第五章 言霊神橋〔一八七三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第1篇 渺茫千里
よみ(新仮名遣い):びょうぼうせんり
章:第5章 言霊神橋
よみ(新仮名遣い):ことたまみはし
通し章番号:1873
口述日:1933(昭和8)年10月21日(旧09月3日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:真鶴山は、まだ若い山で、つきたての餅のように湯気がもうもうと立ち昇っている。山の姿もまだ固まっていない。周りには、底深い沼が広がり、そこからも湯気が立ち昇っている。
山に近づくにしたがい、柔らかい土に馬の足がとられ、沈んでいく。
顕津男の神は馬上より、カコクケキ、ガゴグゲギの言霊歌を歌うと、ぬかるみは次第に固まり、沼から出る霧も薄らいで、真鶴山の姿が日の光を浴びて現れた。
遠見男の神はこの奇瑞をたたえる歌を歌った。
ウ声の言霊から生まれたという多々久美の神が言霊歌を歌うと、沼の水はみるみる煙となって高く昇り、一滴の湿りもないまでに乾ききった。
美波志比古の神はタトツテチ、ダドヅデヂの言霊歌で沼の底土を乾燥させた。
一行は、先発していた国中比古の案内で、真鶴山の頂上に登った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7405
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 179頁
修補版:
校定版:69頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 真鶴山は未だ地稚く柔かく、002恰も搗きたての餅の如く湯気濛々と立昇り、003山の姿さへ未だ固まらず、004茫然として夢幻の如き丘陵なりける。005而して真鶴山の周囲には底深き沼広々と廻り、006湯気立昇り居る。
007 顕津男の神一行は、008この山に近づくに従ひ、009次第々々に地は下り地柔かくして馬の脛を没し、010終には腹までも浸す艱ましさに、011馬上より生言霊を宣り給ふ。
012『カコクケキこの葭原は未だ稚し
013水の気引けよ地固まれよ
014カコクケキガゴグゲギわが伊行く道を
015造り固めよ言霊の水火に
016沼の彼方山の麓に神々は
017我迎へつつ佇み居ますも
018葭葦の生ひ茂りたる沼の洲を
019伊行き艱みつ言霊宣るも』
020 斯く歌ひ給ふや、021さしもの泥濘も次第々々に固まりて、022葭と葦とは片靡き、023沼の表に湧き立つ伊吹の狭霧は、024次第々々に薄らぎて、025真鶴山の雄姿は天津日の光を浴びつつ、026鮮かに目に入り初めにける。027遠見男の神はこの言霊の奇瑞に感じ給ひて、028御歌詠ませ給ふ。
029『あな尊瑞の御霊の言霊に
030葭葦原は固まりにけり
031駒の脚地上に立てどこの沼は
032濁らひ深し如何に渡らな
033百神は向つ汀に並び立ち
034吾迎へますを渡らふ術なき
035カコクケキ生言霊も吾にして
036如何で功の現るべきやは
037瑞御霊再び言霊宣りまして
038この沼の水乾かせ給へ
039黄昏の空近みつつわが駒は
040脚疲れたり如何に渡らむ
041言霊の功に国土を拓きます
042神にありせば沼を乾させよ』
043 顕津男の神は、044遠見男の神の言霊神歌を諾ひながら、045馬上より声朗かに歌ひ給ふ。
046『踏みなづみし葭葦原は固まりぬ
047沼水乾せやカコクケキの霊
049わが宣る言葉に沼よ乾けよ
050言霊の稜威の力に沼の面は
051水あせにつつ狭霧晴るるも』
052 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。
053『見る見るに狭霧は晴れて沼の面は
054水量低みぬ天晴れ言霊に
055向つ辺に立たせ給へる駒の上の
056国中比古よ岐美を迎へませ
057主の神の神国を造り万有を
058生ませる神業の言霊厳しも
059天界は生言霊の国土なれば
060吾もア声に生れ出でにける
061九柱御供の神はウの声の
062生言霊に生れし神はも
063圓屋比古ア声の水火よ百神は
064ウ声の水火に生れませる神
065厳御霊ウ声に活用き瑞御霊
066ア声に結びて国土固めばや』
067 茲にウ声の言霊に生り出で給ひし、068多々久美の神は馬上より歌ひ給ふ。
069『黄昏の幕は追々深くとも
070吾は明さむウ声の水火に
071アオウエイ生言霊に横はる
072沼よ退け岐美のみゆきぞ
073国土造り御子を生ますと瑞御霊
074此処に立たすを沼神知らずや』
075 斯く多々久美の神は生言霊を宣り給ふにぞ、076広々と横はりたる曇濁の沼水は、077見る見る煙となりて高く昇り、078一滴の湿りさへ無きまで乾きたるぞ不思議なる。079多々久美の神の生言霊によりて、080さしもに広き深き沼水は乾し上りたれども、081泥深く柔かくして駒の蹄を入れるよしなければ、082顕津男の神の一行も渡り艱みいましけるが、083美波志比古の神は沼の底を固めむとして、084御歌詠ませ給ふ。
085『天晴れ天晴れアとウの厳の言霊に
086沼は煙となりて乾きぬ
087沼水は乾きたれども泥深し
088吾は神橋をかけて仕へむ
089タトツテチタタの言霊幸ひて
090岐美行く道を固め給はれ
091タトツテチダドヅデヂヂとヂヂの言霊に
092地の神橋よ今かかれかし
093次々に岐美行く道の沼底は
094白く乾きて固まりにける』
095 美波志比古の神の生言霊に、096限も知らぬ沼底は地の白くなるまで乾きたれば、097顕津男の神は甚く喜ばせ給ひて、098御歌詠み給ふ。
099『天晴れ天晴れ美波志の神の功績に
100わが行く神橋は架けられにけり
101この橋を渡れば近し真鶴の
102山の聖所に進み通はむ
103黄昏の幕を開きて月読は
104真蒼の空に輝き給ふ』
105 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
106『久方の御空を照らす月読の
107光を力に安く渡らむ
108今更に生言霊の功績を
109悟りけるかな圓屋比古吾は』
110 宇礼志穂の神は御歌うたひ給ふ。
111『岐美が行く道明らけくなりにけり
112吾は宇礼志穂ウ声に生る神
113ウ声ア声生言霊の幸ひて
115小夜更けて沼の底なる神橋行く
117黄昏の空とし思へど岐美が行く
118道は明るし沼の底まで
119岐美行かば生言霊の幸ひて
121 産玉の神は御歌うたひ給ふ。
122『国中比古神を迎へて吾は今
123瑞の御霊を謹み迎ふる
124主の神のウ声に生りし産玉の
125神の導き安くましませ
126わが生みし真鶴山のかくの如
127地稚ければ固めなしませ
128瑞御霊来まさむよき日を待ち侘びて
129吾幾年を経たりけらしな
130産玉のウの言霊に生れたる
131真鶴山はわが生命かも
132真鶴の山の御魂と永久に
133吾は鎮まり国土造らばや
134幾年を艱み苦しみ生り出でし
135真鶴山は未だ稚しも
136瑞御霊神の功に真鶴の
137山かたまりて世を照すらむ
138いざさらば真鶴山の頂上に
139登らせ給へ瑞の御霊よ』
140 斯く歌ひて産玉の神は先頭に立ち、141真鶴山の頂上に登り給ふ。142顕津男の神以下十柱の神々は、143国中比古の神の案内に連れて、144駒に跨りながら未だ地の固まらぬ山坂を、145蹄の跡を地に刻みながら、146漸くにして丘の上に登りつき給ひ、147濛々と立昇る狭霧を打見やりつつ御歌うたひ給ふ。
148『四方の野は狭霧こめつつ目路せまし
149吾この山に国土造りせむ
150国稚き真鶴山に吾立ちて
151四方の雲霧吹き払はなむ
152ハホフヘヒ生言霊の幸ゆ
153見渡す限り霧晴れよかし』
154(昭和八・一〇・二一 旧九・三 於水明閣 森良仁謹録)