って玉野湖を馬に乗って泳ぎ渡った。
顕津男の神たち一行は、真言厳の神に続いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7415
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 221頁
修補版:
校定版:225頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 顕津男の神の仁慈の籠れる言霊の御歌に、002生代比女の神が恋の恨みも炎も、003玉野湖の水泡と消えて、004水面には月の鏡を写し、005雲霧の幕何れにか取り外されて、006大空の蒼にきらめく星影を湖底に描き、007天国浄土の光景と回復したるぞ不思議なる。
008 遠見男の神は、009今目前展開したる天地の光景を眺めて湖面に向ひ、010御歌詠ませ給ふ。
011『天晴れ天晴れ瑞の御霊の言霊に
012天地四方の雲晴れにけり
013恐しきものは恋かも思ひかも
015天地を深く包みし闇雲も
016情の言葉に晴れ渡りぬる
017瑞御霊神の苦しき御心を
018悟りて吾は涙に暮るるも
019玉野湖の鏡に月は冴えにつつ
020波は静に香りこそすれ
021八千尋の底まで澄めるこの湖の
022深き思ひを和らげし岐美よ
023目路遠く彼方の岸にうつろへる
024玉野神森見え初めにける
025一片の雲さへも無き大空の
026心にかがよふ神の霊線
027大愛の神の心に比ぶれば
028吾は小さき愛に狂へるも
029今日よりは心の手綱ひき締めて
030大愛の道進まむと思ふ
031恋すてふ心は愛し清しもよ
032天と地との中に輝く
033湖原をなでて吹き来しそよ風の
034わが面吹きて香る宵なり
035見の限り月の下びに草も木も
037荒風に揉まれて汀の葭葦は
038片靡きつつ露に光れる
039瑞御霊恵の露の霑ひに
041闇深く湖原荒れしたまゆらを
042吾は艱みぬ御供に仕へて
043吹きすさび荒れ狂ひたる湖風も
044静まりにけり岐美の情に
045頼むべきものは神かも恐るべき
046邪曲は恋かもこの天地に
047かくならば勇みて御供仕へつつ
048吾渡り行かむ神馬の守りに』
049 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
050『はろばろと岐美の旅路に仕へ来て
051吾は悟りぬ世の状態を
052恋心燃えつ消えつつまた燃えつ
053天と地とを恨みにとざせり
054とざしたる天地の闇も情ある
055生言霊に明け放れたり
056大空を隈なく包みし黒雲は
057恋の炎と思へば恐し
058美しき紫微天界のことごとは
059愛より生みしと思へば畏し
060愛善と愛悪交々ゆきかひて
061紫微天界は固まり行くも
062天も地も圓屋の比古の神の稜威に
063丸く治めむ神のまにまに
064神と神国と国との交らひを
065丸く治めむわが誓ひなり
066丸々と御空の月は玉野湖の
067上と下とにかがよふこの宵
068この宵の移り変りのさま見つつ
069わが行先の光見つむる
070目路遠きこの神国を固めむと
071駆け廻ります瑞の御霊はや』
072 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。
073『わが力及ばざりけり恋雲の
074四方をふさぎしその束の間を
075国土造る神の御供の畏さを
077湖荒れて大蛇の出でしたまゆらを
078吾は畏み見て居たりける
079玉野湖の岸辺に立ちて吾はただ
080浪凪ぎ渡る時を待ちつつ
081不甲斐なき吾と思へど恋雲を
082晴らさむ術なく黙し居にけり
083瑞御霊艱める態を目前
084見つつ術なき吾を悲しむ
085言霊に恵の露の輝きて
086大蛇の胸は和みたりけむ
087恐しく忌はしきものは恋すてふ
088心に生まるる影なりにけり
089縹渺と限りも知らぬ大野原も
090月の光に輝きそめたり
091久方の天また地を黒雲に
092包みし邪曲は恋なりにけり
093国土生みの供に仕へて恐しき
094恋てふものの影見たりけり
095村肝の心静めて黙しつつ
096眺むる恋の大蛇すさまじ』
097 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。
098『天地によみがへりたる心地して
099鏡の湖の月仰ぐかな
100天心に輝く月のかげ冴えて
101玉野湖水は澄み照らひけり
102移り行く世の状態をつくづくと
104言霊の厳の力も揉み消して
105恋の炎は燃え立ちにけり
106燃え立ちし恋の炎は雲となり
107雨となりつつ天地を包めり
108瑞御霊貴の神業御子生みの
109艱み思へば謹みの湧く
110謹みて国魂神を生みまする
111神の神業の難きを偲ぶも
112地稚く漂へる国土を固めずば
113紫微天界は栄えざるらむ
114愛善の神代ながらも兎もすれば
115恨み憎みて争ふが憂し
116葭葦の生ひ茂りたる国原を
117拓かす岐美の艱みを思ふ』
118 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。
119『吹き荒ぶ荒野の風も湖風も
120ひたをさまりぬ情の言葉に
121神々はいふも更なり天界の
123天界に情を知らぬ神は無し
124瑞の御霊の艱み畏し
125天地を包みし雲も晴れ渡り
127広袤万里稚き国原拓きます
128岐美の功の畏さ思ふ
129大空の月の御霊と生れませし
130瑞の御霊の功光るも
131大空の月さへ雲に覆はるる
132世に言霊の稜威を思へり
133言霊の御稜威に生りし天界は
134澄みきらひつつ塵の無き国
135罪穢塵さへも無き国原を
136曇らせ荒ぶ恋の黒雲
137天界に恋すてふことなかりせば
138天地を包む雲は起らじ
139愛善の光の満つる天界を
140穢さじものと言霊宣るも
141善悪のゆきかふこれの天界は
142雲霧立つも是非なかるらむ』
143 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。
144『野路遠く岐美を守りて玉野湖の
145岸辺に見たり世の状態を
146永久に祟ると宣りし比女神の
147心思へば悲しかりける
148永久に恨みを残す曲業を
149改めませよ神ます国土に
150愛しさのあまりあまりて比女神の
151恨みの心燃え立ちにけむ
152世を恨み神を恨むも恋すてふ
153心の糸の縺なりけり
154村肝の心の縺解くよしも
156神生みの神業に仕ふる岐美なれば
157一入愛しく思し給はむを
158愛善の天界なれば愛しさの
159心は何れの神も持つなり
160比女神の深き思ひは湖の
161底ひもつひに湧き立ちにけむ
162恐しきものは恋かも恨みかも
163この神国も破れむとせし』
164 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。
165『たまきはる生命の恋を遂げむとて
166艱みの果は大蛇となりぬる
167玉の緒の生命惜まず細女の
168恋の炎は天をこがせり
169瑞御霊情の籠る言霊に
170この天地は明け放れたり
171深々と夜は更けにけり月影も
173大空に傾く月のかげ冴えて
174わが駒の影長くなりけり
175主の神の神言の儘に国魂神
176生まさむ岐美を愛しと思ふ
177凡神の身にしおはさば非時に
179凡神の眼に写る我岐美の
180神業は悪しと写りこそすれ
181凡神の妬み嫉みの恐しさに
183果しなき艱みを胸に包みつつ
184この湖原を渡らす岐美はも
185わが岐美の心の艱み思ひつつ
186わが目の涙湖と漂ふ』
187 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。
188『天と地を結び合せて月日の
189影を宿せる玉野湖天晴れ
190月も日も澄みきらひたる湖原の
191岸辺に立ちて世を思ふかな
192虫の音もいやさやさやに響きつつ
193水面の月は強く冴えたり
194湖に浮べる月の影見れば
195瑞の御霊の心を思ふ
196天地を結び合せの神ながら
197この恋綱を吾如何にせむ
198兎も角も生言霊の御光に
199明し進まむ玉野森まで
200駿馬の足掻き急しく地をかきて
201吾を促すさまの愛しも
202湖に浮べる月の影見つつ
203駒は勇むか足掻きせはしも』
204 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。
205『月読は東に天津日は西に
206ゆきかひにつつ湖面を照らすも
207西空の雲井の幕を押しわけて
208東に進ます月読の神
209東雲の空押しわけて天津日は
210日毎に西の空に沈むも
211右左月日のゆきかひあればこそ
213月と日を天と地とをまつぶさに
214結び合せて神代を守らむ』
215 真言厳の神は御歌詠ませ給ふ。
216『此処に来て思はず時を移しけり
217愛と恋との艱みの幕に
218天高く国原広し月読は
219恵の露を隈なく配りつ
220いざさらば駒を並べて御供せむ
222駿馬の手綱をしかと握りしめ
223泳ぎ渡らむ駒もろともに
224おほけなくも吾先頭に仕ふべし
225続かせ給へ百の神等』
226 斯く謡ひ終へて白馬にヒラリと跨り、227一鞭あてて月照る湖面を、228竜蛇の躍るが如く浪を蹴立てて走り行く。229顕津男の神を始めとし百神等は、230真言厳の神の踏切りし浪の穂を伝ひて、231驀地に馬上進ませ給ふ。
232(昭和八・一〇・二四 旧九・六 於水明閣 森良仁謹録)