第一六章 真言の力(一)〔一八八四〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第2篇 真鶴新国
よみ(新仮名遣い):まなづるしんこく
章:第16章 真言の力(一)
よみ(新仮名遣い):まことのちから
通し章番号:1884
口述日:1933(昭和8)年10月27日(旧09月9日)
口述場所:水明閣
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:すると、玉野湖の水が二つに割れた。湖の底から大きな竜が現れ、顕津男の神一行の馬前に道を作った。竜の頭上には、美しい女神が立っていた。
それは、生代比女であった。顕津男の神の厚き心によって、怨恨は感謝の念となり、美しい女神の姿に更生したのであった。
以前にも増して神々しい比女の姿に、顕津男の神は恍惚として、敬虔の念が止みがたく起こってきた。
生代比女の神は、顕津男の神の心に満悦し、その歓喜はたちまち凝って、体内に御子を宿した。すると、今まで燃えていた炎は消え去り、月が清涼の空気を全身に注ぐような心地とともに、完全に解脱した。それとともに竜体も消え去った。
生代比女は、蛇体から解き放たれた喜びを歌い、また、玉野森の玉野比女は、国生みの神であると明かす。
顕津男の神は、生代比女の更生を喜びつつ、神生みの御樋代は実は生代比女であり、玉野比女は国生みの役であることを知る。主の神の許しがなければ御子をはらむことはないこと、神業の道は一つではないこと、また国生みと神生みとのけじめがあることを悟った。
従者の神々はそれぞれ、これまでの真鶴国での出来事を振り返り、感慨を歌い、また国の繁栄の予感に喜びを歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7416
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 226頁
修補版:
校定版:246頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 玉野湖の水は真二つに分れて、002底より大竜の頭部を擡げ、003其頭上に粛然として、004嬋妍窈窕たる女神の姿佇立し、005顕津男の神一行の馬前を開きつつ、006瞬く内にさしもに広き湖面を向つ岸に渡り着きたり。007竜頭の上に立たせ給ふ女神は生代比女の神の御姿なりける。008茲に生代比女の神は顕津男の神の厚き心にほだされて、009怨恨の念慮は忽ち感謝となり、010歓喜悦楽と化して、011以前に勝る容貌美しき女神と更生し給ひしなり。
012 茲に顕津男の神は生代比女の神の、013雄々しく、014優しく、015美しき御姿に恍惚として心魂を奪はるるばかり、016敬虔の念止み難くおはしけるが、017生代比女の神は早くも其御心を悟りて満悦の情に堪へかね、018忽ち歓喜は凝りて体内に御子宿らせ給ひければ、019今迄燃え立ちし炎は雲散霧消し天日晃々と輝きわたり、020月は清涼の空気を全身にそそぐ心地して、021全く解脱し給ひ、022岸にのぼらせ給ふや、023竜体は忽ち湖面の水泡と消えて、024傾く月は水面に斜の光を投げ、025平穏無事の光景は譬ふるに物なきまでとなりぬ。026茲に生代比女の神は、027御歌詠ませ給ふ。
028『天晴れ天晴れ岐美の真心にほだされて
029わが恋雲は消え失せにけり
030村肝の心足らひて永久に
031岐美の真言によみがへりぬる
032飽くまでも恨みまつると思ひてし
033岐美を尊く仰ぎぬるかな
034右左水火かはさずも情ある
035岐美の心に御子はらみける
036岐美思ふ心は凝りて御子となり
037わが腹の中に宿らせにけり
038今よりは玉野湖水を乾かせて
039この稚国土を造り固めむ
040真鶴の稚き国原永久に
041固めて御子を育てむと思ふ
042真鶴の山の御魂と現れし
043吾にたまひし貴の御子はや
044この森に鎮まりいます玉野比女は
045国土生みの神吾力添へむ
046今日よりは心の駒を立て直し
047岐美と比女との神業助けむ
048神々の生言霊に助けられ
049吾は蛇体ゆよみがへりける』
050 顕津男の神は湖岸に立ちて生代比女の神の心の曇晴れたるを悦び給ひて、051御歌詠ませ給ふ。
052『言霊の御稜威畏し真心の
053光尊し比女を救ひぬ
054左右りの我神業はなさねども
055真心に御子は宿りけるかも
056この湖の清きが如く玉野森の
057栄ゆる如く御子育ちませ
058真鶴の山に湧き立ちし黒雲も
059晴れ渡りたる今宵ぞ嬉しき
060東雲の空ほのぼのとあかりつつ
061心の空に陽は昇りけり
062国土生みの神業に仕ふる玉野比女を
063神生みの神と誤り居たりき
064生代比女は真鶴山より生れし神
065思へば神の依さしなりしか
066怪しかる心なけれど契らねど
067経綸の御子は宿らせたまへり
068今となり主の大神の果しなき
069経綸の糸を手繰り得たりき
070主の神の御ゆるしなくば如何にして
071想像妊娠事のあるべき
072愚しき我なりにけり御子生みの
073業は一つの道と思ひし
074今日よりは玉野の森に暫くを
075我鎮まりて国土を固めむ
076湖を茜に染めて紫の
077雲わけのぼる朝津日の神よ
078生代比女心和みて御子孕み
079天津日豊に昇りたまひぬ
080我は今国土生み神生みの神業の
081差別を委曲に悟りけらしな』
082 遠見男の神は感歎措く能はず、083御歌詠ませ給ふ。
084『駒の背に跨がり渡る玉野湖の
085面に浮ぶ天津日の光
086竜神の姿忽ち現れて
087頭に立たせし生代比女天晴れ
088瑞御霊あつき心に絆されて
089生代の比女はよみがへりましぬ
090情ある生言霊と真心に
092八千尋の深き湖面をやすやすと
093生言霊に渡りけるかも
094千重の浪乗りきる駒の脚早み
095千々に月影くだきて渡れり
096大空の月船西に白けつつ
097東の空に日は昇りたり
098真鶴の山を包みし常闇を
099晴らして昇る朝津日の影
100国土生みの御供に仕へて今日はしも
101神の経綸の深きを悟りぬ
102玉野比女出迎へまさぬを怪しみし
103わが心今解け初めにけり
104国土生みと神生みの差別知らずして
106ほのぼのと霧たちのぼる玉野湖の
108生代比女恨の炎燃えたちて
109浪逆巻きし夜の凄じさよ
110浪猛り風吹き荒みし湖面も
111今日は静けく天津日浮べり
112濛々と霧は立てども天津日の
113光遮らず湖の面明るき
114吾も亦主の大神の御心を
115悟りて岐美を助けまつらむ
116生代比女神のめぐしき御心を
117退けし吾も罪なりにけり
118真心の光にさやるものはなし
119小さき心にとらはれ難みし
120駿馬の背に朝津日は輝きて
121湖水の青と色を競へり
122白駒も岸辺に見れば青かりき
123今日より吾は白馬と名づけむ』
124 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
125『天変地妖も跡なく消えて天地に
126日は輝きぬ月は沈みぬ
127瑞御霊月の心も凪ぎにけむ
129此処に来て神の経綸をさとりけり
130なごむ心に御子宿りましぬ
131こんもりと常磐樹繁る玉野森も
132主の大神の御姿なりけり
133澄みきらふ天地の中に濃緑の
134色冴えわたる玉野森はも
135恐しきものは恋てふ心ぞと
137恋すてふ心に神も生まるなり
138鬼も大蛇も生み出すなり
139よしあしのゆきかふ世なり吾は今
140生代の比女に世のさまを見し
141葭も葦も稚国原に生ひ立てる
142思へば何の差別なきかな
143善と言ひ悪と称ふも神々の
144心の駒の動きなりける
145堅き歯は柔き舌に先だちて
147堅き木は風に倒され柔らかき
148柳はもとの如く立つかも
149玉野湖の汀に生ふる楊柳の
150風に靡ける姿やさしも
151常磐樹の年ふる松は太くとも
152風に倒るる御代なりにけり
153そよと吹く風にも靡く楊柳の
154いやながながに倒れぬ御代なり
155天地の中に生れて心狭き
156一すぢの吾を今日みつめけり』
157 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。
158『美しき愛の力に照らされて
159生代の比女は光らせたまへり
160日月の暗を晴らして照れるごと
161生代の比女の胸は晴れぬる
162瑞御霊神の神言の神業の
163世の常ならぬを畏み思ふ
164主の神の生ませたまひし玉野森は
166この森に鎮まりいます比女神の
167清き心は松に見ゆなり
168白梅の花の香を送り来る
169科戸の風の清しき朝なり
170汀辺に並びて栄ゆる楊柳の
171梢すがしく湖面を撫づるも
172楊柳の根本を封じて葭葦の
173葉は青々と風にそよげる
174天国の光景なるかも梅薫り
175湖面を飛び交ふ田鶴の姿は
176白鳥は波に翼を浮べつつ
177静に遊ぶ朝の湖原
178よべの嵐跡なく晴れて天国の
180瑞御霊はろばろここにあれまして
181国土造ります功尊き
182言霊の効験なきまで曇りたる
183恋の思ひの恐しきかな
184愛すてふ力の強さ悟りけり
185鬼も大蛇も影をひそめぬ
186遠の野にぼんやり霞みし真鶴の
187山の尾上は日にかがやけり
188真鶴の山に生れましし生代比女
189神の心の和みて現れしよ
190終日を駒に鞭うちて進み来し
191遠の真鶴山は晴れたる
192生代比女神の心の曇りより
193真鶴山は霞みたりけむ』
194 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。
195『玉野湖の浪静まりて天津日の
196かがよふ湖は瑞御霊かも
197深く広く清けく澄める玉野湖は
198瑞の御霊の心なるらむ
199小夜嵐凪ぎて天津日昇ります
200朝あけの空見れば嬉しも
201生代比女嬉しかるらむ瑞御霊
202清しかるらむ御子孕みませば
203竜神と姿を変じわが岐美の
204先頭つとめし比女神かしこし
205わが駒は浪ふみわけてだうだうと
206地を行くごとく進みたるかも
207言霊の御稜威に深き湖面も
209言霊の水火に生れし駒なれば
210浪の上渡るも安かりにけむ
211吾も亦ウの言霊に生れたる
212神にしあれば身は重からじ
213瑞御霊ア声に生れまし吾はウの
214声に生れし喜びの神
215世の中の喜びごとを司どりて
216万代の末まで幸ひせむと思ふ
217喜びの心しなくば何事も
218𪫧怜に委曲に遂げ得ざるべし
219夜半の嵐凪ぎたる今朝の喜びを
220吾永久に伝へむと思ふ』
221 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。
222『湖にみはしなけれどわが魂は
223岐美を守りて安くわたりぬ
224竜神の導きたまふ浪の穂を
225渡るも美波志の神のいさをよ
226神業を貫き通す功績に
227美波志穂の神吾は仕へむ
228如何ならむ難にあふも美波志穂の
230御尾前に仕へて吾は瑞御霊
231貴の神業を守りまつらむ
232山に海に河に谷間に吾こそは
233美波志となりて行手を守らむ
234美波志穂の言霊の水火なかりせば
235如何で栄えむ稚国原は』
236(昭和八・一〇・二七 旧九・九 於水明閣 加藤明子謹録)